JP2019203306A - 穿孔補修シール及び補修方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことのできる技術を提供する。【解決手段】本発明の一側面に係る穿孔補修シールは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐための穿孔補修シールであって、前記穿孔の開口よりも大きい形状を有する基材と、基材の第1面側に設けられた粘着剤層であって、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口を含む領域に貼付するための粘着剤層と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、穿孔補修シール及び補修方法に関する。
従来、コンクリートに形成された穿孔が不要である場合、モルタル等の充填材を穿孔に充填することで、この不要な穿孔を塞ぐという補修が行われる。例えば、コンクリートに打ち込まれたアンカーを取り出した後に、不要になったアンカー孔にモルタルを充填する補修が行われる(特許文献1)。
また、例えば、鉄筋コンクリートにアンカーを埋め込むための穿孔を形成する際に、内部に鉄筋が存在する位置を削孔してしまい、アンカーを埋め込むことのできない不要な穿孔が形成されてしまう場合がある。このような場合に、不要な穿孔をそのままにしておくと、形成された穿孔を介して内部の鉄筋が、外部に露出し、水分を含む空気に継続的に触れることで、この鉄筋の表面に錆が生じやすくなってしまう。そのため、このような場合においても、モルタル等の充填材を穿孔に充填し、不要な穿孔を塞ぐ補修が行われる。
特開2016−125217号公報
本件発明者らは、従来の補修方法には、次のような問題点があることを見出した。すなわち、モルタル等の充填材により穿孔を完全に密封するのは難しく、この穿孔を充填する充填材には微小な隙間が生じ得る。これに起因して、コンクリートにより構成された構造物に様々な不具合が発生し得る。
例えば、上記鉄筋コンクリートにおいて、内部の鉄筋が存在する位置に形成した穿孔を充填材により補修するケースを想定する。この場合、鉄筋コンクリートの表面における穿孔の端部(すなわち、開口)は露出しているため、水分を含む外部の空気は、穿孔の端部から充填材の隙間を介してコンクリート内部に侵入することができる。そのため、充填材を充填したにも関わらず、穿孔を形成した領域では、依然として内部の鉄筋に錆が生じやすい。内部の鉄筋に錆が生じると、発生した錆によって鉄筋が膨張してしまい、コンクリートにクラックを発生させてしまう。これにより、コンクリート片が構造物から剥離してしまう懸念があった。つまり、本件発明者らは、従来の補修方法では、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができないという問題点があることを見出した。
本発明は、一側面では、このような点を考慮してなされたものであり、その目的は、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことのできる技術を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
すなわち、本発明の一側面に係る穿孔補修シールは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐための穿孔補修シールであって、前記穿孔の開口よりも大きい形状を有する基材と、基材の第1面側に設けられた粘着剤層であって、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口を含む領域に貼付するための粘着剤層と、を備える。
当該構成に係る穿孔補修シールは、穿孔の開口よりも大きい形状を基材が有しているため、コンクリートの表面に対して、穿孔の開口を完全に塞ぐように貼付することができる。したがって、当該構成に係る穿孔補修シールによれば、コンクリートの表面において、穿孔の端部(開口)が露出しないようにすることができるため、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができる。
これにより、上記不具合が発生するのを抑制することができる。例えば、上記鉄筋コンクリートのケースでは、当該構成に係る穿孔補修シールにより穿孔の端部を塞ぐことで、水分を含む外部の空気が穿孔の端部から侵入するのを抑えることができ、これによって、内部の鉄筋に錆が生じやすくなるのを防ぐことができる。
上記一側面に係る穿孔補修シールにおいて、前記基材は、前記穿孔の深さと同じ半径を有する円形状と等しい、又は当該円形状よりも大きい形状を有するように形成されてよい。コンクリートは、穿孔の端壁から45度の角度で剪断破壊しやすい性質を有しているため、コンクリートの表面では、穿孔の中央を中心として、穿孔の深さと同じ半径を有する円形状の範囲からコンクリート片が剥離しやすくなっている。当該構成によれば、そのコンクリート片の剥離しやすい範囲を穿孔補修シールにより覆うことができるため、穿孔に起因するコンクリートの剥離を防止することができる。
上記一側面に係る穿孔補修シールは、遮光率が90%以下となるように構成されてよい。当該構成では、穿孔補修シールを介して穿孔の位置を目視することができる。したがって、当該構成によれば、作業性に優れた穿孔補修シールを提供することができる。遮光率は、例えば、JIS規格のL1055で規定された方法(カーテンの遮光性試験方法A方法)により測定可能である。
