JP2020135450A - 橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム、画像処理方法及びプログラム - Google Patents
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Abstract
Description
また、国内に存在し定期的にひび割れの有無や損傷についての点検が必要な橋梁の大多数を占めるものは、長さが2m〜15m程度のものであり、桁下が数m〜10m程度のものが多く、正面から撮影した複数の画像を取得するには、足場を組んで撮影位置を移動しながら撮影する必要があり、そのような作業は困難である。
なお、橋梁のコンクリート壁面に幅0.2mmのひび割れが生じると、その深さは10cm程度あることが予測され、内部の鉄筋に腐食が発生するおそれがある。
従って、正面画像から幅0.1mm程度のひび割れの存在とその位置を検出するには、構造物の詳細画像を取得する必要がある。
従来、構造物を検査するために、移動体を用いて複数枚の画像データを取得し、それらを統合する方法が提案されているが(特許文献1〜4)、それらの方法には以下のような問題がある。
・小さな橋梁の下には通常通路が無く、移動体を適切に移動させることは困難である。
・統合する複数個の画像データは、構造物を正面から撮影したものでなければならない。・隣接する画像データに重複する部分が必要となっている。
そこで、本件発明者らは既に特願2018−30606号において、定位置から複数の詳細画像を撮影し、各詳細画像についての距離及び傾きを計算し、正面画像に変換したものを統合して詳細な広域の正面画像を得る発明を開示している(図14参照)。
この発明においては、予め位置関係が特定された3つ以上のレーザーポインタとカメラを使用することで、斜め方向から撮影して得た画像データを正面画像のデータに変換する手法を開示している。
そして、本願発明は、上記特願2018−30606号において開示されている発明のシステム及び手法を部分的に利用しつつさらに発展させたものである。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、
(A)橋梁などの構造物を検査するための画像処理システム、及び、画像処理方法において、微細なひび割れの存在と位置を簡単、迅速、正確かつ低コストにて特定できる画像処理システム、及び、画像処理方法を提供し、かつ、
(B)アクセスしにくい現場に存在する構造物についても撮影作業を行い易く、かつ、得られた画像データを正確かつ迅速に処理できる橋梁などの構造物を検査するための画像処理システム、及び、画像処理方法を提供するとともに、
(C)橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム、画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法及びその方法のために使用することができるプログラムを提供することにある。
構造物を正面から撮影していない画像からも正面画像を取得してそれらを統合できる画像処理システム、画像処理方法及びプログラムを提供するとともに、
隣接する画像データに重複する部分がなくても、複数の画像を統合できる画像処理システム、画像処理方法及びプログラムを提供し、さらには、
現場での目視による損傷部分の確認作業を適宜参照し利用することで、点検作業をより一層効率化するとともに、点検作業によって得られるデータの信頼性を向上させることができる画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法及びその方法のために使用することができるプログラムを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、
前記画像データ中において検出された構造物の損傷部分にその長さ、幅などの情報を付加して記録できる画像処理システム、及び、
同一構造物について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照することができ、当該構造物における損傷部分の経時変化を確認できる画像処理システムを提供することにある。
カメラと、少なくとも3個のレーザーポインタと、それらを一体的に保持することができる固定手段と、からなる撮影装置と、
当該撮影装置によって得られた画像データを処理するデータ処理装置と、を備え、
構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データと、
に基づいて動作する画像処理システムであって、
前記データ処理装置は、
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、
前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができることを特徴とする橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム」を最も主要な特徴とするものである。
(3)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置は、前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示でき、さらに、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能であっても良い。
(4)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置は、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させることができるものであっても良い。
(6)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置は、前記広域正面画像データ中において検出された構造物の損傷部分にその長さ、幅などの情報を付加して記録できるものであっても良い。
