JP2020075282A - 鋼の連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】異種物質充填部が形成された鋳型の長寿命化を図る。【解決手段】鋼の連続鋳造用鋳型1は銅合金製のプレート21とバックアッププレート23とを有する。プレート21では表面が鋳型の内壁となり、裏面には冷却水路31が形成されている。バックアッププレート23は冷却水路31を覆うようにプレート21に取り付けられている。プレート21の表面のうちメニスカスを含む領域に形成された溝に、プレート21とは異なる熱伝導率の異種物質が充填された異種物質充填部22が形成されている。異種物質充填部22が形成されている領域に対応するプレート21の裏面の冷却水路31には、水流を撹乱し且つ前記冷却水路31の表面積を大きくする水流撹乱部32が形成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、凝固シェルの不均一冷却に起因する鋳片表面割れを防止するとともに、鋳型寿命が従来技術よりも向上した連続鋳造用鋳型及び該連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(「凝固シェル」という)が生成される。凝固シェルが、鋳型下流側に設置した水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら、内部の未凝固層とともに鋳型下方に連続的に引き抜かれ、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固して鋳片が製造されている。
鋳型での溶鋼の冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳片の鋳造方向及び幅方向で不均一となる。凝固シェルには、その収縮や変形に起因する応力が作用する。凝固初期においては、応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。表面割れは、次工程の圧延工程において鋼製品の表面欠陥となる。従って、鋼製品の表面欠陥の発生を防止するためには、鋳片表面を溶削するまたは研削して、鋳片段階でその表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼(「中炭素鋼」という)で発生しやすい。中炭素鋼では凝固時に包晶反応が起こる。鋳型内の不均一凝固は、包晶反応によるδ鉄(フェライト)からγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因すると考えられている。つまり、変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形により凝固シェルが鋳型内壁面から離れる。鋳型内壁面から離れた部位は鋳型による冷却が低下し、この鋳型内壁面から離れた部位の凝固シェル厚みが薄くなる。凝固シェル厚みが薄くなると、この部分に上記応力が集中し、表面割れが発生すると考えられている。
包晶反応を伴う鋼種の鋳片の表面割れを防止する目的として、特許文献1には、鋳型内壁面に、鋳型本体の銅合金よりも熱伝導率が異なる部位であって、それぞれが独立して複数形成されている異種物質充填部を有する連続鋳造用鋳型が提案されている。特許文献1によれば、この鋳型を用いることで、凝固初期の凝固シェルの不均一冷却による表面割れ及び包晶反応を伴う中炭素鋼でのδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みが不均一であることによる表面割れを効果的に防止できる旨が記載されている。
特開2017−39165号公報
特許文献1に記載された鋼の連続鋳造用鋳型では、鋳型本体とは異なる材料である異種物質充填部が鋳型本体に形成されているので、鋳型本体と異種物質充填部とで熱膨張率が異なり、これらの境界部位に熱応力が集中し易い。結果的に、鋳型表面に割れが生じ易い。特許文献1では、更に、熱履歴による鋳型表面の割れを抑制することを目的として異種物質充填部を覆う鍍金層を鋳型の内壁面に設けることが好ましいとされ、これにより、鋳型の長寿命化を図ることが可能とされている。但し、鋳型の内壁面に鍍金層を設けたとしても、鋳型本体と異種物質充填部とで熱応力の差が生じることに変わりはなく、異種物質充填部が形成された鋳型は使用寿命が短い傾向にある。このような鋳型の使用寿命を延長する技術が希求されるところである。
本発明は、上記の事情を鑑みて完成されたもので、異種物質充填部が形成された鋳型の長寿命化を図ることが可能な鋼の連続鋳造用鋳型及び該連続鋳造用鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、異種物質充填部が形成された領域に対応する冷却水路を通過する水流と該冷却水路との熱伝達係数を大きくして、前記領域の鋳型本体を効果的に除熱して、延いては、異種物質充填部と鋳型本体との温度を下げて、結果的に熱応力を抑える鋳型の構成を鋭意検討し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)鋼の連続鋳造用鋳型であって、鋳型の内壁となる表面と冷却水路が形成された裏面とを有する銅合金製のプレートと、前記冷却水路を覆うように前記プレートに取り付けられるバックプレートと、を備え、前記プレートの表面のうちメニスカスを含む領域に形成された溝に、前記プレートとは異なる熱伝導率の異種物質が充填された異種物質充填部が形成され、前記異種物質充填部が形成されている領域に対応する前記プレートの裏面の冷却水路には、水流を撹乱し且つ前記冷却水路の表面積を大きくする水流撹乱部が形成されている鋼の連続鋳造用鋳型。
