薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパー製品の製造方法、及び薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパー製品に関する。
収納箱内にティシュペーパーの束を収納し、収納箱上面の取出口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するようにしたティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、ポップアップ式とも称され、一枚を取り出すとそれに連続して、次の一枚の一部が取出口から引き出されるようになっている。
この種のティシュペーパー製品の中には、薬液を封入したマイクロカプセルを収納箱内に収納するティシュペーパーに付与したものがある。この薬液を封入したマイクロカプセルを付与したティシュペーパーは、ティシュペーパーを収納箱から取り出す際のティシュペーパーに加わる物理的な刺激や使用者が手などによってティシュペーパーに与える物理的な刺激によって、マイクロカプセルを崩壊させて薬液による機能を発揮させるようにする。薬液としては、香料が代表的である。
従来、このようなマイクロカプセルを付与したティシュペーパーの製造は、まず、プライ設備で複数プライが積層されたティシュペーパー原紙を巻き取って原反ロールを製造し、次いで、この原反ロールをグラビア印刷装置やフレキソ印刷装置などのロール転写設備に移送して、香料等の薬液を封入したマイクロカプセルをバインダーや保湿剤等に混合して調整した塗布液を塗工し、再度、巻き取ってマイクロカプセルが付与された原反ロールを製造し、さらに、これをインターフォルダと称される折畳み設備に移送してセットし、係る原反ロールからティシュペーパー原紙を繰り出して折り畳むようにして製造されている。
ところで、香料等の薬液を封入したマイクロカプセルをティシュペーパーに付与する場合、ロール転写設備でマイクロカプセルを転写する工程、巻き取りや折畳み設備に原反ロールをセットする工程、原紙を繰り出して折り畳むまでの搬送工程などにおいて、物理的刺激によってマイクロカプセルが崩壊するため、これがマイクロカプセルの歩留まりを悪化させる要因となっている。また、マイクロカプセル崩壊に伴う製造設備に付着した香料等の洗浄作業を煩雑にしている。
その一方で、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、歩留まりや洗浄の問題は改善されるものの、マイクロカプセルにヒビ、傷などがはいった完全に崩壊しないまでも崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの存在も低下し、また、製造時の崩壊によって意図せずともティシュペーパーに付着する香料等の量も低下する。そして、このような製造時における崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの発生は、例えば、香料等のティシュペーパーの付着によってティシュペーパーに香りを付与することを補助する効果がある。
したがって、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、使用者が収納箱からティシュペーパーを取り出しても、香りが十分に発せられなくなる等の新たな問題のおそれがある。特に、香料の場合、この問題は、メントール系、ミント系等の揮発性の高い香料において懸念される。
特開2012−196382号公報
特許第5225591号
特許第5479973号
そこで、本発明の主たる課題は、マイクロカプセルを崩壊しないようにティシュペーパーに付与するティシュペーパー製品の製造方法、さらに、使用時にティシュペーパーを取り出した際にマイクロカプセルが崩壊しやすく、その際にマイクロカプセルに封入した薬液による機能が効果的に発せられるティシュペーパー製品の製造方法と、そのようなティシュペーパー製品を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパーがポップアップ式に折畳み積層されてなるティシュペーパー束が収納箱に収納されたティシュペーパー製品の製造方法であって、
原反ロールから繰り出されたティシュペーパー原紙に対して、マイクロカプセルを含む塗布液をローターダンプニング式塗布装置によって塗布する工程を有する、
ことを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
ティシュペーパー原紙に塗布液を塗布した後、塗布液が塗布されたティシュペーパー原紙を巻き取ることなく、折り畳みと積層とを行なって積層束を形成し、その積層束を裁断してティシュペーパー束を収納箱に収納する、請求項1記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項3記載の発明〕
複数プライのティシュペーパー原紙が巻き取られた原反ロールをロータリー式インターフォルダにセットし、その原反ロールから前記ティシュペーパー原紙を繰り出して折畳み積層を行なうまでの間で前記塗布液をティシュペーパー原紙に塗布する請求項1又は2記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項4記載の発明〕
ロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の直前で塗布液を塗布する請求項3記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項5記載の発明〕
ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、塗布液を塗布する、請求項1〜4の何れか1項に記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項6記載の発明〕
前記塗布液が、保湿剤を含む請求項1〜5記載のティシュペーパーの製造方法。
〔請求項7記載の発明〕
ティシュペーパー束を、上面に取出口形成用ミシン目線が形成された箱体を有し、その取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が箱体内面に貼付された第一シート材と第二シート材とによって被覆されているとともに、前記第一シート材の縁部と前記第二シート材の縁部とが、前記取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲において箱体外面側からこの順でかつ互いに自由な状態で積層されている収納箱に、収納する、請求項1〜6の何れか1項に記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項8記載の発明〕
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパーがポップアップ式に折畳み積層されてなるティシュペーパー束が収納箱に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記ティシュペーパーが、マイクロカプセルを含む塗布液をローターダンプニング式塗布装置によって塗布されたものであり、
前記収納箱が、上面に取出口形成用ミシン目線が形成された箱体を有し、その取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が収納箱内面に貼付された第一シート材と第二シート材とによって被覆されているとともに、前記第一シート材の縁部と前記第二シート材の縁部とが、前記取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲において収納箱外面側からこの順でかつ互いに自由な状態で積層されたものであり、
前記収納箱内のティシュペーパー束から、ティシュペーパーが、第一シート材と第二シート材との積層された縁部間を通って収納箱外に取り出されるように構成されている、
ことを特徴とするティシュペーパー製品。
〔請求項9記載の発明〕
前記ティシュペーパーは、そのティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、マイクロカプセルが付着されている、請求項8記載のティシュペーパー製品。
以上の本発明によれば、マイクロカプセルが崩壊しないようにティシュペーパーに付与することができるティシュペーパー製品の製造方法、さらに、使用時にティシュペーパーを取り出した際にマイクロカプセルが崩壊しやすく、その際にマイクロカプセルに封入した薬液による機能が効果的に発せられるティシュペーパー製品の製造方法と、そのようなティシュペーパー製品が提供される。
本発明に係るティシュペーパー製品の製造方法例を示す工程概略図である。
本発明に係るロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の一例を説明するための図である。
本発明に係るティシュペーパー束の収納箱への収納態様を示す図である。
本発明に係る塗布液の塗布態様を説明するための図である。
本発明に係るローターダンプニング式塗布装置の例を説明するための断面図である。
本発明に係る塗布液の他の塗布態様を説明するための図である。
本発明に係るティシュペーパー製品の斜視図である。
本発明に係る収納箱の展開図の例である。
本発明に係るティシュペーパー製品の構造を説明するための斜視図である。
本発明に係るティシュペーパー製品の使用時の斜視図である。
図10のA−A断面を模式的に表した断面図である。
本発明の他の実施形態に係るティシュペーパー製品の断面図である。
本発明に係る別の実施形態に係るティシュペーパー製品の構造を説明するための斜視図である。
本発明に係る別の実施形態に係るティシュペーパー製品の使用時の斜視図である。
図14のD−D断面を模式的に表した断面図である。
次いで、本発明の実施形態の図面を参照しながら説明する。
(ティシュペーパー製品の製造方法)
まず、本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法を、図1〜図6及び図8を参照しながら、ロータリー式インターフォルダを用いた製造方法を例として説明する。
本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法では、まず、ロータリー式インターフォルダ200の原反ロール支持部50に、ティシュペーパー原紙を巻き取った原反ロール51A,51Bを一対セットする。
原反ロール51A,51Bは、抄紙設備において紙料(望ましくは古紙パルプを含まないバージンパルプ100%のパルプ繊維)からクレープを有する単層のティシュペーパー原紙を抄造し、これを一旦、巻き取って一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールを公知のプライ設備にセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した単層のティシュペーパー原紙を重ね合わせて、適宜に連続方向にスリットして巻き取って製造することができる。この原反ロールは、複数プライのティシュペーパー原紙が巻かれたものとなる。
ロータリー式インターフォルダ200では、セットされた一対の原反ロール51A,51Bから各々ティシュペーパー原紙52A,52Bを繰り出し、フォールディングユニットとも称される折畳み機構部60に供給して折畳みと積層とを行なう。ロータリー式インターフォルダ200における折畳み機構部60は、一対のフォールディングロール61A,61Bを有しており、各フォールディングロール61A,61Bにそれぞれの原反ロール51A,51Bからのティシュペーパー原紙52A,52Bが供給され、各々がカットされて重ね合わせられた後、折り畳まれて積層される。
ロータリー式インターフォルダ200の折畳み機構部60の具体的な一例を、図2に示す。この折畳み機構部60は、フォールディングロール61A,61Bと対をなして回転するナイフロール62A,62Bを有し、そのナイフロールの刃63A,63Bが適当間隔でフォールディングロール61A,61B上に位置するティシュペーパー原紙52A,52Bに接触させて、ティシュペーパー原紙52A,52Bを幅方向にカットし、上流のティシュペーパー原紙と切り離す。カット幅は、ティシュペーパーの幅(長さ)である。カットされたティシュペーパー原紙53A,53Bは、適宜のバキューム機構で、回転方向先端側部分Fと回転方向末端側部分Bとそれらの中間位置となる回転方向中間部分Cが前記フォールディングロール上に貼り付けられるようにして支持されて下流に送られる。
上記一対のフォールディングロール61A,61Bは、それぞれカットされたティシュペーパー原紙の支持位置が、そのティシュペーパー原紙の回転方向の距離の1/2ずれた位置関係になっており、各フォールディングロール61A,62Bが最も近接する位置において、一方のフォールディングロール61A上のティシュペーパー原紙の回転方向先端側部分Fと他方のフォールディングロール61B上のティシュペーパー原紙の回転方向中間部分Cとが一致して付き合わされる。
各々のフォールディングロール61A,61Bは、その最近接位置で、一方のティシュペーパー原紙の回転方向先端部分Fが、他方のティシュペーパー原紙の回転方向中間部分Cに引き込まれるようにそれぞれバキューム機構が制御され、これによって各々のティシュペーパー原紙53A,53Bが積層されるとともに折り畳まれる。その折畳みと積層とが順次行なわれるともにタッカー64A,64Bによって積み重ねられ、積層束70が形成される。
なお、本発明に係るロータリー式インターフォルダの折畳み機構部は、上記例に限定されるものではなく、その他の折畳み機構部とすることができる。ロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の他の構成は、例えば、特開2015−16355等に開示される。
