本発明を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
実施形態1に係る診断方法を図面に基いて説明する。図1は、実施形態1に係る診断方法が実施される切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の切削ユニットの要部の斜視図である。図3は、図2に示された切削ユニットの切削ブレードと切削水ノズルとの位置関係を示す正面図である。図4は、図1に示された切削装置の制御ユニットが記憶した基準画像の一例を示す図である。図5は、実施形態1に係る診断方法を示すフローチャートである。
実施形態1に係る診断方法は、図1に示す切削装置1により実施される。切削装置1は、被加工物200を切削する装置である。実施形態1において、切削装置1が切削する被加工物200は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。被加工物200は、平坦な表面201の格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。被加工物200は、表面201の裏側の裏面204に粘着テープ210が貼着され、粘着テープ210の外縁部に環状フレーム211が装着されて、環状フレーム211の開口212内に支持されている。また、本発明では、被加工物200は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
切削装置1は、図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持する保持手段であるチャックテーブル10と、チャックテーブル10が保持する被加工物200をスピンドル23に装着した切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット30と、各構成要素を制御する制御ユニット80とを備える。
また、切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする図示しないX軸移動ユニットと、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット40と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット50とを少なくとも備える。
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニットにより切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、図1に示すように、環状フレーム211をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
切削ユニット20は、チャックテーブル10で保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、図1に示すように、Y軸移動ユニット40、Z軸移動ユニット50などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。
切削ユニット20は、図2に示すように、スピンドルハウジング22と、スピンドル23と、切削ブレード21と、ブレードカバー24と、切削水供給手段である切削水供給ノズル25とを備える。スピンドルハウジング22は、Y軸移動ユニット40及びZ軸移動ユニット50によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。
スピンドル23は、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転自在に収容されかつ図示しないモータにより回転される。スピンドル23は、先端部に切削ブレード21が装着される。切削ブレード21は、スピンドル23の先端部に装着されかつチャックテーブル10で保持された被加工物200を切削する。
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、いわゆるワッシャブレードであり、被加工物200を切削する円環状の切り刃28を備える。切り刃28は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、ハブ基台の外周に切り刃28が形成されたハブブレードでもよい。
ブレードカバー24は、スピンドルハウジング22の先端部に固定され、切削ブレード21の上方及びX軸方向の少なくとも一方側を覆っている。切削水供給ノズル25は、切削加工中に切削ブレード21の切り刃28に図3に示す切削水26を供給するものである。切削水供給ノズル25は、切削ブレード21の下端部に一対装着されている。切削水供給ノズル25は、X軸方向に直線状に延びているとともに、互いに平行に配置されている。