(2)前記水流撹乱部が、前記水流の流れ方向に沿って複数配置され且つ前記冷却水路の幅方向に延在する突起から構成されている(1)に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
(3)前記水流撹乱部が、前記冷却水路に千鳥格子状に複数配置されている突起から構成されている(1)に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
(4)前記溝が直線状且つ格子状に前記プレートの表面に複数形成されており、前記異種物質充填部が格子状に前記プレートの表面に形成されている(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
(5)下記[1]〜[3]式の少なくとも1つの条件を満たす(4)に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
d<P≦S [1]
e≦L≦1000×Vc/f [2]
F≦L [3]
ここで、[1]〜[3]式において、
Sは、前記プレートの裏面に複数形成されている前記冷却水路の間隔距離(mm)、
dは、鋼の連続鋳造工程の鋳造方向と直交する鋳型の周方向での前記異種物質充填部の幅(mm)、
Pは、前記異種物質充填部のうち隣接する部位の前記周方向での間隔距離(mm)、
eは、前記鋳造方向での前記異種物質充填部の幅(mm)、
Lは、前記異種物質充填部のうち隣接する部位の前記鋳造方向の間隔距離(mm)、
Vcは、鋼の連続鋳造工程における鋳片の引き抜き速度(m/分)、
fは、鋼の連続鋳造工程で鋳型を振動させる際の鋳型の振動周波数(1/分)、
Fは、隣接する前記突起の間隔距離(mm)、である。
(6)前記溝が直線状且つ菱形状に前記プレートの表面に複数形成されていて、前記異種物質充填部が菱形状に前記プレートの表面に形成されている(1)〜(3)のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
(7)前記異種物質充填部を覆うように鍍金層が前記プレートの表面に形成されている(1)〜(6)のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
(8)下記[4]式の条件を満たす(1)〜(7)のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
0.5≦t≦10 [4]
ここで、[4]式において、tは、前記異種物質充填部の充填深さ(mm)である。
(9)(1)〜(8)のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型を用いる鋼の連続鋳造方法であって、冷却水路中の水流撹乱部が形成された位置では水流が乱流となるように前記鋼の連続鋳造用鋳型に冷却水を供給する鋼の連続鋳造方法。
本発明に係る鋼の連続鋳造用鋳型には、鋳型本体に形成されている冷却水路において、異種物質充填部が形成された領域に対応する範囲に、水流を撹乱し且つ冷却水路の表面積を大きくする水流撹乱部を設けてある。これにより、その範囲の冷却水路では、水流と冷却水路との熱伝達係数が大きくなって対流伝熱量が大きく、異種物質充填部が形成された鋳型本体の領域を効果的に除熱可能としている。異種物質充填部と鋳型本体とをより効果的に冷却することで、鋳型本体と異種物質充填部との境界部位で生じる熱応力をより効果的に抑えることができる。結果的に、包晶反応を伴う鋼種の鋳片表面割れを防止し且つ異種物質充填部が形成された鋳型の長寿命化を図ることが可能となる。
鋼の連続鋳造用鋳型の斜視図である。 本発明の実施形態の鋳型長辺を構成するプレートの表面を示す図である。 図2の□で囲った部位のプレートの構造を示す図である。 本発明の別の実施形態のプレートの表面を示す図である。 本発明の別の実施形態のプレートの裏面を示す図である。 本発明の別の実施形態の鋳型の鉛直断面図である。
本発明を説明する前に鋼の連続鋳造方法を簡単に説明する。鋳型の斜視図を図1に示す。鋳型1は、相対する一対の鋳型長辺2と、該鋳型長辺2に挟持され且つ相対する一対の鋳型短辺3とを有する。溶鋼4を収容するタンディッシュ(図示省略)が鋳型1の上方に配置され、該タンディッシュの底部には浸漬ノズル5が設置されている。一対の鋳型長辺2と一対の鋳型短辺3とで鋳型1には矩形の内部空間が形成され、該内部空間に浸漬ノズル5が挿入されている。
鋳型長辺2及び鋳型短辺3には冷却水路が形成されていて、該冷却水路に冷却水を通過させて鋳型1を冷却してある。鋼の連続鋳造の操業では、鋳型1に浸漬ノズル5を通じて溶鋼4を注入し、溶鋼4を凝固させて凝固シェルを形成して鋳片を形成し、鉛直方向下方となる鋳造方向Aに鋳型1から鋳片を引き抜いて鋳片を連続的に鋳造する。鋳型1での溶鋼4の湯面をメニスカスと呼び、鋳型1においてメニスカスM(図1で表す一点鎖線に示す位置)付近で溶鋼4の温度が最も高くなる。鋼種にもよるが、特にメニスカスMの位置で鋳型1の内壁面から鋳造方向Aに直交する周方向Bに凝固シェルから均一に抜熱を行うことが望ましい。凝固シェルの厚みの均一な成長を促進できるからである。
