以下、本実施の形態である眼科装置を、図1から図7を用いて説明する。先ず、眼科装置10の全体構成を説明する。
(眼科装置の全体構成)
眼科装置10は、図1に示すように、基台11と検眼用テーブル12と支柱13とアーム14と駆動機構15と一対の測定ヘッド16とを備える。眼科装置10では、検眼用テーブル12と正対する被検者が、両測定ヘッド16の間に設けられた額当部17に当てた状態で、被検者の被検眼の情報を取得する。なお、本明細書を通じて図1に記すようにX軸、Y軸及びZ軸を取り、被検者から見て、左右方向をX方向とし、上下方向(鉛直方向)をY方向とし、X方向及びY方向と直交する方向(測定ヘッド16の奥行き方向)をZ方向とする。
検眼用テーブル12は、後述する表示部兼検者用コントローラ(以下、単に検者用コントローラ25と称する)25や被検者用コントローラ26を置いたり検眼に用いるものを置いたりするための机であり、基台11により支持されている。検眼用テーブル12は、Y方向での位置(高さ位置)を調節可能に基台11に支持されていてもよい。
支柱13は、検眼用テーブル12の後端部でY方向に伸びるように基台11により支持されており、先端にアーム14が設けられている。
アーム14は、検眼用テーブル12上で駆動機構15を介して両測定ヘッド16を吊り下げるもので、支柱13から手前側へとZ方向に伸びている。アーム14は、支柱13に対してY方向に移動可能とされている。なお、アーム14は、支柱13に対してX方向及びZ方向に移動可能とされていてもよい。アーム14の先端には、駆動機構15により吊り下げられて一対の測定ヘッド16が支持されている。
測定ヘッド16は、被検者の左右の被検眼に個別に対応すべく対を為して設けられ、以下では個別に述べる際には左眼用測定ヘッド16L及び右眼用測定ヘッド16Rとする。左眼用測定ヘッド16Lは、被験者の左側の被検眼の情報を取得し、右眼用測定ヘッド16Rは、被験者の右側の被検眼の情報を取得する。左眼用測定ヘッド16Lと右眼用測定ヘッド16Rとは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされている。
各測定ヘッド16には偏向部材であるミラー18が設けられ、ミラー18を通じて後述する測定光学系21により対応する被検眼の情報が取得される。
各測定ヘッド16には、被検眼の眼情報を取得する測定光学系21(個別に述べる際には右眼用測定光学系21R及び左眼用測定光学系21Lとする)が設けられている。測定光学系21の詳細構成については後述する。
両測定ヘッド16は、アーム14の先端から吊り下げられたベース部19に設けられた駆動機構15により移動可能に吊り下げられている。駆動機構15は、本実施の形態では、図6に示すように、左眼用測定ヘッド16Lに対応する左眼用鉛直駆動部22L、左眼用水平駆動部23L及び左眼用回旋駆動部24Lと、右眼用測定ヘッド16Rに対応する右眼用鉛直駆動部22R、右眼用水平駆動部23R及び右眼用回旋駆動部24Rとを有する。
左眼用測定ヘッド16Lに対応する各駆動部の構成と、右眼用測定ヘッド16Rに対応する各駆動部の構成とは、X方向で双方の中間に位置する鉛直面に関して面対称な構成とされており、個別に述べる時を除くと単に鉛直駆動部22、水平駆動部23及び回旋駆動部24と記す。
鉛直駆動部22はベース部19と水平駆動部23との間に設けられ、ベース部19に対して水平駆動部23をY方向(鉛直方向)に移動させる。水平駆動部23は鉛直駆動部22と回旋駆動部24との間に設けられ、鉛直駆動部22に対して回旋駆動部24をX方向及びZ方向(水平方向)に移動させる。
鉛直駆動部22及び水平駆動部23は、例えばパルスモータのような駆動力を発生するアクチュエータと、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等のような駆動力を伝達する伝達機構とが設けられて構成される。水平駆動部23は、例えばX方向とZ方向とで個別にアクチュエータ及び伝達機構の組み合わせを設けることで、容易に構成できるとともに水平方向の移動の制御を容易なものにできる。
回旋駆動部24は、水平駆動部23に対して対応する測定ヘッド16を、対応する被検眼の眼球回旋軸を中心に回転させる。回旋駆動部24は、例えば、アクチュエータからの駆動力を受けた伝達機構が円弧状の案内溝に沿って移動する構成として、案内溝の中心位置が眼球回旋軸と一致されることで、被検眼の眼球回旋軸を中心に測定ヘッド16を回転させる。
