以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、上下方向、左右方向、前後方向については図1に示す方向を基準とする。
まず、図1と図2を参照して、ドラム式洗濯機100(洗濯機)の構成と動作を説明する。図1は本発明の実施形態に係るドラム式洗濯機の斜視図である。図2は本発明の実施形態に係るドラム式洗濯機の内部構造を右側面から見た断面図である。
図1に示すように、ドラム式洗濯機100は、筐体1などを備えて構成されている。この筐体1は、ドラム式洗濯機100の外郭を構成するものである。また、筐体1は、ベース1aの上に取り付けられており、左右の側板1b(図1では右の側板のみを図示)、前面カバー1c、背面カバー1d(図2参照)、上面カバー1e、下部前面カバー1fで構成されている。このようにして構成された筐体1は、ベース1aを含めて箱状の外枠を形成し、外枠として十分な強度を有している。
前面カバー1cの略中央には、衣類(洗濯物)を出し入れするための投入口(図示せず)を塞ぐドア2が設けられている。このドア2は、前面カバー1cに設けたヒンジによって開閉可能に支持されている。また、ドア2は、ドア開放取手2aを備えている。このドア開放取手2aを引くことでロック機構(図示せず)が外れてドア2が開き、ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされてドア2が閉じる。
上面カバー1eには、水道栓からドラム式洗濯機100に給水するための給水ホース接続口30が設けられている。筐体1の上部には、操作・表示パネル3と、洗剤容器12とが設けられている。この操作・表示パネル3は、電源スイッチ4、操作スイッチ5、表示器6を備えている。ベース1aには、排水を行うための排水ホース14が取り付けられている。
図2に示すように、ドラム式洗濯機100は、外槽11、ドラム(内槽)21、モータ41、制御装置51(制御部)などを備えて構成されている。
外槽11は、水を溜めるものであり、筐体1の内部に設けられている。また、外槽11は、前方が開口して形成され、後方を閉じた有底の略円筒を形成している。この外槽11の開口と筐体1の投入口は、前後方向に伸縮しやすいベローズ16により接続されている。ベローズ16は、環状のパッキンである弾性体のエラストマーや合成ゴム材料で成形され、ドア2を閉めることでドラム21を水封する。
前面カバー1cは、外槽11の開口と略同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。外槽11は、洗濯容量の大容量化の際、筐体1と外槽11の空間を確保するためのテーパー部11aを有している。このテーパー部11aを設けることで、ドラム式洗濯機100が大容量化して外槽11が拡大したときに、外槽11が振動可能な空間を確保することができる。
また、外槽11の下部は、筐体1に固定された左右一対のサスペンション26(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽11の上部は、外槽11の前後方向への倒れ込みを抑制するために、懸架手段8と懸架手段9の二組の懸架手段(コイルばねで構成)が接続されている。
ドラム21は、衣類(洗濯物)を収納し、外槽11に内包されている。また、ドラム21の内周面には、ドラム21内の洗濯水(液体)を外槽11に排水するための複数個の脱水孔(貫通孔)21a(図2では一部のみ図示)が形成されている。また、ドラム21の内周面には、ドラム21内に投入された衣類を持ち上げるための複数個(図2では1個のみを図示)のバッフル23が設けられている。このバッフル23は、ドラム21の前後方向に延在し、ドラム21の周方向に間隔をおいて設けられている。
また、ドラム21の前端には、円筒状の流体バランサ21bが設けられている。また、筐体1の投入口、外槽11の開口部、ドラム21の開口部は連通しており、ドア2を開くことでドラム21内への衣類の出し入れが可能となる。なお、外槽11は、開口部を含む側と、モータ41が取り付けられる側とに分割することができる。
また、ドラム21の回転軸Azは、ドラム式洗濯機100の前方から後方に向けて奥側が下になるように傾斜している。なお、ドラム21の回転軸Azは、図2に示すように傾斜する構成に限定されるものではなく、前後方向に水平に構成されたものでもよい。
モータ41は、ドラム21を回転させるものであり、外槽11の背面に設けられている。また、モータ41は、回転軸となるシャフト42が外槽11を貫通し、ドラム21と結合している。また、モータ41が駆動すると、ドラム21が正転(ドラム式洗濯機100を正面から見て時計回り方向)、逆転(ドラム式洗濯機100を正面から見て反時計回り方向)の両方向に回転駆動される。また、モータ41には、該モータ41の回転速度を計測する回転速度センサ(回転速度計測手段)25が設けられている。
