JP2020119762A - 電子源の安定化方法、電子ビーム装置 - Google Patents

電子源の安定化方法、電子ビーム装置 Download PDF

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Abstract

【課題】気体を導入しないで電界蒸発のみによって、エミッション電流を安定化させる、電子源の安定化方法を提供する。【解決手段】電子ビームを発生する電子源としてLaB6を用い、電子ビームを発生させるときに電子源に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を電子源に印加することにより、電子源を安定化する。【選択図】図2

Description

本発明は、電子ビームを発生する電子源を安定化する、電子源の安定化方法に関する。
また、本発明は、電子源を備えて、電子源から電子ビームを発生する電子ビーム装置に関する。
走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡には、電子ビームを発生する電子源として、例えば、電界放出型電子源が用いられている。
そして、電子顕微鏡の電界放出型電子源として、通常は、タングステン(W)の<310>方位あるいは<111>方位の単結晶が使用されている。
近年、LaBナノワイヤを使用した電子源が報告されている(例えば、特許文献1を参照。)。この電子源は、<100>方位で直径が数十nmのLaBナノワイヤを使用している。
LaBナノワイヤを使用した電子源の模式図を、図8A及び図8Bに示す。
図8Aに示すように、電子源1は、碍子部2に接合されたフィラメント3に、Taティップ4が溶接された構成となっている。
そして、図8Bに示すように、Taティップ4の先端に、LaBナノワイヤ5(直径数十nm、長さ約10μm)が、カーボン蒸着により接着されている。
このLaBナノワイヤを使用した電子源は、従来のタングステン製<310>電界放出型電子源と比較して、輝度が2桁高く(タングステン:10A/cm・sr・kV、LaBナノワイヤ:10A/cm・sr・kV)、エネルギー幅が小さい(タングステン:0.4〜0.5eV、LaBナノワイヤ:0.2eV)、という特徴を有する。
LaBナノワイヤを電子源に使用することにより、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡の高分解能化が期待できる。
従来のタングステン製<310>電界放出型電子源は、エミッション後1時間でエミッション電流が約50%に減衰する。
一方、LaBナノワイヤを使用した電子源は、エミッション電流の安定度が良く、エミッション電流がほぼ一定である。そして、LaBナノワイヤを使用した電子源は、トータルエミッション電流が0.1μAであるが、電子線放出領域が狭いので外乱に影響されにくいことから、エミッション電流が安定であると考えられる。
ところで、電界放出型電子源において、エミッション電流が不安定な時には、フィラメント電流を流し加熱させるフラッシングで、或いは、エミッタティップに数kVの正電圧を印加することによる電界蒸発法で、安定化させることができる。
これらのいずれの方法によっても、エミッタティップの表面を清浄化させて安定なエミッション電流を得ることが可能であることが知られている。
しかしながら、フラッシングは、回数が多いとLaBナノワイヤを加熱させるので、先端径(ナノワイヤのうちの電子ビームが放出される領域の径)が大となり、所望のエミッション電流に対する引出電圧の値を増加させてしまう難点がある。
そこで、電界蒸発法によって、安定化させることが考えられる。
特許第5794598号明細書
表面清浄化のための電界蒸発法は、上記特許文献1にも記載されているように、H,Neの雰囲気であることを必要としていた。これは、例えば、Hの存在下であると、電界蒸発を行うことにより、Hを添加しない場合に必要とされる電界強度よりも小さな(通常60%程度)電界強度で電界蒸発を行うことができるからである。
しかし、超高真空雰囲気である電子源のチャンバ内に各種の気体を導入して処理を行う方法では、導入した気体が処理後に残留気体分子となる。この残留気体分子は、超高真空下でも存在し、LaBナノワイヤティップ先端に吸着して、エミッション電流を不安定化させる要因となる。
即ち、H,Neの雰囲気で電界蒸発法を実施すると、これらの気体がLaBナノワイヤティップ先端に吸着して、エミッション電流を不安定化させる要因となる。