なお、ロータリー式インターフォルダは、その折畳み機構部の構成は種々存在するが、折り畳みによって形成される折り縁がCD方向(ティシュペーパー原紙の流れ方向に直行する方向)に沿う方向となる点で共通する。また、一般に、連続するティシュペーパー原紙の先端部分を切り離した後に折畳みを行なうため、折畳みの際に張力が係らず折り品質に優れるという利点を有している。
ロータリー式インターフォルダ200の折畳み機構部60で形成された積層束70は、原反ロール51A,51Bの幅であり長尺であるため、次の裁断工程(図示されない)によりティシュペーパー製品に適した長さ、例えば、収納箱1の長手方向より若干短い長さに裁断(切断)されてティシュペーパー束2とする。
得られたティシュペーパー束2は、図3に示すように、収納箱1に収納する。具体的には、図8に示すように、展開状態が、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13と、それらの各面から延出する各フラップFL,FL…と、底面12から延在する糊代部12Aとを有し、前記底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、各フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成する構造の収納箱を、図3に示すように、一方の短側面を構成する各フラップが開いた状態、すなわち一方端面が開口された状態に半完成の状態に組立て、その開口部に対面するようにティシュペーパー束2の裁断面を付き合わせ、プッシュロッド(図示されない)等によって収納箱内へ押し込む。ティシュペーパー束2が収納箱内に押し込まれたら、開いているフラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着材等により接着する。この接着によって本発明のティシュペーパー製品の製造は完了する。
なお、ロータリー式インターフォルダ200により製造したティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tの方向は、図示のとおり、ティシュペーパー2tの折り縁2Eの延在方向に沿って横方向(CD方向)となり、ティシュペーパー2tの折り縁2Eの延在方向と直交する方向に沿って縦方向(MD方向)となる。
したがって、上述のように収納箱1に収納された本発明によって製造されるティシュペーパー製品100は、ティシュペーパー2tを収納箱1から引き出す際には、その引き出し方向がティシュペーパー2tの縦方向(MD方向)に沿うようになる。
ここで、本実施形態に係るティシュペーパー製品100の製造方法では、特徴的に、上記ロータリー式インターフォルダ200において、原反ロール51A,51Bから繰出されたティシュペーパー原紙52A,52Bに対して折畳み機構部60に供給する前に、薬液が封入されたマイクロカプセルを適宜の溶媒に分散させた塗布液を、ローターダンプニング式塗布装置80によって塗布する。
ローターダンプニング式塗布装置80は、図4に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向に直行する方向に沿ってローターダンプニングユニット81,81…がティシュペーパー原紙52A(52B)の幅に応じて適宜の個数並べて配置されており、各ユニット81,81…から塗布液が搬送されるティシュペーパー原紙52A(52B)に対して噴霧塗布される。
ローターダンプニングユニット81,81…は、図5に縦断面を示すように、回転自在な中空円盤状のロータ82を有しており、そのロータ82がプーリー等を介して駆動源に接続され、高速で回転駆動するようになっているとともに、ロータ82内に塗布液CLを供給するように構成されている。これにより、適宜の回転数、例えば5000rpm程度の高速で回転するロータ82内の塗布液が遠心力によってロータ82の外周から噴出し、細かい霧からなる薄膜状の噴霧流が形成され、ロータ82からの噴霧流の幅をシャッタ83で規制することで、所定の噴霧塗布幅で一様に噴霧塗布する。ローターダンプニング式塗布装置80では、概ね、スプレー粒子の粒径が30〜100μm程度にすることができ、塗布量も精度よく制御できる。なお、ローターダンプニング式塗布装置の具体的製品としては、WEKO ローターダンプニング(ニッカ株式会社製)がある。
このローターダンプニング式塗布装置80は、グラビア印刷装置やフレキソ印刷装置などのロール転写設備と異なり、塗布液をティシュペーパー原紙52A(52B)に塗布する際に印圧が発生しないため、塗布時にマイクロカプセルが破裂したり傷が入ったりし難く、歩留まりが向上する。また、非接触で液体を塗布する方法として、圧搾空気を噴射媒体とするノズル式噴霧方式の塗布装置があるが、この方式は、生産効率を高めようとすると、ティシュペーパー原紙の搬送によって生ずる気流と、噴射媒体である圧縮空気がティシュペーパーに当たることにより生ずる気流とによって、塗布液のティシュペーパー原紙への定着が阻害されるようになり、ティシュペーパー原紙の裏側から吸引する等しても充分な定着率とならない。また、気化熱によりノズル口に塗布液が固着する事象も生じやすく生産性を高めるのが難しい。ローターダンプニング式塗布装置80では、圧搾空気を噴射媒体としないため気流の乱れが発生しがたく、高い定着率でティシュペーパー原紙52A(52B)にマイクロカプセルを付着させることができ、また、ノズル口に塗布液が固着するということがない。
ローターダンプニング式塗布装置80によってティシュペーパー原紙52A(52B)に対して塗布液を塗布する範囲としては、図4に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の幅方向の全体にわたって塗布してもよいが、特に、ローターダンプニング式塗布装置80では、シャッタ83によって塗布範囲を精度よく調整できるため、例えば、ティシュペーパー2tの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、前記塗布液を塗布することができる。つまり、上記のとおりロータリー式インターフォルダ200によってティシュペーパー製品を製造する場合には、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向が引き出し方向になるため、積層束70の裁断位置を考慮して、図6に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向に沿って適宜50〜100mm程度の幅で線状となるように、シャッタ83を調整して塗布すれば、ティシュペーパー2tの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、塗布液が塗布されることになる。
ティシュペーパーは、洟をかむ用途によく用いられるが、その洟をかむさいの一般的動作は、折り縁で折られた二重折りの状態で、その折り縁に沿う方向の中央部を鼻頭近傍に当て、側方部分を両手で鼻側部に押し付けるようにして行なわれる。したがって、ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、前記塗布液を塗布して製造されたティシュペーパーは、上記のような洟をかむ一般動作をした際に、鼻頭から顔面の上下方向に沿う位置に塗布液が塗布されているものとなっている。つまり、鼻頭への押し当て、両手による鼻側部への押しつけの際に物理的刺激が加わる部位にマイクロカプセルが位置し、その一方で物理的刺激のない範囲にはマイクロカプセルが付与されていないものとなっている。したがって、上記塗布範囲とすると、マイクロカプセルの崩壊が効果的に行なわれるとともに、不要なマイクロカプセルが付与されていないものとなり、高価なマイクロカプセルの使用量を減少させつつ、また、マイクロカプセルの崩壊を防止しつつ塗布しても、マイクロカプセルの効果が充分に発揮されるティシュペーパー、さらにその製品が製造される。
ロータリー式インターフォルダ200中におけるローターダンプニング式塗布装置80によって、ティシュペーパー原紙52A(52B)に対して塗布液を塗布する位置としては、図1に示すように折畳み機構部60の直前であるのが望ましい。折畳み機構部60の直前であれば、ティシュペーパー原紙52A,52Bがテンションロールやガイドロールと接触する機会が極力少なく、マイクロカプセルが搬送過程で崩壊する機会が少なくなる。また、マイクロカプセルは塗布液中ではある程度の柔軟性があり空気暴露によって膜材が硬化するのが通常である。塗布直後であれば溶媒が紙に浸透するまで若干の時間があり、数秒程度あれば膜材の柔軟性が保持される。折畳み機構部60の前段で塗布液を塗布した場合、フォールディングロール61A,61Bにおいて折畳みと積層が行なわれる過程で、マイクロカプセルに物理的な刺激が加わることになるが、その際の時間が短時間であればマイクロカプセルの弾力性が維持され、折畳み機構部60での折畳みと積層の際に崩壊するマイクロカプセルを最小に押えることができる。ここで、折畳み機構部60の直前とは、塗布から折畳みと積層が完了するまでの時間が1〜30秒の範囲であれば充分である。
他方、本発明に係るローターダンプニング式塗布装置80によって塗布する際に適する塗布液は、特にその塗布液の粘度が、塗布時(概ね15〜25℃の常温)において50mPa・S未満、特には30mPa・S以下のものである。この粘度は、従来のロール転写設備では、概ね40℃で50mPa・S以上、特に100〜300mPa・Sとされているのに比して、非常に低粘度である。このような低粘度の塗布液に調整するには、溶媒を水とするのが望ましい。水は、粘度が0.5〜1.5mPa・S程度で噴霧性に優れるとともにティシュペーパー原紙とのなじみもよく浸透性に優れ、マイクロカプセルを効果的に紙面に付着させることができる。さらに、塗布液中には、でんぷん、PVA、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等のバインダー、グリセリンなどのポリオール類、ソルビトールなどの糖アルコール類等の保湿剤を含有させることができる。これらを塗布液中に含ませる場合にも上記粘度の範囲とするのが望ましい。ここで、保湿剤は、塗布液中に含有させると保湿効果とマイクロカプセルに封入した適宜の効果の薬液とを一度にティシュペーパー原紙に付与できる点で望ましいが、保湿剤は、塗布液の粘度を高める傾向にあり、保湿効果との関係で塗布液中に含有させることが難しい場合もある。その場合には、もちろん、塗布液中に含ませるのではなく、塗布液とは別途にティシュペーパー原紙に塗布しておいてもよく、塗布液よりも先に保湿剤を塗布した場合、保湿剤塗布後に塗布液由来の水が付与されるため、ティシュペーパーの初期水分率を高める効果が期待でき、保湿性の向上がより見込める利点がある。この場合、既知の保湿剤の塗布技術によって塗布すればよい。
マイクロカプセルの膜材は、物理刺激で破壊する材質であれば使用可能であり、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが利用できる。特に、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が取り扱いの点において優れる。また、ティシュペーパーは、吸湿し適度に水分を保持する。このため、水分によって適度に経時劣化して崩壊しやすくなる、尿素樹脂、メラミン樹脂が好適であり、尿素樹脂が膜材として特に好適である。また、保湿剤と併用する場合には、塗布液中に保湿剤を含有させるか、別途に塗布するかにかかわらず、保湿剤の吸湿作用によってティシュペーパーの水分保持性が顕著になるため、特に、保湿剤と併用する場合には、上記の尿素樹脂、メラミン樹脂が好適であり、尿素樹脂が膜材として特に好適となる。
マイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されない。ローターダンプニング式塗布装置で塗布できる範囲あればよい。具体的には、1〜40μm、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により、マイクロカプセルスラリーにおけるマイクロカプセルの粒度分布により測定した値である。
マイクロカプセルに封入される薬液は、代表的また好適には香料であるが、その他に上記保湿剤と同種、又は油性の保湿成分を有する保湿助剤、コラーゲン、コエンザイムQ10、セラミドなどの肌補修成分などが挙げられる。
香料の具体例としては、ミント香、柑橘香、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、メントール、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。特に、マイクロカプセルに封入する薬液を香料或いはこれを含むものとするのであれば、その香料を揮発性の高いメントール、ミント香、柑橘香等とすると、マイクロカプセルが崩壊した際に瞬間的に周辺に香気が拡散することになる。本発明では、このような揮発性の高い香料もマイクロカプセルが崩壊したり、傷が入り難いため、長期間にわたって保管しても、その効果を発現することができる。
他方、本実施形態のティシュペーパー製品の製造方法においても、積層したティシュペーパー原紙同士の剥離をし難くするコンタクトエンボスを行なうのが望ましい。コンタクトエンボス付与装置は、図1に符号90で示している。図示例のように、コンタクトエンボスの付与は、塗布液の塗布前に行なうのが望ましい。塗布液の塗布後にコンタクトエンボス加工を行なうと、マイクロカプセルを崩壊させてしまうことに加え、塗布による乾燥
引張強度の減衰により、断紙の危険性が高まるためである。
