JP2020006550A - 端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】端面赤錆耐食性とおもて面耐食性とを両立させたクロメートフリー型プレコート鋼板の提供。【解決手段】亜鉛系めっき鋼板の両面に、順に、クロメートフリー型化成処理層と、1層以上の塗膜層とを含むクロメートフリー型プレコート鋼板であって、前記プレコート鋼板の少なくとも裏面の前記1層以上の塗膜層が、少なくとも非導電性バリア層及び潮解性の防錆顔料含有層を含み、前記非導電性バリア層が、0.5〜2.0μmの厚みを有しており、前記クロメートフリー化成処理層と前記潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接していることを特徴とするクロメートフリー型プレコート鋼板。【選択図】なし
Description
本発明は、端面の赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板に関する。より詳しく言えば、本発明は、例えば電気製品、建築などの分野において、水に濡れる環境、特に雨水等にさらされる屋外環境で使用されるクロメートフリー型プレコート鋼板であり、端面の赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板に関する。
梅雨などの高温多雨時に屋外にクロメートフリー型プレコート鋼板を設置すると、塗膜のない切断端面から短期間に赤錆が発生する問題が過去に発生した。この問題の解決のため、出願人は、特許文献1に記載する端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板を提案している。
特許文献1には、めっき鋼板の少なくとも片面の塗膜中に赤錆抑制効果を示す防錆顔料を添加した端面赤錆抑制型プレコート鋼板が記載されている。これは、プレコート鋼板の端面が水に浸漬したとき、塗膜中から防錆顔料が溶出し、その成分が端面を保護することによって赤錆の発生を抑制するものである。防錆顔料として効果が大きく実用化された例としてはタングステン酸ナトリウムが挙げられるが、タングステン酸ナトリウム以外にも赤錆抑制効果を示す防錆顔料は種々見出され、これらを塗膜中に含有させた様々なプレコート鋼板が提案されている。特許文献2には、同じように耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板が記載されており、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩が、赤錆抑制効果を示す防錆顔料として使用できることが記載されている。
特許文献1に記載された耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板は、端面耐食性対策を施していない一般的なプレコート鋼板よりも、優れた端面耐食性を提供する。しかし、一般的なプレコート鋼板と原板や表面の皮膜構成は同一であるにも関わらず、状況によっては、特許文献1に記載の耐端面赤錆性に優れたクロムフリー塗装鋼板が、一般的なプレコート鋼板よりもおもて面(意匠面)の耐食性が悪い場合があることが報告されている。具体的には、プレコート鋼板のおもて面の塗膜層に何らかの理由により、疵が存在していると、この疵部からの塗膜膨れが発生し、この膨れの速度が大幅に速くなり、短時間で赤錆発生に至るという現象である。この現象は、裏面が水に濡れやすい環境で使用されるケースで見られることが多い。この問題を解決し、端面赤錆耐食性とおもて面耐食性とを両立させることが、本発明の課題である。
本発明は、この課題の解決を目的とするものである。
上記課題を解決する本発明の要旨は次のとおりである。
(1) 亜鉛系めっき鋼板の両面に、順に、クロメートフリー型化成処理層と、1層以上の塗膜層とを含むクロメートフリー型プレコート鋼板であって、
前記プレコート鋼板の少なくとも裏面の前記1層以上の塗膜層が、少なくとも非導電性バリア層及び潮解性の防錆顔料含有層を含み、
前記非導電性バリア層が、0.5〜2.0μmの厚みを有しており、前記クロメートフリー化成処理層と前記潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接していることを特徴とするクロメートフリー型プレコート鋼板。
(2) 前記非導電性バリア層が、メラミン樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、メラミン樹脂で硬化されたポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化されたポリエステル樹脂から成る群より選択される有機樹脂塗膜層である前記(1)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(3) 前記潮解性の防錆顔料が、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選択される、前記(1)又は(2)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(4) 