図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。以下において、半導体装置20の厚み方向をZ方向、Z方向に直交し、1つのパワーモジュール110での半導体装置200の並び方向をX方向と示す。また、Z方向及びX方向の両方向に直交する方向をY方向と示す。特に断わりのない限り、上記したX方向及びY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。
(第1実施形態)
本実施形態の電力変換装置及びモータユニットは、たとえば電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)などの車両に適用可能である。以下では、ハイブリッド自動車に適用される例について説明する。
(駆動システム)
先ず、図1に基づき、電力変換装置及びモータユニットが適用される駆動システムの概略構成について説明する。
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う電力変換装置5を備えている。
直流電源2は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、走行駆動源としてエンジンと共に車両に搭載されている。なお、モータジェネレータ3は、図示しないエンジンにより駆動されて発電する発電機(オルタネータ)、及び、エンジンを始動させる電動機(スタータ)として機能してもよい。また、回生時には発電機として機能してもよい。
電力変換装置5は、インバータ7と、制御回路部9と、平滑コンデンサC2と、フィルタコンデンサC3などを備えている。インバータ7は、電力変換部である。インバータ7は、直流電圧を交流電圧に変換するDC−AC変換部である。インバータ7は、上下アーム回路10とコンデンサC1を有する並列回路11を備えている。
上下アーム回路10は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2を有している。本実施形態では、スイッチング素子Q1,Q2として、nチャネル型のIGBTを採用している。上アーム10Uは、スイッチング素子Q1に、還流用のダイオードD1が逆並列に接続されてなる。下アーム10Lは、スイッチング素子Q2に、還流用のダイオードD2が逆並列に接続されてなる。なお、スイッチング素子Q1,Q2は、IGBTに限定されない。たとえばMOSFETを採用することもできる。ダイオードD1,D2としては、寄生ダイオードを用いることもできる。
上アーム10Uと下アーム10Lは、上アーム10UをVHライン12H側として、VHラインとNライン13との間で直列接続されている。高電位側の電力ラインであるPライン12は、上記したVHライン12Hに加えて、VLライン12Lを有している。VLライン12Lは、直流電源2の正極端子に接続されている。VLライン12LとVHライン12Hとは同じ電位になっている。
Nライン13は、直流電源2の負極に接続されており、接地ラインとも称される。このように、電力ライン間で上アーム10Uと下アーム10Lが直列接続されて、上下アーム回路10が構成されている。後述する半導体装置20は、1つのアームを構成する。
なお、スイッチング素子Q1のコレクタ電極がVHライン12Hに接続され、スイッチング素子Q2のエミッタ電極がNライン13に接続されている。スイッチング素子Q1のエミッタ電極と、スイッチング素子Q2のコレクタ電極が接続されている。
コンデンサC1の正極端子は、上アーム10Uを構成するスイッチング素子Q1のコレクタ電極に接続されている。コンデンサC1の負極端子は、下アーム10Lを構成するスイッチング素子Q2のエミッタ電極に接続されている。すなわち、コンデンサC1は、対応する上下アーム回路10に並列接続されている。並列回路11は、上下アーム回路10とコンデンサC1とが並列接続されてなる。並列回路11は、共通配線11P,11Nを有している。上アーム10UとコンデンサC1の正極端子との接続点は、共通配線11Pを介して、VHライン12Hに接続されている。下アーム10LとコンデンサC1の負極端子との接続点は、共通配線11Nを介して、Nライン13に接続されている。
本実施形態では、平滑コンデンサC2とは別に、コンデンサC1が設けられている。コンデンサC1は、並列接続された上下アーム回路10を構成するスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。スイッチングによってエネルギーロス(損失)が発生し、上下アームの両端間の電圧が落ち込むため、不足する電荷を、並列接続されたコンデンサC1から供給する。このため、コンデンサC1の静電容量は、平滑コンデンサC2の静電容量に対して十分に小さい値とされている。たとえば、平滑コンデンサC2の静電容量が1000μFとされ、コンデンサC1の静電容量が10μF〜20μFとされている。後述するパワーモジュール110は、1つの並列回路11を構成する。
平滑コンデンサC2は、VHライン12HとNライン13との間に接続されている。平滑コンデンサC2は、インバータ7に並列に接続されている。平滑コンデンサC2は、たとえば直流電圧を平滑化し、その直流電圧の電荷を蓄積する。平滑コンデンサC2の両端間の電圧が、モータジェネレータ3を駆動するための直流の高電圧となる。
インバータ7は、平滑コンデンサC2を介して直流電源2に接続されている。インバータ7は、上記した並列回路11を3組分、有している。すなわち、インバータ7は、三相分の上下アーム回路10を有している。U相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3の固定子に設けられたU相巻線に接続されている。同様に、V相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3のV相巻線に接続されている。W相の上下アーム回路10の接続点は、モータジェネレータ3のW相巻線に接続されている。各相の上下アーム回路10の接続点は、相ごとに設けられた出力配線15を介して対応する相の巻線に接続されている。
電力変換装置5においては、直流電源2の電圧が昇圧されずにそのままインバータ7に印加されることで、上述したように、VLライン12LとVHライン12Hとが同じ電位になっている。なお、電力変換装置5においては、VLライン12LとVHライン12Hとの間に、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC−DC変換部としてコンバータが設けられていてもよい。このコンバータとしては、例えば、直流電源2とインバータ7との間に設けられ、VHライン12HをVLライン12L以上の電位にする昇圧コンバータが挙げられる。昇圧コンバータが設けられた電力変換装置5においては、低電圧側のVLライン12Lがたとえば300Vとされ、高電圧側のVHライン12Hがたとえば650Vとされる。
また、電力変換装置5においては、フィルタコンデンサが直流電源2に並列に接続されていてもよい。このフィルタコンデンサは、VLライン12LとNラインとの間に接続されており、たとえば直流電源2からの電源ノイズを除去する。電力変換装置5がコンバータ及びフィルタコンデンサの両方を有している場合、フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられ、平滑コンデンサC2よりも低圧側に配置されている。この場合、フィルタコンデンサは低圧側コンデンサとも称され、平滑コンデンサは高圧側コンデンサとも称される。平滑コンデンサC2の両端間の電圧は、フィルタコンデンサの両端間の電圧以上とされる。さらに、Nライン13及びVLライン12Lの少なくとも一方には、直流電源2とフィルタコンデンサとの間に、図示しないシステムメインリレー(SMR)が設けられている。
インバータ7は、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動される。また、インバータ7は、エンジンの出力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路部9によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、VHライン12Hへ出力することもできる。このように、インバータ7は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行なう。
制御回路部9は、インバータ7のスイッチング素子を動作させるための駆動指令を生成し、図示しない駆動回路部(ドライバ)に出力する。制御回路部9は、図示しない上位ECUから入力されるトルク要求や各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。
各種センサとしては、モータジェネレータ3の各相の巻線に流れる相電流を検出する電流センサ、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する回転角センサ、平滑コンデンサC2の両端電圧、すなわちVHライン12Hの電圧を検出する電圧センサ、VLライン12Lの電圧を検出する電圧センサ、昇圧配線14に設けられ、リアクトルR1,R2を流れる電流を検出する電流センサなどがある。電力変換装置5は、これらの図示しないセンサを有している。制御回路部9は、具体的には、駆動指令としてPWM信号を出力する。制御回路部9は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を備えて構成されている。
なお、駆動回路部は、制御回路部9からの駆動指令に基づいて駆動信号を生成し、対応する上下アーム回路10のスイッチング素子Q1,Q2のゲート電極に出力する。これにより、スイッチング素子Q1,Q2を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。本実施形態では、駆動回路部が上下アーム回路10ごとに設けられている。
次に、電力変換装置5を説明する前に、その構成要素である半導体装置20、半導体装置20を備えたパワーモジュール110について説明する。
(半導体装置)
本実施形態の電力変換装置5に適用可能な半導体装置20の一例について説明する。以下に示す半導体装置20は、上下アーム回路10の一方、すなわち1つのアームを構成するように構成されている。すなわち、2つの半導体装置により、上下アーム回路10が構成される。このような半導体装置20は、1つのアームを構成する要素単位でパッケージ化しているため、1in1パッケージとも称される。半導体装置20は、上アーム10Uと下アーム10Lとで、基本的な構成が同じであり、たとえば共通部品とすることもできる。
図2〜図7に示すように、半導体装置20は、封止樹脂体30、半導体チップ40、導電部材50、ターミナル60、主端子70、及び信号端子80を備えている。なお、図5は、図2に対して、封止樹脂体30を省略した図である。図6は、封止樹脂体30の成形後であって、タイバーなど、リードフレーム100の不要部分を除去する前の状態を示している。図7は、半導体チップ40と主端子70との位置関係を示す平面図であり、封止樹脂体30の一部、導電部材50E、及びターミナル60を省略して図示している。
半導体装置20を含むパワーモジュール110が後述する冷却器230に配置された状態で、半導体チップ40の板厚方向は、冷却器230の熱交換部233の厚み方向であるZ方向と略平行となる。また、複数の主端子70の並び方向及び複数の信号端子80の並び方向が、複数のパワーモジュール110の並び方向であるX方向と略平行となる。このため、以下の説明においても、半導体チップ40の板厚方向をZ方向、主端子70や信号端子80の並び方向をX方向と示す。
封止樹脂体30は、たとえばエポキシ系樹脂からなる。封止樹脂体30は、たとえばトランスファモールド法により成形されている。図2〜図4に示すように、封止樹脂体30は、半導体チップ40の板厚方向に平行なZ方向において、一面31と、一面31と反対の裏面32を有している。一面31及び裏面32は、たとえば平坦面となっている。封止樹脂体30は、一面31と裏面32とをつなぐ側面を有している。本例では、封止樹脂体30が、平面略矩形状をなしている。
半導体チップ40は、Si、SiC、GaNなどの半導体基板に、素子が形成されてなる。半導体装置20は、半導体チップ40を1つ備えている。半導体チップ40には、上記した1つのアームを構成する素子(スイッチング素子及びダイオード)が形成されている。すなわち、素子としてRC(Reverse Conducting)−IGBTが形成されている。たとえば上アーム10Uとして用いる場合、半導体チップ40に形成された素子はスイッチング素子Q1及びダイオードD1として機能し、下アーム10Lとして用いる場合、半導体チップ40に形成された素子はスイッチング素子Q2及びダイオードD2として機能する。
素子は、Z方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。図示を省略するが、素子はゲート電極を有している。ゲート電極はトレンチ構造をなしている。図3に示すように、半導体チップ40は、Z方向の両面に主電極を有している。具体的には、一面側に主電極としてコレクタ電極41を有し、一面と反対の裏面側に主電極としてエミッタ電極42を有している。コレクタ電極41はダイオードのカソード電極も兼ねており、エミッタ電極42はダイオードのアノード電極も兼ねている。コレクタ電極41は、一面のほぼ全面に形成されている。エミッタ電極42は、裏面の一部に形成されている。
図3及び図7に示すように、半導体チップ40は、エミッタ電極42が形成された裏面に、信号用の電極であるパッド43を有している。パッド43は、エミッタ電極42とは別の位置に形成されている。パッド43は、エミッタ電極42と電気的に分離されている。パッド43は、Y方向において、エミッタ電極42の形成領域とは反対側の端部に形成されている。
本例では、半導体チップ40が、5つのパッド43を有している。具体的には、5つのパッド43として、ゲート電極用、エミッタ電極42の電位を検出するケルビンエミッタ用、電流センス用、半導体チップ40の温度を検出する温度センサ(感温ダイオード)のアノード電位用、同じくカソード電位用を有している。5つのパッド43は、平面略矩形状の半導体チップ40において、Y方向の一端側にまとめて形成されるとともに、X方向に並んで形成されている。
導電部材50は、半導体チップ40と主端子70とを電気的に中継する。すなわち、主電極の配線としての機能を果たす。本例では、半導体チップ40(素子)の熱を半導体装置20の外部に放熱する機能も果たす。このため、導電部材50は、ヒートシンクとも称される。導電部材50は、電気伝導性及び熱伝導性を確保すべく、Cuなどの金属材料を少なくとも用いて形成されている。
導電部材50は、半導体チップ40を挟むように対をなして設けられている。導電部材50のそれぞれは、Z方向からの投影視において、半導体チップ40を内包するように設けられている。半導体装置20は、一対の導電部材50として、半導体チップ40のコレクタ電極41側に配置された導電部材50Cと、エミッタ電極42側に配置された導電部材50Eを有している。導電部材50Cがコレクタ電極41と後述する主端子70Cとを電気的に中継し、導電部材50Eがエミッタ電極42と後述する主端子70Eとを電気的に中継する。
図3,図5,及び図7に示すように、導電部材50Cは、Z方向において厚肉の部分である本体部51Cと、本体部51Cよりも薄肉の部分である延設部52Cを有している。本体部51Cは、厚みがほぼ一定の平面略形状をなしている。本体部51Cは、Z方向において、半導体チップ40側の実装面53Cと、実装面53Cと反対の放熱面54Cを有している。延設部52Cは、Y方向において、本体部51Cの端部から延設されている。延設部52Cは、本体部51CとX方向の長さ、すなわち幅を同じにしてY方向に延設されている。延設部52Cにおける半導体チップ40側の面は、本体部51Cの実装面53Cと略面一となっており、半導体チップ40と反対の面は、封止樹脂体30によって封止されている。延設部52Cは、少なくとも主端子70の配置側の端部に設けられれば良い。本例では、本体部51Cの両端にそれぞれ設けられている。図7では、本体部51Cと延設部52Cとの境界を二点鎖線で示している。
図3及び図5に示すように、導電部材50Eは、Z方向において厚肉の部分である本体部51Eと、本体部51Eよりも薄肉の部分である延設部52Eを有している。本体部51Eは、厚みがほぼ一定の平面略形状をなしている。本体部51Eは、Z方向において、半導体チップ40側の実装面53Eと、実装面53Eと反対の放熱面54Eを有している。延設部52Eは、Y方向において、本体部51Eの端部から延設されている。延設部52Eは、本体部51EとX方向の長さ、すなわち幅を同じにしてY方向に延設されている。延設部52Eにおける半導体チップ40側の面は、本体部51Eの実装面53Eと略面一となっており、半導体チップ40と反対の面は、封止樹脂体30によって封止されている。延設部52Eは、少なくとも主端子70の配置側の端部に設けられれば良い。本例では、本体部51Eの両端にそれぞれ設けられている。なお、本例では、導電部材50C,50Eとして共通部品を採用している。
導電部材50Cの本体部51Cにおける実装面53Cには、半導体チップ40のコレクタ電極41が、はんだ90を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に限定されない。導電部材50Cの大部分は封止樹脂体30によって覆われている。導電部材50Cの放熱面54Cは、封止樹脂体30から露出されている。放熱面54Cは、一面31と略面一となっている。導電部材50Cの表面のうち、はんだ90との接続部、放熱面54C、及び主端子70の連なる部分を除く部分が、封止樹脂体30によって覆われている。
ターミナル60は、半導体チップ40と導電部材50Eとの間に介在している。ターミナル60は略直方体をなしており、その平面形状(平面略矩形状)はエミッタ電極42とほぼ一致している。ターミナル60は、半導体チップ40のエミッタ電極42と導電部材50Eとの電気伝導、熱伝導経路の途中に位置するため、電気伝導性及び熱伝導性を確保すべく、Cuなどの金属材料を少なくとも用いて形成されている。ターミナル60は、エミッタ電極42に対向配置され、はんだ91を介してエミッタ電極42と接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。ターミナル60は、後述するリードフレーム100の一部分として構成されてもよい。
導電部材50Eの本体部51Eにおける実装面53Eには、半導体チップ40のエミッタ電極42が、はんだ92を介して電気的に接続されている。具体的には、導電部材50Eとターミナル60とが、はんだ92を介して接続されている。そして、エミッタ電極42と導電部材50Eとは、はんだ91、ターミナル60、及びはんだ92を介して、電気的に接続されている。導電部材50Eも、封止樹脂体30によって大部分が覆われている。導電部材50Eの放熱面54Eは、封止樹脂体30から露出されている。放熱面54Eは、裏面32と略面一となっている。導電部材50Eの表面のうち、はんだ92との接続部、放熱面54E、及び主端子70の連なる部分を除く部分が、封止樹脂体30によって覆われている。
主端子70は、半導体装置20と外部機器とを電気的に接続するための外部接続端子のうち、主電流が流れる端子である。半導体装置20は、複数の主端子70を備えている。主端子70は、対応する導電部材50に連なっている。同一の金属部材を加工することで、主端子70を対応する導電部材50と一体的に設けてもよいし、別部材である主端子70を接続によって導電部材50に連なる構成としてもよい。本例では、図6に示すように、主端子70は、信号端子80とともに、リードフレーム100の一部分として構成されており、導電部材50とは別部材とされている。図3に示すように、主端子70は、封止樹脂体30の内部で、対応する導電部材50に連なっている。
図3及び図4に示すように、主端子70のそれぞれは、対応する導電部材50からY方向に延設され、封止樹脂体30の1つの側面33から外部に突出している。主端子70は、封止樹脂体30の内外にわたって延設されている。主端子70は、半導体チップ40の主電極と電気的に接続された端子である。半導体装置20は、主端子70として、コレクタ電極41と電気的に接続された主端子70Cと、エミッタ電極42と電気的に接続された主端子70Eを有している。主端子70Cはコレクタ端子、主端子70Eはエミッタ端子とも称される。
