JP2020069473A - 分離膜エレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】分離膜エレメントにおける、原水流れの撹拌による十分な乱流生成が可能であり、さらに必要に応じて、乱流生成に加えて大幅な流動抵抗の低減が達成可能な、原水側流路材を備える分離膜エレメントを提供すること。【解決手段】本発明は、集水管と、分離膜と、原水側流路材と、透過側流路材と、を備え、上記集水管に、上記分離膜、上記原水側流路材及び上記透過側流路材が巻囲されており、上記原水側流路材は、交差した複数の繊維状物により区画された空間が網目状に連続しており、かつ、上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する上記空間が連続する、領域Aを有し、上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向と、上記集水管の長手方向に対し垂直な方向とが、略平行となるように、上記原水側流路材が配置されている、分離膜エレメントを提供する。【選択図】図2
Description
本発明は、分離膜エレメントに関する。
海水及びかん水等に含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギー及び省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントによる分離法に使用される分離膜は、その孔径や分離機能の点から、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜に分類される。これらの膜は、例えば海水、かん水及び有害物を含んだ水等からの飲料水の製造、工業用超純水の製造、並びに、排水処理及び有価物の回収等に用いられており、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントとしては様々な態様があるが、分離膜の一方の面に原水を供給し、他方の面から透過水を得る点では共通している。分離膜エレメントは、束ねられた多数の分離膜を備えることで、1個の分離膜エレメント当たりの膜面積が大きくなるように、つまり1個の分離膜エレメント当たりに得られる透過水の量が大きくなるように形成されている。分離膜エレメントとしては、用途や目的に合わせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型又は平膜集積型等の各種の形状が提案されている。
例えば、逆浸透ろ過には、スパイラル型分離膜エレメントが広く用いられる。スパイラル型分離膜エレメントは、集水管と、集水管の周囲に巻き付けられた分離膜ユニットとを備える。分離膜ユニットは、原水(つまり被処理水)を分離膜表面へ供給する原水側流路材、原水に含まれる成分を分離する分離膜及び分離膜を透過し分離された透過水を集水管へと導くための透過側流路材が積層されることで形成される。スパイラル型分離膜エレメントは、原水に高い圧力を付与することができるので、透過水を多く取り出すことができる点で好ましく用いられている。
濃度分極による分離膜エレメント性能低下を抑制するためには、例えば原水側流路材の厚みを薄くし、原水の膜面線速度を大きくして分離膜表面近くで乱流を生じさせ、濃度分極層を薄くすればよいが、原水側流路材の厚みを薄くすると原水中の不純物や微生物によるファウラントが原水側の流路を閉塞して分離膜エレメント性能が低下したり、分離膜エレメントの流動抵抗が大きくなり、原水を供給するポンプの必要動力が大きくなるため電力費が高くなったり、分離膜エレメントが破損するといった問題が生じるため、原水側流路材の厚み以外の要素を調整することによる、分離膜エレメント性能の向上が提案されている。
具体的には、特許文献1ではネットの網目の大きさが原水の流れ方向に向かって漸増する、原水側流路材が提案されている。また、特許文献2及び3では、原水側流路材中の繊維状物の配列を制御することで、流動抵抗を低減させたネットが提案されている。
しかしながら、従来の原水側流路材では、原水側流路材が形成する原水側流路における原水流れの撹拌が不十分であり、運転の継続とともに、分離膜エレメント性能が低下していくことが問題視されていた。そこで本発明は、分離膜エレメントにおける、原水流れの撹拌による十分な乱流生成が可能であり、さらに必要に応じて、乱流生成に加えて大幅な流動抵抗の低減が達成可能な、原水側流路材を備える分離膜エレメントを提供することを課題とする。