なお、回旋駆動部24は、自らに設けた回転軸線回りに回転可能に測定ヘッド16を支持するとともに水平駆動部23と協働して測定ヘッド16を支持する位置を変更しつつ回転させるものでもよい。
これにより、駆動機構15は、各測定ヘッド16を個別にまたは連動させて、X方向、Y方向及びZ方向に移動させることができるとともに、被検眼の眼球回旋軸を中心に回転させることができる。
基台11には、眼科装置10の各部を統括的に制御する制御部27が設けられている。制御部27は検者用コントローラ25と近距離無線通信可能な通信部27bを有する。
検者用コントローラ25は、例えばタブレット端末、スマートフォン等、制御部27と近距離通信可能な通信部25d(図7参照)を有する情報処理装置である。検者用コントローラ25は、検者が眼科装置10を操作するために用いられる。検者用コントローラ25は、制御部27から送出される表示制御信号に基づいて所定の画面を表示面25aに表示させる。また、表示面25aの上にはタッチパネル式の入力部25c(図7参照)が設けられている。入力部25cが受け入れた操作入力信号は通信部25dを介して制御部27に送出される。
本実施の形態の眼科装置10では、検者用コントローラ25は携帯可能に構成されており、検眼用テーブル12上に配置された状態で操作されてもよく、また、検者が手に持って操作されてもよい。
眼科装置10の機能構成については後に詳述する。
(眼科装置の光学系)
図2は本実施の形態である眼科装置の光学系の概略構成を示す図、図3は右眼用測定光学系21Rの詳細構成を示す図である。なお、左眼用測定光学系21Lの構成は右眼用測定光学系21Rと同一であるので、その説明は省略することとし、右眼用測定光学系21Rについてのみ説明する。
なお、本発明の眼科装置は片眼のみ観察する眼科装置にも適用可能である。片眼(例えば右眼)のみを観察する場合は、眼科装置10には図3に示す右眼用測定光学系21Rだけが設けられればよく、両眼の検査を行う場合は、眼科装置10には図2に示すように右眼用測定光学系21R、左眼用測定光学系21L及びこれら測定光学系21R、21Lに光を導くミラー18が設けられる。
右眼用測定光学系21Rは、図3に示すように、観察系31、視標投影系(クロスシリンダ光学系)32、眼屈折力測定系33、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37を有する。
観察系31は被検眼Eの前眼部を観察し、視標投影系32は被検眼Eに視標を呈示し、眼屈折力測定系33は眼屈折力の測定を行う。
眼屈折力測定系33は、本実施の形態では、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影した測定パターンの像を検出する機能とを有する。
アライメント系35及びアライメント系36は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行い、アライメント系35が観察系31の光軸に沿う方向(前後方向)の、アライメント系36が当該光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントをそれぞれ行う。
観察系31は、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ハーフミラー31c、リレーレンズ31d、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子(CCD)31gを有する。
観察系31では、被検眼E(前眼部)で反射された光束を、対物レンズ31aを経て結像レンズ31fにより撮像素子31g上に結像する。これにより、撮像素子31g上には、後述するケラトリング光束やアライメント光源35aの光束やアライメント光源36aの光束(輝点像Br)が投光(投影)された前眼部画像E′が形成される。観察系31の撮像素子31gはこの前眼部画像E′を撮影する。制御部27は、撮像素子31gから出力される画像信号に基づく前眼部画像E′等を検者用コントローラ25の表示面25aに表示させる。
対物レンズ31aの前方には、ケラト系37が設けられている。ケラト系37は、ケラト板37a及びケラトリング光源37bを有する。ケラト板37aは、観察系31の光軸に関して同心状のスリットが設けられた板状を呈し、対物レンズ31aの近傍に設けられている。ケラトリング光源37bは、ケラト板37aのスリットに合わせて設けられている。
