ところで、各圧電素子に駆動信号を出力する際に、駆動装置において熱が発生する。この熱の一部は、複数の配線を介して流路形成基板に伝わるため、圧電素子の温度、及び、圧力室内の液体の温度が上昇する。この際に、複数の圧力室の間、あるいは、複数の圧電素子の間での伝熱量の差が大きいと、複数のノズルの間で吐出特性に大きな差が生じる要因となる。従って、上記の吐出特性ばらつきを抑えるには、駆動装置から配線を通じて伝わる熱を、圧電素子や圧力室内の液体に伝わる前にできるだけ放散することが有効である。
この点、特許文献1では、2列に配列された複数の圧電素子のそれぞれから、リザーバ形成基板の外側の領域まで配線が引き出されている。即ち、リザーバ形成基板の外側壁部と流路形成基板との接合領域に配線が配置されている。そのため、駆動装置から配線を伝ってくる熱の一部が、リザーバ形成基板の外側壁部から放散されるとも考えられる。しかしながら、特許文献1では、リザーバ形成基板の外側壁部の幅(流路形成基板との接合面積)が小さいため、リザーバ形成基板を介しての放熱効果はあまり期待できない。
本発明の目的は、駆動装置から配線に伝わる熱の放散を促進し、圧力室内の液体、及び、圧電素子への伝熱を抑制することである。
第1の発明の液体吐出装置は、第1方向に配列された複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して前記第1方向に配列された複数の圧力室を有する、流路構造体と、前記流路構造体に、前記複数の圧力室に対応して前記第1方向に配列された複数の圧電素子と、前記第1方向と直交する第2方向に並んで配置されて、前記流路構造体に接合される複数の壁部を有し、前記複数の圧電素子を覆うカバー部材と、前記複数の圧電素子から前記第2方向の一方側にそれぞれ引き出され、前記圧電素子よりも前記一方側に位置する前記壁部と前記流路構造体との接合領域を通過して、前記カバー部材の外側まで延びる複数の引出配線と、前記複数の引出配線と電気的に接続される駆動装置と、を備え、前記複数の壁部は、前記流路構造体に接合されて前記第2方向に前記圧電素子を挟み、前記複数の壁部のうちの、前記第2方向の前記一方側の端に位置する壁部は、この壁部よりも前記第2方向の他方側に位置する壁部と比べて、前記流路構造体との接合面積が大きくなっていることを特徴とするものである。
本発明では、圧電素子から引き出された引出配線は、流路構造体とカバー部材の壁部との接合領域を通過しているため、この接合領域において、駆動装置から引出配線に伝わった熱の一部をカバー部材へ逃がすことができる。また、複数の壁部のうち、第2方向の一方側の端に位置する壁部の接合領域は、多くの引出配線が通過する。そして、本発明では、前記一方側の端に位置する壁部は、他の壁部よりも接合面積が大きくなっている。つまり、多くの引出配線が通過する領域に、接合面積の大きい壁部が接合されるため、引出配線に伝わる熱をカバー部材へ効果的に逃がすことができる。
第2の発明の液体吐出装置は、前記第1の発明において、前記複数の壁部のうちの、前記第2方向の前記一方側の端に位置する壁部は、この壁部よりも前記第2方向の前記他方側に位置する壁部と比べて、前記第2方向における幅が大きくなっていることを特徴とするものである。
本発明では、前記第2方向の前記一方側の端に位置する壁部の、第2方向における幅が大きくなることで、流路構造体との接合面積が大きい構成が実現されている。
第3の発明の液体吐出装置は、前記第1又は第2の発明において、前記複数の圧電素子は、前記第2方向に並ぶ複数の圧電素子列を構成し、前記複数の壁部は、前記複数の圧電素子列に対して前記第2方向の前記一方側で前記流路構造体と接合される外側壁部と、前記複数の圧電素子列の間で前記流路構造体と接合される内側壁部と、を有し、前記外側壁部の前記接合面積は、前記内側壁部の前記接合面積よりも大きいことを特徴とするものである。
外側壁部の接合領域においては、複数の圧電素子列の間に位置する内側壁部の接合領域と比べて、通過する配線の数が多い。本発明では、多くの配線が通過する領域に接合される、外側壁部の接合面積が大きいため、引出配線を伝わる熱を効果的にカバー部材へ逃がすことができる。
また、カバー部材は、2つの外側壁部に加えて内側壁部を有する構造であるため、カバー部材を流路構造体に接合したときに、カバー部材の中央部が撓むことを防止できる。さらに、カバー部材を加熱しながら流路構造体に接着剤で接合したときなどに、カバー部材が反り、外側壁部に、流路基板から剥離する方向の力が作用する場合がある。この場合でも、外側壁部の接合面積が、内側壁部よりも大きくなっているため、外側壁部の剥離を防止できる。
第4の発明の液体吐出装置は、前記第3の発明において、前記カバー部材は、前記第2方向に並ぶ複数の前記内側壁部を有し、前記複数の内側壁部は、前記第2方向における前記一方側に位置するものほど、前記流路構造体との接合面積が大きいことを特徴とするものである。
配線引出側に位置する内側壁部の接合領域では、通過する配線の数が多くなる。そこで、本発明では、複数の内側壁部は、配線引出側に位置するものほど、流路構造体との接合面積が大きくなっている。つまり、通過する引出配線の数が多いほど、接合面積の大きい壁部が接合されるため、引出配線に伝わる熱をカバー部材へ効果的に逃がすことができる。