(7)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置は、同一構造物について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照することができ、当該構造物における損傷部分の経時変化を確認できるものであっても良い。
カメラと、少なくとも3個のレーザーポインタと、それらを一体的に保持することができる固定手段と、からなる撮影装置と、
当該撮影装置によって得られた画像データを処理するデータ処理装置と、を備えた画像処理システムを使用し、
1)構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、
を前記画像処理システムに入力することで、
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得るステップと、
2)目視にて発見した構造物の損傷部分を特定部分と判断し、前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の当該特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データを前記画像処理システムに入力することで、
当該特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得るステップと、
からなることを特徴とする画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法」である。
(9)本発明の画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法において、前記撮影装置におけるレーザーポインタは、4個であり、それらの各レーザーポインタは、前記カメラの光軸と平行に配置されており、かつ、前記詳細画像データの対角線上の四隅部分と対応する位置に照射点を得られるようにレーザー光を発することができるものであっても良い。
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、
前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができるプログラム」である。
(11)本発明のプログラムは、前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示する処理と、当該損傷部分の候補に対する削除又は修正を受け付ける処理と、前記損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理と、をさらに含むものであっても良い。
かかる画像処理は、特願2018−30606号にて開示されている発明を用いることで可能である。
さらに、定位置から撮影して入手したバラバラの状態の複数枚の画像データを、被写体と対応する正しい位置に再配置して統合しているため、隣接する画像データに重複する部分がなくても、複数の画像を統合することができる。
本発明は、定位置から撮影することによって得られた複数枚の画像データから構造物の広範囲の正面画像を構築することができるため、撮影装置を移動させながら撮影する作業が必須のものでは無く、アクセスしにくい現場に存在する構造物についての検査を簡単、迅速、正確かつ低コストにて行うことができる。
さらに、本願発明においては、広狭2つの画像データセットを用いる手法により、少ない撮影枚数にて迅速に構造物の粗い広域正面画像データを得て、構造物の広範囲の正面画像データを迅速に得ることができ、さらに、構造物の特定部分(具体的には目視で確認した損傷部分であって、特に詳細な画像データが必要な部分)を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができる。
従って、本願発明においては、正面から構造物を撮影する必要が無く、かつ、撮影場所を変更する必要も無いばかりか、構造物の広範囲について漏れなく詳細に撮影する必要も無く、検査データの品質を低下させること無く撮影枚数を減らして検査作業を極めて効率的に処理することができる。
(3)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置が、前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示でき、さらに、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能である場合には、構造物中における損傷部分のピックアップを迅速に行うとともに、現場における目視による確認によって構造物中における損傷部分を正確にデータ化することができ、検査の信頼性を優れたものとすることができる。
(4)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置が、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させることができるものである場合には、構造物中における損傷部分のピックアップの精度を高めたり、検出対象の性質をカスタマイズすることができ、損傷部分の候補を削除又は修正する作業を軽減し、効率化するとともに、システムの信頼性、利便性及び汎用性を高めることができる。
(6)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置が、前記広域正面画像データ中において検出された構造物の損傷部分にその長さ、幅などの情報を付加して記録できるものである場合には、損傷部分の状態に関する情報を一目瞭然にて簡単に確認でき、極めて便利なシステムを提供できる。
(7)本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムにおいて、前記データ処理装置が、同一構造物について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照することができ、当該構造物における損傷部分の経時変化を確認できるものである場合には、補修作業の計画や実行などに資することができるなど、極めて有益なデータベースを提供することができる。