一対の切削水供給ノズル25は、図3に示すように、互いの間に切削ブレード21の切り刃28の下端部を位置付けており、切削加工中に切削ブレード21の切り刃28に向けて切削水26を噴射する切削水供給孔251を複数設けている。なお、一対の切削水供給ノズル25は、切削ブレード21までの距離300が互いに等しいことが好ましい。より好ましくは、切削ブレードからの距離に加えて、切削水供給孔251から噴射した切削水26が切削ブレード21に接触する範囲301が、互いに等しいことが望ましい。なお、切削水26が切削ブレード21に接触する範囲301とは、図3に示す例では、切り刃28の切削水26が接触する範囲301のZ軸方向の長さである。また、実施形態1では、切削ブレード21が所謂ワッシャブレードであり、切削水26の切削ブレード21への噴射状態が前後対称である例を示しているが、本発明では、切削ブレード21が所謂ハブブレードでも良く、切削ブレード21がハブブレードである場合には、切削水26の切削ブレード21への噴射状態が前後対称でなくても良い。なお、切削ブレード21がハブブレードである場合においても、一対の切削水供給ノズル25の切削ブレード21までの距離300が互いに等しいのが好ましい。
なお、切削ユニット20のスピンドル23及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット80に出力する。
X軸移動ユニットは、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット40は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット50は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
X軸移動ユニット、Y軸移動ユニット40及びZ軸移動ユニット50は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、パルスモータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット80に出力する。
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット61が載置されかつカセット61をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ60と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット70と、カセット61に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットを備える。
カセット61は、被加工物200を収容するための箱状の収容器である。洗浄ユニット70は、被加工物200を吸引保持するとともに、Z軸方向と平行な軸心回りに回転するスピンナーテーブル71と、スピンナーテーブル71に吸引保持された被加工物200に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズル72とを備える。
切削装置1は、搬送ユニットがカセット61内から被加工物200を1枚取り出してチャックテーブル10の保持面11に載置する。切削装置1は、チャックテーブル10の保持面11に被加工物200を吸引保持して、切削ユニット20が被加工物200に切削水26を供給しながら、X軸移動ユニット、回転駆動源、Y軸移動ユニット40及びZ軸移動ユニット50にチャックテーブル10と切削ユニット20とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させて、切削ユニット20で被加工物200の分割予定ライン202を切削する。切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、被加工物200を洗浄ユニット70で洗浄した後にカセット61内に収容する。また、切削装置1は、図4に示す基準画像400に一部が示された診断用被加工物100を切削ブレード21で切削し、診断用被加工物100に互いに平行な複数の切削溝101を形成することで、実施形態1に係る診断方法により状態が診断される。
制御ユニット80は、切削装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット80は、図1に示すように、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置81と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置82と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット80の演算処理装置81は、記憶装置82に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
制御ユニット80は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