前記タングステン酸塩が、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(5) 前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(6) 前記アルカリ金属のリン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(7) 前記アルカリ金属の塩化物が塩化ナトリウムである、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(8) 前記アルカリ土類金属の次亜リン酸塩が次亜リン酸カルシウムである、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(1) 亜鉛系めっき鋼板の両面に、順に、クロメートフリー型化成処理層と、1層以上の塗膜層とを含むクロメートフリー型プレコート鋼板であって、
前記プレコート鋼板の少なくとも裏面の前記1層以上の塗膜層が、少なくとも非導電性バリア層及び潮解性の防錆顔料含有層を含み、
前記非導電性バリア層が、0.5〜2.0μmの厚みを有しており、前記クロメートフリー化成処理層と前記潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接していることを特徴とするクロメートフリー型プレコート鋼板。
(2) 前記非導電性バリア層が、メラミン樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、メラミン樹脂で硬化されたポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化されたポリエステル樹脂から成る群より選択される有機樹脂塗膜層である前記(1)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(3) 前記潮解性の防錆顔料が、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選択される、前記(1)又は(2)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(4) 前記タングステン酸塩が、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(5) 前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(6) 前記アルカリ金属のリン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物又はそれらの混合物から選択される、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(7) 前記アルカリ金属の塩化物が塩化ナトリウムである、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
(8) 前記アルカリ土類金属の次亜リン酸塩が次亜リン酸カルシウムである、前記(3)に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
本発明によれば、クロメートフリー型プレコート鋼板の少なくとも裏面の塗膜層のうちの潮解性の防錆顔料含有層が端面赤錆耐食性の発現に寄与し、雨水などにさらされる屋外環境において端面の赤錆発生を効果的に抑制すると同時に、プレコート鋼板のおもて面の塗膜層に疵が存在している場合であっても、塗膜膨れ及び赤錆発生を防止する。これにより、端面赤錆耐食性の提供と、おもて面耐食性の提供とを両立させることができる。
本発明者らは、上述の目的達成のため種々検討する過程で、潮解性の防錆顔料含有層を裏面に有するプレコート鋼板のおもて面に疵が存在する場合に、一般的なプレコート鋼板よりもおもて面(意匠面)の耐食性が悪くなるという現象は、裏面側の潮解性の防錆顔料含有層が、表面の塗膜層に何らかの影響を与えていると考え、それが、裏面側の塗膜層の導電性に起因していることを突き止めた。
特許文献1に記載の端面赤錆耐食性に優れたプレコート鋼板は、鋼板端面での赤錆を防止するために、裏面塗膜層中に水溶性の高い潮解性の防錆剤を含む防錆顔料含有層有している。このため、この防錆顔料含有層が水濡れ状態になったときに、潮解性の防錆剤がイオン化し、裏面塗膜層内に滞在し、裏面塗膜層と鋼板との間に導電性が生じる。この導電性が、鋼板の反対面であるおもて面(意匠面)にある疵部からの耐食性(耐膨れ性)を低下させ、一般的なプレコート鋼板よりも塗膜膨れを促進させると考えられる。
具体的には、おもて面の塗膜層の疵が存在すると、その疵部において、鋼板のめっき成分の亜鉛がアノード溶解し、生じた電子が鋼板のおもて面から回り込んで、鋼板の裏面側に移動し、酸素と反応(カソード反応)することにより腐食電池を形成しようとする。一般的なプレコート鋼板では、裏面に絶縁性の有機皮膜が存在するため、腐食電流が流れないので、腐食電池が形成されない。しかし、特許文献1に記載の端面赤錆耐食性に優れたプレコート鋼板は、裏面に、潮解性の防錆顔料含有層が存在しているので、この防錆顔料含有層が水濡れすることにより導電性になると、おもて面から鋼板裏面まで腐食電流が流れ、おもて面の塗膜疵部での亜鉛のアノード溶解が促進され、疵部周辺の塗膜膨れが急激に進むと考えられる。本願発明者らは、プレコート鋼板の裏面のクロメートフリー化成処理層と潮解性の防錆顔料含有層との間に、両者に接して、非導電性バリア層を挿入することにより、この問題が解決できることを見出した。