外槽11には、給水弁15および洗剤容器12を介して給水ホース17の一端が接続されている。給水弁15を開くことで、外槽11内には給水ホース接続口30から洗濯水が供給される。また、外槽11には、外槽11に溜まった水位(水量)を検出する水位センサ24(水位検出手段)が設けられている。この水位センサ24は、例えば感圧式のものであり、予め設定した所定値(所定水位)を超えると、脱水工程を停止するように構成されている。
操作・表示パネル3(図1参照)は、筐体1の上部に設けた上補強部材13a(図2参照)に備えられた制御装置51と電気的に接続されている。この制御装置51には冷却ファン(図示せず)が取り付けられている。また、制御装置51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を搭載したCPUボード、入出力インターフェースボード等を搭載している。
制御装置51は、モータ41の回転速度(r/min、rpm)を制御する。また、制御装置51は、振動センサ18の検出値、水位センサ24の検出値、回転速度センサ25の検出値を取得する。
外槽11の下部に接続された排水ホース14は、排水経路に循環ポンプ27、糸屑フィルタ28、排水弁14aが設けられている。排水弁14aを閉じて給水することで外槽11に洗濯水を溜め、排水弁14aを開くことで外槽11内の洗濯水を機外へ自然排水する。
また、外槽11の下方には、外槽11の振動振幅を検出する振動センサ18が設けられている。例えば、振動センサ18の検出値が予め設定した閾値を超えると、脱水工程を停止するようになっている。
このように構成されたドラム式洗濯機100では、まず利用者が電源スイッチ4(図1参照)を押すことで、ドラム式洗濯機100が起動する。そして、利用者は、ドア開放取手2a(図1参照)を引き、ドア2(図1参照)を開いてドラム21(図2参照)内に衣類(洗濯物)を投入する。そして、利用者は、ドア2を閉じた後、操作スイッチ5(図1参照)を操作することで、運転を開始する。運転が開始されると、ドラム21が回転して、注水前の衣類の質量(洗濯物の負荷量)を算出する(負荷量検出手段)。すなわち、制御装置51は、モータ41(図2参照)の回転速度(回転数)と電流値とに基づいて、ドラム21内の衣類の質量を算出する。そして、制御装置51は、算出した衣類の質量に基づいて、投入する洗剤量を表示器6(図1参照)に表示する。利用者は、表示機6の表示を確認して、洗剤容器12内に所定量の洗剤量を投入する。その後、制御装置51は、洗い工程を開始する。
洗い工程では、給水弁15(図2参照)を開いて、給水ホース接続口30(図1参照)から供給した水を給水ホース17(図2参照)および洗剤容器12(図2参照)を介して、洗剤と共に外槽11内に供給する。このとき、算出した衣類の質量が多い程、洗い工程での給水量が多くなる。また、このとき、循環ポンプ27(図2参照)内で未溶解の洗剤と水とが撹拌される。これにより、効率よく洗剤が溶かされ、高濃度の洗剤液が生成される。制御装置51は、この動作を所定時間実行した後、ドラム21を正転、停止、逆転、停止を繰り返す洗い動作を所定時間行う。このとき、衣類がバッフル23(図2参照)によって持ち上げられて落下する動作が繰り返されることで衣類の洗浄力が高められる。
制御装置51は、洗い工程を行った後、脱水工程(脱水動作)を行う。まず、排水弁14a(図2参照)を開くことで、外槽11内の水が排水ホース14(図2参照)を介してドラム式洗濯機100の外部(機外)に排出される。次に、制御装置51は、ドラム21の内周面に衣類を張り付ける動作を行う。そして、制御装置51は、ドラム21を低速回転(例えば50r/min)で一方向に回転させる。このとき、洗い工程で水を含んだ衣類がドラム21の回転時にバッフル23によって持ち上げられ、衣類が落下する際にドラム21の内周面に広げられる。次に、制御装置51は、ドラム21の回転速度を徐々に上昇させて、ドラム21の内周面に衣類を張り付かせる。衣類がドラム21の内周面に張り付くと、ドラム21の回転速度を徐々に上昇させて、外槽11の共振区間および筐体1の共振区間を通過して、ドラム21が目標回転速度(例えば、900r/min)に到達する。目標回転速度到達後、ドラム21が所定時間回転する。このように外槽11の共振区間、筐体1の共振区間、筐体1の共振区間を通過して目標回転速度まで到達する区間、および目標回転速度到達後の区間において、衣類に含まれる水が遠心脱水される。
ところで、脱水工程では、洗い工程で使用されて外槽11に溜まった水と、ドラム21の回転速度の上昇に伴って衣類から脱け出た水と、を機外に排出する。外槽11の共振区間と筐体1の共振区間では、衣類が洗い工程の水を含んでいる。このため、外槽11の共振区間と筐体1の共振区間では、ドラム21の回転速度の上昇に伴い、衣類から水が抜ける量(脱水量)が、筐体1の共振区間を通過して目標回転速度に向かう区間や目標回転速度時よりも多くなる。また、脱水工程において外槽11の水位(水量)が所定値を超えた場合、脱水工程を停止して、脱水工程をやり直す必要がある。これにより、運転時間の増加および消費電力の増加を招く。
