JP2020057849A - 表面弾性波素子用複合基板とその製造方法 - Google Patents

表面弾性波素子用複合基板とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面弾性波素子の高周波数化が図れ、周波数特性が温度変化により変動する課題も改善でき、更に、製造コストの削減も図れる表面弾性波素子用複合基板とその製造方法を提供する。【解決手段】圧電基板1と、該圧電基板よりも小さい熱膨張係数を持つ支持基板2を具備する表面弾性波素子用複合基板において、上記支持基板が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウムおよび炭化バナジウムから選択された高音速多結晶基板で構成され、かつ、上記高音速多結晶基板と圧電基板が金属薄膜4を介し直接接合されていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、表面弾性波素子用複合基板とその製造方法に係り、特に、表面弾性波素子の高周波数化が図れ、かつ、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題も改善されると共に、製造コスト削減のため多結晶材料で構成された支持基板が適用されても圧電基板と支持基板との直接接合を可能とする表面弾性波素子用複合基板とその製造方法に関する。
通信分野におけるキーデバイスの一つとして、表面弾性波素子[Surface Acoustic Wave Device](以下、SAWデバイスと略記する場合がある)がある。SAWデバイスとは、圧電材料を利用し、高周波信号を表面弾性波に変換し、再度高周波信号に変換する過程で特定の周波数が選び出される現象を利用した素子である。そして、従来、高周波帯域で使用されてきた誘電体フィルタやセラミックフィルタ等に較べて周波数特性の急峻さや波形設計が可能なこと、表面実装が容易なこと、小型・軽量という特性を活かし、携帯電話、スマートフォンに代表される移動体通信機器や、その他、各種センサ、タッチパネル等の通信機器に急速に採用されてきている。特に、近年携帯電話等の小型・高周波機器の爆発的進展に伴って、その需要が大幅に拡大しつつある。
このSAWデバイスとしては、支持基板上に、表面弾性波の伝搬媒体としての圧電体層と、一対の櫛歯状電極[IDT:Interdigital Transducer](以下、IDT、IDT電極、若しくは電極と呼ぶ場合がある)を順次積層して構成されたものが知られている。通常、上記IDT電極は、圧電体層上に金属材料層を形成した後、該金属材料層に対しエッチングを施すことにより形成される。
この表面弾性波素子においては、入力用のIDTに電気信号(交流電力)が供給されると、これによる電場により圧電体層に歪が生じる。そして、上記電極が櫛歯型形状であるため、圧電体層に密度の差が生じて表面弾性波が発生する。この表面弾性波は出力用IDTに伝搬され、この表面弾性波のエネルギーは出力用IDTによって電気的エネルギーに変換されて出力される。
上記表面弾性波素子が有する透過帯域の中心周波数fは、櫛歯状電極の間隔λと圧電体層表面上の弾性波の伝搬速度Vとから、
=V/λ
で与えられる。
しかし、2.5GHz以上で良好に動作する表面弾性波素子を作製することは困難である。透過帯域の中心周波数fを上昇させるためには、上記関係式から明らかなように櫛歯状電極の間隔λを小さくするか、表面弾性波の伝搬速度Vを増加させるかのいずれかを行えばよいが、λはフォトリソグラフィ等の加工技術により著しく制限を受ける。現在の量産レベルでは櫛歯状電極の幅は0.4μm程度で、櫛歯状電極の間隔λは1.6μm程度となり、最近SAWデバイスによく使用されるタンタル酸リチウム基板(LTと略記する場合がある)の伝搬速度3800m/sでは2400MHzが限度である。従って、高周波数帯域で動作する表面弾性波素子を得るには、伝搬速度Vを大きくすることが必要となる。尚、高周波用のデバイスとして、圧電材料に例えばAlNを用いた圧電薄膜共振子FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)が検討されている。しかし、圧電薄膜共振子FBARは製造工程が複雑で高価なため、一部の機器にしか利用されていない。
そこで、高周波数帯域で動作する表面弾性波素子の検討が重ねられている。例えば、高硬度材料であるSiC、アルミナ、AlN、サファイア等の高音速基板により上記支持基板を構成し、該高音速基板に圧電基板が直接接合された表面弾性波素子用複合基板とすることで、高音速基板の高音速特性を利用した表面弾性波素子が開発されている(特許文献1参照)。
特許第5354020号公報
通信機器の分野では、利用周波数帯資源の枯渇により、より一層の高周波数化が指向されてきており、表面弾性波素子においても更なる高周波数化の技術が求められている。表面弾性波素子を高周波数化するため、これまでは主に電極寸法を微小化する方法が行われてきたが、周波数を決定する電極間隔の微小化は、現在のリソグラフィ技術では上述したように限界に近づきつつある。また、電極寸法の微小化によって周波数を上昇できても、電極の細線化や電極間隔の微細化は素子構造自体を壊れ易くしパワー特性を得ることができないという問題を生じさせている。
そこで、表面弾性波を高速に伝達する素子として、上述したように、SiC、アルミナ、AlN、サファイア等の高音速基板により支持基板を構成し、高音速基板に圧電基板が直接接合されて表面弾性波素子用複合基板とすることで、高音速基板の高音速特性を利用した表面弾性波素子が開発されている。