より具体的に言えば、本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板の裏面に存在するクロメートフリー化成処理層と潮解性の防錆顔料含有層との間に、それぞれ接している特定の厚みを有する非導電性バリア層を挿入することによって、上述の本発明の課題を完全に達成できることを見いだして、本発明を完成するに至った。
製品としてのプレコート鋼板は、一般に、それを加工して最終製品を製造する需要家が求める性能の塗膜を片面に設けた形で需要家に供給される。本発明においては、需要家が求める性能の塗膜を設けた方の面を、プレコート鋼板の「おもて面(意匠面ともいう)」と見立て、その面の反対側の面を「裏面」と称する。「おもて面」は需要家において製造される最終製品において外側に位置し、人の目に触れる面であるのに対し、「裏面」は最終製品において人の目に触れることはなく、従って裏面の塗膜にはおもて面の塗膜に求められるほどの性能は求められない。こうしたことから、プレコート鋼板の「おもて面」と「裏面」の区別はその外見から一目瞭然であり、両者を比べて、「裏面」は特に美的観点から見劣りすることで、容易に区別することができる。
本発明は、亜鉛系めっき鋼板の両面に、順に、クロメートフリー型化成処理層と、1層以上の塗膜層とを含むクロメートフリー型プレコート鋼板であって、前記プレコート鋼板の少なくとも裏面が、前記クロメートフリー型化成処理層及び非導電性バリア層、潮解性の防錆顔料含有層を含み、前記非導電性バリア層は、0.5〜2.0μmの厚みを有しており、前記クロメートフリー化成処理層と前記潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接していることを特徴とする端面赤錆耐食性に優れたクロメートフリー型プレコート鋼板である。
本発明プレコート鋼板に用いることができる、非導電性バリア層を形成する塗料としては、一般的なプレコート鋼板用の有機樹脂塗料を使用することができる。その名称にかかわらず導電性を有していない限り、プライマー用塗料、トップコート用塗料、あるいは顔料を含まないクリア塗料のいずれであって用いることができる。本発明プレコート鋼板の重要な特徴は、ここで用いる非導電性バリア層の膜厚である。
本発明者らは、下記実施例の項に記載したように、本発明に用いることができる非導電性バリア層の膜厚を種々に変えて、プレコート鋼板試験サンプルの端面赤錆耐食性とおもて面耐食性の評価を行った。
図1はこの評価結果を表すグラフである。プロット(■)は、11%Al−3%Mg−0.2%Si−亜鉛めっき鋼板(SD)のおもて面X疵部耐食性の結果であり、プロット(◆)は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)のおもて面X疵部耐食性の結果である。両者共に、非導電性バリア層の膜厚が0.5μmになるとXカット部(疵部)における最大膨れ幅値(mm)が急速に低下し、その後、非導電性バリア層の膜厚を増加させても、最大膨れ幅値(mm)が低い状態であることがわかる。この結果から、十分なおもて面耐食性を確保するために、非導電性バリア層の膜厚は、0.5μm以上必要であることがわかる。この結果は、潮解性の防錆顔料含有層から鋼板裏面への腐食電流の流れが、非導電性バリア層によって防止されるという、本発明者らの予測と一致している。
一方、プロット(×)は、11%Al−3%Mg−0.2%Si−亜鉛めっき鋼板(SD)の端面赤錆の結果であり、プロット(▲)は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)の端面赤錆の結果である。これらのグラフから分かるように、両者共に、非導電性バリア層の膜厚が2.0μmを超えると、それまでは非常に低い値であった、端面の赤錆(%)が急速に増加しており、膜厚が2.0μmを超えると鋼板の端面部での耐食性が得られていないことを示している。この結果は、予想外であった。
潮解性の防錆顔料によって、鋼板の端面赤錆耐食性を確保するには、潮解性の防錆顔料成分が防錆顔料含有層から溶出して、鋼板の端面又はその近傍に移動し、その場所で持続的に「滞留」していることが必要である。非導電性バリア層の膜厚が2.0μmを超えると端面の赤錆(%)が急速に増加するのは、鋼板端面部と防錆顔料含有層と距離が広がり過ぎて、溶出した防錆顔料成分が鋼板の端面又はその近傍に移動できないことが理由であると考えられる。このことから、端面赤錆耐食性とおもて面耐食性とを両立させるための、非導電性バリア層の膜厚は、0.5〜2.0μmであるとの知見を得た。このことから、本発明のクロメートフリー型プレコート鋼板の非導電性バリア層は、0.5〜2.0μmの厚みが必要であり、この範囲外では、端面赤錆耐食性とおもて面耐食性とを両立させることができない。