上記一側面に係る穿孔補修シールは、遮光率が80%以下となるように構成されてよい。当該構成では、穿孔補修シールを介して穿孔の位置を目視することができることに加えて、穿孔の開口の中心位置を目視することができ、かつ粘着剤層とコンクリートの表面(被着領域)との間に空気溜まりが生じているか否かを確認することができる。したがって、当該構成によれば、更に作業性に優れた穿孔補修シールを提供することができる。
上記一側面に係る穿孔補修シールにおいて、前記基材の前記第1面と前記粘着剤層との間に不織布が配置されてよい。当該構成によれば、不織布によって、基材の第1面側に粘着剤層を定着しやすくすることができる。したがって、当該構成によれば、剥離しにくい穿孔補修シールを提供することができる。
上記一側面に係る穿孔補修シールにおいて、前記基材の第2面に不織布が積層されてよい。コンクリートの表面に対して穿孔補修シールを貼付した後、基材の第2面は、外部に露出しており、この第2面に対してトップコートを塗布してもよい。当該構成によれば、第2面に積層した不織布により、トップコートの定着しやすい穿孔補修シールを提供することができる。
上記一側面に係る穿孔補修シールにおいて、前記基材の厚みは、10μm〜1mmであってよい。当該構成によれば、容易に変形せず、かつ剥離し難い穿孔補修シールを提供することができる。
また、本発明の一側面に係る補修方法は、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法であって、前記穿孔の内部に充填材を充填するステップと、前記充填材を充填した後に、上記いずれかの形態に係る穿孔補修シールを、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口を含む領域に貼付するステップと、を備える。当該補修方法によれば、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができる。
上記一側面に係る補修方法は、前記充填材を充填した後、前記穿孔補修シールを貼付する前に、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口に対してプライマーを塗布するステップを更に備えてよい。当該補修方法によれば、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができる。
上記一側面に係る補修方法は、前記穿孔補修シールを貼付した後に、前記穿孔補修シールに対してトップコートを塗布するステップを更に備えてよい。当該補修方法によれば、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができる。
本発明によれば、コンクリートに形成された穿孔を十分に塞ぐことができる。
図1は、実施の形態に係る穿孔補修シールであって、貼着する側から見た穿孔補修シールを模式的に例示する斜視図である。 図2は、実施の形態に係る穿孔補修シールを模式的に例示する断面図である。 図3Aは、コンクリートに穿孔が形成される場面を模式的に例示する。 図3Bは、コンクリートに穿孔が形成される場面を模式的に例示する。 図4Aは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法の過程を模式的に例示する。 図4Bは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法の過程を模式的に例示する。 図4Cは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法の過程を模式的に例示する。 図4Dは、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法の過程を模式的に例示する。 図5は、コンクリートに形成された穿孔を穿孔補修シールで塞いだ後の状態を模式的に例示する。 図6は、他の形態に係る穿孔補修シールを模式的に例示する断面図である。 図7は、他の形態に係る穿孔補修シールを模式的に例示する断面図である。
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
§1 構成例
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る穿孔補修シール1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る穿孔補修シール1であって、貼着する側から見た穿孔補修シール1の構成を模式的に例示する斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る穿孔補修シール1の構成を模式的に例示する断面図である。
本実施形態に係る穿孔補修シール1は、互いに対向する第1面111及び第2面112を有する基材11と、基材11の第1面111側に設けられた粘着剤層12と、を備えている。基材11は、補修対象となるコンクリートに形成された穿孔の開口(すなわち、コンクリート表面側の穿孔の端部)よりも大きい形状を有するように形成される。穿孔補修シール1を貼着する際には、当該基材11の第1面111が当該穿孔の開口に対して向けられる。本実施形態では、この第1面111上に、コンクリートの表面における穿孔の開口を含む領域に穿孔補修シール1を貼着するための粘着剤層12が形成されている。これにより、本実施形態に係る穿孔補修シール1は、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐことができるように構成される。この穿孔補修シール1は、公知の加工方法により、適宜作製されてよい。