なお、本実施形態のティシュペーパーの製造方法では、ロータリー式インターフォルダ200において、ローターダンプニング式塗布装置80で塗布する前に、ティシュペーパー原紙52A,52Bの乾燥工程を行なってマイクロカプセルのティシュペーパー2tへ付着性をより高めるようにすることができる。この工程は、例えば、ティシュペーパー原紙52A,52Bを、温度100〜300℃で長さ1〜3m程度の乾燥工程を搬送速度30〜150m/分で通すようにする。この場合、乾燥前のティシュペーパーの水分率が3〜5%程度低下し、マイクロカプセルのティシュペーパーへの付着性が高まる。ティシュペーパー2tの水分率は、自身の吸湿性や保湿剤が塗布されていればその保湿剤の吸湿作用によって、適宜に回復する。
以上のとおり、本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法では、マイクロカプセルの崩壊や傷がはいることが効果的に防止され、高い歩留まりでマイクロカプセルをティシュペーパー原紙に付与することができる。ここで、上記例はロータリー式インターフォルダによる製造方法例であるが、本発明は、必ずしもこの形態に限られない。但し、上記のロータリー式インターフォルダのように、原反ロールからティシュペーパー原紙を繰出した後、巻き取り工程を経ることなく折畳み積層までを行う製造過程で塗布液を塗布するほうがマイクロカプセルへの物理的刺激が少なく製造時の崩壊が防止されるためより望ましい。マルチスタンド式インターフォルダであっても適用可能である。但し、マルチスタンド式インターフォルダは、多数の折畳み機構部を有する装置であるため、ローターダンプニング式塗布装置の薬液塗布装置の数が多数必要になるとともに、連続する積層束を搬送する必要があるため、その過程でマイクロカプセルに物理的刺激が加わりやすい。よって、これらの設備規模や機器洗浄の点等においてロータリー式インターフォルダで製造する製造方法の方が優れる。
さらに、本実施形態のティシュペーパー製品の製造方法は、マイクロカプセルが崩壊しないようにティシュペーパーに付与しつつ、特に、ティシュペーパーを収納箱から引き出しただけでマイクロカプセルの効果が発揮されるようにすべく、特徴的な収納箱にティシュペーパー束を挿入するようにするのが望ましい。収納箱への収納方法は、上記説明のとおりであるが、その特徴的な収納箱の構成については、後述のティシュペーパー製品を説明する中で説明する。
(ティシュペーパー製品)
次いで、本実施形態に係るティシュペーパー製品100を、図7〜図15を参照しながら説明する。本実施形態のティシュペーパー製品100は、薬液を封入したマイクロカプセルが付与された複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ積層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に環状に閉じた部分を有する取出口形成用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に取出口形成用ミシン目線20の裂開により形成される取出口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパー2tの一部が取出し口20Xから露出される、所謂ポップアップ形式のものである。ティシュペーパー束2の製造方法は、上記のティシュペーパー製品の製造方法にしたがって製造することができる。
他方で、ティシュペーパー束2が収納される収納箱1は、カートン箱やカートンとも呼ばれる例えば直六面体形状であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、特徴的に、上面11に取出口20Xを形成するための取出口形成用ミシン目線20を有する箱体10を有し、前記取出口形成用ミシン目線20により囲まれる範囲20aが紙箱内側から第一シート材31と第二シート材32とによって覆われている。
箱体10の素材、大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の箱体の構成を採用することができる。素材としては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材や、プラスチック素材、樹脂素材が採用できる。好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m2のコートボール紙である。また、この種の一般的な収納箱の大きさは、長手縁の長さL1が110〜320mm、短手縁の長さL2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本実施形態に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
本実施形態の箱体10の構造は、図8、図9に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、各フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。但し、本発明のティシュペーパー製品の箱体10は、この構造に限定されるわけではない。
他方、箱体10の上面に形成される取出口形成用ミシン目線20は環状をなし、適宜のカットタイ比で構成されている。取出口形成用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
本実施形態に係る取出口形成用ミシン目線20は、箱体長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、取出口形成用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状である。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例を示している。
他方、本実施形態に係るティシュペーパー製品100では、上記のとおり取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aが収納箱内面に貼付された第一シート材31と第二シート材32とによって被覆されている。そして、それら第一シート材31及び第二シート材32は、紙箱上面11の内側面11iにおいて、特に取出口形成用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲の外方において接着剤40により箱体10に接着されているとともに、特に、それらの縁部31E,32Eが前記取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの短手方向中央部において、収納箱外面側からこの順でかつ自由な状態で積層されている。したがって、収納箱内のティシュペーパー2t,2tは、第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aを通って取出口20Xを介して収納箱外に取り出されるようになっている。このように第一シート材31と第二シート材32とを配置することで、取出口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部が各シート材31,32によって支持されて収納箱内部に落ち込むことが防止される。それとともに、第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aをティシュペーパー2tが通る際に、ティシュペーパー2tが第一シート材31の縁部31Eと第二シート材32の縁部32Eとに挟まれるようにして接し、それら縁部31E,32Eによって擦られることになるため、ティシュペーパー2tが取り出される際に、各シート材31,32の縁部31E,32Eによってティシュペーパー2tに適度な物理的な刺激が加わり、付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や、崩壊の助長がなされ、この時点で薬液の機能が発揮されるものとなる。例えば、薬液が香料であれば香気が発せられるようになる。これについて従来の一般的なティシュペーパー製品との対比で説明すると、従来の一般的なティシュペーパー製品では、周知のとおり、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が一枚の単一のシート材で被覆されており、そのシート材の取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲にスリットを形成して、このスリットからティシュペーパーを取り出すようにして、スリット間にティシュペーパーを支持するようになっている。しかし、この従来構成のティシュペーパー製品では、ティシュペーパーの取出時にティシュペーパーがスリットの縁若しくはその極近傍にしか接しないため、取出時にティシュペーパーに対して与える物理的刺激が弱く、マイクロカプセルが崩壊し難い。本実施形態のティシュペーパー製品100では、このような従来製品に比して、ティシュペーパー2tが取り出される際にシート材31,32が与える物理的な刺激が高められており、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊が助長され、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮される状態となるのである。
他方で、図示のティシュペーパー製品100では、第一シート材31と第二シート材32の積層部分30aは、収納箱1の長手方向に沿って、またティシュペーパー束2の折畳み縁2Eに沿って、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向の端20eまで延在されている。このような積層部分30aの配置形態は、箱体10に対して二枚のシート材をその縁部が重なるようにして貼付するだけで容易に形成することができるとともに、ティシュペーパー束2の収納態様との関係で取出時におけるティシュペーパー2tと当該各縁部31E,32Eが擦れやすくなるため望ましい。なお、図示の形態では、第一シート材31及び第二シート材32の当該各縁31e,32eは、収納箱1の長手方向に沿って直線に形成されているが、例えば、山形や波形の縁であってもよい。
第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32Eの重なり幅L4としては、3〜30mm、より好適には10〜20mmであるのが望ましい。3mm未満であると、ティシュペーパー2tと縁部31E,32Eとの擦れが十分ではなく、マイクロカプセルの崩壊を助長する効果が十分に発揮されないおそれがある。また、30mmを超えると、収納箱内のティシュペーパー2tを取り出し難くなる、特に、未使用の状態からティシュペーパー束2の最上部のティシュペーパー2tを取り出す際の取出しがし難くなる。
他方、本発明に係るティシュペーパー製品100に係る収納箱1は、図12に示すように、第一シート材31及び第二シート材32に加えて、さらに、第二シート材32よりも収納箱内面側に第三シート材33を設けてもよい。この場合、第一シート材31、第二シート材32及び第三シート材33が、その各縁31e,32e,33eが互い違いに位置するように、また、前記第一シート材31と第三シート材33の縁部31E,33Eとの間に、第2シート材32の縁部32Eが介在されるようにして、各シート材31,32,33の縁部31E,32E,33Eが自由な状態となるように積層する。また、第二シート材32と第三シート材33の縁部32E,33Eの重なり幅は、第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32EのL4と同等であるのが望ましい。この形態では、収納箱内のティシュペーパー2tが、第三シート材33と第二シート材32との積層部分30b及び第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aをこの順に通り、その過程で特に第二シート材32の縁32eを巻き込むようにして、ティシュペーパー2tが折り返されるようにして、収納箱外に取り出されるようになる。この際、ティシュペーパー2tは、第三シート材33と第二シート材32との積層部分30b及び第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aにおいて各シート材31,32、33の各縁部31E,32E,33Eで擦られるため、ティシュペーパー2tが取り出される際にシート材が与える物理的な刺激がより高められ、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や崩壊の助長がより高められ、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮されるようになる。
他方で、本発明に係るティシュペーパー製品100の収納箱は、さらに、図13〜図15に示すように、特に、第一シート材31の縁部31Eに、その縁31eに対して非平行な複数の切り込み31Sを入れて、その縁部31Eを複数の縁片31pからなるのれん状に形成してもよい。なお、図13〜図15に示す形態は、第一シート材31と第二シート材32のみを有する形態であるが、図12に示す第三シート材33を有する形態においても、同様に第一シート材31の縁部31Eをのれん状にする構成を採用できる。この第一シート材31の縁部31Eがのれん状になっている形態では、特に、図13及び図14に示されるように、第一シート材31の縁部31Eを構成する各縁片31p,31p…が、互いに自由に動くようになるため、収納箱1から取り出されるティシュペーパー2tの紙面に各縁片31p,31p…が追従して接するようになり、よりティシュペーパー2tが、特に第一シート材31の縁部31Eによって擦られることになり、ティシュペーパー2tの引き出し時にシート材31,32がティシュペーパーに与える物理的な刺激がより一層高められ、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊及び助長がより一層高められる。