鋳型1の下方にはロール(図示省略)が複数配置されており、冷却水を鋳片に吹き付けつつロールで鋳片を搬送し、冷却が進み凝固が完了した後に鋳片を所定の長さに切断する。以上で、次工程の圧延の対象となる所定長さの鋳片が鋳造されることになる。
本発明は、異種物質充填部が設けられた鋳型を冷却する冷却水路に水流を撹乱し易くし且つ冷却水路の表面積を大きくする部材を設けることで、熱伝達係数を大きくして鋳型から効果的に除熱を行い、延いては、異種物質充填部と鋳型本体との温度を下げることを主眼とする。本発明によって、結果的に、これらの境界に集中する熱応力を抑え、鋳型の長寿命化を図ることができる。
本発明の鋳型の実施形態の一例を説明する。鋳型1を構成する鋳型長辺2及び鋳型短辺3はそれぞれ、表面が鋳型の内壁面となり、裏面には冷却水路が形成されているプレートと、冷却水路を覆うようにプレートに取り付けられるバックプレート23(図3(c)及び(d)参照)とを有する。プレートは、冷却水路を流れる冷却水による冷却効果を高めるべく熱伝導率が高い銅合金製である。
鋳型長辺2のプレートの表面の一例を図2に示す。プレート21の表面には、メニスカスMを含む領域に形成された溝に、プレート21とは熱伝導率が異なる異種物質が充填された異種物質充填部22が形成されている。異種物質充填部22を、メニスカスMを含むメニスカス近傍の鋳型の周方向B及び鋳造方向Aに形成してある。異種物質を溝に嵌合する形状に加工して、溝に嵌め込んで異種物質を充填することも可能であるが、鍍金手段や溶射手段などによって溝に充填することも可能である。鍍金手段や溶射手段などによって溝に異種物質を充填する場合には、溝と異種物質との間に空隙が生じることを防ぐことができる。
プレート21の表面に溝を直線状且つ格子状に複数形成し、異種物質充填部22を格子状にプレート21の表面に形成することが好ましい。メニスカスM近傍を含む領域に異種物質充填部22を直線状且つ格子状に配置することで、前記領域の周方向B及び鋳造方向Aにおける連続鋳造用鋳型の熱抵抗を規則的且つ周期的に増減させることができる。これにより、メニスカスM近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型の内壁面への熱流束が規則的且つ周期的に増減する。熱流束の規則的且つ周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態によって発生する応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなる。凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における表面割れの発生が防止される。
内壁面での熱流束の変化を確実に周期的なものとするべく、隣接する異種物質充填部22同士の間隔は同じであることが好ましい。また、プレート21を含む鋳型長辺及び鋳型短辺から構成される鋳型本体の熱伝導率に対して異種物質の熱伝導率は80%以下あるいは125%以上であることが好ましい。なお、異種物質の熱伝導率は雰囲気温度の変化に伴い変化する。よって、異種物質と鋳型本体と熱伝導率は、鋳型の製造時における室温(常温)時を基準とする。室温時において、異種物質の熱伝導率が鋳型本体に対して20%程度の差があれば、鋳型本体の内壁面での熱流束の規則的且つ周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態によって発生する応力や熱応力を低減させることが可能である。但し、前述の変態によって発生する応力などを低減させて、鋳片の表面割れを防ぐことが可能であればよいので、異種物質の熱伝導率が必ずしも前述の範囲である必要はないし、異種物質充填部22同士の間隔も必ずしも同じである必要はない。
鋳型本体の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下となる異種物質の例としては、鍍金や溶射のしやすいNi(熱伝導率:約90W/(m・K))及びNi合金(熱伝導率:約40〜90W/(m・K))を用いることができるし、プレート(鋳型本体の一部)には銅合金(熱伝導率:約100〜398W/(m・K))、例えば高熱伝導タイプの鋳型(熱伝導率:約318W/(m・K)や電磁攪拌用の低熱伝導鋳型(熱伝導率:約119〜239W/(m・K))を用いることができる。但し、異種物質及び鋳型本体には、Ni合金や銅合金以外の金属を使用可能である。鋳型本体としては、純銅(熱伝導率が398W/(m・K)程度)や前述の銅合金を使用してもよい。特に、鋳型内電磁攪拌を行う場合には、コイルからの溶鋼中への磁場強度を減衰させないために、銅以外の成分が数%加えられ、導電率が低くなった銅合金からなる鋳型を使用することとなり、銅合金の熱伝導率も純銅に比べて低下する。鋳型の用途に応じて、異種物質及び/または鋳型の材料を適宜選択して、異種物質と鋳型本体との熱伝導率を調整することが望ましい。