しかし、表面弾性波素子用複合基板のコスト削減を図るため、上記高音速基板を安価な多結晶材料で構成した場合、圧電基板と高音速多結晶基板との良好な直接接合が困難となり、所望とする表面弾性波素子用複合基板を製造できなくなる問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、表面弾性波素子の高周波数化が図れ、かつ、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題も改善されると共に、製造コスト削減のため多結晶材料で構成された支持基板が適用されても圧電基板と支持基板との直接接合を可能とする表面弾性波素子用複合基板とその製造方法を提供することにある。
本発明者は、表面弾性波素子の高周波数化が図れ、かつ、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題も改善されると共に、製造コスト削減のため多結晶材料で構成された支持基板が適用されても圧電基板と支持基板との直接接合を可能とする表面弾性波素子用複合基板とその製造方法について鋭意検討した。その結果、上記支持基板として、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウムおよび炭化バナジウムから選択された高音速多結晶基板を適用し、かつ、金属薄膜を介して上記高音速多結晶基板と圧電基板を直接接合させると共に、接合された圧電基板を研磨して薄膜化することにより達成できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
圧電基板と、
該圧電基板よりも小さい熱膨張係数を持つ支持基板を具備する表面弾性波素子用複合基板において、
上記支持基板が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウムおよび炭化バナジウムから選択された高音速多結晶基板で構成され、かつ、上記高音速多結晶基板と圧電基板が金属薄膜を介し直接接合されていることを特徴とし、
第2の発明は、
第1の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板において、
上記金属薄膜がチタン膜またはクロム膜であることを特徴とし、
また、第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板において、
圧電基板が、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ランガサイト、ランガテイトから選択される1種以上のバルク結晶で構成されることを特徴とするものである。
次に、第4の発明は、
第1の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板を製造する方法において、
金属薄膜を介し、支持基板を構成する高音速多結晶基板と圧電基板を表面活性化常温接合法により直接接合する工程と、
高音速多結晶基板に接合された圧電基板の非接合面を研磨する工程、
を具備することを特徴とし、
第5の発明は、
第4の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法であって、
金属薄膜を介し、上記高音速多結晶基板と圧電基板を直接接合する工程において、
接合前の上記高音速多結晶基板と圧電基板の各接合面を洗浄し、各接合面へイオンビームを照射して残留不純物を除去し、かつ、高音速多結晶基板と圧電基板の少なくとも一方の接合面上に金属薄膜を成膜した後、真空中、常温で直接接合することを特徴とし、
第6の発明は、
第4の発明または第5の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法において、
上記金属薄膜が、膜厚5〜10nmのチタン膜またはクロム膜であることを特徴とし、
第7の発明は、
第4の発明に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法であって、
高音速多結晶基板に接合された圧電基板の非接合面を研磨する工程において、
上記圧電基板の厚さが0.3μm〜25μmになるまで研磨することを特徴とし、
また、第8の発明は、
第4の発明〜第7の発明のいずれかに記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法において、
支持基板を構成する上記高音速多結晶基板が放電プラズマ焼結法で製造されていることを特徴とするものである。
本発明に係る表面弾性波素子用複合基板によれば、
多結晶材料で構成された高音速多結晶基板と圧電基板との接合が金属薄膜を介してなされているため、圧電基板と高音速多結晶基板との良好な直接接合が可能となる。
そして、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウムおよび炭化バナジウムから選択された高音速多結晶基板で支持基板が構成されているため、表面弾性波素子の高周波数化が図れ、かつ、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題も改善されると共に、複合基板のコスト削減を図ることが可能となる。