主端子70Cは、導電部材50Cに連なっている。具体的には、延設部52Cの1つにおける半導体チップ40側の面に、はんだ93を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。主端子70Cは、導電部材50CからY方向に延設され、封止樹脂体30の側面33から外部に突出している。主端子70Eは、導電部材50Eに連なっている。具体的には、延設部52Eの1つにおける半導体チップ40側の面に、はんだ94を介して接続されている。接続方法としては、はんだ接合に特に限定されない。主端子70Eは、導電部材50Eから主端子70Cと同じ方向であるY方向に延設され、図3及び図4に示すように、主端子70Cと同じ側面33から外部に突出している。主端子70C,70Eの詳細については、後述する。
信号端子80は、対応する半導体チップ40のパッド43に接続されている。半導体装置20は、複数の信号端子80を有している。本例では、ボンディングワイヤ95を介して接続されている。信号端子80は、封止樹脂体30の内部でボンディングワイヤ95と接続されている。各パッド43に接続された5つの信号端子80は、それぞれY方向に延設されており、封止樹脂体30における側面33と反対の側面34から外部に突出している。信号端子80は、上記したようにリードフレーム100の一部分として構成されている。なお、同一の金属部材を加工することで、信号端子80を、主端子70Cとともに導電部材50Cと一体的に設けてもよい。
なお、リードフレーム100は、図6に示すようにカット前の状態で、外周枠部101と、タイバー102を有している。主端子70及び信号端子80のそれぞれは、タイバー102を介して外周枠部101に固定されている。封止樹脂体30の成形後、外周枠部101やタイバー102など、リードフレーム100の不要部分を除去することで、主端子70及び信号端子80が電気的に分離され、半導体装置20が得られる。リードフレーム100としては、厚みが一定のもの、部分的に厚みが異なる異形材のいずれも採用が可能である。
以上のように構成される半導体装置20では、封止樹脂体30により、半導体チップ40、導電部材50それぞれの一部、ターミナル60、主端子70それぞれの一部、及び信号端子80それぞれの一部が、一体的に封止されている。すなわち、1つのアームを構成する要素が封止されている。このため、半導体装置20は、1in1パッケージとも称される。
また、導電部材50Cの放熱面54Cが、封止樹脂体30の一面31と略面一とされている。また、導電部材50Eの放熱面54Eが、封止樹脂体30の裏面32と略面一とされている。半導体装置20は、放熱面54C,54Eがともに封止樹脂体30から露出された両面放熱構造をなしている。このような半導体装置20は、たとえば、導電部材50を、封止樹脂体30とともに切削加工することで形成することができる。また、放熱面54C,54Eが、封止樹脂体30を成形する型のキャビティ壁面に接触するようにして、封止樹脂体30を成形することによって形成することもできる。
次に、主端子70について詳細に説明する。
主端子70は、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有している。主端子70Cと主端子70Eとは、板面同士が対向するのではなく、側面同士が対向するように、主端子70の板幅方向であるX方向に並んで配置されてる。半導体装置20は、隣り合う主端子70C,70Eによる側面対向部を複数有している。板面とは、主端子70の表面のうち、主端子70の板厚方向の面であり、側面とは板面をつなぐ面であって主端子70の延設方向に沿う面である。主端子70の残りの表面は、延設方向における両端面、すなわち突出先端面と後端面である。側面対向部を構成する側面は、主端子70の板厚方向において少なくとも一部が対向すればよい。たとえば板厚方向にずれて設けられてもよい。ただし、全面対向の方が効果的である。また、対向とは、対向する面が少なくとも向き合っていればよい。面同士が略平行とするのが良く、完全な平行状態がより好ましい。
主端子70の側面は、板面よりも面積が小さい面である。主端子70C,70Eは、互いに隣り合うように配置されている。互いに隣り合うことにより、主端子70C,70Eをそれぞれ複数有する構成では、主端子70Cと主端子70Eとが交互に配置されることとなる。主端子70C,70Eは、順に配置されている。
図7に示すように、X方向において配置が連続する3つ以上の主端子70により主端子群71が構成されている。上記したように主端子70C,70Eは隣り合って配置されており、主端子群71は主端子70C,70Eを両方含み、且つ、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数含んで構成されている。主端子群71を構成する主端子70は、それぞれの少なくとも一部が所定の領域A1内に配置されている。領域A1は、X方向において、半導体チップ40の一方の端面44から仮想的に延長された延長線EL1と、端面44とは反対の端面45から仮想的に延長された延長線EL2との間の領域である。X方向において、延長線EL1,EL2間の長さは、半導体チップ40の幅、すなわち素子幅に一致する。
本例では、主端子70C,70Eが、その全長において同じ方向(Y方向)に延設されている。主端子70は、平面一直線状をなし、X方向への延設部分を有してない。主端子70Cの厚みは、本体部51Cよりも薄くされており、たとえば延設部52Cとほぼ同じとされている。主端子70Eの厚みは、本体部51Eよりも薄くされており、たとえば延設部52Eとほぼ同じとされている。主端子70の厚みは全長でほぼ一定とされており、主端子70C,70Eでほぼ同じ厚みとされている。主端子70の幅W1は全長でほぼ一定とされており、主端子70C,70Eで同じ幅とされている。また、X方向において隣り合う主端子70の間隔P1も、すべての主端子70で同じとされている。間隔P1は、端子間ピッチとも称される。
主端子70のそれぞれは、封止樹脂体30内に屈曲部を2箇所有している。これにより、主端子70はZY平面において略クランク状をなしている。主端子70において、上記した屈曲部よりも先端の部分は平板状をなしており、この平板状部分の一部が、封止樹脂体30から突出している。封止樹脂体30からの突出部分、すなわち上記した平板状部分において、主端子70C,70Eは、図3及び図4に示すように、Z方向においてほぼ同じ位置に配置されている。また、平板状部分において、主端子70C,70Eの板厚方向は、Z方向に略一致している。これにより、主端子70Cの側面と主端子70Eの側面が、Z方向のほぼ全域で対向している。さらに、主端子70C,70Eの平板状部分の延設長さがほぼ同じであり、Y方向においてほぼ同じ位置に配置されている。これにより、主端子70C,70Eの側面は、平板状部分においてほぼ全面で対向している。
図2,図5〜図7に示すように、半導体装置20は、奇数本の主端子70、具体的には9本の主端子70を備えている。うち4本が主端子70C、残りの5本が主端子70Eとなっている。主端子70C,70EはX方向において交互に配置されており、これにより半導体装置20は、側面対向部を8つ有している。X方向両端には主端子70Eが配置されており、両端の主端子70Eを除く7本の主端子70により、主端子群71が構成されている。主端子群71は、奇数本(7本)の主端子70、具体的には4本の主端子70Cと3本の主端子70Eによって構成されている。主端子群71を構成しない2本の主端子70Eは、それぞれの全体がX方向において領域Aの外に配置されている。主端子群71を構成する主端子70のほうが、主端子群71を構成しない主端子70よりも多い構成となっている。
主端子群71を構成する7本の主端子70のうち、両端に位置する2本の主端子70Cは、X方向においてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。残りの5本の主端子70は、X方向においてそれぞれの全体が領域A1内に配置されている。このように、主端子群71を構成する一部の主端子70は、それぞれの全体が領域A1内に配置され、残りの主端子70は、それぞれの一部が領域A1内に配置されている。特に本例では、主端子群71を構成する複数(5本)の主端子70それぞれの全体が領域A1内に配置されている。
上記したように、主端子70C,70Eは同じ幅W1とされており、主端子70C,70Eの間隔P1も、すべての主端子70で同じとされている。そして、奇数本の主端子70のうち、X方向において真ん中(中央)に配置された主端子70Eにおける幅の中心が、半導体チップ40の中心を通る中心線CL上に位置している。このように、主端子70C,70Eは、X方向において、半導体チップ40の中心を通る中心線CLに対して線対称配置とされている。なお、複数の主端子70Cは中心線CLに対して線対称配置とされ、複数の主端子70Eは中心線CLに対して線対称配置とされている。また、主端子群71を構成する奇数本の主端子70も、中心線CLに対して線対称配置とされている。中心線CLの延設方向は、Z方向及びX方向に直交している。
次に、上記した半導体装置20の効果について説明する。
上記した半導体装置20は、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有しており、主端子70C,70EがX方向において隣り合って配置されている。そして、隣り合う主端子70C,70Eの側面同士が対向している。主端子70C,70Eで主電流の向きは逆向きとなる。このように、主端子70C,70Eは、主電流が流れたときに生じる磁束をお互いに打ち消すように配置されている。したがって、インダクタンスを低減することができる。特に本例では、主端子70C,70Eの側面対向部を複数有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。同じ種類の主端子70を複数にして並列化するため、インダクタンスを低減することができる。
また、連続して配置された少なくとも3本の主端子70によって主端子群71が構成されている。主端子群71を構成する主端子70は、それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40の両端面44,45から延長された延長線EL1,EL2間の領域A1内に配置されている。すなわち、複数の側面対向部が領域A1内に配置されている。これにより、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化、具体的には電流経路を短くすることができる。したがって、インダクタンスを低減することができる。
以上により、上記した半導体装置20によれば、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。なお、側面同士が対向するように複数の主端子70がX方向に並んで配置され、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数有し、連続して配置された少なくとも3本の主端子70により主端子群71が構成され、一部分において同じ種類の主端子70が連続して配置されるようにしてもよい。これによれば、主端子70C,70Eの少なくとも一方を複数にして並列化するため、インダクタンスを低減することができる。また、主端子群71を有することで、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化することができる。これにより、インダクタンスを低減することができる。したがって、本例に準ずる効果を奏することができる。しかしながら、本例に示すように、主端子70C,70Eを隣り合うように配置したほうが、磁束打消しの効果によってインダクタンスをさらに低減することができる。
主端子群71において、X方向において全体が領域A1内に配置される主端子70のほうが、一部のみが領域A1に配置される主端子70よりも、電流経路の簡素化の点ではより好ましい。本例では、主端子群71を構成する主端子70の一部についてそれぞれの全体が領域A1内に配置され、残りの主端子70についてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。主端子群71が、電流経路の簡素化についてより効果的な主端子70を含むため、インダクタンスを効果的に低減することができる。特に本例では、全体が領域内に配置される主端子70を複数含んでいる。電流経路の簡素化についてより効果的な主端子70を複数含むため、インダクタンスをより効果的に低減することができる。
本例では、主端子70の本数が奇数とされている。奇数の場合、X方向において対称性をもたせやすく、主端子70との半導体チップ40との電流経路の偏りを抑制することができる。また、X方向における主端子70の並び順が、一面31側から見ても、裏面32側から見ても同じである。したがって、半導体装置20の配置の自由度を向上することができる。
特に本例では、主端子70C,70Eが、X方向において、半導体チップ40の中心線CLに対して線対称配置とされている。これにより、半導体チップ40の主電流は、中心線CLに対して線対称となるように流れる。主電流は、中心線CLの左右でほぼ均等に流れる。したがって、インダクタンスをさらに低減することができる。また局所的な発熱を抑制することができる。
図8〜図10は別例を示している。図8〜図10では、便宜上、封止樹脂体30及び信号端子80を省略して図示している。図8〜図10では、便宜上、領域A1の図示を省略し、領域A1を規定する延長線EL1,EL2を示している。
図8では、半導体装置20が3本の主端子70、具体的には、1本の主端子70Cと2本の主端子70Eを備えている。すなわち、2つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。真ん中に配置された主端子70Cは、X方向において全体が上記した領域A1に配置され、両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置されている。
図9では、半導体装置20が5本の主端子70、具体的には、2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。すなわち、4つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置され、残り3本の主端子70はそれぞれの全体が領域A1に配置されている。
図10では、半導体装置20が7本の主端子70、具体的には、3本の主端子70Cと4本の主端子70Eを備えている。すなわち、6つの側面対向部を有している。そして、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。両端の主端子70Eは、それぞれの一部が領域A1に配置され、残り5本の主端子70はそれぞれの全体が領域A1に配置されている。
図11は、半導体装置20が備える主端子トータルのインダクタンスについて磁場解析を行った結果を示している。この磁場解析(シミュレーション)では、導電部材50のX方向の長さ(幅)を17mm、主端子70の間隔P1を1.0mmとした。また、同じ半導体装置20を構成する主端子70において、幅W1を互いに等しいものとした。たとえば主端子70を3本有する構成の場合、図11では3端子と示している。図11では、比較例として主端子を2本のみ有する構成(2端子)を示している。9端子は、図7に示した構成と同じ配置の結果である。同様に、3端子、5端子、7端子は、図8〜図10に示した構成と同じ配置の結果である。
端子数が増えるほど、1本当たりの幅は狭くなり、インダクタンス(自己インダクタンス)は増加する。しかしながら、側面対向部が増加し、主端子群71を構成する主端子70の本数も、所定の端子数までは端子数が増えるほど増加するため、インダクタンスを低減できる。3端子、5端子、及び7端子は、図8〜図10に示したように、すべての主端子70によって主端子群71が構成されている。すなわち、すべての主端子70が領域A1内に配置されている。また、9端子は、図7に示したように、7本の主端子70によって主端子群71が構成されている。
図11の結果から、3本以上の主端子70により構成される主端子群71を備えることで、体格の増大を抑制しつつ、比較例に較べて主端子トータルのインダクタンスを低減できることが明らかである。3端子以上では、上記したインダクタンス低減の効果が幅減少によるインダクタンス増加を上回り、インダクタンスが低減するためであると考えられる。特に5本以上の主端子70による主端子群71を備える構成とすると、比較例に較べてインダクタンスを半減以下にできる、すなわちインダクタンス低減に効果的であることが明らかである。
なお、9端子は、上記したように主端子群71を構成する7本の主端子70と、領域A1の外に配置された2本の主端子70を備えている。このように2本の主端子70が領域A1外とされてはいるものの、主端子群71を構成しない主端子70よりも多い主端子70、すなわち大部分の主端子70が領域A1に配置されている。また、側面対向部の数も7端子に較べて側面対向部が2つ多い。よって、7端子よりも低いインダクタンスを示している。
上記した例では、主端子70Eが両端に配置される構成、すなわち主端子70Eのほうが主端子70Cよりも多い構成の例を示したがこれに限定されない。奇数本の主端子70において、主端子70Cを主端子70Eよりも多い構成としてもよい。
すべての主端子70において、封止樹脂体30からの突出部分の長さが等しい例を示したが、これに限定されない。バスバーなどとの接続性を考慮し、隣り合う主端子70C,70Eで突出部分の長さを異ならせてもよい。図12に示す別例では、主端子70Cを主端子70Eよりも長くしている。
図13に示す別例では、本数が少ない主端子70Cの断面積を、本数が多い主端子70Eの断面積よりも大きくし、これにより、主端子70Cトータルと主端子70Eトータルのインピーダンスをほぼ一致させている。したがって、本数が少ない主端子70Cの発熱を抑制することができる。図13では、幅を広くすることにより主端子70Cの断面積を主端子70Eの断面積よりも大きくしているが、主端子70Cの厚みを主端子70Eよりも厚くしてもよい。また、幅と厚みの両方を調整してもよい。図13では、本数が少ない主端子70Cの延設方向の長さを、主端子70Eの延設方向の長さよりも長くしている。長いほうが断面積が大きいため、主端子70の剛性を確保することができる。図12及び図13では7端子の例を示しているが、これに限定されるものではない。
封止樹脂体30からの突出部分において、延設方向の全長で隣り合う主端子70C,70Eが対向する例を示したが、これに限定されない。突出部分の一部で、側面同士が対向しない構成としてもよい。たとえば主端子70C,70Eの少なくとも一方において、突出先端部分が屈曲しており、これにより突出先端部分で対向しない構成としてもよい。延設長さが等しくても、バスバーなどとの接続性を高めることができる。しかしながら、インダクタンス低減の効果は減少する。
主端子70の本数が奇数において、主端子群71を構成する主端子70の本数も奇数の例を示したが、これに限定されない。主端子群71を、偶数本(4本以上)の主端子70により構成してもよい。
半導体装置20は、少なくとも1つの半導体チップ40を備えればよい。たとえば複数の半導体チップ40を備え、これら半導体チップ40が主端子70C,70Eの間で互いに並列接続される構成において、各半導体チップ40に対して上記した主端子70の配置を適用してもよい。
主端子群71を構成するすべての主端子70それぞれの全体が、領域A1内に配置されてもよい。図14に示す別例では、7本の主端子70のうち、5本の主端子70によって主端子群71が構成されている。そして、主端子群71を構成する5本の主端子70は、それぞれの全体が領域A1内に配置されている。これによれば、半導体チップ40の主電極との間の電流経路をより簡素化できる。