図示及び説明を省略してある鋳型短辺に内壁面に、鋳型長辺と同様に異種物質充填部を形成してもよい。但し、スラブ鋳片においては、その形状に起因して長辺面側の凝固シェルに応力集中が起こりやすく、長辺面側で表面割れが発生しやすい。よって、スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型の鋳型長辺には、異種物質充填部を設置することが必要であるが、鋳型短辺には必ずしも異種物質充填部を設置する必要はない。
初期凝固への影響を勘案して、定常鋳造時のメニスカスMの位置よりも距離Q離れた上方の位置から、メニスカスよりも距離R離れた下方の位置までの内壁面の領域に、異種物質充填部22を設けることが好ましい。距離Qは任意の値である。距離R(mm)は下記の[X]式から算出できる。
R=2×Vc×1000/60 [X]
ここで、Vcは、凝固シェルの引き抜き速度(m/分)である。
距離Rは、凝固開始した後の鋳片(凝固シェル)が、異種物質充填部22が形成された領域を通過する時間に関係する。凝固開始後から少なくとも2秒間、鋳片は、異種物質充填部22が設置された領域内に滞在することが好ましく、鋳片が凝固開始後から少なくとも2秒間、異種物質充填部22が設置された領域に存在するためには、メニスカスMよりも[X]式で求まる距離R以上下方に異種物質充填部22が設置されていることが好ましい。
凝固開始した後の鋳片が異種物質充填部22の設置された上端から下端までの領域内に滞在する時間を2秒以上確保すれば、異種物質充填部22による、鋳型の内壁から外壁に向かう熱流束の周期的な変化による効果が十分に得られ、表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時でも、鋳片表面割れの防止効果が得られる。但し、異種物質充填部22による熱流束の周期的な変化の効果を安定して得る上では、鋳片が異種物質充填部22の設置された領域を通過する時間として4秒以上を確保することがより好ましい。
異種物質充填部22が形成される領域の上端はメニスカスMよりも上方である限り特に限定されない。従って、距離Qはゼロを超えた任意の値となる。但し、鋳造中にメニスカスMは上下方向に変動するので、異種物質充填部22が形成される領域の上端が常にメニスカスMよりも上方位置となるように、メニスカスMよりも10mm程度上方位置まで、望ましくは20mm程度上方位置まで、異種物質充填部22を形成することが好ましい。なお、メニスカスMの位置は、鋳型長辺2の上端から60〜150mm下方位置とするのが一般的であり、これに応じて異種物質充填部22の領域を決めればよい。
鋼の連続鋳造工程では、高温の溶鋼を鋳型に注入するので、鋳型の温度は上昇する。このため、鋳型長辺及び鋳型短辺には冷却水路が形成されていて、該冷却水路に冷却水を通過させて鋳型を冷却してあり、これにより鋳型の形態を維持している。但し、異種物質充填部22はプレート21とは熱膨張率が異なり、これらの境界に集中する熱応力に起因して鋳型の内壁面に割れが生じる可能性がある。そこで、本発明では、異種物質充填部22が形成されている領域を冷却する冷却水路の範囲に、水流を撹乱し且つ冷却水路の表面積を大きくする水流撹乱部を形成して、冷却水路と水流との熱伝達係数を大きくして、特に異種物質充填部22が形成された鋳型の領域から除熱を効果的に行っている。
次に、水流撹乱部について説明する。図2に示す□で囲った部位の鋳型長辺の構造を図3に示す。図3において(a)は、前記部位のプレートの表面を示す平面図であり、(b)はその裏面を示す平面図である。(c)は前記部位の鉛直断面図であり、(d)はその水平断面図である。
図3(b)に示すように、プレート21の裏面には冷却水路31が形成されている。冷却水路31は、鋳造方向Aに沿って延長している縦長形状の複数の溝から構成され、該複数の溝は周方向Bに整列している。縦長形状であることによって、冷却水路31への水の供給流量を少なくしても冷却水路31での線流速を容易に速くでき、水流の温度を低く抑えやすく、鋳型を効率的に冷却し易い。
本発明では、異種物質充填部22が形成されている領域に対応するプレート21の裏面の冷却水路31に、水流を撹乱する水流撹乱部が形成されている。例えば、図3(b)〜(d)に示すように、冷却水路31の幅方向に延在し且つ水流の流れ方向(鋳造方向A)に沿って冷却水路31に複数配置された突起32で水流撹乱部を構成することができる。冷却水路31の水流が突起32に衝突して撹乱されて、突起32が設けられた領域における水流は乱流の度合が増加し、冷却水路31に接する水流(乱流)の境界層の厚みが薄くなる。延いては、水路から水流への熱伝達係数が高くなり、異種物質充填部22が形成された鋳型本体の領域を効果的に除熱することが可能となる。また、突起32によって、冷却水がプレート21に接触する表面積が大きくなるので、その分より効果的に、異種物質充填部22が形成された鋳型本体の領域を除熱することが可能となる。ここで、突起32は、プレート21の裏面からの1mm以上で且つ冷却水路31の幅wの半分以下となる長さ(高さ)とすることが好ましい。なお、図3では、突起32は、異種物質充填部22が形成されている領域に対応するプレート21の裏面の位置に形成されているが、鋳型の上端から下端までの冷却水路31に突起32を設けてもよい。
