以下、本開示によるシート制御方法及びシート制御装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
まず、実施の形態1のシート制御方法及びシート制御装置について説明する。
実施の形態1におけるシート制御方法及びシート制御装置は、自動運転モードを選択すると、生成された目標走行経路に沿って走行するように駆動や制動や舵角を自動制御する自動運転車両に適用したものである。
図1は実施の形態1のシート制御方法を実行するシート制御装置Bが適用された自動運転制御システムAを示す。以下、図1に基づいて全体システムについて説明する。
自動運転制御システムAは、車載センサ1と、地図データ記憶部2と、自動運転制御ユニット4と、アクチュエータ5と、表示デバイス6と、入力デバイス7と、を備える。そして、自動運転制御システムAに、シート制御方法を実行するシート制御装置Bが組み込まれている。このシート制御装置Bは、自動運転制御ユニット4と入力情報を共用し、かつ、自動運転制御ユニット4の制御情報を利用してシート60の摩擦抵抗の切替制御を実行する。
車載センサ1は、第1カメラ11と、レーダー12と、GPS13と、車載データ通信器14と、を有する。また、車載センサ1により取得したセンサ情報は、自動運転制御ユニット4へ出力される。なお、車載センサ1は、上述の第1カメラ11、レーダー12等以外にも自車の車両状態に関するセンサ情報を出力するセンサを含もので、これらのセンサについては後述する。
なお、車両状態として、走行速度、加速度、舵角などの車両自体の運動状態の他、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作、後述するシートベルト200の装着、ドア操作等の乗員Paによる操作状態や、車両運動による乗員Paの運動状態を含む。
第1カメラ11は、自動運転で求められる機能として、車線や先行車や歩行者等の自車の周囲情報を画像データにより取得する機能を実現する周囲認識センサである。この第1カメラ11は、例えば、自車の前方認識カメラ、後方認識カメラ、右方認識カメラ、左方認識カメラ等を組み合わせることにより構成される。なお、自車は自動運転制御システムAを搭載した車両であり、制御対象の車両を指す。
第1カメラ11のカメラ画像から、自車走行路上物体・車線・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道・道路標識(制限速度))等を検知できる。
レーダー12は、自動運転で求められる機能として、自車周囲の物体の存在を検知する機能と、自車周囲の物体までの距離を検知する機能とを実現する測距センサである。ここで、「レーダー12」とは、電波を用いたレーダーと、光を用いたライダーと、超音波を用いたソナーと、を含む総称をいう。レーダー12としては、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダー等を用いることができる。このレーダー12は、例えば、自車の前方レーダー、後方レーダー、右方レーダー、左方レーダー等を組み合わせることにより構成される。
レーダー12では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)等の位置が検知されると共に、各物体までの距離が検知される。なお、視野角が不足すれば、適宜追加しても良い。
GPS13は、GNSSアンテナ13aを有し、衛星通信を利用することで停車中及び走行中の自車位置(緯度・経度)を検知する自車位置センサである。なお、「GNSS」は「Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム」の略称であり、「GPS」は「Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム」の略称である。
車載データ通信器14は、外部データ通信器10との間で送受信アンテナ3a,14aを介して無線通信を行うことで、自車で取得することができない情報を外部から取得する外部データセンサである。
外部データ通信器10は、例えば、自車の周辺を走行する他車に搭載されたデータ通信器の場合、自車と他車の間で車車間通信を行う。この車車間通信により、他車が保有する様々な情報のうち、自車(図6等参照)で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。
外部データ通信器10は、例えば、インフラストラクチャ設備に設けられたデータ通信器の場合、自車とインフラストラクチャ設備の間でインフラ通信を行う。このインフラ通信により、インフラストラクチャ設備が保有する様々な情報のうち、自車で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。例えば、地図データ記憶部2に保存されている地図データでは不足する情報や地図データから変更された情報がある場合、不足情報や変更情報を補うことができる。また、自車が走行を予定している目標走行経路上での渋滞情報や走行規制情報等の交通情報を取得することもできる。
地図データ記憶部2は、緯度経度と地図情報が対応付けられた、いわゆる電子地図データが格納された車載メモリにより構成される。地図データ記憶部2に格納された地図データは、少なくとも複数車線を有する道路で各車線の認識ができるレベルの精度を持つ、高精度地図データである。この高精度地図データを用いることにより、自動運転において複数車線の中で自車がどの車線を走るかという線状の目標走行経路を生成することができる。そして、GPS13にて検知される自車位置を自車位置情報として認識すると、自車位置を中心とする高精度地図データが自動運転制御ユニット4へと送られる。
高精度地図データには、各地点に対応づけられた道路情報を有し、道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。道路情報は、道路の位置及び領域により道路を特定する情報と、道路ごとの道路種別、道路ごとの車線幅、道路の形状情報とを含む。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶されている。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、車線幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接レーン進入の可否)、制限速度、標識、その他の道路に関する情報を対応付けて記憶されている。