ケラト系37では、点灯したケラトリング光源37bからの光束がケラト板37aのスリットを経ることで、被検眼E(角膜Ec)に角膜形状の測定のためのケラトリング光束(角膜曲率測定用リング状視標)を投光(投影)する。ケラトリング光束は、被検眼Eの角膜Ecで反射されることで、観察系31により撮像素子31g上に結像される。これにより、撮像素子31gがリング状のケラトリング光束の像(画像)を検出(受像)し、制御部27が、その測定パターンの像を表示面25aに表示させ、かつ当該画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき角膜形状(曲率半径)を周知の手法により測定する。
なお、本実施の形態では、角膜形状測定系として、リングスリットが1重から3重程度で角膜の中心付近の曲率測定を行うケラト板37aを用いる例(ケラト系37)を示しているが、角膜形状を測定するものであれば、多重のリングを有し角膜全面の形状を測定可能なプラチド板を用いるものでもよく、他の構成でもよく、本実施の形態の構成に限定されない。
ケラト系37(ケラト板37a)の後方にはアライメント系35が設けられている(図2参照)。アライメント系35は、一対のアライメント光源35a及び投影レンズ35bを有し、各アライメント光源35aからの光束を各投影レンズ35bで平行光束とし、ケラト板37aに設けたアライメント用孔を通して被検眼Eの角膜Ecに当該平行光束を投光(投影)する。
制御部27または検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に沿う方向(前後方向)のアライメントを行う。この前後方向のアライメントは、撮像素子31g上のアライメント光源35aによる2個の点像の間隔とケラトリング像の直径の比を所定範囲内とするように測定ヘッド16の位置を調整して行う。
ここで、制御部27は、当該比率からアライメントのずれ量を求めて、このアライメントのずれ量を表示面25aに表示させても良い。なお、前後方向のアライメントは、後述するアライメント光源36aによる輝点像Brのピントが合うように測定ヘッド16の位置を調整することで行ってもよい。
また、観察系31にはアライメント系36が設けられている。アライメント系36はアライメント光源36a及び投影レンズ36bを有し、ハーフミラー31c、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
アライメント系36は、アライメント光源36aからの光束を、対物レンズ31aを経て平行光束として角膜Ecに投光(投影)する。制御部27または検者は、角膜Ecに投光(投影)された輝点(輝点像)に基づき、測定ヘッド16を前後方向に移動させることで、観察系31の光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントを行う。
このとき、制御部27は、輝点像Brが形成された前眼部画像E′に加えて、アライメントマークの目安となるアライメントマークALを表示面25aに表示させる。制御部27は、アライメントが完了すると測定を開始するように制御する構成としてもよい。
視標投影系(クロスシリンダ光学系)32は、被検眼Eを固視、雲霧させる為に視標を投影し、眼底Efに呈示する光学系である。視標投影系32は、ディスプレイ32a、結像レンズ32b、合焦レンズ32c、リレーレンズ32d、フィールドレンズ32f、バリアブルクロスシリンダ(VCC)レンズ32g、ミラー32h及びダイクロイックフィルタ32iを有し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。
ディスプレイ32aは、他覚検査及び自覚検査を実施する際に、固視及び雲霧を行う風景チャートの他、ランドルト環やE文字視標等、検眼視標や、クロスシリンダ(CC)視標(乱視検査用視標)等を表示する。クロスシリンダ視標Cは、一例として図5に示すような点群状のドット視標パターンである。
このディスプレイ32aは、EL(エレクトロルミネッセンス)や液晶ディスプレイ(LCD)で形成することができ、制御部27の制御下で任意の画像を表示する。ディスプレイ32aは、視標投影系32の光路上において被検眼Eの眼底Efと共役となる位置に光軸に沿って移動可能に設けられている。
合焦レンズ32cは、駆動モータ(図示せず)により光軸に沿って進退駆動される。合焦レンズ32cを被検眼E側に移動させることで、屈折力をマイナス側に変位させることができると共に、合焦レンズ32cを被検眼Eから離反する方向に移動させることで、屈折力をプラス側に変位させることができる。従って、合焦レンズ32cの進退駆動により、ディスプレイ32aに表示された視標の呈示距離を変更可能、即ち視標像の呈示位置を変更可能であると共に、被検眼Eを固視、雲霧させることができる。