従って、気体を使用しない電界蒸発による安定化方法が望まれる。
本発明は、上述した問題を鑑みて、解決するためになされたものである。その目的は、気体を導入しないで電界蒸発のみによって、LaBナノワイヤティップ先端表面を清浄化し、エミッション電流を安定化させることである。
また、本発明は、上述した安定化を実行できる、電子ビーム装置を提供する。
本発明の電子源の安定化方法は、電子ビームを発生する電子源を安定化する方法であって、電子源としてLaBを用い、電子ビームを発生させるときに電子源に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を電子源に印加するものである。
本発明の電子ビーム装置は、電子ビームを発生する電子源と、電子源に電子ビームを発生させる電圧を印加する電極と、電子ビームを発生させる電圧を電極に供給する回路と、電子ビームを発生させるときに電子源に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を電極に供給する回路とが、切り替え可能に構成された切り替え機構を備え、電子源としてLaBが用いられ、切り替え機構により電子源に印加される電圧が切り替えられるものである。
上述した本発明の電子源の安定化方法によれば、LaBを用いた電子源において、簡便な方法で清浄化して、エミッション電流を安定化することができる。
また、本発明の電子源の安定化方法によれば、気体を導入しないで電界蒸発のみによって電子源を清浄化できるので、電子源に帯電した残留基体分子が吸着することを防ぐことが可能になる。
従って、本発明の電子源の安定化方法によれば、電子源を使用した電子顕微鏡等の電子ビームを発生させる装置において、安定した稼働が可能となる。
上述の本発明の電子ビーム装置によれば、本発明の電子源の安定化方法による安定化を、随時実行することができる。
本発明の安定化方法の実施例でエミッション電流の測定のために使用した実験装置の概略構成図である。 本発明の安定化方法の一実施例で使用した電界蒸発のための装置の概略構成図である。 図2のパルス発生機によって発生させるパルス電圧の形状を示す図である。 A〜D それぞれの電圧値のパルス電圧を印加したときのエミッション電流の時間変化を示す図である。 A〜D それぞれの電圧値のパルス電圧を印加したときの安定度の時間変化を示す図である。 図2のパルス発生機によって発生させるパルス電圧の他の例を示す図である。 本発明の電子ビーム装置の一例の電子顕微鏡の概略構成図である。 A、B LaBナノワイヤを使用した電子源の模式図である。
本発明の電子源の安定化方法は、電子ビームを発生する電子源を安定化する。
本発明の電子源の安定化方法では、電子源として、LaBを用いる。
そして、電子ビームを発生させるとき(エミッション時)に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を電子源に印加する。
このようなパルス電圧を電子源に印加することにより、電界蒸発により、電子源のLaBの先端を清浄化することができる。
本発明に係る電子源は、LaBを用いており、このLaBは例えばナノワイヤ状(直径がnmオーダーのワイヤ状)等の性状とされる。これにより、輝度が高く、微小な電子源を構成することができる。
本発明に係る電子源は、電子顕微鏡等の、電子源から発生する電子ビームを使用する、各種の電子ビーム装置に適用することができる。例えば、電子顕微鏡の冷陰極電界放出型電子源として適用することができる。
エミッション時の電圧とは電界が逆方向の電圧(逆バイアスの電圧)を、パルス電圧ではなく連続した電圧とすると、帯電した残留気体分子が電子源に吸い寄せられるので、好ましくない。
また、連続した電圧とすると、電子源が受ける衝撃が小さくなるため、電界蒸発による清浄化効果が得られにくくなる。
パルス電圧のパルス幅は、残留気体分子が電子源に吸い寄せられないようにするために、なるべく短くする。例えば、2秒以下、好ましくは1秒以下のパルス幅とする。
逆バイアスの電圧(パルス電圧)は、上述したように、エミッション時の電圧の4倍以上の絶対値を有する電圧とする。
逆バイアスの電圧の大きさの上限は、特に限定されない。
ただし、逆バイアスの電圧を大きくし過ぎると、電子源が受ける衝撃が大きくなりすぎて、電子源が破損し易くなる。
電子源の強度は、電子源の寸法(例えば、ナノワイヤの直径や長さ等)によって変わるので、逆バイアスの電圧は、電子源の強度を考慮して、電子源を破損しない程度の範囲とする。
安定化のためのパルス電圧は、所定の間隔をあけて複数回印加することができる。