本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板を用いた表面弾性波素子の構成説明図。
以下、本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板とその製造方法について詳細に説明する。
1.表面弾性波素子用複合基板
本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板は、図1に示すように、圧電基板1と、該圧電基板1よりも小さい熱膨張係数を持ち高硬度の多結晶材料で構成された高音速多結晶基板2を具備し、上記高音速多結晶基板2と圧電基板1が金属薄膜4を介し直接接合されていることを特徴とし、また、本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板を用いて構成される表面弾性波素子は、上記圧電基板1の非接合面に櫛歯状電極3が形成されて成るものである。
以下、(1)圧電基板、(2)高音速多結晶基板、(3)金属薄膜、(4)表面弾性波素子用複合基板、および、(5)表面弾性波素子の順に説明する。
(1)圧電基板
圧電基板は弾性波が伝搬可能な基板で、本発明に係る表面弾性波素子用複合基板に用いられる圧電基板として、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ランガサイト、ランガテイトから選択される1種以上のバルク結晶であることが好ましく、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムがより好ましい。タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムは表面弾性波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため高周波数かつ広帯域周波数の表面弾性波デバイス用として適しているからである。
上記圧電基板1は、金属薄膜4を介し高音速多結晶基板2と直接接合されて本発明に係る表面弾性波素子用複合基板を構成する。尚、圧電基板1表面に凹凸が存在していると、金属薄膜4を介し高音速多結晶基板2と原子レベルで完全に接合させることができず浮きを生ずる可能性があるため、圧電基板1の接合面は表面粗さRa0.2〜0.5nm程度に平滑にしておくことが好ましい。また、圧電基板1の大きさは特に限定されるものではないが、例えば、直径が50〜200mm、厚さが50〜1200μmのものが好適に用いられる。
(2)高音速多結晶基板
本発明に係る表面弾性波素子用複合基板に用いられる支持基板は、圧電基板1よりも熱膨張係数が小さくかつ硬度が高い多結晶材料で構成された高音速多結晶基板であることが必要である。圧電基板1よりも熱膨張係数が小さくかつ硬度が高い多結晶材料で構成された高音速多結晶基板2と上記圧電基板1が金属薄膜4を介し直接接合された表面弾性波素子用複合基板とすることで、温度変化したときの圧電基板1の伸縮が抑制されるため、複合基板をSAWデバイスとして用いた場合、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題を解消することが可能となる。
高音速多結晶基板の材質としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化バナジウムから選択される1種であることを要する。硬度で見ると、安価で汎用的なソーダガラス基板は、ビッカース硬度が500〜600、シリコン基板は1040程度、サファイア基板は2300であり、炭化ケイ素(SiC)は2400とサファイア基板より硬い。そこで、支持基板として、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル等から成る安価でかつ硬度の高い高音速多結晶基板を用い、金属薄膜を介し、該高音速多結晶基板と圧電基板を直接接合させると共に、接合された圧電基板を薄膜化して硬度を高めることにより、得られる表面弾性波素子用複合基板は圧電基板単独よりも速い伝搬速度が得られる。例えば、炭化ケイ素(SiC)は、物質中最高の音の伝搬速度を有するダイヤモンドに近い硬度を持つ材料であり、高い伝搬速度を実現させることができる。更に、多結晶炭化ケイ素(SiC)基板(高音速多結晶基板)は、熱膨張係数が4.1×10-6/Kとタンタル酸リチウム等の圧電基板に較べて大変小さく、上述したようにSAWデバイスにおける周波数特性の温度変化を抑制することが可能となる。
高音速多結晶基板2の大きさは、例えば、直径が50〜200mm、厚さが50〜1200μmのものが好適に用いられる。接合面に凹凸が存在していると、原子レベルで完全に接合されずに浮きを生ずる可能性があるため、高音速多結晶基板2の接合面は、圧電基板1の接合面と同様、表面粗さRa0.2〜0.5nm程度にすることが好ましい。
ところで、多結晶炭化ケイ素(SiC)等の高音速多結晶基板はCVD等の気相法で製造することも可能であるが、製造に時間がかかり制御も難しいため、安価に高密度の高音速多結晶基板が得られる放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering、以下、SPS法と略称する)で製造することが好ましい。
上記SPS法は、以下に示す特徴がある。
・迅速な焼結が可能(従来法に較べて焼結時間が1/20〜1/100)。
・微細組織構造を制御焼結できる。
・粒成長の抑制が容易でナノ粉末をナノ構造で固化できる。