主端子70を偶数本(4本以上)を備えてもよい。図15に示す別例では、半導体装置20が、主端子70C,70Eを2本ずつ備えている。主端子70Cと主端子70Eは交互に配置されている。4本の主端子70は、幅W1及び厚みのそれぞれが互いに等しくされている。すなわち、延設方向に直交する断面積が互いに等しくされている。また、Y方向の延設長さも、4本の主端子70で互いに等しくされている。また、すべての主端子70により主端子群71が構成されている。両端に配置された2本の主端子70C,70Eは、X方向においてそれぞれの一部が領域A1内に配置されている。真ん中の2本の主端子70C,70Eは、X方向においてそれぞれの全体が領域A1内に配置されている。
このような構成としても、主端子70C,70Eの側面対向部を複数有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。また、主端子群71を有するため、主端子群71を構成する主端子70と半導体チップ40の主電極との電流経路を簡素化し、インダクタンスを低減することができる。以上により、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。図11には、4端子の結果も示している。図11の結果から、4端子の場合でも、体格の増大を抑制しつつ、比較例に較べて主端子トータルのインダクタンスを低減できることが明らかである。
図15では、すべての主端子70によって主端子群71が構成されているため、インダクタンスを効果的に低減することができる。なお、主端子70の本数が偶数の場合にも、連続して配置された3本以上の主端子70によって主端子群71が構成されればよい。したがって、4本の主端子70を備える構成において、3本により主端子群71が構成され、残りの1本が領域A1の外に配置された構成としてもよい。このように、主端子70の本数が偶数において、主端子群71を、奇数本(3本以上)の主端子70により構成してもよい。
主端子70の本数が偶数の場合、主端子70Cと主端子70Eとが同じ本数であるため、主端子70Cと主端子70Eとで流れる主電流が均等となり、これにより発熱のばらつきを抑制することができる。図15に示す例では、主端子70C,70Eの延設長さが等しく、且つ、断面積も等しくされており、これにより、主端子70Cと主端子70Eのインピーダンスがほぼ等しくなっている。したがって、発熱ばらつきを効果的に抑制することができる。
偶数の本数は4本に限定されない。4本以上の偶数であればよい。たとえば6本の主端子70を備える構成、8本の主端子70を備える構成としてもよい。奇数本同様、隣り合う主端子70C,70Eで突出部分の長さを異ならせてもよい。また、主端子70C,70Eのうち、突出部分の長さが長いほうの断面積を、短いほうの断面積よりも大きくしてもよい。これにより剛性を確保することができる。また、主端子70Cと主端子70Eとでインピーダンスを揃えることができる。突出部分の一部で、側面同士が対向しない構成としてもよい。
リードフレームの一部として、主端子70C,70Eの少なくとも一方とともに設けられた連結部をさらに備え、連結部によって、主端子70C,70Eの少なくとも一方において、同じ主端子同士が連結されてもよい。図16に示す別例では、半導体装置20が5本の主端子70、具体的には2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。また、上記したリードフレーム100が、主端子70E同士を連結する連結部96を有している。封止樹脂体30からの突出長さは、主端子70Eのほうが主端子70Cよりも長くされており、連結部96は主端子70Eの突出先端部分を連結している。連結部96はX方向に延設されており、Y方向において主端子70Cとは離れて設けられている。連結部96は、Z方向において主端子70C,70Eの突出部分と同じ位置に配置されている。
このように、連結部96によって同電位の主端子70(主端子70E)を連結すると、バスバーなどとの接続点を減らすことができる。すなわち、接続性を向上することができる。特に図16では、本数の多い主端子70Eを連結している。これによれば、同一のリードフレーム100に主端子70C,70E及び連結部96を備える構成において、接続点をより少なくすることができる。なお、主端子70Eに代えて、主端子70Cを連結部96にて連結してもよい。主端子70C,70Eのうち、本数の少ないほうを連結してもよい。主端子70の本数及び配置は図16に示す例に限定されない。主端子70C,70Eの一方のみに連結部96を設ける場合、連結部96を上記したように主端子70C,70Eの突出分と同一平面に設けることもできる。偶数本の主端子70を備える構成と組み合わせてもよい。
また、主端子70C,70Eのそれぞれを連結部にて連結してもよい。図17及び図18に示す別例では、導電部材50C,50Eが本体部51C,51Eを有し、延設部52C,52Eを有していない。そして、同一のリードフレームに、導電部材50C、主端子70C、及び信号端子80が構成されている。また、主端子70Cを含むリードフレームとは別のリードフレームに、導電部材50E及び主端子70Eが構成されている。主端子70C,70Eは対応する導電部材50C,50Eから延設されている。図18は、図17のXVIII-XVIIIに沿う半導体装置20の断面図である。
図17及び図18では、主端子70C側のリードフレームに連結部96Cが設けられ、主端子70E側のリードフレームに連結部96Eが設けられている。そして、連結部96Cにより、突出先端部にて主端子70C同士が連結されている。また、連結部96Eにより、突出先端部にて主端子70E同士が連結されている。主端子70C,70Eは突出部分に屈曲部を有しており、これにより連結部96C,96EがZ方向において離反している。すなわち、連結部96C,96Eは、Z方向において互いに異なる位置に配置されている。したがって、延設長さが同じでも、主端子70C,70Eのそれぞれを連結部96C,96Eにて連結することができる。そして、接続点数をさらに少なくすることができる。
図19及び図20に示す別例では、半導体装置20が、互いに並列接続される複数の半導体チップ40を備えている。具体的には、半導体チップ40として、半導体チップ40aと、半導体チップ40bを備えている。なお、図19は、図20に示すXIX-XIX線に対応する半導体装置20の断面図である。半導体チップ40a,40bのコレクタ電極41は、同じ導電部材50Cの実装面53Cに接続されている。また、半導体チップ40a,40bのエミッタ電極42は、個別に配置されたターミナル60を介して、同じ導電部材50Eの実装面53Eに接続されている。本実施形態では、2つの半導体チップ40a,40bが、互いにほぼ同じ平面形状、具体的には平面略矩形状をなすとともに、互いにほぼ同じ大きさとほぼ同じ厚みを有している。半導体チップ40a,40bは、Z方向においてほぼ同じ高さに位置するとともに、X方向において横並びで配置されている。
図20に示すように、X方向において配置が連続する2本以上の主端子70によって主端子群72が構成されている。半導体装置20は、主端子群72として、半導体チップ40aに対応する主端子群72aと、半導体チップ40bに対応する主端子群72bを有している。主端子群72aを構成する主端子70それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40aの両端面44a,45aから延長された延長線EL1a,EL2a間の領域A1a内に配置されている。また、主端子群72bを構成する主端子70それぞれの少なくとも一部が、X方向において、半導体チップ40bの両端面44b,45bから延長された延長線EL1b,EL2b間の領域A1b内に配置されている。
半導体装置20は、5本の主端子70を備えている。具体的には、2本の主端子70Cと3本の主端子70Eを備えている。主端子70の幅W1及び厚みは互いに等しく、間隔P1もすべて等しくされている。そして、真ん中の主端子70Eが領域A1a,A1bの外に配置されている。X方向において真ん中の主端子70Eよりも半導体チップ40a側に配置された2本の主端子70C,70Eにより主端子群72aが構成され、真ん中の主端子70Eよりも半導体チップ40b側に配置された2本の主端子70C,70Eにより主端子群72bが構成されている。
さらに、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eはそれぞれの全体が領域A1aに配置されている。同じく、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eはそれぞれの全体が領域A1bに配置されている。そして、2つの半導体チップ40の素子的中心を通る中心線CLmに対して、5本の主端子70が線対称配置とされている。素子的中心とは、半導体チップ40a,40bの並び方向において中心間の中央位置であり、中心線CLmは、並び方向に直交し、素子的中心を通る仮想線である。
このように、複数の半導体チップ40が並列接続された半導体装置20において、主端子70Cと主端子70Eとが交互に配置されている。そして、隣り合う主端子70C,70Eの側面同士が対向している。このように、主端子70Cと主端子70Eとの側面対向部を複数、具体的には4つ有するため、インダクタンスを効果的に低減することができる。また、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eそれぞれの少なくとも一部が、領域A1a内に配置されている。したがって、主端子群72aを構成する主端子70C,70Eと半導体チップ40aの主電極との電流経路を簡素化し、これによりインダクタンスを低減することができる。同じく、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eそれぞれの少なくとも一部が領域A1b内に配置されている。したがって、主端子群72bを構成する主端子70C,70Eと半導体チップ40bの主電極との電流経路を簡素化し、これによりインダクタンスを低減することができる。以上により、従来よりも主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
また、奇数本の主端子70が、2つの半導体チップ40の中心線CLmに対して線対称配置とされている。換言すれば、側面対向部が線対称配置とされている。したがって、半導体チップ40a,40bの主電流は、中心線CLmに対して線対称となるように流れる。すなわち、半導体チップ40a側のインダクタンスと、半導体チップ40b側のインダクタンスがほぼ等しくなっている。このように、インダクタンスを揃えることで、電流アンバランスを抑制することができる。
2つの半導体チップ40が並列接続される例を示したが、これに限定されない。3つ以上の半導体チップ40が並列接続される構成にも適用できる。主端子70の本数も特に限定されない。主端子群72のそれぞれが、主端子70C,70Eを含む2本以上の主端子70により構成されればよい。たとえば、7本の主端子70を備え、3本ずつの主端子70によって主端子群72a,72bが構成されてもよい。図16〜図18に示した連結部96(86C,86E)を組み合わせてもよい。
スイッチング素子とダイオードが同じ半導体チップ40に一体的に形成される例を示したが、これに限定されない。スイッチング素子とダイオードを別チップとしてもよい。両面放熱構造の半導体装置20として、ターミナル60を備える例を示したが、これに限定されない。ターミナル60を備えない構成としてもよい。たとえば、ターミナル60の代わりに、導電部材50Eに、エミッタ電極42に向けて突出する凸部を設けてもよい。放熱面54C,54Eが、封止樹脂体30から露出される例を示したが、封止樹脂体30から露出されない構成としてもよい。たとえば図示しない絶縁部材によって放熱面54C,54Eを覆ってもよい。絶縁部材を放熱面54C,54Eに貼り合わせた状態で、封止樹脂体30を成形してもよい。
(パワーモジュール)
本実施形態の電力変換装置5に適用可能なパワーモジュール110の一例について説明する。パワーモジュール110は、上記した1組の並列回路11を構成する。
図21〜図27に示すように、パワーモジュール110は、半導体装置20と、冷却器120と、コンデンサC1と、Pバスバー130と、Nバスバー140と、出力バスバー150と、駆動基板160と、外部接続端子170と、保護部材180を備えている。図21、図23〜図26は平面図ではあるが、保護部材180の内部要素を分かりやすくするために、内部要素を実線で示している。図27は、半導体装置20、コンデンサC1、及び各バスバー130,140,150の接続を説明するための模式的な図である。
半導体装置20は、上記した1in1パッケージ構造をなしている。パワーモジュール110は、2つの半導体装置20を備えている。半導体装置20の1つが上アーム10Uを構成し、別の1つが下アーム10Lを構成する。すなわち、半導体装置20として、上アーム10Uを構成する半導体装置20Uと、下アーム10Lを構成する半導体装置20Lを備えている。半導体装置20U,20Lの基本構成は、互いにほぼ同じとなっている。半導体装置20U,20Lは、7本の主端子70、具体的には、3本の主端子70C及び4本の主端子70Eをそれぞれ有している。主端子70C,70Eは、X方向に交互に配置されている。以下では、半導体装置20Uが備え、上アーム10Uを構成する半導体チップ40を半導体チップ40Uと示し、半導体装置20Lが備え、下アーム10Lを構成する半導体チップ40を半導体チップ40Lと示す。
半導体装置20Lは、図12に示した構造と同じ構成となっている。主端子70Cのほうが主端子70Eよりも、封止樹脂体30からの突出長さが長い構成となっている。半導体装置20Uは、半導体装置20Lとは逆の構成となっている。主端子70Eのほうが主端子70Cよりも、封止樹脂体30からの突出長さが長い構成となっている。このように、半導体装置20Uでは主端子70Eが長くされ、半導体装置20Lでは主端子70Cが長くされている。半導体装置20Uの主端子70Cと半導体装置20Lの主端子70Eが同じ長さとされ、半導体装置20Uの主端子70Eと半導体装置20Lの主端子70Cが同じ長さとされている。
半導体装置20U,20Lは、所定の隙間を有しつつX方向に並んで配置されている。すなわち、半導体チップ40の板厚方向、すなわちZ方向に対して直交する方向に並んで配置されている。半導体装置20U,20Lは、Z方向において、封止樹脂体30の一面31同士が同じ側となり、裏面32同士が同じ側となるように配置されている。半導体装置20U,20Lの一面31同士はZ方向において略面一の位置関係とされ、裏面同士はZ方向において略面一と位置関係とされている。
半導体装置20U,20Lのそれぞれにおいて、信号端子80における封止樹脂体30からの突出部分は、略L字状をなしている。信号端子80の突出部分は、略90度の屈曲部を1つ有している。信号端子80の突出部分のうち、封止樹脂体30の根元から屈曲部までがY方向に延設され、屈曲部から突出先端までがZ方向であって、コンデンサC1とは反対側に延びている。
冷却器120は、主として、半導体装置20を冷却する。冷却器120は、熱伝導性に優れた金属材料、たとえばアルミニウム系の材料を用いて形成されている。冷却器120は、供給管121と、排出管122と、熱交換部123を有している。冷却器120は、パワーモジュール110に設けられているため、モジュール内冷却器とも称される。
熱交換部123は、一対のプレート124,125によって構成されている。プレート124,125は、平面略矩形状の金属薄板を用いて形成されている。プレート124,125の少なくとも一方は、プレス加工することで、Z方向に膨らんだ形状、たとえば底の浅い鍋底形状をなしている。本例では、プレート124が鍋底形状をなしている。また、プレート124,125の外周縁部同士が、かしめなどによって固定されるとともに、ろう付けなどによって全周で互いに接合され、これにより、プレート124,125の間に流路126が形成されている。
熱交換部123は、全体として扁平形状の管状体となっている。冷却器120は、2つの熱交換部123を有しており、熱交換部123は、Z方向に2段配置されている。2つの半導体装置20U,20Lは、X方向に並んで配置された状態で、2つの熱交換部123により挟持されている。2つの熱交換部123は、プレート124同士が対向するように配置されている。熱交換部123の1つは半導体装置20の一面31側に配置され、熱交換部123の別の1つは裏面32側に配置される。上記したように放熱面54C,54Eが封止樹脂体30から露出する構成では、半導体装置20と熱交換部123のプレート124との間に、グリースやセラミック板、樹脂材などの電気絶縁部材が配置される。
供給管121は、その内部に流路が形成された筒状体であり、Z方向に延設されている。供給管121は、平面略矩形状の熱交換部123に対し、X方向における一方の端部であって、Y方向における主端子70側の端部に配置されている。そして、熱交換部123のそれぞれに接続され、供給管121の流路が熱交換部123の流路126に連通している。Z方向において、供給管121の一端は開口しており、他端が2段目の熱交換部123に接続されている。1段目の熱交換部123の流路126は、供給管121の延設途中で、供給管121の流路に連なっている。なお、1段目が供給管121及び排出管122の開口端に近い側、2段目が遠い側である。供給管121の開口端から一部分は、保護部材180の外へ突出している。
排出管122は、その内部に流路が形成された筒状体であり、Z方向に延設されている。排出管122は、平面略矩形状の熱交換部123に対し、X方向において供給管121とは反対の端部であって、Y方向において信号端子80側の端部に配置されている。そして、熱交換部123のそれぞれに接続され、排出管122の流路が熱交換部123の流路126に連通している。排出管122は、供給管121とZ方向の同じ側で開口している。開口端とは反対の端部が2段目の熱交換部123に接続されている。1段目の熱交換部123の流路126は、排出管122の延設途中で、排出管122の流路に連なっている。排出管122の開口端から一部分は、保護部材180の外へ突出している。
図26に二点鎖線の矢印で示すように、供給管121から流入した冷媒は、熱交換部123内の流路126を拡がり、排出管122から排出される。上記したように、供給管121と排出管122は、平面略矩形状の対角位置に設けられている。このように、対角位置に設けることで、X方向及びY方向において、供給管121と排出管122の間に配置された半導体チップ40U,40Lを効果的に冷却することができる。なお、図示しないが、熱交換部123の流路126内に、インナーフィンを配置してもよい。インナーフィンは、波型に屈曲形成された金属板である。インナーフィンの配置により、プレート124,125と、流路126を流れる冷媒との間における熱伝達を促進することができる。
流路126に流す冷媒としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。冷却器120は、主として半導体装置20を冷却するものである。しかしながら、冷却機能に加えて、環境温度が低い場合に温める機能を持たせてもよい。この場合、冷却器120は温度調節器と称される。また、冷媒は熱媒体と称される。
コンデンサC1は、パワーモジュール110が備える1組の半導体装置20U,20Lの近傍に配置され、上記したように、少なくともスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。このため、コンデンサC1の静電容量は、たとえば10〜20μFとされている。コンデンサC1は、略直方体状をなしている。コンデンサC1は扁平形状をなしており、厚み、すなわちZ方向の長さが、X方向の長さ及びY方向の長さに対して十分に短くされている。このように、コンデンサC1は小型なものとされている。コンデンサC1としては、たとえばフィルムコンデンサを用いることができる。
本例では、Y方向よりもX方向に長い平面長方形をなしている。Z方向の投影視において、コンデンサC1の大部分は、冷却器120の熱交換部123と重なる位置に配置されている。同投影視において、半導体装置20U,20Lの大部分、具体的には主端子70の突出部分及び信号端子80の突出部分を除く部分と重なっている。したがって、コンデンサC1は、Z方向において半導体装置20U,20Lと並んで配置されている。平面長方形のコンデンサC1は、X方向の両端部分が、冷却器120と重ならない位置、すなわち冷却器120の外側に配置されている。