ここで、第一シート材31をのれん状に形成する切り込み31Sの最奥基端31xの位置としては、第二シート材32の縁32eを越える位置であってもよいし、当該縁32eを越えない位置であってもよい。但し、第二シート材32の縁32eを越える位置とする場合には、過度に奥深く切り込みを入れると、取出口20Xから一部露出するティシュペーパーの支持性が低下するので、過度に奥深く切り込みを入れる、すなわち、縁片31p,31p…が過度に長くするようにしないようにする。特に、この形態では、第二シート材32の縁32eから±1mmの位置に第一シート材31の縁部31Eの切り込み31Sの最奥基端31xが位置するようにするのが望ましい。第二シート材32の縁32eからこの範囲に最奥基端31xが位置するようにして、第一シート材31の縁部31Eをのれん状にすると、ティシュペーパー2tの支持性と、各シート材31,32の縁部31E,32Eがティシュペーパー2tに与える物理的な刺激とのバランスが良好となる。
各シート材31、32、33の具体的な素材としては、ティシュペーパー製品100の取出口に設けられる公知の樹脂製フィルム、紙、樹脂層と紙層とを有する複合シート(ラミネートシート)などを用いることができる。但し、特に、本発明において好適な各シート材31,32、33の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートである。これらの素材は、適度な柔軟性を有し、特に各シート材31,32,33の縁部31E,32E,33Eが重なるように本発明特有の積層構造をとる場合に、ティシュペーパー2tの紙面に適度に追従して、ティシュペーパー2tを擦ってマイクロカプセルの崩壊を効果的に発現・助長するとともに、ティシュペーパー2tの支持性にも優れる。なお、各シート材31,32,33の素材は、全て同じとしてもよいし、異ならしめてもよい。
また、各シート材31,32,33の厚みは、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲を被覆するようにして設けられる公知のシート材の素材であれば、10〜150μmである。特に、本発明に係る好適な各シート材31,32,33の素材と厚みとの組み合わせは、上述の本発明の特有の効果の観点から、ポリエチレンであれば30〜150μm、ポリプロピレンであれば10〜100μm、ポリエチレンテレフタレートであれば5〜60μmである。したがって、本発明は、このシート材と厚みとの組み合わせの中から選択するのが特に望ましい。
また、特に、第一シート材31、第二シート材32とでは、収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31よりも硬度の高いものとするのがよい。収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31より硬度の高いものとすると、ティシュペーパー2tと各シート材31,32との擦れがより効果的になり、また、ポップアップ性もより良好になるので望ましい。第三シート材33を設ける場合においても同様である。なお、ここでの硬度とはJIS K7202−2にて測定されるロックウェル硬度を意味する。その具体的な数値までは限定されない。ティシュペーパー2tの組成・物性によって適宜に調整することができる。硬度の差異は、各シート材31,32,33を異種素材の組み合わせとする、又はシート材31,32,33の厚みに差を設けることにより、達成することが可能である。
他方、本実施形態に係るティシュペーパー束2の構成をより具体的に説明すると、本実施形態に係るティシュペーパー束2は、上記製造方法の説明から明らかなとおり、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されているものである。なお、ここで実質的にとは、製造上形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。
そして、本実施形態のティシュペーパー製品100では、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出口20Xから最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本実施形態におけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。このティシュペーパー束2は、上記のとおりロータリー式インターフォルダ等により製造される。
ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有し、上記ティシュペーパー製品の製造方法で述べたとおり、薬液を封入したマイクロカプセルが付与されたものとなっている。ティシュペーパーには、上述のとおり、全面的にマイクロカプセルが付与されていてもよいが、ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置のみに、マイクロカプセルが付着されているようにしてもよい。
なお、本実施形態に係るティシュペーパー2tを構成する薄葉紙の原料パルプとしては、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
また、本発明に係るティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは10〜25g/m2、より好ましくは11〜16g/m2である。米坪が10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
他方、本発明に係るティシュペーパー2tの紙厚は、100〜180μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。なお、ティシュペーパー2tが複数プライの場合は、複数プライで測定する。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパー2tとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、180μm超では、ティシュペーパー2tの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
なお、紙厚及びシート材31,32,33の厚みの測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
以上のとおり、本発明に係るティシュペーパー製品は、ティシュペーパー2tを収納箱から引き出す際にマイクロカプセルの崩壊が助長されるようになっており、製造時にマイクロカプセルの崩壊が防止されるようにティシュペーパーに付与しても、そのマイクロカプセルの効果が充分に発揮される。
本願発明の実施例1〜7と、試験例1〜5に係るティシュペーパー製品を作成し、各例についてティシュペーパーの取出し性とティシュペーパーの取り出しにともなう香りの発現具合(表中、「取出しによる香り立ち」と表記)を官能評価にして試験した。
各例に係る構成は、表1中に示すとおりであり、ティシュペーパーの収納箱の寸法、取出口(取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲の形状及び大きさ)、ティシュペーパーの枚数、スリット長さ(シート材縁の長さ)、香料種等については、各例において同一とした。なお、試験例は、単一のシート材で、スリットについては、従来一般的構成の直線切り込み態様によって形成している。
また、ティシュペーパーは、汎用品として広く普及している薄手のタイプと、薬液等が付与される等した高級品の厚手のタイプのものが市販されているため、それを想定した二種類のティシュペーパーを用いた。表中Aが薄手タイプ、Bが厚手タイプである。Aの物性は、坪量11.2g/m2、紙厚135μm、乾燥引張強度(縦)273cN/25mm、乾燥引張強度(横)108cN/25mm、湿潤引張強度(縦)109cN/25mm、湿潤引張強度(横)39cN/25mm、MMD7.3、ソフトネス0.98cNであり、Bの物性は、坪量16.7g/m2、紙厚157μm、乾燥引張強度(縦)234cN/25mm、乾燥引張強度(横)66cN/25mm、湿潤引張強度(縦)98cN/25mm、湿潤引張強度(横)41cN/25mm、MMD6.5、ソフトネス0.77cNである。
香料は揮発性が高く、マイクロカプセルの崩壊により放出されやすいメントール香料とした。また、ティシュペーパーへのマイクロカプセルの付与は、すべてローターダンプニング式塗布装置によって塗布した。
官能評価の取出し性については、収納箱からティシュペーパーを一枚ずつ取り出した際に、スムーズに取り出せるか否か、引っかかりがあるか否か、ティシュペーパーが破れるか否か等の点を評価して、総合的に次記のとおり5段階で評価した。5=良い、4=やや良い、3=どちらでもない、2=やや悪い、1=悪い。香り立ちについては、ティシュペーパーを引きだした際に香りが発生するか否かの観点から評価した。評価は次記のとおり4段階で評価した。4=強く香る、3=はっきりと香る、2=やや香る、1=殆ど香らない又は全く香らない。
表1のとおり、実施例1〜7は、シート材の枚数や第一シート材と第二シート材、第三シート材の材質や厚み等を変えたものであるが、各例において評価は異なるものの、取出し性については、全ての例でやや良い以上の結果であり、香り立ちについても全ての例で香りが感じられるとの評価となった。特に3層構造の実施例4〜6ではすべて香りの発現具合が強く香るとの良好な結果となった。同素材で第一シート材よりも第二シート材の厚みが薄く、第一シート材よりも第二シート材の硬度が低い実施例7は、香り立ちの評価について他の実施例よりもやや低い評価となったものの取出し時に香りが感じられるとの評価が得られた。
対して、単一シート材で厚み・素材とも従来品と同等の素材に構成の試験例1及び試験例2では、取出し性については良好な評価が得られたものの香り立ちについては香りが殆ど感じられないか又は全く感じられないとの結果となった。試験例3及び試験例4は、試験例1及び試験例2と構造的には同一で、ティシュペーパーとシート材との擦れを高めるべく、素材及び厚みを変更してシート材の硬度を高め、さらにティシュペーパーも厚手タイプを用いて香り立ちの評価を改善するように試みた例であるが、これら試験例3及び試験例4では、香り立ちの評価の改善はなされたが、特にスリットの両端部で取出し時にティシュペーパーが破れてしまうことが確認され、取り出し性が悪化するとの結果となった。また、試験例5は、試験例4においてティシュペーパーを薄手タイプに変更したものであるが、ティシュペーパーの厚さを薄くしても、取出性の改善は殆どみられず、取出し性の悪化はシート材の構成が大きく影響する結果となった。
これらの結果を整理すると、まず実施例1〜7及び試験例1〜5は、すべてローターダンプニング式塗布装置でマイクロカプセルを塗布しており、そのうちフィルムとの摺れが発現しやすい態様の実施例にかかる収納箱構造のものでは香りが発現し、試験例1〜5の構造の収納箱構造で香りが弱い傾向となった。してみれば、本発明にしたがってローターダンプニング式塗布装置によってマイクロカプセルをティシュペーパー原紙に付与すると、マイクロカプセルが崩壊しがたい状態で付与されるということがいえる。そして、そのようなマイクロカプセルが崩壊しがたいように付与したティシュペーパーであっても、本発明にかかる構造の収納箱と合わせることで、ティシュペーパーの取出し性を十分に確保しつつも、マイクロカプセルを崩壊させて使用時に香り立ちの効果が発揮されるティシュペーパー製品とすることができるといえる。
200…ロータリー式インターフォルダ、50…原反ロール支持部、51A,51B…原反ロール、52A,52B…ティシュペーパー原紙、53A,53B…カットされたティシュペーパー原紙、60…折畳み機構部、61A,61B…フォールディングロール、62A,62B…ナイフロール、63A,63B…刃、F…回転方向先端側部分、B…回転方向末端側部分、C…回転方向中間部分、64A,64B…タッカー、70…積層束、80…ローターダンプニング式塗布装置、81…ローターダンプニングユニット、82…ロータ、CL…塗布液、83…シャッタ、1…収納箱(紙箱)、2…ティシュペーパー束、100…ティシュペーパー製品、2t…ティシュペーパー、20…取出口形成用ミシン目線、20X…取出口、10…箱体、20a…取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲(取出口形成部)、31…第一シート材、32…第二シート材、33…第三シート材、L1…収納箱(紙箱)の長手縁の長さ、L2…収納箱(紙箱)の短手縁の長さ、L3…収納箱(紙箱)の高さ、12…収納箱(紙箱)底面、12A…糊代部、13…収納箱(紙箱)長側面、14…収納箱(紙箱)短側面、FL…フラップ、21…取出口形成用ミシン目線の長辺、22…裂開用ミシン目線の短辺、11…収納箱(紙箱)上面、11i…収納箱(紙箱)上面の内側面、40…接着剤、31E…第一シート材の縁部、32E…第二シート材の縁部、33E…第三シート材の縁部、31e…第一シート材の縁、32e…第二シート材の縁、33e…第三シート材の縁、30a…第一シート材と第二シート材との積層部分、30b…第二シート材と第三シート材との積層部分、L4…第一シート材の縁部と第二シート材の縁部との重なり幅、31S…第一シート材縁部の切り込み、31p…縁片、31x…切り込みの最奥基端、2E…ティシュペーパー束の折畳み縁、20e…取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向の端。