(9)本発明の画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法において、前記撮影装置におけるレーザーポインタが4個であり、それらの各レーザーポインタが前記カメラの光軸と平行に配置されており、かつ、前記詳細画像データの対角線上の四隅部分と対応する位置に照射点を得られるようにレーザー光を発することができるものである場合には、レーザーポインタによる1個の照射点が不鮮明であっても以後の画像処理を行うことができ、さらには、画像データ中の撮影範囲が適切なものであることを簡単に確認することができ、個々の撮影作業を迅速に行うことができるばかりか、撮影以後の画像処理作業についても迅速かつ適切に進めることができる。
(10)本発明の画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法をコンピュータ、タブレット、携帯電話などのデータ処理装置にて実行する際に使用することができるプログラムにおいては、簡易な方法にて広狭2つの画像データセットから構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができるため、定位置からの少ない撮影枚数であっても検査の品質を維持して構造物の点検作業を迅速かつ容易なものとすることができる。
(11)本発明の画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法をコンピュータ、タブレット、携帯電話などのデータ処理装置にて実行する際に使用することができるプログラムにおいて、前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示する処理と、当該損傷部分の候補に対する削除又は修正を受け付ける処理と、前記損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理と、をさらに含むものである場合には、構造物中における損傷部分のピックアップの精度を高めたり、検出対象の性質をカスタマイズすることができ、損傷部分の候補を削除又は修正する作業を軽減し、効率化するとともに、システムの信頼性、利便性及び汎用性を高めることができる。
従って、本発明の画像処理システム、画像処理方法及びプログラムは、橋梁などの構造物を検査する際において、極めて扱い易く使い勝手の良いものとなっている。
構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データと、に基づいて動作する画像処理システムであって、
前記データ処理装置は、前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができることを特徴とする橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム」である。
1)構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、を前記画像処理システムに入力することで、
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得るステップと、
2)目視にて発見した構造物の損傷部分を特定部分と判断し、前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の当該特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データを前記画像処理システムに入力することで、
当該特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得るステップと、
からなることを特徴とする画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法」である。
また、本発明は、「上記のような構造物を効率的に検査するための画像処理方法をコンピュータ、タブレット、携帯電話などのデータ処理装置に実行させるためのプログラム」である。
そして、本発明は、以下において説明する実施形態などによって好適に具体化することができるものである。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態の橋梁などの構造物2を検査するための画像処理システム1は、撮影装置10とデータ処理装置20とから構成される。
そして、当該撮影装置10は、1個のカメラ11と、4個のレーザーポインタLp1〜Lp4と、それらを一体的に保持することができる固定手段12と、から構成されている。
さらに、前記カメラ11としては、異なる拡大倍率にて撮影できるズーム機能を備えたものが好適であるが、レンズ交換によって異なる拡大倍率の画像データを得られるものであっても本発明を具体化して実施することができる。但し、作業効率は低下することになる。
また、各撮影画像のデータに焦点距離の情報、即ち、各画像データの拡大倍率を算出するためのデータ、が自動的に記録されない場合には、別途各撮影画像のデータについてその撮影時の焦点距離を記録し、データ処理装置20に入力する必要がある。
なお、レンズ交換する場合、又は、ズーム可能な範囲の両端で撮影する場合など、拡大倍率が一定である場合には、各画像の焦点距離をデータ処理装置20に入力する処理は簡単に行うことができる。
前記カメラ11としては、当該カメラ11により撮影される画像の画素分解能(1ピクセルあたりの実サイズ)の範囲及び撮影時の構造物2までの距離に応じて、前記カメラ11の有効画素数、光学ズーム倍率といったカメラ11のスペックを選択可能である。
また、前記カメラ11は、無線又は有線にて接続されたモニターによって離れた場所から撮影箇所及び焦点合わせを確認でき、かつ、後述する位置姿勢推定処理によって得られた構造物2との相対的な位置関係からスケールの尺度が統一された画像が得られるようカメラ11のズーム機構とシャッターを遠隔制御できるものであっても良い。