コンデンサC1は、半導体装置20との間に熱交換部123を挟むように配置されている。コンデンサC1は、熱交換部123に対して、半導体装置20とは反対側に配置されている。本例では、コンデンサC1が、1段目の熱交換部123に対して半導体装置20とは反対側に配置されている。すなわち、供給管121及び排出管122の開口端側に配置されている。コンデンサC1は、Z方向において、供給管121及び排出管122の開口端よりも半導体装置20に近い位置に配置されている。コンデンサC1は、Z方向において熱交換部123側の面に外部接続用の図示しない正極端子を有し、正極端子とは反対の面に図示しない負極端子を有している。
Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、導電性に優れる金属、たとえば銅を含む金属板材である。本例では、各バスバーにおいて厚みがほぼ均一とされている。Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、互いにほぼ同じ厚みとされている。金属板材としては、部分的に厚みの異なる異形条を用いることもできる。Pバスバー130、Nバスバー140、及び出力バスバー150は、冷却器120と電気的に分離されている。
Pバスバー130は、接続部131と、共通配線部132と、並列配線部133を有している。接続部131は、コンデンサC1の正極端子に接続される部分である。本例では、Z方向の投影視において、コンデンサC1と重なる部分全体が接続部131とされている。なお、図示しないが、X方向又はY方向の投影視においてコンデンサC1と重なる部分、すなわちコンデンサC1の側面に接続部131を設けてもよい。 共通配線部132は、接続部131におけるY方向の一端から延設されている。共通配線部132は、Pバスバー130のうち、上記した共通配線11Pとして機能する部分である。これにより、パワーモジュール110内に構成される1組の上下アーム回路10とコンデンサC1とが、それぞれ単独で上記したVHライン12Hに接続されるのではなく、共通で接続されることとなる。共通配線部132は、接続部131よりもX方向の長さ、すなわち幅が狭くされている。共通配線部132は、X方向において、接続部131の中央部分に連なっている。共通配線部132は、接続部131に対して略面一で、Y方向に延設されている。共通配線部132の一部分は、保護部材180の外へ突出している。
並列配線部133は、少なくとも、コンデンサC1の正極端子と上下アーム回路10の上アーム10Uとを電気的に接続する配線、すなわち上下アーム回路10とコンデンサC1とを並列接続する配線として機能する。さらに本例では、上アーム10Uを共通配線11P、すなわち共通配線部132に電気的に接続する配線としても機能する。並列配線部133は、接続部131に対し、共通配線部132とは反対の端部から延設されている。
並列配線部133は、接続部131よりも幅が狭くされている。並列配線部133は、一定の幅で延設されている。並列配線部133は、X方向においてコンデンサC1を二等分する中心線CL1(図23参照)を跨がないように、中心線CL1に対して一方に偏って配置されている。並列配線部133は、半導体装置20U,20Lの並び方向において、半導体装置20U(半導体チップ40U)の側で接続部131に連なっている。
並列配線部133は、略L字状をなしている。並列配線部133は、接続部131との境界部からY方向に沿って延びる平行部134と、平行部134に対して折り曲げられ、Z方向に沿って延びる折曲部135を有している。このため、平行部134は、Y方向延設部とも称される。折曲部135は、Z方向延設部とも称される。平行部134は、Y方向であって、共通配線部132とは反対側に延設されている。平行部134は、接続部131に対して略面一で、Y方向に延設されている。
平行部134は、Z方向の投影視において、半導体装置20Uの7本の主端子70C,70Eのそれぞれの少なくとも一部と重なっている。平行部134は、半導体装置20Uの主端子70Cの突出先端とほぼ同じ位置まで延設されており、3本の主端子70Cの突出部分全体が投影視において重なっている。4本の主端子70Eは、コンデンサC1に対して、平行部134よりも離れた位置まで延設されている。
折曲部135は、Z方向において、コンデンサC1とは反対側に延びている。折曲部135の板厚方向は、Y方向に略平行とされている。本例では、折曲部135全体が、Y方向において出力バスバー150と対向する対向部135aとされている。対向部135aと出力バスバー150は、板厚方向の面、すなわち板面同士が対向している。対向部135aの先端、すなわち並列配線部133の延設の先端には、半導体装置20Uの主端子70Cが接続されるように凸部136が形成されている。凸部136は主端子70Cごとに設けられている。主端子70Cは、対応する凸部136の先端面に配置された状態で、レーザ溶接などによって接合されている。このように凸部136を設けると、凸部136設けられていない凹の部分を主端子70Eが通過するため、Pバスバー130と主端子70Eとの接触を防ぐことができる。
Nバスバー140は、接続部141と、共通配線部142と、並列配線部143を有している。接続部141は、コンデンサC1の負極端子に接続される部分である。本例では、Z方向の投影視において、コンデンサC1と重なる部分全体が接続部141とされている。なお、接続部131同様、X方向又はY方向の投影視においてコンデンサC1と重なる部分、すなわちコンデンサC1の側面に接続部141を設けてもよい。コンデンサC1及びコンデンサC1の両面に配置された接続部131,141は、冷却器120と電気的に分離されている。接続部131,141を含むコンデンサC1と冷却器120との間には、電気絶縁部材が介在している。
共通配線部142は、接続部141におけるY方向の一端から延設されている。共通配線部142は、Nバスバー140のうち、上記した共通配線11Nとして機能する部分である。これにより、パワーモジュール110内に構成される1組の上下アーム回路10とコンデンサC1とが、それぞれ単独で上記したNライン13に接続されるのではなく、共通で接続されることとなる。共通配線部142は、接続部141よりも幅が狭くされており、共通配線部132とほぼ同じ幅とされている。共通配線部142は、X方向において、接続部141の中央部分に連なっている。共通配線部142は、接続部141に対して略面一で、Y方向に延設されている。共通配線部132の一部分は、保護部材180の外へ突出している。
Z方向の投影視で共通配線部132,142はほぼ一致する。共通配線部132,142は、Z方向に、コンデンサC1の厚みと略等しい間隔を有して対向配置されている。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
並列配線部143は、少なくとも、コンデンサC1の負極端子と上下アーム回路10の下アーム10Lとを電気的に接続する配線、すなわち上下アーム回路10とコンデンサC1とを並列接続する配線として機能する。さらに本例では、下アーム10Lを共通配線11N、すなわち共通配線部142に電気的に接続する配線としても機能する。並列配線部143は、接続部141に対し、共通配線部142とは反対の端部から延設されている。
並列配線部143は、接続部141よりも幅が狭くされている。並列配線部143は、一定の幅で延設されている。並列配線部143は、コンデンサC1の中心線CL1を跨がないように、中心線CL1に対して並列配線部133とは反対側に配置されている。並列配線部143は、半導体装置20U,20Lの並び方向において、半導体装置20L(半導体チップ40L)の側で接続部141に連なっている。
並列配線部143は、略L字状をなしている。並列配線部143は、接続部141との境界部からY方向に沿って延びる平行部144と、平行部144に対して折り曲げられ、Z方向に沿って延びる折曲部145を有している。平行部144は、Y方向であって、共通配線部142とは反対側に延設されている。平行部144は、接続部141に対して略面一で、Y方向に延設されている。平行部134,144は、電気的な絶縁が確保できる間隔を有して、X方向に横並びで配置されている。平行部134,144は、側面同士が対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
平行部144は、Z方向の投影視において、半導体装置20Lの7本の主端子70C,70Eのそれぞれの少なくとも一部と重なっている。平行部144は、半導体装置20Lの主端子70Eの突出先端とほぼ同じ位置まで延設されており、4本の主端子70Eの突出部分全体が投影視において重なっている。3本の主端子70Cは、コンデンサC1に対して、平行部144よりも離れた位置まで延設されている。半導体装置20Uの主端子70Cと半導体装置20Lの主端子70Eの突出先端は、Y方向でほぼ同じ位置とされており、これにより平行部134,144の延設の先端も互いにほぼ同じ位置とされている。
折曲部145は、Z方向において、コンデンサC1とは反対側に延びている。折曲部145の板厚方向は、Y方向に略平行とされている。折曲部145の延設の先端は、Pバスバー130の折曲部135の延設の先端とほぼ同じ位置とされている。折曲部135,145も、電気的な絶縁が確保できる間隔を有して、X方向に横並びで配置されている。折曲部135,145は、側面同士が対向している。これにより、主回路配線のインダクタンスを低減することができる。
本例では、Nバスバー140のほうが、Pバスバー130よりも半導体装置20からZ方向に離れた位置とされている。そして、折曲部145の一部が、Y方向において出力バスバー150と対向する対向部145aとされている。対向部145aと出力バスバー150は、板面同士が対向している。対向部145aの先端、すなわち並列配線部143の延設の先端には、半導体装置20Lの主端子70Eが接続されるように凸部146が形成されている。凸部146は主端子70Eごとに設けられている。主端子70Eは、対応する凸部146の先端面に配置された状態で、レーザ溶接などによって接合されている。このように凸部146を設けると、凸部146設けられていない凹の部分を主端子70Cが通過するため、Nバスバー140と主端子70Cとの接触を防ぐことができる。
並列配線部133と半導体装置20Uの主端子70Cによって、コンデンサC1の正極と上アーム10Uのコレクタ電極が接続され、並列配線部143と半導体装置20Lの主端子70Eによって、コンデンサC1の負極と下アーム10Lのエミッタ電極が接続されている。このように、並列配線部133及び半導体装置20Uの主端子70Cと、並列配線部143及び半導体装置20Lの主端子70Eによって、上下アーム回路10とコンデンサC1が並列接続され、並列回路11が構成されている。そして、共通配線部132,142によって、並列回路が電力ラインであるVHライン12H、Nライン13に接続されるように構成されている。
出力バスバー150は、上アーム10Uと下アーム10Lとの接続点を、モータジェネレータの三相巻線に接続するためのバスバーである。出力バスバー150は、Oバスバーとも称される。出力バスバー150は、Y方向において、信号端子80側ではなく、主端子70側に配置されている。出力バスバー150は、板厚方向をY方向として、屈曲部を有することなくX方向に延設されている。出力バスバー150は、上記した出力配線15の少なくとも一部を構成する。なお、出力バスバー150の周辺に、図示しない電流センサを配置することもできる。
出力バスバー150は、Z方向の長さ、すなわち幅の広い幅広部151と、幅広部151よりも幅の狭い幅狭部152を有している。幅狭部152は、幅広部151の一端に連なり、幅広部151に対して略面一で、X方向に延設されている。幅広部151は、その全体が保護部材180の内部に配置されており、幅狭部152は一部が保護部材180の内部に配置され、残りの部分が保護部材180の外に突出している。
幅広部151は、X方向において、並列配線部143の中心線CL1に対して遠い端部と、並列配線部133の中心線CL1に対して遠い端部との範囲とほぼ一致するように設けられている。X方向において、幅広部151の先には、供給管121が配置されている。幅広部151は、Y方向において、折曲部135,145との間に所定の間隔を有して設けられている。所定の間隔とは、たとえば半導体装置20Uにおいて、主端子70C,70Eの突出先端間の長さから、出力バスバー150の板厚を引いた長さにほぼ一致する。幅広部151は、Z方向において、コンデンサC1とオーバーラップする位置から、2段目の熱交換部123を構成するプレート125までの範囲に設けられている。
幅広部151には、複数の貫通孔153が形成されている。この貫通孔153には、半導体装置20Uの主端子70Eと、半導体装置20Lの主端子70Cが挿入される。挿入状態で、主端子70は、レーザ溶接などにより、幅広部151(出力バスバー150)に接続されている。また、貫通孔153を避けるように、Pバスバー130との対向部154pと、Nバスバー140との対向部154nが構成されている。出力バスバー150の対向部154pとPバスバー130の対向部135aがY方向に所定の間隔を有して対向し、出力バスバー150の対向部154nとNバスバー140の対向部145aがY方向に所定の間隔を有して対向している。
供給管121が存在するため、並列配線部143は並列配線部133よりも幅が狭くされている。これにより、対向部145aは対向部135aより幅が狭くされている。しかしながら、コンデンサC1において、負極端子を熱交換部123とは反対側に配置することで、対向部145aにおける延設長さを稼いでおり、対向部145aは対向部135aよりもZ方向(延設方向)の長さが長くされている。これにより、対向部135a及び対向部154pの対向面積と、対向部145a及び対向部154nの対向面積がほぼ等しくなっている。X方向において体格の増大を抑制しつつ、インダクタンスを低減することができる。
駆動基板160は、プリント基板に図示しない電子部品が実装されてなる。駆動基板160には、制御回路部9から駆動指令が入力される上記した駆動回路部(ドライバ)が形成されている。駆動基板160が、回路基板に相当する。駆動基板160は、平面略矩形状をなしている。本例では、駆動基板160の大きさが、X方向において冷却器120の熱交換部123とほぼ一致し、Y方向において熱交換部123よりも長くされている。Z方向からの投影視において、駆動基板160は、半導体装置20U,20Lの大部分と重なるように設けられている。具体的には、主端子70の一部分を除いて重なるように設けられている。Y方向において、主端子70の一部、折曲部135,145、出力バスバー150は、駆動基板160と重ならないように配置されている。また、主端子70とは反対側において、共通配線部132,142が駆動基板160よりも外側に突出している。
駆動基板160には、半導体装置20の信号端子80が接続されている。本例では、駆動基板160に図示しない複数の貫通孔が形成され、貫通孔のそれぞれに信号端子80が挿入実装されている。これにより、駆動基板160に形成された駆動回路部から、信号端子80を通じて駆動信号が出力される。信号端子80は、X方向に並んで配置されている。複数の信号端子80は、駆動基板160におけるY方向の一方の端部付近で、X方向に一列に並んで挿入実装されている。
外部接続端子170は、制御回路部9が形成された後述する制御基板290と駆動基板160とを電気的に接続するための端子である。駆動基板160には、複数の外部接続端子170が接続されている。本例では、駆動基板160に図示しない複数の貫通孔が形成され、貫通孔のそれぞれに外部接続端子170が挿入実装されている。外部接続端子170の一部は、制御回路部9の駆動指令を、駆動基板160の駆動回路部に伝達する。
外部接続端子170は、略L字状をなしている。外部接続端子170は、略90度の屈曲部を1つ有している。外部接続端子170のうち、駆動基板160との接続部から屈曲部までがZ方向に延設され、屈曲部から先端までがY方向の共通配線部132,142側に延設されている。そして、先端から所定範囲の部分が、保護部材180の外へ突出している。
保護部材180は、パワーモジュール110を構成する他の要素を保護している。保護部材180は、パワーモジュール110の外郭をなしている。保護部材180としては、他の要素を一体的に封止する封止樹脂体、予め成形されたケースなどを用いることができる。ケースの場合、保護性を高めるために、ポッティング材などを併用してもよい。本例では、保護部材180として封止樹脂体を採用している。封止樹脂体は、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いて成形されたものであり、モールド樹脂、樹脂成形体とも称される。封止樹脂体は、たとえばトランスファモールド法により成形される。
保護部材180は、Z方向において、一面181と、一面181と反対の裏面182を有している。一面181及び裏面182は、Z方向に直交する平面となっている。本例の保護部材180は、略四角錐台形状をなしている。このため、保護部材180は、4つの側面183〜186を有している。一面181を基準面とすると、いずれの側面183〜186も一面181となす角度が鋭角の傾斜面となっている。
パワーモジュール110を構成する要素は、一面181側から裏面182に向けて、Nバスバー140の接続部141、コンデンサC1、Pバスバー130の接続部131、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、駆動基板160の順で配置されている。供給管121及び排出管122は、一面181から保護部材180の外へ突出している。裏面182からは、何も突出していない。なお、図示しないが、一面181側から裏面182に向けて、駆動基板160、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、Nバスバー140の接続部141、コンデンサC1、Pバスバー130の接続部131の順で配置されてもよい。
Pバスバー130及びNバスバー140の共通配線部132,142は、Y方向において信号端子80側の側面183から保護部材180の外へ突出している。側面183からは、外部接続端子170も突出している。図21に示すように、X方向において、半導体装置20U側の外部接続端子170と、半導体装置20L側の外部接続端子170の間に、共通配線部132,142が配置されている。また、図22に示すように、外部接続端子170は裏面182に近い位置で突出し、共通配線部132,142は一面181に近い位置で突出している。側面183とは反対の側面184、すなわち主端子70側の側面184からは、何も突出していない。出力バスバー150の幅狭部152は、X方向において半導体装置20U側の側面185から保護部材180の外へ突出している。側面185とは反対の側面186、すなわち半導体装置20L側の側面からは、何も突出していない。
このように、保護部材180の一面181からは、供給管121及び排出管122のみが突出している。このため、一面181側に、パワーモジュール110とは別の冷却器を配置し、これによりパワーモジュール110を冷却する場合、別の冷却器と供給管121及び排出管122と接続しやすい。共通配線部132,142と出力バスバー150とが異なる側面から突出しているため、電力ラインや三相巻線との接続を簡素化することができる。
ここで、上下アーム回路10のスイッチングに伴い生じるサージは、単位時間当たりの電流変化量(電流変化率)が大きいほど、また、配線インダクタンスが大きいほど大きくなる。上記パワーモジュール110では、配線インダクタンスを小さくすることで、上記サージの低減を図っている。以下、上記したパワーモジュール110の構造のうち、配線インダクタンスを小さくしてサージ低減を可能にする構造について説明する。
図28は、図1の等価回路図からインバータ7、平滑コンデンサC2及びモータジェネレータ3を抽出して示した回路図であり、回路に寄生している配線インダクタンスを図示している。図28中の一点鎖線に示すように、各相のパワーモジュール110は、Pライン12及びNライン13の間で並列に接続されていることは先述した通りである。
