JP2020022369A - 食肉の熟成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 食肉を冷蔵するのでも冷凍するのでもない温度で長期保管しそれによって熟成を促す手法が近年脚光を浴びているが、その際の適切な温度を、ムラなく長期間維持することは容易でない。一方、海水等の塩水を溶けかけた雪状に氷結させたスラリー氷が、主として鮮魚の冷却用に使用されているが、これをそのまま長期保存に援用してもなかなか良い結果が得られない。【解決手段】 食肉を枝肉状態、或いは部分肉状態、若しくは精肉状態で低温熟成する方法であって、氷結部分と非氷結部分が混在する塩水由来のスラリー氷と、プラスチックシートによって真空包装された食肉とを、スラリー氷の水深が30cm以下となるようにして容器内に入れ、更に、スラリー氷温度が実質−3.5℃〜−1.5℃で維持されるように冷蔵庫に該容器を格納保管する。【選択図】 図2

Description

本発明は、食肉(牛肉・豚肉、その他)の低温熟成方法に関するものである。
タンパク質を多く含む食材には、凍結温度近くの低温下では、低温ストレスにさらされてタンパク質を分解し不凍物質に変える性質がある。そしてこの不凍物質が旨味・甘みとなるアミノ酸や糖類であることを利用する熟成方法が、氷温熟成(登録商標)と呼ばれ知られている。
凍結温度近くで、凍る一歩手前の温度が厳密に保持されている必要があるため、一般的な冷蔵庫では実施困難であり、温度管理・風量管理、さらにはガス濃度管理などが高精度に制御できる氷温機器を用いることが多い。
一方、近時スラリー氷、或いはスラリーアイスと呼ばれるものが、主として水産業における鮮魚冷却の場面で利用されるようになってきている。
これは、微小な氷粒子と液体が混ざり合って流動性を呈しているものであり、例えばこの液体に塩水を用いその濃度を変えることによって、氷点以下数度程度に制御できる。海水を用いた場合には、簡単に氷点下1〜2°程度のスラリー氷を得ることができる。
鮮魚の流通としてはこれまで、発泡スチロールの箱に数センチメートルの砕氷塊を詰めこの中に魚体を投入した状態で行なうのが一般的であったが、この方法では氷で魚体を傷つけることがあるし、氷と魚体との接触のあり方が一様ではないため冷やしムラができることもあり、鮮度が損なわれてしまうことが頻繁にあった。だがこうした欠点は、スラリー氷を用いることで一掃される。
特開平11−046676号公報
食肉を氷温熟成する場合を例に挙げると、上述した氷温機器は温度管理・風量管理、さらにはガス濃度管理などが高精度に制御できるものではあるが、1又は複数の吹き出し口から冷気を吐出するという機構が前提となっている。
そのため、冷気が直接当たる箇所とそうでない箇所、開閉扉に近い位置と遠い位置、等々で温度ムラが生じ、それによって食肉の温度にムラが生じることが避けられない。そこで、設計通りの熟成がなされるように、食肉の保管位置や載置の向きを頻繁に変えるなどの措置を講じなければならなかった。
即ち、専用の氷温機器を用いてもなお、食肉の正面側と背面側に瞬時に温度差が生じてしまい、そうした事態を回避するのは困難であり、更なる品質の向上は極めて困難であった。
一方スラリー氷は、塩水を用いることで氷点下数度という初期温度設定が容易であるので、通常の氷と比較すると急速に冷却するのに適していると言えるが、長時間スラリー状態が維持されるというものではないので通常は、小孔が多数穿設された容器に対象食肉(通常は鮮魚)を入れておき、その中にスラリー氷を投入する方法が一般的である。すると小孔から液体のみが排出されて、氷結部分の比率(氷充填率)が高くなってゆく。従って液体だけの場合に比して、潜熱(融解熱)分は冷却効果の高い状態が維持できる。しかし、塩分濃度の高い液体部分を排出するという工程を経るため、必然的に塩分濃度は下がる。