自動運転制御ユニット4は、車載センサ1や地図データ記憶部2からの入力情報を統合処理し、目標走行経路と目標車速プロファイル(加速プロファイルや減速プロファイルを含む。)等を生成する機能を有する。すなわち、現在地から目的地までの走行車線レベルによる目標走行経路を、地図データ記憶部2からの高精度地図データや所定の経路検索手法等に基づいて生成すると共に、目標走行経路に沿った目標車速プロファイル等を生成する。さらに、目標走行経路に沿う自車の停車中及び走行中、車載センサ1によるセンシング結果により自動運転を維持できないと判断されると、目標走行経路や目標車速プロファイル等を逐次修正する。
自動運転制御ユニット4は、目標走行経路が生成されると、自車が目標走行経路に沿って走行するように駆動指令値、制動指令値、舵角指令値を演算し、演算した指令値をアクチュエータ5に出力する。具体的には、駆動指令値の演算結果を駆動アクチュエータ51へ出力し、制動指令値の演算結果を制動アクチュエータ52へ出力し、舵角指令値の演算結果を舵角アクチュエータ53へ出力する。
アクチュエータ5は、自車を目標走行経路に沿って走行及び停止させる制御アクチュエータであり、駆動アクチュエータ51と、制動アクチュエータ52と、舵角アクチュエータ53と、を有する。
駆動アクチュエータ51は、自動運転制御ユニット4から駆動指令値を入力し、駆動輪へ出力する駆動力を制御するアクチュエータである。駆動アクチュエータ51としては、例えば、エンジン車の場合にエンジンを用い、ハイブリッド車の場合にエンジンとモータジェネレータ(力行)を用い、電気自動車の場合にモータジェネレータ(力行)を用いる。
制動アクチュエータ52は、自動運転制御ユニット4から制動指令値を入力し、駆動輪へ出力する制動力を制御するアクチュエータである。制動アクチュエータ52としては、例えば、油圧ブースタや電動ブースタやブレーキ液圧アクチュエータやブレーキモータアクチュエータやモータジェネレータ(回生)等を用いる。
舵角アクチュエータ53は、自動運転制御ユニット4から舵角指令値を入力し、操舵輪の転舵角を制御するアクチュエータである。なお、舵角アクチュエータ53としては、ステアリングシステムの操舵力伝達系に設けられる転舵モータ等を用いる。
表示デバイス6は、自動運転による停車中及び走行中に、自車が地図上で何処を移動しているか等を画面表示し、運転手や同乗者等の乗員Pa(図6参照)に自車位置視覚情報を提供するデバイスである。この表示デバイス6は、自動運転制御ユニット4により生成された目標走行経路情報や自車位置情報や目的地情報等を入力し、表示画面に、地図と道路と目標走行経路(自車の走行経路)と自車位置と目的地等を視認しやすく表示する。
入力デバイス7は、運転手の操作により種々の入力を行うデバイスであり、例えば、表示デバイス6のタッチパネル機能を用いてもよいし、他のダイヤルやスイッチ等を用いてもよい。なお、運転手による入力としては、目的地に関する情報の入力や、自動運転時の定速走行、追従走行等の設定の入力等を行う。
次に、シート制御装置Bについて説明する。
シート制御装置Bは、シートコントローラ40と、制御対象としてのシートバックアクチュエータ110及びシートベルト巻き取りアクチュエータ120を備える。
まず、制御対象としてのシートバックアクチュエータ110及びシートベルト巻き取りアクチュエータ120について説明する。
シートバックアクチュエータ110は、図2Aに示すシート60のシートバック61に内蔵され、シートバック61の乗員Paの背中を支持する背中支持面61aの摩擦抵抗が大きい大抵抗状態と、摩擦抵抗が小さい小抵抗状態とに切り替える。なお、シートバック61は、図示のような独立型のシート60に適用する他、図4に示す3人掛けのシート160のシートバック161にも適用するものとする。図4では、シートバック161において、乗員Paの背中を支持する背中支持面161a、161b,161cにおいて点線110a、10b、110cにより囲んだ領域にシートバックアクチュエータ110が設けられている。また、シート60、160は、それぞれ、シートクッション62、162を備える。
図2A、図2Bは、シートバックアクチュエータ110の小抵抗状態を示し、図3A、図3Bがシートバックアクチュエータ110の大抵抗状態を示している。
このシートバックアクチュエータ110は、図2A、図2Bに示すように、シートバック61の背中支持面61aの後方位置に、上下に長い棒状で断面が直角三角形状の固定部材111と可動部材112とが車両左右方向に交互に配置されている。
固定部材111は、三角の頂点を、シートバック61の背中支持面61aのシートトリムの方向に向けて配置されている。一方、可動部材112は、固定部材111と前後対称の向きで配置され、三角形の一辺を成す平面部112aを、背中支持面61aのシートトリムの方向に向け、両部材111,112の傾斜面どうし対面させて配置されている。そして、可動部材112は、固定部材111の傾斜面に沿って、車両斜め前後方向にスライド可能に支持され、モータや流体圧アクチュエータなど駆動源を備えた駆動機構により、斜め前後にスライドされる。
そこで、図2Bに示すように、可動部材112の平面部112aが、車両前後方向で固定部材111の頂点と略一致して配置されている場合、背中支持面61aは乗員Paの背中に対して凹凸が小さな平らな形状となる。このとき、シートバック61は、車両左右方向の摩擦抵抗が小さな小抵抗状態となる。
一方、可動部材112を車両斜め後方にスライドさせて、図3Bに示すように、可動部材112の平面部112aが、固定部材111の頂点よりも車両後方に配置された状態では、背中支持面61aは、小抵抗状態よりも凹凸が大きな形状となる。また、平面部112aが後退したことにより、乗員Paとの接触面積は、小抵抗状態よりも小さくなり、凹凸形状に掛かる接触圧力が大きくなる。したがって、シートバック61の背中支持面61aは、車両左右方向の摩擦抵抗が、小抵抗状態よりも大きくな大抵抗状態となる。
次に、シートベルト巻き取りアクチュエータ120について説明する。
シートベルト200は、乗員Paのそれぞれに装着可能に設けられており、図4に示す3人掛けのシート160では、乗員Paの着座位置に応じて3箇所に設けられている。また、シートベルト200は、それぞれ、周知のように、一端がアンカに固定され、もう一端がピラーやシートバック内に設けられたシートベルト巻き取り装置201に巻き取り及び引き出し可能に連結されている。
シートベルト巻き取りアクチュエータ120は、シートベルト巻き取り装置201に設けられており、乗員Paがシートベルト200を所定のテンションで装着した状態で、モータや流体圧を駆動源として、シートベルト200をさらに巻き取る。すなわち、シートベルト巻き取りアクチュエータ120は、乗員Paがシートベルト200を装着した状態のときに、シートベルト200をさらに巻き取り、乗員Paの背中支持面161a、161b、161cに対する接触圧力を付与することができる。