また、ドラム21の内周面に張り付いた衣類が片寄ってアンバランスになると、ドラム21の回転速度の脈動(回転変動)や、外槽11の共振区間での外槽11の振動振幅が大きくなる。ドラム21の回転変動や外槽11の振動振幅が所定の値よりも大きくなると、アンバランスを小さくするために、ドラム21の回転速度を低下または停止する必要がある。この場合、制御装置51は、ドラム21の正転と逆転を繰り返すほぐし動作や、注水を行い、衣類のアンバランスを修正する動作を行う。
制御装置51は、この脱水工程を行った後、すすぎ工程を行う。このすすぎ工程では、給水弁15を開いて、給水ホース接続口30から供給した水を給水ホース17および洗剤容器12を介して、外槽11内に供給する。また、洗い工程と同様に、算出した衣類の質量が多い程、給水量が多くなる。このすすぎ工程では、洗い工程と同様に、ドラム21の正転、停止、逆転、停止の動作を繰り返す。このとき、バッフル23によって持ち上げられた衣類が落下する攪拌動作を所定時間行う。
その後、制御装置51は、前記した脱水工程およびすすぎ工程を所定回数繰り返し、最終脱水工程に移行する。この最終脱水工程における脱水時間は、前記脱水工程より長く設定する。
なお、ドラム式洗濯乾燥機の場合は、ドラム式洗濯機100に、ヒータ、送風ファンなどが備えられて(いずれも図示せず)、最終脱水工程後に、洗い工程時よりもさらに低速でドラム21を回転させながら、温風を衣類に吹き付けて、衣類を乾燥する。
(第1実施形態)
次に、脱水工程の詳細例を図3および図4を参照して説明する。図3は第1実施形態における脱水工程の低回転速度域のフローチャートである。図4は第1実施形態における脱水工程の高回転速度域のフローチャートである。
脱水工程では、外槽11の共振区間前の低回転速度域(低速回転数域)と、低回転速度域よりもドラム21の回転速度が高い高回転速度域(高速回転数域)とに分別できる。低回転速度域では、衣類をドラム21の内周壁面に張り付けることが行われる。高回転速度域では、ドラム21の回転速度を目標回転速度まで上昇させることが行われる。高回転速度域においてドラム21の回転速度を上昇させると、初めに外槽11の共振区間、次に筐体1の共振区間が現れる。そして、筐体1の共振区間を通過した後は、目標回転速度まで向かう区間(筐体1の共振後区間)を通過して、ドラム21の回転速度が目標回転速度に到達する。なお、外槽11の共振区間とは、モータ41が回転して加振する際、モータ41の回転速度における周波数と、外槽11の固有の振動周波数とが一致することで、振動が大きくなる範囲を意味する。筐体1の共振区間とは、モータ41が回転して加振する際、モータ41の回転速度における周波数と、筐体1の固有の振動周波数とが一致することで、振動が大きくなる範囲を意味する。
まず、図3を参照して脱水工程の低回転速度域におけるドラム21の回転速度の上昇方法について説明する。この低回転速度域では、ドラム21内での衣類のアンバランスの補正が行われる。
図3に示すように、脱水工程を開始すると、ステップS201において、制御装置51は、ドラム21を正回転させる。この動作は、衣類の片寄りや絡みを解消するほぐし動作である。
ほぐし動作(S201)後、ステップS202において、制御装置51は、ドラム21の回転を一旦停止する。そして、ステップS203に進み、制御装置51は、ドラム21を逆回転させる。このとき、制御装置51は、ドラム21の回転速度(回転数)を、0r/minから脱水開始回転速度ω0(例えば、50r/min)まで一定速度(例えば3r/min/s)で上昇させる。脱水開始回転速度ω0では、衣類がドラム21の上方に持ち上げられて、ドラム21の上方から落下することで、衣類がドラム21の内周面に広がる。なお、ドラム21が脱水開始回転速度に到達したことは、回転速度センサ(回転速度計)25(図2参照)に基づいて行われる。
脱水開始回転速度ω0に到達すると、ステップS204において、制御装置51は、第1のアンバランス判定を実行する。この第1のアンバランス判定は、回転変動の大きさによって判定する。なお、回転変動は、例えば、ドラム21が1回転する際、衣類をドラム21の下方から上方に持ち上げる速度(最低速度)と、衣類をドラム21の上方から下方に下げる速度(最高速度)の差分1から求める。衣類を下方から上方に持ち上げるときに速度としては遅くなり、逆に、衣類が上方から下方に下がるときに速度として速くなる。また、ドラム21が1回転する際に複数(例えば、28個)の信号(速度)を読み取って、ドラム21の回転速度を検出する。そして、その中で最も低い速度を最低速度とし、最も高い速度を最高速度とする。差分1が小さければ小さいほど、バランスがとれていることが確認できる。
ステップS204の第1のアンバランス判定において、制御装置51は、衣類がドラム21の内周面に広がり、差分1が第1の閾値以下であるかを判定する。なお、第1の閾値は、バランスがとれていると判定できる値に設定され、事前の試験によって決定される。