これは、とりあえず氷温程度まで急速に下げるという冷却目的の場合には有効であるが、塩分濃度が下がったことにより凝固点が上がったスラリー氷であると、氷点下数度という温度を適温とする食肉熟成の場合には、冷蔵設備内に置いて外部から温度を下げても、0℃に近い温度で氷結が開始される。氷結が開始されると、概ね全量が氷結するまで温度自体は下がらない。従って、それより低い温度が「適温」の場合、食肉熟成は到底困難となる。
以上の結果から、スラリー氷を冷却のために用いるのではなく、氷点下数度程度の温度を変動させることなく長時間保管しようとする場合には、小孔から液体部分を排出するという方式の容器を用いることは好ましくないことが判明した。
そこで次に本発明者は、排水孔を持たない容器を用いここに、プラスチックシートによって真空包装された食肉と、塩水由来のスラリー氷とを投入し、容器ごと冷蔵庫に入れておくという方法で実験してみた。
実験は、容量200リットルのステンレス製容器に、1個約5kgの豚肉ロース部分肉20個と、100リットルのスラリー氷(氷充填率約80%)とを投入したものを2基、−2℃程度の冷蔵庫に10日間保管する、という方法で行なった。保管に際しては、スラリー氷の氷充填率を計測する、容器内数箇所の温度を計測する、という観察も並行して行なった。ところが、好ましい結果は得られなかった。
具体的に言うと、食肉投入後初期の段階では食肉由来の温度に影響されスラリー氷の氷充填率が存外急速に低下してしまうのである。また、容器内の温度が水面近くと底面近くとで大きいものとなった(実験した範囲ではその差約3.5℃)。結果当然ながら想定していた熟成はかなわなかった。
そこでやむなく、冷蔵庫の冷却機を稼動させ庫内温度を強制的に下げて新たな氷結を促すと共に、コンテナ内の温度が均質になるように、スラリー氷を撹拌するという作業を行なうこととした。
そして、このような作業追加がなされれば食肉は極めて理想的な状態におかれることとなり、安定した品質の熟成肉が得られることが判明した。
しかしながら本発明者は、強制的な冷却、連続的或いは断続的な撹拌作業、が必須とならざるを得ないこの手法には到底満足できず、理想的な熟成方法の確立に向けて更に研究・実験を重ねた。
研究では、スラリー氷の全体を均一に、急速に冷却する特性を利用し食肉の普通凍結点以下の温度帯でも凍結しない、いわゆる過冷却の状態を作り出し、品質向上と安定した生産を可能にする為の検証・実験も並行して行った。
そして本発明者は上記諸点に鑑み長年鋭意研究の結果、遂に本発明方法を成したものでありその特徴とするところは、食肉を枝肉状態、或いは部分肉状態、若しくは精肉状態で食肉の普通凍結点以下の低温、即ち簡易的な過冷却状態で熟成する方法であって、氷結部分と非氷結部分が混在する塩水由来のスラリー氷と、プラスチックシートによって真空包装された食肉とを、スラリー氷の水深が30cm以下となるようにして容器内に入れ、更に、スラリー氷温度が実質−3.5℃〜−1.5℃で維持されるように冷蔵庫に該コンテナを格納保管する点にある。
即ち本発明は、普通凍結点以下で低温熟成しようとする食肉を冷蔵庫に入れて長期保管する際に、冷気が当たること、外気に触れることで直ちに温度に変化を来たし、それによって適正な熟成が難しくなる事態とならないようにし、従来製法では不可能な品質を実現するものである。
そのために本発明方法においては、食肉をそのまま直接冷蔵庫内に収納するのではなく、先ずは食肉を真空包装しておくこと、次いで容器内に真空包装した食肉と共に極低温(食肉の普通凍結点以下の低温)のスラリー氷を入れておくこと、スラリー氷の水深を30cm以下とすること、冷蔵庫内にはその容器ごと入れて保管し熟成を図ること、を必須要件としている。氷には、外部からエネルギーを吸収しても固体が維持されている限り昇温はしない、という特性があるので、一定の温度を保持するには理想的なものである。凍結点以下の低温であっても凍結しない状態を過冷却状態といい、通常は全体を均一且つ急速に冷却し、氷の核が発生しないように段階的に温度を下げることによって、分子の準安定状態を維持してこの状態を作り出すが、そうした専用設備を本発明においては必要としない。そのために、過冷却の限界温度よりは高い温度とする。そしてこれを「簡易的な過冷却状態」と呼ぶこととする。
