本発明は、河川や海等の水中に設けた橋脚等の水中構造物の修理・補強等の改修を行う際に構築する仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーに関する。
従来、河川や海等の水中に設けた橋脚等の水中構造物は、経年劣化、台風、地震等により損傷等が生じた場合、コンクリート巻立やアラミド繊維巻付等の方法により改修される。その際、作業スペースを確保する為、水中構造物の周りを水のないドライ環境にする必要がある。このドライ環境は、水中構造物の周りに所定の間隔をおいて筒状の仮締切構造体を構築し、その内側から水を排除することによって作られる。一般的に、この仮締切構造体の構築は、潜水士の水中作業により、水中構造物の上下および周方向に相互に連結可能なライナープレート等の複数の部材を水中構造物の周りに筒状に配置し、ボルト・ナットを用いて連結して行なわれる。(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
すなわち、仮締切構造体の施工において、主要構成部材であるライナープレート等の部材を連結する際、連結部からの水漏れを少なくするため、それらの間に止水用パッキンを介在させ、ボルト・ナットで強く締め付ける必要があった。水中で連結作業を行なう状況では、潜水士は不安定な体勢で作業を行なわなければならないため、止水用パッキンを組み付ける際、傷つけるなどして水漏れが生じやすいという問題があった。また、ボルト・ナットを強く締め付けるため、ライナープレートが変形し再使用しにくくなるという問題があった。
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、簡単な作業で水漏れを防止でき、主要構成部材であるライナープレートを再使用しやすくできる仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーを提供することを目的としている。
本発明の第1の側面により提供される仮締切構造体は、水中構造物の周りに構築される仮締切構造体であって、前記水中構造物の周りに所定の高さになるように構築される仮締切構造体本体と、前記仮締切構造体本体の外側面を覆うように設けられ、前記仮締切構造体本体の内部への漏水を防止する防水カバーと、を備えることを特徴としている。
好ましくは、前記防水カバーは、前記仮締切構造体本体の前記外側面の周方向に沿って配置される少なくとも1の防水シートと、前記少なくとも1の防水シートが前記外側面に配置される際に前記少なくとも1の防水シートのシート端部間に形成される繋ぎ目と、前記繋ぎ目からの漏水を防止するように前記繋ぎ目を接合する漏水防止接合手段と、を含む構成とされている。前記防水カバーが、1枚の防水シートで形成される場合、前記繋ぎ目は、前記1枚の防水シート内のシート端部間に形成される。前記防水カバーが、複数の防水シートで形成される場合、前記繋ぎ目は、前記複数の防水シートの内、隣り合う防水シートのシート端部間に形成される。前記繋ぎ目は、前記少なくとも1の防水シートのシート端部同士を突き合わせた状態で形成されるもの、前記シート端部同士を重ね合わせた状態で形成されるもの、前記シート端部同士が近接して隙間が生じた状態で形成されるものを含む。
好ましくは、前記漏水防止接合手段は、前記繋ぎ目に設けられた防水ファスナーであり、
前記防水ファスナーは、閉じた状態で前記繋ぎ目を接合すると共に防水状態とし、開いた状態で前記繋ぎ目を分離した状態とする構成とされている。
好ましくは、前記仮締切構造体本体は、前記少なくとも1の防水シートを取り付ける為の防水シート取り付け部、を含む構成とされている。
好ましくは、前記防水シート取り付け部は、前記仮締切構造体本体の下部に設けられており、前記防水カバーは、前記少なくとも1の防水シートの下部が前記防水シート取り付け部に取り付けられ、前記少なくとも1の防水シートの上部が上方に引き上げられ、且つ前記防水ファスナーが上方に引き上げられ閉じた状態で、前記仮締切構造体本体の前記外側面を覆っている構成とされている。
好ましくは、前記仮締切構造体本体は、前記防水シート取り付け部の上方に設けられ、前記少なくとも1の防水シートの上部を、前記防水ファスナーが下方に引き下げられ開いた状態で、ロール状に巻き取られた巻き取り体又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として、一時的に固定する仮固定部、を含む構成とされている。
好ましくは、前記仮締切構造体本体の前記外側面と前記防水カバーの間に空間を含み、前記空間には充填材が充填されている構成とされている。
好ましくは、前記充填材は、ヤシ繊維マットである構成とされている。
好ましくは、前記防水カバーは、樹脂コーティング層を含む構成とされている。
好ましくは、前記樹脂コーティング層は、ポリウレア樹脂を含む構成とされている。
本発明の第2の側面により提供される仮締切構造体の施工方法は、水中構造物の周りに構築される仮締切構造体の施工方法であって、前記仮締切構造体は、仮締切構造体本体と、前記仮締切構造体本体の内部への漏水を防止する為の防水カバーと、を備え、前記水中構造物の周りに前記仮締切構造体本体を所定の高さになるように構築する構築工程と、前記仮締切構造体本体の外側面を前記防水カバーで覆う覆設工程と、を有することを特徴としている。
好ましくは、前記防水カバーは、少なくとも1の防水シートと、前記少なくとも1の防水シートのシート端部間に形成された繋ぎ目からの漏水を防止するように接合する為の漏水防止接合手段と、を備え、前記覆設工程は、前記防水カバーによって前記外側面を覆う際に前記少なくとも1の防水シートの前記シート端部間に前記繋ぎ目を形成するように、前記少なくとも1の防水シートを前記仮締切構造体本体の周方向に沿って配置する配置工程と、前記配置工程で形成された前記繋ぎ目を前記漏水防止接合手段により接合する接合工程と、を有する構成とされている。
好ましくは、前記漏水防止接合手段は、前記繋ぎ目に設けられる防水ファスナーであり、
前記接合工程において、前記繋ぎ目の接合は、前記防水ファスナーを閉じることにより行う構成とされている。
好ましくは、前記配置工程は、前記少なくとも1の防水シートを前記仮締切構造体本体に設けられた防水シート取り付け部に取り付ける防水シート取り付け工程、を有する構成とされている。
好ましくは、前記防水シート取り付け部は、前記仮締切構造体本体の下部に設けられており、前記防水シート取り付け工程において、前記少なくとも1の防水シートの下部が防水シート取り付け部に取り付けられ、前記接合工程において、前記繋ぎ目の接合は、前記少なくとも1の防水シートを上方に引き上げると共に前記防水ファスナーを上方に引き上げて閉じることにより行なう構成とされている。
好ましくは、前記防水シート取り付け工程は、前記防水ファスナーを下方に下げることにより開いた状態で、前記少なくとも1の防水シートの上部を、ロール状に巻き取られた巻き取り体又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として前記防水シート取り付け部の上方に設けた仮固定部に一時的に固定する仮固定工程、を有する構成とされている。
好ましくは、前記接合工程は、前記仮締切構造体本体が前記所定の高さに達した後に行い、前記接合工程において、前記防水シートの上方への引き上げは、前記巻き取り体又は前記折り畳み部を解きながら行う構成とされている。
好ましくは、前記仮締切構造体本体は、前記水中構造体の周りに組み立てられる組み立て中間体、を備え、前記構築工程は、前記水中構造物を取り囲むように形成され、その上で前記組み立て中間体を組み立てるのに使用される作業プラットフォームを所定の高さに設置する作業プラットフォーム設置工程、を有し、前記作業プラットフォームは、前記水中構造体の周りで縮小状態と拡大状態とを変更可能に取ることができ、それに基づき、前記組み立て中間体を組み立て可能で且つ前記組み立て中間体を保持可能な第1の状態と、前記組み立て中間体を通過させ水中に降下させ得る第2の状態とを取ることができるように構成され、前記構築工程は、前記作業プラットフォームを前記第1の状態とし、前記組み立て中間体を組み立てる組み立て工程と、前記作業フロートから前記組み立て中間体を一旦所定の高さまで吊り上げ、前記フロートプラットフォームを前記第2の状態とし、前記組み立て中間体を水中に降下させる降下工程と、水中に降下させた前記組み立て中間体を前記水中構造体の基礎に据付ける据付け工程と、前記組み立て工程と前記降下工程とを繰り返し行うことにより、前記仮締切構造体本体が前記所定の高さになるまで前記組み立て中間体を積層する積層工程と、を更に有する構成とされている。
好ましくは、前記組み立て工程は、前記組み立て中間体が前記仮締切構造体本体の下部に相当する1段目である場合に、前記防水シート取り付け部を設ける防水シート取り付け部設置工程、を有し、前記防水シート取り付け工程は、前記第1の状態で、前記作業プラットフォーム上で行う構成とされている。
本発明の第3の側面により提供される防水カバーは、本発明の第2の側面により提供される仮締切構造体の施工方法に使用される防水カバーであって、前記仮締切構造体本体の前記外側面を覆うことを特徴としている。
好ましくは、前記防水カバーは、少なくとも1の防水シートと、前記少なくとも1の防水シートのシート端部間に形成された繋ぎ目からの漏水を防止するように接合する為の漏水防止接合手段と、を備える構成とされている。
好ましくは、前記漏水防止接合手段は、前記繋ぎ目に設けられる防水ファスナーである構成とされている。
本発明によれば、簡単な作業で水漏れを防止でき、主要構成部材であるライナープレートの再使用がしやすい仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーを提供することができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
本発明の第1の実施形態に係るフロートプラットフォームを示す斜視図である。
図1のII−II線に沿う断面図である。
図1に示すフロートプラットフォームが拡大した状態を示す斜視図である。
図3のIV−IV線に沿う断面図である。
図5(A)は、図1のフロートプラットフォームを構成するフロート分割体の一例を示す斜視図である。図5(B)は、図5(A)のVB部の詳細を示す分解正面図及び分解平面図である。
図6(A)は、図1のフロートプラットフォームに含まれる隣り合う二つのフロート分割体の連結部を示す斜視図である。図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線に沿う断面図である。図6(C)は、図6(B)に示す二つのフロート分割体の連結部が開いた状態を示す断面図である。
図7は、図1に示すフロートプラットフォームを用いて構築した仮締切構造体の一例を示す斜視図である。
図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図7のIX−IX線に沿う断面図である。
図10(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれるライナープレートの一例を示す斜視図である。図10(B)は、図10(A)のXB−XB線に沿う断面図である。
図11(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる左右のライナープレートの連結部を示す平面視における分解断面図である。図11(B)は、同じく、上下のライナープレートの連結部を示す左側方から見た分解断面図である。図11(C)は、同じく、上下左右のライナープレートの連結部を示す仮締切構造体の内側から見た分解正面図である。
図12(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる防水シートを取り付けるのに使用される補強部材の一例を示す斜視図である。図12(B)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる上下方向に積層されたライナープレートの所定の層数毎に配置される補強部材の一例を示す斜視図である。
図13(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれるライナープレートと図12(A)に示す補強部材との連結部を示す左側方から見た分解断面図である。図13(B)は、図12(A)に示す補強部材の添え板を示す正面図である。図13(C)は、図12(A)に示す補強部材同士の連結部を示す正面図である。図13(D)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる上下のライナープレートと図12(A)に示す補強部材との連結部を示す左側方から見た分解断面図である。
図7に示す仮締切構造体に含まれる防水カバーの一例を示す分解正面図である。
図7に示す仮締切構造体を構築する作業の一例を説明するための図であり、橋脚上部への「吊り足場」及び橋脚への「フロートプラットフォーム」の設置状態を示す正面図である。
同じく、フロートプラットフォーム上における仮締切構造体の構築に用いる組み立て中間体(1段目)の組み立て状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)に防水カバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
同じく、図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を一旦吊り上げた状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を降下させる状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を橋脚基礎に据付けた状態を示す斜視図である。
同じく、図21のXXII−XXII線に沿う断面図である。
同じく、フロートプラットフォーム上における組み立て中間体(2段目)の組み立て状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)に連結固定した組み立て中間体(2段目)に組み立て中間体(3段目)を積層する状態を示す斜視図である。
同じく、仮締切構造体本体の外側面を防水カバーで覆い、内側に支保杆(切梁及び縦梁)を設ける状態を示す斜視図である。
同じく、仮締切構造体内の水抜きを行って、ドライ環境下の作業スペースを確保する状態を示す斜視図である。
本発明の第2の実施形態に係る仮締切構造体を示す一部拡大断面図である。
本発明の第3の実施形態に係るフロートプラットフォームの一例を示す平面図である。
図28に示すフロートプラットフォームを構成するフロート分割体の一例を示す斜視図である。
図29に示すフロート分割体に含まれる湾曲形状生成スペーサーの一例を示す斜視図である。
図31(A)は、図30に示す湾曲形状生成スペーサーの一つの状態を示す平面図である。図31(B)は、図30に示す湾曲形状生成スペーサーの他の状態を示す平面図である。
図31(B)に示す湾曲形状生成スペーサーを使用したフロートプラットフォームの一例を示す平面図である。
本発明の第4の実施形態に係る湾曲形状生成スペーサーの一例を示す斜視図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
<第1の実施形態>
[フロートプラットフォーム]
本発明の実施形態においては、フロートプラットフォームが使用される。このフロートプラットフォームは、河川等の水中に設けた橋脚等の水中構造物の修理・補強等の改修を行う際に構築する仮締切構造体の施工に使用され、具体的には、その上で、後述する仮締切構造体の組み立て中間体が組み立てられる。図1〜図4に示すように、フロートプラットフォームFP1は、水面W上に浮くように設計されており、例えば、橋梁1の橋脚10の周囲を取り囲むように配置される。橋脚10は、本発明でいう水中構造物の一例に相当する。フロートプラットフォームFP1は、仮締切構造体7の組み立て中間体70を水上で組み立て可能で且つ保持可能な縮小状態(図1及び図2参照)と、仮締切構造体7の組み立て中間体70を通過させ且つ水中に降下可能な拡大状態(図3及び図4参照)とを相互に変更可能に取ることができるように構成されている。すなわち、縮小状態が本発明でいう第1の状態に相当し、拡大状態が本発明でいう第2の状態に相当する。図1〜図4に示すように、フロートプラットフォームFP1は、作業フロート2、通路フロート3、及び位置決めスペーサー4を具備している。フロートプラットフォームFP1は、その上面が水面W上に突出していることが仮締切構造体7の施工上望ましいが、若干(20cm程度)沈んでいてもよい。フロートプラットフォームFP1は、本発明でいう作業プラットフォームの一例に相当する。
作業フロート2は、フロートプラットフォームFP1の主たる構成要素である。実質的には、作業フロート2が、一体性を保ちつつ、縮小状態と、拡大状態とを相互に変更可能に取ることができる。図1〜図4に示すように、この作業フロート2は、フロート分割体5及びスライド機構6を具備しており、フロート分割体5がスライド機構6により連結されることにより、橋脚10の周囲を取り囲んでいる。
図1〜図4に示すように、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)は、複数台(本実施形態では4台)のフロート分割体5を備えている。図1〜図4、及び図5(A)に示すように、個々のフロート分割体5は、平面視において矩形形状で、直方体形状を有する矩形フロートユニット50と、平面視において湾曲形状を有する湾曲フロートユニット50Aとを含んでいる。矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aは、作業フロート2に浮力を付与する。矩形フロートユニット50は、フロートユニットとして標準的な形状である。組み立て中間体70は、橋脚10の断面形状に合わせて、少なくとも一部に湾曲形状を含む。湾曲フロートユニット50Aの湾曲形状は、組み立て中間体70の湾曲形状に合わせたものである。
図5(A)及び図5(B)に示すように、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aは、L字鋼及び平鋼により形成された籠状物であり、二層構造を有している。二層構造の上層51は、後述するスライド機構6を収容可能に形成されている。下層52は、発泡スチロール53を収容している。発泡スチロール53は、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aに浮力を付与するためのものであり、トラックシートに用いられるエステル帆布に包まれている。なお、フロートプラットフォームFP1を形成するフロート分割体5の数は4台に限られず、2台、3台、5台、6台、7台、8台、9台、又はそれ以上としてもよい。また、ここで矩形とは、長方形や正方形等の四角形を意味するものであるが、略矩形のものを含む。例えば、隅部が丸みを帯びていてもよいし、面取りされたものでもよい。矩形を構成する辺の一部又は全部が曲がった辺であってもよい。矩形が若干変形し、台形や平行四辺形の形状になっているものであってもよい。
図5(A)に示すように、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aの上面には、作業板として木製足場板54が張られている。木製足場板54は、フロート分割体5の上面を平面状にし、フロートプラットフォームFP1上での作業を容易なものとする。なお、作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