VCCレンズ32gは、図4に示すように、正の屈折力(乱視度数)を有し、凸曲面を有するシリンダレンズ32g−1と、負の屈折力(乱視度数)を有し、凹曲面を有するシリンダレンズ32g−2とから構成されている。2つのシリンダレンズ32g−1、32g−2は、図示しないパルスモータ等の駆動機構(駆動部)により、光軸を中心にそれぞれ独立して回転する。
このような構成により、ディスプレイ32aにクロスシリンダ視標Cが表示されていると、VCCレンズ32gはこのクロスシリンダ視標Cに対して所定の方向に屈折力を付加する。そして、駆動機構によりシリンダレンズ32g−1、32g−2を回転させることで、クロスシリンダ視標Cに付加される屈折力及びその付加方向を変更することができる。
より詳細には、2つのシリンダレンズ32g−1、32g−2を相対的に回転させることで、VCCレンズ32g全体で得られる屈折力(乱視度数)を調整でき、2つのシリンダレンズ32g−1、32g−2を一体に回転させることで、VCCレンズ32g全体で得られる屈折力の方向(乱視軸角度)を調整することができる。従って、VCCレンズ32gは、被検眼Eの乱視を打ち消すように作用する。なお、VCCレンズ32gは、例えば被検眼E上で0〜8Dの乱視度数を発生させることができ、対物レンズ31aを介して被検眼Eの瞳孔と略共役な位置に配置される。
眼屈折力測定系33は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影するリング状光束投影系33A、及び眼底Efからのリング状の測定パターンの反射光を検出(受像)するリング状光束受光系33Bを有する。
リング状光束投影系33Aは、レフ光源ユニット部33a、リレーレンズ33b、瞳リング絞り33c、フィールドレンズ33d、穴開きプリズム33e及びロータリープリズム33fを有し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32と共用し、ダイクロイックフィルタ31b及び対物レンズ31aを観察系31と共用する。レフ光源ユニット部33aは、例えばLEDを用いたレフ測定用のレフ測定光源33g、コリメータレンズ33h、円錐プリズム33i及びリングパターン形成板33jを有し、それらが制御部27の制御下で眼屈折力測定系33の光軸上を一体的に移動可能とされる。
リング状光束受光系33Bは、穴開きプリズム33eの穴部33p、フィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t及び反射ミラー33uを有し、対物レンズ31a、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ31e、結像レンズ31f及び撮像素子31gを観察系31と共用し、ダイクロイックフィルタ32iを視標投影系32と共用し、ロータリープリズム33f及び穴開きプリズム33eをリング状光束投影系33Aと共用する。
次に、眼屈折力測定モードの際の動作について説明する。制御部27はレフ測定光源33gを点灯させ、かつリング状光束投影系33Aのレフ光源ユニット部33aとリング状光束受光系33Bの合焦レンズ33tとを光軸方向に移動させる。リング状光束投影系33Aでは、レフ光源ユニット部33aがリング状の測定パターンを出射し、その測定パターンをリレーレンズ33b、瞳リング絞り33c及びフィールドレンズ33dを経て穴開きプリズム33eに進行させ、その反射面33vで反射し、ロータリープリズム33fを経てダイクロイックフィルタ32iに導く。リング状光束投影系33Aでは、その測定パターンをダイクロイックフィルタ32i及びダイクロイックフィルタ31bを経て対物レンズ31aに導くことで、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターンを投影する。
リング状光束受光系33Bでは、眼底Efに形成されたリング状の測定パターンを対物レンズ31aで集光し、ダイクロイックフィルタ31b、ダイクロイックフィルタ32i及びロータリープリズム33fを経て穴開きプリズム33eの穴部33pに進行させる。リング状光束受光系33Bでは、その測定パターンをフィールドレンズ33q、反射ミラー33r、リレーレンズ33s、合焦レンズ33t、反射ミラー33u、ダイクロイックフィルタ31e及び結像レンズ31fを経ることで、撮像素子31gに結像させる。これにより、撮像素子31gがリング状の測定パターンの像を検出し、制御部27は、その測定パターンの像を表示面25aに表示させ、その画像(撮像素子31g)からの画像信号に基づき、眼屈折力としての球面度数、円柱度数、軸角度を周知の手法により測定する。