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパー製品の製造方法、及び薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパー製品に関する。
収納箱内にティシュペーパーの束を収納し、収納箱上面の取出口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するようにしたティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、ポップアップ式とも称され、一枚を取り出すとそれに連続して、次の一枚の一部が取出口から引き出されるようになっている。
この種のティシュペーパー製品の中には、薬液を封入したマイクロカプセルを収納箱内に収納するティシュペーパーに付与したものがある。この薬液を封入したマイクロカプセルを付与したティシュペーパーは、ティシュペーパーを収納箱から取り出す際のティシュペーパーに加わる物理的な刺激や使用者が手などによってティシュペーパーに与える物理的な刺激によって、マイクロカプセルを崩壊させて薬液による機能を発揮させるようにする。薬液としては、香料が代表的である。
従来、このようなマイクロカプセルを付与したティシュペーパーの製造は、まず、プライ設備で複数プライが積層されたティシュペーパー原紙を巻き取って原反ロールを製造し、次いで、この原反ロールをグラビア印刷装置やフレキソ印刷装置などのロール転写設備に移送して、香料等の薬液を封入したマイクロカプセルをバインダーや保湿剤等に混合して調整した塗布液を塗工し、再度、巻き取ってマイクロカプセルが付与された原反ロールを製造し、さらに、これをインターフォルダと称される折畳み設備に移送してセットし、係る原反ロールからティシュペーパー原紙を繰り出して折り畳むようにして製造されている。
ところで、香料等の薬液を封入したマイクロカプセルをティシュペーパーに付与する場合、ロール転写設備でマイクロカプセルを転写する工程、巻き取りや折畳み設備に原反ロールをセットする工程、原紙を繰り出して折り畳むまでの搬送工程などにおいて、物理的刺激によってマイクロカプセルが崩壊するため、これがマイクロカプセルの歩留まりを悪化させる要因となっている。また、マイクロカプセル崩壊に伴う製造設備に付着した香料等の洗浄作業を煩雑にしている。
その一方で、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、歩留まりや洗浄の問題は改善されるものの、マイクロカプセルにヒビ、傷などがはいった完全に崩壊しないまでも崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの存在も低下し、また、製造時の崩壊によって意図せずともティシュペーパーに付着する香料等の量も低下する。そして、このような製造時における崩壊しやすい状態のマイクロカプセルの発生は、例えば、香料等のティシュペーパーの付着によってティシュペーパーに香りを付与することを補助する効果がある。
したがって、マイクロカプセルの崩壊が極力ないようにティシュペーパーに付与すると、使用者が収納箱からティシュペーパーを取り出しても、香りが十分に発せられなくなる等の新たな問題のおそれがある。特に、香料の場合、この問題は、メントール系、ミント系等の揮発性の高い香料において懸念される。
特開2012−196382号公報
特許第5225591号
特許第5479973号
そこで、本発明の主たる課題は、マイクロカプセルを崩壊しないようにティシュペーパーに付与するティシュペーパー製品の製造方法、さらに、使用時にティシュペーパーを取り出した際にマイクロカプセルが崩壊しやすく、その際にマイクロカプセルに封入した薬液による機能が効果的に発せられるティシュペーパー製品の製造方法と、そのようなティシュペーパー製品を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔第1の参考発明〕
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパーがポップアップ式に折畳み積層されてなるティシュペーパー束が収納箱に収納されたティシュペーパー製品の製造方法であって、
原反ロールから繰り出されたティシュペーパー原紙に対して、マイクロカプセルを含む塗布液をローターダンプニング式塗布装置によって塗布する工程を有する、
ことを特徴とするティシュペーパー製品の製造方法。
〔第2の参考発明〕
ティシュペーパー原紙に塗布液を塗布した後、塗布液が塗布されたティシュペーパー原紙を巻き取ることなく、折り畳みと積層とを行なって積層束を形成し、その積層束を裁断してティシュペーパー束を収納箱に収納する、上記第1の参考発明に係るティシュペーパー製品の製造方法。
〔第3の参考発明〕
複数プライのティシュペーパー原紙が巻き取られた原反ロールをロータリー式インターフォルダにセットし、その原反ロールから前記ティシュペーパー原紙を繰り出して折畳み積層を行なうまでの間で前記塗布液をティシュペーパー原紙に塗布する上記第1又は第2の参考発明に係るティシュペーパー製品の製造方法。
〔第4の参考発明〕
ロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の直前で塗布液を塗布する上記第3の参考発明に係る請求項3記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔第5の参考発明〕
ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、塗布液を塗布する、上記第1〜第4の参考発明に係るティシュペーパー製品の製造方法。
〔第6の参考発明〕
前記塗布液が、保湿剤を含む請求項1〜5記載のティシュペーパーの製造方法。
〔第7の参考発明〕
ティシュペーパー束を、上面に取出口形成用ミシン目線が形成された箱体を有し、その取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が箱体内面に貼付された第一シート材と第二シート材とによって被覆されているとともに、前記第一シート材の縁部と前記第二シート材の縁部とが、前記取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲において箱体外面側からこの順でかつ互いに自由な状態で積層されている収納箱に、収納する、請求項1〜6の何れか1項に記載のティシュペーパー製品の製造方法。
〔請求項1記載の発明〕
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパーがポップアップ式に折畳み積層されてなるティシュペーパー束が収納箱に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記収納箱が、上面に取出口形成用ミシン目線が形成された箱体を有し、その取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が収納箱内面に貼付された第一シート材と第二シート材とによって被覆されているとともに、前記第一シート材の縁部と前記第二シート材の縁部とが、前記取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲において収納箱外面側からこの順でかつ縁部間をティシュペーパーが通過可能な状態で積層されたものであり、
前記収納箱内のティシュペーパー束から、ティシュペーパーが、第一シート材と第二シート材との積層された縁部間を通って収納箱外に取り出されるように構成され、かつ、前記収納箱内面側に位置する前記第二シート材の硬度が、前記第一シート材よりも高い、
ことを特徴とするティシュペーパー製品。
〔請求項2記載の発明〕
薬液が封入されたマイクロカプセルが付与されたティシュペーパーがポップアップ式に折畳み積層されてなるティシュペーパー束が収納箱に収納されたティシュペーパー製品であって、
前記収納箱が、上面に取出口形成用ミシン目線が形成された箱体を有し、その取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が収納箱内面に貼付された第一シート材と第二シート材とによって被覆されているとともに、前記第一シート材の縁部と前記第二シート材の縁部とが、前記取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲において収納箱外面側からこの順でかつ縁部間をティシュペーパーが通過可能な状態で積層されたものであり、
前記収納箱内のティシュペーパー束から、ティシュペーパーが、第一シート材と第二シート材との積層された縁部間を通って収納箱外に取り出されるように構成され、かつ、その第一シート材の縁部に、その縁に対して非平行な複数の切り込みが形成さ、前記縁部が複数の縁片からなるのれん状に形成されている、
ことを特徴とするティシュペーパー製品。
〔請求項3記載の発明〕
前記ティシュペーパーは、そのティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、マイクロカプセルが付着されている、請求項1又は2記載のティシュペーパー製品。
以上の本発明の請求項記載の発明及び参考発明により、マイクロカプセルが崩壊しないようにティシュペーパーに付与することができるティシュペーパー製品の製造方法、さらに、使用時にティシュペーパーを取り出した際にマイクロカプセルが崩壊しやすく、その際にマイクロカプセルに封入した薬液による機能が効果的に発せられるティシュペーパー製品の製造方法と、そのようなティシュペーパー製品が提供される。
本発明に係るティシュペーパー製品の製造方法例を示す工程概略図である。
本発明に係るロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の一例を説明するための図である。
本発明に係るティシュペーパー束の収納箱への収納態様を示す図である。
本発明に係る塗布液の塗布態様を説明するための図である。
本発明に係るローターダンプニング式塗布装置の例を説明するための断面図である。
本発明に係る塗布液の他の塗布態様を説明するための図である。
本発明に係るティシュペーパー製品の斜視図である。
本発明に係る収納箱の展開図の例である。
本発明に係るティシュペーパー製品の構造を説明するための斜視図である。
本発明に係るティシュペーパー製品の使用時の斜視図である。
図10のA−A断面を模式的に表した断面図である。
本発明の他の実施形態に係るティシュペーパー製品の断面図である。
本発明に係る別の実施形態に係るティシュペーパー製品の構造を説明するための斜視図である。
本発明に係る別の実施形態に係るティシュペーパー製品の使用時の斜視図である。
図14のD−D断面を模式的に表した断面図である。
次いで、本発明の実施形態の図面を参照しながら説明する。
(ティシュペーパー製品の製造方法)
まず、本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法を、図1〜図6及び図8を参照しながら、ロータリー式インターフォルダを用いた製造方法を例として説明する。
本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法では、まず、ロータリー式インターフォルダ200の原反ロール支持部50に、ティシュペーパー原紙を巻き取った原反ロール51A,51Bを一対セットする。
原反ロール51A,51Bは、抄紙設備において紙料(望ましくは古紙パルプを含まないバージンパルプ100%のパルプ繊維)からクレープを有する単層のティシュペーパー原紙を抄造し、これを一旦、巻き取って一次原反ロール(一般にジャンボロールともいわれている)を製造し、次いで、この一次原反ロールを公知のプライ設備にセットし、複数の一次原反ロールから繰り出した単層のティシュペーパー原紙を重ね合わせて、適宜に連続方向にスリットして巻き取って製造することができる。この原反ロールは、複数プライのティシュペーパー原紙が巻かれたものとなる。
ロータリー式インターフォルダ200では、セットされた一対の原反ロール51A,51Bから各々ティシュペーパー原紙52A,52Bを繰り出し、フォールディングユニットとも称される折畳み機構部60に供給して折畳みと積層とを行なう。ロータリー式インターフォルダ200における折畳み機構部60は、一対のフォールディングロール61A,61Bを有しており、各フォールディングロール61A,61Bにそれぞれの原反ロール51A,51Bからのティシュペーパー原紙52A,52Bが供給され、各々がカットされて重ね合わせられた後、折り畳まれて積層される。
ロータリー式インターフォルダ200の折畳み機構部60の具体的な一例を、図2に示す。この折畳み機構部60は、フォールディングロール61A,61Bと対をなして回転するナイフロール62A,62Bを有し、そのナイフロールの刃63A,63Bが適当間隔でフォールディングロール61A,61B上に位置するティシュペーパー原紙52A,52Bに接触させて、ティシュペーパー原紙52A,52Bを幅方向にカットし、上流のティシュペーパー原紙と切り離す。カット幅は、ティシュペーパーの幅(長さ)である。カットされたティシュペーパー原紙53A,53Bは、適宜のバキューム機構で、回転方向先端側部分Fと回転方向末端側部分Bとそれらの中間位置となる回転方向中間部分Cが前記フォールディングロール上に貼り付けられるようにして支持されて下流に送られる。
上記一対のフォールディングロール61A,61Bは、それぞれカットされたティシュペーパー原紙の支持位置が、そのティシュペーパー原紙の回転方向の距離の1/2ずれた位置関係になっており、各フォールディングロール61A,62Bが最も近接する位置において、一方のフォールディングロール61A上のティシュペーパー原紙の回転方向先端側部分Fと他方のフォールディングロール61B上のティシュペーパー原紙の回転方向中間部分Cとが一致して付き合わされる。