・温度傾斜焼結が可能、固相焼結が可能である。
・焼結助剤なしでSiC、WC等の高温セラミックスの高密度焼結、低温焼結が可能である。
・アモルファス材やキュリー点以下での焼結が可能である。
・ガス、電磁場での反応焼結が可能である。
SPS法は、ON−OFF大電流パルス通電を用いた固体圧縮焼結技術であり、既存の直流式通電ホットプレス(HP)、HIP(Hot Isostatic Pressing)は、高温・高圧(ガス圧)にて処理材料を加圧加工する方法である。これ等既存の焼結法と較べると、SPS法の電力消費量は1/3〜1/5という省エネ・環境低負荷型の焼結法である。
円筒状のグラファイト型に原料粉末を充填し、一方向に20〜100MPa程度加圧し、その粉末に4〜20V程度の低い直流電圧、ON−OFFのパルス状電流を500〜40000A印加する。熱的、機械的、電磁的エネルギーを焼結駆動力とし焼結加工を行う自己発熱方式である。焼結型の材質は、例示したグラファイト型の外に、ダイス型、超硬型、セラミック型を使うこともある。加圧力は無加圧あるいは100MPa以上〜1GPaまで負荷する場合もある。
昇温速度は20〜200K/分、500〜1000K/分の急速昇温も可能である。試料片が小さいφ20〜30mmでは数分から20分程度の昇温・保持時間で、φ100を超えるものでも1〜2時間で高品位な高密度焼結体が得られる。SPSの焼結温度は内部の温度より100〜200K程度低くなる。これは、SPSは物質粒子間の表面拡散現象が支配的で反応性急速昇温効果や電界拡散効果が寄与しているからである。
(3)金属薄膜
本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板において、支持基板である高音速多結晶基板2と圧電基板1は金属薄膜4を介し直接接合されている。高音速多結晶基板2と圧電基板1が金属薄膜4を介し直接接合されるには、接合前の高音速多結晶基板2と圧電基板1の各接合面を洗浄し、洗浄した高音速多結晶基板2と圧電基板1を真空容器内に配置し、超高真空中で各接合面へイオンビームを照射して残留不純物を除去すると共に各接合面を活性化し、その後、高音速多結晶基板2と圧電基板1の少なくとも一方の接合面に金属薄膜4を成膜し、該金属薄膜4の大きな原子拡散を利用して、常温・無加圧・無電圧で直接接合させることが可能となる。上記高音速多結晶基板2と圧電基板1の界面に金属薄膜4が存在し、金属薄膜4の原子拡散により接合させることができる。
上記金属薄膜4としては、クロムやチタン等酸素と結合する力が強くかつ拡散係数が高い薄膜が好ましい。また、金属薄膜4の膜厚は5〜10nmが好ましい。膜厚が5nm未満と薄すぎる場合、不連続な膜となり拡散が不連続となる。一方、膜厚が10nmを超えて厚過ぎる場合、拡散する前に連続膜が形成され高音速多結晶基板2と圧電基板1との間に膜として介在し、拡散層として機能しなくなる可能性がある。上記金属薄膜4が存在することで、圧電基板1と高音速多結晶基板2との良好な直接接合が可能となる。
(4)表面弾性波素子用複合基板
支持基板である高音速多結晶基板2と圧電基板1が金属薄膜4を介し直接接合された本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板は、当該複合基板における圧電基板1の非接合面を研磨して圧電基板1の厚さが薄くなるように調整する。高音速多結晶基板2と圧電基板1の熱膨張係数の違いから、温度変化により複合基板が反らないようにするため、圧電基板1の厚さを、高音速多結晶基板2よりも十分に薄くする必要がある。上記圧電基板1の厚さを薄くすることで、複合基板の反る力が減少して複合基板は平行を保てると共に、複合基板として、接合した高音速多結晶基板2の硬度に限りなく近づいた状態が得られる。
高音速多結晶基板2と圧電基板1の板厚については圧電基板1の厚さが薄くなるようにし、その比率は、高音速多結晶基板2の厚さに対し圧電基板1の厚さが1/5以下であることが好ましく、更に好ましくは1/10がよい。上記膜厚の違いがあれば、周囲温度が120℃程度になっても熱膨張の違いに起因する複合基板の反りは抑制される。
複合基板における圧電基板1の非接合面を研磨した後における厚さは、0.3〜25μmとすることが望ましい。研磨コストも考慮した場合は1〜25μmとすることが望ましい。また、複合基板の反りの抑制等性能面を考慮した場合は0.3〜5μmとすることが望ましい。研磨後の厚さが0.3μm未満の場合、研磨コストが上昇してしまうこともあるが、高音速多結晶基板2の表面平滑度の影響から圧電基板1としての厚さが保持できなくなり、圧電基板1の厚さを不連続にしてしまう可能性があるため好ましくない。他方、研磨後の厚さが25μmを超えた場合、複合基板の反りが増大し、周波数温度特性と伝搬速度が低下してしまう。すなわち、圧電基板1の厚さが大きいと圧電基板(例えばタンタル酸リチウム)の特性が出てしまい、圧電基板の熱膨張が優勢になって表面弾性波素子用電極の伸縮が大きくなり、周波数温度特性が低下すると共に複合基板としての硬度が低下して伝搬速度も低下するからである。
(5)表面弾性波素子
本発明に係る表面弾性波素子用複合基板を用いた表面弾性波素子は、図1に示すように複合基板における圧電基板1側の表面に表面弾性波素子用電極(櫛歯状電極)3が形成されて成るものである。上記圧電基板1の表面は、多数の表面弾性波デバイスが形成されるように区画されており、各表面弾性波デバイスに対応する位置に弾性波デバイス用の一対の櫛歯状電極(IDT電極)がフォトリソグラフィ技術を利用して形成される。