第5の発明の液体吐出装置は、前記第3又は第4の発明において、前記流路構造体の、前記内側壁部が接合される領域には、前記第1方向に延びる凸部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、流路構造体の、内側壁部が接合される領域に、第1方向に延びる凸部が形成されている。これにより、内側壁部を流路構造体に接着剤で接合したときに、余剰の接着剤が、2つの圧電素子列の間で第2方向に移動することが規制される。そのため、一方の圧電素子列側から、内側壁部を越えて他方の圧電素子列側へ、接着剤が流れ込むことを抑制できる、
第6の発明の液体吐出装置は、前記第5の発明において、複数の前記凸部が、前記第2方向に間隔を空けて並んでいることを特徴とするものである。
本発明では、流路構造体の、内側壁部が接合される領域に、複数の凸部が第2方向に間隔を空けて並んで配置されているため、接着剤の第2方向における流動を規制する効果が高まる。また、前記接合領域の表面が凹凸形状となるため、内側壁部と流路構造体との接着力が高まる。
第7の発明の液体吐出装置は、前記第5又は第6の発明において、前記凸部は前記引出配線と同じ導電性材料で形成され、且つ、前記凸部の高さが、前記引出配線の厚みと等しいことを特徴とするものである。
本発明では、凸部が、引出配線と同じ導電性材料で形成されるため、凸部と引出配線とを同じ工程で形成することが可能である。また、凸部の高さと引出配線の厚みが等しいため、流路構造体の、内側壁部との接合領域と外側壁部との接合領域との間で、接合面の高さを揃えることができる。
第8の発明の液体吐出装置は、前記第1又は第2の発明において、それぞれが複数の前記圧電素子で構成され、且つ、前記第2方向に並ぶ、第1圧電素子群及び第2圧電素子群を有し、前記第1圧電素子群を構成する前記圧電素子からは、前記引出配線が前記第2方向における前記一方側に延び、前記第2圧電素子群を構成する前記圧電素子からは、前記引出配線が前記第2方向における他方側に延び、前記複数の壁部は、前記第1圧電素子群と前記第2圧電素子群に対して、前記第2方向における前記一方側と前記他方側で前記流路構造体とそれぞれ接合される2つの外側壁部と、前記2つの圧電素子群の間で前記流路構造体と接合される中央壁部と、を有し、前記外側壁部の前記接合面積は、前記中央壁部の前記接合面積よりも大きいことを特徴とするものである。
本発明では、カバー部材は、2つの外側壁部に加えて中央壁部を有する構造であるため、カバー部材を流路構造体に接合したときに、カバー部材の中央部が撓むことを防止できる。また、カバー部材を加熱しながら流路構造体に接着剤で接合したときなどに、カバー部材が反って、外側壁部に、流路基板から剥離する方向の力が作用する場合がある。この場合でも、外側壁部の接合面積が、中央壁部よりも大きくなっているため、外側壁部の剥離を防止できる。
第9の発明の液体吐出装置は、前記第8の発明において、前記流路構造体の、前記中央壁部が接合される領域には、前記第1方向に延びる凸部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、流路構造体の、中央壁部が接合される領域に、第1方向に延びる凸部が形成されている。これにより、中央壁部を流路構造体に接着剤で接合したときに、余剰の接着剤が、2つの圧電素子群の間で第2方向に移動するのを規制できる。そのため、一方の圧電素子群側から、中央壁部を越えて他方の圧電素子群側へ、接着剤が流れ込むことを抑制できる。
第10の発明の液体吐出装置は、前記第9の発明において、複数の前記凸部が、前記第2方向に間隔を空けて並んでいることを特徴とするものである。
本発明では、流路構造体の、中央壁部が接合される領域に、複数の凸部が第2方向に間隔を空けて並んで配置されているため、接着剤の第2方向における流動を規制する効果が高まる。また、前記接合領域の表面が凹凸形状となるため、中央壁部と流路構造体との接着力が高まる。
第11の発明の液体吐出装置は、前記第10の発明において、前記複数の凸部のうち、前記中央壁部の接合領域の、前記第2方向における中央部に位置する前記凸部は、この凸部に隣接する前記圧電素子群の前記第1方向における全長以上の長さを有することを特徴とするものである。
流路構造体の、中央壁部との接合領域には、引出配線が配置されていない。そのため、凸部は、搬送方向に連続的に延びる形状に形成することが可能である。その上で、本発明では、前記接合領域の中央部に位置する凸部が、圧電素子群の全長以上の長さを有する。これにより、この構成により、中央壁部を挟んで配置された2つの圧電素子群側の間での、余剰の接着剤の流動が確実に抑制される。
第12の発明の液体吐出装置は、前記第9〜第11の何れかの発明において、前記凸部は前記引出配線と同じ導電性材料で形成され、且つ、前記凸部の高さが、前記引出配線の厚みと等しいことを特徴とするものである。
本発明では、凸部が、引出配線と同じ導電性材料で形成されるため、凸部と引出配線とを同じ工程で形成することが可能である。また、凸部の高さと引出配線の厚みが等しいため、流路構造体の、中央壁部との接合領域と外側壁部との接合領域との間で、接合面の高さを揃えることができる。