また、制御ユニット80の記憶装置82は、図4に示す基準画像400を記憶している。基準画像400は、切削装置1の各構成要素の寸法、組み付け精度に問題がなく、切削装置1の動的精度が微細加工を実施することができる精度である場合に、切削ブレード21で互いに平行な切削溝101が形成された診断用被加工物100の予め定められた所定箇所を撮像ユニット30が撮像して得た画像を制御ユニット80が所定の閾値で2値化処理して生成した画像である。なお、微細加工とは、例えば隣接する切削溝101間の残存領域、または切削溝101で区画された柱の幅と切削溝101の深さの比が1:8程度以上の加工である。基準画像400は、切削装置1が、複数の切削溝101を診断用被加工物100に形成して得られた画像である。なお、微細加工の加工例は、例えば、診断用被加工物100がカーボン片である場合、切り刃28の厚み29が50μmの切削ブレード21で500μm切り込ませ、送り速度を1mm/sec、割り出し送りインデックスを100μm(隣接する切削溝101間距離を50μm)で第1方向、第2方向に切削して柱を形成する。
実施形態1では、基準画像400は、図4に密な平行斜線で示す切削溝101が暗く(黒に)なり、図4に白地で示す残存領域でありかつ切削溝101間の未切削の部分102が明るく(白)になっている。また、基準画像400を得る際に、診断用被加工物100は、未切削の部分102の幅102−1が、切削溝101の幅101−2即ち切り刃28の厚み29よりも狭く形成されている。
実施形態1に係る診断方法は、定期点検で異常なしと判断された切削装置1が微細加工が可能である状態であるかを判定する診断方法である。実施形態1において、診断方法は、定期点検後に定期点検で異常なしと判断された切削装置1が、昼間に被加工物200を加工し終わった後に、週又は月に1回、夜通し診断用被加工物100を加工して実施するが、本発明は、切削装置1が診断方法を実施するタイミングがこれに限定されない。診断方法は、図5に示すように、保持ステップST1と、診断用加工ステップST2と、診断ステップST3とを備える。
(保持ステップ)
図6は、図5に示された診断方法の保持ステップにおいて、診断用被加工物を環状フレームで支持した状態を示す斜視図である。図7は、図5に示された診断方法の保持ステップにおいて、診断用被加工物をチャックテーブルで保持した状態を示す側断面図である。
保持ステップST1は、チャックテーブル10で診断用被加工物100を保持するステップである。保持ステップST1では、切削装置1のオペレータ等が周知のマウンタを用いて、診断用被加工物100の下面103に粘着テープ210を貼着し、粘着テープ210の外縁部に環状フレーム211を装着して、図6に示すように、環状フレーム211の開口212内に診断用被加工物100を支持する。なお、実施形態1において、診断用被加工物100は、平面形状が矩形状の板であり、カーボン、ガラス、樹脂、セラミックス又はシリコンで構成されている。保持ステップST1では、切削装置1が、図7に示すように、チャックテーブル10の保持面11に粘着テープ210を介して診断用被加工物100を吸引保持し、クランプ部12で環状フレーム211をクランプする。診断方法は、診断用被加工物100をチャックテーブル10に吸引保持すると、診断用加工ステップST2に進む。
(診断用加工ステップ)
図8は、図5に示された診断方法の診断用加工ステップにおいて、診断用被加工物を切削ブレードで切削している状態を示す側断面図である。図9は、図5に示された診断方法の診断用加工ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一例を示す平面図である。図10は、図9中のX−X線に沿う断面図である。
診断用加工ステップST2は、切削水供給ノズル25で切削ブレード21に切削水26を供給しつつチャックテーブル10で保持された診断用被加工物100の下面103に至らない高さに切削ブレード21の切り刃28の刃先281の下端を位置付けて、切削ブレード21で診断用被加工物100を切削して、診断用被加工物100に複数の切削溝101を形成して、診断用被加工物100に微細加工を施すステップである。診断用加工ステップST2では、切削装置1が、チャックテーブル10を撮像ユニット30の下方に向けて移動して、撮像ユニット30で診断用被加工物100を撮像して、診断用被加工物100と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
診断用加工ステップST2では、切削装置1が、スピンドル23により回転される切削ブレード21の切り刃28の刃先281の下端のZ軸方向の位置を、診断用被加工物100の上面104と下面103との間にするとともに、診断用被加工物100と切削ブレード21とをX軸方向に並ぶ位置に位置付ける。診断用加工ステップST2では、切削装置1が、切削水供給ノズル25から切削ブレード21に切削水26を供給しながらチャックテーブル10をX軸方向に加工送りして、図8に示すように、切削ブレード21を診断用被加工物100に切り込ませて、診断用被加工物100にX軸方向と平行な切削溝101を形成する。