図5(A)に示すように、フロート分割体5は、直線部55と湾曲形状部56とを含んでいる。直線部55は、直方体形状を有する矩形フロートユニット50を連結して製作され、連結する矩形フロートユニット50の数により長さを調節可能である。湾曲形状部56は、現場寸法に合わせて、平面視において湾曲形状を有する湾曲フロートユニット50Aを組み合わせて製作される。図5(B)に示すように、矩形フロートユニット50は端部50aにボルト取付け穴50bを有している。フロート分割体5は、矩形フロートユニット50同士をボルト50cとナット50dで連結して製作される。湾曲フロートユニット50Aもまた端部50aにボルト取付け穴50bを有している。湾曲フロートユニット50A同士、矩形フロートユニット50と湾曲フロートユニット50Aもまた同様に連結される。フロート分割体5は、直線部55と湾曲形状部56の両方を含んでいるものに限られず、直線部55のみ又は湾曲形状部56のみとしてもよいし、L字形状、コの字形状としてもよい。
図6(A)〜図6(C)に示すように、隣り合う2台のフロート分割体5は、スライド機構6により連結されている。図6(A)に示すように、スライド機構6は、矩形フロートユニット50の二層構造の上層51に収容されている。図6(B)及び図6(C)に示すように、スライド機構6は、隣り合うフロート分割体5同士を相対的にスライド移動させるためのもので、スライドパイプ60とスライドバー61とを具備し、スライドバー61がスライドパイプ60に挿入され、互いにスライド可能な状態で一体化されたものである。スライド機構6は、隣り合うフロート分割体5同士の連結部20につき2個設けられている。フロートプラットフォームFP1の組み立てに際し、スライドパイプ60は互いに隣接する一方のフロート分割体5に取付け具62を用いてボルト63により固定され、スライドバー61は他方のフロート分割体5に取付け具64を用いてボルト63により固定される。これにより、隣り合う2台のフロート分割体5は、互いにスライド移動可能となる。スライド機構6は、毎回同じ軌道に沿ってフロート分割体5をスライド移動させる。このスライド移動により、隣り合うフロート分割体5は、互いに離合する。離合により、作業フロート2は、一体性を保ちつつ、縮小状態と拡大状態との間で相互変換する。なお、スライド機構6は、本発明でいう伸縮連結手段の一例に相当する。また、スライド機構6は、湾曲フロートユニット50Aの上層51に収容されてもよい。
図6(B)に示すように、スライドバー61がスライドパイプ60に矢印N1で示す方向にスライドし深く挿入された状態となると、隣り合う2台のフロート分割体5は、それぞれ相対的に矢印N1及び矢印N2で示す方向にスライド移動する結果、近接した状態となり、連結部20は閉じた状態となる。図6(C)に示すように、スライドバー61が矢印N9で示す方向にスライドしスライドパイプ60に浅く挿入された状態になると、2台のフロート分割体5は、それぞれ相対的に矢印N9及び矢印N10で示す方向にスライド移動する結果、離れた状態となり、連結部20は開いた状態となる。このように、隣り合う2台のフロート分割体5は相対的なスライド移動により互いに近接した状態になったり、離れた状態になったりすることができる。
図6(B)及び図6(C)に示すように、スライド機構6は、ストッパ機構65を備えている。ストッパ機構65は、隣り合う2台のフロート分割体5同士が分離することを防止するためのものであり、スライドバー61の先端に設けられた当接板65aとスライドパイプ60のパイプ端部65bとから構成されている。連結部20において、隣り合うフロート分割体5が、矢印N9および矢印N10で示す方向に、それらの間隔が大きくなるように相対的にスライド移動した場合、当接板65aがパイプ端部65bに当接してスライド移動が停止する。
図1及び図2に示すように、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)は、4箇所に連結部20を備えている。これらの連結部20には、それぞれスライド機構6が設けられている。それぞれのフロート分割体5を先ず矢印N1、N2及び矢印N5、N6で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N1と矢印N6とは同方向、矢印N2と矢印N5とは同方向、矢印N1と矢印N2とは対向方向、矢印N5と矢印N6とは対向方向、以下同様)、次に矢印N3、N4及び矢印N7、N8で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N3と矢印N8とは同方向、矢印N4と矢印N7とは同方向、矢印N3と矢印N4とは対向方向、矢印N7と矢印N8とは対向方向、以下同様)、連結部20の間隔を小さくすると、隣接するフロート分割体5は近接し、作業フロート2は閉じて縮小した状態となる(矢印N1、N2、N5、N6と矢印N3、N4、N7、N8とは互いに交差する方向(直角を含む)、以下同様)。これにより、フロートプラットフォームFP1は、その上で仮締切構造体7の組み立て中間体70を組み立て、保持可能な状態となる。
一方で、図3及び図4に示すように、連結部20において、それぞれのフロート分割体5を先ず矢印N9、N10及び矢印N13、N14で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N9と矢印N14とは同方向、矢印N10と矢印N13とは同方向、矢印N9と矢印N10とは逆方向、矢印N13と矢印N14とは逆方向、以下同様)、次に矢印N11、N12及び矢印N15、N16で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N11と矢印N16とは同方向、矢印N12と矢印N15とは同方向、矢印N11と矢印N12とは逆方向、矢印N15と矢印N16とは逆方向、以下同様)、連結部20の間隔を大きくすると、隣接するフロート分割体5は互いに離れ、作業フロート2は開いて拡大した状態となる(矢印N9、N10、N13、N14と矢印N11、N12、N15、N16とは互いに交差する方向(直角を含む)、以下同様)。これにより、位置決めスペーサー4と作業フロート2(各フロート分割体5)との間に隙間21ができる。その結果、作業フロート2は、組み立て中間体70を通過させ、水中に降下させることが可能となる。なお、フロート分割体5のスライド移動及び作業フロート2の位置決めは、例えば作業台船(図示略、以下同様)を用いて行なわれる。
図1〜図4に示すように、通路フロート3は、作業フロート2の連結部20の外側に配置されており、ロープ(図示略、以下同様)等によりフロート分割体5に繋げられており、作業フロート2が拡大した際に作業者が移動するための通路として使用される。通路フロート3もまた、平面視において矩形形状をした複数のフロートユニット30が連結したものである。フロートユニット30は、L字鋼及び平鋼により形成された籠状物であり、内部にエステル帆布に包まれた発泡スチロール31を収容している。図4に示すように、作業フロート2が拡大した状態で、作業フロート2の外側2aは通路フロート3の内側3aに接している。
位置決めスペーサー4は、ゴム製の防舷材を橋脚10の壁面にアンカーボルト(図示略)で固定したものであり、仮締切構造体7の組み立て中間体70を組み立てる際に作業フロート2を位置決めし、揺動を抑制するためのものである。図2に示すように、フロートプラットフォームFP1が縮小した状態で、作業フロート2の内側2aは位置決めスペーサー4の外側4aに接している。
[仮締切構造体]
図7、図8、及び図9に、本実施形態により構築された仮締切構造体7の一例を示す。仮締切構造体7は、橋脚基礎11上に設置される。仮締切構造体7の高さは、その上部が水面Wから突出するように設定される。すなわち、仮締切構造体7の高さは、河川や海等の水深に基づいて決められる。仮締切構造体7の内側に支保杆(切梁71及び縦梁72)が適宜設けられている。仮締切構造体7は、仮締切構造体本体7aと防水カバー7bとを具備している。仮締切構造体本体7aは、所定曲率又は直線形状を有するライナープレート73と、上下のライナープレート73を連結する補強部材74,74Aとを具備している。補強部材74,74Aもまた所定曲率又は直線形状を有するものが用いられる。図8及び図9に示すように、仮締切構造体7内の底部の周囲に止水用のコンクリート75が打設されている。なお、仮締切構造体7は、橋脚10の全周を取り囲むものに限らず、橋脚10の一部を取り囲むものであってもよい。
図7、図8、及び図9に示すように、防水カバー7bは、仮締切構造体本体7aの外側面7cの周方向に沿って配置される複数の防水シート78と、複数の防水シート78が外側面7cに配置される際にそれぞれの防水シート78の左右のシート端部78d間に形成される繋ぎ目78aと、繋ぎ目78aからの漏水を防止するように繋ぎ目78aを接合する防水ファスナー79を具備している。防水ファスナー79は、本発明でいう漏水防止接合手段の一例に相当する。防水ファスナー79は、閉じた状態で繋ぎ目78aを接合すると共に防水状態とし、開いた状態で繋ぎ目78aを分離した状態とする。仮締切構造体本体7aは、防水シート78を取り付ける為の補強部材74を具備している。補強部材74は、本発明でいう防水シート取り付け部の一例に相当する。補強部材74は、仮締切構造体本体7aの下部(1段目の組み立て中間体70)に設けられている。防水カバー7bは、防水シート78の下部78bが補強部材74に取り付けられ、防水シート78の上部78eが上方に引き上げられ、且つ防水ファスナー79が上方に引き上げられ閉じた状態で、仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆っている。
図10(A)及び図10(B)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有するライナープレート73の一例を示す。ライナープレート73は、例えば鋼板製である。図10(A)に示すように、ライナープレート73の上下左右の端部フランジ73aには、ボルトを取り付けるためのボルト取り付け穴73bが設けられている。図10(B)に示すように、ライナープレート73の断面は波形形状である。なお、仮締切構造体7の施工には、曲線形状だけでなく直線形状のライナープレート73も使用される。
図11(A)及び図11(C)に示すように、各ライナープレート73の周方向における連結は、その左右の端部フランジ73aを、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ボルト73c・ナット73d止めすることによって行われる。また、各ライナープレート73の上下方向における連結は、図11(B)及び図11(C)に示すように、ライナープレート73の上下の端部フランジ73a同士を、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ボルト73c・ナット73d止めすることにより行われる。なお、図11(C)に示すように、ライナープレート73同士の周方向の継ぎ目は、必ずしも上下方向で一致させる必要はない。また、各ライナープレート73間には、念のため、ゴム製の止水用パッキンを介在させてもよい。
図12(A)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有する補強部材74を示す。補強部材74は、H形鋼からなり、そのウェブ74bにボルトを取り付けるためのボルト取り付け穴74cが設けられている。また、補強部材74のフランジ74dには、後述する添え板77を取り付けるためのボルト取り付け穴74eが設けられている。また、フランジ74dには、後述する防水シート78を取り付けるためのボルト取り付け穴74fが設けられている。なお、仮締切構造体7の施工には、曲線形状だけでなく直線形状を有する補強部材74も使用される。
図12(B)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有する補強部材74Aを示す。補強部材74Aは、フランジ74dに後述する防水シート78を取り付けるためのボルト取り付け穴74fを有していない点で上記した補強部材74と相違している。本実施形態においては、防水シート78を取り付けない箇所には、この補強部材74Aを使用する。もちろん、これらの箇所に補強部材74を使用することもできる。
図13(A)に示すように、補強部材74は、上下方向に積層されたライナープレート73の3積層(後述する組み立て中間体70)の下から1層目と2層目のライナープレート73の端部フランジ73aの間に配置され、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ライナープレート73とボルト73c・ナット73d止めされている。補強部材74の周方向の継ぎ目においては、図13(B)に示す添え板77が宛がわれる。添え板77は、ボルト73cを取り付けるためのボルト取り付け穴77aを有しており、図13(C)に示すように、ボルト取り付け穴77aがボルト取り付け穴74eに合うように宛がわれ、図13(D)に示すように、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、補強部材74にボルト73c・ナット73d止めされている。なお、念のため、各補強部材74の突き当たりウェブ端面74g間又は補強部材74のウェブ74bとライナープレート73の端部フランジ73aとの間にゴム製の止水用パッキンを介在させてもよい。また、一方で、補強部材74Aは、上下方向に積層されたライナープレート73の3積層(後述する組み立て中間体70,70A)毎にライナープレート73の上下の端部フランジ73aの間に配置され、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ライナープレート73とボルト73c・ナット73d止めされる。補強部材74Aもまた、補強部材74と同様にして、仮締切構造体本体7aに取り付けることができる。
図7、図8、及び図9に示すように、本実施形態の仮締切構造体7の施工において、組み立て中間体70,70Aは、ライナープレート73を橋脚10の周方向に連結した環状体を3積層したものである。上下の組み立て中間体70と組み立て中間体70Aとの間には、補強部材74Aが配置される。組み立て中間体70は、仮締切構造体本体7aの1段目を形成する。組み立て中間体70Aは、仮締切構造体本体7aの2段目、3段目を形成する。この組み立て中間体70,70Aの高さ(すなわち環状体の積層数)は、下記に説明する降下作業が円滑に行えるとともに、フロートプラットフォームFP1上の作業性等を考慮して適宜に決定される。例えば、ライナープレート73の高さ(図10(A)の上下方向の高さ)が500mmであれば、作業者の作業のしやすさに基づき3積層(1.5m)とする。
なお、組み立て中間体70,70Aにおけるライナープレート73の積層数は3積層に限られず、1層、2層、4層、5層、6層、又はそれ以上としてもよい。また、1段目の組み立て中間体70において、下から一層目と二層目のライナープレート73の間に補強部材74が配置される。後述する防水カバー7bを取り付けるためである。もちろん、補強部材74は、補強部材74Aの代わりに、組み立て中間体70,70Aの間にも使用可能である。また、仮締切構造体7は、水深により適切な段数の組み立て中間体70,70Aが積層されたものとなる(本実施形態では3段)。仮締切構造体7は、1段の組み立て中間体70により構築してもよいし、2段、4段、5段、6段、又はそれ以上の組み立て中間体70,70Aにより構築してもよい。
上記したように、防水カバー7bは、防水シート78と防水ファスナー79とを具備している。防水シート78は、仮締切構造体7の外部の水が内部に漏れ入るのを防止するためのものである。防水シート78は、例えば、エステル帆布からなるトラックシートを材料として例えば長方形に形成される。防水シート78の外表面には、保護の為、樹脂塗装により樹脂コーティング層が形成されている。塗装には、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリオレフィン樹脂等を主成分とする塗料が用いられる。ポリウレア樹脂を主成分とする塗料として、例えば、LINE−X(登録商標)が挙げられる。
図14に示すように、防水シート78の下部78bには、組み立て中間体70の補強部材74に取り付けるためのボルト取り付け穴78cが形成されている。仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うために、複数の防水シート78が、周方向に並べて配置される。周方向に並べて配置されることで、隣り合う防水シート78の左右方向のシート端部78d間に繋ぎ目78aが形成される。繋ぎ目78aは、防水シート78のシート端部78d同士を突き合わせた状態のもの、シート端部78d同士を重ね合わせた状態のもの、シート端部78d同士が近接して隙間が生じた状態のものを含む。
なお、防水カバー7bは、1枚の防水シート78により形成されてもよく、この場合、繋ぎ目78aは、1枚の防水シート78内の左右のシート端部78d間に形成される。この場合も、繋ぎ目78aは、防水シート78のシート端部78d同士を突き合わせた状態のもの、シート端部78d同士を重ね合わせた状態のもの、シート端部78d同士が近接して隙間が生じた状態のものを含む。
図14に示すように、防水ファスナー79は、複数の防水シート78の繋ぎ目78aに配置され、仮締切構造体7の外部の水が内部に漏れ入るのを防止しつつ、複数の防水シート78を接合するためのものである。防水ファスナー79の取り付け箇所数は仮締切構造体本体7aの大きさにより決定する。防水ファスナー79は、テープ79aに取り付けられた互いに噛み合う一対のエレメント79b,79cと、一対のエレメント79b,79c間に配置され上下に動かすことにより一対のエレメント79b,79cを噛み合わせたり外したりするスライダー79dを具備している。
テープ79aは、例えば、ポリエステル基布の表裏に塩化ビニル(PVC)、クロロプレン合成ゴム(CR)、又はポリウレタン(PU)をコーティングしたものである。エレメント79b,79cは、洋白製である。スライダー79dは、アルミブロンズ製である。一対のエレメント79b,79cは、隣り合う防水シート78の左右のシート端部78dにテープ79aを介して取り付けられる。エレメント79b,79cは、アウターエレメントとアウターエレメントの内部に設けられたインナーエレメントとからなり、スライダー79dを操作することによりインナーエレメントが噛み合い防水ファスナー79が閉まる。一対のエレメント79b,79cは上止め及び下止めされておらず、防水シート78は互いに分離して取扱いできるようになっている。なお、繋ぎ目78aが、シート端部78d同士が重なり合った状態のものである場合には、防水ファスナー79は、重なり合った部分の所定の箇所に取り付けられる。
防水シート78は、仮締切構造体本体7aに取り付けられる際、下部78bにおいてスライダー79dによって繋がれる。この状態では、隣り合う防水シート78の上部78eは繋がれていないので、この上部78eを丸めてロール状にしたり、蛇腹状に折り畳んだりしてコンパクト化できる。もちろん、仮締切構造体本体7aに取り付ける前に、一対のエレメント79b,79cを予め下止めし、複数の防水シート78が当初から繋がったものを製作してもよい。また、上記したように、防水カバー7bは、一枚の防水シート78を仮締切構造体本体7aの外面に巻き付けて形成してもよく、その場合は、防水シート78の左右のシート端部78dに防水ファスナー79を取り付け、環状に繋がれる。この場合も、繋ぎ目78aが、シート端部78d同士が重なり合った状態のものである場合には、防水ファスナー79は、重なり合った部分の所定の箇所に取り付けられる。防水ファスナー79として、具体的には例えばYKK社製PROSEAL(登録商標)が使用される。
[仮締切構造体の施工方法]
次に、本実施形態のフロートプラットフォームFP1を使用した仮締切構造体7の橋梁1への施工方法について説明する。
図15に示すように、仮締切構造体7の構築において、必要に応じて、橋脚上部12の上に設置された橋桁13の下面に吊り足場SSを設ける。この吊り足場SSは、足場板の周囲を吊り杆によって橋桁13の下面に固定することによって、作業者(図示略、以下同様)の移動スペースを確保する。