第13の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第12の何れかの発明において、前記複数の引出配線の前記流路構造体側には、第1の層が前記引出配線と接触して積層され、前記複数の引出配線の前記カバー部材側には、第2の層が前記引出配線と接触して積層され、前記第2の層は、前記第1の層よりも、熱伝導率の高い材料で形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、引出配線に対して、カバー部材側に配置されている第1の層が、流路構造体側に配置されている第2の層よりも、熱伝導率の高い材料で形成されているため、駆動装置から引出配線を伝ってくる熱を、カバー部材へ逃しやすくなる。
第14の発明の液体吐出装置は、前記第1〜第13の何れかの発明において、前記複数の引出配線の少なくとも一部は、前記第2方向における前記一方側の端に位置する前記壁部と前記流路構造体との接合領域を、前記第2方向と交差する方向に横切ることを特徴とするものである。
本発明では、少なくとも一部の引出配線が、接合領域を斜めに横切るように延びているため、引出配線の、壁部との接触長が長くなる。これにより、駆動装置から引出配線を伝ってくる熱を、カバー部材へ逃しやすくなる。
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。尚、図1に示す前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、図1の紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、カートリッジホルダ5と、搬送機構6と、制御装置7等を備えている。
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。記録用紙100は、画像形成に適した間隔をあけて、後述のインクジェットヘッド4と対向する。キャリッジ3は、2本のガイドレール11,12に支持され、左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能である。キャリッジ3には無端ベルト13が連結されており、キャリッジ駆動モータ14が駆動されると、無端ベルト13とともに走査方向に移動する。
インクジェットヘッド4(本発明の液体吐出装置)は、キャリッジ3に搭載されている。インクジェットヘッド4は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に複数のノズル24(図2〜図4参照)を備えている。
カートリッジホルダ5には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ15が、それぞれ取り外し可能に装着される。インクカートリッジ15は、図示しないチューブによって、インクジェットヘッド4と接続されている。各インクカートリッジ15のインクは、チューブを介してインクジェットヘッド4に供給される。インクジェットヘッド4は、キャリッジ3とともに走査方向に移動しつつ、その下面のノズル24から、プラテン2に載置された記録用紙100へ向けてインクを吐出する。尚、インクジェットヘッド4の詳細構成については後述する。
搬送機構6は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ16,17を有する。2つの搬送ローラ16,17は、図示しない搬送モータによって互いに同期して駆動される。搬送機構6は、2つの搬送ローラ16,17によって、プラテン2に載置された記録用紙100を前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。制御装置7は、ROMに格納されたプログラムをCPUで実行することにより、ASICに、記録用紙100への印刷処理などの各種処理を実行させる。例えば、印刷処理においては、制御装置7は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4やキャリッジ駆動モータ14、搬送機構6の搬送モータ等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。より具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ16,17によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
(インクジェットヘッドの詳細)
次に、インクジェットヘッド4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示されるインクジェットヘッド4の平面図である。図3は、図2のA部拡大図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド4は、ノズルプレート20と、流路基板21と、圧電アクチュエータ22と、カバー部材23等を備えている。尚、図2、図3では、図面の簡素化のため、流路基板21の上面に接合されるCOF51とカバー部材23は、二点鎖線で概略的に示されている。
(ノズルプレート)
ノズルプレート20は、例えば、シリコン等で形成されたプレートである。ノズルプレート20には、搬送方向(本発明の第1方向)に配列された複数のノズル24が形成されている。