なお、図3Aに示した独立型のシート60も、図示は省略するが、シートベルト200及びシートベルト巻き取り装置201を備える。そして、シートベルト巻き取り装置201のシートベルト巻き取りアクチュエータ120によりシートベルト200を巻き取り、乗員Paの背中支持面61aに対する接触圧力を付与することができる。
次に、シートコントローラ40によるシートバック摩擦抵抗切替制御を実行する要素について図5のブロック図により説明する。
シートコントローラ40は、自車位置検出部41、旋回走行箇所検出部42、旋回加速度発生予測部43、乗降状態判定部44、乗員頭部の方向検出部45、摩擦抵抗制御部46を備える。また、車載センサ1には、第2カメラ15、舵角センサ16、加速度センサ17、車速センサ18、ドアスイッチ19、シートベルトスイッチ20、イグニッションスイッチ21が含まれる。
第2カメラ15は、乗員Pa(例えば、運転手)の少なくとも頭部Heを撮像する。舵角センサ16は、操舵角あるいは転舵角を検出する。加速度センサ17は、自車の左右方向及び前後方向の加速度を検出する。車速センサ18は、自車の車速を検出する。
ドアスイッチ19は、自車のドアに設けられ、ドアロックの解除と施錠とを識別可能な信号を出力する。シートベルトスイッチ20は、シートベルト200のバックルに設けられ、乗員Paがシートベルト200を装着してタングをバックルに差し込むとオフからオンに切り替わるスイッチである。イグニッションスイッチ21は始動時にオン操作するスイッチである。
次に、シートコントローラ40によるシートバック摩擦抵抗切替制御の処理の流れを、図6のフローチャートに基づいて説明し、併せて、図5のブロック図に示すシートバック摩擦抵抗切替制御を実行する各要素について説明する。
なお、このシートバック摩擦抵抗切替制御は、シートバック61,161の背中支持面61a、161aの摩擦抵抗を切り替えるものであり、シートバックアクチュエータ110毎に独立して実行する。
ステップS101では、ドアスイッチ19及び車速センサ18の検出状態に基づいて、ドアロック解除状態であるか判定し、停車状態でのドアロック解除状態でステップS102に進み、ドアロック状態でステップS101の判定を繰り返す。
ドアロック解除状態となって進むステップS102では、シートバックアクチュエータ110に小抵抗状態(図2A、図2Bの状態)とする指令を出力する。なお、この場合、この小抵抗状態とする指令をこのタイミングで出力してもよいが、シートバックアクチュエータ110の初期状態を小抵抗状態としている場合、このステップS102では、この初期状態を維持する。
次に、ステップS103では、シートベルトスイッチ20からの信号を入力し、次のステップS104では、シートベルトスイッチ20がオンであるか否か判定する。そして、シートベルトスイッチ20がオンの場合は、ステップS105に進み、オフの場合はステップS104の判定を繰り返す。そして、ステップS105では、シートバックアクチュエータ110に、シートバック61、161の背中支持面61a、161aを大抵抗状態(図3A、図3Bの状態)とする指令を出力する。
以上のステップS101〜S105の処理は、図5に示す乗降状態判定部44及び摩擦抵抗制御部46により行う。すなわち、乗降状態判定部44が、ドアスイッチ19の検出に基づいてドアロックの解除状態(乗車時)を検出した場合、その検出を摩擦抵抗制御部46に出力する。これを受けて摩擦抵抗制御部46は、シートバック61,161の背中支持面61a、161aを小抵抗状態とする指令をシートバックアクチュエータ110に出力する。また、乗降状態判定部44が、乗員Paがシートベルト200を装着したことを検出したら、シートベルト装着状態であることを摩擦抵抗制御部46に出力する。これを受けて摩擦抵抗制御部46は、そのシートベルト200が装着された箇所の背中支持面61a、161aを大抵抗状態とする指令をシートバックアクチュエータ110に出力する。
図6に戻り、ステップS106では、イグニッションスイッチ21がオンであるか否か判定し、オンの場合ステップS107に進み、オフの場合は、ステップS106の判定を繰り返す。
イグニッションスイッチ21がオンの場合、すなわち、走行可能となった場合に進むステップS107では、自車の目標走行経路の前方における、旋回走行箇所の検出を行う。ここで、旋回走行箇所としては、カーブ、交差点の右左折が含まれる。次のステップS108では、旋回走行箇所への到達を判定し、旋回走行箇所への到達時あるいはその直前でステップS109に進み、それまではステップS108を繰り返す。
以上のステップS106〜S108の処理は、図5に示す自車位置検出部41及び旋回走行箇所検出部42により行う。すなわち、自車位置検出部41は、GPS13の自車位置情報と、地図データ記憶部2から得られる地図情報に基づいて、地図上の自車位置を検出する。そして、旋回走行箇所検出部42は、自車の目標走行経路上に、自車に旋回走行を行う箇所として、少なくとも、カーブ及び右左折を行う交差点の検出を行う。なお、運転手が、手動運転を行う場合は、例えば、ナビゲーション装置で経路設定されているときには、目標走行経路を取得することができる。また、本実施の形態1のように自動運転制御が実行可能な車両の場合、自度運転制御の実行時には、運転スケジュールに関する情報から目標走行経路を取得することができる。
図6に戻り、ステップS108において、旋回走行箇所への到達あるいはその直前を検出した場合に進むステップS109では、舵角センサ16、加速度センサ17の出力を読み込み、自車に生じる旋回加速度の大きさを予測する。そして、続くステップS110では、予測した旋回加速度が、予め設定され閾値以上であるか判定し、閾値以上の場合はステップS111に進み、閾値未満の場合は、ステップS107に戻る。なお、この閾値は、旋回加速度を受けた乗員Paの上半身UB及び頭部Heが所定以上傾くおそれがある値に設定されており、さらに、この所定以上の傾きは、この傾きが繰り返されると、乗り物酔いを招くおそれがある傾きとしている。また、閾値は、実験やシミュレーション等に基づいて予め求めた値である。
予測した旋回加速度が閾値を超えた場合に進むステップS111では、シートベルト巻き取りアクチュエータ120を駆動させシートベルト200の巻き取りを行う。
以上のステップS109〜S111の処理は、図5に示す旋回加速度発生予測部43及び摩擦抵抗制御部46により行う。すなわち、旋回加速度発生予測部43は、舵角センサ16、車速センサ18の出力に基づいて、自車に生じる旋回加速度を予測する。また、摩擦抵抗制御部46は、予測した旋回加速度が閾値を超えた場合に、シートベルト巻き取りアクチュエータ120に、シートベルト200を巻き取る指令を出力する。