非導電性バリア層としては、メラミン樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、メラミン樹脂で硬化されたポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化されたポリエステル樹脂から成る群より選択される有機樹脂を含む樹脂塗膜層であることが好ましい。使用する塗料としては、その名称にかかわらず導電性を有していない限り、一般的なプレコート鋼板用樹脂塗料を使用することができる。
潮解性の防錆顔料含有層に用いることができる潮解性防錆顔料としては、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
タングステン酸塩としては、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム又はタングステン酸マグネシウムを用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。タングステン酸塩は、潮解性の防錆顔料含有層中に6〜50wt%程度混入することができる。6wt%より少ないと、端面赤錆耐食性の発現に不足し、50wt%より多くなると、成膜後の潮解性の防錆顔料含有層が湿潤環境に曝されたときにタングステン酸塩が過度に溶出し、塗膜層に膨れや剥離が発生しかねない。潮解性の防錆顔料含有層中のタングステン酸塩含有量は、より好ましくは7〜40wt%、最も好ましくは10〜30wt%である。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム又はケイ酸リチウムを用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。ケイ酸塩は、潮解性の防錆顔料含有層中に5〜50wt%程度混入することができる。5wt%より少ないと、端面赤錆耐食性の発現に不足し、50wt%より多くなると、成膜後の潮解性の防錆顔料含有層が湿潤環境に曝されたときにケイ酸塩が過度に溶出し、防錆顔料含有層に膨れや剥離が発生しかねない。潮解性の防錆顔料含有層中のケイ酸塩含有量は、より好ましくは7〜40wt%、最も好ましくは10〜30wt%である。
本発明で使用するタングステン酸塩又はケイ酸塩は常温で粉末であり、混入する潮解性の防錆顔料含有層の厚さを考慮して、最大粒径が5〜20μm、より好ましくは5〜10μm程度になるまで塗料中で分散して使用することが好ましい。
本発明では、端面赤錆耐食性を発現するこのほかの潮解性防錆顔料として、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を用いることも可能である。アルカリ金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物又はリン酸二水素ナトリウム二水和物を用いることができ、それらの混合物を用いてもよい。アルカリ金属の塩化物としては、例えば塩化ナトリウムを用いることができる。アルカリ土類金属の次亜リン酸塩としては、例えば次亜リン酸カルシウムを用いることができる。潮解性の防錆顔料含有層中におけるこれらの防錆顔料の好適な含有量は0.5〜30wt%であり、1〜20wt%がより好適である。
本発明で用いる潮解性防錆顔料は、上述の物質の任意の組み合わせであることもできる。
潮解性の防錆顔料含有層は、膜厚が2〜20μmであるのが好ましい。2μm未満の場合は、添加した潮解性防錆顔料の絶対量が不足し、十分な端面赤錆耐食性が得られず、20μmを超えると、端面赤錆耐食性の効果が飽和し不経済であると同時に、加工時の層密着性が低下する。より好ましい膜厚は3〜15μm、更に好ましくは5〜10μmである。
ここで言う膜厚とは、平均膜厚であり、平均膜厚は以下の方法で測定することができる。プレコート鋼板をエポキシ樹脂に埋め込み硬化させ、断面方向から研磨した後、防錆顔料含有層の断面顕微鏡観察を行い、膜厚を実測する。膜厚が測定場所によりに変動することを考慮し、断面顕微鏡観察する範囲は少なくとも10mm以上であることが望ましい。添加した防錆顔料の粒径が大きく当該防錆顔料含有層から突出している場合は、その突出した顔料表面は防錆顔料含有層とみなす。
ここで言う膜厚とは、平均膜厚であり、平均膜厚は以下の方法で測定することができる。プレコート鋼板をエポキシ樹脂に埋め込み硬化させ、断面方向から研磨した後、防錆顔料含有層の断面顕微鏡観察を行い、膜厚を実測する。膜厚が測定場所によりに変動することを考慮し、断面顕微鏡観察する範囲は少なくとも10mm以上であることが望ましい。添加した防錆顔料の粒径が大きく当該防錆顔料含有層から突出している場合は、その突出した顔料表面は防錆顔料含有層とみなす。