制御装置51は、差分1が第1の閾値以下であると判定した場合には(S204、Yes)、ステップS205に進み、ドラム21の回転速度を脱水開始回転速度ω0から第1の回転速度ω1(例えば80r/min)まで上昇させる。この場合、制御装置51は、第1の回転速度ω1を、一定速度(例えば3r/min/s)で上昇させる。なお、第1の回転速度ω1に到達したことは、回転速度センサ25によって行われる。
ステップS206において、制御装置51は、ドラム21の第1の回転速度ω1を、時間tm1維持する。なお、時間tm1は、後記する第2のアンバランス判定に必要な時間(秒)である。
そして、ステップS207において、制御装置51は、第2のアンバランス判定を実行する。第2のアンバランスの判定は、第1の回転速度ω1を時間tm1維持中(S206)における回転変動の大きさに基づいて行う。なお、回転変動は、アンバランスとなった衣類をドラム21の下方から上方に上げる速度(最低速度)と、衣類を上方から下方に下げる速度(最高速度)の差分2から求める。このため、回転変動によって第2のアンバランス判定を行うためには、ドラム21を1回転させる必要がある。よって、第1の回転速度ω1を維持する時間tm1は、ドラム21が1回転する時間である。第1実施形態では、前記したように第1の回転速度ω1に80r/minを与えているため、第1の回転速度ω1を維持する時間tm1は、0.75秒(=60/80秒)必要になる。なお、第1の回転速度ω1を維持する時間tm1を0.75秒よりも長くすることで、第2のアンバランスの誤判定をより効果的に防ぐことが可能になる。
ステップS207の第2のアンバランス判定において、制御装置51は、差分2が第2の閾値以下であるかを判定する。なお、第2の閾値は、バランスがとれていると判定できる値に設定され、事前の試験によって決定される。制御装置51は、差分2が第2の閾値以下であると判定した場合には(S207、Yes)、ステップS208に進む。
ステップS208において、制御装置51は、ドラム21の回転速度を、第1の回転速度ω1から第2の回転速度ω2(例えば100r/min)まで上昇させる。この場合、制御装置51は、第2の回転速度ω2を、一定速度(例えば3r/min/s)で上昇させる。なお、第2の回転速度ω2に到達したことは、回転速度センサ25によって行われる。
ステップS209において、制御装置51は、ドラム21の第2の回転速度ω2を時間tm2維持する。なお、時間tm2は、後記する第3のアンバランス判定に必要な時間である。
そして、ステップS210において、制御装置51は、第3のアンバランス判定を実行する。第3のアンバランス判定は、第2の回転速度ω2の時間tm2維持中(S209)における回転変動の大きさに基づいて行う。なお、回転変動は、アンバランスとなった衣類をドラム21の下方から上方に上げる速度(最低速度)と、衣類を上方から下方に下げる速度(最高速度)の差分3から求める。このため、回転変動によって第3のアンバランス判定を行うためには、ドラム21を1回転させる必要がある。よって、第2の回転速度ω2を維持する時間tm2は、ドラム21が1回転する時間である。第1実施形態では、前記したように第2の回転速度ω2に100r/minを与えているため、第2の回転速度ω2を維持する時間tm2は、0.60秒(=60/100秒)必要になる。なお、第2の回転速度ω2を維持する時間tm2を0.60秒よりも長くすることで、第3のアンバランスの誤判定をより効果的に防ぐことが可能になる。
ステップS210の第3のアンバランス判定において、制御装置51は、差分3が第3の閾値以下であるかを判定する。なお、第3の閾値は、バランスがとれていると判定できる値に設定され、事前の試験によって決定される。制御装置51は、差分3が第3の閾値以下であると判定した場合には(S210、Yes)、図4のステップS211に進む。
また、制御装置51は、第1のアンバランス判定において、以下の場合には、アンバランスが解消されていないとして、ステップS221に進み、ドラム21の回転を停止して(0r/min)、アンバランスの修正(リトライ)を行う。すなわち、制御装置51は、差分1が第1の閾値を超えていると判定した場合(S204、No)、第2のアンバランス判定において、差分2が第2の閾値を超えていると判定した場合(S207、No)、第3のアンバランス判定において、差分3が第3の閾値を超えていると判定した場合(S210、No)である。
次に、図4を参照して脱水工程の高回転速度域におけるドラム21の回転速度の上昇方法について説明する。第3のアンバランス判定後は、外槽11の共振区間、筐体1の共振区間を通過し、目標回転速度に到達する。