より詳細には、図2に示すように、ノズルプレート20には、走査方向(本発明の第2方向)に並ぶ4つのノズル群27が形成されている。4つのノズル群27は、互いに異なるインクを吐出する。尚、以下の説明において、インクジェットヘッド4の構成要素のうち、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)のインクにそれぞれ対応するものについては、その構成要素を示す符号の後に、どのインクに対応するかが分かるように、適宜、ブラックを示す“k”、イエローを示す“y”、シアンを示す“c”、マゼンタを示す“m”の何れかの記号を付す。例えば、ノズル群27kとは、ブラックインクを吐出するノズル群27のことを指す。1つのノズル群27は、左右2つのノズル列28からなる。各ノズル列28において、複数のノズル24が配列ピッチPで配列されている。また、2つのノズル列28の間では、ノズル24の位置が搬送方向にP/2ずれている。即ち、1つのノズル群27を構成する複数のノズル24は、2列の千鳥状に配列されている。
(流路基板)
流路基板21は、シリコン単結晶の基板である。流路基板21には、複数のノズル24とそれぞれ連通する複数の圧力室26が形成され、何れも流路基板21を貫通している。各圧力室26は、走査方向に長い、矩形の平面形状を有する。複数の圧力室26は、上述した複数のノズル24の配列に応じて搬送方向に配列され、1色のインクに対して2つの圧力室列、合計8つの圧力室列を構成している。流路基板21の下面はノズルプレート20で覆われ、各圧力室26の外側端部がノズル24と重なっている。具体的には、図3に示すように、右側の圧力室列においては、各圧力室26の右端部とノズル24とが重なり、左側の圧力室列においては、各圧力室26の左端部とノズル24とが重なっている。尚、上述のノズルプレート20と流路基板21とが、本発明の「流路構造体」に相当する。
流路基板21の上面は、振動膜30によって覆われている。振動膜30は、シリコン基板の表面が酸化、あるいは、窒化されることにより形成された膜である。振動膜30は、スパッタ法、CVD法等で積層された酸化シリコン膜や窒化シリコン膜であってもよい。振動膜30の、各圧力室26の内側端部(ノズル24とは反対側の端部)を覆う部分には、インク供給孔30aが形成されている。
後述のカバー部材23内のリザーバ60から、インクが、インク供給孔30aを通じて各圧力室26へと供給される。そして、次述の圧電アクチュエータ22によって、圧力室26内のインクに吐出エネルギーが付与されると、圧力室26に連通するノズル24から、インクの液滴が吐出される。
(圧電アクチュエータ)
圧電アクチュエータ22は、振動膜30と複数の圧電素子31を含み、複数の圧力室26内のインクに、それぞれノズル24から吐出するための吐出エネルギーを付与するものである。図2〜図4に示すように、複数の圧電素子31は、圧力室26にそれぞれ対応して、振動膜30の上面に配置されている。
圧電素子31の構成について説明する。圧電素子31は、順に積層された共通電極32、圧電体33、及び、個別電極34を含む。図4に示すように、共通電極32は、振動膜30の、複数の圧力室26と対向する領域を含み、振動膜30のほぼ全面に形成されている。この共通電極32の上には、8つの圧力室列にそれぞれ対応して8つの帯状の圧電体33が形成されている。図2に示すように、各圧電体33は搬送方向に長い平面形状を有し、搬送方向において、対応する圧力室列を構成する複数の圧力室26に跨るように配置されている。圧電体33は、例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料で形成される。あるいは、圧電体33は、鉛が含有されていない非鉛系の圧電材料で形成されていてもよい。
各圧電体33の上面には、複数の圧力室26と個別に対向して、複数の個別電極34が形成されている。各個別電極34は、圧力室26よりも一回り小さい、矩形の平面形状を有し、対応する圧力室26の中央部と重なるように配置されている。個別電極34は、例えば、イリジウム(Ir)で形成されている。
以上の構成において、1つの圧力室26に対して、これに対向する共通電極32、圧電体33及び個別電極34の各部分によって、1つの圧電素子31が構成されている。別の言い方をすれば、複数の圧電素子31の間で、共通電極32や圧電体33が共有されている。尚、圧電体33の、共通電極32と個別電極34とに挟まれた部分を、以下、活性部36と称する。
また、複数の圧電素子31は、複数の圧力室26の配列に従って搬送方向に配列されている。これにより、複数の圧電素子31は、ノズル24及び圧力室26の配列に従って、1色のインクにつき2つの圧電素子列37、合計8つの圧電素子列37を構成している。尚、1色のインクに対応した2つの圧電素子列37からなる圧電素子31の群を、圧電素子群38と称する。図2に示すように、4色のインクにそれぞれ対応した、4つの圧電素子群38(38k,38y,38c,38m)が走査方向に並んで配置されている。
ここで、圧電素子31は、電極32、34間に電界が作用したときに、活性部36が面方向に変形する。振動板30と組み合わさって、圧電素子31は、面と直交する方向にユニモルフ変形を生じる。このとき、対応する圧力室26は、容積が変化することになる。このように、1つの圧力室26に対して、これに対向する振動板30の部分と1つの圧電素子31とから、1つの個別アクチュエータが構成されている。圧電アクチュエータ22は、圧力室26の数の個別アクチュエータを含むと言える。
また、図4に示すように、圧電アクチュエータ22は、保護膜40、絶縁膜41、引出配線42、及び、配線保護膜43を有する。尚、図2、図3では、図面を見やすくするために、保護膜40、絶縁膜41、及び、配線保護膜43については図示が省略されている。