集水管と、分離膜と、原水側流路材と、透過側流路材と、を備え、上記集水管に、上記分離膜、上記原水側流路材及び上記透過側流路材が巻囲されており、上記原水側流路材は、交差した複数の繊維状物により区画された空間が網目状に連続しており、かつ、上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する上記空間が連続する、領域Aを有し、上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向と、上記集水管の長手方向に対し垂直な方向とが、略平行となるように、上記原水側流路材が配置されている、分離膜エレメントが提供される。
本発明によれば、原水流れの撹拌による十分な乱流発生を基本的な効果としつつ、さらには大幅な流動抵抗の低減をも達成し得ることで、分離膜エレメントの洗浄性や耐圧性といった各種性能を、それぞれ向上させることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<分離膜エレメント>
本発明の分離膜エレメントは、集水管と、分離膜と、原水側流路材と、透過側流路材と、を備え、上記集水管に、上記分離膜、上記原水側流路材及び上記透過側流路材が巻囲されている。図1に示すように、本発明の分離膜エレメントの一態様である分離膜エレメント(100)は、集水管(6)と、集水管(6)の周囲に巻囲された分離膜ユニット(1)を備える。図1に示すx軸の方向が、集水管の長手方向である。またy軸やz軸等の方向が、集水管の長手方向に対し垂直な方向である。ここで分離膜ユニット(1)は、分離膜、原水側流路材及び透過側流路材が積層されて形成されている。
本発明の分離膜エレメントは、集水管と、分離膜と、原水側流路材と、透過側流路材と、を備え、上記集水管に、上記分離膜、上記原水側流路材及び上記透過側流路材が巻囲されている。図1に示すように、本発明の分離膜エレメントの一態様である分離膜エレメント(100)は、集水管(6)と、集水管(6)の周囲に巻囲された分離膜ユニット(1)を備える。図1に示すx軸の方向が、集水管の長手方向である。またy軸やz軸等の方向が、集水管の長手方向に対し垂直な方向である。ここで分離膜ユニット(1)は、分離膜、原水側流路材及び透過側流路材が積層されて形成されている。
<原水側流路材>
原水側流路材は、例えば分離膜の二つの面の間に配置され、原水側流路材と分離膜とにより原水側流路が形成される。原水側流路には原水が供給されるが、原水が含有するファウラントの蓄積を抑制するためには、原水側流路の流動抵抗を低減し、排濁性を高めることが重要である。
原水側流路材は、例えば分離膜の二つの面の間に配置され、原水側流路材と分離膜とにより原水側流路が形成される。原水側流路には原水が供給されるが、原水が含有するファウラントの蓄積を抑制するためには、原水側流路の流動抵抗を低減し、排濁性を高めることが重要である。
本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材は、図2及び図3に示すように、交差した複数の繊維状物Oにより区画された空間が網目状に連続しており、かつ、上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する上記空間が連続する、領域Aを有する。そして本発明の分離膜エレメントにおいては、上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向と、上記集水管の長手方向に対し垂直な方向とが、略平行となるように、上記原水側流路材が配置されることが必要である。
ここで「略平行」とは、厳密な意味での平行の関係である必要は無く、本発明の効果を奏し得る範囲内であれば、数度(°)のずれがあっても構わない。
原水側流路材の領域Aにおいて繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向と、集水管の長手方向に対し垂直な方向とが、略平行となるように、原水側流路材が配置されることで、原水が原水側流路材を構成する各々の繊維状物と衝突しやすくなり、原水流れが効果的に撹拌され、原水側流路材の繊維状物近傍での原水の滞留が低減し、分離膜表面のイオン濃度低減によるろ過効率の低下や、ファウラントの蓄積を抑制することができる。
また本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材はさらに、図4に示すように、上記領域Aとは異なる方向で、上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する上記空間が連続する、領域Bを有することが好ましい。なお本発明の分離膜エレメントにおいては、この領域Bにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向が、上記集水管の長手方向に対し垂直な方向に対して、一定の角度を有することとなる。そのため、原水が原水側流路材を構成する各々の繊維状物に沿って流れやすくなり、流動抵抗が低減され、良好なろ過効率を維持することができる。その結果、領域Aの存在による原水側流路における原水流れの撹拌による十分な乱流生成に加えて、領域Bの組み合わせによる、大幅な流動抵抗の低減を達成することができる。