またスラリー氷は、当初は固液混合しているが、時間経過とともに2相に分離するという性質を持ち、固体(氷粒子)が上層に、液体が下層になるよう分離してゆく。液体の単位体積当たりの質量は
真水の場合で+4℃、塩水の場合も概ねその温度であるので、2層分離直後に氷点下数度である液体部分は、熱エネルギーを受けて昇温すると、+4℃になるまでは体積減少(単位体積当たりの質量でいうと増加)することになる。即ち、昇温するにつれて沈降してゆく。これは、容器内に対流が発生しない(或いは発生しにくい)ことを意味する。
また本発明においては、スラリー氷の水深を「30cm以下」に限定している。この数値は、容器内にスラリー氷のみを入れたときの水深ではなく、食肉を投入して上がった後の水深を示すものである。よって、容器に注入するスラリー氷の容量は、食肉投入量分だけ減じた量ということになる。
スラリー氷の中では食肉は、水面から一部突出することもなく、かといって水底に沈んでしまうこともない、という状態となる。これは、同一温度若しくはその温度以下の物体に接するとこれを取り囲もうとするスラリー氷の特性(粘着性)に由来する現象である。(容器内壁は外気によって昇温する傾向にあり、スラリー氷はその粘着性を示さず、内壁にスラリー氷が取り付くという状態にはなりにくい)
スラリー氷はまた、置いておくと固体・液体の2相に分離する性質があるが、その表面と底面との高さが大きければ大きいほど早い段階で分離する。そして一旦分離してしまうと、固体部分は潜熱によって一定の温度が保たれるが液体部分は容易に昇温し、(+4℃になるまでは)単位体積当たりの質量が増える。従って、容器底面の温度は上昇してゆくことになる。
即ち、例えばスラリー氷の水深が30cmである場合、食肉の上方のスラリー氷の高さ・食肉自体の高さ・食肉の上方のスラリー氷の高さを合計した高さが30cmであるということになる。食肉の高さは様々であるが、通常は15〜20cm程度であるので、食肉の上下それぞれに存在するスラリー氷の高さの合計価は、10〜15cm程度になる。
そしてスラリー氷の水深が30cm、食肉投入量35%以下この程度であれば、食肉の回りを取り巻いているスラリー氷は、なかなか相分離を起こさないこと、50cmを超えるような水深の場合には、早い段階で相分離が生じることが分かった。
ところで、食肉をしばらく寝かしておいて熟成させることは、畜肉の場合には古くから行なわれているわけであるが、本発明方法は必ずしもこの伝統的な手法に代替される方法ではなく、伝統的な手法を経た食肉に対して行なうものであっても良い。
即ち、伝統的熟成方法を、予備熟成としてまず行ない、その後本発明方法を行なうという手法もあり得る。その場合の「予備熟成」の詳細に関しては本発明において限定するものではない。
例えば一般的な例として、搬入された食肉が国産豚肉の枝肉の場合を挙げる。この場合、食肉氷結温度は約−1.6℃であるが、この温度で保管するに先立ち、枝肉状態のまま平均湿度80%、平均温度−0.6℃の冷蔵庫に1週間程度保管すると効果的である。これが「予備熟成」の一例である。勿論本発明は、予備熟成を一切せず、解体した食肉に対していきなり本発明方法を施す手法を含むものでありこれを排除しない。
冷蔵庫内が吐出する冷気は、まずは容器を冷却し、次いでスラリー氷を冷却する。そしてスラリー氷には流動性があるので食肉全体を均一に冷却することになる。また、容器やスラリー氷を介在させての冷却であるので、急激な温度変動、冷却ムラなどは発生しにくく、食肉熟成の目的に適った誠に理想的な方法であると言える。