図6に戻り、シートベルト200の巻き取り駆動を行った後に進むステップS112では、第2カメラ15の撮像データに基づいて、乗員Paの頭部Heの方向を入力する。そして、続くステップS113では、旋回走行終了の判定を行い、旋回走行終了と判定した場合は、ステップS114に進み、旋回走行非終了の場合はステップS110に戻る。この旋回走行の終了判定は、乗員Paの頭部Heが直立方向にある、もしくは、ステアリングSTRが中立位置にある場合は、旋回走行終了と判定する。つまり、乗員Pa(特に、運転手)は、自車の進行方向を見るため、旋回走行中は、頭部Heが旋回内側を向き、旋回走行を終了して直進走行となると、頭部Heが直立方向を向く。よって、頭部Heが直立方向を向いたときに、もしくは、ステアリングSTRが中立位置になったときに、旋回走行終了と判定する。なお、上記の旋回走行終了の判定は、摩擦抵抗制御部46において、乗員頭部の方向検出部45による乗員頭部の方向の検出と、舵角センサ16からの信号に基づいて行う。
ステップS113において旋回走行終了と判定した場合に進むステップS114では、シートベルト巻き取りアクチュエータ120に、シートベルト200の巻き取りを終了する指令を出力して、シートベルト200の巻き取りを緩める。次のステップS115では、シートベルトスイッチ20がオフとなったか、すなわち、乗員Paがシートベルト200の装着を解除したか判定する。シートベルトスイッチ20がオン(シートベルト装着)の場合は、ステップS107に戻り、シートベルトスイッチ20がオフ(シートベルト装着解除)の場合は、ステップS116に進む。
ステップS116では、シートバックアクチュエータ110に、小抵抗状態とする指令を出力する。そして、次のステップS117においてドアスイッチ19がドアロックの施錠を示したら、シートバック摩擦抵抗切替制御を終了する。
なお、ステップS115〜S117の処理は、図5に示す乗降状態判定部44及び摩擦抵抗制御部46が行う。すなわち、乗降状態判定部44がシートベルトスイッチ20及びドアスイッチ19の信号に基づいて行い、シートベルトスイッチ20のオフにより降車と判定したときに、摩擦抵抗制御部46が小抵抗状態とする指令の出力を行う。
次に、実施の形態1の作用を説明する。
ここで、作用として、停車してドアロックを施錠している状態の自車に乗員Paが乗車し、走行後に乗員Paが降車してドアロックを施錠するまでのシート制御装置Bの動作を、順を追って説明する。
乗員Paが乗車するにあたり、ドアロックを解除すると、シートバックアクチュエータ110がシートバック61,161の背中支持面61a、161aを、小抵抗状態とする指令を出力する(ステップS101、S102の処理)。これにより、シートバックアクチュエータ110は、図2Bに示すように、可動部材112の平面部112aが背中支持面61a,161aの直後に配置され、背中支持面61a,161aは、凹凸が小さな平面的な形状の小抵抗状態となる。なお、停車時に既に小抵抗状態とする指令を出力してその状態に維持されている場合は、新たにする指令を出力する必要はない。
このように、ドアロックを解除したときに、シートバック61,161は、小抵抗状態となっているため、乗車時に乗員Paがシートバック61,161に沿って左右方向に移動する際に、大抵抗状態と比較して、円滑に移動することができる。特に、図4に示す3人掛けのシート160では、乗員Paがドアから遠い側の端まで移動する場合、シートバック161に沿って背中をスライドさせながら移動する場合がある。このような移動の場合に、大抵抗状態と比較して、移動を円滑に行うことができる。
次に、乗員Paは、自車が走行を開始する時点でシートベルト200を装着する。このシートベルト200の装着により、シートベルトスイッチ20がオンとなると、シートコントローラ40は、シートバックアクチュエータ110に大抵抗状態とする指令を出力する(ステップS103〜S105の処理)。
よって、シートバックアクチュエータ110は、可動部材112が車両斜め後方に移動し、図3Bに示すように、車両左右方向に凹凸が交互に並び、凹凸が大きな形状であり、乗員Paとの接触面積が小さく、接触圧力が大きな大抵抗状態となる。したがって、自車の走行時には、乗員Paが着座したシートバック61,161の背中支持面61a、161aは、図3Bに左右方向への摩擦抵抗が大きい状態に切り替わる。よって、乗員Paは、車両の旋回状態を含み、走行中は、シートバック61、161の背中支持面61a、161aに対する左右方向の摩擦抵抗が小抵抗状態と比較して大きくなる。これにより、乗員Paに車両左右方向の旋回加速度が作用した際に、乗員Paの左右方向の移動が背中支持面61a、161aによる摩擦抵抗で抑制され、安定した支持状態とすることができる。
また、乗員Pa(運転手)がイグニッションスイッチ21をオンとして、走行を開始した後は、シートコントローラ40は、閾値以上の旋回加速度が作用する旋回走行を予測する。そして、車両の旋回走行時であって、さらに閾値以上の旋回加速度が作用する旋回走行時には、背中支持面61a,161aにおける左右方向の摩擦抵抗をさらに確実に作用させる制御を実行する。
すなわち、走行開始後、目標走行経路上にカーブや交差点の右左折等、自車に旋回加速度が発生する箇所が存在する場合、シートコントローラ40は、舵角センサ16、車速センサ18の検出に基づいて、旋回加速度の大きさを予測する。そして、予測した旋回加速度が閾値以上の場合は、旋回時あるいは旋回直前に、シートベルト巻き取りアクチュエータ120を駆動させてシートベルト200の巻き取りを行う(ステップS107〜S111の処理による)。
このシートベルト200の巻き取りにより、乗員Paは、背中がシートバック61、161に押し付けられて背中支持面61a、161aとの接触圧力が付与される。これにより、背中と背中支持面61a、161aとの間の摩擦抵抗がさらに高まると共に、シートベルト200による乗員Paの拘束力も強まる。
よって、自車がカーブ走行や交差点の右左折等の旋回走行を行う際に、閾値以上の旋回加速度が乗員Paに作用しても、乗員Paの上半身UB及び頭部Heが旋回外側へ傾くのが抑制される。
その後、カーブ走行や交差点の右左折等の旋回を終えたと判定すると、シートベルト200の巻き取りを解除する。この場合、シートベルト200の巻き取り分を、巻き出すようにシートベルト巻き取りアクチュエータ120を駆動させてもよいし、巻き取り分の引き出しを許容するようにしてもよい。これにより、乗員Paはシートベルト200による拘束が緩まり、身体の自由度が、通常の装着時の状態に戻る(ステップS112〜S114の処理による)。
上記の閾値以上の旋回加速度が作用する旋回走行時のシートベルト200の巻き取り、及び旋回走行終了時の巻き取り解除は、走行中は、継続して実行する。したがって、自車の走行中、閾値以上の旋回加速度が作用する旋回走行時には、乗員Paは、常に、摩擦抵抗が大きな状態の背中支持面61a、161aへの接触圧力が付与されると共に、シートベルト200により拘束される。