そして、Pライン12のうち、各相のパワーモジュール110が接続されている間の部分で生じる配線インダクタンスを、相間上インダクタンスL2Pと呼ぶ。具体的には、Pライン12のうち、U相の共通配線部132との接続箇所とV相の共通配線部132との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間上インダクタンスL2Pである。また、Pライン12のうち、V相の共通配線部132との接続箇所とW相の共通配線部132との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間上インダクタンスL2Pである。また、相間上インダクタンスL2Pに比例して生じるインピーダンスを相間上インピーダンスと呼ぶ。
また、Nライン13のうち、各相のパワーモジュール110が接続されている間の部分で生じる配線インダクタンスを、相間下インダクタンスL2Nと呼ぶ。具体的には、Nライン13のうち、U相の共通配線部142との接続箇所とV相の共通配線部142との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間下インダクタンスL2Nである。また、Nライン13のうち、V相の共通配線部142との接続箇所とW相の共通配線部142との接続箇所との相間部分で生じる配線インダクタンスが相間下インダクタンスL2Nである。また、相間下インダクタンスL2Nに比例して生じるインピーダンスを相間下インピーダンスと呼ぶ。
パワーモジュール110の内部における、コンデンサC1の正極端子から上アーム10Uまでの電気経路の配線インダクタンスを相内上インダクタンスL1Pと呼ぶ。具体的には、Pバスバー130の平行部134および折曲部135で生じる配線インダクタンスが相内上インダクタンスL1Pである。また、相内上インダクタンスL1Pを形成する部分の配線を上配線11Paと呼び、相内上インダクタンスL1Pに比例して生じるインピーダンスを相内上インピーダンスと呼ぶ。
パワーモジュール110の内部における、コンデンサC1の負極端子から下アーム10Lまでの電気経路の配線インダクタンスを、相内下インダクタンスL1Nと呼ぶ。具体的には、Nバスバー140の平行部144および折曲部145で生じる配線インダクタンスが相内下インダクタンスL1Nである。また、相内下インダクタンスL1Nを形成する部分の配線を下配線11Naと呼び、相内下インダクタンスL1Nに比例して生じるインピーダンスを相内下インピーダンスと呼ぶ。
図28では、インバータ7を例に各インピーダンスを説明しているが、インバータ7に並列に接続されたインバータ及びコンバータについても、以下のように各インピーダンスは対応する。すなわち、各相のうち第1相に設けられたパワーモジュール110を第1パワーモジュールとし、第2相に設けられたパワーモジュール110を第2パワーモジュールとする。そして、第1パワーモジュールにおける、コンデンサC1の正極端子から上アーム10Uまでの電気経路のインピーダンスが相内上インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールに係るコンデンサC1の正極端子から、第2パワーモジュールに係る上アーム10Uまでの電気経路のインピーダンスを相間上インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールにおける、コンデンサC1の負極端子から下アーム10Lまでの電気経路のインピーダンスが相内下インピーダンスに相当する。第1パワーモジュールに係るコンデンサC1の負極端子から、第2パワーモジュールに係る下アーム10Lまでの電気経路のインピーダンスが相間下インピーダンスに相当する。
そして、相間上インダクタンスL2Pを形成する配線長さは、相内上インダクタンスL1Pを形成する配線長さよりも長い。そのため、相間上インダクタンスL2Pは相内上インダクタンスL1Pよりも大きく、相間上インピーダンスは相内上インピーダンスより大きい。相間下インダクタンスL2Nを形成する配線長さは、相内上インダクタンスL1Pを形成する配線長さよりも長い。そのため、相間下インダクタンスL2Nは相内下インダクタンスL1Nよりも大きく、相間下インピーダンスは相内下インピーダンスより大きい。なお、相間上インダクタンスL2Pおよび相間下インダクタンスL2Nのそれぞれは、相内上インダクタンスL1Pに相内下インダクタンスL1Nを加算した値よりも大きい。
図28中の矢印Y1は、V相の並列回路11で形成される閉ループ回路において、サージ電圧がコンデンサC1に吸収される経路を示す。このサージ電圧は、V相のスイッチング素子Q1,Q2のターンオンおよびターンオフ時に生じるものである。U相及びW相においても同様にして、矢印Y1の如くサージ電圧がコンデンサC1に吸収される。このように同一相内で発生と吸収が為されるサージ電圧は、以下の説明では自己サージ電圧とも呼ばれる。
閉ループ回路は、上記並列回路11により形成され、コンデンサC1の正極端子、上配線11Pa、上下アーム回路10、下配線11Na及びコンデンサC1の負極端子が順に直列接続された、電力ラインを含まない回路である。閉ループ回路は、上述の如くサージ電圧が吸収される経路であるとともに、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷がコンデンサC1からスイッチング素子Q1,Q2へ供給される経路であるとも言える。
また、閉ループ回路は、共通配線11P,11Nを含まない回路である。換言すれば、Pバスバー130は、上配線11Paを形成する図28中の二点鎖線に示す部分と、共通配線11Pを形成する部分とに分岐している。Pバスバー130の共通配線11Pは、Pライン12及び上配線11Paを接続する上電力配線とも呼ばれる。Nバスバー140は、下配線11Naを形成する図28中の二点鎖線に示す部分と、共通配線11Nを形成する部分とに分岐している。Nバスバー140の共通配線11Nは、Nライン13及び下配線11Naを接続する下電力配線とも呼ばれる。
図28中の矢印Y2は、V相で生じた自己サージ電圧が、V相の閉ループ回路から電力ラインを通じてW相の閉ループ回路へ伝播する場合の経路を示す。このように複数の上下アーム回路10どうしで干渉するサージ電圧は、以下の説明では干渉サージ電圧とも呼ばれる。V相とW相との間で伝播する干渉サージ電圧と同様にして、V相とU相との間やW相とU相との間でも干渉サージ電圧は生じ得る。
但し、相間上インダクタンスL2Pは相内上インダクタンスL1Pよりも十分に大きいので、他相から自相へ伝播される干渉サージ電圧は殆ど生じず、その干渉サージ電圧は自己サージ電圧に比べて極めて小さい。
なお、並列接続された上下アーム回路10へ電荷を供給すると、平滑コンデンサC2からコンデンサC1へ瞬時に電荷が供給される。これにより、コンデンサC1が再び電荷を供給可能な状態となる。
次に、上記したパワーモジュール110の効果について説明する。
パワーモジュール110は、上下アーム回路10と、コンデンサC1と、上配線11Paと、下配線11Naと、上電力配線としての共通配線11Pと、下電力配線としての共通配線11Nと、を備える。上配線11Paは、コンデンサC1の正極端子及び上アーム10Uを接続し、下配線11Naは、コンデンサC1の負極端子及び下アーム10Lを接続する。共通配線11P,11Nは、上配線11Pa及び下配線のそれぞれを電力ラインに接続する。
したがって、パワーモジュール110は、電力ラインを含まない閉ループ回路を形成することになる。そのため、上下アーム回路10のスイッチング時に必要な電荷がコンデンサC1から供給されるにあたり、その電荷供給経路には電力ラインが含まれない。よって、その経路の配線、つまり上配線11Paと下配線11Naを短くできる。一方、本実施形態に反してコンデンサC1を廃止した場合には、平滑コンデンサC2からスイッチング時に必要な電荷を供給することになる。その場合には、平滑コンデンサC2から上下アーム回路10へ電荷を供給する電気経路に電力ラインが含まれることになるので、その電気経路を十分に短くすることができない。
以上により、上記パワーモジュール110によれば、サージ電圧発生の要因の1つである配線の長さを短くすることを、コンデンサC1を廃止した場合に比べて容易に実現できる。よって、自己サージ電圧に係る配線インダクタンスL1P,L1Nを小さくでき、上下アーム回路10で生じる自己サージ電圧を低減できる。しかも、上記閉ループ回路は電力ラインを含んでいないので、自己サージ電圧が電力ラインに重畳しにくくなる。そのため、電力ラインを通じて他の上下アーム回路10に自己サージ電圧を干渉させてしまうことを抑制できる。
また、上述の如くサージ電圧を低減できるパワーモジュール110が、各相それぞれに設けられている。そのため、電力ラインを通じた上下アーム回路10同士が自己サージ電圧を干渉し合うことの抑制を促進できる。
さらに本例では、上アーム10Uは、上配線11Paに接続される主端子70Cを複数有し、下アーム10Lは、下配線11Naに接続される主端子70Eを複数有する。そのため、隣合う互いの主端子70C,70Eどうしで自己サージ電圧が打ち消し合うように作用し、相内上インダクタンスL1P及び相内下インダクタンスL1Nを低減することができる。よって、自己サージ電圧の低減が促進される。
さらに本例では、上アーム10Uが有する主端子70E及び下アーム10Lが有する主端子70Cを接続する出力バスバー150(つまり出力配線15)を備える。出力バスバー150は、上配線11Pa及び下配線11Naと対向する対向部154p,154nを有する。そのため、出力バスバー150の対向部154p,154nと上配線11Pa及び下配線11Naとの間で、自己サージ電圧が打ち消し合うように作用し、相内上インダクタンスL1P及び相内下インダクタンスL1Nを低減することができる。よって、自己サージ電圧の低減が促進される。
特に本例では、1in1パッケージ構造の半導体装置20を備える構成において、上記したように、Y方向において、Pバスバー130及びNバスバー140と出力バスバー150とを対向させている。また、Y方向の投影視において、出力バスバー150と半導体装置20が重なっており、Y方向において、半導体チップ40Uと出力バスバー150との間に、Pバスバー130の対向部135aが配置されている。同様に、Y方向において、半導体チップ40Lと出力バスバー150との間に、Nバスバー140の対向部145aが配置されている。したがって、半導体チップ40Uを介したPバスバー130から出力バスバー150への電流経路、及び、半導体チップ40Lを介した出力バスバー150からNバスバー140への電流経路は、図23に二点鎖線の矢印で示すようになる。したがって、上下アーム回路10を構成する2つの半導体チップが1パッケージ化された2in1パッケージに較べて、電流ループの面積を小さくすることができる。これにより、自己サージ電圧をさらに低減することができる。
さらに本例では、相間上インピーダンスが相内上インピーダンスより大きい。また、相間下インピーダンスが相内下インピーダンスより大きい。そのため、図28の矢印Y2に示すように、各相の閉ループ回路を跨いでサージ電圧が伝播して干渉することを抑制できる。
さらに本例では、上下アーム回路10に並列に接続され、電力ラインの電圧を平滑化する平滑コンデンサC2を備える。これによれば、電力ラインの電圧変動を抑制することができる。また、コンデンサC1に平滑コンデンサC2から瞬時に電荷を供給できるため、コンデンサC1の静電容量を抑えることができる。これにより、コンデンサC1の小型化が可能となる。
半導体装置20として、1in1パッケージ構造の半導体装置20を2つ用いる例を示したが、これに限定されない。上下アーム回路10を構成する2つのアーム(上アーム10U及び下アーム10L)を構成する要素単位でパッケージ化した2in1パッケージ構造の半導体装置を用いることもできる。
主端子70の配置も上記例に限定されない。1in1パッケージの場合、主端子70C,70Eを少なくとも1本ずつ有せばよい。同電位とされる主端子70を複数に分割してもよい。たとえば主端子70Cを複数本に分割してもよい。複数本の並列化によって、分割した主端子全体のインダクタンスを低減することができる。2in1パッケージの場合、上アーム10U側の主端子70Cと、下アーム10L側の主端子70Eと、出力端子をそれぞれ少なくとも1本有せばよい。
図27に示す例では、共通配線部132,142が、接続部131,141に対して平行部134,144の反対側に延設している。これに対し、図29に示すように、共通配線部132,142が、接続部131,141に対して平行部134,144と同じ側に延設していてもよい。また、上アーム10Uと下アーム10Lとで、共通配線部132,142が延設する向きを異ならせてもよい。例えば、共通配線部132,142は互いに対向配置していなくてもよい。
図27に示す例では、上アーム10U及び下アーム10Lは主端子70C,70Eを複数有しているが、1つの主端子70C,70Eを有していればよい。また、図27に示す例では、主端子70C及び主端子70Eが交互に並べて配置されているが、複数の主端子70Cが並べて配置されていてもよいし、複数の主端子70Eが並べて配置されていてもよい。
図27に示す例に反して、相間上インピーダンスが相内上インピーダンスより小さくてもよい。また、相間下インピーダンスが相内下インピーダンスより小さくてもよい。
上記パワーモジュール110の別例として、上記パワーモジュール110が備える冷却器120、駆動基板160及び保護部材180の少なくとも1つが廃止されていてもよい。また、平滑コンデンサC2が廃止された電力変換装置5であってもよい。コンデンサC1が、保護部材180の外に配置された構成としてもよい。冷却器120の構造は、上記例に限定されない。上下アーム回路10を構成する半導体装置20の一部が、冷却器120内の流路126に挿入され、冷媒に浸漬される構成としてもよい。この構成において、コンデンサC1を冷却器120上に配置し、コンデンサC1と半導体装置20を接続してもよい。浸漬により、半導体装置20を両面側から冷却しつつ、サージ電圧を抑制することができる。
(モータジェネレータ)
図30に示すように、モータジェネレータ3は、環状の固定子701と、固定子701の内側に設けられた回転子702と、これら固定子701及び回転子702を収容したハウジング703とを有している。なお、モータジェネレータ3が回転電機に相当する。本実施形態では、回転子702が回転子702の中心線CL2を軸として回転し、この中心線CL2が延びる方向を軸方向αと称する。この場合、固定子701の径方向β及び固定子701の周方向γはいずれも軸方向αに直交している。図31では、中心線CL2上の仮想点VPを想定しており、この仮想点VPにおいては、軸方向αと径方向βと周方向γとは互いに直交している。
図30に示すように、固定子701は、ハウジング703に固定されており、固定子701の外周面がハウジング703に対向している。固定子701は、環状の固定子コア705と、固定子コア705に巻かれた固定子巻線706とを有している。固定子コア705は、環状の複数の電磁鋼板が軸方向αに積層されることで形成されることで全体として筒状になっている。固定子巻線706は、複数の導体セグメントを有している。これら導体セグメントが固定子コア705に装着された状態で互いに接続されることで固定子巻線706が形成される。導体セグメントは、長尺状の導体と、この導体の外周面を被覆する絶縁被膜とを有している。絶縁被膜は、ポリイミド樹脂等の樹脂材料により形成されている。固定子コア705には、この固定子コア705を軸方向αに貫通する複数のスロットが設けられており、導体セグメントはこのスロットに挿入されることで固定子コア705される。
回転子702は、この回転子702に同軸で中心線CL2に沿って延びた回転子孔702aを有しており、この回転子孔702aを有していることで環状に形成されている。回転子702は、複数の永久磁石を有しており、これら永久磁石により回転子702の外周面が形成されている。回転子702においては、複数の永久磁石により周方向γに極性が交互に異なる複数の磁極が形成される。回転子702の外周面は、固定子701の内周面から径方向内側に離間している。
モータジェネレータ3は、回転子702に固定されたモータ軸部708と、モータ軸部708を回転可能に支持する軸受部709とを有している。モータ軸部708は、その中心線が回転子702の中心線CL2に一致しており、回転子702と共に回転する。モータ軸部708は、回転子702から軸方向αに延びている。モータ軸部708は、回転子孔702aに挿通された状態で回転子702に固定されている。モータ軸部708は、長尺状の筒部材であり、モータ軸部708に同軸で中心線CL2に沿って延びたモータ軸部孔708aを有している。軸受部709は、ハウジング703に固定されている。軸受部709は、軸方向αに離間させて2つ設けられている。
図30、図31に示すように、ハウジング703は、冷媒が流れるハウジング流路711を有している。ハウジング703においては、互いに径方向βに並んだ内周面と外周面との間にハウジング流路711が設けられている。ハウジング流路711は、径方向β及び周方向γに延びている。ハウジング流路711は、固定子701の外周面に沿って延びており、周方向γに一周していることで環状になっている。軸方向αにおいて、ハウジング流路711の長さ寸法は、固定子701の長さ寸法に比べて大きくなっており、ハウジング流路711の両端部が固定子701よりも外側に突出している。なお、図31においては、ハウジング703に収容された固定子701や回転子702などの部品の図示を省略している。
ハウジング703は、ハウジング流路711の径方向内側に設けられた内冷却部712と、ハウジング流路711の径方向外側に設けられた外冷却部713とを有している。ハウジング703は金属材料により形成されており、特に、少なくとも内冷却部712及び外冷却部713は、熱伝導性を有する材料により形成されている。内冷却部712は、ハウジング703の内周面の少なくとも一部を形成し、外冷却部713は、ハウジング703の外周面の少なくとも一部を形成している。内冷却部712及び外冷却部713は、ハウジング流路711に沿って径方向β及び周方向γに延びており、いずれも周方向γに一周していることで環状になっている。内冷却部712は径方向内側からハウジング流路711の全体を覆っており、外冷却部713は径方向外側からハウジング流路711の全体を覆っている。なお、内冷却部712が第1冷却部及びハウジング冷却部に相当し、外冷却部713が第2冷却部に相当する。
ハウジング703は、その内周面を形成する内周部と、その外周面を形成する外周部とを有している。内冷却部712は、内周部に含まれており、内周部の少なくとも一部を形成している。外冷却部713は、外周部に含まれており、外周部の少なくとも一部を形成している。
ハウジング703には、ハウジング流路711に冷媒を流入させる流入孔715(図34参照)と、ハウジング流路711から冷媒を流出させる流出孔716(図34参照)とを有している。流入孔715及び流出孔716は、外冷却部713を径方向βに貫通した貫通孔である。ハウジング703には、流入孔715に冷媒を流入させる流入管717と、流入孔715から冷媒を流出させる流出管718とが取り付けられている。流入管717及び流出管718は、ハウジング703から径方向外側に向けて延びており、冷媒が流れる配管等の冷媒管を接続可能になっている。
車両には、ハウジング流路711を流れる冷媒を冷却する冷却回路が搭載されている。冷却回路は、空気等との熱交換により冷媒を冷却するラジエータ等の熱交換器と、冷媒を循環させる循環ポンプと、冷媒を流通させる冷媒管とを有している。冷却回路においては、ハウジング流路711が熱交換器と直列に接続されており、熱交換器により冷却された冷媒がハウジング流路711に流れ込むようになっている。流入管717及び流出管718には、冷却回路の冷媒管が接続されている。
ハウジング703においては、冷却回路により冷却された冷媒がハウジング流路711に流れ込むと、この冷媒により内冷却部712や外冷却部713が冷却される。そして、内冷却部712と固定子701との間で熱交換が行われて固定子701が冷却される。
(電力変換装置)