さらに、カメラ11としては、動画を撮影できる機能を有するデジタルカメラ、携帯電話、又は、図5に示すようなビデオカメラ11aであっても良い。
なお、ビデオカメラ11aによって構造物2の動画データを得る場合には、動画データ中における適宜の画像データを抽出・選択して以後の画像処理を行えば良い。
なお、本発明における広狭2つの画像データセットを構成する部分画像データと詳細画像データの拡大倍率の実際の運用上好ましい範囲は、2〜5倍程度であり、本発明を実施する際に使用するカメラのズーム倍率は5〜10倍程度あればよい。
但し、本発明における広狭2つの画像データセットを構成する部分画像データと詳細画像データの拡大倍率は、精度が低下する可能性もあるが、原理上10倍程度であってもよい。
この固定手段12は、合成樹脂、軽金属又は木材などの剛性材料から構成することができ、前記カメラ11の光軸と各レーザーポインタLp1〜Lp4の光軸との位置関係が常時狂うことがないようにそれらを保持できれば良く、その形状は、長方形、正方形の他、他の四角形、X字形、円形、多角形、三角形、V字形、A字形などの枠状のもの又は板状のものなど、適宜選択可能である。
また、撮影装置10によって定位置から複数枚の画像データを得るために、固定手段12に三脚13を装着してカメラ11による撮影を行っても良い。
また、各レーザーポインタLp1〜Lp4による照射点P1〜P4の輝点形状は、真円で中心から正規分布に従うような輝度分布が好ましい。
なお、輝点の直径は、一例として、4m離れたところで4mm程度のものを用いることができる。
本発明において使用する撮影装置10によるレーザーポインタLp1〜Lp4の固定状態を確認し正しい位置に固定されるように調整するには、図13の左側に示すように、撮影画像中におけるレーザーポインタLp1〜Lp4の理想的な照射位置が分かるマークが付された調整用ボード30を使用すると良い。
さらに、本発明において使用する撮影装置10としては、図3の下部に示すように、8個のレーザーポインタLp1〜Lp8を対角線上に配置したものを採用しても良い。このようにレーザーポインタの数を増やすことで、後述する画像処理の際におけるレーザーポインタによる照射点の選択肢が増え、画像処理の精度を高めることができる。
また、このデータ処理装置20としては、ホストコンピュータ23と、当該ホストコンピュータ23と接続される携帯電話22又はタブレット端末24をローカル端末装置とする構成であっても良い。
この場合、後述する通り、前記ホストコンピュータ23にて、構造物の粗い広域正面画像データと、構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データの生成、及び、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理を行うことができ、前記ローカル端末装置にて、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能とすることができる。その場合には、現場における目視による確認によって構造物中における損傷部分を正確にデータ化することができるとともに、ローカル端末装置の負担とデータ通信の負荷を軽減し、データ処理作業の効率化と利便性の向上を図ることなどができる。
前記データ処理装置20は、構造物2の一部を前記撮影装置10によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置10によって同一位置及び同一方向にて前記構造物2の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、前記と同一の位置から前記構造物2の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、前記と同一の位置から前記撮影装置10によって構造物2の特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データと、に基づいて動作するものである。
具体的には、前記データ処理装置20は、前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタLp1〜Lp4による少なくとも3個の照射点から前記カメラ11から構造物2までの距離データ及びカメラ11の3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせてあるべき正しい位置に再配置して統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタLp1〜Lp4による少なくとも3個の照射点から前記カメラ11から構造物2までの距離データ及びカメラ11の3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて再配置して統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができるものである。
(ア)前記撮影装置10によって定位置から構造物2の一部を撮影することによって得られた詳細画像データのそれぞれについて、前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点P1〜P4の詳細画像データ中における座標位置を抽出する照射点抽出処理と、
(イ)前記詳細画像データのそれぞれについて、前記照射点抽出処理によって得られた前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点P1〜P4の座標位置と、前記撮影装置を用いて予め対象との位置関係が特定された状態で撮影した画像データ中における前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点の座標位置との相対的な関係から、前記カメラ11から構造物2までの距離データ及びカメラ11の3次元方向での傾きデータを算出する位置姿勢推定処理と、