図4に示すように、保護膜40は、8つの圧電体33を覆うように配置されている。保護膜40は、空気中から圧電体33への水分の到達を防ぐ。保護膜40は、例えば、アルミナ(Al2O3)、酸化シリコン(SiOx)、酸化タンタル(TaOx)等の酸化物、あるいは、窒化シリコン(SiN)の窒化物などの、透水性の低い材料で形成されるのが好ましい。
保護膜40の上には、絶縁膜41が形成されている。絶縁膜41の材質は特に限定されないが、例えば、二酸化シリコン(SiO2)で形成される。この絶縁膜41は、個別電極34に接続される次述の引出配線42と、共通電極32との間の、絶縁性を高めるために設けられている。
絶縁膜41の上には、複数の圧電素子31の個別電極34からそれぞれ引き出された複数の引出配線42が、絶縁膜41と接触して配置されている。引出配線42は、アルミニウム(Al)、あるいは、金(Au)などの電気抵抗率の低い材料で形成されている。また、圧電素子31にそれぞれ接続された複数の引出配線42は、右方と左方に分かれて延びている。詳細には、図2、図3に示すように、4つの圧電素子群38のうち、右側2つの圧電素子群38k,38yを構成する圧電素子31からは、引出配線42が右方へ延び、左側2つの圧電素子群38c,38mを構成する圧電素子31からは、引出配線42が左方へ延びている。
各引出配線42は、後述するカバー部材23の壁部62との接合領域を通過して、流路基板21の左端部及び右端部まで延びている。また、各引出配線42の引出側の端部には駆動接点部46が設けられている。流路基板21の左端部と右端部には、グランド接点部47も配置されている。流路基板21の左右の各端部では、駆動接点部46が一列に並び、2つのグランド接点部47が駆動接点部46の並びの両側に配置されている。なお、グランド接点部47は、図示しないが、直下の保護膜40及び絶縁膜41を貫通するスルーホールを介して、共通電極32と接続されている。
図2に示すように、振動膜30のインク供給孔30aは、いずれも環状の導電体で取り囲まれている。引出配線42の引出方向下流側では、導電体(導電部44)は、引出配線42により駆動接点部46と接続している。一方、上流側では、導電体の一部(導電部44)が、下流側と同様に、引出配線42と接続している。しかし、導電体の残余(導電部45)は、引出配線42と接続することなく、独立している。各インク供給孔30aが環状の導電部44,45で取り囲まれることにより、後述するカバー部材23を流路基板21に接合したときの、インク供給孔30aに対する水密性が高まる。
図4に示すように、配線保護膜43は、引出配線42と接触して積層されており、複数の引出配線42を上側から覆っている。この配線保護膜43により、複数の引出配線42の間の絶縁性が高められている。尚、配線保護膜43は、流路基板21の端部を覆っておらず、駆動接点部46とグランド接点部47は、配線保護膜43から露出している。露出した接点部46,47は、後述のCOF50との接続が可能となる。配線保護膜43は、例えば、窒化シリコン(SiNx)等で形成されている。
尚、引出配線42は、下側に積層された絶縁膜41(本発明の第1の層)と上側に積層された配線保護膜43(本発明の第2の層)とそれぞれ接触している。ここで、上側の配線保護膜43は、下側の絶縁膜41よりも、熱伝導率の高い材料で形成されている。具体的には、絶縁膜41を形成するSiO2の熱伝導率は、1〜1.5W/(m・K)であり、配線保護膜43を形成するSiNxの熱伝導率は、20〜28W/(m・K)である。この場合、後でも説明するが、ドライバIC51から引出配線42に伝わる熱を、上方のカバー部材23へ積極的に逃がすことができる。
本実施の形態では、個別電極34は、その周縁部を除いて保護膜40等から露出している。そのため、保護膜40、絶縁膜41、配線保護膜43の積層体は、ほとんど個別アクチュエータの変形を妨げることは無い。また、個別電極34の走査方向の周縁部では、引出配線40が、絶縁膜41の上面に引出の一端を有し、厚み方向に個別電極34と接続している。個別電極34との接続は、図4に示すように、絶縁膜41及び保護膜40を貫通するスルーホールを介して行われる。
図2、図3に示すように、流路基板21の左右両端部の上面には、COF50の一端部がそれぞれ接合されている。各COF50の途中部には、ドライバIC51(本発明の駆動装置)が実装されている。また、各COF50の他端部は、プリンタ1の制御装置7(図1参照)に接続されている。
COF50には、グランド配線(図示省略)に加え、複数の駆動配線52が形成されている。各駆動配線52は、それぞれドライバIC51の出力端子と接続している。流路基板21の両端部において、駆動配線52は対応する駆動接点部46と接続し、グランド配線はグランド接点部47と接続している。
ドライバIC51は、制御装置7からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、各圧電素子31にこれを出力する。駆動信号は、駆動配線52を介して駆動接点部46に入力され、さらに、引出配線42を介して対応する個別電極34に供給される。このとき、個別電極34の電位が、所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。共通電極32の電位は、常にグランド電位に維持される。