さらに原水側流路材が有する領域Aに関しては、本発明の分離膜エレメントにおいて、上記集水管の長手方向における少なくとも一端に、上記領域Aが位置するように上記原水側流路材が配置されていることが好ましい。領域Aが位置する側の分離膜エレメントの一端を、原水側流路の入口とすることで、原水側流路に流入した原水が領域Aにより直ちに効果的に撹拌されるため、繊維状物が形成した流路に、原水流れが十分に乱された状態で流入する。そうすると、流動抵抗が低い流路でも流れの撹拌が強くなるため、上述したようなろ過効率の低下やファウラントの蓄積を、さらに顕著に抑制することができる。
上記領域Aにおける上記空間の平均最大幅WA1と、上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における上記繊維状物間の平均距離WA2と、の比であるWA2/WA1の値は、0.20〜0.45であることが好ましい。WA2/WA1の値が上記範囲にあることで、領域Aが位置する分離膜エレメントの端部の強度を高めることができる。WA2/WA1の値は、0.30〜0.40であることがより好ましい。また、WA1は2.0〜8.0mmであることが好ましく、3.0〜6.0mmであることがより好ましい。
同様の理由から、上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対抗し、略平行に存在する部位の長さWA3は、上記WA1に対して0.70〜0.95倍であることが好ましく、0.85〜0.95倍であることがより好ましい。
上記WA1、上記WA2及び上記WA3は、マイクロスコープを用いて原水側流路材をその厚み方向から観察し、測定モードを用いて無作為に選択した30の網目状の空間についてそれぞれを測定し、それぞれの平均値として算出することができる。
上記領域Aにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における上記繊維状物間の平均距離WA2と、上記領域Bにおいて上記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における繊維状物間の平均距離WB2と、の比であるWB2/WA2の値は、上記と同様の理由から、1.5〜5.5であることが好ましい。WB2/WA2の値が上記範囲にあることで、領域Aが位置する分離膜エレメントの端部の強度を高めることができる。WB2/WA2の値は、2.3〜3.8であることがより好ましい。
上記WB2は、領域Bの繊維状物P及びQの距離pとqの平均値で表すことができ、具体的にはマイクロスコープを用いて原水側流路材をその厚み方向から観察し、測定モードを用いて無作為に選択した30の網目状の空間について、図4に示すpとqとをそれぞれ測定し、それらの平均値として算出することができる。
本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材は、原水側流路材を構成する繊維状物の部位が、R1>R2の関係を満たす、径R1からなる太径部、及び、径R2からなる細径部を有することが好ましい。ここで太径部とは、原水側流路材の厚みの50%以上の厚みを有する繊維状物の部位をいい、また細径部とは、太径部の径(厚み)R1に対して80%以下の径(厚み)R2を有する部位をいう。
原水側流路材を構成する繊維状物が太径部及び細径部を有することにより、原水側流路材と分離膜とが接触した際の接圧がより効果的に分散される。また原水側流路材を構成する繊維状物がこのような構造を有することで、原水側流路材が分離膜エレメントに組み込まれ、分離膜と接触した際に、細径部の領域において分離膜との間に空間が生じ、より広い原水流路が確保されるため、微生物等のファウラントの蓄積や、原水の偏流を抑制することができる。なお細径部が、原水側流路材の厚み方向において太径部の中間に配置されることで、原水側流路材を構成する繊維状物と、分離膜との間に生じる空間が大きくなるのでより好ましい。
また原水側流路における原水の流れをよりスムーズにするため、径R1に対する径R2の比率は、0.17〜0.78が好ましく、0.30〜0.50がより好ましい。
さらに、繊維状物同士が交差した部位の付近に滞留する原水を、下流側(分離膜エレメントの濃縮水排出側)に移動しやすくするためには、上記WA3に対する細径部の長さの比率は、0.25〜0.80が好ましく、0.35〜0.50がより好ましい。