(ウ)前記個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データのそれぞれについて、前記位置姿勢推定処理によって得られた距離データ、傾きデータ及び、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて、スケールの尺度が統一された構造物2の正面画像データに変換する正面画像取得処理と、
(エ)前記正面画像取得処理によって得られた複数枚の正面画像データを、前記位置姿勢推定処理によって得られた距離データ、傾きデータ、及び、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて、部分画像データを複数枚組み合わせて再配置して統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得る画像統合処理と、
を行うことができるものである。
ここで、部分画像データと詳細画像データの「拡大倍率」は、好適には、各画像を撮影した際のカメラ11の焦点距離から算出されるものである。
(オ)前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて再配置して統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができるものである。
例えば、ひび割れや穴といった損傷部分であれば、画像データ中において周囲よりも黒く表示されるため、それらを損傷部分として自動的にピックアップし、鮮明な色にてカラー表示することで、存在箇所を明確化することができる。
また、本発明において、前記データ処理装置20は、現場において構造物の実際の損傷部分を目視確認することで、自動検出された損傷部分の候補を削除したり修正する処理を受け付けることができる。かかる修正には、損傷部分の長さ、幅、種類などのデータを記入し、記録する処理を含む(図1の下部に記載した広域正面画像データ参照)。
さらに、本発明において、前記データ処理装置20は、損傷部分の候補を削除したり修正する処理の履歴から学習し、次に損傷部分の候補を自動的に検出して表示する際に反映させることができるようになっている。
さらに、本発明において、前記データ処理装置20は、同一構造物2について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照することができ、当該構造物2における損傷部分の経時変化を確認できるものであってもよい。
ここで、前記データ処理装置20による位置姿勢推定処理は、前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点P1〜P4の内の3個の照射点の座標位置が特定できれば、前記カメラ11から構造物2までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出することができる。
従って、照射点P1〜P4の内の何れか1個が不鮮明で判別困難であっても、以後の画像処理を行うことができる。
かかる計測処理は、カメラ11と対象物との距離データ及びカメラ11の傾きデータ、並びに、画像データの解像度から、各画像データ中における損傷の座標位置(各照射点P1〜P4同士の距離)を特定できるため、可能となる。
かかる損傷部分については、既に説明した通り、自動にて損傷部分の候補を検出して表示し、さらにそれらの候補を現場における目視にて確認し、現場にあるデータ処理装置20、好ましくは携帯電話又はタブレットなどのローカル端末装置によって、追加、削除又は修正することで、より一層正確な検査結果データを得ることができるものとすることができる。
本発明の橋梁などの構造物2を検査するための画像処理方法は、好適には、前記カメラ11により撮影された画像の画素分解能(1ピクセルあたりの実サイズ)が、0.1mm/ピクセル〜0.3mm/ピクセルの範囲内である画像処理システム1を用いて構造物2の広範囲の正面画像から構造物2に生じている微細なひび割れ5の存在とその位置を確認することができる構造物2を検査するための画像処理方法であって、図7に示すように、以下のステップS1〜S7から構成されている。
前記撮影装置10によって、構造物2から離れた前記と同じ定位置から構造物2の他の部分を同一方向にて撮影することによって部分画像データと、その中央部分を撮影した詳細画像データの広狭2つの画像データセットを取得するステップS2(他の画像データセット撮影)。
前記データ処理装置20による照射点抽出処理によって、前記複数枚の詳細画像データのそれぞれについて、前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点P1〜P4の画像データ中での座標位置を抽出するステップS3(照射点抽出処理)。
前記データ処理装置20による位置姿勢推定処理によって、前記複数枚の詳細画像データのそれぞれについて、前記照射点抽出処理によって得られた前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点P1〜P4の座標位置と、前記撮影装置10を用いて予め対象との位置関係が特定された状態で撮影した画像データ中における前記レーザーポインタLp1〜Lp4による各照射点の座標位置との相対的な関係から、前記カメラ11から構造物2までの距離データ及びカメラ11の3次元方向での傾きデータを算出するステップS4(位置姿勢推定処理)。
図10に示す別ルーチンに示すように、現場において目視確認した構造物中の損傷部分を特定部分とし、当該特定部分を前記と同じ定位置から撮影した特定部分詳細画像データについて、前記データ処理装置20が行った位置姿勢推定処理によって得られた距離データ、傾きデータ及び拡大倍率に基づいて再配置して前記構造物2の粗い広域正面画像データと統合し、構造物2の部分的に詳細化された広域正面画像を構築するステップS6(部分的に詳細化された広域正面画像取得処理)。
前記部分的に詳細化された広域正面画像取得処理によって得られた構造物2の部分的に詳細化された広域正面画像から、構造物2に生じているひび割れ5又は剥離などの損傷部分を自動的に検出し表示するとともに、構造物2に生じているひび割れなどの幅及び長さなどの損傷部分の情報を付加して記録するステップS7(損傷部分の情報付加処理)。