冷却水路31の水流の乱流の度合あるいは水流が層流であるかは、公知のレイノルズ数Reを指標にして判断できる。一般的に、水流の密度(kg/m)と水流の線速度(m/秒)と水流が流れる距離などの特性長さ(m)と水流の粘性係数(Pa・秒)とからレイノルズ数Reが算出可能である。本願では、突起32がない場合の冷却水路31の幅w(図3(c)及び(d)参照)を「特性長さ(m)」に採用して、レイノルズ数Reを算出すればよい。突起がないと仮定して算出されたReが2300を超える条件で冷却水を冷却水路31に供給すれば、突起32が形成された領域では、突起32によって幅が狭くなり、突起32に衝突した水流は乱流になっているとみなし得る。
本発明においては、異種物質充填部22及び冷却水路31が、下記[1]〜[4]式の少なくとも1つの条件を満たすようにプレート21に形成されていることが好ましい。
d<P≦S [1]
e≦L≦1000×Vc/f [2]
F≦L [3]
0.5≦t≦10 [4]
ここで、[1]〜[4]式において、
Sは、冷却水路31の間隔距離(mm)であり、
dは、周方向Bでの異種物質充填部22の幅(mm)であり、
Pは、異種物質充填部22のうち隣接する部位の周方向Bでの間隔距離(mm)であり、
eは、鋳造方向Aでの異種物質充填部22の幅(mm)であり、
Lは、隣接する異種物質充填部22の鋳造方向Aの間隔距離(mm)であり、
Vcは、鋼の連続鋳造工程における鋳片の引き抜き速度(m/分)であり、
fは、鋼の連続鋳造工程で鋳型を振動させる際の鋳型の振動周波数(1/分)であり、
Fは、隣接する突起32の間隔距離(mm)であり、
tは、異種物質充填部22の充填深さ(mm)である。ここで、「間隔距離」とは、各部位の隣接する2つの部位の鋳造方向Aまたは周方向Bにおける中心間距離をいう(図3参照)。
図3(b)に示すように、冷却水路31をプレート21の裏面に形成してある場合には、プレート21のうち、冷却水路31に近い部位が遠い部位よりも冷却が進み、プレート21の表面の冷却度合が不均一になる傾向がある。異種物質充填部22による熱抵抗の周期的な増減量への冷却水路31による冷却の影響を抑えるために、[1]式を満たすべく、異種物質充填部22の周方向Bでの間隔距離Pを、異種物質充填部22の幅d以上且つ冷却水路31の間隔距離S以下とすることが好ましい(図3(d)参照)。プレート21の裏面の冷却水路31を流れる水で鋳型(プレート21の)表面を水冷しているので、プレート21は冷却水路31から放射状に除熱される。よって、プレート21の表面においては、冷却水路31に近い部位と遠い部位とで冷却むらが大きくなる。異種物質充填部22による熱抵抗の周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態によって発生する応力や熱応力が低減する効果をより発揮させるためには、冷却水路31の間隔距離Sよりも小さな間隔で熱流束差を出すことが好ましい。よって、異種物質充填部22の周方向Bの間隔距離Pを冷却水路31の間隔距離S以下とすることが望ましく、異種物質充填部22の幅dは間隔距離P未満であることが望ましい。
また、鋼の連続鋳造方法では、鋳型に溶鋼を注入する際に、溶鋼の鋳型への焦げ付きを防止するためにモールドパウダーを溶鋼に投入しつつ鋳型を振動させることが一般的である。この振動に起因して、鋳片の表面には鋳造方向Aにおいて周期的にオシレーションマークが形成されることが知られており、鋳造方向Aにおいて周期的に鋳片の厚みが変わる傾向がある。よって、鋳造方向Aでの異種物質充填部22の幅をe(mm)とするとき、連続鋳造用鋳型から鋳片を引き抜く際の鋳片引き抜き速度Vc(m/分)と、隣接する異種物質充填部22の鋳造方向Aの間隔距離L(mm)と、振動の周波数f(1/分)が、[2]式を満たせば、即ち、鋳造方向Aの異種物質の幅が、オシレーションマークに起因する鋳片の増減する厚みの鋳造方向Aにおける1周期の長さ(ピッチ)よりも小さくなれば、鋳片の横割れを抑制することができる。
また、[3]式を満たすと、すなわち、隣接する突起の間隔距離F(mm)が、隣接する異種物質充填部22の鋳造方向Aの間隔距離L(mm)以下であると、鋳造方向Aにおいて隣接する異種物質充填部22間のプレート21の部位に対応する裏面に突起が確実に形成されていることになる。これにより、その部分の冷却水路は突起分表面積が大きくなるし、冷却水路では水流が乱流となりやすくなっているので、除熱がより効果的に行われることになる。
なお、異種物質充填部22の充填厚みt(図3(d)参照)が小さ過ぎると、異種物質充填部22における熱流束の変動量が不十分になる可能性がある。一方で、充填厚みtが大き過ぎると、異種物質を溝への充填が難しくなる。よって、[4]式を満たすべく、充填厚みtを0.5mm以上10.0mm以下とすることが好ましい。
本発明においては、図4に示すように、プレート21の表面に直線状且つ菱形状に溝を複数形成し、異種物質充填部41を菱形状にプレート21の表面に形成してもよい。これにより、図2の場合と同様に、メニスカスM近傍を含む領域の鋳造方向A及び周方向Bにおける連続鋳造用鋳型の熱抵抗を規則的且つ周期的に増減させることができる。
図5に示すように、冷却水路31に千鳥格子状に突起42を複数配置してもよい。これにより、図3の場合と同様に、突起42が設けられた冷却水路31の水流が乱流になり易い。突起42を、例えばラグビーボールを半分に切って形成される楕円体状にすれば、水流はより乱流度合は強くなり、水流は熱伝達係数が高くなり、異種物質充填部が形成された鋳型本体の領域を効果的に除熱することが可能となる。