特に本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材が有する領域Aにおいては、図3に示すように、本発明の分離膜エレメントが備える集水管の長手方向に対し垂直な方向と、略平行になる繊維物の部位が細径部であり、物の他の部位が太径部であるような構造が、流動抵抗の低減に資するため好ましい。
太径部の径R1及び細径部の径R2を含む繊維状物の厚みは、マイクロスコープで原水側流路材の厚み方向における繊維状物の切断面を観察し、測定モードを用いて無作為に選択した30箇所の細径部又は太径部の径を測定し、その平均値としてそれぞれ算出することができる。
また「原水側流路材の厚み」は、繊維状物同士が交差した部位の厚みに相当する。原水側流路材の厚みは、無作為に選択した10箇所の部位の厚みを精密厚みゲージで測定し、その平均値として算出することができる。
原水側流路材の厚みを薄くすれば、原水の膜面線速度が大きくなり分離膜表面の流れが乱れるので、濃度分極層が薄くなり、分離膜エレメントの分離性能が向上し好ましい。しかし過度に原水側流路材の厚みを薄くすると、原水中の不純物や、微生物等のファウラントが原水側流路を閉塞する傾向が高まりかねない。そこで原水側流路材の厚みは、0.20〜1.50mmが好ましく、0.32〜0.90mmがより好ましく、0.50〜0.80mmがさらに好ましい。ただし、本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材を用いる場合は後述するように原水側流路材を薄くすることによって分離膜の膜面積を増大させる構成をとることができるが、その場合は供給水の水質に応じて膜面間隔を0.20mm〜0.50mmの範囲で適宜変更することが好ましい。
<高膜面積化>
上述したように、原水側流路材を薄くすると流路が狭小化するため流動抵抗が高く、供給水中の不純物や、微生物等のファウラントが原水側流路を閉塞する傾向が高まりかねない。本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材は、従来品に比べて空隙が大きい構造であり、原水側流路材を薄くしても流動抵抗と排濁性が優れている。
上述したように、原水側流路材を薄くすると流路が狭小化するため流動抵抗が高く、供給水中の不純物や、微生物等のファウラントが原水側流路を閉塞する傾向が高まりかねない。本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材は、従来品に比べて空隙が大きい構造であり、原水側流路材を薄くしても流動抵抗と排濁性が優れている。
そのため原水側流路材を薄くして空間を創出し、その空間に分離膜を充填して分離膜エレメントの膜面積を増大させた構成においても、流動抵抗増加や排濁性悪化の影響が軽微であり、膜面積増大による造水量向上が可能となる。
原水側流路材を構成する繊維状物の材料としては、成形性の観点から熱可塑性樹脂が好ましく、分離膜の損傷をより抑制する観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸又はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂がより好ましい。
<透過側流路材>
本発明の分離膜エレメントが備える透過側流路材としては、例えば、トリコット、不織布、突起物を固着させた多孔性シート、又は、凹凸成形し穿孔加工を施したフィルムが挙げられる。また、透過側流路材として機能する突起物を、分離膜の表面に固着させても構わない。
本発明の分離膜エレメントが備える透過側流路材としては、例えば、トリコット、不織布、突起物を固着させた多孔性シート、又は、凹凸成形し穿孔加工を施したフィルムが挙げられる。また、透過側流路材として機能する突起物を、分離膜の表面に固着させても構わない。
<分離膜>
本発明の分離膜エレメントが備える分離膜としては、例えば、基材と、多孔性支持体と、分離機能層とを備える、複合半透膜が挙げられる。
本発明の分離膜エレメントが備える分離膜としては、例えば、基材と、多孔性支持体と、分離機能層とを備える、複合半透膜が挙げられる。
上記の基材としては、例えば、ポリエステル又は芳香族ポリアミドを主成分とする布帛が挙げられる。
上記の多孔性支持体としては、例えば、基材上に形成された、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン又はポリフェニレンオキシド等の高分子層が挙げられる。
分離機能層としては、例えば、イオン等の分離が十分行なえるほど緻密であり、かつ、水との親和性が高い、ポリアミドを主成分とする分離機能層が挙げられる。ポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。