さらに、本発明の構造物を効率的に検査するための画像処理方法は、撮影のステップS1の前に、撮影位置から撮影される構造物2の範囲が、カメラ11の光軸の上下左右それぞれ最大60度の範囲内となるように、構造物2から離れた定位置を選定するステップS1−0をさらに含むものであると良い(図8参照)。
なお、本発明の構造物を効率的に検査するための画像処理方法において、カメラ11による撮影位置は、1箇所に限られるものではなく、構造物2が水平方向又は上下方向に長い場合には、複数箇所から複数枚の撮影を行い、その際の移動距離を元に、又は、画像データ中の特徴点を照合することで、構造物2のさらに広範囲の正面画像を構築することもできる。
図6に示すように、構造物2をカメラ11で撮影した画像データ(撮影画像)は、基準状態で撮影された画像からX軸(水平方向)及びY軸(上下方向)において回転しており、Z軸(前後方向)において移動していると考えられる。
そこで、
i)基準状態での輝点座標と回転・移動後の輝点座標の関係より、
ii)回転と移動による距離変化により、
が成り立つので、以下のパラメータが既知であれば、方程式を解くことができる。
の「輝点座標のペア(組み合わせ)が3点以上」
「各レーザーポインタの傾き」:
「基準状態での撮影装置と壁面との距離」:Z
「撮影時の焦点距離」:
<点検対象の構造物と損傷の程度>
橋梁のコンクリート壁面3における0.1mm以上の幅を有するひび割れを検出する検査のための画像処理を行う場合
即ち、本システムにおける重要な要素としては、画像の分解能があり、分解能(正面向きで平面を撮影する場合)は、
・カメラの総画素数[pix]
・カメラセンサのサイズ[mm]
・撮影時の壁面との距離[m]
・焦点距離(ズーム値)[mm]
の4つのパラメータで決定される。
そしてこれらの値を考慮しつつ、使用するカメラのスペック、及び、広狭2つの画像データセットを構成する部分画像データと詳細画像データの拡大倍率を適宜選択する必要がある。
<使用するカメラ>
SONY社製のデジタルカメラ:Cyber−shot DSC−RX10M4
解像度 :5472 x 3648
光学ズーム倍率:25倍まで
撮影時の焦点距離は画像データ中(Exif内)に記録される。
<詳細画像のスペック>
画像分解能 :0.2mm/pix
最大撮影可能範囲:1.1m x 0.7m
最大撮影可能距離:0.73m(25倍ズーム利用なら18.25m)
<レーザーポインタ>
水平方向48cm、上下方向32cmの長方形の頂点に配置
カメラはその長方形の中心位置に光軸が配置されるようにして固定
(この配置が、位置姿勢推定処理において利用される配置位置データとなる。)
<広狭2つの画像データセットを構成する部分画像データと詳細画像データの拡大倍率について>
既に述べた通り、実際の運用上、作業効率及び処理精度などの観点から、拡大倍率は、2〜5倍程度が好ましい。
<部分画像の撮影枚数>
広狭2つの画像データセットを構成する部分画像データと詳細画像データの拡大倍率を3とし、画像の統合を容易にするために、3割重ねながら撮影する場合
(壁面の幅/2.4)x(壁面の高さ/1.5)枚
但し、壁面全体を漏れなく撮影するには、小数点以下は切り上げた枚数となる。
ここで、照射点抽出処理、正面画像取得処理、ひび割れ計測処理の個々の処理については、従来公知の画像処理方法及びプログラムを用いて当業者において容易に理解でき、かつ、処理できるものであり、詳細な説明は省略する。
一例として、本発明の構造物を検査するための画像処理システム1は、カメラ11と、4個のレーザーポインタLp1〜Lp4と、それらを一体的に保持することができる固定手段と、からなる撮影装置であって、当該撮影装置を構成する固定手段は、前記4個のレーザーポインタLp1〜Lp4によるレーザー光が、前記カメラ11によって撮影される画像の4隅付近に照射されるように、4個のレーザーポインタLp1〜Lp4を前記カメラ11の光軸を中心とする対角線上にて「拡開する」ように配置して固定することができるものであっても良い。
ここで、「拡開する」とは、レーザーポインタLp1〜Lp4による各レーザー光が、カメラ11の光軸に対して一定の角度を以て広がっていくことである。
この実施形態においては、撮影装置を小型化することが可能となる。
この実施形態において、当該撮影装置10を構成する固定手段は、前記3個のレーザーポインタLp1〜Lp3によるレーザー光が、前記カメラ11aによって撮影される画像の範囲内に照射されるように、3個のレーザーポインタLp1〜Lp3を前記カメラ11aの光軸と平行かつ当該光軸の周囲に配置した三角形の頂点上に配置して固定することができるものである。
そして、3個のレーザーポインタLp1〜Lp3の配置は、好適実施形態として、水平方向に沿った底辺を有する正三角形の頂点上であると良い。
この実施形態の場合、本発明の構造物を検査するための画像処理方法の一実施形態は、図11に示すように、以下のステップS10〜S17から構成される。
これにより、構造物2の詳細画像データ中における照射点P1〜P3の座標位置を補正することができる。
かかるキャリブレーションには、一例として、図13の右側に示すように、10cm角の正方形を市松模様にて並べたキャリブレーションボード31を好適に使用することができる。
前記カメラ11aと3個のレーザーポインタLp1〜Lp3を有する撮影装置10によって、構造物2から離れた前記と同じ定位置から構造物2の他の部分を同一方向にて撮影することによって部分画像データと、その中央部分を撮影した詳細画像データの広狭2つの画像データセットを取得するステップS12(他の画像データセット撮影)。
前記データ処理装置20による照射点抽出処理によって、前記複数枚の詳細画像データのそれぞれについて、前記レーザーポインタLp1〜Lp3による各照射点P1〜P3の画像データ中での座標位置を抽出するステップS13(照射点抽出処理)。
図10に示す別ルーチンに示すように、現場において目視確認した構造物中の損傷部分を特定部分とし、当該特定部分を前記と同じ定位置から撮影した特定部分詳細画像データについて、前記データ処理装置20が行った位置姿勢推定処理によって得られた距離データ、傾きデータ及び拡大倍率に基づいて再配置して前記構造物2の粗い広域正面画像データと統合し、構造物2の部分的に詳細化された広域正面画像を構築するステップS16(部分的に詳細化された広域正面画像取得処理)。