図16に示すように、この吊り足場SS(図16において図示略)上において、支保工8を橋脚上部12の上面の左右に1本ずつ計2本設置する。支保工8は、長さ方向に3分割されている。両端の分割支保工8a、8bにそれぞれ挟持片80が設けられる。その挟持片80を橋脚上部12の側面に宛がい、分割支保工8a、8b、8cを連結することにより、支保工8は橋脚上部12に固定される。
支保工8の両端には吊り金具81が設けられ、この吊り金具81にワイヤ82が設けられている。ワイヤ82には電動チェーンブロック(電動ホイスト)83が設けられ、その電動チェーンブロック83の吊り紐(ワイヤ)には一対の吊りフック84が設けられている。但し、吊りフック84の数は仮締切構造体7又はその組み立て中間体70,70Aを安定かつ安全に吊れるように任意に選択される。なお、吊り足場SSを構築しない場合は、例えばクレーンで支保工8等を吊上げるとともに、作業者もそのクレーンで作業位置に昇降移動すればよい。
次に、図16に示すように、作業者は、作業用のフロートプラットフォームFP1を設置し、続いて仮締切構造体7の組み立て中間体70(1段目)を組み立てる。作業用のフロートプラットフォームFP1は、橋脚10の周囲の水上にフロート分割体5、スライド機構6、通路フロート3、及び位置決めスペーサー4を用いて設置する。これらの部材及び必要機材は、機材台船(図示略)によって構築位置まで運搬する。フロートプラットフォームFP1は、仮締切構造体7の環状形状に合わせて、円環状、楕円環状、小判型環状等と適宜に設定すればよい。本実施形態においては、橋脚10の横断面が小判型環状であるため、仮締切構造体7も小判型環状とし、これに合わせてフロートプラットフォームFP1もまた小判型環状としている。フロート分割体5は、機材台船で運搬する前に、図5(A)及び図5(B)に示すように、適切な形状の矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aを組み合わせて、ボルト50c、ナット50dを用いて予め組み立てておく。
図1、図2、及び図16に示すように、フロートプラットフォームFP1の設置において、位置決めスペーサー4を橋脚10の壁面にアンカーボルト(図示略)で固定し、4台のフロート分割体5を橋脚10の周囲に配置し、更にスライド機構6を隣り合うフロート分割体5に固定することにより連結部20を形成し、作業フロート2を組み立てる。これにより、作業フロート2は、4箇所の連結部20において、各フロート分割体5が分離することなく相対的にスライド移動し、縮小状態と拡大状態とを取ることができる。この作業フロート2は、仮締切構造体7の組み立て中間体70,70Aを組み立てる際の実際上の作業場となる。フロート分割体5の連結部20付近に、通路フロート3をロープにより繋ぐことによりフロートプラットフォームFP1の設置を完了する。このロープの長さは、連結部20が開いた時に、作業者が乗り移れる程度に、通路フロート3が作業フロート2に接近するように調節する。
次に、設置が完了したフロートプラットフォームFP1上で仮締切構造体7の組み立て中間体70(1段目)の組み立てを行う。図1、図2、及び図16に示すように、作業者は、各スライド分割体5を、例えば作業台船を用いてフロート分割体5を先ず矢印N1、N2及び矢印N5、N6で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、次に矢印N3、N4及び矢印N7、N8で示す方向に適宜スライド移動させることにより作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)を縮小状態とする。縮小状態では、フロートプラットフォームFP1は、組み立て中間体70を組み立て、保持することができる。
作業者は、図11(A)及び図16に示すように、内側からボルト73c及びナット73dを用いて橋脚10の周方向にライナープレート73を連結し、一層目を組み立てる。一層目の上には、図13(A)〜図13(D)、及び図16に示すように、補強部材74を載置し、ボルト73c、ナット73dを用いて周方向に連結する。その際、周方向の継ぎ目に添え板77を宛がいボルト73c及びナット73dで固定する。その後、図11(A)〜図11(C)、及び図16に示すように、組み立て作業を繰り返し、ライナープレート73を3層に積層し、高さを1.5mとする。最上部に補強部材74Aを載置し、補強部材74と同様に周方向に連結する。
次に、図17及び図18に示すように、作業者は、気中で、防水カバー7bを組み立て中間体70(1段目)の周囲に全周一体物になるように取り付ける。先ず、作業者は、各防水シート78の下部78bを補強部材74にボルト73c・ナット73d止めし、各防水シート78の上部78eをロール状に巻き取り、巻き取った巻き取り体78fを固定ロープ78gにより組み立て中間体70に設けられた仮固定部70bに固定する。その後、作業者は、各防水シート78の間の一対のエレメント79b,79cにスライダー79dを取り付け一体化する。なお、各防水シート78の上部78eは、蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体としてもよい。
次に、図19に示すように、作業者は、組み立て中間体70(1段目)に電動チェーンブロック83のフック84を掛け、スイッチを操作してフロートプラットフォームFP1から一旦矢印N17で示す方向(上方向、以下同様)に吊り上げる。その後、作業者は、作業台船を用いて隣り合うフロート分割体5を先ず矢印N9、N10及び矢印N13、N14で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、次に矢印N11、N12及び矢印N15、N16で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)を、一体性を保ちつつ、拡大状態とする。そうすると、位置決めスペーサー4と作業フロート2との間に、組み立て中間体70(1段目)が通過し、水中に降下可能な隙間21が生じる。なお、この拡大状態においては、隣り合うフロート分割体5の連結部20は広がった状態となり危険なので、作業者がフロートプラットフォームFP1上を移動する場合には通路フロート3を利用する。
次に、図20に示すように、作業者は、電動チェーンブロック83のスイッチ操作を行い、組み立て中間体70(1段目)を橋脚基礎11に向けて矢印N18(下方向、以下同様)で示す方向に隙間21を通過させ、水中に降下させる。その際、作業者は、潜水士(図示略、以下同様)の水中電話による設置箇所に関する指示に従う。
次に、図21及び図22に示すように、組み立て中間体70(1段目)は、橋脚基礎11の適切な位置に据付けられる。潜水士が電動チェーンブロック83のフック84を組み立て中間体70(1段目)から外したら、作業者はフック84を所定の位置まで矢印N17で示す方向に上昇させる。潜水士は、アンカーボルト73eにより組み立て中間体70(1段目)を橋脚基礎11に固定し、組み立て中間体70の内側の橋脚基礎11上において橋脚10の周囲にライナープレート73(高さ0.5m)を型枠として設置し、この型枠と組み立て中間体70との間に橋桁13上に停車させたコンクリートミキサー車(図示略)から止水用の水中コンクリートを送り込んで打設する。水中コンクリート75の上面75aは、防水シート78の下端よりも高い位置になっている。これにより、橋脚基礎11と仮締切構造体7の底部との間にできる隙間からの水の浸入を防止する。なお、水中コンクリート75の打設は、後述する全ての組み立て中間体70,70Aの積層後に行なってもよい。
次に、図23に示すように、組み立て中間体70(1段目)を据付けた後、作業者は、上記したのと同様に作業台船を用いて押すことにより各フロート分割体5をスライド移動させ、作業フロート2を縮小した状態とし、その上で2段目の組み立て中間体70Aの組み立て作業を行う。その後、作業者は、組み立て中間体70A(2段目)を矢印17で示す方向に一旦吊り上げ、作業フロート2を再び拡大状態とする。潜水士は、作業者に水中電話で指示、誘導して、組み立て中間体70A(2段目)を組み立て中間体70(1段目)の上に載置し、図13(A)〜図13(D)で示すように、ボルト73c・ナット73dによる接続作業を行う。
次に、図24に示すように、同様に、作業者は、作業フロート2を縮小状態とし、3段目の組み立て中間体70Aを組み立て、矢印N17で示す方向に一旦吊り上げ、作業フロート2を拡大状態とし、組み立て中間体70A(3段目)を矢印N18で示す方向に組み立て中間体70A(2段目)上に降下させ、潜水士は、接続作業を行う。本実施形態では、組み立て中間体70A(3段目)の上面が、水面Wを超え、かつフロートプラットフォームFP1より上に位置する。仮締切構造体7の構築は、ここで完了させることができるし、必要に応じて組み立て中間体70A(3段目)の上面に直接ライナープレート73を更に積層させてもよい。なお、組み立て中間体70,70Aの連結・固定は、本実施形態のように、各組み立て中間体70,70Aの積層毎に行なってもよいし、全ての組み立て中間体70,70Aの積層完了後に行なってもよい。
次に、図25に示すように、橋脚基礎11上への仮締切構造体7の設置が完了すれば、潜水士は、各防水シートを気中まで引き上げ、仮締切構造体本体7aの上部に固定し、スライダー79dを気中部まで引き上げ、防水ファスナー79を閉じる(防水ファスナー79を気中部まで引き上げ閉じる)ことにより防水カバー7bを完成させる。また。潜水士は、仮締切構造体7の内側に支保杆(切梁71及び縦梁72)を適宜に設ける。なお、各防水シートの仮締切構造体本体7a上部への固定は、仮固定でもよい。
次に、図26に示すように、作業者は、フロートプラットフォームFP1を橋脚10の周囲から撤去する。その後、作業者は、ホース85の先端85aを仮締切構造体7の上から外部に出し、排水用水中ポンプ(図示略)により仮締切構造体7内の水抜きを行い、ドライ環境下の作業スペースを確保する。もちろん、フロートプラットフォームFP1の撤去作業は、水抜き作業の後に行うようにしてもよい。
仮締切構造体7内において、作業者は、橋脚の修理・補強等の改修を行う。改修完了後、仮締切構造体7は撤去される。
本実施形態によれば、仮締切構造体7は、仮締切構造体本体7aの外側面7cに防水カバー7bを具備している。防水カバー7bは、比較的簡単な作業により仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うことができ、仮締切構造体7の内部への漏水を防止する。よって、水上及び水中での仮締切構造体本体7aの組み立て作業においてライナープレート73を連結する際に、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを注意深く且つ強く締め付ける作業を行なわなくてもよい。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、仮締切構造体7は、防水カバー7bで仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うことにより、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを強く締め付ける必要がないため、ライナープレート73の変形を防止できる。これにより、ライナープレート73の再使用が可能となる。この点からも、仮締切構造体7の施工のコスト低減を図ることができる。
また、水中で連結作業を行なう状況では、潜水士は不安定な体勢で作業を行なわなければならないため、止水用パッキンを組み付ける際、止水用パッキンを傷付け易く、シール洩れが生じやすいという問題があった。本実施形態によれば、止水用パッキンの代わりに、仮締切構造体本体7aを防水カバー7bで覆うという簡単な作業により、このような止水用パッキンの損傷に起因する漏水の防止を図ることができる。
また、防水カバー7bは、繋ぎ目78aに防水ファスナー79が設けられており、この防水ファスナー79を閉じるだけで、仮締切構造体本体7aの内部への漏水を防止することができる。よって、ライナープレート73を連結する際に、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを注意深く且つ強く締め付ける作業を行なわなくてもよい。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、仮締切構造体本体7aは、防水シート78を取り付ける為の補強部材74を仮締切構造体本体7aの下部(組み立て中間体70)に有しており、防水シート78の下部78bが補強部材74に取り付けられる。防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業に際し、それぞれの防水シート78の上部78eが上方に引き上げられると伴に、防水ファスナー79が上方に引き上げられ閉じた状態とされる。このように、仮締切構造体本体7aは、簡単な作業により、防水カバー7bで覆うことができる。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、防水シート78の上部78eは、防水ファスナー79が下方に引き下げられ開いた状態で、ロール状に巻き取られた巻き取り体78f又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として、仮固定部70bに一時的に固定される。このように、防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業に際し、防水シート78は、仮締切構造体本体7aにコンパクトに取り付けられる。これにより、仮締切構造体本体7aは、容易に防水カバー7bで覆うことができる。また、組み立て中間体70の降下作業を容易に行なうことができる。よって、防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業を効率的に進めることができる。これにより、仮締切構造体7の施工作業の工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、防水シート78の外表面には、樹脂コーティング層が形成されている。そのため、防水シート78は、防水性が向上する。これにより、漏水防止の向上を図ることができる。また、樹脂コーティング層により、防水シート78の耐衝撃性が向上する。これにより、防水シート78が長持ちする為、再使用が容易となり、コストの削減を図ることができる。
また、仮締切構造体7の構築において、組み立て中間体70,70Aの組み立てはフロートプラットフォームFP1上で行われるので、水上作業の比率を大きくできる一方、潜水士による水中作業の比率を小さくすることができる。よって、水中作業の作業日数を低減できる。また、組立て状態の把握、部材の位置出しやひずみ等の確認作業における水上作業の比率を大きくできる一方、潜水士による水中作業の比率を小さくすることができる。この点でも水中作業の作業日数を低減できる。また、水上から水中への荷下ろし作業量を少なくできるので、これもまた潜水士による水中作業の作業日数を低減できる要因となる。一方で、空気供給の関係から潜水士による水中作業は作業可能な人数が制限される。これに対し、水上作業はそのような制限を受けにくい。よって、水中作業を低減すれば、全体の作業日数を低減できる。これにより、仮締切構造体7の施工における工期短縮、コスト低減を図ることができる。また、水中作業は事故発生の危険性が高い。本実施形態によれば、水中作業の作業日数を低減できることより、水中作業に起因する危険の低減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、水に浮くことが可能な部材を用いて水上で容易に組み立てることができる。更に、フロートプラットフォームFP1は、スライド機構6により、一体性を保ちつつ、組み立て中間体70,70Aを組み立て可能な縮小状態と水中に降下可能な拡大状態との間の相互変換を簡単確実に行える。よって、組み立て中間体70,70Aの組み立て作業と水中への降下作業とを円滑に行なうことができ、水上作業と水中作業の配分を適切なものとすることができる。そのため、水中における仮締切構造体の構築を効率的に行なうことができる。これらにより、作業日数を短縮できる。よって、仮締切構造体7を施工するための工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、位置決めスペーサー4を具備している。位置決めスペーサー4は、組み立て中間体70,70A組み立て時におけるフロートプラットフォームFP1の揺動を抑えることができる。これにより、仮締切構造体7の組み立て中間体70,70Aの組み立てを正確に行なうことができ、シール漏れ等の不具合発生の軽減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、通路フロート3を具備している。フロートプラットフォームFP1は、拡大状態を取った時に、隣り合うフロート分割体5間の連結部20が開いた状態となる。その際、作業者は作業フロート2から通路フロート3に乗り移って移動する。これにより、作業者の安全の向上を図ることができる。
<第2の実施形態>
図27を参照して、本発明の第2の実施形態に係る仮締切構造体7Aを説明する。仮締切構造体7Aにおいて、第1の実施形態に係る仮締切構造体7の構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、仮締切構造体7と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図27に示すように、仮締切構造体7Aは、防水シート78Aの下部78bに、ボルト取り付け穴78cが形成されていない点、及びクランプ9,止水パッキン78k,及び押さえ板78lを具備する点で第1の実施形態と相違している。また、FRP板78i及びヤシ繊維マット78jを具備する点で第1の実施形態と相違している。
クランプ9は、仮締切構造体本体7aに防水カバー7bを取り付けるためのものである。この取り付け作業は、気中で行なわれる。クランプ9は、本体部90とボルト部91とハンドル92とを具備している。本体部90は、アゴ部90aを具備している。ボルト部91は、先端部91aを具備している。対象物は、アゴ部90aと先端部91aとの間に挟まれる。ハンドル92を回転させることにより、対象物の締め付けが行なわれる。
仮締切構造体本体7aへの防水カバー7bの取り付けに際し、先ず、止水パッキン78kが、補強リング74の外側のフランジ74dの表面に貼り付けられる。次に、予め巻き込んだ防水シートの下部78bが、止水パッキン78kの表面に配置される。更に、防水シートの下部78bの表面には、所定の間隔(例えば、約20cm毎)で、押さえ板78lが配置される。押さえ板78lは、例えば、一辺50mmの正方形である。もちろん、長方形、円形、楕円形、又は長円形等であってもよい。押さえ板78lの形状として、帯状を採用してもよい。押さえ板78lが、帯状である場合には、周方向に沿って防水シートの下部78bを押さえる。この場合は、押さえ板78lの間に間隔を設けてもよいし、設けなくてもよい。これらの補強部材74のフランジ74d、止水パッキン78k、防水シート78、及び押さえ板78lは、クランプ9の本体90のアゴ部90aとボルト91の先端部91aとの間に挟まれ、ハンドル92の回転により固定される。固定は、仮締切構造体本体7aの周囲の前記所定の間隔毎に複数個所で行われる。 クランプ9として、具体的には、例えば、ブルマン(登録商標)、リキマン(登録商標)、又はシャコ万力等が使用される。また、押さえ板78lとして、例えば、平鋼等が使用される。本実施形態の止水パッキン78k及び押さえ板78lは、第1の実施形態にも適用可能である。