図3では、冷却水路31のプレート21側に突起32を設けてあるが、冷却水路31のバックプレート23側に突起32を設けてもよい。その場合には、冷却水に面するプレート21の表面積は小さくなるものの、冷却水路では水流が乱流となりやすくなることに変わりはなく、除熱をより効果的に行なうことは可能であり、本発明の効果は十分に奏する。
図6に示すように、異種物質充填部22を覆うように鍍金層51をプレート21の表面に形成してもよい。これにより、凝固シェルによる磨耗や熱履歴による鋳型表面の割れを抑制できる。鍍金層51は、一般的に用いられるニッケルまたはニッケルを含有する合金、例えば、ニッケル−コバルト合金(Ni−Co合金)やニッケル−クロム合金(Ni−Cr合金)などを鍍金処理あるいは溶射処理することで形成できる。
なお、図2では、直線状の異種物質充填部22が交わる部分(交点部分)を直角としているが、この交点部分は、円弧などの滑らかな曲線形状とすることが好ましい。交点部分の形状が直角だと、その部分でのプレートと異種物質との熱膨張による熱応力が交点部分に集中し易くなるからである。
以上の通りに説明した連続鋳造用鋳型を用いて鋳片を鋳造する鋼の連続鋳造を行うことで、特に、溶鋼が中炭素鋼の場合には、鋳片表面割れを効果的に防止し且つ長期間連続鋳造の操業を行うことができる。
特許文献1の図1に記載されているような異種物質充填部が鋳型内壁面に形成された連続鋳造用鋳型を準備し、該鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(比較例)。比較例では、中炭素鋼(化学成分、C:0.08〜0.17質量%、Si:0.10〜0.30質量%、Mn:0.50〜1.20質量%、P:0.010〜0.030質量%、S:0.005〜0.015質量%、Al:0.020〜0.040質量%、残部Fe及びその他不可避的不純物)を、準備した鋳型に注入しつつ、鋳型を鋳造方向に振動させながら鋳型を冷却して凝固シェルを形成し、該凝固シェルを引き抜いて鋳片を鋳造した。1回のチャージで300トンの溶鋼を鋳型に注入した。引き抜き速度Vcを2.0(m/分)とした。
準備した連続鋳造用鋳型は、鋳型長辺の長さ2.1m、鋳型短辺の長さ0.22mからなる内面空間を有する鋳型本体を有しており、鋳型本体を、室温で熱伝導率が約380(W/(m・K))となる銅で作製した。鋼の連続鋳造では、振動している鋳型の溶鋼上にモールドパウダーを投入して、鋳型の溶鋼の焼き付きを防止している。モールドパウダーとして、塩基度(質量%CaO)/(質量%SiO)が1.1、凝固温度が1210℃、1300℃での粘度が0.15Pa・秒のものを使用した。
操業では3000回の鋼の連続鋳造を行うことを目標とし、100回毎に鋳型長辺における表面割れを調査した。鋳型長辺の表面に割れがあるかを目視にて調査し、割れを確認できた場合には、連続鋳造をそこで中止することとした。1回の連続鋳造毎に、鋳片の表面割れを調査した。表面割れは、カラーチェックによる目視で調査し、鋳造方向に沿った縦割れ、鋳片幅方向に沿った横割れを確認した。
比較例の鋳型では、鋳型長辺に円形凹溝を複数形成し、その内部に鍍金手段を用いて異種物質としてニッケル合金(室温で熱伝導率:80(W/(m・K)))を充填し、異種物質充填部を形成してある。また、鋳型の内壁面には、本願の図6に示すような鍍金層51を設けた。その材料も異種物質と同じニッケル合金を用いてある。
また、図2に示すように異種物質充填部22が格子状にプレート21の表面に形成され、図3に示すような突起32を冷却水路に形成した連続鋳造用鋳型を準備し、その鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(本発明例1)。
更には、図4に示すように異種物質充填部41が菱形状にプレート21の表面に形成され、図3に示すような突起32を冷却水路に形成した連続鋳造用鋳型を準備し、その鋳型を用いて鋼の連続鋳造の操業を行った(本発明例2)。
本発明例1及び2の鋳型では、比較例と同様にして鍍金層を設け、その材料も比較例と同様にニッケル合金を用いてある。本発明例1及び2では、使用した連続鋳造用鋳型以外は比較例と同じ条件で鋼の連続鋳造を行った。例えば、比較例における冷却水の供給速度は、突起が形成されていない鋳型において冷却水路の水流のレイノルズ数Reが乱流となる速度としてあり、本発明例1及び2でもまた、比較例での冷却水の供給速度と同じ速度で冷却水を鋳型に供給してある。
本発明例1及び2では、使用した連続鋳造用鋳型以外は比較例と同様に鋼の連続鋳造を行った。また、比較例と同様にして、連続鋳造を100回行う毎に鋳型長辺における表面割れを調査し、鋳型長辺の表面に割れが確認された場合には、連続鋳造をそこで中止することとした。加えて、1回の連続鋳造毎に鋳片の表面割れをも調査した。
比較例のチャージ回数は2400であり、本発明例1及び2はとも3000であった。チャージ回数が3000であることは、鋳型長辺に表面割れが生じずに連続鋳造を目標回数行えたことを意味する。3000以外の数字は、鋳型長辺の表面に割れが確認された時点で既に行っていた連続鋳造の回数を意味する。
比較例では、鋳型の寿命については2400回連続鋳造した後の調査で、鋳型長辺における表面割れが生じたことがわかった。一方で、本発明例1及び2では、目標回数の3000回連続鋳造を行うことができ、比較例よりも鋳型の使用寿命を向上させることができた。これは、突起32(水流撹乱部)によって、水流を比較例の場合よりも乱れた乱流にできた上に、冷却水路の表面積を大きくして、鋳型をより効率的に除熱できたからと考えられる。