パルス電圧を複数回印加する場合には、パルスの間隔よりもパルス幅を短くすることが好ましい。
パルス電圧の所定の間隔は、例えば、一定の間隔とすることができる。また、その他の間隔とすることも可能であり、例えば、短い間隔で数回のパルス電圧を印加し、その後やや長い間隔を空けて、次の短い間隔で数回のパルス電圧を印加することを繰り返すことも可能である。
なお、パルス電圧を複数回印加する場合にも、1回印加する場合と同様に、それぞれのパルス電圧のパルス幅を、2秒以下、好ましくは1秒以下とする。
パルス電圧を複数回印加することにより、1回の印加では電子源1のLaBの清浄化がまだ十分ではなかった場合でも、十分に清浄化することが可能になる。
本発明に係る電子源の安定化は、電子源に対して、所定の頻度で実行する。
例えば、所定の使用回数、もしくは、所定の使用日数毎に、安定化を行う。
そして、例えば、1日1回の頻度とする場合には、始業時に1回安定化を行うことが考えられる。
本発明の電子源の安定化方法は、電子源から発生した電子ビームを使用する電子ビーム装置とは別の装置である、安定化用の装置を使用して実行することも可能である。
しかし、電子ビーム装置が安定化用の構成を備えていれば、電子源を電子ビーム装置に配置した状態で、そのまま電子源の安定化を実行することができる。
本発明の電子ビーム装置は、電子ビームを発生する電子源と、この電子源に電子ビームを発生させる電圧を印加する電極を備え、電子源としてLaBが用いられる。
また、本発明の電子ビーム装置は、電子ビームを発生させる電圧を電極に供給する回路(第1の回路)と、第1の回路が供給する電圧と比較して、電界が逆方向であり、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を電極に供給する回路(第2の回路)を備えている。
そして、本発明の電子ビーム装置は、これら第1の回路及び第2の回路が、切り替え可能に構成された切り替え機構を備えており、この切り替え機構により、電子源に印加される電圧が切り替えられる構成である。
本発明の電子ビーム装置によれば、エミッション時の電圧を供給する第1の回路と、エミッション時とは電界が逆方向で絶対値が4倍以上である安定化用のパルス電圧を供給する第2の回路とを、切り替え機構で切り替えることができる。
これにより、電子ビーム装置に電子源を配置したままで、電子源の安定化を実行することができる。また、電子源の安定化を随時行うことが可能になる。
[実施例1]
実際に、LaBナノワイヤから成る電子源の安定化を行って、エミッション電流の変化を調べた。
本実施例において、エミッション電流の測定のために使用した実験装置の概略構成図を、図1に示す。
図1に示す実験装置6は、真空チャンバ7と、真空チャンバ7内にそれぞれ配置された、引出電極10及び蛍光板12を備えている。
引出電極10には、高電圧電源11が接続されている。蛍光板12には、電源13が接続されている。
そして、蛍光板12から見て左上方の真空チャンバ7に、蛍光板12に形成されるエミッションパターンを観測するためのビューポート14が設けられている。
エミッションパターンは、ビューポート14を通して、図示していないCCDカメラで観測される。
そして、実験装置6の真空チャンバ7内に、図8に示したと同様の構成の電子源1を配置する。この電子源1には、フィラメント電流を供給するためのフィラメント電流電源8及びスイッチ9が接続されている。また、フィラメント電流電源8と接地電位との間に、電流計15が接続されている。
図1に示す装置6において、エミッション電流の観測は、以下に説明するようにして行うことができる。
まず、真空チャンバ7の内部を、図示しない真空排気装置により、例えば、10−8Pa台の超高真空に保持する。
次に、スイッチ9を接続して、フィラメント電流電源8から電子源1にフィラメント電流を流し、さらに、引出電極10に高電圧電源11より正の引出電圧を印加することにより、電子源1より電子ビームを放出させる。
電子源1より放出された電子ビームは、蛍光板12に電源13より正の引出電圧を印加した状態で、エミッションパターンとして観測される。
そして、このエミッションパターンを、CCDカメラで観測する。また、エミッション電流を、電流計15によって、トータルエミッション電流として観測する。
次に、本実施例において使用した、電界蒸発のための装置の概略構成図を、図2に示す。
図2に示す装置16の構成は、図1に示した電子ビームを観測するための装置6の構成とほぼ同様である。