補強リング74,74Aのフランジ74dは、ライナープレート73の外側から突出している。補強リング74,74Aのフランジ74dの外側に取り付けられる防水シート78Aとライナープレート73の外側との間に空間78h(例えば、約24mm)が発生する。この空間78hを埋めるために、上下の補強リング74,74A間に、ヤシ繊維マット78j(厚み約30mm)が充填される。ヤシ繊維マット78jは、本発明でいう充填材の一例に相当する。更に、ヤシ繊維マット78jがライナープレート73の凹凸部へ膨らむのを防止する為、短冊状のFRP板78iが、ライナープレート73とヤシ繊維マット78jとの間に等間隔で差し込まれる。本実施形態のヤシ繊維マット78jは、第1の実施形態にも適用可能である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態において、クランプ9が、仮締切構造体本体7aへの防水カバー7bの取り付けに用いられる。クランプ9を用いた取り付け作業は、作業性に優れている。これにより、仮締切構造体7の構築における作業の効率化、確実性の向上を図ることができる。更には、工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態において、仮締切構造体本体7aと防水カバー7bとの間の空隙にヤシ繊維マット78jが、充填されている。そのため、水圧による防水シート78の伸びを緩和することができる。これにより、防水シート78Aの再使用が容易となり、コストの削減を図ることができる。
<第3の実施形態>
図28〜図32を参照して、本発明の第3の実施形態に係るフロートプラットフォームFP2及びFP3を説明する。フロートプラットフォームFP2,FP3において、第1の実施形態に係るフロートプラットフォームFP1の構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、フロートプラットフォームFP1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
先ず、図28に示すように、フロートプラットフォームFP2は、橋脚10Aに適合し、組み立て中間体70Bの組み立てができるように構成されたものであり、フロート分割体5Aを含む作業フロート2Fを具備する点で第1の実施形態〜第2の実施形態と相違している。組み立て中間体70Bは、平面視において呈する形状が組み立て中間体70と相違している。
図28及び図29に示すように、作業フロート2Aは、4台のフロート分割体5Aを連結して製作される。フロート分割体5Aは、直線部55と湾曲形状部56Aとを含んでいる。直線部55は、直方体形状を有する矩形フロートユニット50を連結して製作され、連結する矩形フロートユニット50の数により長さを調節可能である。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状を呈する。湾曲形状部56Aは、2台の直方体形状の矩形フロートユニット50と三角柱形状を有する2台の湾曲形状生成スペーサー50Bとを組み合わせて製作される。湾曲形状生成スペーサー50Bは、平面視において三角形状を有している。湾曲形状生成スペーサー50Bの一つの角部57aは、作業フロート2Aの内側に配置され、他の二つの角部57b,57cは、外側に配置される。これらの角部57a,57b,57cの角度は、変更可能に構成されている。湾曲形状部56Aは、角部57a,57b,57cの角度が調整された湾曲形状生成スペーサー50Aを隣接する矩形フロートユニット50と連結することにより、橋脚10Aの外形状に合わせて形成される。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状に限らず長方形形状等の他の矩形形状であってもよい。
フロート分割体5Aを製作するのに使用する湾曲形状生成スペーサー50Bの数は、2台に限られず、橋脚10Aの外形状に合わせて、1台、3台、5台、6台、7台、8台、9台、又はそれ以上としてもよい。複数台の湾曲形状生成スペーサー50Bを隣接させて連結することも可能である。湾曲形状生成スペーサー50Bは、隣接する矩形フロートユニット50又は湾曲形状生成スペーサー50Bと、例えば、ボルト・ナットを用いて連結される。
図30に示すように、湾曲形状生成スペーサー50Bは、作業板としての木製足場板58とフレーム部59とを具備している。木製足場板58は、湾曲形状生成スペーサー50Bの上面を平面状にし、フロートプラットフォームFP2上での作業を容易なものとするためのものである。木製足場板58は、フレーム部59に固定するためのボルト取り付け穴58aを有している。
作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
フレーム部59は、フレーム材59a,59b、蝶番59c、摺動板59e、摺動部スペーサー59fを具備している。角部57a,57b,57cには、それぞれ蝶番59cが配置されている。
フレーム材59aは、フレーム部59の両側部を形成するためのものである。蝶番59cは、羽根59iと軸59jを具備しており、軸59jを支点に羽根59iが回転し、これにより角部57a,57b,57cの角度が、変更可能となっている。各側部において、2本のフレーム材59aが、各角部57a,57b,57cに配置された蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定され、蝶番59c同士を連結している。
フレーム材59bは、フレーム部59の前面を形成するためのものである。2本のフレーム材59bが、角部57bにおいて、蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定されている。フレーム材59bは、後述する摺動部59lを摺動させるためのレール部59kを有している。フレーム材59a,59bは、前記三角形状の辺を形成する。
フレーム部59は、角部57cに摺動部59lを有している。摺動板59eは、摺動部スペーサー59f及び蝶番59cの羽根59iと組み合わさって、レール部59kを摺動する摺動部59lを形成する。摺動板59eは、摺動部スペーサー59fを介在させて、蝶番59cの羽根59iとボルト59g・ナット59hにより固定される。これにより摺動板59eの上下の端部に溝を形成し、摺動部59lとする。摺動部59lを上下のフレーム材59bのレール部59kにはめ込むことにより、摺動部59lは、矢印N19及び矢印N20で示す方向にレール部59k上を摺動可能となる。摺動することによりフレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さを調整することができる。
図31(A)に示すように、摺動部59lを矢印N19で示す方向に摺動させると角部57aの角度は大きくなり、角部57b,57cの角度は小さくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは、大きくなる。逆に、図31(B)に示すように、摺動部59lを矢印N20で示す方向に摺動させると、角部57aの角度は、図32(A)に示す状態よりも小さくなり、角部57b,57cの角度は大きくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは、小さくなる。
摺動部59lは、角部57cではなく、角部57bに設けてもよい。又は、摺動部59lは、複数の箇所に設けてもよい。例えば、摺動部59lは、角部57bと角部57cに設けてもよい。
なお、2つのフレーム材59aの長さが等しい場合、前記三角形状は二等辺三角形となる。フレーム材59bは、二等辺三角形の底辺に相当する。2つのフレーム材59aのなす角部57aは頂角であり、残りの2つの角部57b,57cは底角である。
木製足場板58は、角部57a,57b,57cの角度が調整された湾曲形状生成スペーサー50Cの形状に合うように形成される。図30に示すように、フレーム材59a,59bは、木製足場板58のボルト取り付け穴58aに合わせた位置にボルト取り付け穴59dを有している。木製足場板58とフレーム部59とは、ボルト58bにより結合される。フレーム材59bには、木製足場板58の異なる形状に対応できるように複数のボルト取り付け穴59dが形成されている。
湾曲形状生成スペーサー50Bは、矩形フロートユニット50と同様、二層構造としてもよい。この場合、二層構造の下層には、例えば、湾曲形状生成スペーサー50Cに浮力を付与するための発泡スチロールを収容する。この発泡スチロールは、湾曲形状生成スペーサー50Cの形状に合わせて成形される。上層には、例えば、第1の実施形態に記載したスライド機構6を収容する。
次に、図32を参照して、図31(B)に示す湾曲形状生成スペーサー50Bを使用したフロートプラットフォームFP3を示す。橋脚10Bは、橋脚10Aと比較して大型のものである。フロートプラットフォームFP3は、橋脚10Bに適合し、組み立て中間体70Cの組み立てができるように構成されたものであり、フロート分割体5Bを含む作業フロート2Bを具備する。組み立て中間体70Cは、平面視において呈する形状が組み立て中間体70又は組み立て中間体70Bと相違している。
図32に示すように、フロート分割体5Bは、直線部55と湾曲形状部56Bとを含んでいる。直線部55には、直方体形状を有する矩形フロートユニット50が2台連結されている。直線部55の長さは、連結する矩形フロートユニット50の数により調節可能である。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状を呈する。一方で、湾曲形状部56Bは、直方体形状の矩形フロートユニット50と湾曲形状生成スペーサー50Bとを組み合わせて製作される。上記したように、湾曲形状生成スペーサー50Bは、フロートプラットフォームFP2に比べ、角部57aの角度が小さく、角部57b,57cの角度は大きく、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは小さくなっている。4台の矩形フロートユニット50と3台の湾曲形状生成スペーサー50Bが交互に連結されている。矩形フロートユニット50及び湾曲形状生成スペーサー50Cの接続数ならびに角部57a,57b,57cの角度及び前記辺の長さを変更することにより、湾曲形状部56Aは、湾曲度合いの異なる湾曲形状部56Bに変更される。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、フロートプラットフォームFP2,FP3のフロート分割体5A,5Bは、矩形フロートユニット50や湾曲形状生成スペーサー50Bの様な単純な形状を有する部材の組み合わせにより、橋脚10A,10Bの断面形状に合わせて形成することができる。そのため、フロートプラットフォームFP2,FP3の準備の負担を軽減することができる。これにより、仮締切構造体7構築の工期の短縮、コスト削減を図ることができる。
また、湾曲形状生成スペーサー50Bは、摺動部59lを摺動させることにより、角部57a,57b,57cの角度及びフレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さを変更可能である。そのため、共通の部材である湾曲形状生成スペーサー50B及び矩形フロートユニット50を異なる断面形状を有する橋脚10A,10Bに適合したフロートプラットフォームFP2,FP3の構築に使用することができ、フロートプラットフォームFP2,FP3ごとに新たな部材の準備の必要性を低減することができる。これにより、仮締切構造体7の構築に当たり、工期の短縮、コスト削減を図ることができる。
<第4の実施形態>
図33を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例に相当する。第4の実施形態は、湾曲形状生成スペーサー50Bの代わりに湾曲形状生成スペーサー50Cを使用する点において、第3の実施形態と相違する。湾曲形状生成スペーサー50Cにおいて、湾曲形状生成スペーサー50Bの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
図33に示すように、湾曲形状生成スペーサー50Cは、四角柱形状であり、平面視において台形形状を有している。前記台形形状の長い方の底辺は、例えば、第3の実施形態における作業フロート2A,2Bの外側に該当する側に配置され、短い方の底辺は、作業フロート2A,2Bの内側に該当する側に配置される。湾曲形状生成スペーサー50Cは、作業板としての木製足場板58Aとフレーム部59Aとを具備している。
木製足場板58Aは、湾曲形状生成スペーサー50Cの上面を平面状にし、その上での作業を容易なものとするためのものである。作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
フレーム部59Aは、フレーム材59a,59b,59m、蝶番59c、摺動板59e、摺動部スペーサー59fを具備している。角部57a,57b,57c,57dには、それぞれ蝶番59cが配置されている。フレーム材59aは、フレーム部59Aの両側部を形成するためのものである。蝶番59cは、羽根59iと軸59jを具備しており、軸59jを支点に羽根59iが回転し、これにより角部57a,57b,57c,57dの角度が、変更可能となっている。各側部において、2本のフレーム材59aが、各角部57a,57b,57c,57dに配置された蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定され、蝶番59c同士を連結している。
フレーム材59bは、フレーム部59Aの前面を形成するためのものであり、前記台形形状の前記長い方の底辺を形成する。2本のフレーム材59bが、角部57bにおいて、蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定されている。フレーム部59Aは、フレーム部59と同様、角部57cに摺動部59lを有している。上下のフレーム材59bのレール部59kを摺動部59lにはめ込むことにより、摺動部59lは、矢印N19及び矢印N20で示す方向にレール部59k上を摺動する。摺動することにより、フレーム材59bが形成する前記台形形状の前記長い方の辺の長さを調整することができる。フレーム材59a,59b,59mは、前記台形形状の辺を形成する。
摺動部59lを矢印N19で示す方向に摺動させると角部57a,57dの角度は大きくなり、角部57b,57cの角度は小さくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記長い方の辺の長さは、大きくなる。逆に、摺動部59lを矢印N20で示す方向に摺動させると、角部57a,57dの角度は小さくなり、角部57b,57cの角度は大きくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記長い方の辺の長さは、小さくなる。
木製足場板58Aは、角部57a,57b,57c,57dの角度が調整されたフレーム部59Aの平面視における形状に合うように形成される。フレーム材59a,59b,59mは、木製足場板58Aのボルト取り付け穴58aに合わせた位置にボルト取り付け穴59dを有している。木製足場板58Aとフレーム部59Aとは、ボルト58bにより結合される。フレーム材59bには、木製足場板58Aの異なる形状に対応できるように複数のボルト取り付け穴59dが形成されている。
摺動部59lは、角部57cではなく、角部57a,角部57b,又は角部57dに設けてもよい。また、摺動部59lは、複数の箇所に設けてもよい。例えば、摺動部59lは、角部57bと角部57cに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57cと角部57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57cと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57bと角部57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57bと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57aと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、及び57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、及び57dに設けてもよい。 又は、摺動部59lは、角部57b、角部57a、及び57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57c、角部57a、及び57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、角部57a、及び57dに設けてもよい。
湾曲形状生成スペーサー50Cは、平面視において台形形状のものに限られず、四角形状であればよい。前記四角形状の一辺は、例えば、第3の実施形態における作業フロート2A,2Bの外側に該当する側に配置され、前記四角形状の前記一辺の対辺は作業フロート2A,2Bの内側に該当する側に配置されている。前記四角形状の前記一辺の長さは前記対辺の長さよりも大きい設定とされている。
本実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を奏する。
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る仮締切構造体、仮締切構造体の施工方法及びそれに使用するプラットフォームの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上述した各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
上記の実施形態においては、河川における橋脚を改修する際の仮締切構造体の構築について説明した。本発明は、橋脚以外の水中構造物にも適用可能である。水中構造物として、具体的には、例えば、水門等が挙げられる。本発明は、河川における橋脚等の水中構造物だけでなく、海、湖などの橋脚を含む水中構造物の改修時の仮締切構造体の構築に適用し得ることはもちろんである。
仮締切構造体の組み立て中間体の積層数は適宜に設定可能である。さらに、前記組み立て中間体のライナープレートの積層数も、1層、2層、3層、4層、5層等と任意に設定可能である。また、周方向のライナープレートの使用数も任意に設定可能である。
防水シート取り付け部は、仮締切構造体本体の下部ではなく、前記仮締切構造体本体の上部に設ける構成としてもよい。この場合、防水カバーは、少なくとも1の防水シートの上部が前記防水シート取り付け部に取り付けられ、前記少なくとも1の防水シートの下部が下方に引き下げられ、且つ防水ファスナーが下方に引き下げられ閉じた状態で、前記仮締切構造体本体の外側面を覆う。
漏水防止接合手段は、防水ファスナーに限られず、防水シートのシート端部間の繋ぎ目を、漏水を防止するように接合できるものであれば種々に変更可能である。漏水防止接合手段の他の例として、例えば、ボルトを用いて防水シートのシート端部を仮締切構造体本体に留めることが挙げられる。
作業用プラットフォームは、橋脚の所定の高さの全周囲に設ける構成としてもよい。所定の高さは、水面よりも高い位置とすることが好ましい。このプラットフォームは、外周部を所要長さ切り離し可能とされているか又は折れ曲がり可能とされており、これに基づき仮締切構造体の組み立て中間体をその上で組み立て可能な拡大状態と前記組み立て中間体を通過・下降させ得る縮小状態とを取ることができる。
上記の第3及び第4の実施形態において説明した湾曲形状生成スペーサーの平面視における形状は、湾曲形状生成スペーサー50C,50Dのように三角形状又は四角形状に限られない。五角形状、六角形状、七角形状、八角形状、又はそれ以上の多角形状を呈するものでもよい。この多角形状は、平面視において、少なくとも3の角部と、前記少なくとも3の角部の各角部を繋ぐ少なくとも3の辺を有している。前記各角部は、角度を変更可能に構成され、前記少なくとも3の角部のうち少なくとも2の角部は、前記作業フロートの外側に配置され、少なくとも1の角部は前記作業フロートの内側に配置され、前記作業フロートの前記外側に配置された前記少なくとも2の角部を繋ぐ前記辺は、長さを変更可能に構成され、前記各角部の前記角度及び前記少なくとも2の角部を繋ぐ前記辺の前記長さを変更することにより、前記湾曲形状部の湾曲度合いを調整するように構成されている。