前記部分的に詳細化された広域正面画像取得処理によって得られた構造物2の部分的に詳細化された広域正面画像から、構造物2に生じているひび割れ5又は剥離などの損傷部分を自動的に検出し表示するとともに、構造物に生じているひび割れなどの幅及び長さなどの損傷部分の情報を付加して記録するステップS17(損傷部分の情報付加処理)。
また、カメラとしてビデオカメラ11aを用いている場合には、撮影作業を迅速かつスムーズに行うことができる。
なお、ビデオカメラ11aによって構造物2の動画データを得る場合には、動画データ中における適宜の画像データを抽出・選択して以後の画像処理を行えば良い。
さらに、部分的に解像度を上げるには、ズーム倍率を高め、照射点P1〜P4の位置を撮影範囲の4隅になるべく接近させれば良い。
逆に撮影効率を高め、解像度を低下させても良い場合には、ズーム倍率を低めて構造物2の広範囲を撮影するようにすれば良く、この場合、照射点P1〜P4は、撮影範囲の4隅付近において、中央部寄りの位置に配置されることになる(図12参照)。
その場合、本発明の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムを小型・軽量化でき、画像処理作業もスムーズに行うことができる。
また、本発明の画像処理システムに通信機能を持たせることができるため、遠隔地にある現場で得られたデータを無線通信にて速やかに事業所などの大きなモニタやPCの在る場所へ転送することもできる。
本発明の画像処理システムにおいて、前記データ処理装置20は、前記構造物2の粗い広域正面画像データ又は部分的に詳細化された広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示でき、さらに、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能である。
さらに、本発明の画像処理システムにおいて、前記データ処理装置20は、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させることができる。
本発明の画像処理システムにおいて、前記データ処理装置20は、ホストコンピュータ23と、当該ホストコンピュータ23と接続されるローカル端末装置(ノート型パソコン21、携帯電話22、又は、タブレット端末24など)とから構成されたものとし、前記ホストコンピュータ23にて、構造物の粗い広域正面画像データと、構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データの生成、及び、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理を行うことができ、前記ローカル端末装置にて、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能とすることもできる。
本発明の画像処理システムにおいて、前記データ処理装置20は、構造物の粗い広域正面画像データ及び構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データの任意の部分を拡大・縮小表示したり、特定の部分を選択したりクリックすることで当該部分を別画面として表示させることもできる。
さらに、本発明の画像処理システムにおいて、前記データ処理装置20は、同一構造物2について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照して表示することができ、当該構造物2における損傷部分の経時変化を確認することもできる。
例えば、各画像データセット中における詳細画像データについても、特定部分詳細画像データとともに、部分的に詳細化された広域正面画像データに含めて正しい位置に再配置して統合しても良い。その場合、詳細画像データを無駄なく利用することができる。
また、本発明のデータ処理装置による構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示する処理は、構造物の粗い広域正面画像データ又は構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データなど、何れの画像データに対して行うことができるものであっても良い。
2 構造物
3 壁面
4 底面
5 ひび割れ
10 撮影装置
11 カメラ
11a ビデオカメラ(カメラ)
12 固定手段
13 三脚
20 データ処理装置
21 ノート型パソコン(データ処理装置)
22 携帯電話(データ処理装置)
23 ホストコンピュータ
24 タブレット端末
30 調整用ボード
31 キャリブレーションボード
Lp1〜Lp8 レーザーポインタ
P1〜P4 照射点
Claims (11)
- 橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システムであって、
カメラと、少なくとも3個のレーザーポインタと、それらを一体的に保持することができる固定手段と、からなる撮影装置と、
当該撮影装置によって得られた画像データを処理するデータ処理装置と、を備え、
構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データと、
に基づいて動作する画像処理システムであって、
前記データ処理装置は、
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、
前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができることを特徴とする橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。 - 前記撮影装置におけるレーザーポインタは、4個であり、それらの各レーザーポインタは、前記カメラの光軸と平行に配置されており、かつ、前記詳細画像データの対角線上の四隅部分と対応する位置に照射点を得られるようにレーザー光を発することができるものであることを特徴とする請求項1に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。