各々のフォールディングロール61A,61Bは、その最近接位置で、一方のティシュペーパー原紙の回転方向先端部分Fが、他方のティシュペーパー原紙の回転方向中間部分Cに引き込まれるようにそれぞれバキューム機構が制御され、これによって各々のティシュペーパー原紙53A,53Bが積層されるとともに折り畳まれる。その折畳みと積層とが順次行なわれるともにタッカー64A,64Bによって積み重ねられ、積層束70が形成される。
なお、本発明に係るロータリー式インターフォルダの折畳み機構部は、上記例に限定されるものではなく、その他の折畳み機構部とすることができる。ロータリー式インターフォルダの折畳み機構部の他の構成は、例えば、特開2015−16355等に開示される。
なお、ロータリー式インターフォルダは、その折畳み機構部の構成は種々存在するが、折り畳みによって形成される折り縁がCD方向(ティシュペーパー原紙の流れ方向に直行する方向)に沿う方向となる点で共通する。また、一般に、連続するティシュペーパー原紙の先端部分を切り離した後に折畳みを行なうため、折畳みの際に張力が係らず折り品質に優れるという利点を有している。
ロータリー式インターフォルダ200の折畳み機構部60で形成された積層束70は、原反ロール51A,51Bの幅であり長尺であるため、次の裁断工程(図示されない)によりティシュペーパー製品に適した長さ、例えば、収納箱1の長手方向より若干短い長さに裁断(切断)されてティシュペーパー束2とする。
得られたティシュペーパー束2は、図3に示すように、収納箱1に収納する。具体的には、図8に示すように、展開状態が、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13と、それらの各面から延出する各フラップFL,FL…と、底面12から延在する糊代部12Aとを有し、前記底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、各フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成する構造の収納箱を、図3に示すように、一方の短側面を構成する各フラップが開いた状態、すなわち一方端面が開口された状態に半完成の状態に組立て、その開口部に対面するようにティシュペーパー束2の裁断面を付き合わせ、プッシュロッド(図示されない)等によって収納箱内へ押し込む。ティシュペーパー束2が収納箱内に押し込まれたら、開いているフラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着材等により接着する。この接着によって本発明のティシュペーパー製品の製造は完了する。
なお、ロータリー式インターフォルダ200により製造したティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tの方向は、図示のとおり、ティシュペーパー2tの折り縁2Eの延在方向に沿って横方向(CD方向)となり、ティシュペーパー2tの折り縁2Eの延在方向と直交する方向に沿って縦方向(MD方向)となる。
したがって、上述のように収納箱1に収納された本発明によって製造されるティシュペーパー製品100は、ティシュペーパー2tを収納箱1から引き出す際には、その引き出し方向がティシュペーパー2tの縦方向(MD方向)に沿うようになる。
ここで、本実施形態に係るティシュペーパー製品100の製造方法では、特徴的に、上記ロータリー式インターフォルダ200において、原反ロール51A,51Bから繰出されたティシュペーパー原紙52A,52Bに対して折畳み機構部60に供給する前に、薬液が封入されたマイクロカプセルを適宜の溶媒に分散させた塗布液を、ローターダンプニング式塗布装置80によって塗布する。
ローターダンプニング式塗布装置80は、図4に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向に直行する方向に沿ってローターダンプニングユニット81,81…がティシュペーパー原紙52A(52B)の幅に応じて適宜の個数並べて配置されており、各ユニット81,81…から塗布液が搬送されるティシュペーパー原紙52A(52B)に対して噴霧塗布される。
ローターダンプニングユニット81,81…は、図5に縦断面を示すように、回転自在な中空円盤状のロータ82を有しており、そのロータ82がプーリー等を介して駆動源に接続され、高速で回転駆動するようになっているとともに、ロータ82内に塗布液CLを供給するように構成されている。これにより、適宜の回転数、例えば5000rpm程度の高速で回転するロータ82内の塗布液が遠心力によってロータ82の外周から噴出し、細かい霧からなる薄膜状の噴霧流が形成され、ロータ82からの噴霧流の幅をシャッタ83で規制することで、所定の噴霧塗布幅で一様に噴霧塗布する。ローターダンプニング式塗布装置80では、概ね、スプレー粒子の粒径が30〜100μm程度にすることができ、塗布量も精度よく制御できる。なお、ローターダンプニング式塗布装置の具体的製品としては、WEKO ローターダンプニング(ニッカ株式会社製)がある。
このローターダンプニング式塗布装置80は、グラビア印刷装置やフレキソ印刷装置などのロール転写設備と異なり、塗布液をティシュペーパー原紙52A(52B)に塗布する際に印圧が発生しないため、塗布時にマイクロカプセルが破裂したり傷が入ったりし難く、歩留まりが向上する。また、非接触で液体を塗布する方法として、圧搾空気を噴射媒体とするノズル式噴霧方式の塗布装置があるが、この方式は、生産効率を高めようとすると、ティシュペーパー原紙の搬送によって生ずる気流と、噴射媒体である圧縮空気がティシュペーパーに当たることにより生ずる気流とによって、塗布液のティシュペーパー原紙への定着が阻害されるようになり、ティシュペーパー原紙の裏側から吸引する等しても充分な定着率とならない。また、気化熱によりノズル口に塗布液が固着する事象も生じやすく生産性を高めるのが難しい。ローターダンプニング式塗布装置80では、圧搾空気を噴射媒体としないため気流の乱れが発生しがたく、高い定着率でティシュペーパー原紙52A(52B)にマイクロカプセルを付着させることができ、また、ノズル口に塗布液が固着するということがない。
ローターダンプニング式塗布装置80によってティシュペーパー原紙52A(52B)に対して塗布液を塗布する範囲としては、図4に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の幅方向の全体にわたって塗布してもよいが、特に、ローターダンプニング式塗布装置80では、シャッタ83によって塗布範囲を精度よく調整できるため、例えば、ティシュペーパー2tの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、前記塗布液を塗布することができる。つまり、上記のとおりロータリー式インターフォルダ200によってティシュペーパー製品を製造する場合には、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向が引き出し方向になるため、積層束70の裁断位置を考慮して、図6に示すように、ティシュペーパー原紙52A(52B)の搬送方向に沿って適宜50〜100mm程度の幅で線状となるように、シャッタ83を調整して塗布すれば、ティシュペーパー2tの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、塗布液が塗布されることになる。
ティシュペーパーは、洟をかむ用途によく用いられるが、その洟をかむさいの一般的動作は、折り縁で折られた二重折りの状態で、その折り縁に沿う方向の中央部を鼻頭近傍に当て、側方部分を両手で鼻側部に押し付けるようにして行なわれる。したがって、ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置に、前記塗布液を塗布して製造されたティシュペーパーは、上記のような洟をかむ一般動作をした際に、鼻頭から顔面の上下方向に沿う位置に塗布液が塗布されているものとなっている。つまり、鼻頭への押し当て、両手による鼻側部への押しつけの際に物理的刺激が加わる部位にマイクロカプセルが位置し、その一方で物理的刺激のない範囲にはマイクロカプセルが付与されていないものとなっている。したがって、上記塗布範囲とすると、マイクロカプセルの崩壊が効果的に行なわれるとともに、不要なマイクロカプセルが付与されていないものとなり、高価なマイクロカプセルの使用量を減少させつつ、また、マイクロカプセルの崩壊を防止しつつ塗布しても、マイクロカプセルの効果が充分に発揮されるティシュペーパー、さらにその製品が製造される。
ロータリー式インターフォルダ200中におけるローターダンプニング式塗布装置80によって、ティシュペーパー原紙52A(52B)に対して塗布液を塗布する位置としては、図1に示すように折畳み機構部60の直前であるのが望ましい。折畳み機構部60の直前であれば、ティシュペーパー原紙52A,52Bがテンションロールやガイドロールと接触する機会が極力少なく、マイクロカプセルが搬送過程で崩壊する機会が少なくなる。また、マイクロカプセルは塗布液中ではある程度の柔軟性があり空気暴露によって膜材が硬化するのが通常である。塗布直後であれば溶媒が紙に浸透するまで若干の時間があり、数秒程度あれば膜材の柔軟性が保持される。折畳み機構部60の前段で塗布液を塗布した場合、フォールディングロール61A,61Bにおいて折畳みと積層が行なわれる過程で、マイクロカプセルに物理的な刺激が加わることになるが、その際の時間が短時間であればマイクロカプセルの弾力性が維持され、折畳み機構部60での折畳みと積層の際に崩壊するマイクロカプセルを最小に押えることができる。ここで、折畳み機構部60の直前とは、塗布から折畳みと積層が完了するまでの時間が1〜30秒の範囲であれば充分である。
他方、本発明に係るローターダンプニング式塗布装置80によって塗布する際に適する塗布液は、特にその塗布液の粘度が、塗布時(概ね15〜25℃の常温)において50mPa・S未満、特には30mPa・S以下のものである。この粘度は、従来のロール転写設備では、概ね40℃で50mPa・S以上、特に100〜300mPa・Sとされているのに比して、非常に低粘度である。このような低粘度の塗布液に調整するには、溶媒を水とするのが望ましい。水は、粘度が0.5〜1.5mPa・S程度で噴霧性に優れるとともにティシュペーパー原紙とのなじみもよく浸透性に優れ、マイクロカプセルを効果的に紙面に付着させることができる。さらに、塗布液中には、でんぷん、PVA、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等のバインダー、グリセリンなどのポリオール類、ソルビトールなどの糖アルコール類等の保湿剤を含有させることができる。これらを塗布液中に含ませる場合にも上記粘度の範囲とするのが望ましい。ここで、保湿剤は、塗布液中に含有させると保湿効果とマイクロカプセルに封入した適宜の効果の薬液とを一度にティシュペーパー原紙に付与できる点で望ましいが、保湿剤は、塗布液の粘度を高める傾向にあり、保湿効果との関係で塗布液中に含有させることが難しい場合もある。その場合には、もちろん、塗布液中に含ませるのではなく、塗布液とは別途にティシュペーパー原紙に塗布しておいてもよく、塗布液よりも先に保湿剤を塗布した場合、保湿剤塗布後に塗布液由来の水が付与されるため、ティシュペーパーの初期水分率を高める効果が期待でき、保湿性の向上がより見込める利点がある。この場合、既知の保湿剤の塗布技術によって塗布すればよい。
マイクロカプセルの膜材は、物理刺激で破壊する材質であれば使用可能であり、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースが利用できる。特に、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が取り扱いの点において優れる。また、ティシュペーパーは、吸湿し適度に水分を保持する。このため、水分によって適度に経時劣化して崩壊しやすくなる、尿素樹脂、メラミン樹脂が好適であり、尿素樹脂が膜材として特に好適である。また、保湿剤と併用する場合には、塗布液中に保湿剤を含有させるか、別途に塗布するかにかかわらず、保湿剤の吸湿作用によってティシュペーパーの水分保持性が顕著になるため、特に、保湿剤と併用する場合には、上記の尿素樹脂、メラミン樹脂が好適であり、尿素樹脂が膜材として特に好適となる。
マイクロカプセルの平均粒子径は、特に限定されない。ローターダンプニング式塗布装置で塗布できる範囲あればよい。具体的には、1〜40μm、好ましくは5〜30μm、より好ましくは10〜20μmである。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計により、マイクロカプセルスラリーにおけるマイクロカプセルの粒度分布により測定した値である。
マイクロカプセルに封入される薬液は、代表的また好適には香料であるが、その他に上記保湿剤と同種、又は油性の保湿成分を有する保湿助剤、コラーゲン、コエンザイムQ10、セラミドなどの肌補修成分などが挙げられる。
香料の具体例としては、ミント香、柑橘香、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、メントール、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。特に、マイクロカプセルに封入する薬液を香料或いはこれを含むものとするのであれば、その香料を揮発性の高いメントール、ミント香、柑橘香等とすると、マイクロカプセルが崩壊した際に瞬間的に周辺に香気が拡散することになる。本発明では、このような揮発性の高い香料もマイクロカプセルが崩壊したり、傷が入り難いため、長期間にわたって保管しても、その効果を発現することができる。