湾曲形状生成スペーサーとして、L字鋼等の形鋼を使用することもできる。例えば、適切な長さにカットされたL字鋼を矩形フロートユニット50にボルト等を用いて直接固定し、前記湾曲形状部が所望の湾曲度合いになるようにしてもよい。
FP1,FP2,FP3 フロートプラットフォーム(作業プラットフォーム)
10,10A,10B 橋脚(水中構造物)
7 仮締切構造体
7a 仮締切構造体本体
7b 防水カバー
7c 外側面
70,70A,70B,70C 組み立て中間体
70b 仮固定部
74 補強部材(防水シート取り付け部)
78,78A 防水シート
78a 繋ぎ目
78b 防水シートの下部
78e 防水シートの上部
78f 巻き取り体
78j ヤシ繊維マット(充填材)
79 防水ファスナー(漏水防止接合手段)
本発明は、河川や海等の水中に設けた橋脚等の水中構造物の修理・補強等の改修を行う際に構築する仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーに関する。
従来、河川や海等の水中に設けた橋脚等の水中構造物は、経年劣化、台風、地震等により損傷等が生じた場合、コンクリート巻立やアラミド繊維巻付等の方法により改修される。その際、作業スペースを確保する為、水中構造物の周りを水のないドライ環境にする必要がある。このドライ環境は、水中構造物の周りに所定の間隔をおいて筒状の仮締切構造体を構築し、その内側から水を排除することによって作られる。一般的に、この仮締切構造体の構築は、潜水士の水中作業により、水中構造物の上下および周方向に相互に連結可能なライナープレート等の複数の部材を水中構造物の周りに筒状に配置し、ボルト・ナットを用いて連結して行なわれる。(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように改善すべき点があった。
すなわち、仮締切構造体の施工において、主要構成部材であるライナープレート等の部材を連結する際、連結部からの水漏れを少なくするため、それらの間に止水用パッキンを介在させ、ボルト・ナットで強く締め付ける必要があった。水中で連結作業を行なう状況では、潜水士は不安定な体勢で作業を行なわなければならないため、止水用パッキンを組み付ける際、傷つけるなどして水漏れが生じやすいという問題があった。また、ボルト・ナットを強く締め付けるため、ライナープレートが変形し再使用しにくくなるという問題があった。
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、簡単な作業で水漏れを防止でき、主要構成部材であるライナープレートを再使用しやすくできる仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーを提供することを目的としている。
本発明の第1の側面により提供される仮締切構造体は、水中構造物の周りに構築される仮締切構造体であって、前記水中構造物の周りに所定の高さになるように構築される仮締切構造体本体と、前記仮締切構造体本体の外側面を覆うように設けられ、前記仮締切構造体本体の内部への漏水を防止する防水カバーと、を備え、前記防水カバーは、前記仮締切構造体本体の前記外側面の周方向に沿って配置される少なくとも1の防水シートと、前記少なくとも1の防水シートが前記外側面に配置される際に前記少なくとも1の防水シートのシート端部間に形成される繋ぎ目と、前記繋ぎ目からの漏水を防止するように前記繋ぎ目を接合する漏水防止接合手段と、を含み、前記漏水防止接合手段は、前記繋ぎ目に設けられた防水ファスナーであり、前記防水ファスナーは、閉じた状態で前記繋ぎ目を接合すると共に防水状態とし、開いた状態で前記繋ぎ目を分離した状態とし、前記仮締切構造体本体は、前記少なくとも1の防水シートを取り付ける為の防水シート取り付け部、を含み、前記防水シート取り付け部は、前記仮締切構造体本体の下部に設けられており、前記防水カバーは、前記少なくとも1の防水シートの下部が前記防水シート取り付け部に取り付けられ、前記少なくとも1の防水シートの上部が上方に引き上げられ、且つ前記防水ファスナーが上方に引き上げられ閉じた状態で、前記仮締切構造体本体の前記外側面を覆っており、前記仮締切構造体本体は、前記防水シート取り付け部の上方に設けられ、前記少なくとも1の防水シートの上部を、前記防水ファスナーが下方に引き下げられ開いた状態で、ロール状に巻き取られた巻き取り体又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として、一時的に固定する仮固定部、を含むことを特徴としている。
好ましくは、前記仮締切構造体は、前記仮締切構造体本体の前記外側面と前記防水カバーの間に空間を含み、前記空間には充填材が充填されている構成とされている。
好ましくは、前記充填材は、ヤシ繊維マットである構成とされている。
好ましくは、前記防水カバーは、樹脂コーティング層を含む構成とされている。
好ましくは、前記樹脂コーティング層は、ポリウレア樹脂を含む構成とされている。
本発明の第2の側面により提供される仮締切構造体の施工方法は、水中構造物の周りに構築される仮締切構造体の施工方法であって、前記仮締切構造体は、仮締切構造体本体と、前記仮締切構造体本体の内部への漏水を防止する為の防水カバーと、を備え、前記水中構造物の周りに前記仮締切構造体本体を所定の高さになるように構築する構築工程と、 前記仮締切構造体本体の外側面を前記防水カバーで覆う覆設工程と、を有し、前記防水カバーは、少なくとも1の防水シートと、前記少なくとも1の防水シートのシート端部間に形成された繋ぎ目からの漏水を防止するように接合する為の漏水防止接合手段と、を備え、前記覆設工程は、前記防水カバーによって前記外側面を覆う際に前記少なくとも1の防水シートの前記シート端部間に前記繋ぎ目を形成するように、前記少なくとも1の防水シートを前記仮締切構造体本体の周方向に沿って配置する配置工程と、前記配置工程で形成された前記繋ぎ目を前記漏水防止接合手段により接合する接合工程と、を有し、前記配置工程は、前記少なくとも1の防水シートを前記仮締切構造体本体に設けられた防水シート取り付け部に取り付ける防水シート取り付け工程、を有し、前記防水シート取り付け部は、前記仮締切構造体本体の下部に設けられており、前記防水シート取り付け工程において、前記少なくとも1の防水シートの下部が防水シート取り付け部に取り付けられ、前記漏水防止接合手段は、前記繋ぎ目に設けられる防水ファスナーであり、前記防水シート取り付け工程は、前記防水ファスナーを下方に下げることにより開いた状態で、前記少なくとも1の防水シートの上部を、ロール状に巻き取られた巻き取り体又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として前記防水シート取り付け部の上方に設けた仮固定部に一時的に固定する仮固定工程、を有し、前記接合工程において、前記繋ぎ目の接合は、前記防水ファスナーを閉じることにより行い、前記少なくとも1の防水シートを上方に引き上げると共に前記防水ファスナーを上方に引き上げて閉じることにより行なうことを特徴としている。
好ましくは、前記接合工程は、前記仮締切構造体本体が前記所定の高さに達した後に行い、前記接合工程において、前記防水シートの上方への引き上げは、前記巻き取り体又は前記折り畳み部を解きながら行う構成とされている。
好ましくは、前記仮締切構造体本体は、前記水中構造体の周りに組み立てられる組み立て中間体、を備え、前記構築工程は、前記水中構造物を取り囲むように形成され、その上で前記組み立て中間体を組み立てるのに使用される作業プラットフォームを所定の高さに設置する作業プラットフォーム設置工程、を有し、前記作業プラットフォームは、前記水中構造体の周りで縮小状態と拡大状態とを変更可能に取ることができ、それに基づき、前記組み立て中間体を組み立て可能で且つ前記組み立て中間体を保持可能な第1の状態と、前記組み立て中間体を通過させ水中に降下させ得る第2の状態とを取ることができるように構成され、前記構築工程は、前記作業プラットフォームを前記第1の状態とし、前記組み立て中間体を組み立てる組み立て工程と、前記作業プラットフォームから前記組み立て中間体を一旦所定の高さまで吊り上げ、前記作業プラットフォームを前記第2の状態とし、前記組み立て中間体を水中に降下させる降下工程と、水中に降下させた前記組み立て中間体を前記水中構造体の基礎に据付ける据付け工程と、前記組み立て工程と前記降下工程とを繰り返し行うことにより、前記仮締切構造体本体が前記所定の高さになるまで前記組み立て中間体を積層する積層工程と、を更に有する構成とされている。
好ましくは、前記組み立て工程は、前記組み立て中間体が前記仮締切構造体本体の下部に相当する1段目である場合に、前記防水シート取り付け部を設ける防水シート取り付け部設置工程、を有し、前記防水シート取り付け工程は、前記第1の状態で、前記作業プラットフォーム上で行う構成とされている。
本発明の第3の側面により提供される防水カバーは、本発明の第2の側面により提供される仮締切構造体の施工方法に使用される防水カバーであって、前記仮締切構造体本体の前記外側面を覆うことを特徴としている。
本発明によれば、簡単な作業で水漏れを防止でき、主要構成部材であるライナープレートの再使用がしやすい仮締切構造体、その施工方法、及びその施工方法に用いる防水カバーを提供することができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかとすることができる。
本発明の第1の実施形態に係るフロートプラットフォームを示す斜視図である。
図1のII−II線に沿う断面図である。
図1に示すフロートプラットフォームが拡大した状態を示す斜視図である。
図3のIV−IV線に沿う断面図である。
図5(A)は、図1のフロートプラットフォームを構成するフロート分割体の一例を示す斜視図である。図5(B)は、図5(A)のVB部の詳細を示す分解正面図及び分解平面図である。
図6(A)は、図1のフロートプラットフォームに含まれる隣り合う二つのフロート分割体の連結部を示す斜視図である。図6(B)は、図6(A)のVIB−VIB線に沿う断面図である。図6(C)は、図6(B)に示す二つのフロート分割体の連結部が開いた状態を示す断面図である。
図7は、図1に示すフロートプラットフォームを用いて構築した仮締切構造体の一例を示す斜視図である。
図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図7のIX−IX線に沿う断面図である。
図10(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれるライナープレートの一例を示す斜視図である。図10(B)は、図10(A)のXB−XB線に沿う断面図である。
図11(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる左右のライナープレートの連結部を示す平面視における分解断面図である。図11(B)は、同じく、上下のライナープレートの連結部を示す左側方から見た分解断面図である。図11(C)は、同じく、上下左右のライナープレートの連結部を示す仮締切構造体の内側から見た分解正面図である。
図12(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる防水シートを取り付けるのに使用される補強部材の一例を示す斜視図である。図12(B)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる上下方向に積層されたライナープレートの所定の層数毎に配置される補強部材の一例を示す斜視図である。
図13(A)は、図7に示す仮締切構造体に含まれるライナープレートと図12(A)に示す補強部材との連結部を示す左側方から見た分解断面図である。図13(B)は、図12(A)に示す補強部材の添え板を示す正面図である。図13(C)は、図12(A)に示す補強部材同士の連結部を示す正面図である。図13(D)は、図7に示す仮締切構造体に含まれる上下のライナープレートと図12(A)に示す補強部材との連結部を示す左側方から見た分解断面図である。
図7に示す仮締切構造体に含まれる防水カバーの一例を示す分解正面図である。
図7に示す仮締切構造体を構築する作業の一例を説明するための図であり、橋脚上部への「吊り足場」及び橋脚への「フロートプラットフォーム」の設置状態を示す正面図である。
同じく、フロートプラットフォーム上における仮締切構造体の構築に用いる組み立て中間体(1段目)の組み立て状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)に防水カバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
同じく、図17のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を一旦吊り上げた状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を降下させる状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)を橋脚基礎に据付けた状態を示す斜視図である。
同じく、図21のXXII−XXII線に沿う断面図である。
同じく、フロートプラットフォーム上における組み立て中間体(2段目)の組み立て状態を示す斜視図である。
同じく、組み立て中間体(1段目)に連結固定した組み立て中間体(2段目)に組み立て中間体(3段目)を積層する状態を示す斜視図である。
同じく、仮締切構造体本体の外側面を防水カバーで覆い、内側に支保杆(切梁及び縦梁)を設ける状態を示す斜視図である。
同じく、仮締切構造体内の水抜きを行って、ドライ環境下の作業スペースを確保する状態を示す斜視図である。
本発明の第2の実施形態に係る仮締切構造体を示す一部拡大断面図である。
本発明の第3の実施形態に係るフロートプラットフォームの一例を示す平面図である。
図28に示すフロートプラットフォームを構成するフロート分割体の一例を示す斜視図である。
図29に示すフロート分割体に含まれる湾曲形状生成スペーサーの一例を示す斜視図である。
図31(A)は、図30に示す湾曲形状生成スペーサーの一つの状態を示す平面図である。図31(B)は、図30に示す湾曲形状生成スペーサーの他の状態を示す平面図である。
図31(B)に示す湾曲形状生成スペーサーを使用したフロートプラットフォームの一例を示す平面図である。
本発明の第4の実施形態に係る湾曲形状生成スペーサーの一例を示す斜視図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以降の説明において、上下方向などの方向は、図面の記載にしたがったものとする。
<第1の実施形態>
[フロートプラットフォーム]
本発明の実施形態においては、フロートプラットフォームが使用される。このフロートプラットフォームは、河川等の水中に設けた橋脚等の水中構造物の修理・補強等の改修を行う際に構築する仮締切構造体の施工に使用され、具体的には、その上で、後述する仮締切構造体の組み立て中間体が組み立てられる。図1〜図4に示すように、フロートプラットフォームFP1は、水面W上に浮くように設計されており、例えば、橋梁1の橋脚10の周囲を取り囲むように配置される。橋脚10は、本発明でいう水中構造物の一例に相当する。フロートプラットフォームFP1は、仮締切構造体7の組み立て中間体70を水上で組み立て可能で且つ保持可能な縮小状態(図1及び図2参照)と、仮締切構造体7の組み立て中間体70を通過させ且つ水中に降下可能な拡大状態(図3及び図4参照)とを相互に変更可能に取ることができるように構成されている。すなわち、縮小状態が本発明でいう第1の状態に相当し、拡大状態が本発明でいう第2の状態に相当する。図1〜図4に示すように、フロートプラットフォームFP1は、作業フロート2、通路フロート3、及び位置決めスペーサー4を具備している。フロートプラットフォームFP1は、その上面が水面W上に突出していることが仮締切構造体7の施工上望ましいが、若干(20cm程度)沈んでいてもよい。フロートプラットフォームFP1は、本発明でいう作業プラットフォームの一例に相当する。
作業フロート2は、フロートプラットフォームFP1の主たる構成要素である。実質的には、作業フロート2が、一体性を保ちつつ、縮小状態と、拡大状態とを相互に変更可能に取ることができる。図1〜図4に示すように、この作業フロート2は、フロート分割体5及びスライド機構6を具備しており、フロート分割体5がスライド機構6により連結されることにより、橋脚10の周囲を取り囲んでいる。
図1〜図4に示すように、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)は、複数台(本実施形態では4台)のフロート分割体5を備えている。図1〜図4、及び図5(A)に示すように、個々のフロート分割体5は、平面視において矩形形状で、直方体形状を有する矩形フロートユニット50と、平面視において湾曲形状を有する湾曲フロートユニット50Aとを含んでいる。矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aは、作業フロート2に浮力を付与する。矩形フロートユニット50は、フロートユニットとして標準的な形状である。組み立て中間体70は、橋脚10の断面形状に合わせて、少なくとも一部に湾曲形状を含む。湾曲フロートユニット50Aの湾曲形状は、組み立て中間体70の湾曲形状に合わせたものである。
図5(A)及び図5(B)に示すように、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aは、L字鋼及び平鋼により形成された籠状物であり、二層構造を有している。二層構造の上層51は、後述するスライド機構6を収容可能に形成されている。下層52は、発泡スチロール53を収容している。発泡スチロール53は、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aに浮力を付与するためのものであり、トラックシートに用いられるエステル帆布に包まれている。なお、フロートプラットフォームFP1を形成するフロート分割体5の数は4台に限られず、2台、3台、5台、6台、7台、8台、9台、又はそれ以上としてもよい。また、ここで矩形とは、長方形や正方形等の四角形を意味するものであるが、略矩形のものを含む。例えば、隅部が丸みを帯びていてもよいし、面取りされたものでもよい。矩形を構成する辺の一部又は全部が曲がった辺であってもよい。矩形が若干変形し、台形や平行四辺形の形状になっているものであってもよい。
図5(A)に示すように、矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aの上面には、作業板として木製足場板54が張られている。木製足場板54は、フロート分割体5の上面を平面状にし、フロートプラットフォームFP1上での作業を容易なものとする。なお、作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
図5(A)に示すように、フロート分割体5は、直線部55と湾曲形状部56とを含んでいる。直線部55は、直方体形状を有する矩形フロートユニット50を連結して製作され、連結する矩形フロートユニット50の数により長さを調節可能である。湾曲形状部56は、現場寸法に合わせて、平面視において湾曲形状を有する湾曲フロートユニット50Aを組み合わせて製作される。図5(B)に示すように、矩形フロートユニット50は端部50aにボルト取付け穴50bを有している。フロート分割体5は、矩形フロートユニット50同士をボルト50cとナット50dで連結して製作される。湾曲フロートユニット50Aもまた端部50aにボルト取付け穴50bを有している。湾曲フロートユニット50A同士、矩形フロートユニット50と湾曲フロートユニット50Aもまた同様に連結される。フロート分割体5は、直線部55と湾曲形状部56の両方を含んでいるものに限られず、直線部55のみ又は湾曲形状部56のみとしてもよいし、L字形状、コの字形状としてもよい。