本発明において、クロメートフリー型プレコート鋼板に端面赤錆耐食性を付与する潮解性防錆顔料は、プレコート鋼板の裏面側の塗膜層中に存在するのが好ましい。裏面側の塗膜層が複数ある場合、潮解性の防錆顔料は、非導電性バリア層以外の全ての塗膜層に存在してもよく、あるいは一部の塗膜層だけに存在してもよい。但し、潮解性防錆顔料が端面赤錆耐食性を効果的に発現するためには、潮解性防錆顔料は、少なくとも最も外側の塗膜層中に存在するのが好ましい。潮解性防錆顔料が端面赤錆耐食性を発現するためには、プレコート鋼板を濡らす水に溶解する必要があり、プレコート鋼板の裏面に露出している最外の塗膜層はそのために必要な面積(水に濡れる面積)を提供することができるからである。最外以外の塗膜層は、端面部分に露出しているだけであり、その露出面積はわずかであるため、最外以外の塗膜層だけでは、有効量の潮解性防錆顔料の溶出を保証するのに不足することが考えられる。おもて面側の塗膜層に潮解性防錆顔料を含ませることも可能であるが、この場合は、おもて面側の塗膜層に求められる需要家からの要件を損なわない範囲で潮解性防錆顔料を混入させるのが好ましい。
プレコート鋼板の裏面の最外塗膜層以外の塗膜層に潮解性防錆顔料を混入する場合は、水中への溶出をより容易にする観点から、上述の最外塗膜層中の濃度範囲のうちの上限に近い量を採用するのが好ましい。
プレコート鋼板の裏面にある、クロメートフリー化成処理層と潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接している非導電性バリア層は、非導電性である限り、さらに複数の層から成ることができるが、それらの膜厚は、鋼板端面部と防錆顔料含有層との距離が広がり過ぎないように、上述の非導電性バリア層と合算した膜厚が0.5〜2.0μmの範囲となるように設定する必要がある。
本発明で使用する潮解性防錆顔料は常温で粉末であり、混入する塗膜層の厚さを考慮して、二次粒子の最大粒径が5〜20μm、より好ましくは5〜10μm程度になるまで塗料中で分散させて使用することが好ましい。
潮解性防錆顔料粉末は、目的の塗膜層用の塗料中に、任意の方法で混入することができる。例えば、塗装する用意のできた塗料(潮解性防錆顔料以外の必要成分と溶剤を含む)に加えてもよく、あるいは、塗料の1以上の成分と予め一緒にした合物を、塗料のほかの成分と混合して塗料を調製してもよい。
本発明のクロメートフリー型プレコート鋼板の塗膜層は、端面赤錆耐食性の付与に必要な端面滞留性の高い潮解性防錆顔料を添加することを除けば、通常のクロメートフリー型プレコート鋼板の製造に用いられる塗料により形成することができる。例えば、プレコート鋼板のおもて面には、ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート、カルシウム交換シリカ、トリポリリン酸アルミニウム、酸化チタン、シリカ、その他の添加剤等で構成されるプライマー層;ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート、カルシウム交換シリカ、トリポリリン酸アルミニウム、酸化チタン、シリカ、各種の着色顔料、ワックス、その他の添加剤等で構成される塗膜層を含むことができる。また、プレコート鋼板の裏面には、クロメートフリー型化成処理層、非導電性バリア層、及び潮解性の防錆顔料含有層に加えて、ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート、カルシウム交換シリカ、トリポリリン酸アルミニウム、酸化チタン、シリカ、各種の着色顔料、ワックス、その他の添加剤等で構成される塗膜層を含むことができる。
本発明のクロメートフリー型プレコート鋼板は、亜鉛系めっき鋼板である。亜鉛系めっき鋼板としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、Al−亜鉛めっき鋼板、Al−Mg−Si−亜鉛めっき鋼板など任意のものが使用できるが、Al−Mg−Si−亜鉛めっき鋼板を使用した場合に、耐赤錆性の向上が特に顕著である。
亜鉛系めっき鋼板の表面には、上述の塗膜層用塗料を塗布するための前処理層として、通常のクロメートフリー型化成処理層を有する。一例として、クロメートフリー型化成処理層は、シリカ、シランカップリング剤、タンニン又はタンニン酸、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物のいずれか2種以上と樹脂を含有する皮膜を用いることができる。化成処理層は、化成処理液を浸漬塗布、ロールコーター塗装、リンガーロール塗装、刷毛塗り、スプレー塗装などにより形成することができる。
本発明のクロメートフリー型プレコート鋼板は、少なくとも裏面の最も外側の塗膜層の形成に端面滞留性の高い潮解性防錆顔料を添加した塗料を用いるのを除けば、クロメートフリー型プレコート鋼板の通常の製造設備、製造方法により製造することができ、それらについて当業界ではよく知られており、ここで詳細に説明するには及ばない。
次に、実施例により本発明を説明する。以下の実施例は例示を目的としたものであり、本発明は以下の実施例で用いたプレコート鋼板の態様に限定されるものでない。
A.試料材原板
次の原板GI、SDを使用して試料材を作製した。
(1)GI:溶融亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、めっき付着量80g/m2片面)
(2)SD:11%Al−3%Mg−0.2%Si−亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、めっき付着量80g/m2片面)
次の原板GI、SDを使用して試料材を作製した。