- 前記データ処理装置は、前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示でき、さらに、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。
- 前記データ処理装置は、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させることができるものであることを特徴とする請求項3に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。
- 前記データ処理装置は、ホストコンピュータと、当該ホストコンピュータと接続されるローカル端末装置とから構成されており、
前記ホストコンピュータにて、構造物の粗い広域正面画像データと、構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データの生成、及び、損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理を行うことができ、
前記ローカル端末装置にて、当該損傷部分の候補を削除又は修正可能であることを特徴とする請求項4に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。 - 前記データ処理装置は、前記広域正面画像データ中において検出された構造物の損傷部分にその長さ、幅などの情報を付加して記録できるものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。
- 前記データ処理装置は、同一構造物について過去において得た画像データと、新たに入手した画像データとを比較対照することができ、当該構造物における損傷部分の経時変化を確認できるものであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の橋梁などの構造物を効率的に検査するための画像処理システム。
- 画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法であって、
カメラと、少なくとも3個のレーザーポインタと、それらを一体的に保持することができる固定手段と、からなる撮影装置と、
当該撮影装置によって得られた画像データを処理するデータ処理装置と、を備えた画像処理システムを使用し、
1)構造物の一部を前記撮影装置によって撮影した部分画像データと、当該撮影装置によって同一位置及び同一方向にて前記構造物の一部を拡大して撮影した詳細画像データであって、前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点が写るように前記部分画像データの中央部を撮影した詳細画像データと、から得られる広狭2つの画像データセットと、
前記と同一の位置から前記構造物の一部とは異なる部分を撮影することで得られる他の部分画像データと、当該部分画像データと対応する他の詳細画像データとから得られる他の広狭2つの画像データセットと、
を前記画像処理システムに入力することで、
前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得るステップと、
2)目視にて発見した構造物の損傷部分を特定部分と判断し、前記と同一の位置から前記撮影装置によって構造物の当該特定部分を別途撮影した複数の特定部分詳細画像データを前記画像処理システムに入力することで、
当該特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得るステップと、
からなることを特徴とする画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法。 - 前記撮影装置におけるレーザーポインタは、4個であり、それらの各レーザーポインタは、前記カメラの光軸と平行に配置されており、かつ、前記詳細画像データの対角線上の四隅部分と対応する位置に照射点を得られるようにレーザー光を発することができるものであることを特徴とする請求項8に記載の画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法。
- 前記請求項8に記載されている画像処理システムを用いて橋梁などの構造物を効率的に検査する方法をコンピュータ、タブレット、携帯電話などのデータ処理装置にて実行する際に使用することができるプログラムであって、
前記請求項8に記載されている前記詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、個々の広狭2つの画像データセットにおける部分画像データと詳細画像データの拡大倍率に基づいて部分画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の粗い広域正面画像データを得ることができるとともに、
前記特定部分詳細画像データ中における前記レーザーポインタによる少なくとも3個の照射点から前記カメラから構造物までの距離データ及びカメラの3次元方向での傾きデータを算出し、各特定部分詳細画像データの拡大倍率に基づいて特定部分詳細画像データを複数枚組み合わせて統合し、スケールの尺度が統一された構造物の部分的に詳細化された広域正面画像データを得ることができることを特徴とするプログラム。 - 前記広域正面画像データ中における構造物の損傷部分の候補を自動検出して表示する処理と、
当該損傷部分の候補に対する削除又は修正を受け付ける処理と、
前記損傷部分の候補の削除又は修正の履歴から学習し、次に構造物の損傷部分の候補を自動検出する際に反映させる処理と、
をさらに含むものであることを特徴とする請求項10に記載のプログラム。
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