ドライバIC51から駆動信号が供給されたときの、各圧電素子31の動作について説明する。駆動信号が供給されていない状態では、個別電極34の電位はグランド電位となっており、共通電極32と同電位である。この状態から、個別電極34に駆動電位が印加されると、対向配置された共通電極32との電位差により、圧電体33の活性部36に、厚み方向の電界が作用する。このとき、活性部36は、厚み方向に伸びて面方向に縮む。この活性部36(圧電素子31)に振動膜30が組み合わさって、個別アクチュエータは、圧力室26側に凸となるように撓む。これにより、圧力室26の容積が減少して圧力室26内に圧力波が発生することで、圧力室26に連通するノズル24からインクの液滴が吐出される。
(カバー部材)
図2〜図4に示すように、カバー部材23は、圧電アクチュエータ22が形成された流路基板21の上面に、複数の圧電素子31を覆うように配置される。カバー部材23は、複数の圧電素子31を覆って保護する機能だけでなく、流路基板21へ供給するインクを一時的に貯留するインク貯留部としての機能も備えている。カバー部材23は、熱硬化性接着剤66によって流路基板21に接合される。より詳細には、カバー部材23及び流路基板21の何れかに接着剤66を塗布した後、加熱しながらカバー部材23を流路基板21へ押圧することにより、両者を接合する。
図4に示すように、カバー部材23の上部には、インクを貯留するリザーバ60が形成されている。尚、図4では、2つのリザーバ60しか示されていないが、実際には、4色のインクをそれぞれ貯留する4つのリザーバ60が、走査方向に並べて配置されている。4つのリザーバ60は、カバー部材23の上面に接合された蓋部材65によって封止されている。また、4つのリザーバ60には、ホルダ5の4つのインクカートリッジ15(図1参照)から、4色のインクがそれぞれ供給される。
カバー部材23の下部には、走査方向に延びる2つの壁部61a,61bと、搬送方向に延びる9つの壁部62a〜62iが形成されている。9つの壁部62a〜62iは、走査方向に間隔を空けて配列されている。尚、9つの壁部62a〜62iのうち、右端に位置する壁部62aと左端に位置する壁部62eを、それぞれ「外側壁部」と称する。また、2つの外側壁部62a,62eの間にある7つの壁部62b,62c,62d,62f,62g,62h,62iのうち、中央に位置する壁部62iを「中央壁部」と称し、それ以外の壁部を「内側壁部」と称する。
9つの壁部62の各々は、隣接する他の壁部62との間に1つの圧電素子列37を挟んで、流路基板21に接合される。具体的には、右側の外側壁部62aは、4つの圧電素子群38(8つの圧電素子列37)の右側の領域に接合され、左側の外側壁部62eは、4つの圧電素子群38の左側の領域に接合される。中央壁部62iは、中央2つの圧電素子群38y,38cの間の領域に接合される。内側壁部62cは、右側2つの圧電素子群38k,38yの間の領域に接合され、内側壁部62gは、左側2つの圧電素子群38c,38mの間の領域に接合される。残りの内側壁部62b,62d,62f,62hは、4つの圧電素子群38のそれぞれについて2つの圧電素子列37の間の領域に接合される。これにより、カバー部材23の下部は、壁部62によって区画されて、8つの収容空間63が走査方向に並んでいる。1つの収容空間63は、1つの圧電素子列37を収容する。
上述したように、流路基板21の上面のうち、1つの圧電素子群38の2つの圧電素子列37の間の領域には、複数のインク供給孔30aが開口している。一方、図4に示すように、カバー部材23の、上記領域に接合される内側壁部62b(62d,62f,62h)には、複数の流路孔64が形成されている。インク供給口30aと流路孔64とは、1対1で対応する。リザーバ60に貯留されているインクは、複数の流路孔64及び複数のインク供給孔30aを介して、2列に配列された複数の圧力室26へそれぞれ供給される。
走査方向に並ぶ9つの壁部62の幅は全て同じではない。壁部62の幅を比較すると、図2、図3に示すように、(2つの外側壁部62a,62eの幅W1)>(内側壁部62b,62d,62f,62hの幅W2)>(内側壁部62c,62gの幅W3)=(中央壁部62iの幅W4)である。尚、内側壁部62b,62d,62f,62hは、複数の流路孔64が形成されている分、流路基板21との実際の接合面積は小さくなっている。但し、上記の流路孔64による面積減少を考慮しても、9つの壁部62の間の、接合面積での大小関係に変化はなく、上記の幅での大小関係と同じである。即ち、(2つの外側壁部62a,62eの接合面積A1)>(内側壁部62b,62d,62f,62hの接合面積A2)>(内側壁部62c,62gの接合面積A3)=(中央壁部62iの接合面積A4)である。
上述のように、右側4つの圧電素子列37からは、複数の引出配線42が右方に引き出されている。このうち、一番左側の圧電素子列37から引き出された引出配線42は、内側壁部62dの接合領域、内側壁部62cの接合領域、内側壁部62bの接合領域、外側壁部62aの接合領域を順に通過して、カバー部材23の外側(右側)まで延びている。これら4つの接合領域は、配線引出側である右側に位置するものほど、通過する引出配線42の数が多くなっている。同様に、左側4つの圧電素子列37からも、複数の引出配線42が左方に引き出されている。このうち、一番右側の圧電素子列37から引き出された引出配線42は、内側壁部62hの接合領域、内側壁部62gの接合領域、内側壁部62fの接合領域、外側壁部62eの接合領域を順に通過して、カバー部材23の外側(左側)の領域まで延びている。また、外側の接合領域ほど、より多くの引出配線42が横切っている。