電力変換装置5は、モータジェネレータ3に取り付けられている。電力変換装置5とモータジェネレータ3とが互いに組み付けられて一体化されたユニットを、機電一体型のモータユニット800と称する。図32に示すように、モータユニット800は、減速機810及びデファレンシャルギア820を有しており、これら減速機810及びデファレンシャルギア820は、電力変換装置5と同様にモータジェネレータ3に取り付けられている。減速機810及びデファレンシャルギア820についての説明は後述する。なお、モータユニット800が回転電機ユニットに相当する。
本実施形態では、電力変換装置5がパワーモジュール110や平滑コンデンサC2等の構成部品を収容する収容ケースを有していない。すなわち、電力変換装置5が1パッケージ化されていない。そこで、電力変換装置5の構成部品は、ハウジング703に個別に取り付けられている。
上述したように、モータジェネレータ3は3相の回転電機であり、電力変換装置5は、U相、V相、W相という各相のそれぞれについてパワーモジュール110を有している。また、電力変換装置5は、平滑コンデンサC2を複数有している。本実施形態では、電力変換装置5が、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2を3つずつ有している。
図33に示すように、各パワーモジュール110及び各平滑コンデンサC2は、ハウジング703の外周面に取り付けられている。3つのパワーモジュール110は、周方向γに並べられており、いずれも径方向βに直交する接線方向に延び且つ軸方向αに延びている。周方向γにおいて均等に配置されているのではなく、周方向γにおいて真ん中のパワーモジュール110に両端の2つのパワーモジュール110が接近した配置になっている。例えば、中心線CL2に直交する方向でハウジング703の断面を想定した場合に、3つのパワーモジュール110は中心角180度の範囲に含まれている。
3つのパワーモジュール110と同様に、3つの平滑コンデンサC2も周方向に並べられている。パワーモジュール110と平滑コンデンサC2とは、1つずつ軸方向αに並べられており、いずれも径方向βに直交する接線方向に延び且つ軸方向αに延びている。この場合、軸方向αに並べられたパワーモジュール110と平滑コンデンサC2とは3組あることになり、各組のそれぞれにおいて、パワーモジュール110は、ハウジング703の一方の端部と平滑コンデンサC2との間に配置されている。すなわち、各組においては、軸方向αでのパワーモジュール110と平滑コンデンサC2との並び順が同じになっている。
ハウジング703は、外冷却部713に設けられた設置面713aを有している。設置面713aは、外冷却部713により形成された外周面の一部であり、径方向βに直交する接線方向及び軸方向αに延びている。設置面713aは、周方向γに3つ並べられており、1つの設置面713aに1組のパワーモジュール110及び平滑コンデンサC2が設置されている。
図31、図33に示すように、外冷却部713には、径方向内側に向けて凹んだ設置凹部713bが設けられている。設置凹部713bの底面が設置面713aであり、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2は、設置凹部713bに収容されている。設置凹部713bは、周方向γに3つ並べられており、1つの設置凹部713bに1組のパワーモジュール110及び平滑コンデンサC2が収容されている。径方向βにおいて設置凹部713bの深さ寸法は、パワーモジュール110の厚み寸法及び平滑コンデンサC2の厚み寸法のいずれよりも大きくなっている。設置凹部713bは、設置面713aから径方向外側に向けて延びた内壁面713cを有しており、この内壁面713cは、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2を四方から囲んでいる。内壁面713cは、軸方向α及び径方向βにおいて、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2から離間している。
ハウジング703には、設置凹部713bを径方向外側から覆う設置カバー721が取り付けられている。設置凹部713bに収容されたパワーモジュール110及び平滑コンデンサC2は、設置カバー721により保護されている。設置カバー721の外面には径方向外側に向けて突出したリブが設けられており、このリブにより、設置カバー721の放熱性能や強度が高められている。なお、図33においては、設置カバー721の図示を省略している。
電力変換装置5は、制御回路部9が形成された制御基板290と、制御基板290に実装された信号コネクタ291とを有している。制御基板290は、プリント基板に電子部品が実装されてなる。制御基板290は、電子部品としてマイコンを含んでいる。制御基板290は、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2と同様に、ハウジング703に取り付けられている。
ハウジング703は、制御基板290を収容した基板収容部722を有している。基板収容部722は、軸方向αにおいてパワーモジュール110及び平滑コンデンサC2のうちパワーモジュール110が近い方の端部に設けられている。基板収容部722は、ハウジング703の端面が軸方向αに突出した凸部である。基板収容部722は軸方向αにおいて内側に開放された内部空間を有している。制御基板290は、その板面が軸方向αに直交する向きで基板収容部722の内部空間に設置されている。ハウジング703には、基板収容部722の開口部を覆う基板カバー723が取り付けられており、制御基板290はこの基板カバー723により保護されている。
信号コネクタ291は、基板収容部722から径方向外側に向けて突出した状態でハウジング703に取り付けられている。信号コネクタ291は、上位ECUなど車載装置側のコネクタに接続可能になっている。信号コネクタ291と車載装置側のコネクタとが接続された状態では、車載装置と制御回路部9との間で信号の授受が可能になる。信号コネクタ291においては、車載装置側のコネクタを接続可能な接続口が径方向外側を向いている。なお、信号コネクタ291の接続口は、軸方向αや径方向βを向いていてもよい。例えば、設置口は、軸方向αにおいて設置凹部713bとは反対側を向いていてもよく、周方向γにおいて流入管717に近い側を向いていてもよい。信号コネクタ291の形状や設置位置、接続口の向きは、径方向βにおいてハウジング703の寸法が極力小さくなるように設定されていることが好ましい。この場合、径方向βについてハウジング703の小型化を図ることが可能になる。
パワーモジュール110は、軸方向αにおいて出力バスバー150が基板収容部722に向けて延びるように設置面713aに設置されている。ハウジング703には、設置凹部713bの内部空間と基板収容部722の内部空間とを連通する連通孔が形成されており、パワーモジュール110の出力バスバー150は、この連通孔に挿通されている。出力配線15である出力バスバー150は、基板収容部722においてモータジェネレータ3の固定子巻線706に接続されている。出力バスバー150は、軸方向αにおいて固定子701よりも外側に突出していることで、基板収容部722の内部空間に到達している。軸方向αでの出力バスバー150の長さ寸法は、各パワーモジュール110において同じになっている。出力バスバー150と固定子巻線706との接続部分は、制御基板290や基板カバー723により覆われている。なお、出力バスバー150が出力端子に相当する。
電力変換装置5は、直流電源2側のコネクタが接続される入力端子台240を有している。入力端子台240は、ハウジング703において基板収容部722とは反対側の端部に設けられている。入力端子台240は、直流電源2と電力変換装置5とを電気的に接続するための正極端子及び負極端子と、これら端子を保持するハウジングとを有している。正極端子及び負極端子は、たとえば直流電源2から供給された直流電圧を、電力変換装置5に入力するための端子として機能する。正極端子及び負極端子のそれぞれは、1つの導電部材(たとえばバスバー)により構成されてもよいし、電気的に接続された複数の導電部材により構成されてもよい。
入力端子台240においては、直流電源2側のコネクタを接続可能な接続口が周方向γを向いている。この接続口は、例えば周方向γにおいて流入管717に近い側を向いている。なお、入力端子台240の接続口は、軸方向αや径方向βを向いていてもよい。入力端子台240の形状や設置位置、設置口の向きは、径方向βにおいてハウジング703の寸法が極力小さくなるように設定されていることが好ましい。この場合、径方向βについてハウジング703の小型化を図ることが可能になる。
電力変換装置5は、上記したNライン13を構成するNバスバー282と、上記したVHライン12Hを構成するVHバスバー284とを有している。これらバスバー282,284は、銅などの導電性に優れる金属板材を加工、たとえばプレス加工して形成されている。Nバスバー282及びVHバスバー284は、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2のそれぞれに電気的に接続されており、軸方向αに延びた状態でハウジング703の外周側に設けられている。Nバスバー282及びVHバスバー284は、軸方向αにおいて平滑コンデンサC2から入力端子台240に向けて延びており、入力端子台240に電気的に接続されている。
(モータユニットの冷却)
次に、モータユニット800の冷却構造について図31、図34、図35を参照しつつ説明する。なお、図34には、環状のハウジング703を周方向γが横軸になるように延ばした状態を想定し、ハウジング703を中心線CL2に平行に周方向γに切った断面図を示す。また、図35では、便宜上、パワーモジュール110が備える半導体装置20を1つとしている。
図31、図34、図35に示すように、ハウジング流路711を流れる冷媒は、パワーモジュール110の冷却器120を通過することが可能になっている。冷却器120においては、流路126の上流端部と下流端部とのそれぞれがハウジング流路711に接続されている。ハウジング703は、冷媒をハウジング流路711からパワーモジュール110に供給する供給孔731と、冷媒をパワーモジュール110からハウジング流路711に排出する排出孔732とを有している。供給孔731及び排出孔732は、いずれも外冷却部713に設けられており、外冷却部713を径方向βに貫通した貫通孔である。供給孔731と排出孔732とは、各パワーモジュール110のそれぞれに対して1組ずつ設けられている。
供給孔731には、冷却器120の供給管121が挿入されており、この供給管121と外冷却部713とが接続されている。排出孔732には、冷却器120の排出管122が挿入されており、この排出管122と外冷却部713とが接続されている。供給管121と外冷却部713との接続部、及び排出管122と外冷却部713との接続部は、Oリング等の環状の弾性部材や、硬化前で液状のシール材、溶接などによって液密にシールされている。
図34に示すように、ハウジング流路711は、流入孔715に通じる流入領域741と、流出孔716に通じる流出領域742とを有している。ハウジング703においては、流入領域741と流出領域742とが互いに独立しており、これら流入領域741と流出領域742とは、パワーモジュール110の流路126を通じて連通されている。ハウジング流路711においては、全ての供給孔731が流入領域741に通じており、全ての排出孔732が流出領域742に通じている。ハウジング703は、ハウジング流路711を流入領域741と流出領域742とに仕切る仕切部743,744を有している。
仕切部743,744のうち第1仕切部743は、流入孔715と流出孔716との間に設けられている。流入孔715と流出孔716とは、外冷却部713において軸方向αに並べられており、第1仕切部743が流入孔715と流出孔716との間に設けられている。この構成、流入孔715からハウジング流路711に流入した冷媒は、ハウジング703を周方向γに一周することで流出孔716から流出する。このため、固定子701の外周面全体がハウジング流路711を流れる冷媒により冷却されやすくなっている。図34においては、第1仕切部743が軸方向αに真っ直ぐに延びた図になっているが、実際には第1仕切部743は軸方向αに対して傾斜した部分も有している。
仕切部743,744のうち第2仕切部744は、供給孔731と排出孔732との間に設けられている。1組の供給孔731と排出孔732とは、少なくとも軸方向αに離間して設けられており、各組の供給孔731及び各組の排出孔732は互いに平行に周方向γに並べられている。第2仕切部744は、周方向γに延びた周壁部744aと、軸方向に延びた軸壁部744bとを有している。周壁部744aは、各供給孔731と各排出孔732との間に設けられている。周壁部744aは、軸方向αにおいてハウジング703の両端のうち基板収容部722側の端部に近い位置に設けられている。径方向βの厚み寸法が均一になっているハウジング流路711において、流入領域741の容積は流出領域742の容積に比べて小さくなっている。
流入領域741及び流出領域742は、いずれも周方向γに延びている。複数のパワーモジュール110は、周方向γにおいて流入孔715に近い側からインバータ7のU相、V相、W相を構成する順に並べられている。
ハウジング流路711に対して、パワーモジュール110は平滑コンデンサC2よりも上流側に設けられている。ハウジング流路711のうち、径方向βにおいてパワーモジュール110に対向する部分は、径方向βにおいて平滑コンデンサC2に対向する部分よりも上流側に配置されている。パワーモジュール110に対向する部分は流入領域741の一部と流出領域742の一部を有しており、平滑コンデンサC2に対向する部分は流出領域742の一部を有している。流出領域742のうち、パワーモジュール110に対向する部分は、平滑コンデンサC2に対向する部分よりも、排出孔732に近い位置に配置されていることで上流側に配置されている。なお、流入領域741及び流出領域742がパワーモジュールが対向する部分に相当し、流出領域742が平滑コンデンサが対向する部分に相当する。
本実施形態では、パワーモジュール110が冷却器120を有している。パワーモジュール110は、図22に示す構造をなしている。すなわち、保護部材180の一面181側から、コンデンサC1、1段目の熱交換部123、半導体装置20、2段目の熱交換部123、駆動基板160の順で配置されている。
図35に示すように、半導体装置20は、一面20aと、この一面20aとは半導体装置20の厚み方向において反対の裏面20bとを有している。パワーモジュール110においては、半導体装置20の一面20a側にハウジング流路711が設けられ、裏面20bに沿って流路126が延びている。この場合、半導体装置20の一面20aとハウジング703の外冷却部713とがコンデンサC1等を挟んで対向しており、半導体装置20の裏面20bと2段目の熱交換部123の一面とが対向している。また、コンデンサC1の一面とハウジング703の外冷却部713とが対向しており、この一面とは厚み方向において反対の裏面と1段目の熱交換部123の一面とが対向している。
なお、パワーモジュール110については、冷却器120がモジュール冷却器に相当し、流路126がモジュール流路に相当する。また、保護部材180の一面181がパワーモジュール110の一面に相当し、裏面182がパワーモジュール110の裏面に相当する。
ハウジング流路711においては、流入領域741と流出領域742とがパワーモジュール110の流路126を介して連通している。流入領域741と流路126と流出領域742とにより、1つの流路が形成されている。したがって、流路126,711には、同じ冷媒が流れる。
上記した構造により、冷媒は以下に示すように流れる。ハウジング703において流入孔715からハウジング流路711の流入領域741に供給された冷媒は、図34に示すように、流入領域741を供給孔731に向けて流れる。そして、冷媒は、流入領域741から、パワーモジュール110の流路126を通じて、流出領域742に流れる。
具体的には、流入領域741から、供給管121を通じて2段の熱交換部123のそれぞれに冷媒が流れ、排出管122から流出領域742に排出される。供給管121と排出管122は、上記したように平面略矩形状の熱交換部123に対し、対角位置に設けられている。また、供給管121のほうが排出管122よりも周方向γにおいて流入孔715に近い位置とされている。したがって、冷媒は、図34及び図35に破線矢印で示すように熱交換部123内の流路126を流れる。
流路126から流出領域742に流れ込んだ冷媒は、外冷却部713側の平滑コンデンサC2に沿って流れたり、内冷却部712側の固定子701に沿って流れたりしながら流出孔716に向けて進み、流出孔716から流出する。この場合、冷媒は、ハウジング703の外冷却部713との熱交換を行うことで平滑コンデンサC2を冷却し、内冷却部712との熱交換を行うことで固定子701を冷却する。
(減速機、デファレンシャルギア)
図30に示すように、モータユニット800は、減速機810及びデファレンシャルギア820を収容したユニットケース830と、駆動力を左右の車輪に伝える伝達軸部840a,840bとを有している。ユニットケース830は、軸方向αにおいてモータジェネレータ3に横並びに設けられており、モータジェネレータ3に取り付けられている。モータユニット800では、モータジェネレータ3と減速機810とデファレンシャルギア820とが軸方向αに並べられている。減速機810の中心線及びデファレンシャルギア820の中心線は、いずれも回転子702の中心線CL2に一致している。
減速機810は、モータジェネレータ3の回転速度を減少させて出力する装置である。減速機810は、太陽歯車811、複合遊星歯車812、固定歯車813、遊星キャリア814を有している。太陽歯車811は、径方向外側に向けて延びた複数の外歯を有している。太陽歯車811は、モータジェネレータ3のモータ軸部708と同軸になっており、モータ軸部708に固定されている。太陽歯車811は、モータ軸部708と共に回転する。太陽歯車811は、この太陽歯車811に同軸で中心線CL2に沿って延びた太陽歯車孔811aを有している。固定歯車813は、径方向内側に向けて延びた複数の内歯を有しており、ユニットケース830に固定されている。
複合遊星歯車812は、太陽歯車811に噛み合った第1歯車812aと、固定歯車813に噛み合った第2歯車812bとを有している。第1歯車812a及び第2歯車812bは、いずれも径方向外側に向けて延びた複数の外歯を有している。第1歯車812aと第2歯車812bとは、同軸で軸方向αに並べられた状態で互いに固定されており、第2歯車812bが第1歯車812aと共に回転する。第1歯車812aは、第2歯車812bに比べて径寸法が大きい大径歯車になっており、第2歯車812bは小径歯車なっている。
遊星キャリア814には、この第1歯車812a及び第2歯車812bと同軸の遊星軸部812cが回転自在に固定されている。この遊星軸部812cは、遊星キャリア814の回転に伴って回転するとともに、太陽歯車811の回転に合わせて周方向γに移動する。遊星軸部812cが中心線CL2を一周する回数は、モータ軸部708の回転数に対して所定の割合で減少させた値になる。なお、本実施形態では、減速機810は、モータ軸部708の回転速度を減少させて出力する構成となっているが、モータ軸部708の回転速度を増加させて出力する構成の増速機になっていてもよい。
デファレンシャルギア820は、車輪の回転抵抗が左右で異なる場合にこれら回転抵抗の差に応じて動力を出力する差動装置であり、左右の伝達軸部840a,840bを連結している。デファレンシャルギア820は、デファレンシャルケース821、ピニオンギア822及びサイドギア823a,823bを有している。デファレンシャルケース821は、遊星キャリア814に取り付けられている。ピニオンギア822は、その回転軸が中心線CL2に直交した状態でデファレンシャルケース821に回動可能に取り付けられており、デファレンシャルケース821と共に周方向γに移動する。
サイドギア823a,823bは、ピニオンギア822の回転軸に直交した回転軸を有しており、互いに同軸で配置されている。サイドギア823a,823bは、モータ軸部708に同軸に配置されており、ピニオンギア822に噛み合っている。サイドギア823a,823bのうち、第1サイドギア823aには第1伝達軸部840aが同軸で固定され、第2サイドギア823bには第2伝達軸部840bが同軸で固定されている。デファレンシャルギア820においては、デファレンシャルケース821が回転している場合に、ピニオンギア822が回転していないと、第1サイドギア823aと第2サイドギア823bとが同じ速度で回転する。一方、ピニオンギア822が回転すると、第1サイドギア823aと第2サイドギア823bとが異なる速度で回転する。