以上のように、乗員Paは、旋回走行時を含み乗車後の走行中は、大抵抗状態とした背中支持面61a、161aにより、上半身UB及び頭部Heが旋回加速度により旋回外側に移動するのが抑えられる。加えて、閾値を越える旋回加速度が作用する際には、シートベルト200の巻き取りにより、さらに背中支持面61a、161aに対する接触圧力が付与される。
したがって、乗員Paの上半身UB及び頭部Heの旋回加速度による左右方向への移動量が抑えられ、このような旋回加速度方向への頭部Heの揺れ(振幅)を原因とする乗り物酔いの発生を抑えることができる。また、閾値よりも大きな旋回加速度が作用する旋回走行の終了後は、シートベルト200の巻き取りを解除するため、引き続き巻き取り状態を維持するものと比較して、乗員Paの身体の自由度が制限される不快感を抑制できる。
その後、走行を終了して乗員Paがシートベルト200の装着を解除すると、シートコントローラ40は、シートバックアクチュエータ110に小抵抗状態とする指令を出力する(ステップS115、S116の処理による)。これにより、シートバックアクチュエータ110は、図2Bに示す小抵抗状態となるため、乗員Paが降車する際は、乗車時と同様に、左右方向に円滑に移動することができる。
以下に、実施の形態1の効果を列挙する。
(1)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、車両情報入力部としての車載センサ1から得られる車両状態に関連する情報に基づいてシート60、160の摩擦抵抗をシートコントローラ40により制御する乗員姿勢制御方法である。さらに、シート60、160には、摩擦抵抗を相対的に大きくした大抵抗状態と相対的に小さくした小抵抗状態とに切替可能なシート摩擦抵抗切替部としてのシートバックアクチュエータ110を有する。そして、シートコントローラ40は、乗員Paの乗降時に、シートバックアクチュエータ110を小抵抗状態とし(S102)、乗員Paの乗車後に、シートバックアクチュエータ110を大抵抗状態とする(S105)。
したがって、乗員Paの乗降時には、小抵抗状態のシートバック61、161に沿って円滑に移動できる。一方、乗員paの乗車後は、乗員Paの上半身UB及び頭部Heの移動を摩擦抵抗により抑制して姿勢保持性を確保し、車両の旋回走行時に旋回加速度等により頭部Heが移動することに起因する乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
(2)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シートコントローラ40は、シートベルト200の装着時に、乗車後として大抵抗状態とし、シートベルト200の非装着時に、乗降時として小抵抗状態とする。
したがって、乗降時に確実に小抵抗状態として円滑な乗降を行うことができ、かつ、乗車後に確実に大抵抗状態として、乗員Paの移動を摩擦抵抗により抑制できる。しかも、走行中は、常時、大摩擦抵抗として摩擦抵抗の変化が無いため、乗員Paに違和感を与えないようにできる。加えて、乗降時と乗車後との検出を、シートベルト200の着脱の検出により行うことができ、既存のシートベルトスイッチ20を利用してアンカに検出を行うことができる。
(3)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シート摩擦抵抗切替部として、シート60、160のシートバック61、161にシートバックアクチュエータ110が設けられ、シートコントローラ40が大抵抗状態としたときには、車両左右方向の摩擦抵抗を大きくする。
したがって、乗員paに対し左右方向に旋回加速度等による外力が作用した際の、乗員Paの上半身UB及び頭部Heの左右方向への移動を確実に抑制し、乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
(4)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シートコントローラ40は、車両が旋回状態のときに、大抵抗状態とする。
したがって、乗員paに対し左右方向に旋回加速度が作用した際の、乗員Paの上半身UB及び頭部Heの左右方向への移動を確実に抑制し、乗り物酔いが生じるのを抑制できる。なお、本実施の形態1では、乗車後は、常時、大抵抗状態とすることにより、旋回加速度が発生する車両状態時も大抵抗状態としているが、旋回時のみ大抵抗状態に切り替えるようにしてもよい。
(5)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シートバックアクチュエータ110と乗員Paとの接触圧力を付与可能な圧力付与部としてのシートベルト巻き取り装置201を、さらに有し、シートコントローラ40は、大抵抗状態で接触圧力の付与を行う。
したがって、接触圧力の付与により乗員Paに加速度が作用する際の乗員Paの移動を、さらに確実に抑制することができる。加えて、本実施の形態1では、既存のシートベルト巻き取り装置201を用いて、接触圧力の付与を行うことができ、簡易な構成で上記効果を達成できる。
さらに、実施の形態1では、乗員Paの乗車後は、シートバックアクチュエータ110を大抵抗状態とし、旋回加速度が閾値を越える場合にシートベルト巻き取り装置201による接触圧力を付与するようにしている。このため、シートバックアクチュエータ110による摩擦抵抗は、閾値未満の旋回加速度の乗員Paの移動を抑える摩擦抵抗にできる。これにより、シートバックアクチュエータ110の大抵抗状態での摩擦抵抗を、閾値を越える旋回加速度での乗員Paの移動を抑制するようにしたものと比較して、良好な座り心地を確保しつつ、閾値を越える旋回加速度の発生時も、乗員Paを保持することができる。
(6)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シートバックアクチュエータ110は、大抵抗状態では、小抵抗状態と比較して、乗員Paとの接触面である背中支持面61a、161aの形状を凹凸が大きな形状とする。
したがって、シートバック61,161を凹凸が相対的に大きな形状と、凹凸が相対的に小さな形状とに変化させる簡易な構成により、摩擦抵抗の切り替えを達成できる。また、構成の簡易化を図ることで、シートバック61、161の厚さを抑えることも可能である。
(7)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、シートバックアクチュエータ110は、大抵抗状態では、小抵抗状態と比較して、乗員Paとの接触面積を小さくして、接触圧力を大きくする。
したがって、乗員Paとの接触面積を小さくし、接触圧力を大きくして、車両左右方向の摩擦抵抗を大きくすることができる。また、構成の簡略化を図り、複数の乗員Paが着座するシートにも適用が容易である。