他方、本実施形態のティシュペーパー製品の製造方法においても、積層したティシュペーパー原紙同士の剥離をし難くするコンタクトエンボスを行なうのが望ましい。コンタクトエンボス付与装置は、図1に符号90で示している。図示例のように、コンタクトエンボスの付与は、塗布液の塗布前に行なうのが望ましい。塗布液の塗布後にコンタクトエンボス加工を行なうと、マイクロカプセルを崩壊させてしまうことに加え、塗布による乾燥
引張強度の減衰により、断紙の危険性が高まるためである。
なお、本実施形態のティシュペーパーの製造方法では、ロータリー式インターフォルダ200において、ローターダンプニング式塗布装置80で塗布する前に、ティシュペーパー原紙52A,52Bの乾燥工程を行なってマイクロカプセルのティシュペーパー2tへ付着性をより高めるようにすることができる。この工程は、例えば、ティシュペーパー原紙52A,52Bを、温度100〜300℃で長さ1〜3m程度の乾燥工程を搬送速度30〜150m/分で通すようにする。この場合、乾燥前のティシュペーパーの水分率が3〜5%程度低下し、マイクロカプセルのティシュペーパーへの付着性が高まる。ティシュペーパー2tの水分率は、自身の吸湿性や保湿剤が塗布されていればその保湿剤の吸湿作用によって、適宜に回復する。
以上のとおり、本実施形態に係るティシュペーパー製品の製造方法では、マイクロカプセルの崩壊や傷がはいることが効果的に防止され、高い歩留まりでマイクロカプセルをティシュペーパー原紙に付与することができる。ここで、上記例はロータリー式インターフォルダによる製造方法例であるが、本発明は、必ずしもこの形態に限られない。但し、上記のロータリー式インターフォルダのように、原反ロールからティシュペーパー原紙を繰出した後、巻き取り工程を経ることなく折畳み積層までを行う製造過程で塗布液を塗布するほうがマイクロカプセルへの物理的刺激が少なく製造時の崩壊が防止されるためより望ましい。マルチスタンド式インターフォルダであっても適用可能である。但し、マルチスタンド式インターフォルダは、多数の折畳み機構部を有する装置であるため、ローターダンプニング式塗布装置の薬液塗布装置の数が多数必要になるとともに、連続する積層束を搬送する必要があるため、その過程でマイクロカプセルに物理的刺激が加わりやすい。よって、これらの設備規模や機器洗浄の点等においてロータリー式インターフォルダで製造する製造方法の方が優れる。
さらに、本実施形態のティシュペーパー製品の製造方法は、マイクロカプセルが崩壊しないようにティシュペーパーに付与しつつ、特に、ティシュペーパーを収納箱から引き出しただけでマイクロカプセルの効果が発揮されるようにすべく、特徴的な収納箱にティシュペーパー束を挿入するようにするのが望ましい。収納箱への収納方法は、上記説明のとおりであるが、その特徴的な収納箱の構成については、後述のティシュペーパー製品を説明する中で説明する。
(ティシュペーパー製品)
次いで、本実施形態に係るティシュペーパー製品100を、図7〜図15を参照しながら説明する。本実施形態のティシュペーパー製品100は、薬液を封入したマイクロカプセルが付与された複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ積層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に環状に閉じた部分を有する取出口形成用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に取出口形成用ミシン目線20の裂開により形成される取出口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパー2tの一部が取出し口20Xから露出される、所謂ポップアップ形式のものである。ティシュペーパー束2の製造方法は、上記のティシュペーパー製品の製造方法にしたがって製造することができる。
他方で、ティシュペーパー束2が収納される収納箱1は、カートン箱やカートンとも呼ばれる例えば直六面体形状であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、特徴的に、上面11に取出口20Xを形成するための取出口形成用ミシン目線20を有する箱体10を有し、前記取出口形成用ミシン目線20により囲まれる範囲20aが紙箱内側から第一シート材31と第二シート材32とによって覆われている。
箱体10の素材、大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の箱体の構成を採用することができる。素材としては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材や、プラスチック素材、樹脂素材が採用できる。好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m2のコートボール紙である。また、この種の一般的な収納箱の大きさは、長手縁の長さL1が110〜320mm、短手縁の長さL2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本実施形態に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
本実施形態の箱体10の構造は、図8、図9に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップFL,FL…を箱内面側に折り返し、各フラップFL,FL…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。但し、本発明のティシュペーパー製品の箱体10は、この構造に限定されるわけではない。
他方、箱体10の上面に形成される取出口形成用ミシン目線20は環状をなし、適宜のカットタイ比で構成されている。取出口形成用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
本実施形態に係る取出口形成用ミシン目線20は、箱体長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、取出口形成用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状である。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例を示している。
他方、本実施形態に係るティシュペーパー製品100では、上記のとおり取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aが収納箱内面に貼付された第一シート材31と第二シート材32とによって被覆されている。そして、それら第一シート材31及び第二シート材32は、紙箱上面11の内側面11iにおいて、特に取出口形成用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲の外方において接着剤40により箱体10に接着されているとともに、特に、それらの縁部31E,32Eが前記取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの短手方向中央部において、収納箱外面側からこの順でかつ自由な状態で積層されている。したがって、収納箱内のティシュペーパー2t,2tは、第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aを通って取出口20Xを介して収納箱外に取り出されるようになっている。このように第一シート材31と第二シート材32とを配置することで、取出口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部が各シート材31,32によって支持されて収納箱内部に落ち込むことが防止される。それとともに、第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aをティシュペーパー2tが通る際に、ティシュペーパー2tが第一シート材31の縁部31Eと第二シート材32の縁部32Eとに挟まれるようにして接し、それら縁部31E,32Eによって擦られることになるため、ティシュペーパー2tが取り出される際に、各シート材31,32の縁部31E,32Eによってティシュペーパー2tに適度な物理的な刺激が加わり、付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や、崩壊の助長がなされ、この時点で薬液の機能が発揮されるものとなる。例えば、薬液が香料であれば香気が発せられるようになる。これについて従来の一般的なティシュペーパー製品との対比で説明すると、従来の一般的なティシュペーパー製品では、周知のとおり、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲が一枚の単一のシート材で被覆されており、そのシート材の取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲にスリットを形成して、このスリットからティシュペーパーを取り出すようにして、スリット間にティシュペーパーを支持するようになっている。しかし、この従来構成のティシュペーパー製品では、ティシュペーパーの取出時にティシュペーパーがスリットの縁若しくはその極近傍にしか接しないため、取出時にティシュペーパーに対して与える物理的刺激が弱く、マイクロカプセルが崩壊し難い。本実施形態のティシュペーパー製品100では、このような従来製品に比して、ティシュペーパー2tが取り出される際にシート材31,32が与える物理的な刺激が高められており、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊が助長され、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮される状態となるのである。
他方で、図示のティシュペーパー製品100では、第一シート材31と第二シート材32の積層部分30aは、収納箱1の長手方向に沿って、またティシュペーパー束2の折畳み縁2Eに沿って、取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向の端20eまで延在されている。このような積層部分30aの配置形態は、箱体10に対して二枚のシート材をその縁部が重なるようにして貼付するだけで容易に形成することができるとともに、ティシュペーパー束2の収納態様との関係で取出時におけるティシュペーパー2tと当該各縁部31E,32Eが擦れやすくなるため望ましい。なお、図示の形態では、第一シート材31及び第二シート材32の当該各縁31e,32eは、収納箱1の長手方向に沿って直線に形成されているが、例えば、山形や波形の縁であってもよい。
第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32Eの重なり幅L4としては、3〜30mm、より好適には10〜20mmであるのが望ましい。3mm未満であると、ティシュペーパー2tと縁部31E,32Eとの擦れが十分ではなく、マイクロカプセルの崩壊を助長する効果が十分に発揮されないおそれがある。また、30mmを超えると、収納箱内のティシュペーパー2tを取り出し難くなる、特に、未使用の状態からティシュペーパー束2の最上部のティシュペーパー2tを取り出す際の取出しがし難くなる。
他方、本発明に係るティシュペーパー製品100に係る収納箱1は、図12に示すように、第一シート材31及び第二シート材32に加えて、さらに、第二シート材32よりも収納箱内面側に第三シート材33を設けてもよい。この場合、第一シート材31、第二シート材32及び第三シート材33が、その各縁31e,32e,33eが互い違いに位置するように、また、前記第一シート材31と第三シート材33の縁部31E,33Eとの間に、第2シート材32の縁部32Eが介在されるようにして、各シート材31,32,33の縁部31E,32E,33Eが自由な状態となるように積層する。また、第二シート材32と第三シート材33の縁部32E,33Eの重なり幅は、第一シート材31と第二シート材32の縁部31E,32EのL4と同等であるのが望ましい。この形態では、収納箱内のティシュペーパー2tが、第三シート材33と第二シート材32との積層部分30b及び第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aをこの順に通り、その過程で特に第二シート材32の縁32eを巻き込むようにして、ティシュペーパー2tが折り返されるようにして、収納箱外に取り出されるようになる。この際、ティシュペーパー2tは、第三シート材33と第二シート材32との積層部分30b及び第一シート材31と第二シート材32との積層部分30aにおいて各シート材31,32、33の各縁部31E,32E,33Eで擦られるため、ティシュペーパー2tが取り出される際にシート材が与える物理的な刺激がより高められ、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊の発現や崩壊の助長がより高められ、もって薬液による機能がこの時点で確実に発揮されるようになる。
他方で、本発明に係るティシュペーパー製品100の収納箱は、さらに、図13〜図15に示すように、特に、第一シート材31の縁部31Eに、その縁31eに対して非平行な複数の切り込み31Sを入れて、その縁部31Eを複数の縁片31pからなるのれん状に形成してもよい。なお、図13〜図15に示す形態は、第一シート材31と第二シート材32のみを有する形態であるが、図12に示す第三シート材33を有する形態においても、同様に第一シート材31の縁部31Eをのれん状にする構成を採用できる。この第一シート材31の縁部31Eがのれん状になっている形態では、特に、図13及び図14に示されるように、第一シート材31の縁部31Eを構成する各縁片31p,31p…が、互いに自由に動くようになるため、収納箱1から取り出されるティシュペーパー2tの紙面に各縁片31p,31p…が追従して接するようになり、よりティシュペーパー2tが、特に第一シート材31の縁部31Eによって擦られることになり、ティシュペーパー2tの引き出し時にシート材31,32がティシュペーパーに与える物理的な刺激がより一層高められ、ティシュペーパー2tに付与されたマイクロカプセルの崩壊及び助長がより一層高められる。