最後に、区画に沿ってダイシングすることにより、多数のSAWデバイスを得ることができる。得られたSAWデバイスは、入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、表面弾性波が励振されて圧電基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された表面弾性波を電気信号として取り出すことができる。
2.表面弾性波素子用複合基板の製造方法
本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板の製造方法
圧電基板1と、該圧電基板1よりも小さい熱膨張係数を持ち高硬度の多結晶材料で構成された高音速多結晶基板2が金属薄膜4を介し直接接合された本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板の製造方法は、
金属薄膜を介し、支持基板を構成する高音速多結晶基板と圧電基板を表面活性化常温接合法により直接接合する工程と、
高音速多結晶基板に接合された圧電基板の非接合面を研磨する工程、
を具備することを特徴としている。
以下、各工程について説明する。
<a>金属薄膜4を介し、支持基板を構成する高音速多結晶基板2と圧電基板1を表面活性化常温接合法により直接接合する工程
金属薄膜4を介し、支持基板を構成する高音速多結晶基板2と圧電基板1を表面活性化常温接合法により直接接合するため、上記高音速多結晶基板2と圧電基板1の接合面には凹凸が存在していないことが好ましく、上述したように表面粗さはRa0.2〜0.5nm程度になっていることが好ましい。
高音速多結晶基板2表面を研磨する方法としては、例えば、ダイヤモンド電着ホイール若しくはダイヤモンド砥粒による直接研磨、または、高温で加熱した鉄若しくはニッケル等の金属による研磨(熱化学反応を用いた研磨)等が利用できる。
次に、金属薄膜4を介し、高音速多結晶基板2と圧電基板1を表面活性化常温接合法により直接接合する。
金属薄膜4を介し、高音速多結晶基板2と上記圧電基板1を直接接合するには、接合前の高音速多結晶基板2と圧電基板1の各接合面を洗浄し、洗浄した高音速多結晶基板2と圧電基板1を真空容器内に配置し、超高真空中で各接合面へイオンビームを照射して残留不純物を除去すると共に各接合面を活性化させる。高音速多結晶基板2と圧電基板1の各接合面を洗浄した後、更に、各接合面にUV照射を行うことも好ましい。
次に、スパッタリング法により高音速多結晶基板2と圧電基板1の少なくとも一方の接合面に金属薄膜4を成膜する。金属薄膜4としてはクロム膜、チタン膜等酸素と結合する力が強く拡散係数が高い膜が好ましく、特にチタン膜が好ましい。高音速多結晶基板2と圧電基板1の少なくとも一方の接合面に成膜される金属薄膜4の膜厚は5〜10nmであることが好ましい。膜厚が5nm未満と薄過ぎる場合、不連続な膜となり、成膜された接合面への拡散が不連続となる。一方、膜厚が10nmを超えて厚過ぎる場合、拡散する前に連続膜が形成され高音速多結晶基板2と圧電基板1との間に膜として介在し、拡散層として機能しなくなる可能性がある。
上記金属薄膜4を成膜した後、金属薄膜4の大きな原子拡散を利用して、常温・無加圧・無電圧で高音速多結晶基板2と圧電基板1を接合する。これ等接合面には金属薄膜4が存在し、金属薄膜4の原子拡散により接合することができる。これにより金属薄膜4を介し高音速多結晶基板2と圧電基板1が直接接合されて実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板を得ることができる。上記金属薄膜4が介在することで、圧電基板1と高音速多結晶基板2との良好な直接接合が可能となる。
<b>高音速多結晶基板2に接合された圧電基板1の非接合面を研磨する工程
次に、得られた複合基板を研磨機に装着し、複合基板における圧電基板の非接合面を研磨して圧電基板1の厚さが薄くなるように調整する。高音速多結晶基板2と圧電基板1の熱膨張係数の違いから、温度変化により複合基板が反らないようにするためには、圧電基板1の厚さを、高音速多結晶基板2よりも十分に薄くする必要がある。上記圧電基板1の厚さを薄くすることで、複合基板の反る力が減少して複合基板の反りは抑制される。また、圧電基板1を薄くすることで接合した高音速多結晶基板2の影響を受け、複合基板として、接合した高音速多結晶基板2の硬度に限りなく近づいた状態が得られる。
高音速多結晶基板2と圧電基板1の板厚については圧電基板1の厚さが薄くなるようにし、その比率は、上述したように高音速多結晶基板2の厚さに対し圧電基板1の厚さが1/5以下であることが好ましく、更に好ましくは1/10がよい。上記膜厚の違いがあれば、周囲温度が120℃程度になっても熱膨張の違いに起因する複合基板の反りは抑制される。
複合基板における圧電基板1の非接合面を研磨した後における厚さは、0.3〜25μmとすることが望ましい。研磨コストも考慮した場合は1〜25μmとすることが望ましい。また、複合基板の反りの抑制等性能面を考慮した場合は0.3〜5μmとすることが望ましい。研磨後の厚さが0.3μm未満の場合、研磨コストが上昇してしまうこともあるが、高音速多結晶基板2の表面平滑度の影響から圧電基板1としての厚さが保持できなくなり、圧電基板1の厚さを不連続にしてしまう可能性があるため好ましくない。他方、研磨後の厚さが25μmを超えた場合、複合基板の反りが増大し、周波数温度特性と伝搬速度が低下してしまう。すなわち、圧電基板1の厚さが大きいと圧電基板(例えばタンタル酸リチウム)の特性が出てしまい、圧電基板の熱膨張が優勢になって表面弾性波素子用電極の伸縮が大きくなり、周波数温度特性が低下すると共に複合基板としての硬度が低下して伝搬速度も低下するからである。