第1サイドギア823aは、軸方向αにおいて第2サイドギア823bを挟んでモータジェネレータ3とは反対側に設けられている。第1伝達軸部840aは、第1サイドギア823aからモータジェネレータ3とは反対側に向けて軸方向αに延びている。第2伝達軸部840bは、第2サイドギア823bからモータジェネレータ3側に向けて軸方向αに延びている。第2伝達軸部840bは、モータジェネレータ3、減速機810及びユニットケース830を貫通しており、モータジェネレータ3を挟んで第1伝達軸部840aとは反対側まで延びている。第2伝達軸部840bは、モータ軸部孔708a及び太陽歯車孔811aに挿通されており、これら孔708a,811aの内部で回転可能になっている。
ユニットケース830には、第1伝達軸部840aを回転可能に支持する軸受部831,832が取り付けられている。軸受部831,832は、軸方向αに離間させて設けられている。例えば、軸受部831は、ユニットケース830における第1伝達軸部840a側の端部に設けられており、軸受部832は、ユニットケース830における第2伝達軸部840b側の端部に設けられている。
なお、減速機810は、互いの歯が噛み合った状態で回転する複数の歯車に代えて又は加えて、互いの接触面の摩擦によって回転する複数のローラを有していてもよい。例えば、減速機が、太陽歯車811の機能を有する太陽ローラと、固定歯車813の機能を有する固定ローラと、複合遊星歯車812の機能を有する複合遊星ローラとを有する構成とする。この構成では、摩擦効果を向上させることを目的として、同軸に配置された一対の固定ローラのそれぞれと遊星ローラとの接触面を遊星ローラの回転軸に対して所定の角度だけ傾けることで、各固定ローラと遊星ローラとの接触面積を拡大してもよい。また、同軸に配置された一対の固定ローラで遊星ローラを挟んだ減速機において、一対の固定ローラのすくなくとも一方に向けて遊星ローラを押し付ける弾性部材が設けられていてもよい。
(モータユニットの効果)
次に、本実施形態のモータユニット800の効果について説明する。
本実施形態によれば、ハウジング703の内冷却部712が固定子701の外周面に沿って延びているため、この内冷却部712により広い範囲で固定子701を冷却することができる。このため、固定子巻線706の被覆が高温によって劣化するなど固定子701での異常発生を抑制できる。また、複数のパワーモジュール110が外冷却部713に沿ってハウジング703に個別に取り付けられているため、各パワーモジュール110をハウジング流路711に極力近い位置に配置できる。すなわち、各パワーモジュール110を外冷却部713による冷却効果が高くなるような位置や姿勢で個別に設置することができる。したがって、モータジェネレータ3及び電力変換装置5の両方について冷却効果を高めることができる。
しかも、複数のパワーモジュール110が周方向γに並べられているため、軸方向αにおいて各パワーモジュール110をハウジング703の一端側に配置できる。このため、ハウジング703の一端にある基板収容部722にてパワーモジュール110と固定子巻線706とを接続する場合に、各パワーモジュール110を基板収容部722に極力近い位置に配置できる。この場合、パワーモジュール110から延びる出力バスバーを極力短くできるため、この出力バスバー150にて発生する熱を低減できる。このように、モータユニット800にて発生する熱が低減されるため、モータユニット800での冷却効果を更に高めることができる。
複数のパワーモジュール110がハウジング703に個別に取り付けられた構成では、パワーモジュール110と固定子701とを電気的に接続する構成が煩雑になることが懸念される。これに対して、本実施形態によれば、各パワーモジュール110が周方向γに並べられているため、パワーモジュール110から延びる出力バスバー150を基板収容部722に向けて軸方向αに真っ直ぐに延ばすことができる。このため、1つのパワーモジュール110から延びた出力バスバー150を、他のパワーモジュール110を避けるように遠回りさせるという必要がない。したがって、出力バスバー150の形状を簡易化することや、出力バスバー150の設置作業を容易化することができる。
さらに、複数のパワーモジュール110が周方向γに並べられてハウジング703に固定されている。このため、例えばパワーモジュール110が径方向βに並べられてハウジング703に固定された構成に比べて、モータユニット800を径方向βについて小型化できる。また、平滑コンデンサC2とパワーモジュール110とがハウジング703の外周面に沿って並べられている。このため、例えば平滑コンデンサC2とパワーモジュール110とが径方向βに並べられた構成に比べて、モータユニット800を径方向βについて小型化できる。さらに、複数の平滑コンデンサC2がハウジング703の外周面に沿って並べられているため、例えば複数の平滑コンデンサC2が径方向βに並べられた構成に比べて、モータユニット800を径方向βについて小型化できる。
本実施形態によれば、パワーモジュール110の出力バスバー150は、ハウジング703の一端に向けて軸方向αに延びている。この構成では、出力バスバー150と固定子巻線706とを電気的に接続した接続部分を軸方向αにおいて固定子701の外側に配置する構成を容易に実現できる。したがって、出力バスバー150と固定子巻線706とを接続する際の作業負担を低減できる。
本実施形態によれば、出力バスバー150は、ハウジング703の両端のうちパワーモジュール110に近い方の端部に向けて延びている。この構成では、出力バスバー150の長さ寸法を極力短くできる。このため、出力バスバー150の短縮や、出力バスバー150をハウジング703に取り付ける作業の容易化、出力バスバー150での電力損失に伴って発生する熱の低減、などを実現できる。
本実施形態によれば、平滑コンデンサC2が軸方向αにおいてパワーモジュール110に横並びの状態でハウジング703に取り付けられており、ハウジング703の外冷却部713は、ハウジング流路711を流れる冷媒により平滑コンデンサC2を冷却する。この構成では、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2の両方が外冷却部713により冷却されるため、モータユニット800での冷却効果を高めることができる。しかも、平滑コンデンサC2が軸方向αにおいてパワーモジュール110に横並びに設けられているため、パワーモジュール110を固定子701の接続端子と平滑コンデンサC2との間に配置することが可能になる。このため、パワーモジュール110と固定子701とを電気的に接続する構成を簡易化した上で、パワーモジュール110と平滑コンデンサC2とを電気的に接続する構成も簡易化できる。
本実施形態によれば、複数の平滑コンデンサC2が、複数のパワーモジュール110と同様に周方向γに並べられている。この構成では、1組のパワーモジュール110と平滑コンデンサC2とを極力近い位置に配置できるため、これらパワーモジュール110と平滑コンデンサC2とを接続する電気配線を短縮できる。また、この電気配線での電力損失に伴って発生する熱を低減できる。
本実施形態によれば、複数の平滑コンデンサC2が外冷却部713に沿って並べられている。この構成では、平滑コンデンサC2とハウジング流路711との離間距離を極力小さくできる。すなわち、平滑コンデンサC2を外冷却部713による冷却効果が高くなるような位置や姿勢で個別に設置することができる。このため、外冷却部713による平滑コンデンサC2の冷却効果を高めることができる。
本実施形態によれば、ハウジング流路711のうち、パワーモジュール110が対向する部分は平滑コンデンサC2が対向する部分よりも上流側に配置されている。この構成では、冷却回路にて冷却された状態の冷媒が、流入孔715からハウジング流路711に流入した後、平滑コンデンサC2よりも先にパワーモジュール110に接近することになる。この場合、ハウジング流路711において平滑コンデンサC2から熱が付与される前の冷媒によりパワーモジュール110が冷却されるため、冷媒によるパワーモジュール110の冷却効果を高めることができる。
本実施形態によれば、流入領域741と流出領域742とが各パワーモジュール110の流路126により接続されている。このため、冷媒がハウジング流路711からパワーモジュール110の流路126に流入しやすい構成を実現できる。
本実施形態によれば、各パワーモジュール110の流路126が互いに並列になっている。この構成では、3つのパワーモジュール110が1つずつ有する3つの流路126のそれぞれにより流入領域741と流出領域742とが接続されている。このため、例えば流入領域741と流出領域742とが1つの流路126だけにより接続された構成に比べて、流入領域741から流出領域742に流れ込む冷媒量が大きくなる。また、各流路126での圧損も低減するため、1つの流路126を流れる冷媒量を増加させやすくなる。したがって、パワーモジュール110の流路126がハウジング流路711に比べて冷媒の流れる流量が小さくなっていたとしても、流入領域741から各パワーモジュール110の流路126を通って流出領域742に流れ込む冷媒量を極力大きくできる。この場合、冷却回路にて単位時間当たりに循環する冷媒の量が不足しにくいため、ハウジング流路711や流路126を流れる冷媒による冷却効果を高めることができる。
本実施形態によれば、パワーモジュール110がハウジング703の外周面に取り付けられており、外冷却部713はハウジング703の外周面の少なくとも一部を形成している。この構成では、パワーモジュール110をハウジング703に固定する構造を簡易化することや、パワーモジュール110の取り付け作業を容易化することを実現した上で、外冷却部713によりパワーモジュール110を冷却できる。
本実施形態によれば、パワーモジュール110が設置凹部713bの内部に設置されている。設置凹部713bにおいては、設置面713a及び内壁面713cの両方が、ハウジング流路711を流れる冷媒により冷却される。この場合、設置面713aが径方向内側からパワーモジュール110の一面181を冷却しつつ、設置凹部713bの内壁面713cが周方向γ及び軸方向αにおいてパワーモジュール110の側面を冷却できる。このため、設置凹部713bに設置されたパワーモジュール110の冷却効果を高めることができる。
本実施形態によれば、平滑コンデンサC2が設置凹部713bの内部に設置されている。この場合、パワーモジュール110と同様に、設置面713aが径方向内側から平滑コンデンサC2の一面を冷却しつつ、設置凹部713bの内壁面713cが周方向γ及び軸方向αにおいて平滑コンデンサC2の側面を冷却できる。このため、設置凹部713bに設置された平滑コンデンサC2の冷却効果を高めることができる。
また、ハウジング703は環状になっており、径方向βでの厚み寸法が比較的小さくなっている。したがって、ハウジング流路711内において径方向βに冷媒の温度分布、具体的には、内冷却部712と外冷却部713とで温度差が生じにくい。これにより、内冷却部712により固定子701を効果的に冷却しつつ、外冷却部713によりパワーモジュール110及び平滑コンデンサC2のそれぞれを効果的に冷却することができる。
パワーモジュール110が冷却器120を備えている。冷却器120の流路126は、冷媒がハウジング流路711から流路126を介して再びハウジング流路711に戻るように、ハウジング流路711に連結されている。このように、ハウジング703からパワーモジュール110内の冷却器120に冷媒を引き込み、パワーモジュール110内において半導体装置20を冷却することができる。半導体装置20は冷却器120の一面に配置されている。冷却器120は、冷却器230よりも半導体装置20の近傍に配置されている。よって、半導体装置20を効果的に冷却することができる。また、冷却器120において、半導体装置20と反対側には、コンデンサC1が配置されている。したがって、コンデンサC1も効果的に冷却することができる。なお、コンデンサC1がモジュールコンデンサに相当する。
ハウジング703においては、ハウジング流路711が上流側領域234aと下流側領域234bとに区画されている。そして、パワーモジュール110の流路126が、流入領域741と流出領域742とを繋いでいる。これによれば、冷却器120の流路126側に冷媒が流れ込みやすい。したがって、半導体装置20やコンデンサC1をより効果的に冷却することができる。
なお、図36に示す別例のように、区画されないハウジング流路711を有するハウジング703に対してパワーモジュール110を配置し、流路126を繋げてもよい。例えば、ハウジング流路711が流入領域741と流出領域742とに区画されていない構成とする。図36は、図35に対応している。しかしながら、パワーモジュール110の体格を考慮すると、冷媒の流れ方向において、流路126の断面積のほうがハウジング流路711より小さくなる。ハウジング流路711は、複数のパワーモジュール110に共通の主流路であり、冷却器120の流路126は副流路である。よって、本例に示すように、冷却器120側に冷媒が流れ込みやすい構成を採用するのが好ましい。
たとえば図示を省略するが、ハウジング703が、流入領域741と流出領域742とをつなぐ連結領域を有し、この連結領域の断面積を、流入領域741や流出領域742よりも小さくしてもよい。連結領域を有することで、流入領域741から流出領域742に流れ込む抵抗を高め、冷却器120側に流れ込みやすくなる。しかしながら、本例で示したほうが、より効果的である。
また、冷却器120の熱交換部123が2段配置となっている。すなわち、冷却器120が、Z方向において2段に分岐している。冷却器120(熱交換部123)は、インナーフィンを設けるなどして、ハウジング703の外冷却部713よりも熱伝達率が高められている。そして、2段の熱交換部123によって半導体装置20が挟まれ、熱交換部123の2段の少なくとも1つに対して半導体装置20とは反対側にコンデンサC1が配置されている。これによれば、2段の熱交換部123によってZ方向における両面側から半導体装置20を冷却することができる。したがって、半導体装置20をさらに効果的に冷却することができる。また、熱交換部123によってコンデンサC1を冷却することができる。特に本例では、冷却器230に近い1段目の熱交換部123と熱交換部233との間に、コンデンサC1が配置されている。したがって、コンデンサC1を効果的に冷却することができる。
また、コンデンサC1が熱交換部123の2段の1つに対して半導体装置20と反対側に配置され、駆動基板160が熱交換部123の2段の別の1つに対して半導体装置20と反対側に配置されている。そして、半導体装置20の信号端子80が駆動基板160に接続されている。これによれば、Z方向に直交する方向の体格を小型化しつつ駆動基板160を冷却することができる。また、信号端子80を短くすることができる。半導体装置20と駆動基板160とを短距離で接続することができるため、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフタイミングの遅延を抑制することができる。また、耐ノイズ性を向上させることができる。
また、電力変換装置5は、インバータ7を構成する複数のパワーモジュール110とともに、平滑コンデンサC2を含むコンデンサユニット270を備えている。そして、平滑コンデンサC2の静電容量は、パワーモジュール110それぞれが備えるコンデンサC1の静電容量よりも大きくされている。このように、コンデンサC1とは別に平滑コンデンサC2を備えるため、コンデンサC1は、並列接続された上下アーム回路10を構成するスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング時に必要な電荷を供給する機能を有せばよい。したがって、コンデンサC1の体格を小さくすることができる。また、平滑コンデンサC2を備えることで、直流電圧の変動を抑制することができる。特に本例では、コンデンサC1及び上下アーム回路10が、上記した共通配線11P,11Nを介して、電力ラインであるVHライン12H及びNライン13に接続されている。具体的には、コンデンサC1及び上下アーム回路10が、共通配線部132,142を介して、VHバスバー284及びNバスバー282に接続されている。したがって、上記したように、サージ電圧を抑制することもできる。なお、コンデンサC1が第1コンデンサに相当し、平滑コンデンサC2が第2コンデンサに相当する。
なお、電力変換装置5に適用されるパワーモジュール110は、本例に示した構成に限定されない。上記したように、たとえば2in1パッケージ構造の半導体装置20を備えるパワーモジュール110を採用することもできる。また、主端子70についても、上記した種々の構成のものを適用することができる。駆動基板160を備える例を示したが、これに限定されない。制御基板290同様、駆動基板160をパワーモジュール110とは別に設けてもよい。この場合、図37に示すように、パワーモジュール110において、2段目の熱交換部123と裏面182との間に駆動基板160が設けられていない構成になる。
また、パワーモジュール110がコンデンサC1を有していなくてもよい。例えば、図38に示すように、パワーモジュール110において、1段目の熱交換部123とハウジング703との間にコンデンサC1ではなく駆動基板160が設けられた構成とする。この構成では、ハウジング703の外冷却部713により駆動基板160が冷却される。
パワーモジュール110において、半導体装置20を2段の熱交換部123の間に配置する例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を2段の熱交換部123の間に配置し、半導体装置20を熱交換部233と1段目の熱交換部123の間に配置してもよい。しかしながら、冷却器230との間に保護部材180が介在する構成の場合、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を2段の熱交換部123の間で冷却するほうが好ましい。
パワーモジュール110において、半導体装置20をハウジング703側とする例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を熱交換部123とハウジング703との間に配置してもよい。しかしながら、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を熱交換部123とハウジング703との間で冷却するほうが好ましい。
なお、複数のパワーモジュール110は、周方向γに並べられた状態で径方向βに位置がずれていてもよい。パワーモジュール110と平滑コンデンサC2とは、周方向γに横並びに設けられていてもよい。複数の平滑コンデンサC2は、軸方向αに横並びに設けられていてもよい。また、複数のパワーモジュール110は、径方向βにおいて中心線CL2との離間距離が異なっていてもよい。この場合でも、各パワーモジュール110が周方向γに並んでいることに変わりがない。
パワーモジュール110や平滑コンデンサC2は、径方向βに直交する接線方向に延びた状態になっておらず、接線方向に対して傾斜した状態になっていてもよい。すなわち、パワーモジュール110の一面181や平滑コンデンサC2の一面が径方向βに直交していなくてもよい。例えば、周方向γに並べられた各パワーモジュール110が互いに平行に設けられた構成とする。この構成では、ハウジング703の外周面において、複数のパワーモジュール110のうち1つが一面181を径方向βに直交させた向きで設置され、このパワーモジュール110に平行な状態で残りのパワーモジュール110が設置されている。また、この構成では、複数のパワーモジュール110が接線方向において直線上に並べられていてもよい。この場合でも、各パワーモジュール110が周方向γに並んでいることに変わりがない。