また、眼屈折力測定モードでは、制御部27は、視標投影系32においてディスプレイ32aに固定固視標を表示させる。ディスプレイ32aからの光束は、結像レンズ32b、合焦レンズ32c、リレーレンズ32d、フィールドレンズ32f、VCCレンズ32g、ミラー32h、ダイクロイックフィルタ32i、ダイクロイックフィルタ31b、対物レンズ31aを経て、被検眼Eの眼底Efに投光(投影)する。検者または制御部27は、呈示した固定固視標を被検者に固視させた状態でアライメントを行い、眼屈折力(レフ)の仮測定の結果に基づいて被検眼Eの遠点に合焦レンズ32cを移動させた後にさらに雲霧状態として、調節休止時の眼屈折力を測定する。
次に、自覚検査モードの際の動作について説明する。制御部27は、眼屈折力測定モードで測定した被検眼Eの乱視状態を矯正する姿勢にVCCレンズ32gを設定し、次いで、ディスプレイ32aにクロスシリンダ視標Cを表示させる。
まず、被検眼Eの乱視軸角度を測定する。制御部27は、視標投影系32の駆動部を動作させてVCCレンズ32gの2つのシリンダレンズ32g−1、32g−2を回転させる。具体的には、眼屈折力測定モードにおいて測定した軸角度を基準にして、シリンダレンズ32g−1を回転させて、このシリンダレンズ32g−1により+45度方向に+0.25Dの屈折力の影響を付与する。また、シリンダレンズ32g−2を回転させて、このシリンダレンズ32g−2により−45度方向に−0.25Dの屈折力の影響を付与する。この状態で被検眼Eに呈示されるクロスシリンダ視標Cの状態を視標呈示状態1とする。
続いて、制御部27は、視標投影系32の駆動機構を動作させてVCCレンズ32gを構成する一対のシリンダレンズ32g−1、32g−2の方向を反転させる。具体的には、眼屈折力測定モードにおいて測定した軸角度を基準にして、シリンダレンズ32g−1を回転させて、このシリンダレンズ32g−1により−45度方向に+0.25Dの屈折力の影響を付与する。また、シリンダレンズ32g−2を回転させて、このシリンダレンズ32g−2により+45度方向に−0.25Dの屈折力の影響を付与する。この状態で被検眼Eに呈示されるクロスシリンダ視標Cの状態を視標呈示状態2とする。
そして、検者は、視標呈示状態1、2のいずれがより明確に視認できるかを被検者に質問する。
被検者が視標呈示状態1、2のいずれがより明確に視認できるかを回答したら、この被検者の回答に基づき、検者が検者用コントローラ25の入力部25cを介して操作入力を行い、VCCレンズ32gを所定の角度(例えば10度)だけ回転させる。一例として、被検者が視標呈示状態1がより明確に視認できると回答したら、視標呈示状態1において設定された乱視度数がマイナス方向に変位する方向に、VCCレンズ32gを所定の角度(例えば10度)だけ回転させる。
以上の動作を何度か繰り返し、被検者が明瞭に視認できる視標呈示状態が変化したときに乱視軸角度測定は終了となり、視標呈示状態が変化した際の乱視軸角度を測定値とする。
なお、上記所定の角度は10度とされているが、検者等の設定により任意に変更可能である。また、他覚的検眼の結果に対応して上述した所定の角度を変更するように構成してもよい。さらには、測定精度を高めるために、より小さな回転角度で同様の測定を行って乱視軸角度を追い込んでいくような構成としてもよい。
乱視軸角度が得られると、続いて乱視度数の測定が行われる。使用する視標は、同じくクロスシリンダ視標Cである。まず、制御部27は、視標投影系32の駆動部を動作させてVCCレンズ32gの2つのシリンダレンズ32g−1、32g−2を相対的に回転させる。具体的には、求められた乱視軸角度の方向に(他覚的検眼に基づく乱視度数)+(−0.25D)だけの乱視度数を作用させるようにシリンダレンズ32g−1を回転させる。一方、乱視軸角度と直交する方向に(他覚的検眼に基づく乱視度数)+(+0.25D)だけの乱視度数を作用させるようにシリンダレンズ32g−2を回転させる。この状態で被検眼Eに呈示されるクロスシリンダ視標Cの状態を視標呈示状態1とする。
また、求められた乱視軸角度の方向に(他覚的検眼に基づく乱視度数)+(+0.25D)だけの乱視度数を作用させるようにシリンダレンズ32g−1を回転させる。一方、乱視軸角度と直交する方向に(他覚的検眼に基づく乱視度数)+(−0.25D)だけの乱視度数を作用させるように作用させるようにシリンダレンズ32g−1を回転させる。この状態で被検眼Eに呈示されるクロスシリンダ視標Cの状態を視標呈示状態2とする。