なお、比較例、本発明例1及び2のいずれにおいても鋳片に表面割れが生じていないかを調査したが、確認されなかった。いずれの鋳型であっても、異種物質充填部によって、中炭素鋼鋳造で生じるδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みが不均一であることにより生じる表面割れを効果的に防止でき、鋳片の表面割れを防止できたと予想される。
前述の実施例1と同様にして鋼の連続鋳造の操業を行った(発明例3〜23)。実施例2では、1つの発明例でのチャージ回数を5とした。また、発明例3〜23の各々では、本願の図3に示す、プレート21の裏面に形成されている冷却水路31の間隔距離S(mm)や鋳造方向Aでの異種物質充填部22の幅e(mm)などや、連続鋳造における引き抜き速度Vc(m/分)や振動周波数(1/分)を変更してある。各操業では鋼の連続鋳造を1回行うこととし、使用した鋳型では、メニスカスM近傍の複数の異種物質充填部22の各々及び隣接する異種物質充填部22間に複数配置される中間点の各々に熱電対を埋め込んでおり、熱電対でそれらの温度を測定した。1秒間隔で温度を測定し、その温度データを記録した。熱電対の測温端からプレート21の溶鋼側表面までの距離は15mmである。伝熱モデルに基づき、温度データからプレート21の表面温度を算出してある。
発明例23を除く発明例では、図3に示すように冷却水路31のプレート21側に突起32を設けてある。一方で、発明例23では、冷却水路31のバックプレート23側に突起32を設けた鋳型を用いた。鋳型以外は発明例5と同様に連続鋳造の操業を行っている。
発明例3〜23での間隔距離S(mm)などや算出した温度を表1に示す。
表1では、[1]〜[3]式の項目を設けてある。「〇」である場合には、各項目の式の条件を満たすし、「×」である場合には、その条件を満たさないことを意味する。
他には、複数の異種物質充填部22と複数の中間点とで測定された温度データから伝熱モデルに基づき得られたプレート21の表面温度の平均温度を算出し、次いで、5回の連続鋳造の定常操業における時間内のデータサンプル数で前記平均温度を更に平均して算出される値を「メニスカス位置温度」として表1に記載してある。更には、5回の操業の鋳造の定常操業において測定された複数の異種物質充填部22と複数の中間点とで測定された温度データから同様にして算出されるプレート21の表面温度から、「メニスカス位置温度」を減算して得られる値の絶対値のうち、最大の値を「最大温度振幅」として表1に記載してある。表1の「メニスカス位置温度」が低いほど、メニスカス位置での鋳型表面がより冷却されていること意味し、「最大温度振幅」が小さいほど、メニスカス位置での周方向において、冷却むらが抑えられていることを意味する。
実施例2でもまた、1回の連続鋳造毎に鋳片の表面割れを調査した。1回の連続鋳造で鋳片を10枚製造することができ、1つの発明例で5回チャージしているので50枚の鋳片が製造される。この全ての鋳片に対してカラーチェックによる目視で表面割れを調査した。鋳片の表面に横割れ及び/あるいは縦割れを発見した場合には、縦割れ及び/あるいは横割れがあったとしてその鋳片を数え上げて、割れが発見された鋳片の総数を分子、1000を分母として算出した割合を、縦割れ及び横割れ毎にそれぞれ「縦割れ発生率」(%)及び「横割れ発生率」(%)として表1に示してある。この割れ発生率に値が生じていたとしても、非常に細かな割れを目視で発見した場合でもその鋳片を数え上げてあるので、15%以下であれば、実質的には問題ないと考えられる。
メニスカス位置温度が300℃以下であり且つ最大温度振幅が40℃以下であれば、概ね安定的に冷却できていると言える。また、異種物質充填部が鋳型表面に形成されておれば、大抵の場合には、表面割れを防ぐことができる。[1]〜[3]式を満たす発明例3〜13では、1回の連続鋳造で得られた全ての鋳片で表面割れを防ぐことができ、且つ、鋳型においてはメニスカス位置温度が300℃以下であり且つ最大温度振幅が40℃以下であるので、より効果的に鋳型を冷却できたことがわかる。
発明例14〜17では、[3]式を満たし、冷却はより効果的にできていることがわかるものの、[1]式及び/または[2]式を満たさないので、50枚得られる鋳片のうち幾らかで縦割れ及び/または横割れが生じていることがわかる。
発明例18では[1]式及び[2]式を満たすので、表面割れが生じた鋳片はなかったが、[3]式を満たさないので、メニスカス位置温度が300℃を超えるあるいは最大温度振幅が40℃を超えており、冷却効果が発明例3などよりも劣っていることがわかる。発明例19では、最大温度振幅が20℃となり、発明例3よりも周方向に沿った冷却むらが小さいが、メニスカス位置温度は発明例3より上昇しているので、発明例3よりはメニスカスを冷却できていない。それと、充填深さtが0.5未満なので、周期的な熱抵抗の変動量が、他の発明例の場合よりも小さくなり、[1]式を満たしていても縦割れは生じてしまっている。
発明例20は、幅e及び間隔距離Lが「−」となっている。これは、周方向Bに延長する異種物質充填部22を鋳型に設けていないことを意味している(図3(a)参照)。よって、横割れが発生してしまっている。また、間隔距離Lが「−」なので、[3]式を満たすかどうかも定かではない。