また本発明にとって冷蔵庫自体は食肉の温度維持が目的であって、内部に格納されているスラリー氷も含め容器は、冷蔵庫への格納段階で既に設定温度に保持されているわけである。よって本発明における冷蔵庫で仮に外界と熱断絶させることが完全にできるのであれば、理論上は冷却機の作動は不要である。
そして、スラリー氷の氷結部分が液化するまでは、外からのエネルギーを受けても温度は上昇しないわけであるので、実験においても、冷蔵庫が持つ冷却装置を稼動させなくとも長期温度が維持され熟成を全うすることも稀ではなかった。よって「冷蔵庫」は本発明の場合、外部と熱的に遮断される機能を有していることは必須であるが、強制的に冷却するための機能を具備することを必須要件とはしない。
なお本明細書中でいう「食肉」とは、牛・豚・羊などの畜肉のみならず、鶏・ウズラ・鴨などの鳥肉を含むものとする。また本発明は食肉中、枝肉・部分肉・精肉の熟成を対象とするものであり、未加熱・未調理の食肉が対象となる。
食肉の流通形態は、大きく屠体・枝肉・部分肉・精肉に分けられるが、この中で屠体(屠畜・屠鳥しただけの動物の体)は、真空包装(後述)によって抜気を完全に行なうことが難しい場合が多いし内臓や原皮、毛、羽等を有している場合にはさらに抜気が難しくなるため、本発明においては除外する。
また長期間熟成するのは基本的には、鳥肉の場合には「中抜き」(屠体から内臓や原皮といった畜産副生物に相当する部位を除去した肉)が、畜肉の場合には「部分肉」(枝肉をさらに切断し、余計な脂肪や骨を除去するなどした肉)が適しているが、殺菌その他の衛生処理が万全であれば「屠体」「精肉」であっても熟成は可能であるので本発明における食肉の対象に含めた。
低温熟成(氷温熟成)とは、既述の通り食肉がその凍結温度近くの低温下で、タンパク質を分解し旨味・甘みとなるアミノ酸や糖類に変える性質を利用する熟成方法を言う。食肉の種類や部位・形態によって凍結温度は多少違っているので、具体的な温度については限定しないが、0℃から凍結温度直前を保持し続けることが低温熟成にとって必須事項である。なお「0℃から凍結温度直前」という温度帯は、食肉の畜種・部位によって様々である。
例えば豚肩ロースの一般的な部分肉の場合、凍結温度は−1.6℃であるので、0℃〜−1.5℃の温度域から外れてはならず、できれば−1℃〜−1.5℃の温度域内に収まっている状態が望ましい。
しかし、本発明では従来の低温熟成よりも低い温度帯、つまり食肉の凍結点以下で低温熟成を行い、従来製法では成しえなかった高品質の熟成製品を製造する手法である。引き続き豚肩ロースを例にすると、豚肩ロースの普通凍結点は−1.6℃であるが、スラリー氷を使用した本発明では検証を重ねた結果、−3.5℃程度までの低温でも凍結せず簡易的な過冷却状態が維持できる事を確認した。そして−3.5℃よりも低い温度となると、本発明では過冷却状態が維持できず効果的な熟成がなされないので、下限温度を−3.5℃とした。
この温度は、既述の通り豚肩ロース以外の肉で多少異なる。そこで食肉を適切な温度とするために設定されるスラリー氷の温度を実質−1.5℃〜−3.5℃とした。スラリー氷の実質温度とは、固液2相に分離した場合には分離した相の界面温度の平均値を指すものと定義する。
更に、脂や骨などタンパク質以外に関しても、低温(氷温)環境下では、食味が好適なものとなるという説もある。真偽は不明であるが、例えば氷温熟成処理した豚肉の皮下脂肪部において、脂肪融点の低下と遊離脂肪酸の生成抑制が見られたという実験報告があり、その報告書には「氷温熟成豚肉を喫食した際に、より滑らかな食感が得られる可能性があることが示唆された」とある。
よって、氷結温度を維持する、という表現は、あくまでタンパク質の氷結温度を維持するという意味であって、タンパク質の氷結温度で脂や骨も氷結するという意味ではない。