そして、検者は、視標呈示状態1、2のいずれがより明確に視認できるかを被検者に質問する。
被検者が視標呈示状態1、2のいずれがより明確に視認できるかを回答したら、この被検者の回答に基づき、検者が検者用コントローラ25の入力部25cを介して操作入力を行い、VCCレンズ32gを所定の角度だけ回転させる。より詳しくは、視標呈示状態1が選択された場合は乱視度数−0.25Dを加え、視標呈示状態2が選択された場合には乱視度数+0.25Dを加えるようにVCCレンズ32gを所定の角度だけ回転させる。
以上の動作を何度か繰り返し、被検者が明瞭に視認できる視標呈示状態が変化したときに乱視度数測定は終了となる。方向が移行した際の乱視度数を測定値とするか、または、他覚的検眼で得られた値に近い方を測定値とするかは、検者等により選択可能である。
なお、眼屈折力測定系33、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37等の構成や、眼屈折力(レフ)、自覚検査及び角膜形状(ケラト)の測定原理等は、公知であるので、詳細な説明は省略する。
(眼科装置の制御系)
図7を参照して、本実施の形態の眼科装置10の機能構成について説明する。制御部27には、上記した測定光学系21と、駆動機構15としての鉛直駆動部22、水平駆動部23及び回旋駆動部24とに加えて、検者用コントローラ25と被検者用コントローラ26と記憶部28とが接続されている。
検者用コントローラ25は、制御部27から送出された表示制御信号に基づいて表示面25aに画面を表示する表示パネル25bを有する。表示パネル25bの表示面25aの上には、タッチパネル式の入力部25cが設けられている。検者用コントローラ25と制御部27とは、それぞれ検者用コントローラ25及び制御部27に設けられた通信部25d、27bにより近距離無線通信可能とされている。
被検者用コントローラ26は、被検眼の各種の眼情報の取得の際に、被検者が応答するために用いられる。被検者用コントローラ26は、例えばキーボード、マウス、ジョイスティック等の入力装置を備える。制御部27は、被検者用コントローラ26と有線または無線の通信路を介して接続されている。
制御部27は、接続された記憶部28または内蔵する内部メモリ27aに記憶したプログラムを例えばRAM上に展開することにより、適宜検者用コントローラ25や被検者用コントローラ26に対する操作に応じて、眼科装置10の動作を統括的に制御する。本実施の形態では、内部メモリ27aはRAM等で構成され、記憶部28は、ROMやEEPROM等で構成される。
なお、既に詳述したように、測定光学系21は、観察系31、視標投影系32、眼屈折力測定系33、アライメント系35、アライメント系36及びケラト系37を有する。視標投影系32には、VCCレンズ32gを回転駆動させる駆動部32jが設けられている。
(検者用コントローラ25に表示される画面の例)
次に、図8〜図15を参照して、本実施の形態である眼科装置10の検者用コントローラ25の表示面25aに表示される画面と、この画面に対する操作入力信号に基づく眼科装置10の動作とを説明する。
図8は、本実施の形態の眼科装置10の検者用コントローラ25の表示面25aに表示される画面の一例を示す図である。図8に示す画面は、眼科装置10による自覚検査の開始時に表示される。
図8に示す画面の右下部には、自覚検査に用いられるチャート、言い換えれば、視標投影系32のディスプレイ32aに表示される視標の一覧を示す複数のアイコン40a〜40iが表示されている。また、画面の中央部の左には右被検眼ERの前眼部画像ER′が、右には左被検眼ELの前眼部画像EL′がそれぞれ表示されている。既に説明したように、これら前眼部画像ER′、EL′は観察系31の撮像素子31gにより撮像されたものである。
なお、本実施の形態の眼科装置10において、検者用コントローラ25の表示面25aに表示される前眼部画像ER′、EL′は、これら前眼部画像ER′、EL′に重畳表示されるクロスシリンダ用指標45(詳細は後述)が円環状に形成されているので、外形が円形に形成されている。つまり、瞳孔Pを含む円形領域が前眼部画像ER′、EL′として表示されている。