本発明の分離膜エレメントが備える原水側流路材は、分離膜、原水側流路材及び透過側流路材が積層されて形成される分離膜ユニットにおいて、原水側の面が内側を向くように折り畳まれた分離膜に挟まれるように、分離膜の二つの面の間に配置されても構わないし、原水側の面が向かい合った二枚の分離膜で挟まれるように、分離膜の二つの面の間に配置されても構わない。
原水側流路材を挟んだ分離膜の端部同士は、適宜封止される。その「封止」の方法としては、例えば、接着剤若しくはホットメルト等による接着、加熱若しくはレーザ等による融着、又は、ゴム製シートを挟みこむ方法が挙げられるが、簡便な接着による封止が好ましい。
<分離膜モジュール及び水処理装置>
本発明の分離膜エレメントを含む、複数の分離膜エレメントを、直列又は並列に接続して圧力容器に収納することで、分離膜モジュールを構成することができる。
本発明の分離膜エレメントを含む、複数の分離膜エレメントを、直列又は並列に接続して圧力容器に収納することで、分離膜モジュールを構成することができる。
また、本発明の分離膜エレメント、又は、上記の分離膜モジュールに、原水を供給するポンプや原水の前処理装置等を組み合わせて、水処理装置を構成することができる。
水処理装置の操作圧力は、運転エネルギーの節約、及び、原水側流路材や透過側流路材の早期劣化防止の観点から、0.2〜10MPaが好ましい。水処理装置に供される原水の温度は、塩除去率と膜透過流束とのバランスの好適なものとする観点から、5〜45℃が好ましい。水処理装置に供される原水のpHは、マグネシウム等のスケール発生や分離膜劣化の抑制の観点から、中性領域であることが好ましい。
水処理装置に供される原水としては、例えば、500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する海水、かん水又は排水等が挙げられる。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(原水側流路材の作製)
ポリエチレンを材料とした溶融成形により、図2又は図3に示されるような態様のネット状物を作製し、80℃の環境下にてテンターによる横延伸を施して、原水側流路材を作製した。ネット状物は、編目状の空間の形状が異なるものを複数用意しておき、得られる原水側流路材の構造制御を行った。各原水側流路材構造、及び、分離膜エレメントを製造した際の配置の態様を、表1および2にまとめた。なお表中でいう「両端部」とは、集水管の長手方向における、原水側流路材の両端から中央に向かってそれぞれ50mmの領域をいい、「中央部」とは、上記両端部に挟まれた、両端部以外の領域をいう。
ポリエチレンを材料とした溶融成形により、図2又は図3に示されるような態様のネット状物を作製し、80℃の環境下にてテンターによる横延伸を施して、原水側流路材を作製した。ネット状物は、編目状の空間の形状が異なるものを複数用意しておき、得られる原水側流路材の構造制御を行った。各原水側流路材構造、及び、分離膜エレメントを製造した際の配置の態様を、表1および2にまとめた。なお表中でいう「両端部」とは、集水管の長手方向における、原水側流路材の両端から中央に向かってそれぞれ50mmの領域をいい、「中央部」とは、上記両端部に挟まれた、両端部以外の領域をいう。
(分離膜エレメントの作製)
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm2/秒)上に、ポリスルホンの15質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)、塗布厚み180μmでキャストした後、直ちに純水中に5分間浸漬することによって、基材である不織布上に多孔性支持体を形成した。
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm2/秒)上に、ポリスルホンの15質量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)、塗布厚み180μmでキャストした後、直ちに純水中に5分間浸漬することによって、基材である不織布上に多孔性支持体を形成した。
次に、2−エチルピペラジンが2.0質量%、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが100ppm、リン酸3ナトリウムが1.0質量%になるように溶解した水溶液に、多孔性支持体を形成した基材を10秒間浸漬した後、エアーノズルから窒素を吹き付けて、余分な水溶液を除去した。続いて70℃に加温した0.2質量%のトリメシン酸クロリドを含むn−デカン溶液を、多孔性支持体の表面に均一塗布し、60℃の膜面温度で3秒間保持した後に、膜面温度を10℃まで冷却し、この温度を維持したまま空気雰囲気下で1分間放置し、分離機能層を形成した。得られた複合半透膜を垂直に保持して液切りし、60℃の純水で2分間洗浄して、分離膜を得た。