上記<a>、<b>工程により、高周波数化と周波数温度特性が改善され、かつ、コスト削減も図れた本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板を得ることができる。
3.表面弾性波素子の製造方法
上述した方法で製造された本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板における圧電基板1の非接合面上に上述した機能を有する表面弾性波素子用電極(IDT電極)3を形成して表面弾性波素子が作製される。尚、表面弾性波素子を共振子として使用する場合は、圧電基板上にIDT電極と該IDT電極の両側部に一対の反射器を配置する。
以下、表面弾性波素子の製造方法について具体的に説明する。
まず、上記表面弾性波素子用複合基板における圧電基板1の非接合面に電極用導電性材料層を形成した後、この導電性材料層上に、フォトリソグラフィ法によりIDT電極および反射器に対応した形状のレジスト層を形成する。
そして、レジスト層をマスクとして使用し、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング法により上記レジスト層が形成されていない部分の導電性材料層を除去することで、所定パターンのIDT電極と反射器が形成される。
IDT電極を形成する場合、上記エッチング法によらず、リフトオフ法によりパターニングしてもよい。また、上記反射器の本数は、必要とする挿入損失、チップサイズ等を勘案して適宜調節する。
上記電極用導電性材料としては、質量が小さく、電気抵抗値が低くかつ耐電力性が要請される理由から、アルミニウム若しくはアルミニウムに微量の異種金属(例えば、Cu、Si、Ti、HfB2等が挙げられる)が添加されたアルミニウム系合金(必ずしも固溶体でなくてもよい)が好ましい。例えば、表面弾性波素子の寿命に影響を及ぼすIDT電極の耐電力性の観点から、半導体装置の分野でマイグレーションに強いことで定評のあるスパッタリング成膜による微量の銅が添加されたアルミニウム系合金を用いることが好ましい。但し、上記アルミニウム系合金に限定されず、Cu、Au、Pt、Agおよびこれ等金属の内の1つを主成分とする合金から選ばれる1種を用いることもできる。
本発明の実施形態に係る表面弾性波素子用複合基板を用いて製造された表面弾性波素子は、表面を伝搬する表面弾性波の伝搬速度が速くなって共振周波数が高くなり、かつ、周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題も改善されると共に、支持基板として高音速多結晶基板が適用されているため製造コストの削減も図れる長所を有する。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(1)多結晶炭化ケイ素(SiC)基板(高音速多結晶基板)の製造
「(株)シンターランド社製LABOX−600」を用いて、放電プラズマ焼結法(SPS:Spark Plasma Sintering)により多結晶炭化ケイ素(SiC)基板を製造した。
すなわち、(株)高純度化学研究所製の「粒子径2〜3μmのβ型SiC粒子」をボールミルで粒子径0.28μmに粉砕した材料を用い、超硬材料で構成された型(2インチ径、厚さ700μm)に上記材料を充填し、加圧力30MPa、SPS昇温速度373K/分、1900℃の温度にして10分保持した。その際、最大パルス電流1500Aを印加した。
製造されたSiC焼結体のビッカース硬度は2400、最大室温曲げ強度は720MPaであった。また、XRD測定を行い、3C構造の(111)が観測されたが多結晶であった。
得られた多結晶炭化ケイ素(SiC)を、(株)アビコ技術研究所製のダイヤモンドナノ研磨器を用いて表面粗さRa0.3nmまで研磨し、かつ、基板形状に加工して2インチ径の多結晶SiC基板(直径2インチ径×厚さ200μm)を製造した。
(2)圧電基板(タンタル酸リチウム基板)の研磨
次に、直径2インチ、厚さ350μmのタンタル酸リチウム基板[住友金属鉱山(株)社製]の表面を、上記多結晶炭化ケイ素(SiC)の場合と同様に研磨し、表面粗さRa0.3nmとした。
(3)多結晶SiC基板と圧電基板との常温接合
表面研磨した多結晶SiC基板とタンタル酸リチウム基板をアセトン液中で超音波洗浄した後、更に、両基板の研磨がなされた表面にUV照射を60秒行った。
次に、(株)ムサシノエンジニアリング製の表面活性化接合タイプ常温接合装置に、洗浄およびUV照射を終えた両基板を配置し、超高真空2×10-6Paまで真空引きし、両基板の研磨がなされた表面にArビーム照射し(照射条件:加速電圧50kV、ビーム径1.2mm、照射量2×1014ions/cm2)、該表面を活性化した後、同一チャンバー内で、多結晶SiC基板の活性化させた表面にスパッタリング法でTi膜を7nm成膜した。次いで、タンタル酸リチウム基板の活性化処理面と、多結晶SiC基板のTi膜が成膜された面を対向させ、熱、圧力等を加えずに両表面を常温接合して、実施例1に係る表面弾性波素子用複合基板(複合基板)を作製した。
(4)複合基板におけるタンタル酸リチウム基板の非接合面の研磨