図8に示す状態で、検者がクロスシリンダテストを開始するためには、クロスシリンダ視標Cが表示されたアイコン40gを検者がタッチする等してクロスシリンダテストへの移行を指示する。検者からの操作入力を受け入れた検者用コントローラ25の入力部25cは、この操作入力信号を制御部27に送出する。制御部27は、この操作入力信号に応じて、図9に示す画面を表示面25aに表示させるための表示制御信号を生成し、検者用コントローラ25に送出する。検者用コントローラ25は、この表示制御信号に基づいて表示面25aに所定の画面を表示させる。
図9は、クロスシリンダテストの開始時に表示面25aに表示される画面の一例を示す図である。クロスシリンダ視標Cが表示されたアイコン40gの外周には、このアイコン40gが選択されたことを示す枠41が重畳表示されている。また、画面の左下部には、乱視軸角度測定または乱視度数測定のいずれを行うかの選択入力を行う乱視/軸ボタン42、視標呈示状態(1または2)の選択入力を行う視標呈示状態ボタン43a、43b、及びVCCレンズ32gの回転方向(つまり乱視度数の増加=+、減少=−)の指示入力を行う乱視度数指示ボタン44a、44bが表示される。
また、図9の画面において、前眼部画像ER′、EL′にはクロスシリンダ用指標45が重畳表示されている。このクロスシリンダ用指標45の詳細について、図15を参照して説明する。
クロスシリンダ用指標45は、クロスシリンダテスト中であることを示す円環状の指標45aと、この指標45a内に表示され、ジャクソンクロスシリンダレンズにおける180°方向を示す線分状の指標45bと、同様に指標45a内に表示され、どの方向に+0.25Dの屈折力の影響を付与しているかを示す円状の指標45cとを有する。
指標45aは、ジャクソンクロスシリンダレンズが表であるか、あるいは裏であるかによって表示色が異なっている。図15では、図示の関係で、表である時の表示をハッチングで(図15(a)参照)、裏である時の表示をドットで示している(図15(b)参照)。
なお、図9に示すように、クロスシリンダテストは片眼ずつ(初期状態では右眼から)行われるので、クロスシリンダテストが行われていない眼(左眼)の前眼部画像EL′に重畳表示されている指標45aは白色に表示されている。また、左眼の前眼部画像EL′には指標45cは重畳表示されていない。
また、指標45cは、実際に+0.25Dの屈折力の影響が付与されている方向に対応するもののみ白色以外の色が付与されている。図15に示す例では、+0.25Dの屈折力の影響が付与されている方向に対応する指標45cは、ジャクソンクロスシリンダレンズが裏である時の表示と同じ色に設定されている。
また、画面右中央部には、クロスシリンダテスト中であることを示す、クロスシリンダ視標Cが表示されている。
図9に示す例では、初期状態で乱視軸角度測定モードが選択されている。このため、乱視度数指示ボタン44a、44bの間には、現在どのモードが選択されているかを示すモード表示46(図9では乱視軸角度測定モード=「軸」)が表示されている。また、乱視軸角度測定モードの初期状態では視標呈示状態1が選択されているので、視標呈示状態ボタン43aが所定の表示色(図9では黒く表示している)で表示されている。
図9に示す状態で、視標呈示状態を2に変更するには、視標呈示状態ボタン43bを検者がタッチする等して視標呈示状態2への移行を指示する。制御部27は、検者のタッチ動作に基づく操作入力信号に応じて、図10に示す画面を表示面25aに表示させるための表示制御信号を検者用コントローラ25に送出する。検者用コントローラ25は、この表示制御信号に基づいて表示面25aに所定の画面を表示させる。
図10は、視標呈示状態2のクロスシリンダ視標Cを被検者に呈示している状態の画面の一例を示す図である。視標呈示状態2が選択されているので、視標呈示状態ボタン43bが所定の表示色で表示されている。また、視標呈示状態の(1から2への)変更に伴い、指標45aの表示色が、ジャクソンクロスシリンダレンズが裏にされたことを示す色に変更されている。
図10に示す状態で、被検者は視標呈示状態2がより明確に視認できると回答したものとする。検者は、乱視度数指示ボタン44a、44b(この場合は乱視度数指示ボタン44b)をタッチ等してVCCレンズ32gを所定方向(この場合はマイナス方向)に所定角度だけ回転する指示入力を行う。あるいは、検者は、前眼部画像ER′に重畳されている指標45(この場合は指標45a)をタッチしながら反時計回り方向に回転させることで、VCCレンズ32gの回転指示入力を行ってもよい。