診断用加工ステップST2では、切削装置1が、診断用被加工物100のX軸方向の全長に亘って切削溝101を形成した後、未切削の部分102の幅102−1と切削ブレード21の切り刃28の厚み29との和と等しい所定距離、切削ユニット20をY軸方向に割り出し送りした後、チャックテーブル10をX軸方向に加工送りして、切削ブレード21を診断用被加工物100に切り込ませて、診断用被加工物100にX軸方向と平行な切削溝101を形成する。
実施形態1において、診断用加工ステップST2は、切削装置1が、チャックテーブル10をX軸方向に加工送りして診断用被加工物100のX軸方向の全長に亘って切削溝101を形成する工程と、切削ユニット20を前述した所定距離、Y軸方向に割り出し送りする工程とを繰り返して、図9及び図10に示すように、診断用被加工物100の上面104の全体に、未切削の部分102の幅102−1おきに切削溝101を形成する。このように、実施形態1において、微細加工は、切削ブレード21で互いに同一方向であるX軸方向に伸長した複数の切削溝101と隣接する切削溝101間に挟まれた未切削の部分102とを形成する加工である。診断用加工ステップST2で実施する微細加工は、切削装置1が微細加工が可能である状態では、切削溝101間の残存領域である未切削の部分102が切削溝101の底から立設した状態を維持する。診断用加工ステップST2で実施する微細加工は、切削装置1が微細加工が不可能である状態では、切削ブレード21の偏心等を原因として、未切削の部分102が切削溝101の底に向かって倒れることがある。診断方法は、診断用被加工物100の上面104全体に切削溝101を形成すると、診断ステップST3に進む。
(診断ステップ)
図11は、図5に示された診断方法の診断ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一部を撮像して得た画像の一例を示す図である。図12は、図5に示された診断方法の診断ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一部を撮像して得た画像の他の例を示す図である。図13は、図12に示す画像が得られる際の切削ブレードと切削水供給ノズルとの位置関係の一例を示す正面図である。
診断ステップST3は、診断用被加工物100に形成された互いに隣接した切削溝101間の未切削の部分102の倒れ具合に基づいて切削装置1が微細加工が可能である状態であるかを診断するステップである。診断ステップST3では、切削装置1が撮像ユニット30で診断用被加工物100の予め定められた所定箇所を撮像し、撮像して得た画像を所定の閾値で2値化処理して、例えば、図11及び図12に示す2値画像401,402を生成する。
実施形態1において、診断ステップST3では、切削装置1が、診断用被加工物100を撮像して得た2値画像401,402と、基準画像400とをパターンマッチングにより照合し、即ち、正規化相関を行って相関値を算出する。診断ステップST3では、切削装置1が、相関値が予め定められた所定値以上であると、切削装置1が、微細加工が可能である状態であると診断し、相関値が所定値未満であると、切削装置1が、微細加工が不可能である状態であると診断して、診断方法を終了する。微細加工が不可能な状態であると診断された切削装置1は、再度、各構成要素が点検、修理等が施されるか、微細加工をおこなうことがない加工に用いられる。
なお、実施形態1において、図11及び図12に示す2値画像401,402は、基準画像400と同様に、図11及び図12に密な平行斜線で示す切削溝101及び倒れた未切削の部分102(以下、符号102−3と記す)が暗く(黒に)なり、図11及び図12に白地で示す立設した状態を維持した未切削の部分102が明るく(白)になっている。図11に示す2値画像401は、全ての未切削の部分102が立設した状態を維持しているために、基準画像400との相関値が所定値以上で、切削装置1が微細加工が可能であることを示す画像である。
また、図12に示す2値画像402は、一部の未切削の部分102−3が倒れるなどして破損していることを示し、基準画像400との相関値が所定値未満で、切削装置1が微細加工が不可能であることを示す画像である。微細加工の際に、一部の未切削の部分102−3が倒れるのは、図13に示すように、一方の切削水供給ノズル25が曲がるなどして図13中の一点鎖線で示す正規の位置から位置ずれして、一対の切削水供給ノズル25同士の切削ブレード21までの距離300の差が、所定の値よりも大きくなっていることが原因と考えられる。このように、診断ステップST3は、診断用加工ステップST2で形成された未切削の部分102の倒れ具合に基づいて切削装置1の状態を診断する。
前述した実施形態1に係る診断方法は、診断用被加工物100を微細加工する診断用加工ステップST2と、診断用加工ステップST2で形成された未切削の部分102の倒れ具合に基づいて切削装置1の状態を診断する診断ステップST3と、を備える。このように、診断方法は、切削ブレード21で診断用被加工物100に微細加工を施して、2値画像401,402と基準画像400とをパターンマッチングして、切削装置1の状態を診断できる。その結果、診断方法は、各種の測定器を使用して切削装置1の複数の項目を点検する必要がないため、工数が低減でき、より簡単に切削装置1が微細加工が可能である状態であるかを確認できるという効果を奏する。