図4に示すように、ステップS211において、制御装置51は、ドラム21の回転速度を上昇させる。この場合、ドラム21の回転速度を、第2の回転速度ω2から外槽11の共振が終了する回転速度(筐体1の共振が開始する回転速度)ω3に到達するまで加速率R1となるように上昇させる。この加速率R1は、外槽11の共振区間においてドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合である。なお、回転速度ω3に到達したことは、回転速度センサ25によって行われる。
ステップS212において、制御装置51は、第4のアンバランス判定を実行する。第4のアンバランス判定は、外槽11に備えられた振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であるかによって判定する。なお、第4の閾値は、外槽11の共振区間においてドラム21のバランスがとれていると判定できる値に設定され、事前の試験によって決定される。制御装置51は、振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であると判定した場合には(S212、Yes)、ステップS213に進む。
ステップS213において、制御装置51は、ドラム21の回転速度が外槽11の共振が終了する回転速度ω3に到達しているか判定する。制御装置51は、ドラム21の回転速度がω3に到達していると判定した場合には(S213、Yes)、ステップS214に進む。また、制御装置51は、ω3に到達していないと判定した場合には(S213、No)、ステップS211に戻って、ドラム21の回転速度上昇(加速率R1)と、第4のアンバランス判定とを繰り返す。
ステップS214において、制御装置51は、ドラム21の回転速度を上昇させる。この場合、ドラム21の回転速度を、外槽11の共振が終了する回転速度ω3から筐体の共振が終了する回転速度ω4に到達するまで加速率R2となるように上昇させる。この加速率R2は、筐体1の共振区間においてドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合であり、前記した加速率R1よりも大きな値に設定される。
ステップS215において、制御装置51は、第4のアンバランス判定を実行する。第4のアンバランス判定は、ステップS212と同様である。制御装置51は、外槽11に備えられた振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であるかを判定する。制御装置51は、振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であると判定した場合には(S215、Yes)、ステップS216に進む。
ステップS216において、制御装置51は、ドラム21の回転速度が筐体1の共振が終了する回転速度ω4に到達しているか判定する。なお、回転速度ω4に到達していることは、回転速度センサ25によって行われる。制御装置51は、ドラム21の回転速度がω4に到達していると判定した場合には(S216、Yes)、ステップS217に進む。制御装置51は、ドラム21の回転速度がω4に到達していないと判定した場合には(S216、No)、ステップS214に戻って、ステップS214のドラム21の回転速度上昇(加速率R2)と、ステップS215の第4のアンバランス判定とを繰り返す。
ステップS217において、制御装置51は、ドラム21の回転速度を上昇させる。この場合、ドラム21の回転速度を、筐体1の共振が終了する回転速度ω4から目標回転速度に到達するまで加速率R3となるように上昇させる。
ステップS218において、制御装置51は、第4のアンバランス判定を実行する。第4のアンバランス判定は、ステップS212,S215と同様である。制御装置51は、外槽11に備えられた振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であるかを判定する。制御装置51は、振動センサ18の検出値が第4の閾値以下であると判定した場合には(S218、Yes)、ステップS219に進む。
ステップS219において、制御装置51は、ドラム21の回転速度が目標回転速度(定常回転速度)に到達しているか判定する。なお、目標回転速度に到達したことは、回転速度センサ25によって行われる。制御装置51は、ドラム21の回転速度が目標回転速度に到達していると判定した場合には(S219、Yes)、ステップS220に進む。制御装置51は、ドラム21の回転速度が目標回転速度に到達していないと判定した場合には(S219、No)、目標回転速度に到達するまで、ステップS217のドラム21の回転速度上昇(加速率R3)と、ステップS218の第4のアンバランス判定とを繰り返す。
また、制御装置51は、ステップS212,S215,S218の第4のアンバランス判定において、振動センサ18の値が第4の閾値を超えている場合(No)、アンバランスな状態であるとして、図3のステップS221に進み、ドラム21の回転を停止する。