得られた分離膜を幅920mmに裁断し、分離膜エレメントにおける有効面積が1.8m2となるように折り畳み、折り畳まれた分離膜に挟まれるように、表1に示す原水側流路材を配置する構成とした。さらに、原水側流路材が配置されたのとは逆側の分離膜の面に、透過側流路材としてトリコットのシートを配置し、これらの積層物である分離膜ユニットを、ABS樹脂製集水管(幅:1000mm、径:18mm、孔数40個×直線2列)にスパイラル状に巻囲した。最後に、両端のエッジカットを行い、直径が2インチの分離膜エレメントを作製した。
(洗浄性の評価)
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、1300ppm食塩水を原水として、運転圧力0.41MPa、温度25℃、回収率10%の条件下で、原水を循環しながら30分間運転した後に、1分間透過水を採取し、造水量Aを測定した。
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、1300ppm食塩水を原水として、運転圧力0.41MPa、温度25℃、回収率10%の条件下で、原水を循環しながら30分間運転した後に、1分間透過水を採取し、造水量Aを測定した。
造水量Aの測定に引き続いて、スキムミルク(森永乳業社製;森永スキムミルク)が10質量%の濃度になるように調製したRO水溶液を原水として、運転圧力0.41MPa、温度25℃、原水流量2.5L/分の条件下で、原水を循環しながら24時間運転した。
次に原水をRO水に変更し、運転圧力0.41MPa、温度25℃、原水流量2.5L/分の条件下で、濃縮水を排出しながら1時間運転した。
その後、運転圧力0.41MPa、温度25℃、回収率10%の条件下で、原水を循環しながら30分間運転した後に、1分間透過水を採取し、造水量Bを測定した。
測定された造水量Aに対する造水量Bの百分率の値(造水量B/造水量A×100)を算出し、洗浄性の評価指標とした。
(耐圧性の評価)
洗浄性の評価に用いた分離膜エレメントとは異なる分離膜エレメントを圧力容器に収納して、上記と同様に造水量Aを測定した。
洗浄性の評価に用いた分離膜エレメントとは異なる分離膜エレメントを圧力容器に収納して、上記と同様に造水量Aを測定した。
次に、運転圧力0.41MPa、温度25℃、原水流量25L/分の条件下で、原水を循環しながら15分間運転した後、1分間で徐々に降圧させ、運転を中止した。その後、1分間で徐々に昇圧させ、再び運転圧力0.41MPa、温度25℃、原水流量25L/分の条件下で、原水を循環しながら15分間運転した後、それぞれ1分間ずつの降圧/昇圧という手順を繰り返し、これを合計100回実施した。
その後、運転圧力0.41MPa、温度25℃、回収率10%の条件下で、原水を循環しながら30分間運転した後に、1分間透過水を採取し、造水量Cを測定した。
測定された造水量Aに対する造水量Cの百分率の値(造水量C/造水量A×100)を算出し、耐圧性の評価指標とした。
(実施例1)
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、上記の条件で洗浄性及び耐圧性を評価したところ、結果は表1のとおりであった。
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、上記の条件で洗浄性及び耐圧性を評価したところ、結果は表1のとおりであった。
(実施例2〜8)
原水側流路材を表1および2のとおりに変更した以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
原水側流路材を表1および2のとおりに変更した以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、実施例1と同条件で洗浄性及び耐圧性を評価したところ、結果は表1および2のとおりであった。
(実施例9および10)
原水側流路材を表2のとおり薄くし、有効膜面積を増大させた以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
原水側流路材を表2のとおり薄くし、有効膜面積を増大させた以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に入れて、実施例9と同条件で各性能を評価したところ、結果は表2のとおりであった。
(比較例1〜3)
原水側流路材を表2のとおりに変更した以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
原水側流路材を表2のとおりに変更した以外は全て実施例1と同様にして、分離膜エレメントを作製した。