(8)実施の形態1の乗員姿勢制御装置は、車両情報入力部としての車載センサ1と、シート60、160の摩擦抵抗を大抵抗状態と小抵抗状態とに切替可能なシート摩擦抵抗切替部としてのシートバックアクチュエータ110とを備える。さらに、車両状態に基づいてシートバックアクチュエータ110を制御するシートコントローラ40を備える。そして、シートコントローラ40は、シートバックアクチュエータ110を、乗員Paの乗降時に小抵抗状態とし、乗員Paの乗車後に大抵抗状態とする。
したがって、乗員Paの乗降時には、小抵抗状態のシートバック61、161に沿って円滑に移動できる。一方、乗員Paの乗車後は、シートバック61、161を大抵抗状態として、乗員Paの上半身UB及び頭部Heがシートバック61、161に沿って移動するのを抑制し、この移動に起因する乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
以下に、他の実施の形態のシート制御方法及びシート制御装置について説明する。
なお、他の実施の形態のシート制御方法及びシート制御装置について説明するのにあたり、共通する構成要素には共通する符号を付けて説明を省略する。
まず、実施の形態2について説明する。
図7A、図7Bに示すシートバックアクチュエータ210は、実施の形態1のシートバックアクチュエータ110の変形例である。
シートバックアクチュエータ210は、実施の形態1と同様に、上下方向に長い棒状の固定部材211と可動部材212とを備える。固定部材211と可動部材212とは、それぞれ、正三角形断面形状に形成されている。そして、固定部材211は、三角の頂点を車両前方に向けて配置されている。一方、可動部材212は、固定部材211と前後対称の向きに配置され、正三角形の一辺を成す平面部212aを、車両前方に向けて配置されている。また、可動部材212は、モータや流体圧アクチュエータなどの駆動機構により、固定部材211に沿って、上下方向にスライド可能に支持されている。すなわち、シートバックアクチュエータ210は、可動部材212を、図7Aに示すように、固定部材211と水平方向に並んで配置し、背中支持面61a、161aを凹凸が小さく平らな形状とし、左右方向の摩擦抵抗が小さな小抵抗状態とすることができる。
また、シートバックアクチュエータ210は、可動部材212を、固定部材211に対して下方にスライドさせ、図7Bに示すように、固定部材211のみ配置した状態とする。これにより、背中支持面61a、161aを、凹凸が大きな形状とすると共に、乗員Paとの接触面積が小さな形状とし、車両左右方向の摩擦抵抗が大きな大抵抗状態とすることができる。また、可動部材212を上下に移動させることにより、シートバック61、161の前後方向の厚さが厚くなるのを抑制できる。
したがって、実施の形態2にあっても、実施の形態1と同様に、小抵抗状態と大抵抗状態とに切り替えて、上記(1)〜(8)に記載した効果を得ることができる。
次に、実施の形態3について説明する。
図8A、図8Bに示すシートバックアクチュエータ310は、実施の形態1のシートバックアクチュエータ110の変形例である。
シートバックアクチュエータ310は、図8Aに示すように、シートバック361のシートトリム362の張りの強さを変更可能な、一対のフレーム311、311を有する。フレーム311は、それぞれ、中心軸CE1、CE2を中心に左右対称に回転角度を変更可能となっている。図8Aは、一対のフレーム311の車両前方側端部の間隔を広げ、シートトリム362の張りを相対的に強くし、着座した乗員Paの背中との接触面積を相対的に小さくした小抵抗状態を示す。
一方、図8Bは、一対のフレーム311の車両前方側端部の間隔を狭め、シートトリム362の張りを相対的に弱くし、着座した乗員Paの背中(着衣)との接触面積を相対的に大きくした大抵抗状態を示す。
このように、実施の形態3では、シートバックアクチュエータ310は、シートバック361のシートトリム362と乗員Paの背中(着衣)との接触面積を変化させ、車両左右方向の摩擦抵抗を変更することができる。このような実施の形態3では、シートバック361の内部に複数の移動部材を設けるものと比較して、構成の簡略化を図り、シートバック361の厚さが厚くなるのを抑制できる。また、複数の乗員Paが着座するシートにも適用が容易である。
また、実施の形態3にあっても、実施の形態1と同様に、小抵抗状態と大抵抗状態とに切り替えて、上記(1)〜(5)、(7)〜(8)の効果を得ることができる。
次に、実施の形態4について説明する。
実施の形態4は、シートクッション462の摩擦抵抗の大小を切り替えるようにした例であり、乗車後に、車両が減速状態のときにシートクッション462の摩擦抵抗を大きな状態とし、それ以外では摩擦抵抗を小さな状態とするようにした例である。
まず、図9に示すシート460について説明する。
シート460は、シートバック461とシートクッション462とを備える。シートクッション462は、左右方向の中央に、主として乗員Paの臀部を支持する後部支持面462aと、この後部支持面462aの前方に隣設され、若干、車両前方側程高くなるように上向き傾斜された前部支持面462bとを備える。また、両支持面462a、462bの左右に、両支持面462a、462bよりも上方に突出したサイドサポート部462c、462cを備える。
さらに、シートクッション462の前部支持面462bのシートトリムの下方位置に、実施の形態1において図2B、図3Bに示したのと同様の構造の第1シートアクチュエータ410が、実施の形態1とは向きを変えて設けられている。
すなわち、第1シートアクチュエータ410は、可動部材112及び固定部材111が、それぞれ、左右方向に沿って設けられ、かつ、前後に並設されている。そして、可動部材112は、固定部材111に対して下方にスライドするように設けられている。
したがって、可動部材112を上昇させた場合は、シートクッション462の前部支持面462bが相対的に凹凸の小さな平ら形状であると共に、乗員Paとの接触面積も相対的に大きく、接触圧力が小さくなり、車両前後方向の摩擦抵抗が小さな小抵抗状態となる。一方、可動部材112を下方にスライドさせた場合は、前後方向に波型の相対的に凹凸の大きな形状であると共に、乗員Paとの接触面積が小さく、接触圧力が大きくなり、前部支持面462bの車両前後方向の摩擦抵抗が大きな大抵抗状態となる。
また、シート460には、シートクッション462の傾きを変更する第2シートアクチュエータ420が設けられている。すなわち、シートクッション462は、左右方向に延びる図10Aに示す中心軸CE4を中心に、上下方向に傾斜角度を変更可能に支持されている。
第2シートアクチュエータ420は、シートクッション462に中心軸CE4を中心として図10Aにおいて時計回り方向及び反時計回り方向の回転力を付与する。これにより、シートクッション462は、図10Aに示すように相対的に前部を矢印UPにより示すように上昇させた状態と、図11Aに示すように、相対的に前部を矢印DNにより示すように下降させた状態とに、傾斜角度を変更可能としている。