図6(A)〜図6(C)に示すように、隣り合う2台のフロート分割体5は、スライド機構6により連結されている。図6(A)に示すように、スライド機構6は、矩形フロートユニット50の二層構造の上層51に収容されている。図6(B)及び図6(C)に示すように、スライド機構6は、隣り合うフロート分割体5同士を相対的にスライド移動させるためのもので、スライドパイプ60とスライドバー61とを具備し、スライドバー61がスライドパイプ60に挿入され、互いにスライド可能な状態で一体化されたものである。スライド機構6は、隣り合うフロート分割体5同士の連結部20につき2個設けられている。フロートプラットフォームFP1の組み立てに際し、スライドパイプ60は互いに隣接する一方のフロート分割体5に取付け具62を用いてボルト63により固定され、スライドバー61は他方のフロート分割体5に取付け具64を用いてボルト63により固定される。これにより、隣り合う2台のフロート分割体5は、互いにスライド移動可能となる。スライド機構6は、毎回同じ軌道に沿ってフロート分割体5をスライド移動させる。このスライド移動により、隣り合うフロート分割体5は、互いに離合する。離合により、作業フロート2は、一体性を保ちつつ、縮小状態と拡大状態との間で相互変換する。なお、スライド機構6は、本発明でいう伸縮連結手段の一例に相当する。また、スライド機構6は、湾曲フロートユニット50Aの上層51に収容されてもよい。
図6(B)に示すように、スライドバー61がスライドパイプ60に矢印N1で示す方向にスライドし深く挿入された状態となると、隣り合う2台のフロート分割体5は、それぞれ相対的に矢印N1及び矢印N2で示す方向にスライド移動する結果、近接した状態となり、連結部20は閉じた状態となる。図6(C)に示すように、スライドバー61が矢印N9で示す方向にスライドしスライドパイプ60に浅く挿入された状態になると、2台のフロート分割体5は、それぞれ相対的に矢印N9及び矢印N10で示す方向にスライド移動する結果、離れた状態となり、連結部20は開いた状態となる。このように、隣り合う2台のフロート分割体5は相対的なスライド移動により互いに近接した状態になったり、離れた状態になったりすることができる。
図6(B)及び図6(C)に示すように、スライド機構6は、ストッパ機構65を備えている。ストッパ機構65は、隣り合う2台のフロート分割体5同士が分離することを防止するためのものであり、スライドバー61の先端に設けられた当接板65aとスライドパイプ60のパイプ端部65bとから構成されている。連結部20において、隣り合うフロート分割体5が、矢印N9および矢印N10で示す方向に、それらの間隔が大きくなるように相対的にスライド移動した場合、当接板65aがパイプ端部65bに当接してスライド移動が停止する。
図1及び図2に示すように、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)は、4箇所に連結部20を備えている。これらの連結部20には、それぞれスライド機構6が設けられている。それぞれのフロート分割体5を先ず矢印N1、N2及び矢印N5、N6で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N1と矢印N6とは同方向、矢印N2と矢印N5とは同方向、矢印N1と矢印N2とは対向方向、矢印N5と矢印N6とは対向方向、以下同様)、次に矢印N3、N4及び矢印N7、N8で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N3と矢印N8とは同方向、矢印N4と矢印N7とは同方向、矢印N3と矢印N4とは対向方向、矢印N7と矢印N8とは対向方向、以下同様)、連結部20の間隔を小さくすると、隣接するフロート分割体5は近接し、作業フロート2は閉じて縮小した状態となる(矢印N1、N2、N5、N6と矢印N3、N4、N7、N8とは互いに交差する方向(直角を含む)、以下同様)。これにより、フロートプラットフォームFP1は、その上で仮締切構造体7の組み立て中間体70を組み立て、保持可能な状態となる。
一方で、図3及び図4に示すように、連結部20において、それぞれのフロート分割体5を先ず矢印N9、N10及び矢印N13、N14で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N9と矢印N14とは同方向、矢印N10と矢印N13とは同方向、矢印N9と矢印N10とは逆方向、矢印N13と矢印N14とは逆方向、以下同様)、次に矢印N11、N12及び矢印N15、N16で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ(矢印N11と矢印N16とは同方向、矢印N12と矢印N15とは同方向、矢印N11と矢印N12とは逆方向、矢印N15と矢印N16とは逆方向、以下同様)、連結部20の間隔を大きくすると、隣接するフロート分割体5は互いに離れ、作業フロート2は開いて拡大した状態となる(矢印N9、N10、N13、N14と矢印N11、N12、N15、N16とは互いに交差する方向(直角を含む)、以下同様)。これにより、位置決めスペーサー4と作業フロート2(各フロート分割体5)との間に隙間21ができる。その結果、作業フロート2は、組み立て中間体70を通過させ、水中に降下させることが可能となる。なお、フロート分割体5のスライド移動及び作業フロート2の位置決めは、例えば作業台船(図示略、以下同様)を用いて行なわれる。
図1〜図4に示すように、通路フロート3は、作業フロート2の連結部20の外側に配置されており、ロープ(図示略、以下同様)等によりフロート分割体5に繋げられており、作業フロート2が拡大した際に作業者が移動するための通路として使用される。通路フロート3もまた、平面視において矩形形状をした複数のフロートユニット30が連結したものである。フロートユニット30は、L字鋼及び平鋼により形成された籠状物であり、内部にエステル帆布に包まれた発泡スチロール31を収容している。図4に示すように、作業フロート2が拡大した状態で、作業フロート2の外側2aは通路フロート3の内側3aに接している。
位置決めスペーサー4は、ゴム製の防舷材を橋脚10の壁面にアンカーボルト(図示略)で固定したものであり、仮締切構造体7の組み立て中間体70を組み立てる際に作業フロート2を位置決めし、揺動を抑制するためのものである。図2に示すように、フロートプラットフォームFP1が縮小した状態で、作業フロート2の内側2aは位置決めスペーサー4の外側4aに接している。
[仮締切構造体]
図7、図8、及び図9に、本実施形態により構築された仮締切構造体7の一例を示す。仮締切構造体7は、橋脚基礎11上に設置される。仮締切構造体7の高さは、その上部が水面Wから突出するように設定される。すなわち、仮締切構造体7の高さは、河川や海等の水深に基づいて決められる。仮締切構造体7の内側に支保杆(切梁71及び縦梁72)が適宜設けられている。仮締切構造体7は、仮締切構造体本体7aと防水カバー7bとを具備している。仮締切構造体本体7aは、所定曲率又は直線形状を有するライナープレート73と、上下のライナープレート73を連結する補強部材74,74Aとを具備している。補強部材74,74Aもまた所定曲率又は直線形状を有するものが用いられる。図8及び図9に示すように、仮締切構造体7内の底部の周囲に止水用のコンクリート75が打設されている。なお、仮締切構造体7は、橋脚10の全周を取り囲むものに限らず、橋脚10の一部を取り囲むものであってもよい。
図7、図8、及び図9に示すように、防水カバー7bは、仮締切構造体本体7aの外側面7cの周方向に沿って配置される複数の防水シート78と、複数の防水シート78が外側面7cに配置される際にそれぞれの防水シート78の左右のシート端部78d間に形成される繋ぎ目78aと、繋ぎ目78aからの漏水を防止するように繋ぎ目78aを接合する防水ファスナー79を具備している。防水ファスナー79は、本発明でいう漏水防止接合手段の一例に相当する。防水ファスナー79は、閉じた状態で繋ぎ目78aを接合すると共に防水状態とし、開いた状態で繋ぎ目78aを分離した状態とする。仮締切構造体本体7aは、防水シート78を取り付ける為の補強部材74を具備している。補強部材74は、本発明でいう防水シート取り付け部の一例に相当する。補強部材74は、仮締切構造体本体7aの下部(1段目の組み立て中間体70)に設けられている。防水カバー7bは、防水シート78の下部78bが補強部材74に取り付けられ、防水シート78の上部78eが上方に引き上げられ、且つ防水ファスナー79が上方に引き上げられ閉じた状態で、仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆っている。
図10(A)及び図10(B)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有するライナープレート73の一例を示す。ライナープレート73は、例えば鋼板製である。図10(A)に示すように、ライナープレート73の上下左右の端部フランジ73aには、ボルトを取り付けるためのボルト取り付け穴73bが設けられている。図10(B)に示すように、ライナープレート73の断面は波形形状である。なお、仮締切構造体7の施工には、曲線形状だけでなく直線形状のライナープレート73も使用される。
図11(A)及び図11(C)に示すように、各ライナープレート73の周方向における連結は、その左右の端部フランジ73aを、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ボルト73c・ナット73d止めすることによって行われる。また、各ライナープレート73の上下方向における連結は、図11(B)及び図11(C)に示すように、ライナープレート73の上下の端部フランジ73a同士を、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ボルト73c・ナット73d止めすることにより行われる。なお、図11(C)に示すように、ライナープレート73同士の周方向の継ぎ目は、必ずしも上下方向で一致させる必要はない。また、各ライナープレート73間には、念のため、ゴム製の止水用パッキンを介在させてもよい。
図12(A)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有する補強部材74を示す。補強部材74は、H形鋼からなり、そのウェブ74bにボルトを取り付けるためのボルト取り付け穴74cが設けられている。また、補強部材74のフランジ74dには、後述する添え板77を取り付けるためのボルト取り付け穴74eが設けられている。また、フランジ74dには、後述する防水シート78を取り付けるためのボルト取り付け穴74fが設けられている。なお、仮締切構造体7の施工には、曲線形状だけでなく直線形状を有する補強部材74も使用される。
図12(B)に仮締切構造体7の施工に使用される所定曲率を有する補強部材74Aを示す。補強部材74Aは、フランジ74dに後述する防水シート78を取り付けるためのボルト取り付け穴74fを有していない点で上記した補強部材74と相違している。本実施形態においては、防水シート78を取り付けない箇所には、この補強部材74Aを使用する。もちろん、これらの箇所に補強部材74を使用することもできる。
図13(A)に示すように、補強部材74は、上下方向に積層されたライナープレート73の3積層(後述する組み立て中間体70)の下から1層目と2層目のライナープレート73の端部フランジ73aの間に配置され、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ライナープレート73とボルト73c・ナット73d止めされている。補強部材74の周方向の継ぎ目においては、図13(B)に示す添え板77が宛がわれる。添え板77は、ボルト73cを取り付けるためのボルト取り付け穴77aを有しており、図13(C)に示すように、ボルト取り付け穴77aがボルト取り付け穴74eに合うように宛がわれ、図13(D)に示すように、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、補強部材74にボルト73c・ナット73d止めされている。なお、念のため、各補強部材74の突き当たりウェブ端面74g間又は補強部材74のウェブ74bとライナープレート73の端部フランジ73aとの間にゴム製の止水用パッキンを介在させてもよい。また、一方で、補強部材74Aは、上下方向に積層されたライナープレート73の3積層(後述する組み立て中間体70,70A)毎にライナープレート73の上下の端部フランジ73aの間に配置され、ゴム製の止水用パッキンを介在させることなく、ライナープレート73とボルト73c・ナット73d止めされる。補強部材74Aもまた、補強部材74と同様にして、仮締切構造体本体7aに取り付けることができる。
図7、図8、及び図9に示すように、本実施形態の仮締切構造体7の施工において、組み立て中間体70,70Aは、ライナープレート73を橋脚10の周方向に連結した環状体を3積層したものである。上下の組み立て中間体70と組み立て中間体70Aとの間には、補強部材74Aが配置される。組み立て中間体70は、仮締切構造体本体7aの1段目を形成する。組み立て中間体70Aは、仮締切構造体本体7aの2段目、3段目を形成する。この組み立て中間体70,70Aの高さ(すなわち環状体の積層数)は、下記に説明する降下作業が円滑に行えるとともに、フロートプラットフォームFP1上の作業性等を考慮して適宜に決定される。例えば、ライナープレート73の高さ(図10(A)の上下方向の高さ)が500mmであれば、作業者の作業のしやすさに基づき3積層(1.5m)とする。
なお、組み立て中間体70,70Aにおけるライナープレート73の積層数は3積層に限られず、1層、2層、4層、5層、6層、又はそれ以上としてもよい。また、1段目の組み立て中間体70において、下から一層目と二層目のライナープレート73の間に補強部材74が配置される。後述する防水カバー7bを取り付けるためである。もちろん、補強部材74は、補強部材74Aの代わりに、組み立て中間体70,70Aの間にも使用可能である。また、仮締切構造体7は、水深により適切な段数の組み立て中間体70,70Aが積層されたものとなる(本実施形態では3段)。仮締切構造体7は、1段の組み立て中間体70により構築してもよいし、2段、4段、5段、6段、又はそれ以上の組み立て中間体70,70Aにより構築してもよい。
上記したように、防水カバー7bは、防水シート78と防水ファスナー79とを具備している。防水シート78は、仮締切構造体7の外部の水が内部に漏れ入るのを防止するためのものである。防水シート78は、例えば、エステル帆布からなるトラックシートを材料として例えば長方形に形成される。防水シート78の外表面には、保護の為、樹脂塗装により樹脂コーティング層が形成されている。塗装には、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリオレフィン樹脂等を主成分とする塗料が用いられる。ポリウレア樹脂を主成分とする塗料として、例えば、LINE−X(登録商標)が挙げられる。
図14に示すように、防水シート78の下部78bには、組み立て中間体70の補強部材74に取り付けるためのボルト取り付け穴78cが形成されている。仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うために、複数の防水シート78が、周方向に並べて配置される。周方向に並べて配置されることで、隣り合う防水シート78の左右方向のシート端部78d間に繋ぎ目78aが形成される。繋ぎ目78aは、防水シート78のシート端部78d同士を突き合わせた状態のもの、シート端部78d同士を重ね合わせた状態のもの、シート端部78d同士が近接して隙間が生じた状態のものを含む。
なお、防水カバー7bは、1枚の防水シート78により形成されてもよく、この場合、繋ぎ目78aは、1枚の防水シート78内の左右のシート端部78d間に形成される。この場合も、繋ぎ目78aは、防水シート78のシート端部78d同士を突き合わせた状態のもの、シート端部78d同士を重ね合わせた状態のもの、シート端部78d同士が近接して隙間が生じた状態のものを含む。
図14に示すように、防水ファスナー79は、複数の防水シート78の繋ぎ目78aに配置され、仮締切構造体7の外部の水が内部に漏れ入るのを防止しつつ、複数の防水シート78を接合するためのものである。防水ファスナー79の取り付け箇所数は仮締切構造体本体7aの大きさにより決定する。防水ファスナー79は、テープ79aに取り付けられた互いに噛み合う一対のエレメント79b,79cと、一対のエレメント79b,79c間に配置され上下に動かすことにより一対のエレメント79b,79cを噛み合わせたり外したりするスライダー79dを具備している。
テープ79aは、例えば、ポリエステル基布の表裏に塩化ビニル(PVC)、クロロプレン合成ゴム(CR)、又はポリウレタン(PU)をコーティングしたものである。エレメント79b,79cは、洋白製である。スライダー79dは、アルミブロンズ製である。一対のエレメント79b,79cは、隣り合う防水シート78の左右のシート端部78dにテープ79aを介して取り付けられる。エレメント79b,79cは、アウターエレメントとアウターエレメントの内部に設けられたインナーエレメントとからなり、スライダー79dを操作することによりインナーエレメントが噛み合い防水ファスナー79が閉まる。一対のエレメント79b,79cは上止め及び下止めされておらず、防水シート78は互いに分離して取扱いできるようになっている。なお、繋ぎ目78aが、シート端部78d同士が重なり合った状態のものである場合には、防水ファスナー79は、重なり合った部分の所定の箇所に取り付けられる。
防水シート78は、仮締切構造体本体7aに取り付けられる際、下部78bにおいてスライダー79dによって繋がれる。この状態では、隣り合う防水シート78の上部78eは繋がれていないので、この上部78eを丸めてロール状にしたり、蛇腹状に折り畳んだりしてコンパクト化できる。もちろん、仮締切構造体本体7aに取り付ける前に、一対のエレメント79b,79cを予め下止めし、複数の防水シート78が当初から繋がったものを製作してもよい。また、上記したように、防水カバー7bは、一枚の防水シート78を仮締切構造体本体7aの外面に巻き付けて形成してもよく、その場合は、防水シート78の左右のシート端部78dに防水ファスナー79を取り付け、環状に繋がれる。この場合も、繋ぎ目78aが、シート端部78d同士が重なり合った状態のものである場合には、防水ファスナー79は、重なり合った部分の所定の箇所に取り付けられる。防水ファスナー79として、具体的には例えばYKK社製PROSEAL(登録商標)が使用される。
[仮締切構造体の施工方法]
次に、本実施形態のフロートプラットフォームFP1を使用した仮締切構造体7の橋梁1への施工方法について説明する。
図15に示すように、仮締切構造体7の構築において、必要に応じて、橋脚上部12の上に設置された橋桁13の下面に吊り足場SSを設ける。この吊り足場SSは、足場板の周囲を吊り杆によって橋桁13の下面に固定することによって、作業者(図示略、以下同様)の移動スペースを確保する。
図16に示すように、この吊り足場SS(図16において図示略)上において、支保工8を橋脚上部12の上面の左右に1本ずつ計2本設置する。支保工8は、長さ方向に3分割されている。両端の分割支保工8a、8bにそれぞれ挟持片80が設けられる。その挟持片80を橋脚上部12の側面に宛がい、分割支保工8a、8b、8cを連結することにより、支保工8は橋脚上部12に固定される。
支保工8の両端には吊り金具81が設けられ、この吊り金具81にワイヤ82が設けられている。ワイヤ82には電動チェーンブロック(電動ホイスト)83が設けられ、その電動チェーンブロック83の吊り紐(ワイヤ)には一対の吊りフック84が設けられている。但し、吊りフック84の数は仮締切構造体7又はその組み立て中間体70,70Aを安定かつ安全に吊れるように任意に選択される。なお、吊り足場SSを構築しない場合は、例えばクレーンで支保工8等を吊上げるとともに、作業者もそのクレーンで作業位置に昇降移動すればよい。