ここで、第一シート材31をのれん状に形成する切り込み31Sの最奥基端31xの位置としては、第二シート材32の縁32eを越える位置であってもよいし、当該縁32eを越えない位置であってもよい。但し、第二シート材32の縁32eを越える位置とする場合には、過度に奥深く切り込みを入れると、取出口20Xから一部露出するティシュペーパーの支持性が低下するので、過度に奥深く切り込みを入れる、すなわち、縁片31p,31p…が過度に長くするようにしないようにする。特に、この形態では、第二シート材32の縁32eから±1mmの位置に第一シート材31の縁部31Eの切り込み31Sの最奥基端31xが位置するようにするのが望ましい。第二シート材32の縁32eからこの範囲に最奥基端31xが位置するようにして、第一シート材31の縁部31Eをのれん状にすると、ティシュペーパー2tの支持性と、各シート材31,32の縁部31E,32Eがティシュペーパー2tに与える物理的な刺激とのバランスが良好となる。
各シート材31、32、33の具体的な素材としては、ティシュペーパー製品100の取出口に設けられる公知の樹脂製フィルム、紙、樹脂層と紙層とを有する複合シート(ラミネートシート)などを用いることができる。但し、特に、本発明において好適な各シート材31,32、33の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートである。これらの素材は、適度な柔軟性を有し、特に各シート材31,32,33の縁部31E,32E,33Eが重なるように本発明特有の積層構造をとる場合に、ティシュペーパー2tの紙面に適度に追従して、ティシュペーパー2tを擦ってマイクロカプセルの崩壊を効果的に発現・助長するとともに、ティシュペーパー2tの支持性にも優れる。なお、各シート材31,32,33の素材は、全て同じとしてもよいし、異ならしめてもよい。
また、各シート材31,32,33の厚みは、取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲を被覆するようにして設けられる公知のシート材の素材であれば、10〜150μmである。特に、本発明に係る好適な各シート材31,32,33の素材と厚みとの組み合わせは、上述の本発明の特有の効果の観点から、ポリエチレンであれば30〜150μm、ポリプロピレンであれば10〜100μm、ポリエチレンテレフタレートであれば5〜60μmである。したがって、本発明は、このシート材と厚みとの組み合わせの中から選択するのが特に望ましい。
また、特に、第一シート材31、第二シート材32とでは、収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31よりも硬度の高いものとするのがよい。収納箱内面側に位置する第二シート材32を、第一シート材31より硬度の高いものとすると、ティシュペーパー2tと各シート材31,32との擦れがより効果的になり、また、ポップアップ性もより良好になるので望ましい。第三シート材33を設ける場合においても同様である。なお、ここでの硬度とはJIS K7202−2にて測定されるロックウェル硬度を意味する。その具体的な数値までは限定されない。ティシュペーパー2tの組成・物性によって適宜に調整することができる。硬度の差異は、各シート材31,32,33を異種素材の組み合わせとする、又はシート材31,32,33の厚みに差を設けることにより、達成することが可能である。
他方、本実施形態に係るティシュペーパー束2の構成をより具体的に説明すると、本実施形態に係るティシュペーパー束2は、上記製造方法の説明から明らかなとおり、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されているものである。なお、ここで実質的にとは、製造上形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。
そして、本実施形態のティシュペーパー製品100では、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出口20Xから最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本実施形態におけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。このティシュペーパー束2は、上記のとおりロータリー式インターフォルダ等により製造される。
ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有し、上記ティシュペーパー製品の製造方法で述べたとおり、薬液を封入したマイクロカプセルが付与されたものとなっている。ティシュペーパーには、上述のとおり、全面的にマイクロカプセルが付与されていてもよいが、ティシュペーパーの引き出し方向に沿って、かつ、その引き出し方向に直行する幅方向中央部となる位置のみに、マイクロカプセルが付着されているようにしてもよい。
なお、本実施形態に係るティシュペーパー2tを構成する薄葉紙の原料パルプとしては、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
また、本発明に係るティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、好ましくは10〜25g/m2、より好ましくは11〜16g/m2である。米坪が10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
他方、本発明に係るティシュペーパー2tの紙厚は、100〜180μm、より好ましくは120〜140μmであるのが望ましい。なお、ティシュペーパー2tが複数プライの場合は、複数プライで測定する。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパー2tとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、180μm超では、ティシュペーパー2tの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
なお、紙厚及びシート材31,32,33の厚みの測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
以上のとおり、本発明に係るティシュペーパー製品は、ティシュペーパー2tを収納箱から引き出す際にマイクロカプセルの崩壊が助長されるようになっており、製造時にマイクロカプセルの崩壊が防止されるようにティシュペーパーに付与しても、そのマイクロカプセルの効果が充分に発揮される。
本願発明の実施例1〜7と、試験例1〜5に係るティシュペーパー製品を作成し、各例についてティシュペーパーの取出し性とティシュペーパーの取り出しにともなう香りの発現具合(表中、「取出しによる香り立ち」と表記)を官能評価にして試験した。
各例に係る構成は、表1中に示すとおりであり、ティシュペーパーの収納箱の寸法、取出口(取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲の形状及び大きさ)、ティシュペーパーの枚数、スリット長さ(シート材縁の長さ)、香料種等については、各例において同一とした。なお、試験例は、単一のシート材で、スリットについては、従来一般的構成の直線切り込み態様によって形成している。
また、ティシュペーパーは、汎用品として広く普及している薄手のタイプと、薬液等が付与される等した高級品の厚手のタイプのものが市販されているため、それを想定した二種類のティシュペーパーを用いた。表中Aが薄手タイプ、Bが厚手タイプである。Aの物性は、坪量11.2g/m2、紙厚135μm、乾燥引張強度(縦)273cN/25mm、乾燥引張強度(横)108cN/25mm、湿潤引張強度(縦)109cN/25mm、湿潤引張強度(横)39cN/25mm、MMD7.3、ソフトネス0.98cNであり、Bの物性は、坪量16.7g/m2、紙厚157μm、乾燥引張強度(縦)234cN/25mm、乾燥引張強度(横)66cN/25mm、湿潤引張強度(縦)98cN/25mm、湿潤引張強度(横)41cN/25mm、MMD6.5、ソフトネス0.77cNである。
香料は揮発性が高く、マイクロカプセルの崩壊により放出されやすいメントール香料とした。また、ティシュペーパーへのマイクロカプセルの付与は、すべてローターダンプニング式塗布装置によって塗布した。
官能評価の取出し性については、収納箱からティシュペーパーを一枚ずつ取り出した際に、スムーズに取り出せるか否か、引っかかりがあるか否か、ティシュペーパーが破れるか否か等の点を評価して、総合的に次記のとおり5段階で評価した。5=良い、4=やや良い、3=どちらでもない、2=やや悪い、1=悪い。香り立ちについては、ティシュペーパーを引きだした際に香りが発生するか否かの観点から評価した。評価は次記のとおり4段階で評価した。4=強く香る、3=はっきりと香る、2=やや香る、1=殆ど香らない又は全く香らない。
表1のとおり、実施例1〜7は、シート材の枚数や第一シート材と第二シート材、第三シート材の材質や厚み等を変えたものであるが、各例において評価は異なるものの、取出し性については、全ての例でやや良い以上の結果であり、香り立ちについても全ての例で香りが感じられるとの評価となった。特に3層構造の実施例4〜6ではすべて香りの発現具合が強く香るとの良好な結果となった。同素材で第一シート材よりも第二シート材の厚みが薄く、第一シート材よりも第二シート材の硬度が低い実施例7は、香り立ちの評価について他の実施例よりもやや低い評価となったものの取出し時に香りが感じられるとの評価が得られた。
対して、単一シート材で厚み・素材とも従来品と同等の素材に構成の試験例1及び試験例2では、取出し性については良好な評価が得られたものの香り立ちについては香りが殆ど感じられないか又は全く感じられないとの結果となった。試験例3及び試験例4は、試験例1及び試験例2と構造的には同一で、ティシュペーパーとシート材との擦れを高めるべく、素材及び厚みを変更してシート材の硬度を高め、さらにティシュペーパーも厚手タイプを用いて香り立ちの評価を改善するように試みた例であるが、これら試験例3及び試験例4では、香り立ちの評価の改善はなされたが、特にスリットの両端部で取出し時にティシュペーパーが破れてしまうことが確認され、取り出し性が悪化するとの結果となった。また、試験例5は、試験例4においてティシュペーパーを薄手タイプに変更したものであるが、ティシュペーパーの厚さを薄くしても、取出性の改善は殆どみられず、取出し性の悪化はシート材の構成が大きく影響する結果となった。
これらの結果を整理すると、まず実施例1〜7及び試験例1〜5は、すべてローターダンプニング式塗布装置でマイクロカプセルを塗布しており、そのうちフィルムとの摺れが発現しやすい態様の実施例にかかる収納箱構造のものでは香りが発現し、試験例1〜5の構造の収納箱構造で香りが弱い傾向となった。してみれば、本発明にしたがってローターダンプニング式塗布装置によってマイクロカプセルをティシュペーパー原紙に付与すると、マイクロカプセルが崩壊しがたい状態で付与されるということがいえる。そして、そのようなマイクロカプセルが崩壊しがたいように付与したティシュペーパーであっても、本発明にかかる構造の収納箱と合わせることで、ティシュペーパーの取出し性を十分に確保しつつも、マイクロカプセルを崩壊させて使用時に香り立ちの効果が発揮されるティシュペーパー製品とすることができるといえる。
200…ロータリー式インターフォルダ、50…原反ロール支持部、51A,51B…原反ロール、52A,52B…ティシュペーパー原紙、53A,53B…カットされたティシュペーパー原紙、60…折畳み機構部、61A,61B…フォールディングロール、62A,62B…ナイフロール、63A,63B…刃、F…回転方向先端側部分、B…回転方向末端側部分、C…回転方向中間部分、64A,64B…タッカー、70…積層束、80…ローターダンプニング式塗布装置、81…ローターダンプニングユニット、82…ロータ、CL…塗布液、83…シャッタ、1…収納箱(紙箱)、2…ティシュペーパー束、100…ティシュペーパー製品、2t…ティシュペーパー、20…取出口形成用ミシン目線、20X…取出口、10…箱体、20a…取出口形成用ミシン目線で囲まれる範囲(取出口形成部)、31…第一シート材、32…第二シート材、33…第三シート材、L1…収納箱(紙箱)の長手縁の長さ、L2…収納箱(紙箱)の短手縁の長さ、L3…収納箱(紙箱)の高さ、12…収納箱(紙箱)底面、12A…糊代部、13…収納箱(紙箱)長側面、14…収納箱(紙箱)短側面、FL…フラップ、21…取出口形成用ミシン目線の長辺、22…裂開用ミシン目線の短辺、11…収納箱(紙箱)上面、11i…収納箱(紙箱)上面の内側面、40…接着剤、31E…第一シート材の縁部、32E…第二シート材の縁部、33E…第三シート材の縁部、31e…第一シート材の縁、32e…第二シート材の縁、33e…第三シート材の縁、30a…第一シート材と第二シート材との積層部分、30b…第二シート材と第三シート材との積層部分、L4…第一シート材の縁部と第二シート材の縁部との重なり幅、31S…第一シート材縁部の切り込み、31p…縁片、31x…切り込みの最奥基端、2E…ティシュペーパー束の折畳み縁、20e…取出口形成用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの長手方向の端。