すなわち、図11Aに示すように、シートクッション462の傾斜角度を相対的に水平に近付けた場合、乗員Paの車両前方への移動に対する摩擦抵抗が相対的に小さくなるもので、これを小抵抗状態とする。なお、図11Aにおいて基準軸RAは、小抵抗状態のシートクッション462に対して鉛直方向に伸ばした軸を示す。
一方、シートクッション462の傾斜角度を、図10Aに示すように上向きに傾斜した場合、乗員Paの車両前方への移動に対する摩擦抵抗が相対的に大きくなるもので、これを大抵抗状態とする。この図10Aに示す大抵抗状態では、基準軸RAが後方に傾いているのが分かる。
なお、上記のようにシートクッション462の傾斜角度を変化させる第2シートアクチュエータ420は、例えば、モータと歯車等の動力伝達機構により構成することができる。あるいは、流体圧を用いて伸縮するものを用いることもできる。
第1シートアクチュエータ410及び第2シートアクチュエータ420の作動は、シートコントローラ440により制御する。このシートコントローラ440の制御を簡単に説明すると、自車の制動時以外の通常時(非減速状態時)は、両シートアクチュエータ410、420を小抵抗状態に制御し、制動時(減速状態時)に、大抵抗状態に制御する。
図12は、シートコントローラ440のシートクッション摩擦抵抗切替制御の処理の流れを示す。
ステップS201では、自車のイグニッションスイッチ21がオンとなっているか判定し、オンの場合、次のステップS202進み、オフの場合、ステップS201を繰り返す。なお、このイグニッションスイッチ21をオンとした時点を含み、初期状態では、第1シートアクチュエータ410、第2シートアクチュエータ420は、小抵抗状態となっているものとする。なお、実施の形態1と同様に、ドアロック解除の検出により小抵抗状態に制御するようにしてもよい。
ステップS202では、自車の目標走行経路の前方の道路情報を読み込み、次のステップS203では、自車の目標走行経路の前方に、自車が減速を行う可能性のある減速候補箇所の有無を判定する。この減速候補箇所としては、一時停止箇所及び交差点を含む。また、この減速候補箇所としては、停止以外にも、有料道路の料金所など、有る程度の減速加速度で減速を行う箇所を含むようにしてもよい。要は、乗員Paに減速加速度が作用する車両状態となる箇所の判定ができればよい。
そして、自車の前方に減速候補箇所が存在する場合は、次のステップS204に進み、減速候補箇所が存在しない場合は、ステップS202に戻る。この自車の前方とは、制動を開始する箇所の手前であって、制動を開始する箇所から時間的に近い位置とする。なお、ステップS202の道路情報としては、車載センサ1から得られるGPS情報、自車の周囲情報、さらに、地図データ記憶部2から得られる地図情報を用いる。
自車の前方に減速候補箇所が存在すると判定した場合に進むステップS204では、加速度センサ17、車速センサ18、あるいはブレーキスイッチ、ブレーキ油圧センサ等の信号を読み込んで制動状態を監視する。ここで、自車が回生制動を行う車両である場合は、目標回生指令も監視するのが好ましい。
続く、ステップS205では、減速開始、あるいは、減速開始直前か否か判定し、減速開始、あるいは、減速直前の場合は、ステップS206に進み、それ以外は、ステップS205を繰り返す。
そして、減速開始、あるいは、減速開始直前の場合に進むステップS206では、第1シートアクチュエータ410及び第2シートアクチュエータ420を大抵抗状態とする指令を出力する。
続く、ステップS207では、減速終了の判定を行い、減速終了と判定した場合は、ステップS208に進み、減速終了までは、ステップS206に戻って、大抵抗状態を維持する。
減速終了と判定した場合に進むステップS208では、第1シートアクチュエータ410及び第2シートアクチュエータ420を初期状態である、小抵抗状態に戻す。そして、ステップS208に続くステップS209では、イグニッションスイッチ21がオフとなったか判定し、オフであれば、制御を終了し、オンであればステップS202に戻って、上記の処理を繰り返す。
したがって、この実施の形態2では、シートコントローラ440は、乗員Paの乗降時を含み、自車の制動時以外では、第1シートアクチュエータ410及び第2シートアクチュエータ420に対して、小抵抗状態とする。
これにより、前部支持面462bは、凹凸の小さい平面形状となる。また、第2シートアクチュエータ420は、シートクッション462を図11Aに示すように前端部を下降させた相対的に水平に近い傾斜とする。
よって、通常は、シートクッション462は、車両前後方向の摩擦抵抗が相対的に小さく、乗降時など、乗員Paは、シートクッション462に対して円滑にスライド移動することができる。
一方、制動時等、自車に減速加速度が発生する車両状態では、シートコントローラ440は、第1シートアクチュエータ410及び第2シートアクチュエータ420を、大抵抗状態に制御する。
したがって、シートクッション462では、前部支持面462bが、相対的に凹凸が大きな形状となる。同時に、シートクッション462は、相対的に上向きに傾く。すなわち、図10Aに示すように、基準軸RAは、後方に傾き、その分、前部支持面462bも後方に上向きとなる。
このように、乗員Paに減速加速度が作用する時には、シートクッション462は、前部支持面462bの凹凸が大きくなり、大抵抗状態となり、しかも、前部支持面462bが上向きとなる。よって、車両が減速状態で車両前方への減速加速度が作用する乗員Paの下半身UDBの車両前方への移動が抑制される。
ここで、シートクッション462を上向きに傾斜させた場合の作用について説明を加える。図11Bは、シートクッション462の傾斜が相対的に小さな小抵抗状態で、乗員Paに減速加速度が作用した場合の説明図であり、この場合、乗員Paは、減速加速度を受けて、下半身UDBが、シートクッション462に対して車両前方にスライドする。さらに、このように下半身UDBが車両前方にスライドした位置で、上半身UB及び頭部Heが減速加速度により車両前方に移動するため、頭部Heは移動量Laだけヘッドレストに対して車両前方に移動する。
それに対し、図10Aに示すようにシートクッション462の後方への傾斜角度を大きくした大抵抗状態では、車両の減速の際の減速加速度による乗員Paの下半身UDBの車両前方へのスライド移動が抑制され、シートバック461の近くの位置に維持される。図10Bは、この下半身UDBの移動が抑制された状態で、上半身UB及び頭部Heが、減速加速度により車両前方に移動した状態を示す。この場合、頭部Heのヘッドレストに対する車両前方への移動量Lbは、図11Bに示す小抵抗状態の移動量Laと比較して少ない移動量となる。