次に、図16に示すように、作業者は、作業用のフロートプラットフォームFP1を設置し、続いて仮締切構造体7の組み立て中間体70(1段目)を組み立てる。作業用のフロートプラットフォームFP1は、橋脚10の周囲の水上にフロート分割体5、スライド機構6、通路フロート3、及び位置決めスペーサー4を用いて設置する。これらの部材及び必要機材は、機材台船(図示略)によって構築位置まで運搬する。フロートプラットフォームFP1は、仮締切構造体7の環状形状に合わせて、円環状、楕円環状、小判型環状等と適宜に設定すればよい。本実施形態においては、橋脚10の横断面が小判型環状であるため、仮締切構造体7も小判型環状とし、これに合わせてフロートプラットフォームFP1もまた小判型環状としている。フロート分割体5は、機材台船で運搬する前に、図5(A)及び図5(B)に示すように、適切な形状の矩形フロートユニット50及び湾曲フロートユニット50Aを組み合わせて、ボルト50c、ナット50dを用いて予め組み立てておく。
図1、図2、及び図16に示すように、フロートプラットフォームFP1の設置において、位置決めスペーサー4を橋脚10の壁面にアンカーボルト(図示略)で固定し、4台のフロート分割体5を橋脚10の周囲に配置し、更にスライド機構6を隣り合うフロート分割体5に固定することにより連結部20を形成し、作業フロート2を組み立てる。これにより、作業フロート2は、4箇所の連結部20において、各フロート分割体5が分離することなく相対的にスライド移動し、縮小状態と拡大状態とを取ることができる。この作業フロート2は、仮締切構造体7の組み立て中間体70,70Aを組み立てる際の実際上の作業場となる。フロート分割体5の連結部20付近に、通路フロート3をロープにより繋ぐことによりフロートプラットフォームFP1の設置を完了する。このロープの長さは、連結部20が開いた時に、作業者が乗り移れる程度に、通路フロート3が作業フロート2に接近するように調節する。
次に、設置が完了したフロートプラットフォームFP1上で仮締切構造体7の組み立て中間体70(1段目)の組み立てを行う。図1、図2、及び図16に示すように、作業者は、各スライド分割体5を、例えば作業台船を用いてフロート分割体5を先ず矢印N1、N2及び矢印N5、N6で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、次に矢印N3、N4及び矢印N7、N8で示す方向に適宜スライド移動させることにより作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)を縮小状態とする。縮小状態では、フロートプラットフォームFP1は、組み立て中間体70を組み立て、保持することができる。
作業者は、図11(A)及び図16に示すように、内側からボルト73c及びナット73dを用いて橋脚10の周方向にライナープレート73を連結し、一層目を組み立てる。一層目の上には、図13(A)〜図13(D)、及び図16に示すように、補強部材74を載置し、ボルト73c、ナット73dを用いて周方向に連結する。その際、周方向の継ぎ目に添え板77を宛がいボルト73c及びナット73dで固定する。その後、図11(A)〜図11(C)、及び図16に示すように、組み立て作業を繰り返し、ライナープレート73を3層に積層し、高さを1.5mとする。最上部に補強部材74Aを載置し、補強部材74と同様に周方向に連結する。
次に、図17及び図18に示すように、作業者は、気中で、防水カバー7bを組み立て中間体70(1段目)の周囲に全周一体物になるように取り付ける。先ず、作業者は、各防水シート78の下部78bを補強部材74にボルト73c・ナット73d止めし、各防水シート78の上部78eをロール状に巻き取り、巻き取った巻き取り体78fを固定ロープ78gにより組み立て中間体70に設けられた仮固定部70bに固定する。その後、作業者は、各防水シート78の間の一対のエレメント79b,79cにスライダー79dを取り付け一体化する。なお、各防水シート78の上部78eは、蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体としてもよい。
次に、図19に示すように、作業者は、組み立て中間体70(1段目)に電動チェーンブロック83のフック84を掛け、スイッチを操作してフロートプラットフォームFP1から一旦矢印N17で示す方向(上方向、以下同様)に吊り上げる。その後、作業者は、作業台船を用いて隣り合うフロート分割体5を先ず矢印N9、N10及び矢印N13、N14で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、次に矢印N11、N12及び矢印N15、N16で示す方向に適宜相対的にスライド移動させ、作業フロート2(ひいてはフロートプラットフォームFP1)を、一体性を保ちつつ、拡大状態とする。そうすると、位置決めスペーサー4と作業フロート2との間に、組み立て中間体70(1段目)が通過し、水中に降下可能な隙間21が生じる。なお、この拡大状態においては、隣り合うフロート分割体5の連結部20は広がった状態となり危険なので、作業者がフロートプラットフォームFP1上を移動する場合には通路フロート3を利用する。
次に、図20に示すように、作業者は、電動チェーンブロック83のスイッチ操作を行い、組み立て中間体70(1段目)を橋脚基礎11に向けて矢印N18(下方向、以下同様)で示す方向に隙間21を通過させ、水中に降下させる。その際、作業者は、潜水士(図示略、以下同様)の水中電話による設置箇所に関する指示に従う。
次に、図21及び図22に示すように、組み立て中間体70(1段目)は、橋脚基礎11の適切な位置に据付けられる。潜水士が電動チェーンブロック83のフック84を組み立て中間体70(1段目)から外したら、作業者はフック84を所定の位置まで矢印N17で示す方向に上昇させる。潜水士は、アンカーボルト73eにより組み立て中間体70(1段目)を橋脚基礎11に固定し、組み立て中間体70の内側の橋脚基礎11上において橋脚10の周囲にライナープレート73(高さ0.5m)を型枠として設置し、この型枠と組み立て中間体70との間に橋桁13上に停車させたコンクリートミキサー車(図示略)から止水用の水中コンクリートを送り込んで打設する。水中コンクリート75の上面75aは、防水シート78の下端よりも高い位置になっている。これにより、橋脚基礎11と仮締切構造体7の底部との間にできる隙間からの水の浸入を防止する。なお、水中コンクリート75の打設は、後述する全ての組み立て中間体70,70Aの積層後に行なってもよい。
次に、図23に示すように、組み立て中間体70(1段目)を据付けた後、作業者は、上記したのと同様に作業台船を用いて押すことにより各フロート分割体5をスライド移動させ、作業フロート2を縮小した状態とし、その上で2段目の組み立て中間体70Aの組み立て作業を行う。その後、作業者は、組み立て中間体70A(2段目)を矢印17で示す方向に一旦吊り上げ、作業フロート2を再び拡大状態とする。潜水士は、作業者に水中電話で指示、誘導して、組み立て中間体70A(2段目)を組み立て中間体70(1段目)の上に載置し、図13(A)〜図13(D)で示すように、ボルト73c・ナット73dによる接続作業を行う。
次に、図24に示すように、同様に、作業者は、作業フロート2を縮小状態とし、3段目の組み立て中間体70Aを組み立て、矢印N17で示す方向に一旦吊り上げ、作業フロート2を拡大状態とし、組み立て中間体70A(3段目)を矢印N18で示す方向に組み立て中間体70A(2段目)上に降下させ、潜水士は、接続作業を行う。本実施形態では、組み立て中間体70A(3段目)の上面が、水面Wを超え、かつフロートプラットフォームFP1より上に位置する。仮締切構造体7の構築は、ここで完了させることができるし、必要に応じて組み立て中間体70A(3段目)の上面に直接ライナープレート73を更に積層させてもよい。なお、組み立て中間体70,70Aの連結・固定は、本実施形態のように、各組み立て中間体70,70Aの積層毎に行なってもよいし、全ての組み立て中間体70,70Aの積層完了後に行なってもよい。
次に、図25に示すように、橋脚基礎11上への仮締切構造体7の設置が完了すれば、潜水士は、各防水シートを気中まで引き上げ、仮締切構造体本体7aの上部に固定し、スライダー79dを気中部まで引き上げ、防水ファスナー79を閉じる(防水ファスナー79を気中部まで引き上げ閉じる)ことにより防水カバー7bを完成させる。また。潜水士は、仮締切構造体7の内側に支保杆(切梁71及び縦梁72)を適宜に設ける。なお、各防水シートの仮締切構造体本体7a上部への固定は、仮固定でもよい。
次に、図26に示すように、作業者は、フロートプラットフォームFP1を橋脚10の周囲から撤去する。その後、作業者は、ホース85の先端85aを仮締切構造体7の上から外部に出し、排水用水中ポンプ(図示略)により仮締切構造体7内の水抜きを行い、ドライ環境下の作業スペースを確保する。もちろん、フロートプラットフォームFP1の撤去作業は、水抜き作業の後に行うようにしてもよい。
仮締切構造体7内において、作業者は、橋脚の修理・補強等の改修を行う。改修完了後、仮締切構造体7は撤去される。
本実施形態によれば、仮締切構造体7は、仮締切構造体本体7aの外側面7cに防水カバー7bを具備している。防水カバー7bは、比較的簡単な作業により仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うことができ、仮締切構造体7の内部への漏水を防止する。よって、水上及び水中での仮締切構造体本体7aの組み立て作業においてライナープレート73を連結する際に、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを注意深く且つ強く締め付ける作業を行なわなくてもよい。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、仮締切構造体7は、防水カバー7bで仮締切構造体本体7aの外側面7cを覆うことにより、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを強く締め付ける必要がないため、ライナープレート73の変形を防止できる。これにより、ライナープレート73の再使用が可能となる。この点からも、仮締切構造体7の施工のコスト低減を図ることができる。
また、水中で連結作業を行なう状況では、潜水士は不安定な体勢で作業を行なわなければならないため、止水用パッキンを組み付ける際、止水用パッキンを傷付け易く、シール洩れが生じやすいという問題があった。本実施形態によれば、止水用パッキンの代わりに、仮締切構造体本体7aを防水カバー7bで覆うという簡単な作業により、このような止水用パッキンの損傷に起因する漏水の防止を図ることができる。
また、防水カバー7bは、繋ぎ目78aに防水ファスナー79が設けられており、この防水ファスナー79を閉じるだけで、仮締切構造体本体7aの内部への漏水を防止することができる。よって、ライナープレート73を連結する際に、止水用パッキンを介在させてボルト73c・ナット73dを注意深く且つ強く締め付ける作業を行なわなくてもよい。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、仮締切構造体本体7aは、防水シート78を取り付ける為の補強部材74を仮締切構造体本体7aの下部(組み立て中間体70)に有しており、防水シート78の下部78bが補強部材74に取り付けられる。防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業に際し、それぞれの防水シート78の上部78eが上方に引き上げられると伴に、防水ファスナー79が上方に引き上げられ閉じた状態とされる。このように、仮締切構造体本体7aは、簡単な作業により、防水カバー7bで覆うことができる。これにより、仮締切構造体7の施工作業の効率化ひいては工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、防水シート78の上部78eは、防水ファスナー79が下方に引き下げられ開いた状態で、ロール状に巻き取られた巻き取り体78f又は蛇腹状に折り畳まれた折り畳み体として、仮固定部70bに一時的に固定される。このように、防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業に際し、防水シート78は、仮締切構造体本体7aにコンパクトに取り付けられる。これにより、仮締切構造体本体7aは、容易に防水カバー7bで覆うことができる。また、組み立て中間体70の降下作業を容易に行なうことができる。よって、防水カバー7bによる仮締切構造体本体7aの外側面7cの覆設作業を効率的に進めることができる。これにより、仮締切構造体7の施工作業の工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、防水シート78の外表面には、樹脂コーティング層が形成されている。そのため、防水シート78は、防水性が向上する。これにより、漏水防止の向上を図ることができる。また、樹脂コーティング層により、防水シート78の耐衝撃性が向上する。これにより、防水シート78が長持ちする為、再使用が容易となり、コストの削減を図ることができる。
また、仮締切構造体7の構築において、組み立て中間体70,70Aの組み立てはフロートプラットフォームFP1上で行われるので、水上作業の比率を大きくできる一方、潜水士による水中作業の比率を小さくすることができる。よって、水中作業の作業日数を低減できる。また、組立て状態の把握、部材の位置出しやひずみ等の確認作業における水上作業の比率を大きくできる一方、潜水士による水中作業の比率を小さくすることができる。この点でも水中作業の作業日数を低減できる。また、水上から水中への荷下ろし作業量を少なくできるので、これもまた潜水士による水中作業の作業日数を低減できる要因となる。一方で、空気供給の関係から潜水士による水中作業は作業可能な人数が制限される。これに対し、水上作業はそのような制限を受けにくい。よって、水中作業を低減すれば、全体の作業日数を低減できる。これにより、仮締切構造体7の施工における工期短縮、コスト低減を図ることができる。また、水中作業は事故発生の危険性が高い。本実施形態によれば、水中作業の作業日数を低減できることより、水中作業に起因する危険の低減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、水に浮くことが可能な部材を用いて水上で容易に組み立てることができる。更に、フロートプラットフォームFP1は、スライド機構6により、一体性を保ちつつ、組み立て中間体70,70Aを組み立て可能な縮小状態と水中に降下可能な拡大状態との間の相互変換を簡単確実に行える。よって、組み立て中間体70,70Aの組み立て作業と水中への降下作業とを円滑に行なうことができ、水上作業と水中作業の配分を適切なものとすることができる。そのため、水中における仮締切構造体の構築を効率的に行なうことができる。これらにより、作業日数を短縮できる。よって、仮締切構造体7を施工するための工期短縮、コスト低減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、位置決めスペーサー4を具備している。位置決めスペーサー4は、組み立て中間体70,70A組み立て時におけるフロートプラットフォームFP1の揺動を抑えることができる。これにより、仮締切構造体7の組み立て中間体70,70Aの組み立てを正確に行なうことができ、シール漏れ等の不具合発生の軽減を図ることができる。
また、フロートプラットフォームFP1は、通路フロート3を具備している。フロートプラットフォームFP1は、拡大状態を取った時に、隣り合うフロート分割体5間の連結部20が開いた状態となる。その際、作業者は作業フロート2から通路フロート3に乗り移って移動する。これにより、作業者の安全の向上を図ることができる。
<第2の実施形態>
図27を参照して、本発明の第2の実施形態に係る仮締切構造体7Aを説明する。仮締切構造体7Aにおいて、第1の実施形態に係る仮締切構造体7の構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、仮締切構造体7と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。図27に示すように、仮締切構造体7Aは、防水シート78Aの下部78bに、ボルト取り付け穴78cが形成されていない点、及びクランプ9,止水パッキン78k,及び押さえ板78lを具備する点で第1の実施形態と相違している。また、FRP板78i及びヤシ繊維マット78jを具備する点で第1の実施形態と相違している。
クランプ9は、仮締切構造体本体7aに防水カバー7bを取り付けるためのものである。この取り付け作業は、気中で行なわれる。クランプ9は、本体部90とボルト部91とハンドル92とを具備している。本体部90は、アゴ部90aを具備している。ボルト部91は、先端部91aを具備している。対象物は、アゴ部90aと先端部91aとの間に挟まれる。ハンドル92を回転させることにより、対象物の締め付けが行なわれる。
仮締切構造体本体7aへの防水カバー7bの取り付けに際し、先ず、止水パッキン78kが、補強リング74の外側のフランジ74dの表面に貼り付けられる。次に、予め巻き込んだ防水シートの下部78bが、止水パッキン78kの表面に配置される。更に、防水シートの下部78bの表面には、所定の間隔(例えば、約20cm毎)で、押さえ板78lが配置される。押さえ板78lは、例えば、一辺50mmの正方形である。もちろん、長方形、円形、楕円形、又は長円形等であってもよい。押さえ板78lの形状として、帯状を採用してもよい。押さえ板78lが、帯状である場合には、周方向に沿って防水シートの下部78bを押さえる。この場合は、押さえ板78lの間に間隔を設けてもよいし、設けなくてもよい。これらの補強部材74のフランジ74d、止水パッキン78k、防水シート78、及び押さえ板78lは、クランプ9の本体90のアゴ部90aとボルト91の先端部91aとの間に挟まれ、ハンドル92の回転により固定される。固定は、仮締切構造体本体7aの周囲の前記所定の間隔毎に複数個所で行われる。 クランプ9として、具体的には、例えば、ブルマン(登録商標)、リキマン(登録商標)、又はシャコ万力等が使用される。また、押さえ板78lとして、例えば、平鋼等が使用される。本実施形態の止水パッキン78k及び押さえ板78lは、第1の実施形態にも適用可能である。
補強リング74,74Aのフランジ74dは、ライナープレート73の外側から突出している。補強リング74,74Aのフランジ74dの外側に取り付けられる防水シート78Aとライナープレート73の外側との間に空間78h(例えば、約24mm)が発生する。この空間78hを埋めるために、上下の補強リング74,74A間に、ヤシ繊維マット78j(厚み約30mm)が充填される。ヤシ繊維マット78jは、本発明でいう充填材の一例に相当する。更に、ヤシ繊維マット78jがライナープレート73の凹凸部へ膨らむのを防止する為、短冊状のFRP板78iが、ライナープレート73とヤシ繊維マット78jとの間に等間隔で差し込まれる。本実施形態のヤシ繊維マット78jは、第1の実施形態にも適用可能である。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態において、クランプ9が、仮締切構造体本体7aへの防水カバー7bの取り付けに用いられる。クランプ9を用いた取り付け作業は、作業性に優れている。これにより、仮締切構造体7の構築における作業の効率化、確実性の向上を図ることができる。更には、工期の短縮、コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態において、仮締切構造体本体7aと防水カバー7bとの間の空隙にヤシ繊維マット78jが、充填されている。そのため、水圧による防水シート78の伸びを緩和することができる。これにより、防水シート78Aの再使用が容易となり、コストの削減を図ることができる。