ただし、図2に示す装置16では、図1に示した装置6で引出電極10に接続されていた高電圧電源11の代わりに、高電圧電源17とパルス発生機18が設けられている。そして、高電圧電源17は、図1の高電圧電源11とは逆の極性となっている。
即ち、引出電極10に接続されている電源の構成(高電圧電源11、高電圧電源17及びパルス発生機18)を取り替えることにより、図1の装置6の構成と、図2の装置16の構成とを、相互に変えることが可能である。
電子源1のLaBナノワイヤティップの先端の表面を電界蒸発させるためには、ティップに正の電界を印加させることが必要である。
このため、図2に示す装置16では、引出電極10に接続された高電圧電源17により、エミッション時の電圧とは逆方向の電界で、かつエミッション時の電圧の4倍以上(例えば、4〜5倍)の電圧を、電子源1のティップに印加させるように構成する。
高電圧電源17から引出電極10に供給される電圧は、パルス発生機18により、矩形波のパルス電圧として出力される。
図2のパルス発生機18により発生させる、パルス電圧の形状を、図3に示す。
図3に示すパルス電圧は、電圧値E、パルス幅Δtの矩形波となっている。
パルス発生機18により発生させるパルス電圧のパルス幅Δtは、前述したように、例えば、Δt≦2秒、好ましくは、Δt≦1秒とする。そして、少なくとも1回以上のパルスを発生させる。
発生させるパルス電圧の電圧値Eは、高電圧電源17から一定のパルス電圧を供給させるための起動電圧値であれば良い。
ここで、図1に示した装置6の構成で、エミッション電流の時間変化を観測したときに、エミッション電流が不安定であった場合の、電界蒸発による清浄化、及び清浄化後の安定性の確認の方法について説明する。
図1の装置6の構成から図2の装置16の構成に変えて、真空チャンバ7内は超高真空(10−8Pa)の状態で維持する。この状態で、電子源1のLaBナノワイヤティップの先端にパルス電圧を印加することで、電界蒸発を行い、ティップの先端を清浄化させる。
その後、再度図1の装置6の構成に変えて、エミッション電流の時間変化を測定し、エミッション電流の安定性を確認する。
エミッション電流の安定度は、下記の式で示される。
Figure 2020119762
(エミッション電流の時間変化の測定)
実際に作製した電子源に対して、以下に説明する通りに、パルス電圧の印加の前後における、エミッション電流の時間変化を測定した。
測定用の試料として、径が約50nmで長さが約10μmのLaBナノワイヤ5を用意した。
そして、図8に示したように、碍子部2に接合されたフィラメント3に溶接されたTaティップ4の先端に、カーボン蒸着によってLaBナノワイヤ5を接着させて、電子源1を作製した。
まず、電界蒸発処理の前の状態として、パルス電圧を印加していない電子源のエミッション電流の時間変化を測定した。
図1に示した装置6を構成して、この装置6の真空チャンバ7内に、作製した電子源1を配置した。そして、真空チャンバ7の内部を、図示しない真空排気装置により、10−8Pa台の超高真空とした。
次に、この状態で、引出電極10に、高電圧電源11からエミッション電圧を印加して、電子源1から電子ビームを放出させた。なお、エミッション電圧は、エミッション電流が45nA程度となるように、800Vに調整した。
そして、蛍光板12に形成されるエミッションパターンをCCDカメラで観測し、また、電流計15によってエミッション電流を測定した。なお、エミッション電流の測定において、前述した安定度の計算に用いられる、データ個数nを1分間に180個として、エミッション電圧の印加開始から30数分後までの時間変化を測定した。
続いて、電界蒸発処理後の状態として、パルス電圧を印加した後の電子源のエミッション電流の時間変化を測定した。
図2に示した装置16を構成して、この装置16の真空チャンバ7内に、作製した電子源1を配置した。そして、真空チャンバ7の内部を、図示しない真空排気装置により、10−8Pa台の超高真空とした。
次に、引出電極10に、高電圧電源17及びパルス発生機18により、電圧値−1kV、パルス幅1秒のパルス電圧を印加して、電子源1に対して電界蒸発処理を行った。
次に、電子源1と真空チャンバ7内の超高真空を保持した状態で、引出電極10に接続された電源を高電圧電源11に取り替えて、図1に示した装置6を構成した。
次に、この状態で、引出電極10に、高電圧電源11からエミッション電圧を印加して、電子源1から電子ビームを放出させた。なお、エミッション電圧は、エミッション電流が45nA程度となるように調整した。