発明例22は、[3]式を満たさないので、やはり、メニスカス位置温度が300℃を超えるあるいは最大温度振幅が40℃を超えている。[3]式を満たす発明例21は最大温度振幅が発明例3より小さい。そういう場合であっても、メニスカス位置温度は発明例3より高くなっている。メニスカス位置温度が高くなるということは、鋳型の周方向に沿ったいずれの位置でも温度が高いことを意味しており、その結果、振幅(最も高いあるいは低い温度と平均との差)が小さくなっていると推察される。
発明例23では、バックプレート23側に突起32を設けてある以外は発明例5と同じ条件で鋼の連続鋳造を行っている。発明例23では、発明例5と同様の鋳片の表面割れ発生率は0とできているものの、メニスカス位置温度は、発明例5よりも若干上昇している。突起32がバックプレート23側に設けてあるので、冷却水路31に面するプレート21の表面積が発明例5の場合よりも小さくなったからと推察される。
以上の結果からわかる通り、本発明によって、中炭素鋼を鋳造して得られる鋳片の表面割れの発生を抑えるとともに、メニスカス部近傍における異種物質充填部及び該異種物質充填部の以外のプレート部の温度が効果的に低下したことを確認した。本発明によって、異種物質充填部が形成された鋳型の長寿命化が期待できる。
1 鋳型
2 鋳型長辺
3 鋳型短辺
4 溶鋼
5 浸漬ノズル
21 プレート
22 異種物質充填部(格子状)
23 バックプレート
31 冷却水路
32 突起(水流撹乱部)
41 異種物質充填部(菱形状)
42 突起(水流撹乱部)
51 鍍金層

Claims (9)

  1. 鋼の連続鋳造用鋳型であって、
    鋳型の内壁となる表面と冷却水路が形成された裏面とを有する銅合金製のプレートと、
    前記冷却水路を覆うように前記プレートに取り付けられるバックプレートと、を備え、
    前記プレートの表面のうちメニスカスを含む領域に形成された溝に、前記プレートとは異なる熱伝導率の異種物質が充填された異種物質充填部が形成され、
    前記異種物質充填部が形成されている領域に対応する前記プレートの裏面の冷却水路には、水流を撹乱し且つ前記冷却水路の表面積を大きくする水流撹乱部が形成されている鋼の連続鋳造用鋳型。
  2. 前記水流撹乱部が、前記水流の流れ方向に沿って複数配置され且つ前記冷却水路の幅方向に延在する突起から構成されている請求項1に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
  3. 前記水流撹乱部が、前記冷却水路に千鳥格子状に複数配置されている突起から構成されている請求項1に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
  4. 前記溝が直線状且つ格子状に前記プレートの表面に複数形成されており、前記異種物質充填部が格子状に前記プレートの表面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
  5. 下記[1]〜[3]式の少なくとも1つの条件を満たす請求項4に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
    d<P≦S [1]
    e≦L≦1000×Vc/f [2]
    F≦L [3]
    ここで、[1]〜[3]式において、
    Sは、前記プレートの裏面に複数形成されている前記冷却水路の間隔距離(mm)、
    dは、鋼の連続鋳造工程の鋳造方向と直交する鋳型の周方向での前記異種物質充填部の幅(mm)、
    Pは、前記異種物質充填部のうち隣接する部位の前記周方向での間隔距離(mm)、
    eは、前記鋳造方向での前記異種物質充填部の幅(mm)、
    Lは、前記異種物質充填部のうち隣接する部位の前記鋳造方向の間隔距離(mm)、
    Vcは、鋼の連続鋳造工程における鋳片の引き抜き速度(m/分)、
    fは、鋼の連続鋳造工程で鋳型を振動させる際の鋳型の振動周波数(1/分)、
    Fは、隣接する前記突起の間隔距離(mm)、である。
  6. 前記溝が直線状且つ菱形状に前記プレートの表面に複数形成されていて、前記異種物質充填部が菱形状に前記プレートの表面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
  7. 前記異種物質充填部を覆うように鍍金層が前記プレートの表面に形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
  8. 下記[4]式の条件を満たす請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型。
    0.5≦t≦10 [4]
    ここで、[4]式において、tは、前記異種物質充填部の充填深さ(mm)である。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の鋼の連続鋳造用鋳型を用いる鋼の連続鋳造方法であって、冷却水路中の水流撹乱部が形成された位置では水流が乱流となるように前記鋼の連続鋳造用鋳型に冷却水を供給する鋼の連続鋳造方法。
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