(1)GI:溶融亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、めっき付着量80g/m2片面)
(2)SD:11%Al−3%Mg−0.2%Si−亜鉛めっき鋼板(0.6mm厚、めっき付着量80g/m2片面)
B.原板の化成処理
シランカップリング剤、タンニン酸、シリカ、及びポリエステル樹脂混合系処理剤により、原板の両面をクロメートフリー化成処理(100mg/m2)し、クロメートフリー型化成処理層を形成した。
シランカップリング剤、タンニン酸、シリカ、及びポリエステル樹脂混合系処理剤により、原板の両面をクロメートフリー化成処理(100mg/m2)し、クロメートフリー型化成処理層を形成した。
C.試料材の塗装
下記の各種塗料を用いて、先に化成処理した原板のおもて面に、順に、下層及び上層から成る2層の塗膜層を塗装し、裏面に、順に、バリア層、下層、及び上層から成る3層の塗膜層を塗装したプレコート鋼板を作製した。実施例の表記では、裏面の「バリア層」が、本発明の非導電性バリア層に相当し、裏面の「下層」が、潮解性の防錆顔料含有層に相当している。
下記の各種塗料を用いて、先に化成処理した原板のおもて面に、順に、下層及び上層から成る2層の塗膜層を塗装し、裏面に、順に、バリア層、下層、及び上層から成る3層の塗膜層を塗装したプレコート鋼板を作製した。実施例の表記では、裏面の「バリア層」が、本発明の非導電性バリア層に相当し、裏面の「下層」が、潮解性の防錆顔料含有層に相当している。
以下、おもて面の下層、上層、裏面のバリア層、下層、及び上層に用いた塗料の内容を説明する。
(1)標準プライマー
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。尚、この塗料の防錆顔料成分は潮解性防錆顔料ではない。
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。尚、この塗料の防錆顔料成分は潮解性防錆顔料ではない。
(2)標準トップ
高分子ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC7000塗料樹脂)を樹脂成分とする白色塗料である。この塗料は潮解性防錆顔料を含有していない。
高分子ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC7000塗料樹脂)を樹脂成分とする白色塗料である。この塗料は潮解性防錆顔料を含有していない。
(3)標準1コート裏面
ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)を樹脂成分とするベージュ色塗料である。
ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)を樹脂成分とするベージュ色塗料である。
(4)クリア塗料
高分子ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC7000塗料樹脂)を樹脂成分とする、顔料無添加のクリア塗料である。
高分子ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製FLC7000塗料樹脂)を樹脂成分とする、顔料無添加のクリア塗料である。
(5)水透過皮膜
ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製NKC1200SC塗料樹脂にシラノール基表面濃化による低汚染性付与したもの)に、チタニア(石原産業社製タイペークCR−90)40重量%、トリポリリン酸アルミニウム5重量%、多孔質シリカ(洞海化学工業社製H−33)5重量%を配合して調製した塗料である。この塗料から得られる皮膜は、水透過性・水蒸気不透過性の皮膜である。
ポリエステル/メラミン硬化型塗料(日本ファインコーティングス社製NKC1200SC塗料樹脂にシラノール基表面濃化による低汚染性付与したもの)に、チタニア(石原産業社製タイペークCR−90)40重量%、トリポリリン酸アルミニウム5重量%、多孔質シリカ(洞海化学工業社製H−33)5重量%を配合して調製した塗料である。この塗料から得られる皮膜は、水透過性・水蒸気不透過性の皮膜である。
(6)タングステン酸ナトリウム(W酸Na)含有プライマー
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてタングステン酸ナトリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてタングステン酸ナトリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
(7)リン酸2水素カリウム(P酸2HK)含有プライマー
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてリン酸2水素カリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてリン酸2水素カリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