そして、電界蒸発処理を行っていない試料の測定と同様に、エミッションパターンをCCDカメラで観測し、電流計15によってエミッション電流を測定した。
また、印加するパルス電圧の電圧値を、−2kV、−3kVと変えて、−1kVの場合と同様にして、エミッションパターンの観測とエミッション電流の測定を行った。
測定結果として、エミッション電流の時間変化を、図4A〜図4Dにそれぞれ示す。
図4Aは、処理前の試料の結果を示し、図4Bは−1kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示し、図4Cは−2kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示し、図4Dは−3kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示す。
図4Aより、パルス電圧を印加していない試料では、エミッション電流の変化が大きくなっていることがわかる。また、この試料のエミッションパターンは、開始数分後と30分以降とで大きく変化していた。
図4Bより、−1kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、図4Aに示した試料よりも、エミッション電流の変化が激しくなっている。また、この試料のエミッションパターンは、開始数分後と30分以降とで大きく変化していた。なお、この試料では、エミッション電流を45nA程度となるように調整するために、高電圧電源11から印加する電圧を750V〜820Vの間で変化させる必要が生じていた。
図4Cより、−2kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、図4Aに示した試料や図4Bに示した試料よりも、エミッション電流の変化が大幅に少なくなっている。また、この試料のエミッションパターンは、開始数分後と30分以降とで変化が少なかった。なお、この試料では、高電圧電源11から印加した電圧は745Vであった。
図4Dより、−3kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、図4Cに示した試料よりも、さらにエミッション電流の変化が少なくなっている。また、この試料のエミッションパターンは、開始数分後と30分以降とで変化が少なかった。なお、この試料では、高電圧電源11から印加した電圧は833Vであった。
図4A〜図4Dにそれぞれ示したエミッション電流の時間変化の測定結果から、前述した安定度の式を用いて、安定度の時間変化を求めた。求めた安定度の時間変化を、図5A〜図5Dにそれぞれ示す。
図5Aは、処理前の試料の結果を示し、図5Bは−1kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示し、図5Cは−2kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示し、図5Dは−3kV、1秒のパルス電圧を印加した試料の結果を示す。
図5Aより、パルス電圧を印加していない試料では、安定度が数%〜110%まで大きく変化している。
図5Bより、−1kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、図5Aに示した試料より安定度の変化は小さくなるが、3%〜35%超まで、大きく変化している。
図5Cより、−2kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、安定度の変化が1%弱〜9%となり、図5Aに示した試料や図5Bに示した試料よりも大幅に少なくなっている。
図5Dより、−3kV,1秒のパルス電圧を印加した試料では、一部のピークの期間を除く大部分の期間で、安定度が1%〜2%の範囲にあり、安定度が向上している。即ち、LaBナノワイヤティップの先端の表面を電界蒸発させて清浄化する効果が、十分に得られている。
引出電圧は前述したように800Vであるので、安定度が十分に得られるパルス電圧の電圧値(−3kV)の絶対値は、引出電圧の4倍程度の電圧値であることが分かる。
(変形例)
実施例1では、1個のパルス電圧を印加して電界蒸発を行ったが、2個以上のパルス電圧を印加して電界蒸発を行うことも可能である。
具体的には、例えば、図6に示すように、N個のパルス電圧を印加する。パルス電圧の電圧値Eは、図4に示した実施例1の場合と同様に、エミッション時の電圧の4倍以上である。
パルス幅Tとパルス間隔Tの関係は、T<Tとすることが好ましい。