分離膜エレメントを圧力容器に収納して、実施例1と同条件で洗浄性及び耐圧性を評価したところ、結果は表2のとおりであった。
比較例1では原水側流路材が領域Aを有さないため、原水流れの撹拌による十分な乱流生成ができず、さらには分離膜エレメント端部の強度が担保されないことから、分離膜エレメントの洗浄性及び耐圧性が低下した。
比較例2〜3では、原水側流路材が領域Aを有さず、また繊維が細いため原水流れの撹拌による十分な乱流生成ができず、さらには分離膜エレメント端部の強度が担保されないことから、分離膜エレメントの洗浄性及び耐圧性が低下した。
表1および2に示す結果から明らかなように、実施例1〜10における分離膜エレメントは、流動抵抗の低減を達成しつつ、原水流れの撹拌による十分な乱流生成により良好な洗浄性を示しており、さらには、分離膜エレメント端部の強度が向上したことにより、顕著な耐圧性を示しているといえる。
本発明の分離膜エレメントは、かん水や海水の脱塩用途に好適に用いることができる。
1 分離膜ユニット
2 原水側流路材
6 集水管
100 分離膜エレメント
101 原水流れ
O、P、Q 繊維状物
p、q 繊維状物間の距離
WA1 領域Aにおける空間の平均最大幅
WA2、WB2 領域A及び領域Bにおける繊維状物間の平均距離
2 原水側流路材
6 集水管
100 分離膜エレメント
101 原水流れ
O、P、Q 繊維状物
p、q 繊維状物間の距離
WA1 領域Aにおける空間の平均最大幅
WA2、WB2 領域A及び領域Bにおける繊維状物間の平均距離
Claims (6)
- 集水管と、分離膜と、原水側流路材と、透過側流路材と、を備え、
前記集水管に、前記分離膜、前記原水側流路材及び前記透過側流路材が巻囲されており、
前記原水側流路材は、交差した複数の繊維状物により区画された空間が網目状に連続しており、かつ、前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する前記空間が連続する、領域Aを有し、
前記領域Aにおいて前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する方向と、前記集水管の長手方向に対し垂直な方向とが、略平行となるように、前記原水側流路材が配置されている、分離膜エレメント。 - 前記原水側流路材がさらに、前記領域Aとは異なる方向で、前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位を有する前記空間が連続する、領域Bを有する、請求項1記載の分離膜エレメント。
- 前記集水管の長手方向における一端に、前記領域Aが位置するように前記原水側流路材が配置されている、請求項1又は2記載の分離膜エレメント。
- 前記領域Aにおける前記空間の平均最大幅WA1と、前記領域Aにおいて前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における前記繊維状物間の平均距離WA2と、の比であるWA2/WA1の値が、0.20〜0.45である、請求項1〜3のいずれか一項記載の分離膜エレメント。
- 前記領域Aにおいて前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における前記繊維状物間の平均距離WA2と、前記領域Bにおいて前記繊維状物の一部が互いに対向し、略平行に存在する部位における前記繊維状物間の平均距離WB2と、の比であるWB2/WA2の値が、1.5〜5.5である、請求項2〜4のいずれか一項記載の分離膜エレメント。
- 前記原水側流路材の厚みが0.20〜0.50mmである請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜エレメント。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018202503 | 2018-10-29 | ||
JP2018202503 | 2018-10-29 |
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JP2019139737A Pending JP2020069473A (ja) | 2018-10-29 | 2019-07-30 | 分離膜エレメント |
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2019
- 2019-07-30 JP JP2019139737A patent/JP2020069473A/ja active Pending
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