また、−1.5℃〜−3.5℃で維持されるというのは、食肉の種類・部位によって適切な温度と許容される温度域があって、これらが−1.5℃〜−3.5℃の間にある、という意味である。
例えば、牛肩ロースの凍結点は一般には−1.7℃、鶏モモ肉では−1.3℃とされている。そしてこれらを熟成する際の最適な温度は、牛肩ロースの場合−3.0℃、鶏モモ肉で−2.0℃に設定しておくのが好ましい。
なお、「−3.0℃」や「−2.0℃」といった温度のスラリー氷は、基本的には塩水の塩分濃度を調整することで製作される。
そもそもスラリー氷は、微小な氷粒子と液体が混ざり合って流動性を呈している性状の物質で、通常は塩水(海水が使用されることが多い)を原料とする。
水を冷却してゆくと、液体は固体へと変化するが、撹拌しながら水を冷却してゆくと、溶け始めたカキ氷の如く、氷結は塊にはならず微小化状態となり、液体(非氷結部分)内に存在するような状態となる。これがスラリー氷である。水の代わりに塩水(海水等)を用いた場合には、氷結点が下がって0℃以下となる。理論的には飽和食塩水(食塩濃度25%)の氷結温度(凝固点)は−22℃である。そして食肉の氷結温度がそれよりも低いことはない。よって濃度調整だけで、どのような種類・形態の食肉であろうともそれぞれに適した温度のスラリー氷を製作することができる。
食肉は、真空包装されて容器に入れられるが、この真空包装という技術自体は牛肉や豚肉の部分肉に対して従来より適用されており、材料となるプラスチックの種類・包装方法に関しても確立した技術である。本発明においてもこれらの中から適当な方策を採用すれば良く、本発明において特に限定するものではない。なお食肉を真空包装する目的は、抜気によって包装内の酸素を排除し、微生物による変質を抑制することにあるが、本発明では更に、食肉内に空気が散在していると空気が断熱層となり効果的な冷却を阻害するのでこれを防止すること、また、スラリー氷内に食肉を言わば漬けた状態となっているので、直接触れるとスラリー氷の塩分が食肉に移ってしまうためこれを防止すること、輸送中における品質劣化の危険性が非常に少ない、等々も目的としている。
容器は、熟成しようとしている食肉をスラリー氷と共に貯蔵しておくための容器である。基本的にここに入れられるスラリー氷は、共に投入されている食肉がその氷結温度で保持されるように計算された塩分濃度のものである。一般的な鮮魚冷却の際に用いるコンテナのように、排水孔を設け、溶けて液体となった塩水を排出しながら新たなスラリー氷を継ぎ足すという方法であると、塩分濃度が下がってしまうため、本発明においては、排水も継ぎ足しも行なわないことを基本とする。
スラリー氷と食肉が収納された容器を冷蔵庫に入れて、熟成のための温度(当該食肉の氷結温度付近)の保持を図る。温度保持は、温度設定した冷却機を稼動させておき設定温度以下に下がったら稼動を止めて昇温を待つというのが基本であるが、稼動が不要ということもあり得るし、例えば厳冬期の寒冷地のように庫外が設定温度よりも下回っている場合には逆に、ヒーターにて昇温してゆく必要がありその場合、設定温度以上にはさせないようヒーターの稼動を制御することになるので、その場合冷蔵庫は、冷却機と共にヒーターを有する。
また、既述したようにスラリー氷は、エネルギーを吸収しても氷結部分が消滅するまで温度が変化しないという特性(潜熱、融解熱)を有することを利用して、全体の中で氷結部分がどの程度あるのか(氷充填率)を常時計測しておき、設定値より低くなれば製氷するという管理方法であれば、万一に備えた確実な温度維持が図れる。しかし、こうした管理自体、或いはこうした管理を行なうための機器設置は本発明に必須の要件ではない。
格納・保管の期間に関しては、食肉の種類・部位・形態・大きさ等々によって様々であり、特に限定はしない。一般的には、豚肉(骨、おおかたの脂肪を除去した部分肉)の場合で、2週間程度で熟成が完成する。(本発明熟成方法を適用する前に、枝肉状態で約1週間保管しておく熟成作業はこれまでも良く用いられてきたが、この予備熟成に関しては、本発明方法における熟成工程とは見なさないし、予備熟成で費やした時間は本発明方法における熟成時間としてカウントしない)