ハウジング703に取り付けられるパワーモジュール110は、3つより少なくてもよく、3つより多くてもよい。また、ハウジング703に取り付けられる平滑コンデンサC2は、パワーモジュール110と同じ数でなくてもよい。さらに、電力変換装置5を構成する部品のうち、パワーモジュール110及び平滑コンデンサC2とは異なる部品が、ハウジング703に個別に取り付けられていてもよい。
設置凹部713bの内壁面713cは、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2から径方向βや軸方向αに離間せずに、これらパワーモジュール110や平滑コンデンサC2に接触していてもよい。この場合、外冷却部713の外周面の一部である内壁面713cによるパワーモジュール110や平滑コンデンサC2の冷却効果を高めることができる。
ハウジング703においては、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2が設置された設置面713aが、設置凹部713bの底面でなくてもよい。すなわち、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2は、設置凹部713bに収容されずに、ハウジング703の外周面から径方向外側に突出した状態で設置されていてもよい。
ハウジング流路711は、ハウジング703を周方向γに一周していなくてもよい。例えば、ハウジング703においてパワーモジュール110の流路126に沿って延びる部分にはハウジング流路711が設けられていなくてもよい。この構成でも、流路126を流れる冷媒によりパワーモジュール110を内部から冷却できる。また、ハウジング流路711は、ハウジング703の端面に対して設けられていてもよい。例えば、ハウジング703の端面を形成する端面部にハウジング流路711が設けられた構成とする。この構成では、端面部が熱伝導性を有する冷却部になっており、この冷却部が軸方向αにおいて外側から固定子701を冷却することができる。また、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2が端面部に取り付けられていてもよい。
パワーモジュール110や平滑コンデンサC2は、径方向βにおいてそれぞれの少なくとも一部がハウジング流路711に並んでいればよい。また、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2は、径方向βにおいてハウジング流路711に並んでいなくてもよい。すなわち、パワーモジュール110や平滑コンデンサC2とハウジング流路711とは、径方向βや周方向γにずれた位置に配置されていてもよい。
ハウジング流路711は、ハウジング703に複数設けられていてもよい。例えば、複数のハウジング流路711が互いに冷媒の授受をしない状態で設けられた構成とする。これらハウジング流路711のうち1つのハウジング流路711に対してパワーモジュール110が設けられ、他のハウジング流路711に対して平滑コンデンサC2が設けられていてもよい。
ハウジング703は外冷却部713を複数有していてもよい。例えば、パワーモジュール110と平滑コンデンサC2とが別々の外冷却部713に設けられていてもよい。また、複数のパワーモジュール110がそれぞれ別々の外冷却部713に設けられていてもよい。さらに、複数の平滑コンデンサC2がそれぞれ別々の外冷却部713に設けられていてもよい。
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、パワーモジュール110及びモータユニット800と共通する部分についての説明は省略する。
図39に示すように、本実施形態では、パワーモジュール110が備える冷却器120において、熱交換部123が1段配置となっている。図39は、図35に対応している。本実施形態でも、ハウジング流路711からパワーモジュール110の流路126に冷媒が流入する。半導体装置20は、熱交換部123とハウジング703との間に配置され、半導体装置20に並列接続されたコンデンサC1は、熱交換部123に対して、半導体装置20とは反対側に配置されている。また、パワーモジュール110が、駆動基板160を備えない構成とされている。それ以外の構成は、先行実施形態(たとえば図35参照)と同じである。
このように、本実施形態でも、半導体装置20とコンデンサC1とを、Z方向に並んで配置させている。そして、このような構成のパワーモジュール110を、ハウジング703の外周面に配置させている。したがって、半導体装置20を冷却しつつ、Z方向に直交する方向において電力変換装置5の体格を小型化することができる。
また、同じパワーモジュール110において、半導体装置20のほうがコンデンサC1よりもハウジング703の近傍に配置されている。したがって、ハウジング703を流れる冷媒により、半導体装置20を効果的に冷却することができる。
また、半導体装置20は、熱交換部123とハウジング703との間に配置されている。したがって、熱交換部123とハウジング703とにより、半導体装置20をZ方向における両面側から冷却することができる。これにより、半導体装置20をさらに効果的に冷却することができる。コンデンサC1についても、熱交換部123によって冷却することができる。
なお、熱交換部233は、図39に示す構成に特に限定されない。たとえば図36に示したように、区画されていないハウジング流路711を有する構成や、上記した連結領域を有する構成を採用してもよい。
パワーモジュール110において、コンデンサC1及び駆動基板160のうちコンデンサC1だけが熱交換部123に対して半導体装置20とは反対側に設けられた例を示したが、これに限定されない。例えば、図40に示すように、熱交換部123に対して半導体装置20とは反対側に駆動基板160が設けられていてもよい。また、図41に示すように、熱交換部123に対して半導体装置20とは反対側にコンデンサC1及び駆動基板160の両方が設けられていてもよい。この構成では、熱交換部123と駆動基板160との間にコンデンサC1が設けられている。
(第3実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、パワーモジュール110及びモータユニット800と共通する部分についての説明は省略する。
図42に示すように、本実施形態では、パワーモジュール110が上記した冷却器120及び駆動基板160を備えていない。本実施形態でも、ハウジング703の外冷却部713にパワーモジュール110が配置されている。そして、パワーモジュール110の内部においては、半導体装置20がハウジング703の外冷却部713側に配置されている。また、ハウジング流路711は上流と下流とで区画されていない。それ以外の構成は、先行実施形態(たとえば図35参照)と同じである。
このように、本実施形態でも、半導体装置20とコンデンサC1とを、Z方向に並んで配置させている。そして、このような構成のパワーモジュール110を、ハウジング703の外冷却部713に設置している。したがって、半導体装置20を冷却しつつ、Z方向に直交する方向において電力変換装置5の体格を小型化することができる。
また、同じパワーモジュール110において、半導体装置20のほうがコンデンサC1よりもハウジング703の外冷却部713の近傍に配置されている。したがって、この外冷却部713により、半導体装置20を効果的に冷却することができる。
パワーモジュール110において、半導体装置20を外冷却部713側とする例を示したが、これに限定されない。コンデンサC1を外冷却部713側としてもよい。しかしながら、単位時間当たりの温度変化が大きい半導体装置20を外冷却部713側にして冷却するほうが好ましい。
(第4実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、パワーモジュール110及びモータユニット800と共通する部分についての説明は省略する。
図43、図44に示すように、本実施形態では、パワーモジュール110がハウジング流路711に収容されている。パワーモジュール110は、ハウジング流路711の内部において、軸方向αに延びた状態になっており、内冷却部712から径方向外側に離間し、外冷却部713から径方向内側に離間している。ハウジング流路711においては、パワーモジュール110と内冷却部712との間を冷媒が流れるとともに、パワーモジュール110と外冷却部713との間を冷媒が流れる。パワーモジュール110においては、一面181が内冷却部712に対向しており、裏面182が外冷却部713に対向している。ハウジング流路711においては、パワーモジュール110の一面181及び裏面182のそれぞれが冷媒により直接的に冷却される。
本実施形態では、ハウジング流路711が流入領域741と流出領域742とに区画されていない。ハウジング703は、第2仕切部744を有していない一方で、第1仕切部743を有しており、上記第1実施形態と同様に、流入孔715からハウジング流路711に流れ込んだ冷媒は、周方向γに一周した後に流出孔716から流出する。また、複数のパワーモジュール110は、上記第1実施形態と同様に周方向γに所定間隔で並べられている。このため、ハウジング流路711においては、流入孔715から流れ込んだ冷媒が複数のパワーモジュール110を1つずつ順番に通過する。
ハウジング703には、ハウジング流路711へのパワーモジュール110の挿入を可能にする挿入孔703aが設けられている。挿入孔703aは、ハウジング703の一方の端部に設けられている。挿入孔703aは、ハウジング703を軸方向αに貫通しており、パワーモジュール110は、挿入孔703aを通じてハウジング流路711に挿入された状態で、挿入孔703aを塞いでいる。挿入孔703aにおいてはパワーモジュール110とハウジング703との接続部分がシール材等により液密にシールされている。この場合、パワーモジュール110の少なくとも一部がハウジング流路711において冷媒に浸漬されている。特に、半導体装置20は、軸方向α及び径方向βのいずれにおいても、ハウジング流路711の内部に入り込んだ位置に配置されている。
軸方向αにおいてハウジング703の一方の端面側に、パワーモジュール110の出力バスバー150及び固定子701の接続端子701bの両方が配置されている。接続端子170は、固定子701の固定子巻線706から延びた端子である。出力バスバー150及び接続端子701bは、パワーモジュール110及び固定子701から軸方向αに延びている。この構成では、出力バスバー150と接続端子701bとを接続する構成を簡易化でき、接続する際の作業負担を低減できる。また、出力バスバー150を極力短くできるため、出力バスバー150での電力損失や発生熱を抑制できる。
本実施形態によれば、パワーモジュール110の両面に沿って冷媒が流れる状態で、パワーモジュール110がハウジング流路711に収容されている。この構成では、パワーモジュール110の一面181及び裏面182の両方が冷媒により直接的に冷却されるため、ハウジング流路711を流れる冷媒によるパワーモジュール110の冷却効果を高めることができる。また、複数のパワーモジュール110がハウジング流路711において冷媒に浸漬された状態では、これらパワーモジュール110の全てが冷媒により直接的に冷却される。このため、冷媒による冷却効果がパワーモジュール110ごとにばらつくということを抑制できる。
なお、パワーモジュール110は、径方向βに延びた状態でハウジング流路711に収容されていてもよい。例えば、図45に示すように、挿入孔703aが外冷却部713に設けられた構成とする。この構成では、パワーモジュール110が径方向βに延びた状態で挿入孔703aを通じてハウジング流路711に挿入されており、出力バスバー150は、ハウジング703よりも径方向外側に設けられている。また、パワーモジュール110は、出力バスバー150が径方向βにおいてハウジング703に横並びに配置される向きでハウジング流路711に収容されていてもよい。
ハウジング流路711においては、パワーモジュール110が内冷却部712及び外冷却部713の少なくとも一方に接触していてもよい。例えば、パワーモジュール110が内冷却部712及び外冷却部713のうち一方だけに接触している構成では、その一方とパワーモジュール110との間を冷媒が流れない可能性が高いが、他方とパワーモジュール110との間を冷媒が流れる。このため、冷媒は他方側からパワーモジュール110を冷却することができる。また、パワーモジュール110が内冷却部712及び外冷却部713の両方に接触している構成でも、冷媒がパワーモジュール110を軸方向αに避けて流れることで、この冷媒によるパワーモジュール110の冷却が行われる。
本実施形態では、パワーモジュール110においては、半導体装置20の全てがハウジング流路711に入り込んだ状態になっていたが、半導体装置20の一部だけがハウジング流路711に入り込んだ状態になっていてもよい。すなわち、半導体装置20の少なくとも一部がハウジング流路711に入り込んでいればよい。
本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、平滑コンデンサC2がハウジング703の外周面に取り付けられている。これに対して、平滑コンデンサC2は、パワーモジュール110と同様に、ハウジング流路711に収容されていてもよい。平滑コンデンサC2は、パワーモジュール110と同様に、軸方向αに延びた状態でハウジング流路711に収容されていてもよく、径方向βに延びた状態でハウジング流路711に収容されていてもよい。また、パワーモジュール110と同様に、平滑コンデンサC2が外冷却部713及び内冷却部712の少なくとも一方に接触していてもよい。
ハウジング703は、外冷却部713を有していなくてもよい。すなわち、ハウジング703の外周部に外冷却部713が含まれていなくてもよい。この場合でも、平滑コンデンサC2がハウジング流路711に収容されていれば、冷媒によりハウジング703を冷却することができる。
(第5実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、上記第4実施形態等の先行実施形態に示した駆動システム1、電力変換装置5、半導体装置20、パワーモジュール110及びモータユニット800と共通する部分についての説明は省略する。
図46、図47に示すように、本実施形態では、上記第4実施形態において、ハウジング流路711が、内側流路751と、内側流路751よりも径方向外側に設けられた外側流路752とを有している。内側流路751及び外側流路752は、いずれも径方向βに沿って延びている。外側流路752は流入孔715に通じており、内側流路751は流出孔716に通じている。ハウジング流路711においては、外側流路752が内側流路751よりも上流側に配置されている。
内側流路751は、周方向γに一周した環状になっており、外側流路752は、中心線CL2の周りを一周していない形状になっている。外側流路752は、径方向βにおいて内側流路751に並べられている。ハウジング703は、内側流路751と外側流路752とを仕切る内外仕切部753を有している。内外仕切部753は、径方向βにおいて内側流路751と外側流路752との間に設けられており、周方向γに延びている。内外仕切部753は、内冷却部712や外冷却部713と同様に、熱伝導性を有する材料により形成されている。
複数のパワーモジュール110は、ハウジング流路711のうち外側流路752に収容されている。この場合、パワーモジュール110は、径方向βにおいて内外仕切部753と外側流路752との間に設けられている。
パワーモジュール110は、外側流路752の内部において、軸方向αに延びた状態になっており、内外仕切部753から径方向外側に離間し、外冷却部713から径方向内側に離間している。外側流路752においては、パワーモジュール110と内外仕切部753との間を冷媒が流れるとともに、パワーモジュール110と外冷却部713との間を冷媒が流れる。パワーモジュール110においては、一面181が内外仕切部753に対向しており、裏面182が外冷却部713に対向している。外側流路752においては、パワーモジュール110の一面181及び裏面182のそれぞれが冷媒により直接的に冷却される。
ハウジング流路711において、流入孔715から外側流路752に流れ込んだ冷媒は、各パワーモジュール110を通過して内側流路751に流れ込み、この内側流路751にて周方向γに一周した後に流出孔716から流出する。また、複数のパワーモジュール110は、上記第1実施形態と同様に周方向γに所定間隔で並べられている。このため、外側流路752においては、流入孔715から流れ込んできた冷媒が複数のパワーモジュール110に1つずつ順番に通過する。
本実施形態によれば、パワーモジュール110の両面に沿って冷媒が流れる状態で、パワーモジュール110が外側流路752に収容されている。この構成では、パワーモジュール110の一面181及び裏面182の両方が冷媒により直接的に冷却されるため、外側流路752を流れる冷媒によるパワーモジュール110の冷却効果を高めることができる。また、複数のパワーモジュール110が外側流路752において冷媒に浸漬された状態では、これらパワーモジュール110の全てが冷媒により直接的に冷却されるため、冷媒による冷却効果がパワーモジュール110ごとにばらつくということを抑制できる。
本実施形態によれば、ハウジング流路711において、各パワーモジュール110を冷却するための外側流路752が、固定子701を冷却するための内側流路751よりも上流側に設けられている。この構成では、流入孔715からハウジング流路711に流れ込んできた温度が上昇していない状態の冷媒によりパワーモジュール110の冷却を行うことができる。換言すれば、固定子701の冷却を行ったことで温度の上昇した冷媒がパワーモジュール110の冷却を行う、ということを回避できる。
ここで、固定子701は温度変化の応答性が比較的低く、パワーモジュール110は温度変化の応答性が比較的高い。すなわち、車両の走行に伴って、固定子701は温度変化しにくく、パワーモジュール110は温度変化しやすい。固定子701及びパワーモジュール110は、いずれも車両の走行に伴って温度が上昇する。ただ、車両が信号等により一時的に停車した場合、その短い停車期間では固定子701の温度がほとんど低下しないのに対して、パワーモジュール110は短い停車期間でも温度がある程度低下する。そして、車両が再度の走行を開始した場合、パワーモジュール110の温度上昇が急激になりやすい。この場合、パワーモジュール110がハウジング流路711において上流側の外側流路752に収容されていることで、温度上昇していない冷媒によりパワーモジュール110の冷却を行うことが、走行開始時のモータユニット800にとって効果的である。
なお、外側流路752は、ハウジング703に収容されていれば内側流路751に沿って延びていなくてもよい。例えば、内側流路751と外側流路752とが径方向βに並んでいない構成とする。この構成でも、径方向βにおいてハウジング703の内周面からの離間距離が、内側流路751よりも外側流路752の方が大きければ、外側流路752を流れる冷媒が固定子701よりも先にパワーモジュール110の冷却を行うことになる。
パワーモジュール110の一面181及び裏面182の両方にハウジング流路711が配置された構成としては、本実施形態の他にも、径方向βにおいて内側流路751と外側流路752との間にパワーモジュール110が設けられた構成がある。この構成では、孔等の収容部が内外仕切部753に設けられており、この収容部にパワーモジュール110が収容されている。この場合、内外仕切部753は、内側流路751や外側流路752を流れる冷媒によりパワーモジュール110を冷却することになる。
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
電力変換装置5が、モータジェネレータ3用のインバータ7及び平滑コンデンサC2を構成する例を示したが、これに限定されない。ハウジング流路711を流れる冷媒によりパワーモジュール110が冷却される構成であればよい。電力変換装置5が、インバータ7を構成するパワーモジュール110のみを備える構成としてもよい。上記したように、直流電圧の平滑化の機能をコンデンサC1にもたせることで、平滑コンデンサC2を備えない構成としてもよい。この場合、三相インバータにおいて、各並列回路11のコンデンサC1の静電容量は、たとえば300μF程度となる。