タンタル酸リチウム基板/(直接接合:Ti膜)/多結晶SiC基板の構成を有する上記複合基板におけるタンタル酸リチウム基板の非接合面を、表面研磨器[(株)ディスコ社製DGP8761]を用いて厚さ10μmまで研磨した。
上記製造条件について表1に示す。
(5)表面弾性波素子の作製
研磨処理がなされた実施例1に係る表面弾性波素子用複合基板のタンタル酸リチウム基板の非接合面に、真空蒸着法により、先に厚さ5nmのCrを成膜し、次いで厚さ0.15μmのCu膜を成膜した。
次に、上記Cu膜上に、フォトリソグラフィ法によりIDT電極に対応した形状のレジスト層を形成し、該レジスト層をマスクとして用い、反応性イオンエッチング(RIE)のドライエッチング法によりレジスト層が形成されていない部分のCu膜およびCr膜を除去した。これにより、所定パターンのIDT電極を形成し、実施例1に係るSAWデバイスを作製した。
得られたSAWデバイスの特性は、伝搬速度は8700m/s、周波数温度特性は−8.8ppm/℃、電気機械結合係数は7.2%であった。
これ等の評価結果から、タンタル酸リチウム基板を用いた従来のSAWデバイスを上回る伝搬速度と周波数温度特性が得られていることが確認された。
また、櫛歯状電極の幅を0.4μm(表面弾性波の波長λは0.4×4=1.6μmとなる)とすることにより、5437MHzのSAWデバイスを得ることができた。
得られたSAWデバイスの特性を表2に示す。
[実施例2]
(1)〜(3)工程については実施例1と同様に行い、(4)工程で、タンタル酸リチウム基板/(直接接合:Ti膜)/多結晶SiC基板の構成を有する複合基板におけるタンタル酸リチウム基板の非接合面を、表面研磨器[(株)ディスコ社製DGP8761]を用いて厚さ12μmまで研磨した。
(5)の表面弾性波素子の作製についても、実施例1と同様に行い、実施例2に係る表面弾性波素子を作製した。
得られたSAWデバイスの特性は、伝搬速度は8500m/s、周波数温度特性は−12.2ppm/℃、電気機械結合係数は7.4%であった。
これ等の評価結果から、タンタル酸リチウム基板を用いた従来のSAWデバイスを上回る伝搬速度と周波数温度特性が得られていることが確認された。
また、表面弾性波の波長λを0.4μm櫛歯状電極の幅を0.4μm(表面弾性波の波長λは0.4×4=1.6μmとなる)とすることより、5312MHzのSAWデバイスを得ることができた。
複合基板の製造条件を表1に示し、SAWデバイスの特性を表2に示す。
[実施例3]
多結晶SiC基板の製造に際し、β型SiC粒子の粒子径を48nmに粉砕したこと、SPSの保持温度を2000℃、保持時間を30分、最大パルス電流を1000Aとした以外は実施例1と同様にして多結晶SiC基板を製造した。
製造されたSiC焼結体のビッカース硬度は2400、最大室温曲げ強度は760MPaであった。また、XRD測定を行い、3C構造の多結晶であることを確認した。
得られたSiC焼結体を、(株)アビコ技術研究所製のダイヤモンドナノ研磨器を用いて表面粗さRa0.3nmまで研磨し、かつ、基板形状に加工して2インチ径の多結晶SiC基板(直径2インチ径×厚さ200μm)を製造した。
実施例1の(2)工程については同様に行い、(3)工程については金属薄膜として7nmのTi膜に代えて7nmのCr膜を設けたこと以外は同様に行い、(4)工程で、タンタル酸リチウム基板/(直接接合:Cr膜)/多結晶SiC基板の構成を有する複合基板におけるタンタル酸リチウム基板の非接合面を、表面研磨器[(株)ディスコ社製DGP8761]を用いて厚さ12μmまで研磨した。
(5)の表面弾性波素子の作製についても、実施例1と同様に行い、実施例3に係る表面弾性波素子を作製した。
得られたSAWデバイスの特性は、伝搬速度は8850m/s、周波数温度特性は−12.0ppm/℃、電気機械結合係数は7.4%であった。
これ等の評価結果から、タンタル酸リチウム基板を用いた従来のSAWデバイスを上回る伝搬速度と周波数温度特性が得られていることが確認された。
また、表面弾性波の波長λを0.4μm櫛歯状電極の幅を0.4μm(表面弾性波の波長λは0.4×4=1.6μmとなる)とすることより、5531MHzのSAWデバイスを得ることができた。
複合基板の製造条件を表1に示し、SAWデバイスの特性を表2に示す。
[実施例4]
(1)多結晶B4C基板の製造
実施例1と同様、「(株)シンターランド社製LABOX-600」を用いて、放電プラズマ焼結法(SPS:Spark Plasma Sintering)により多結晶炭化ホウ素(B4C)基板を製造した。
すなわち、高純度化学社製の「粒子径2〜3μmのB4C粒子」をボールミルで粒子径0.20μmに粉砕した材料を用い、超硬材料で構成された型(2インチ径、厚さ700μm)に上記材料を充填し、加圧力30MPa、SPS昇温速度373K/分、2000℃の温度にして20分保持した。その際、最大パルス電流1600Aを印加した。
製造されたB4C焼結体のビッカース硬度は2700、最大室温曲げ強度は730MPaであった。
得られた多結晶炭化ホウ素(B4C)を、ダイヤモンドナノ研磨器「(株)アビコ技術研究所製」を用いて表面粗さRa0.3nmまで研磨し、かつ、基板形状に加工して2インチ径の多結晶炭化ホウ素(B4C)基板(直径2インチ径×厚さ200μm)を製造した。
そして、(2)〜(4)工程については実施例1と同様に行い、表面弾性波素子用複合基板(複合基板)を製造した。