また、鳥肉(鶏肉や鴨肉)の場合、予め羽を取るための前工程として60℃程度の湯に浸漬する「湯漬け」工程、或いは、残った羽をバーナーで処理する「毛焼」工程を経て製造されるのが普通でありこれらの工程後に昇温した鶏肉を効果的に冷却するために、スラリー氷を用いることも行なわれているが、ここで行なわれるのは「冷却」であって、本発明で言う「熟成」ではない。
本発明に係る食肉の熟成方法は、食肉を枝肉状態、或いは部分肉状態、若しくは精肉状態で低温熟成する方法であって、氷結部分と非氷結部分が混在する塩水由来のスラリー氷と、プラスチックシートによって真空包装された食肉とを、スラリー氷の水深が30cm以下となるようにして容器内に入れ、更に、スラリー氷温度が実質−1.5℃〜−3.5℃で維持されるように冷蔵庫に該容器を格納保管することを特徴とするものであって、以下述べる如き効果を有する極めて高度な発明である。
(1)スラリー氷内に漬けられた状態で保管されるので、食肉温度が急変しない。
(2)スラリー氷の水深が30cm以下に設定されているので固体と液体に2相分離しにくく、一定温度を維持することが容易である。
(3)氷点下数度程度の温度に関しては、塩分濃度を調整することで自在にコントロールできる。
(4)容器を冷蔵庫内に入れて保管するので、ランニングコストが抑えられるし、外気温の変動による影響を受けにくい。
(5)従来製法にはない高品質な熟成製品を得ることができる。
本発明方法の一例を概略的に示すフローチャートである。 本発明方法に用いる容器の一例を概略的に示す端面図である。 本発明方法に用いる冷蔵庫の一例の内部を概略的に示す正面図である。
以下本発明方法を、国産豚を材料に下記工程にて肩ロース熟成肉を製造する例で説明してゆく。
図1は本発明に係る食肉の熟成の概略を示すものであって、頭部・皮・内臓等が外された屠体を背骨に沿って切断することで2分割されたものである枝肉を低温下にしばらく保管しておく予備熟成工程A、その後枝肉から骨と余分な脂肪を除去して切り分ける細分工程B、細分工程Bによって得られた部分肉に対して氷温熟成を行なうための本発明熟成工程Cにて構成されている。
本例では予備熟成工程Aは、平均湿度80%、平均温度−0.6℃の冷蔵庫に1週間程度保管することとしたが、これよりも高い温度とする場合、これよりも長い期間保管する場合もある。また、輸入肉のように、屠殺されてから食肉入手までに時間が掛かっている場合には、予備熟成が必要でないことも多く、そのような場合には本工程Aは不必要である。
また細分工程Bは、本例では脱骨を主体に、不要な脂肪部分を切除しながら切り分けるという形で部分肉を作ったが、部位によっては骨を残しておく形態もあり得るので、本例に限るものではない。更に、部分肉としてではなく更にカットして、直接調理できる状態とした「精肉」とするものであっても良い。
図2は本発明熟成工程Cの概要を説明するものであり、容器1内に、部分肉2とスラリー氷3とを投入した状態を示している。基本的に熟成は、図の状態を長期維持するだけで達成されることとなる。本例の部分肉2は、平均−0.6度の冷蔵庫にて1週間程度予備熟成を行なった枝肉に、脂肪の除去や脱骨処理を施した国産豚肉肩ロースであって、プラスチック製袋4によって真空包装されている。
容器1内に部分肉2とスラリー氷3とを投入した直後は、スラリー氷3を構成する氷結部分と液体部分は完全に混じり合っているが、やがて固液2相に分離することになる。しかし、本発明において用いられる容器の場合、スラリー氷の水深が大きくないため、相分離を起こしにくい。また、部分肉2の投入量に関しては特に限定するものではないが、スラリー氷の量に比してある程度以上の量の部分肉2を投入してしまうと、部分肉を取り巻くのに十分なスラリー氷の厚みが確保できず十分な熟成とはならない恐れがあるので、部分肉2・スラリー氷3総量中の部分肉2の量が35重量%以下となるように設計しておくのが好ましい。