(8)タングステン酸ナトリウム(W酸Na)含有トップ
ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてタングステン酸ナトリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてタングステン酸ナトリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
(9)リン酸2水素カリウム(P酸2HK)含有トップ
ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてリン酸2水素カリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)に、防錆顔料成分としてカルシウム交換シリカ20重量%、及びトリポリリン酸アルミニウム20重量%、また潮解性防錆顔料成分としてリン酸2水素カリウム20重量%を含有する塗料である。ここで、重量%の値は、塗料の全固形分に対する該防錆顔料成分の重量濃度パーセントを示す。
作製した試料材に対して、次の性能試験を行った。
1.おもて面X疵部耐食性試験
試料材を50×100mmの大きさに切断し、切断端面を全て塗装シールした後、おもて面にNTカッターで地鉄まで到達する疵をX型に入れた試験片を作製した。この試験片をおもて面が上方となるように水平に塩水噴霧試験機内に設置した。その際、予め塩水を十分に含浸させた厚さ1mmのフェルトを塩水噴霧試験機内に水平に敷き、その上に試験片の裏面全面がフェルトに接するように置くことにより、試験片の裏面が常に十分な塩水で濡れた状態で試験に供されるようにした。試験時間は、重塩害地での長期耐久性を想定した1200時間とした。
試料材を50×100mmの大きさに切断し、切断端面を全て塗装シールした後、おもて面にNTカッターで地鉄まで到達する疵をX型に入れた試験片を作製した。この試験片をおもて面が上方となるように水平に塩水噴霧試験機内に設置した。その際、予め塩水を十分に含浸させた厚さ1mmのフェルトを塩水噴霧試験機内に水平に敷き、その上に試験片の裏面全面がフェルトに接するように置くことにより、試験片の裏面が常に十分な塩水で濡れた状態で試験に供されるようにした。試験時間は、重塩害地での長期耐久性を想定した1200時間とした。
評価は、X疵からの最大膨れ幅(mm)、及びX疵からの赤錆の発生有無により行った。X疵からの最大膨れ幅は、重塩害地で十分な耐久性を有していると判断される3mm以下を合格、3mm超を不合格とした。また、X疵からの赤錆の発生有無は、全く赤錆発生の無いものを合格、少しでも赤錆の発生が有るものを不合格とした。
なお、X疵からの最大膨れ幅と赤錆との関連性について補足説明すると、おもて面のX疵部の膨れ幅が4mm程度に達すると、地鉄に対するめっきの犠牲防食機能が働かなくなり、X疵部の地鉄から赤錆が発生し始める。すなわち、X疵からの膨れ幅と赤錆有無には概ね相関があり、膨れ幅を小さく抑えることができれば赤錆の発生は抑制できる。
なお、X疵からの最大膨れ幅と赤錆との関連性について補足説明すると、おもて面のX疵部の膨れ幅が4mm程度に達すると、地鉄に対するめっきの犠牲防食機能が働かなくなり、X疵部の地鉄から赤錆が発生し始める。すなわち、X疵からの膨れ幅と赤錆有無には概ね相関があり、膨れ幅を小さく抑えることができれば赤錆の発生は抑制できる。
2.端面赤錆耐食性試験
端面赤錆耐食性は、その鋼材が使用される環境の違いによって変化する。切断端面に新水が常時供給されるような環境と、同じ水が長時間滞在し端面を濡らし続けるような環境とでは、評価方法を変える必要がある。
切断端面に新水が常時供給されるような環境での端面赤錆耐食性の評価には、40℃HCTが優れる。一方、同じ水が長時間滞在し端面を濡らし続けるような環境での端面赤錆耐食性の評価には、蒸留水浸漬試験が優れる。実際の様々な環境条件で良好な端面赤錆耐食性を得るには、これらの両方の試験で良好な結果が得られることが必要である。
端面赤錆耐食性は、その鋼材が使用される環境の違いによって変化する。切断端面に新水が常時供給されるような環境と、同じ水が長時間滞在し端面を濡らし続けるような環境とでは、評価方法を変える必要がある。
切断端面に新水が常時供給されるような環境での端面赤錆耐食性の評価には、40℃HCTが優れる。一方、同じ水が長時間滞在し端面を濡らし続けるような環境での端面赤錆耐食性の評価には、蒸留水浸漬試験が優れる。実際の様々な環境条件で良好な端面赤錆耐食性を得るには、これらの両方の試験で良好な結果が得られることが必要である。
(1)40℃HCT
50×100mmの試料材を、恒温高湿槽(40℃、98%RH)内に垂直縦長に吊るして設置し、240時間後の端面の赤錆の程度を評価した。端面の総面積に対する赤錆発生面積の比率(%)を測定し、赤錆が5%未満のものを合格とした。この合否基準は、梅雨時期に山間部に設置された塗装鋼板製品の解放された切断端面の3か月間での赤錆発生状況にほぼ対応している。
50×100mmの試料材を、恒温高湿槽(40℃、98%RH)内に垂直縦長に吊るして設置し、240時間後の端面の赤錆の程度を評価した。端面の総面積に対する赤錆発生面積の比率(%)を測定し、赤錆が5%未満のものを合格とした。この合否基準は、梅雨時期に山間部に設置された塗装鋼板製品の解放された切断端面の3か月間での赤錆発生状況にほぼ対応している。