ステップS220において、制御装置51は、目標回転速度を所定時間維持して、脱水を終了する。なお、ここでの所定時間は、事前の試験によって決定される。
次に、ドラム21の回転速度の上昇における外槽11の水位の変動について図5を参照して説明する。図5は第1実施形態における脱水工程でのドラムの回転速度と外槽の水位を示すタイムチャートである。図5の上図は、ドラム21の回転速度と時間との関係である。図5の下図は、外槽11の水位(水量)と時間との関係である。なお、図5の下図は、洗い工程が終了し、排水弁14aを開いてから時間が経過した状態(外槽11の水位が所定値を下回った状態)を示している。なお、図5の下図の所定値は、ドラム21に水が触れない水位(ドラム21と外槽11との間に位置する水位)に設定される。
図5の上図に示すように、時刻0〜mは、低回転速度域を示し、時刻m以降は、高回転速度域を示している。また、時刻a〜bは、図3のステップS201の処理に対応する。時刻b〜cは、ステップS202の処理に対応する。時刻c〜dは、ステップS203の処理に対応する。時刻d〜eは、ステップS204の処理に対応する。時刻e〜fは、ステップS205の処理に対応する。時刻f〜gは、ステップS206,S207の処理に対応する。時刻g〜hは、ステップS208の処理に対応する。時刻h〜mは、ステップS209,S210の処理に対応する。また、時刻m〜nは、外槽11の共振区間を示し、図4のステップS211〜S213の処理に対応する。時刻n〜oは、筐体1の共振区間を示し、図4のステップS214〜S216の処理に対応する。時刻o〜pは、筐体1の共振後区間を示し、図4のステップS217〜S219の処理に対応する。時刻p以降は、図4のステップS220の処理に対応する。
図5の上図に示す外槽11の共振区間(ω2→ω3)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R1)は、((ω3−ω2)/t1)によって表すことができる。図5の上図に示す筐体1の共振区間(ω3→ω4)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R2)は、((ω4−ω3)/t2)によって表すことができる。図5の上図に示す筐体1の共振後区間(ω4→目標回転速度)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R3)は、((目標回転速度−ω4)/t3)によって表すことができる。なお、第1実施形態では、加速率R2と加速率R3とは同じ値に設定されている。
また、図5の上図に示すように、ドラム21の回転速度は、外槽11の共振区間(時刻m〜n)における加速率R1が、筐体1の共振区間(時刻n〜o)の加速率R2および筐体1の共振後区間(時刻o〜p)の加速率R3よりも小さく設定されている。さらに、ドラム21の回転速度は、外槽11の共振区間から目標回転速度まで(時刻m〜p)上昇され続けて、目標回転速度まで到達する。なお、上昇され続けるとは、ドラム21の回転速度が一定になる(変化しない)区間が存在しないことを意味している。また、外槽11の共振区間、筐体1の共振区間および筐体1の共振後区間では、外槽11に備えられた振動センサ18によってアンバランス判定(S212,S215,S218)が行われる。また、ドラム21の回転速度は、モータ41に備えられた回転速度センサ(タコメータ)25によって測定される。このように、外槽11の共振区間、筐体1の共振区間および筐体1の共振後区間では、ドラム21の回転によってアンバランスを判定するのではなく、振動センサ18によってアンバランスを判定するので、ドラム21の回転速度を連続的に上昇させることができる。
ところで、洗濯機の大容量化で、洗濯する衣類の量が多い場合、洗い工程やすすぎ工程で使用する水量が多くなり、脱水工程開始時に外槽11に溜まる水量が多くなる。このように外槽11に溜まる水量が多い場合、外槽11の共振区間と筐体1の共振区間において、洗い工程やすすぎ工程で使用した水を十分に排出できなくなる。この場合、外槽11の共振区間や筐体1の共振区間において、脱水により衣類から抜ける水が排出されず外槽11に溜まり、外槽11の水量が一時的に増加する。このように脱水により衣類から抜ける水量は、ドラム21の回転速度の上昇に伴い増加するため、ドラム21の回転速度の加速率が小さくなるほど、時間当たりの衣類から抜ける水量が低下する。また、洗い工程やすすぎ工程で使用した外槽11に溜まる水および衣類から抜けた水は、時間の経過とともに機外に排出されるため、時間が経過すると、一時的に増加した外槽11の水量は低下する。また、筐体1の共振後区間は、外槽11の共振区間と筐体1の共振区間よりも脱水工程の時間が経過しているため、洗い工程やすすぎ工程において使用した外槽11に溜まった水は、すでに外槽11から排出されている。このため、筐体1の共振後区間では、衣類から抜けた水が外槽11に溜まらずに排出されるので、外槽11の水量は増加せず、外槽11の水位は時間の経過とともに低下する。