〔実施形態2〕
実施形態2に係る診断方法を図面に基いて説明する。図14は、実施形態2に係る診断方法を実施する切削装置の制御ユニットが記憶した基準画像の一例を示す図である。図15は、実施形態2に係る診断方法の診断用加工ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一例を示す平面図である。図16は、図15中のXVI−XVI線に沿う断面図である。図17は、実施形態2に係る診断方法の診断ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一部を撮像して得た画像の一例を示す図である。図18は、実施形態2に係る診断方法の診断ステップにおいて、切削溝が形成された診断用被加工物の一部を撮像して得た画像の他の例を示す図である。なお、図14、図15、図16、図17及び図18は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係る診断方法は、実施形態1と同様に、保持ステップST1と、診断用加工ステップST2と、診断ステップST3とを備える。実施形態2に係る診断方法は、切削装置1の制御ユニット80の記憶装置82が記憶する図14に示す基準画像400−2と、診断用加工ステップST2で診断用被加工物100に施す微細加工とが異なること以外、実施形態1と同じである。
図14に示す基準画像400−2は、実施形態1と同様に、切削装置1の各構成要素の寸法、組み付け精度に問題がなく、切削装置1の動的精度が微細加工を実施することができる精度である場合に、切削ブレード21で互いに交差(実施形態2では、直交)する複数の切削溝101が形成された診断用被加工物100の予め定められた所定箇所を撮像ユニット30が撮像して得た画像を制御ユニット80が所定の閾値で2値化処理して生成した画像である。図14に示す基準画像400は、切削溝101として互いに平行でかつ等間隔に設けられた複数の第1切削溝110と、切削溝101として互いに平行でかつ等間隔に設けられているとともに第1切削溝110に交差(実施形態2では、直交)する複数の第2切削溝120とが形成された診断用被加工物100の上面104の所定箇所が撮像して得られる。なお、実施形態2においても、実施形態1と同様に、基準画像400−2は、隣接する切削溝110,120間の残存領域の距離と切削溝110,120の深さの比が例えば1:8程度以上となるようにY軸方向の割り出し送り間隔と切り込み深さを設定し、切削装置1が、切削ブレード21で複数の切削溝110,120を診断用被加工物100に形成して得られた画像である。
実施形態2では、基準画像400−2は、実施形態1と同様に、図14に密な平行斜線で示す切削溝101が暗く(黒に)なり、図14に白地で示す切削溝101で区画された未切削の部分102−2が明るく(白)になっている。なお、未切削の部分102−2は、切削溝110,120間の残存領域であるとともに、切削溝110,120で区画された柱である。また、基準画像400−2を得る際に、診断用被加工物100は、未切削の部分102−2の幅102−1が、切削溝101の幅101−1即ち切り刃28の厚み29よりも狭く形成されている。
実施形態2に係る診断方法の診断用加工ステップST2では、切削装置1が、実施形態1と同様に、診断用被加工物100の上面104に微細加工を施す。実施形態2に係る診断方法の診断用加工ステップST2では、切削装置1が、実施形態1において切削溝101を形成したのと同様に、チャックテーブル10をX軸方向に加工送りして診断用被加工物100のX軸方向の全長に亘って第1切削溝110を形成する工程と、切削ユニット20を所定距離、Y軸方向に割り出し送りする工程とを繰り返して、診断用被加工物100の上面104の全体に未切削の部分102−2の幅102−1おきに第1切削溝110を形成する。
その後、実施形態2に係る診断方法の診断用加工ステップST2では、切削装置1が、チャックテーブル10を軸心回りに90度回転させて、複数の第1切削溝110を形成したのと同様に、診断用被加工物100の上面104の全体に未切削の部分102−2の幅102−1おきに第2切削溝120を形成する。このように、実施形態2において、微細加工は、図15及び図16に示すように、切削ブレード21で互いに交差する複数の切削溝101と、複数の切削溝101で区画された複数の未切削の部分102−2とを形成する加工である。
実施形態2に係る診断方法の診断ステップST3では、実施形態1と同様に、切削装置1が撮像ユニット30で診断用被加工物100の予め定められた所定箇所を撮像し、撮像して得た画像を所定の閾値で2値化処理して、例えば、図17及び図18に示す2値画像401−2,402−2を生成する。実施形態1において、診断ステップST3では、切削装置1が、診断用被加工物100を撮像した得た2値画像401−2,402−2と、基準画像400−2とをパターンマッチングにより照合し、即ち、正規化相関を行って相関値を算出し、実施形態1と同様に、切削装置1が微細加工が可能である状態であるかを診断する。