ところで、ドライバIC51は、圧電素子31を駆動する際に発熱する。熱の一部は、複数の引出配線42を介して流路基板21に伝わり、圧電素子31の温度、及び、圧力室26内のインクの温度が上昇する。その際に、複数の圧力室26の間、あるいは、複数の圧電素子31の間で伝熱量に差があると、複数のノズル24の間で吐出特性に差が生じる。この吐出特性ばらつきを抑制するには、ドライバIC51から引出配線42を伝ってくる熱を、できるだけカバー部材23へ放熱することが有効となる。そこで、速やかな放熱を実現するため、本実施形態では、配線引出方向に並ぶ複数の壁部62の間で、流路基板21との接合面積を異ならせている。
右側4つの壁部62a〜62dの接合面積に関して、まず、右端に位置する外側壁部62aの流路基板21との接合面積が、3つの内側壁部62b,62c,62dよりも大きくなっている。ここで、流路基板21と外側壁部62aとの接合領域は、右側2つの圧電素子群38k,38yからの引出配線42が横切る。つまり、引出配線42が密集している領域に、接合面積の大きい外側壁部62aが接合されるため、引出配線42に伝わる熱をカバー部材23へ効果的に逃がすことができる。また、右側3つの壁部62a,62b,62cに限って言えば、配線引出側(右側)に位置するものほど、幅W(接合面積A)が大きくなっている。つまり、通過する引出配線の数が多いほど、接合面積の大きい壁部62が接合されるため、引出配線42に伝わる熱をカバー部材23へ効果的に逃がすことができる。
尚、上の観点からは、配線引出側と反対側に位置する内側壁部62dの幅(接合面積)が内側壁部62cよりも小さくされて、外側壁部62a、内側壁部62b、内側壁部62c、内側壁部62dの順に、幅(接合面積)が小さくなってもよい。但し、内側壁部62dは、複数の流路孔64が形成される壁部であるために、幅を小さくするにも限度がある。そのため、本実施形態では、内側壁部62dの幅(接合面積)は、内側壁部62bと同じとなっており、内側壁部62cよりも大きくなっている。
左側4つの壁部62についても同様であり、左端に位置する外側壁部62eの流路基板21との接合面積が最も大きい。また、左側3つの壁部62e,62f,62gに限って言えば、配線引出側(左側)に位置するものほど、幅W(接合面積A)が大きい。
尚、中央壁部62iは、配線引出方向が右側である2つの圧電素子群38k,38y(本発明の第1圧電素子群)と、配線引出方向が左側である2つの圧電素子群38c,38m(本発明の第2圧電素子群)の間に配置されている。つまり、流路基板21の、中央壁部62iの接合領域には、引出配線42が配置されない。そのため、引出配線42を伝わる熱を放散するという観点においては、中央壁部62iの幅をそれほど大きくする必要はない。そこで、本実施形態では、中央壁部62iの幅W4は、内側壁部62c,62g,の幅W3と同じになっている。
本実施形態では、カバー部材23は、2つの外側壁部62a,62eに加えて複数の内側壁部62b〜62h、及び、中央壁部62iを有する構造であるため、カバー部材23を流路基板21に接合したときに、カバー部材23の中央部が撓むことを防止できる。また、カバー部材23を加熱しながら接着剤66で接合したときなどに、カバー部材23が反って、外側壁部62a,62eに、流路基板21から剥離する方向の力が作用する場合がある。この場合でも、外側壁部62a,62eの接合面積が、内側壁部62b〜62h及び中央壁部62iよりも大きくなっているため、外側壁部62a,62eの剥離を防止できる。
図4に示すように、流路基板21の左右両端部を除いて、下側の絶縁膜41と上側の配線保護膜43とが、引出配線42とそれぞれ接触して積層されている。また、配線保護膜43(例えば、SiNx)は、絶縁膜41(例えば、SiO2)よりも、熱伝導率の高い材料で形成されている。これにより、ドライバIC51引出配線42を伝ってくる熱を、カバー部材23へ逃しやすくなる。
図2、図3に示すように、流路基板21の、内側壁部62c,62gとの接合領域(インク供給孔30aが形成されていない領域)には、搬送方向に延びる凸部67が形成されている。尚、前記接合領域には、複数の引出配線42が通過しており、凸部67は引出配線42を避けて形成されている。言い換えれば、引出配線42によって分断される形で、凸部67は搬送方向に複数延びている。また、走査方向に関しても、複数の凸部67が互いに間隔を空けて並んでいる。
上記の凸部67により、内側壁部62c,62gを流路基板21に接合したときに、走査方向に並ぶ複数の凸部67が、接着剤66の走査方向への流動を規制する。接着剤66は、内側壁部62c、62gから両側へほぼ等量で流出し、量自体も少ない。そのため、余剰の接着剤66は、近接ずる圧電素子の変形を妨げることがない。さらに、流路基板21の上記接合領域の表面が凹凸形状となるため、内側壁部62c,62gと流路基板21との接着力が高まるという効果も得られる。