そこで、第1実施形態では、外槽11の共振区間の加速率R1を小さくすることで、外槽11の共振区間において時間当たりの衣類から抜ける水量が少なくなる。その結果、外槽11の水量が急激に増加するのを抑制して、外槽11の水位が所定値を超えるのを防止できる。すなわち、図5の下図に示すように、外槽11の共振によって外槽11の水位が一時的に増加するが(時間z1参照)、外槽11の水位が所定値を超えることがない。
また、外槽11の共振区間の加速率R1を小さくすることで、外槽11の共振区間の時間t1を長くできる。その結果、外槽11に溜まった水の排出時間を確保することができるため、外槽11の共振区間において外槽11の水量が増加するのを抑えることができる。
また、外槽11の共振区間において、外槽11の水位(水量)の増加を小さく抑えることができるので、筐体1の共振区間において衣類から抜け出た水によって、外槽11の水位が一時的に増加(時間z2参照)しても外槽11の水位を所定値以下に抑えることができる。そのため、筐体1の共振区間の加速率R2と筐体1の共振後区間の加速率R3を、外槽11の共振区間の加速率R1よりも大きくできる。
さらに、外槽11の共振区間において、外槽11の水位を低くできるので、外槽11の共振区間から目標回転速度まで、ドラム21の回転速度に一定区間(回転速度が変化しない区間)を設ける必要がなくなる。これにより、ドラム21の回転速度を常に上昇させることができ、目標回転速度に到達するまでの時間の増加を抑制して、運転時間の増加を抑制できる。また、外槽11の水位が所定値を超える前に、ドラム21の回転速度を変更して外槽11の水位を所定値以下にするような複雑な制御を行うことなく、外槽11の水位を所定値以下に維持することが可能になる。
以上のように、第1実施形態では、洗濯する衣類の量が多い場合において、外槽11の共振区間の加速率R1を、筐体1の共振区間の加速率R2以下とする(図5参照)。これにより、脱水工程のやり直しを抑制して、運転時間の増加を抑制、および消費電力の増加を抑制することができる。また、第1実施形態では、外槽11の共振区間から目標回転速度まで(ω2→目標回転速度)ドラム21の回転速度を上昇させ続けることで、ドラム21の回転速度に一定の回転速度となる区間を設けた場合よりも、運転時間の増加および消費電力の増加を抑えることができる。
また、第1実施形態では、外槽11の共振区間の加速率R1を、筐体1の共振後区間の加速率R3以下にすることで、運転時間をさらに短縮することができる(図5参照)。
なお、本実施形態では、ドラム式洗濯機100を例に挙げて説明したが、乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機にも適用できる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図6および図7を参照して詳細に説明する。図6は、第2実施形態における脱水工程のフローチャート、図7は、第2実施形態における脱水工程のドラムの回転速度と外槽の水位を示すタイムチャートである。なお、第2実施形態において、図1および図2に示すドラム式洗濯機100の構成および図3に対応するフローチャートは、第1実施形態と同様である。また、第2実施形態において、第1実施形態と同様の処理については、同一のステップ符号を付して、重複した説明を省略する。
第2実施形態では、図3のステップS217に替えて、ステップS217aにしたものである。
図6に示すように、ステップS217aにおいて、制御装置51は、ドラム21の回転速度を上昇させる。この場合、ドラム21の回転速度を、回転速度ω4から目標回転速度まで加速率R4となるように上昇させる。この加速率R4は、筐体1の共振後区間においてドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合を意味する。なお、回転速度が目標回転速度に到達したことは、回転速度センサ25によって行われる。
図7の上図に示すように、筐体1の共振後区間(ω4→目標回転速度)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R4)は、((目標回転速度−ω4)/t4)によって表すことができる(時刻o〜p1)。この加速率R4は、筐体1の共振区間(ω3→ω4)において、ドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合(加速率R2)よりも大きく設定される。また、加速率R4は、外槽11の共振区間(ω2→ω3)において、ドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合(加速率R1)よりも大きく設定されている。これにより、筐体1の共振後区間(時刻o〜p1)を第1実施形態の筐体1の共振後区間(図5の時刻o〜p)よりも短くすることができる。