更に、(5)工程の表面弾性波素子作製についても実施例1と同様に行い、実施例4に係る表面弾性波素子を作製した。
得られたSAWデバイスの特性は、伝搬速度は8800m/s、周波数温度特性は−9.0ppm/℃、電気機械結合係数は7.4%であった。
これ等の評価結果から、実施例1と同様、タンタル酸リチウム基板を用いた従来のSAWデバイスを上回る伝搬速度と周波数温度特性が得られていることが確認された。
また、櫛歯状電極の幅を0.4μm(表面弾性波の波長λは0.4×4=1.6μmとなる)とすることより、5500MHzのSAWデバイスを得ることができた。
複合基板の製造条件を表1に示し、SAWデバイスの特性を表2に示す。
[比較例1]
実施例1の「(3)多結晶SiC基板と圧電基板との常温接合」工程において、金属薄膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例1に係る表面弾性波素子用複合基板(複合基板)を作製した。
その結果、接合された多結晶SiC基板とタンタル酸リチウム基板における外周部の一部に接合されていない剥離部が発生し、かつ、中心部に直径1mm程度の未接合が2個生じており、多結晶SiC基板とタンタル酸リチウム基板が良好に接合された表面弾性波素子用複合基板(複合基板)を得ることはできなかった。
多結晶SiC基板には粒界が存在するため、単結晶に較べて平滑な研磨面を得ることが難しく、金属薄膜なしでは常温接合ができなかったものと推測される。
[比較例2]
実施例1の「(3)多結晶SiC基板と圧電基板との常温接合」工程において、金属薄膜を形成しなかったことと、800℃に加熱して接合したこと以外は実施例1と同様にして比較例2に係る表面弾性波素子用複合基板(複合基板)を作製した。
その結果、多結晶SiC基板とタンタル酸リチウム基板は良好に接合されたものの、タンタル酸リチウムのキュリー温度を超えたため、タンタル酸リチウム基板が多分域化してしまい、表面弾性波素子の製造には適さないものとなった。
Figure 2020057849
Figure 2020057849
本発明に係る表面弾性波素子用複合基板を用いた表面弾性波素子は、その高周波数化が図れると共に周波数特性が温度変化によりシフト(変動)する課題が改善され、更に、製造コストの削減も図られるため、表面弾性波素子用基板として使用される産業上の利用可能性を有している。
1 圧電基板
2 高音速多結晶基板(支持基板)
3 櫛歯状電極(IDT電極)
4 金属薄膜

Claims (8)

  1. 圧電基板と、
    該圧電基板よりも小さい熱膨張係数を持つ支持基板を具備する表面弾性波素子用複合基板において、
    上記支持基板が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウムおよび炭化バナジウムから選択された高音速多結晶基板で構成され、かつ、上記高音速多結晶基板と圧電基板が金属薄膜を介し直接接合されていることを特徴とする表面弾性波素子用複合基板。
  2. 上記金属薄膜がチタン膜またはクロム膜であることを特徴とする請求項2に記載の表面弾性波素子用複合基板。
  3. 圧電基板が、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶、ホウ酸リチウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ランガサイト、ランガテイトから選択される1種以上のバルク結晶で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の表面弾性波素子用複合基板。
  4. 請求項1に記載の表面弾性波素子用複合基板を製造する方法において、
    金属薄膜を介し、支持基板を構成する高音速多結晶基板と圧電基板を表面活性化常温接合法により直接接合する工程と、
    高音速多結晶基板に接合された圧電基板の非接合面を研磨する工程、
    を具備することを特徴とする表面弾性波素子用複合基板の製造方法。
  5. 金属薄膜を介し、上記高音速多結晶基板と圧電基板を直接接合する工程において、
    接合前の上記高音速多結晶基板と圧電基板の各接合面を洗浄し、各接合面へイオンビームを照射して残留不純物を除去し、かつ、高音速多結晶基板と圧電基板の少なくとも一方の接合面上に金属薄膜を成膜した後、真空中、常温で直接接合することを特徴とする請求項4に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法。
  6. 上記金属薄膜が、膜厚5〜10nmのチタン膜またはクロム膜であることを特徴とする請求項4または5に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法。
  7. 高音速多結晶基板に接合された圧電基板の非接合面を研磨する工程において、
    上記圧電基板の厚さが0.3μm〜25μmになるまで研磨することを特徴とする請求項4に記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法。
  8. 支持基板を構成する上記高音速多結晶基板が放電プラズマ焼結法で製造されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の表面弾性波素子用複合基板の製造方法。
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