こうして、食肉(本例で言うと部分肉2)はスラリー氷の氷結部分によって全表面が取り囲まれた状態が長く続くことになる。
プラスチック製袋4は、微生物の活動を抑止する目的で従来より用いられており、それと同様の材料を用いて構わない。但し本発明方法にあっては、微生物活動の抑止だけではなく、気体部分が存在しないようにし食肉とスラリー氷3との間に断熱部分が存在しないようにすることも重要な目的である。従ってプラスチック製袋4は十分な抜気による真空包装がなされていることが必須である。即ち微生物活動の抑止だけが目的であれば「窒素充填」「脱酸素処理」といった気体を残す包装形態も選択肢に入れ得るが、本発明方法にあっては抜気されていないこうした包装は不適切である。
またスラリー氷3の材料は基本的に塩水であるので、プラスチック製袋4には、塩分を食肉側に移さないという効果もある。
容器1本体は本例の場合、市販されているプラスチック一体成形品であってその内寸が、縦615mm、横405mm、深さ250mmのものを用いた。これを用いて実験し、極めて良好な結果が得られたわけであるが、冷蔵庫内に保管され冷気を浴びることから、ステンレス等の金属製の方がより効果的かと思われる。
次に図3は、冷蔵庫5内に複数個の容器1を配置している庫内の状態を概略的に示すものである。容器1は本例の場合、敷き詰められ3段に積層されている。なお本発明において積層段数に関しては全く限定するものではなく、図示は省略するが4段以上に積層しても、2段、或いは積層しない保管であっても良い。また冷蔵庫5は、庫内が密閉されるよう開閉扉を具備しており、内部空間は断熱層にて囲繞されているが、本図ではそれらの描出を省略している。
その後は、この状態を維持してゆけば熟成がなされてゆくことになる。
熟成期間は、食肉の種類・部位等によって多少異なるが、概ね2週間程度である。この期間は、本発明者が実験した範囲ではほぼ全て、好適に過冷却状態が維持され、氷結点以下ではあったが氷結することはなかった。
熟成が完了した後は、例え氷結しても熟成を阻害することはないが、出荷後取引先が凍結食肉をうまく解凍する設備や知識を有していないことも多い。そこで過冷却状態で熟成期間を終えると、食肉温度が普通氷結点よりも高くなるまで温度調整し、出荷・搬送時に氷結させないようにしている。具体的には、熟成期間終了後冷蔵庫の温度をゆっくり上げて、2〜3日後に検温し、−1℃前後になっていることを確認してから取り出す。但し、上述の通り熟成にとって氷結させないことは重要であるが熟成後の氷結に関しては、適切な解凍ができるかどうかが問題であって氷結自体が問題ではないので、本発明に不可欠の工程ではない。
なお、予期せぬ事態に陥ることを考慮し、冷蔵庫5の室内温度、容器1内の温度、スラリー氷の氷充填率、等々を連続的或いは定期的に検知し、異常発生に備えるものとしている。

1 容器
2 部分肉
3 スラリー氷
4 プラスチック製袋
5 冷蔵庫

Claims (2)

  1. 食肉を枝肉状態、或いは部分肉状態、若しくは精肉状態で低温熟成する方法であって、氷結部分と非氷結部分が混在する塩水由来のスラリー氷と、プラスチックシートによって真空包装された食肉とを、スラリー氷の水深が30cm以下となるようにして容器内に入れ、更に、スラリー氷温度が実質−3.5℃〜−1.5℃で維持されるように冷蔵庫に該容器を格納保管することを特徴とする食肉の熟成方法。
  2. スラリー氷の量と食肉の量との合計量に占める食肉の量を、35重量%以下とする請求項1記載の食肉の熟成方法。


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