<第3の実施形態>
図28〜図32を参照して、本発明の第3の実施形態に係るフロートプラットフォームFP2及びFP3を説明する。フロートプラットフォームFP2,FP3において、第1の実施形態に係るフロートプラットフォームFP1の構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には、フロートプラットフォームFP1と同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
先ず、図28に示すように、フロートプラットフォームFP2は、橋脚10Aに適合し、組み立て中間体70Bの組み立てができるように構成されたものであり、フロート分割体5Aを含む作業フロート2Fを具備する点で第1の実施形態〜第2の実施形態と相違している。組み立て中間体70Bは、平面視において呈する形状が組み立て中間体70と相違している。
図28及び図29に示すように、作業フロート2Aは、4台のフロート分割体5Aを連結して製作される。フロート分割体5Aは、直線部55と湾曲形状部56Aとを含んでいる。直線部55は、直方体形状を有する矩形フロートユニット50を連結して製作され、連結する矩形フロートユニット50の数により長さを調節可能である。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状を呈する。湾曲形状部56Aは、2台の直方体形状の矩形フロートユニット50と三角柱形状を有する2台の湾曲形状生成スペーサー50Bとを組み合わせて製作される。湾曲形状生成スペーサー50Bは、平面視において三角形状を有している。湾曲形状生成スペーサー50Bの一つの角部57aは、作業フロート2Aの内側に配置され、他の二つの角部57b,57cは、外側に配置される。これらの角部57a,57b,57cの角度は、変更可能に構成されている。湾曲形状部56Aは、角部57a,57b,57cの角度が調整された湾曲形状生成スペーサー50Aを隣接する矩形フロートユニット50と連結することにより、橋脚10Aの外形状に合わせて形成される。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状に限らず長方形形状等の他の矩形形状であってもよい。
フロート分割体5Aを製作するのに使用する湾曲形状生成スペーサー50Bの数は、2台に限られず、橋脚10Aの外形状に合わせて、1台、3台、5台、6台、7台、8台、9台、又はそれ以上としてもよい。複数台の湾曲形状生成スペーサー50Bを隣接させて連結することも可能である。湾曲形状生成スペーサー50Bは、隣接する矩形フロートユニット50又は湾曲形状生成スペーサー50Bと、例えば、ボルト・ナットを用いて連結される。
図30に示すように、湾曲形状生成スペーサー50Bは、作業板としての木製足場板58とフレーム部59とを具備している。木製足場板58は、湾曲形状生成スペーサー50Bの上面を平面状にし、フロートプラットフォームFP2上での作業を容易なものとするためのものである。木製足場板58は、フレーム部59に固定するためのボルト取り付け穴58aを有している。
作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
フレーム部59は、フレーム材59a,59b、蝶番59c、摺動板59e、摺動部スペーサー59fを具備している。角部57a,57b,57cには、それぞれ蝶番59cが配置されている。
フレーム材59aは、フレーム部59の両側部を形成するためのものである。蝶番59cは、羽根59iと軸59jを具備しており、軸59jを支点に羽根59iが回転し、これにより角部57a,57b,57cの角度が、変更可能となっている。各側部において、2本のフレーム材59aが、各角部57a,57b,57cに配置された蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定され、蝶番59c同士を連結している。
フレーム材59bは、フレーム部59の前面を形成するためのものである。2本のフレーム材59bが、角部57bにおいて、蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定されている。フレーム材59bは、後述する摺動部59lを摺動させるためのレール部59kを有している。フレーム材59a,59bは、前記三角形状の辺を形成する。
フレーム部59は、角部57cに摺動部59lを有している。摺動板59eは、摺動部スペーサー59f及び蝶番59cの羽根59iと組み合わさって、レール部59kを摺動する摺動部59lを形成する。摺動板59eは、摺動部スペーサー59fを介在させて、蝶番59cの羽根59iとボルト59g・ナット59hにより固定される。これにより摺動板59eの上下の端部に溝を形成し、摺動部59lとする。摺動部59lを上下のフレーム材59bのレール部59kにはめ込むことにより、摺動部59lは、矢印N19及び矢印N20で示す方向にレール部59k上を摺動可能となる。摺動することによりフレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さを調整することができる。
図31(A)に示すように、摺動部59lを矢印N19で示す方向に摺動させると角部57aの角度は大きくなり、角部57b,57cの角度は小さくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは、大きくなる。逆に、図31(B)に示すように、摺動部59lを矢印N20で示す方向に摺動させると、角部57aの角度は、図32(A)に示す状態よりも小さくなり、角部57b,57cの角度は大きくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは、小さくなる。
摺動部59lは、角部57cではなく、角部57bに設けてもよい。又は、摺動部59lは、複数の箇所に設けてもよい。例えば、摺動部59lは、角部57bと角部57cに設けてもよい。
なお、2つのフレーム材59aの長さが等しい場合、前記三角形状は二等辺三角形となる。フレーム材59bは、二等辺三角形の底辺に相当する。2つのフレーム材59aのなす角部57aは頂角であり、残りの2つの角部57b,57cは底角である。
木製足場板58は、角部57a,57b,57cの角度が調整された湾曲形状生成スペーサー50Cの形状に合うように形成される。図30に示すように、フレーム材59a,59bは、木製足場板58のボルト取り付け穴58aに合わせた位置にボルト取り付け穴59dを有している。木製足場板58とフレーム部59とは、ボルト58bにより結合される。フレーム材59bには、木製足場板58の異なる形状に対応できるように複数のボルト取り付け穴59dが形成されている。
湾曲形状生成スペーサー50Bは、矩形フロートユニット50と同様、二層構造としてもよい。この場合、二層構造の下層には、例えば、湾曲形状生成スペーサー50Cに浮力を付与するための発泡スチロールを収容する。この発泡スチロールは、湾曲形状生成スペーサー50Cの形状に合わせて成形される。上層には、例えば、第1の実施形態に記載したスライド機構6を収容する。
次に、図32を参照して、図31(B)に示す湾曲形状生成スペーサー50Bを使用したフロートプラットフォームFP3を示す。橋脚10Bは、橋脚10Aと比較して大型のものである。フロートプラットフォームFP3は、橋脚10Bに適合し、組み立て中間体70Cの組み立てができるように構成されたものであり、フロート分割体5Bを含む作業フロート2Bを具備する。組み立て中間体70Cは、平面視において呈する形状が組み立て中間体70又は組み立て中間体70Bと相違している。
図32に示すように、フロート分割体5Bは、直線部55と湾曲形状部56Bとを含んでいる。直線部55には、直方体形状を有する矩形フロートユニット50が2台連結されている。直線部55の長さは、連結する矩形フロートユニット50の数により調節可能である。矩形フロートユニット50は、平面視において正方形形状を呈する。一方で、湾曲形状部56Bは、直方体形状の矩形フロートユニット50と湾曲形状生成スペーサー50Bとを組み合わせて製作される。上記したように、湾曲形状生成スペーサー50Bは、フロートプラットフォームFP2に比べ、角部57aの角度が小さく、角部57b,57cの角度は大きく、フレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さは小さくなっている。4台の矩形フロートユニット50と3台の湾曲形状生成スペーサー50Bが交互に連結されている。矩形フロートユニット50及び湾曲形状生成スペーサー50Cの接続数ならびに角部57a,57b,57cの角度及び前記辺の長さを変更することにより、湾曲形状部56Aは、湾曲度合いの異なる湾曲形状部56Bに変更される。
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
また、フロートプラットフォームFP2,FP3のフロート分割体5A,5Bは、矩形フロートユニット50や湾曲形状生成スペーサー50Bの様な単純な形状を有する部材の組み合わせにより、橋脚10A,10Bの断面形状に合わせて形成することができる。そのため、フロートプラットフォームFP2,FP3の準備の負担を軽減することができる。これにより、仮締切構造体7構築の工期の短縮、コスト削減を図ることができる。
また、湾曲形状生成スペーサー50Bは、摺動部59lを摺動させることにより、角部57a,57b,57cの角度及びフレーム材59bが形成する前記三角形状の辺の長さを変更可能である。そのため、共通の部材である湾曲形状生成スペーサー50B及び矩形フロートユニット50を異なる断面形状を有する橋脚10A,10Bに適合したフロートプラットフォームFP2,FP3の構築に使用することができ、フロートプラットフォームFP2,FP3ごとに新たな部材の準備の必要性を低減することができる。これにより、仮締切構造体7の構築に当たり、工期の短縮、コスト削減を図ることができる。
<第4の実施形態>
図33を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例に相当する。第4の実施形態は、湾曲形状生成スペーサー50Bの代わりに湾曲形状生成スペーサー50Cを使用する点において、第3の実施形態と相違する。湾曲形状生成スペーサー50Cにおいて、湾曲形状生成スペーサー50Bの構成要素と同一または類似の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。これらに関しては、詳細な説明を省略する。
図33に示すように、湾曲形状生成スペーサー50Cは、四角柱形状であり、平面視において台形形状を有している。前記台形形状の長い方の底辺は、例えば、第3の実施形態における作業フロート2A,2Bの外側に該当する側に配置され、短い方の底辺は、作業フロート2A,2Bの内側に該当する側に配置される。湾曲形状生成スペーサー50Cは、作業板としての木製足場板58Aとフレーム部59Aとを具備している。
木製足場板58Aは、湾曲形状生成スペーサー50Cの上面を平面状にし、その上での作業を容易なものとするためのものである。作業板は、木製に限らず、金属製、FRP製、ゴム製又は樹脂製を使用でき、グレーチングであることが好ましい。金属としては、例えば、鉄、ステンレス、又はアルミニウム等が挙げられる。樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレン等が挙げられる。
フレーム部59Aは、フレーム材59a,59b,59m、蝶番59c、摺動板59e、摺動部スペーサー59fを具備している。角部57a,57b,57c,57dには、それぞれ蝶番59cが配置されている。フレーム材59aは、フレーム部59Aの両側部を形成するためのものである。蝶番59cは、羽根59iと軸59jを具備しており、軸59jを支点に羽根59iが回転し、これにより角部57a,57b,57c,57dの角度が、変更可能となっている。各側部において、2本のフレーム材59aが、各角部57a,57b,57c,57dに配置された蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定され、蝶番59c同士を連結している。
フレーム材59bは、フレーム部59Aの前面を形成するためのものであり、前記台形形状の前記長い方の底辺を形成する。2本のフレーム材59bが、角部57bにおいて、蝶番59cの羽根59iの上下端において、ボルト59g・ナット59hにより固定されている。フレーム部59Aは、フレーム部59と同様、角部57cに摺動部59lを有している。上下のフレーム材59bのレール部59kを摺動部59lにはめ込むことにより、摺動部59lは、矢印N19及び矢印N20で示す方向にレール部59k上を摺動する。摺動することにより、フレーム材59bが形成する前記台形形状の前記長い方の辺の長さを調整することができる。フレーム材59a,59b,59mは、前記台形形状の辺を形成する。
摺動部59lを矢印N19で示す方向に摺動させると角部57a,57dの角度は大きくなり、角部57b,57cの角度は小さくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記長い方の辺の長さは、大きくなる。逆に、摺動部59lを矢印N20で示す方向に摺動させると、角部57a,57dの角度は小さくなり、角部57b,57cの角度は大きくなる。同時に、フレーム材59bが形成する前記長い方の辺の長さは、小さくなる。
木製足場板58Aは、角部57a,57b,57c,57dの角度が調整されたフレーム部59Aの平面視における形状に合うように形成される。フレーム材59a,59b,59mは、木製足場板58Aのボルト取り付け穴58aに合わせた位置にボルト取り付け穴59dを有している。木製足場板58Aとフレーム部59Aとは、ボルト58bにより結合される。フレーム材59bには、木製足場板58Aの異なる形状に対応できるように複数のボルト取り付け穴59dが形成されている。
摺動部59lは、角部57cではなく、角部57a,角部57b,又は角部57dに設けてもよい。また、摺動部59lは、複数の箇所に設けてもよい。例えば、摺動部59lは、角部57bと角部57cに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57cと角部57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57cと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57bと角部57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57bと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57aと角部57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、及び57aに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、及び57dに設けてもよい。 又は、摺動部59lは、角部57b、角部57a、及び57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57c、角部57a、及び57dに設けてもよい。又は、摺動部59lは、角部57b、角部57c、角部57a、及び57dに設けてもよい。
湾曲形状生成スペーサー50Cは、平面視において台形形状のものに限られず、四角形状であればよい。前記四角形状の一辺は、例えば、第3の実施形態における作業フロート2A,2Bの外側に該当する側に配置され、前記四角形状の前記一辺の対辺は作業フロート2A,2Bの内側に該当する側に配置されている。前記四角形状の前記一辺の長さは前記対辺の長さよりも大きい設定とされている。
本実施形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を奏する。
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る仮締切構造体、仮締切構造体の施工方法及びそれに使用するプラットフォームの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。また、上述した各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
上記の実施形態においては、河川における橋脚を改修する際の仮締切構造体の構築について説明した。本発明は、橋脚以外の水中構造物にも適用可能である。水中構造物として、具体的には、例えば、水門等が挙げられる。本発明は、河川における橋脚等の水中構造物だけでなく、海、湖などの橋脚を含む水中構造物の改修時の仮締切構造体の構築に適用し得ることはもちろんである。
仮締切構造体の組み立て中間体の積層数は適宜に設定可能である。さらに、前記組み立て中間体のライナープレートの積層数も、1層、2層、3層、4層、5層等と任意に設定可能である。また、周方向のライナープレートの使用数も任意に設定可能である。
防水シート取り付け部は、仮締切構造体本体の下部ではなく、前記仮締切構造体本体の上部に設ける構成としてもよい。この場合、防水カバーは、少なくとも1の防水シートの上部が前記防水シート取り付け部に取り付けられ、前記少なくとも1の防水シートの下部が下方に引き下げられ、且つ防水ファスナーが下方に引き下げられ閉じた状態で、前記仮締切構造体本体の外側面を覆う。
漏水防止接合手段は、防水ファスナーに限られず、防水シートのシート端部間の繋ぎ目を、漏水を防止するように接合できるものであれば種々に変更可能である。漏水防止接合手段の他の例として、例えば、ボルトを用いて防水シートのシート端部を仮締切構造体本体に留めることが挙げられる。
作業用プラットフォームは、橋脚の所定の高さの全周囲に設ける構成としてもよい。所定の高さは、水面よりも高い位置とすることが好ましい。このプラットフォームは、外周部を所要長さ切り離し可能とされているか又は折れ曲がり可能とされており、これに基づき仮締切構造体の組み立て中間体をその上で組み立て可能な拡大状態と前記組み立て中間体を通過・下降させ得る縮小状態とを取ることができる。
上記の第3及び第4の実施形態において説明した湾曲形状生成スペーサーの平面視における形状は、湾曲形状生成スペーサー50C,50Dのように三角形状又は四角形状に限られない。五角形状、六角形状、七角形状、八角形状、又はそれ以上の多角形状を呈するものでもよい。この多角形状は、平面視において、少なくとも3の角部と、前記少なくとも3の角部の各角部を繋ぐ少なくとも3の辺を有している。前記各角部は、角度を変更可能に構成され、前記少なくとも3の角部のうち少なくとも2の角部は、前記作業フロートの外側に配置され、少なくとも1の角部は前記作業フロートの内側に配置され、前記作業フロートの前記外側に配置された前記少なくとも2の角部を繋ぐ前記辺は、長さを変更可能に構成され、前記各角部の前記角度及び前記少なくとも2の角部を繋ぐ前記辺の前記長さを変更することにより、前記湾曲形状部の湾曲度合いを調整するように構成されている。
湾曲形状生成スペーサーとして、L字鋼等の形鋼を使用することもできる。例えば、適切な長さにカットされたL字鋼を矩形フロートユニット50にボルト等を用いて直接固定し、前記湾曲形状部が所望の湾曲度合いになるようにしてもよい。
FP1,FP2,FP3 フロートプラットフォーム(作業プラットフォーム)
10,10A,10B 橋脚(水中構造物)
7 仮締切構造体
7a 仮締切構造体本体
7b 防水カバー
7c 外側面
70,70A,70B,70C 組み立て中間体
70b 仮固定部
74 補強部材(防水シート取り付け部)
78,78A 防水シート
78a 繋ぎ目
78b 防水シートの下部
78e 防水シートの上部
78f 巻き取り体
78j ヤシ繊維マット(充填材)
79 防水ファスナー(漏水防止接合手段)