(2)蒸留水浸漬試験
内径90mmのシャーレに蒸留水を40ml入れ、その中に10×40mmに切断した試料材20枚を、端面むき出しのまま浸漬し、168時間経過後の端面の赤錆を評価した。赤錆が全く発生していないものを○(合格)、少しでも赤錆が発生したものを×(不合格)と評価した。この合否基準は、梅雨時期に山間部に設置された塗装鋼板製のエアコン室外機の天板嵌合部(同じ水が滞留する部位)にある切断端面の3か月間での赤錆発生状況にほぼ対応している。
内径90mmのシャーレに蒸留水を40ml入れ、その中に10×40mmに切断した試料材20枚を、端面むき出しのまま浸漬し、168時間経過後の端面の赤錆を評価した。赤錆が全く発生していないものを○(合格)、少しでも赤錆が発生したものを×(不合格)と評価した。この合否基準は、梅雨時期に山間部に設置された塗装鋼板製のエアコン室外機の天板嵌合部(同じ水が滞留する部位)にある切断端面の3か月間での赤錆発生状況にほぼ対応している。
上記各試験の結果を表1に示す。
先ずおもて面X疵部耐食性の結果について述べる。表1より、全ての実施例及び比較例について、0.5mm以上のバリア層が存在するか、潮解性防錆剤を含有しないかにより、裏面の非導電性が十分確保されている供試材では、おもて面X疵部耐食性は最大膨れ幅が3mm以下に抑えられており、この状態ではめっきの犠牲防食効果が十分に働くため、結果として赤錆の発生も見られていない。
次に端面赤錆耐食性の結果について述べる。先ず蒸留水浸漬試験では、裏面塗膜中に十分な潮解性防錆剤を含有し水濡れによって十分量が溶出できる構成の供試材は、バリア層の膜厚に関わらず良好な結果を示している。これは、裏面塗膜から溶出した潮解性防錆剤成分がシャーレ内の水中に溶解し滞在するため、供試材端面の地鉄に直接作用し続けることができるためである。一方、蒸留水浸漬試験で良好な結果であっても、40℃HCTでは、比較例19〜22、24,26,28,40,42,44,及び46の結果が不合格(赤錆が5%超)となっている。これらの供試材は、バリア層が厚すぎるため潮解性防錆剤含有層と原板との距離が遠く、潮解性防錆剤が水に溶解してもすぐに流れ去ってしまうので端面の地鉄まで到達しないためであると考えられる。バリア層が2μm以下の供試材についてはいずれも40℃HCTの結果は良好である。
Claims (8)
- 亜鉛系めっき鋼板の両面に、順に、クロメートフリー型化成処理層と、1層以上の塗膜層とを含むクロメートフリー型プレコート鋼板であって、
前記プレコート鋼板の少なくとも裏面の前記1層以上の塗膜層が、少なくとも非導電性バリア層及び潮解性の防錆顔料含有層を含み、
前記非導電性バリア層が、0.5〜2.0μmの厚みを有しており、前記クロメートフリー化成処理層と前記潮解性の防錆顔料含有層のそれぞれに接していることを特徴とするクロメートフリー型プレコート鋼板。 - 前記非導電性バリア層が、メラミン樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、メラミン樹脂で硬化されたポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化された高分子ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂で硬化されたポリエステル樹脂から成る群より選択される有機樹脂塗膜層である請求項1に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記潮解性の防錆顔料が、タングステン酸塩及びケイ酸塩、アルカリ金属のリン酸塩及び塩化物、並びにアルカリ土類金属の次亜リン酸塩よりなる群から選択される、請求項1又は2に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記タングステン酸塩が、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸マグネシウム又はそれらの混合物から選択される、請求項3に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム又はそれらの混合物から選択される、請求項3に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記アルカリ金属のリン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物又はそれらの混合物から選択される、請求項3に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記アルカリ金属の塩化物が塩化ナトリウムである、請求項3に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
- 前記アルカリ土類金属の次亜リン酸塩が次亜リン酸カルシウムである、請求項3に記載のクロメートフリー型プレコート鋼板。
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