第2実施形態では、筐体1の共振区間を通過して目標回転速度となる区間においてドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合(加速率R4)を、筐体1の共振区間においてドラム21の回転速度が所定時間内に変化する割合(加速率R2)よりも大きくする(図7参照)。これにより、運転時間の増加をさらに抑制できるとともに、消費電力の増加をさらに抑制できる。
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態における脱水工程のドラムの回転速度と外槽の水位を示すタイムチャートである。なお、ドラム式洗濯機100については、第1実施形態と基本的に同様な構成であるので、以下では、異なる部分について説明する。また、図8の上図における破線は、図5の上図における実線に対応している。また、図8の下図における破線は、図5の下図における実線に対応している。
制御装置51は、モータ41の回転速度と電流値に基づいて、算出した衣類の量(給水前の衣類が乾布の状態)が少ない(負荷量が少ない)場合、外槽11の共振区間、筐体1の共振区間、筐体1の共振後区間におけるそれぞれの加速率を、衣類の量が多い(負荷量が多い)場合の加速率よりも高くする(大きくする)。なお、負荷量が少ない場合とは、例えば1kg以上3kg以下であり、負荷量が多い場合とは、例えば10kg以上12以下である。
すなわち、図8の上図に示すように、外槽11の共振区間(ω2→ω3)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R5)は、((ω3−ω2)/t5)によって表すことができる(時刻m〜n1)。また、筐体1の共振区間(ω3→ω4)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R6)は、((ω4−ω3)/t6)によって表すことができる(時刻n1〜o1)。また、筐体1の共振後区間(ω4→目標回転速度)において、ドラム21の回転速度が所定時間内(例えば、1秒毎)に変化する割合(加速率R7)は、((目標回転速度−ω4)/t7)によって表すことができる(時刻o1〜p2)。なお、第3実施形態では、加速率R6と加速率R7とは同じに設定されている。
また、図8の上図に示すように、ドラム21の回転速度は、外槽11の共振区間(時刻m〜n1)における加速率R5が、図5の外槽11の共振区間(時刻m〜n)における加速率R1よりも大きい。また、ドラム21の回転速度は、筐体1の共振区間(時刻n1〜o1)における加速率R6が、図5の筐体1の共振区間(時刻n〜o)における加速率R2よりも大きい。また、ドラム21の回転速度は、筐体1の共振後区間(時刻o1〜p2)における加速率R7が、図5の筐体1の共振後区間(時刻o〜p)よりも大きい。このように、衣類の量が少ない場合の加速率は、外槽11の共振区間、筐体1の共振区間、筐体1の共振後区間の全区間において、衣類の量が多い場合の加速率よりも大きくなっている。
ところで、洗濯する衣類の量(負荷量)が少ないときは、衣類の量(負荷量)が多いときに比べて、洗い工程やすすぎ工程で使用する水量が少ない。このため、外槽11に溜まった水量が少ない状態で脱水工程を開始する。また、衣類の量が少ない場合、脱水で衣類から抜け出る水量は、衣類の量が多いときに比べて少ない。衣類の量が少ない場合、各区間(外槽11の共振区間、筐体1の共振区間、筐体1の共振後区間)の加速率を高くする。これにより、脱水で衣類から抜ける水量が急激に増加しても、衣類から抜ける水量と外槽11に溜まっている水量が少ないため、外槽11の水量が所定値を超えるのを抑えることができる。したがって、目標回転速度に到達するまでの各区間(外槽11の共振区間、筐体1の共振区間、筐体1の共振後区間)の加速率を高くすることで、目標回転速度までの到達時間を短くすることができ、運転時間の増加を抑制できるとともに消費電力の増加を抑制できる。
第3実施形態では、衣類(洗濯物)の負荷量を検出する負荷量検出手段を備える。また、制御装置51は、負荷量(衣類の量)が所定負荷値より小さい場合、ドラム21の回転速度が所定時間内で変化する割合(加速率R5,R6,R7)を、負荷量が所定負荷値より大きい場合のドラム21の回転速度が所定時間内で変化する割合(加速率R1,R2,R3)よりも、大きくする。これによれば、加速率R5,R6,R7を高くしても、外槽11の水位が所定値を超えることがないので、運転時間の増加および消費電力の増加を抑えることができる。なお、所定負荷値は、例えば、負荷量が少ない場合と多い場合との間に設定され、事前の試験によって決定される。また、所定負荷値は、複数設定してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。なお、前記した実施形態では、洗い工程後の脱水工程について説明したが、すすぎ工程後の脱水工程や最終脱水工程にも適用できる。