また、パルス幅Tは、実施例1の1個の場合と同様に、2秒以下、好ましくは1秒以下の短い間隔とする。
N個のパルス電圧により、ティップの表面でN回の電界蒸発を誘発させるので、1個のパルス電圧の印加と比較して、より確実に、電子源を安定化させることができる。
[実施例2]
本発明の電子ビーム装置の一例として、電子顕微鏡の概略構成図を、図7に示す。
図7に示す電子顕微鏡100は、真空チャンバ7内に、電子源1と引出電極10が配置され、電子源1には、8とスイッチ9、エミッション電流を観測する電流計15が接続されている。
これらの構成は、図1に示した装置6や図2に示した装置16と同様になっている。
また、真空チャンバ7の下に、電子顕微鏡で観察する試料21を配置する試料室20が儲けられている。真空チャンバ7の下面には、電子源1から発生した電子ビームが通過する穴が設けられており、この穴を通過した電子ビームが、試料室20内に配置された試料21に照射される。
試料室20内には、図示しないが、電子ビームが照射された試料21からの電子等を検出する検出器、試料21を保持し固定する試料ホルダー、試料21の位置を調整する機構、試料21を搬送して試料室20から出し入れするための機構等が設けられる。
電子顕微鏡100が走査型電子顕微鏡(SEM)である場合には、試料21の斜め上方に、検出器(反射電子検出器、二次電子検出器、等)が設けられる。
電子顕微鏡100が透過型電子顕微鏡(TEM)である場合には、試料21の下方に、検出器が設けられる。
なお、図7に示す電子顕微鏡100では、図1に示した装置6や図2に示した装置16の構成のうち、エミッションパターンの観測のための構成(蛍光板12、電源13、ビユーポート14)は設けていない。
そして、図7に示す電子顕微鏡100では、引出電極10に接続され、引出電極10に電圧を供給する構成に特徴を有している。
即ち、図1の装置6と同様の高電圧電源11(エミッション時の電圧を供給する第1の回路)と、図2の装置16と同様の高電圧電源17及びパルス発生機18(パルス電圧を供給する第2の回路)を、スイッチ19によって切り替える構成としている。
この構成により、高電圧電源11からの電圧で電子ビームを放出させるエミッション過程と、パルス電圧の印加で電子源1に対して電界蒸発を行う安定化過程とを、切り替え機構であるスイッチ19により、切り替えることができる。
従って、電子源1の安定化のための別の装置を使用しなくても、電子顕微鏡100だけで、随時電子源1の安定化を実行することができる。
本発明は、上述した各実施例や変形例の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に規定された範囲内の任意の構成を採りうるものである。
1 電子源、2 碍子部、3 フィラメント、4 Taティップ、5 LaBナノワイヤ、6 エミッション電流測定装置、7 真空チャンバ、8 フィラメント電流電源、9 スイッチ、10 引出電極、11 高電圧電源、12 蛍光板、13 電源、14 ビューポート、15 電流計、16 電界蒸発装置、17 高電圧電源、18 パルス発生機、19 スイッチ、20 試料室、21 試料、100 電子顕微鏡

Claims (4)

  1. 電子ビームを発生する電子源を安定化する方法であって、
    前記電子源としてLaBを用い、
    前記電子ビームを発生させるときに前記電子源に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を前記電子源に印加する
    電子源の安定化方法。
  2. 前記電子源に、前記パルス電圧を所定の間隔をあけて複数回印加する、請求項1に記載の電子源の安定化方法。
  3. 前記パルス電圧のパルス幅が2秒以下である、請求項1又は請求項2に記載の電子源の安定化方法。
  4. 電子ビームを発生する電子源と、
    前記電子源に前記電子ビームを発生させる電圧を印加する電極と、
    前記電子ビームを発生させる電圧を前記電極に供給する回路と、前記電子ビームを発生させるときに前記電子源に印加する電圧と比較して、電界が逆方向であって、電圧の絶対値が4倍以上であるパルス電圧を前記電極に供給する回路とが、切り替え可能に構成された切り替え機構を備え、
    前記電子源としてLaBが用いられ、
    前記切り替え機構により、前記電子源に印加される電圧が切り替えられる
    電子ビーム装置。
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