したがって、乗員Paは、車両減速時の減速加速度による上半身UB及び頭部Heの移動量が抑えられ、この減速加速度による頭部Heの揺れ(振幅)を原因とする乗り物酔いの発生を抑えることができる。
以下に、実施の形態4の効果を列挙する。
(4−1)実施の形態4のシート制御方法は、第1シートアクチュエータ410が、シート460のシートクッション462に設けられ、かつ、乗車後の大抵抗状態では、少なくとも車両前後方向の摩擦抵抗を大きくする。
したがって、乗員Paの乗降時には、小抵抗状態のシートクッション462に沿って円滑に移動できる。一方、乗車後の大抵抗状態では、乗員Paが車両前方に移動するのを抑制し、乗員Paが車両前後方に移動することに起因する乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
(4−2)実施の形態4のシート制御方法は、シートコントローラ440は、乗車後に、車両が減速状態のときに、大抵抗状態とする。
したがって、乗員paに減速加速度が作用する時には、乗員Paが車両前方に移動するのを抑制して、乗員Paが減速加速度の作用方向である車両前方に移動することに起因する乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
(4−3)実施の形態4のシート制御方法は、第2シートアクチュエータ420は、大抵抗状態とする時には、小抵抗状態と比較して、シートクッション462の前部を高くする傾斜を付与する。
したがって、大抵抗状態では、乗員Paの下半身UDBがシートクッション462に対して移動しにくくなる。また、単に、シートクッション462の傾斜角度を変更するだけで、小抵抗状態と大抵抗状態とに切り替えることができるため、構造を単純化でき汎用性に優れる。
(4−4)実施の形態1の乗員姿勢制御装置は、車両情報入力部としての車載センサ1と、シート60、160の摩擦抵抗を大抵抗状態と小抵抗状態とに切替可能なシート摩擦抵抗切替部としてのシートバックアクチュエータ110とを備える。さらに、車両状態に基づいてシートバックアクチュエータ110を制御するシートコントローラ40を備える。そして、シートコントローラ40は、シートバックアクチュエータ110を、乗員Paの乗降時に小抵抗状態とし、乗車後に、車両が減速状態のときに大抵抗状態とする。
したがって、乗員Paの乗降時には、小抵抗状態のシートバック61、161に沿って円滑に移動できる。一方、乗員Paに減速加速度が作用する時には、減速加速度による乗員Paの上半身UB及び頭部Heの左右方向への移動を確実に抑制し、乗員Paが減速加速度の作用方向に移動することに起因する乗り物酔いが生じるのを抑制できる。
以上、本開示のシート制御方法及びシート制御装置を実施の形態に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られず、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
例えば、実施の形態1では、乗員Paの乗車後のシートベルトスイッチ20がオンとなった時点で、シートバックアクチュエータ110を小抵抗状態から大抵抗状態に切り替えるようにしたが、これに限定されない。乗車を検出するにあたっては、車内カメラの映像により乗車を検出したり、シートクッション62,162における荷重を検出して乗車を検出したり、イグニッションスイッチ21のオンで乗車を検出したりしてもよい。また、大抵抗状態に切り替えるタイミングも、このように乗車の検出時ではなく、旋回走行の検出時や予測時としてもよい。この場合、実施の形態1のように、シートベルト200の巻き取りは行わなくてもよい。あるいは、予測する旋回加速度に応じ、旋回加速度が閾値未満では、シートバックアクチュエータ110のみを大抵抗状態に制御し、旋回加速度が閾値以上で、シートベルト200の巻き取りを行うようにしてもよい。
また、実施の形態1では、シートコントローラ40の制御対象としてのシートバックアクチュエータ110とシートベルト巻き取りアクチュエータ120とを備える例を示したが、いずれか一方のみを設けてもよい。すなわち、シートベルト巻き取りアクチュエータ120をシート摩擦抵抗切替部とし、非巻き取り駆動時を小抵抗状態、巻き取り駆動時を大抵抗状態としてもよい。この場合、乗車後の旋回加速度の発生時や減速加速度の発生時に、巻き取り駆動による大抵抗状態として、乗員Paの姿勢変化を抑えることができる。
また、実施の形態4にあっては、乗車後の減速加速度の発生時に第1シートアクチュエータ410を大抵抗状態に切り替えるようにした例を示したが、これに限定されない。例えば、実施の形態1と同様に、シートベルトスイッチ20のオン等により乗員Paの乗車を検出した時点で、大抵抗状態に切り替えるようにしてもよい。この場合も、車両が減速状態で乗員Paに減速加速度が作用した場合の乗員Paの車両前方への移動を抑制して、乗り物酔いが生じるのを抑制できる。さらに、この場合に、減速加速度の発生を予測した場合に、第2シートアクチュエータ420によるシートクッション462の上昇を行うようにしてもよい。さらに、このとき、シートクッション462の上昇は、閾値を越える減速加速度の発生や予測時に行うようにしてもよい。
実施の形態では、シート摩擦抵抗切替部の接触面の形状を変化させる例として、固定部材111、211に対して可動部材112、212が移動するものを示したが、これに限定されない。例えば、静電気を発生させる装置をシート内に設け、シートバック61、161とシートクッション62、162との一方あるいは両方のシートトリムの毛羽立ちを立てるものを用いてもよい。この場合、シートトリムを毛羽立たせた場合は、毛羽立たせない場合と比較して、シートバック61、161及びシートクッション62、162の表面に沿う方向の摩擦抵抗が大きな大抵抗状態となる。また、固定部材111、211として示した、三角断面形状の頂点の向きを変えて、摩擦抵抗を変化させるようにしてもよい。具体的には、実施の形態4のように、乗員Paの下半身UDBの車両前方への移動を抑制したい大抵抗状態では、頂点を車両後方に向け、車両前方への移動を抑制しない小抵抗状態では、頂点が車両前方を向くようにする。
また、実施の形態1で示したシートバック61,161の摩擦抵抗を変化させる方法と、実施の形態4で示した、シートクッション462の摩擦抵抗を変化させる方法とを並列に実施してもよい。
また、実施の形態3は、シートバック361に適用した例を示したが、シートクッションに適用してもよい。
また、実施の形態4では、第1シートアクチュエータ410と第2シートアクチュエータ420とを並設した例を示したが、いずれか一方のみとしてもよい。さらに、実施の形態4にあっても、シートベルト200の巻き取りを行って、乗員Paのシートクッションへ462の接触圧を付加するようにしてもよい。