制御部27は、検者のタッチ動作に基づく操作入力信号に応じて、視標投影系32の駆動部32jを駆動制御し、指示入力に基づいてVCCレンズ32gを所定方向に所定角度だけ回転させる。VCCレンズ32gの所定方向への回転が終了したら、制御部27は、図11に示す画面を表示面25aに表示させるための表示制御信号を検者用コントローラ25に送出する。検者用コントローラ25は、この表示制御信号に基づいて表示面25aに所定の画面を表示させる。
図11に示す画面では、VCCレンズ32gの回転に伴い、指標45bが図10に示す画面と比較してマイナス方向(図中反時計回り方向)に所定角度だけ回転されて表示されている。また、現在付与されている乱視軸角度を示す角度表示領域47に表示されている軸角度が変更されている。
次に、図12は、乱視度数測定モードを選択した場合の初期状態の画面を示す図である。乱視度数測定モードを選択するには、乱視/軸ボタン42を検者がタッチする等して指示入力を行う。図12に示す画面では、モード表示46が乱視度数測定モードを示す表示(「乱視」)に変更されている。また乱視度数測定モードの初期状態でも視標呈示状態1が選択されているので、視標呈示状態ボタン43aが所定の表示色で表示されている。
図13は、乱視度数測定モードにおいて視標呈示状態2のクロスシリンダ視標Cを被検者に呈示している状態の画面の一例を示す図である。視標呈示状態2が選択されているので、視標呈示状態ボタン43bが所定の表示色で表示されている。また、視標呈示状態の(1から2への)変更に伴い、指標45aの表示色が、ジャクソンクロスシリンダレンズが裏にされたことを示す色に変更されている。
なお、図12及び図13に示す画面は、VCCレンズ32gの回転を行う前の状態を示す画面であるので、乱視度数を示す度数表示領域48に表示されている乱視度数は変更されていないが、VCCレンズ32gの回転に伴い、表示される乱視度数も変更表示される。
図14は、左被検眼ELのクロスシリンダテストの開始時に表示面25aに表示される画面の一例を示す図である。左被検眼ELの測定を開始するには、被検眼選択ボタン49a、49b(右被検眼ER測定時にはボタン49a、左被検眼EL測定時にはボタン49b)をタッチ等して(この場合はボタン49b)測定すべき被検眼ER、ELの変更指示を行う。被検眼ER、ELの変更に伴い、クロスシリンダ用指標45の表示状態も左右で入れ替わっている。
(眼科装置の効果)
このように構成された本実施の形態である眼科装置10では、表示部兼検者用コントローラ25が、前眼部画像ER′、EL′に重畳して、クロスシリンダ視標Cに付加される屈折力及び屈折力の付加方向の少なくとも一方に関する指標45を表示している。
従って、被検眼の前眼部画像ER′、EL′とVCCレンズ32gにより付加される屈折力及び屈折力の付加方向とを同時にかつ容易に検者が確認することが可能となる。
また、検者用コントローラ25及び制御部27は互いに無線通信可能な通信部25d、27bをそれぞれ有し、検者用コントローラ25は携帯可能に構成されているので、眼科装置10を用いた検査姿勢に自由度を持たせることができる。一例として、検者用コントローラ25は検眼用テーブル12上に配置された状態で操作されてもよく、また、検者が手に持って操作されてもよい。これにより、検者が被検眼Eの状態を確認しながらVCCレンズ32gにより付加される屈折力及び屈折力の付加方向を同時にかつ容易に確認できる検査姿勢の範囲を大きく拡大することができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
一例として、図15に示すクロスシリンダ用指標45は単なる一例であり、本発明の眼科装置により被検眼に呈示可能な指標はこれら図に示したものに限定されない。また、上述した実施の形態の眼科装置10では、検者用コントローラ25が表示部を兼ねた構成であったが、これらを別体に設けることも可能である。
また、上述した実施の形態の眼科装置10ではクロスシリンダ光学系(視標投影系32)としてバリアブルクロスシリンダ(VCC)レンズ32gを用いたものを適用していたが、本発明の眼科装置が適用されるクロスシリンダ光学系はこれに限定されず、ジャクソンクロスシリンダレンズを光軸方向及び表裏方向に駆動するクロスシリンダ光学系を含めた、公知のクロスシリンダ光学系が好適に適用可能である。さらに、上述した実施の形態の眼科装置10では視標投影系32をクロスシリンダ光学系の一例として説明したが、厳密にはディスプレイ32a、VCCレンズ32g及び駆動部32jによりクロスシリンダ光学系が構成されている。従って、視標投影系32と併用したクロスシリンダ光学系のみならず、クロスシリンダテストのみを行うクロスシリンダ光学系が別個独立に設けられた眼科装置にも本発明は好適に適用可能である。