なお、実施形態2において、図17及び図18に示す2値画像401−2,402−2は、基準画像400−2と同様に、図17及び図18に密な平行斜線で示す切削溝101及び倒れた未切削の部分102−2(以下、符号102−3で記す)が暗く(黒に)なり、図17及び図18に白地で示す立設した状態を維持した未切削の部分102−2が明るく(白)になっている。図17に示す2値画像401−2は、図11に示す2値画像401と同様に、切削装置1が微細加工が可能である状態であることを示す画像である。また、図18に示す2値画像402−2は、一部の未切削の部分102−3が倒れるなどして破損していることを示し、図12に示す2値画像402と同様に、切削装置1が微細加工が不可能である状態であることを示す画像である。
前述した実施形態2に係る診断方法は、診断用被加工物100を微細加工する診断用加工ステップST2と、診断用加工ステップST2で形成された未切削の部分102−2の倒れ具合に基づいて切削装置1の状態を診断する診断ステップST3と、を備える。このように、診断方法は、実施形態1と同様に、各種の測定器を使用して切削装置1の複数の項目を点検する必要がないため、工数が低減でき、より簡単に切削装置1が微細加工が可能である状態であるかを確認できるという効果を奏する。
〔変形例〕
実施形態1及び実施形態2の変形例に係る診断方法を説明する。実施形態1及び実施形態2の変形例に係る診断方法は、実施形態1及び実施形態2と同様に、保持ステップST1と、診断用加工ステップST2と、診断ステップST3とを備える。変形例に係る診断方法は、診断ステップST3において切削装置1の微細加工が可能である状態であるかを診断する方法が、実施形態1及び実施形態2と異なること以外、実施形態1及び実施形態2と同じである。
変形例に係る診断方法は、診断ステップST3では、2値画像401,402,401−2,402−2の立設した状態を維持した未切削の部分102,102−2の面積を合計した面積を算出し、算出した面積が予め記憶された所定の面積以上である場合に、切削装置1が微細加工が可能である状態であると診断し、所定の面積未満である場合に、切削装置1が微細加工が不可能である状態であると診断する。なお、所定の面積は、予め記憶装置82に記憶されているとともに、前述した基準画像400,400−2の未切削の部分102の面積に極力近いであるのが望ましい。
なお、変形例に係る診断方法の診断ステップST3では、2値画像401,402,401−2,402−2の立設した状態を維持した未切削の部分102,102−2の面積に基づいて、切削装置1の状態を診断しているが、本発明は、2値画像401,402,401−2,402−2の切削溝101及び倒れた未切削の部分102−3の面積に基づいて、切削装置1の状態を診断しても良い。本発明は、2値画像401,402,401−2,402−2の切削溝101及び倒れた未切削の部分102−3の面積に基づいて、切削装置1の状態を診断する際には、2値画像401,402,401−2,402−2の切削溝101及び倒れた未切削の部分102−3の合計の面積を算出し、算出した面積が予め記憶された第2の所定の面積以下である場合に、切削装置1が微細加工が可能である状態であると診断し、第2の所定の面積を超える場合に、切削装置1が微細加工が不可能である状態であると診断する。なお、第2の所定の面積は、予め記憶装置82に記憶されているとともに、前述した基準画像400,400−2の切削溝101の面積に極力近いであるのが望ましい。
変形例に係る診断方法は、診断用被加工物100を微細加工する診断用加工ステップST2と、診断用加工ステップST2で形成された未切削の部分102,102−2の倒れ具合に基づいて切削装置1の状態を診断する診断ステップST3と、を備える。このように、診断方法は、実施形態1と同様に、各種の測定器を使用して切削装置1の複数の項目を点検する必要がないため、工数が低減でき、より簡単に切削装置1が微細加工が可能であるか否かの状態を確認できるという効果を奏する。
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。前述した変形例では、診断方法は、2値画像401,402,401−2,402−2の立設した状態を維持した未切削の部分102,102−2の面積、又は、2値画像401,402,401−2,402−2の切削溝101及び倒れた未切削の部分102−3の面積に基づいて、切削装置1の状態を診断している。しかしながら、本発明では、診断方法は、特に実施形態2において、診断ステップST3において、倒れた未切削の部分102−2の数を数えて、数えた数が予め定められた所定数以上であると、微細加工が可能である状態であると診断し、所定数未満であると、微細加工が不可能なである状態であると診断しても良い。
また、前述した実施形態等では、2値画像である基準画像400,400−2を記憶し、診断ステップST3において、診断用被加工物100を撮像して得た画像を2値化処理したが、本発明は、基準画像400,400−2が2値画像でなくても良く、診断ステップST3において、診断用被加工物100を撮像して得た画像を2値化処理しなくても良い。