尚、凸部67の材質は特に限定されないが、引出配線42と同じ導電性材料(例えば、金やアルミニウムなど)を用いて、凸部67と引出配線42とを同じ成膜工程(例えば、スパッタリングなど)で形成してもよい。また、その場合、凸部67の高さと引出配線42の厚みを等しくすることができる。凸部67の高さ(引出配線42の厚み)は、例えば、1μm以下である。これにより、流路基板21の、内側壁部62c,62gとの接合領域と他の壁部61,62との接合領域との間で、接合面の高さを揃えることができる。
図2に示すように、流路基板21の、中央壁部62iの接合領域にも、搬送方向に延びる凸部68が形成されている。また、走査方向に関して、複数の凸部68aが、互いに間隔を空けて並べて配置されている。そのため、中央壁部62iの両側2つの圧電素子群38の間での、接着剤66の流動を抑制することができる。また、流路基板21の上記接合領域の表面が凹凸形状となるため、中央壁部62iと流路基板21との接着力が高まる。尚、上記の凸部67と同様、凸部68についても、引出配線42と同じ導電性材料を用いて、引出配線42と同じ成膜工程で形成してもよい。
尚、流路基板21の、中央壁部62iの接合領域には、引出配線42が配置されていないため、内側壁部62c,62gの接合領域とは異なり、搬送方向に連続的に延びる凸部68を形成することが可能である。具体的には、図2に示すように、上記接合領域の中央部に位置する凸部68aは搬送方向に連続的に延び、その長さは圧電素子群38の全長以上である。この構成により、中央壁部62iを挟む両側で、余剰の接着剤66の流動状態が揃い、その流れ出し量も少なくてすむ。また、長尺な凸部68aにより、中央壁部62iと流路基板21との接着力が増し、中央壁部62iの幅をより狭いものに変更ができる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、流路基板21の、壁部62との接合領域において、引出配線42が走査方向と平行な方向に延びているが、走査方向と90度未満の角度で交差した方向に延びていてもよい。例えば、図5では、流路基板21の、外側壁部62aとの接合領域において、引出配線42が走査方向に対して角度θで交差した方向に横切るように延びている。このように、引出配線42が、接合領域を斜めに横切るように延びることで、引出配線42の、外側壁部62aとの接触長が長くなる。これにより、ドライバIC51から引出配線42に伝わる熱を、カバー部材23へ逃しやすくなる。尚、外側壁部62a以外の他の壁部62との接合領域においても、引出配線42が斜めに横切るように延びてもよい。また、ある壁部62の接合領域において、全ての引出配線42が斜めに延びる必要はなく、一部の引出配線42のみが斜めに延びてもよい。
図5では、複数の引出配線42が、搬送方向中央に寄るように傾斜して延びており、その結果、接点部46,47の配列長さが短くなる。即ち、この図5は、搬送方向に関して、圧電素子群38の全長に対して、接点部46、47の配列長さが短くても、電気的・機械的な接続性が確保できる場合の形態を示している。一方、上記の接続性の確保が心配される場合には、引出配線42が、搬送方向中央から離れる方向に傾斜して接続領域を横切るように配置されてもよい。
2]前記実施形態のように内側壁部が複数存在する場合、これら複数の内側壁部の間での接合面積の大小関係は、各壁部の構成に応じて適宜変更することが可能である。例えば、図3において、3つの内側壁部62b,62c,62dの接合面積が、配線引出側(右側)に位置するものほど大きくなっていてもよい。即ち、(外側壁部62aの接合面積)>(内側壁部62bの接合面積)>(内側壁部62cの接合面積)>(内側壁部62dの接合面積)の関係であってもよい。あるいは、3つの内側壁部62b,62c,62dの接合面積が全て同じであってもよい。
3]圧電素子列の数、カバー部材の壁部の数、あるいは、引出配線42の引出方向等について、以下のような変更を行うことも可能である。
例えば、前記実施形態では、複数の引出配線42が、流路基板71の上面において左右に分かれて延びている。これに対して、図6に示すように、複数の圧電素子31の引出配線42が、全て同一方向に引き出された構成であってもよい。図6では、全ての引出配線42が右方へ引き出されている。そして、カバー部材70の、配線引出側(右側)の外側壁部72aの幅(接合面積)が、外側壁部72aよりも左側に位置する内側壁部72b,72c,72d、及び、外側壁部72eの幅(接合面積)に比べて大きくなっている。
また、図7、図8に示すように、カバー部材80に内側壁部がなく、カバー部材80が左右両側の2つの壁部82a,82bのみを有する構成であってもよい。図7、図8では、流路基板81の上面において、複数の引出配線42が、複数の圧電素子31からそれぞれ右方へ引き出されている。その上で、配線引出側に位置する右側の壁部82aの幅が、配線引出側と反対側に位置する左側の壁部82bの幅よりも大きくなっている。
4]カバー部材は、少なくとも圧電素子31を覆う機能があればよいのであって、前記実施形態のように、カバー部材にインクを一時的に貯留する機能が兼ね備えられていることは必須ではない。即ち、カバー部材にリザーバが形成されていなくてもよい。この場合には、各圧力室26に対して、カバー部材とは別の部材からインクが供給されることから、カバー部材の壁部に流路孔64(図4参照)は形成されない。
以上説明した実施形態及びその変更形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する、産業用の液体吐出装置などにも、本発明を適用することは可能である。