基材11の形状は、穿孔の開口を塞ぐことが可能であれば、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。図1に示されるとおり、本実施形態に係る基材11は、平面視において円形状に形成されている。ただし、平面視における基材11の形状は、円形状に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。平面視における基材11の形状は、例えば、円に切り欠きを入れた形状、円が部分的に欠損した形状、楕円、多角形等であってよい。基材11の形状が多角形状である場合、角部では、例えば、半径R10mm程度の面取りがなされてもよい。なお、平面視とは、図2の上下方向から穿孔補修シール1を見る視野を指す。
基材11の平面寸法は、基材11の形状に応じて、塞ぐ対象となる穿孔の開口よりも大きくなるように適宜決定されてよい。ここで、コンクリートは、穿孔の端壁から45度の角度でコーン状に剪断破壊しやすい性質を有している。そのため、平面視において、基材11は、穿孔の深さ(後述する図3Bの深さD)と同じ半径を有する円形状と等しい、又は当該円形状よりも大きい形状を有するように形成されるのが好ましい。これにより、穿孔補修シール1によって、穿孔に起因するコンクリートの剪断破壊を防止することができる。
本実施形態では、基材11は、半径Rの円形状に形成されている。そのため、この半径Rを穿孔の深さ以上とすることで、上記条件を満たす形状に基材11を形成することができる。例えば、穿孔の深さが75mm〜150mmであることを想定して、基材11の半径Rは、75mm〜150mmに設定されてよい。ただし、穿孔の深さと同じ半径を有する円形状よりも大きな形状は、このような円形状に限られなくてもよい。例えば、平面視における基材11の形状が矩形状である場合には、基材11の一辺の長さを穿孔の深さの2倍以上にすることで、上記条件を満たす形状に基材11を形成することができる。
基材11の材料は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。基材11の材料には、例えば、ウレタンシート、天然ゴムシート、合成ゴムシート、熱硬化性エラストマー、熱硬化性エラストマー等が用いられてよい。これらの材料は、伸縮性に優れている。そのため、コンクリートの剥離を防止する観点から、基材11の材料には、これらを採用するのが好ましい。また、基材11の厚みは、基材11の材料に応じて適宜決定されてよい。ただし、基材11の厚みが薄すぎると、基材11が柔らかくなってしまい、穿孔補修シール1のコンクリートを補修する機能が弱くなってしまう。一方で、基材11の厚みが厚すぎると、基材11が硬くなってしまい、穿孔補修シール1が荷重によってコンクリートから剥がれ易くなってしまう。この観点から、例えば、基材11にウレタンシートを用いる場合、基材11の厚みは、10μm〜1mmであるのが好ましい。
粘着剤層12は、基材11の第1面111側に適宜設けられる。図2に示されるとおり、粘着剤層12は、基材11の第1面111の全面に形成されてよい。ただし、粘着剤層12を形成する範囲は、このような例に限定されなくてもよい。コンクリートに貼着可能であれば、基材11の第1面111には、粘着剤層12の形成されていない部分が存在してもよい。
粘着剤層12の材料、換言すると、粘着剤層12を構成する粘着剤の種類は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。ここで、粘着剤とは、常温で硬化せずに粘着性を有し、対象物を被対象物に接着する物質を指す。粘着剤層12を構成する粘着剤には、例えば、アクリル系、シリコン系、ゴム系等の粘着剤が用いられてよい。また、粘着剤層12の厚みは、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。なお、被着体であるコンクリートの表面は凹凸を有するため、粘着剤層の厚みが過度に薄いと、コンクリートの表面の凹凸を粘着剤層の厚みで緩衝できず、コンクリートの表面と粘着剤層との間に空隙が生じてしまう可能性がある。一方、粘着剤の凝集力は低い(粘着剤は常温では硬化しない)ため、粘着剤層の厚みが過度に厚いと、荷重が粘着剤層に作用した際に、当該粘着剤層内で容易に破壊が発生し得る。そのため、粘着剤層12がコンクリート表面から容易に剥がれないようにするためには、粘着剤層12の厚みは、200μm〜1.5mmであるのが好ましい。
本実施形態に係る穿孔補修シール1は、以上のような基材11及び粘着剤層12を備えることにより、コンクリートに形成された穿孔を塞ぐことができるように構成される。ここで、この穿孔補修シール1は、面に対して垂直方向(図2の上下方向)における遮光率が90%以下となるように構成されるのが好ましい。これにより、穿孔補修シール1を介して穿孔の位置を目視することができる。そのため、コンクリートに形成された穿孔の開口に対して穿孔補修シール1を貼着しやすくすることができる。
また、穿孔補修シール1は、面に対して垂直方向における遮光率が80%以下となるように構成されるのが更に好ましい。これにより、穿孔補修シール1を介して穿孔の位置を目視することができることに加えて、穿孔の開口の中心位置を目視することができ、かつ粘着剤層12とコンクリートの表面との間に空気溜まりが生じているか否かを確認することができる。そのため、コンクリートに形成された穿孔の開口に対して穿孔補修シール1を更に容易にかつ適切に貼着することができる。
これらの遮光率の条件を満たす穿孔補修シール1は、当該穿孔補修シール1の各構成要素の材料及び寸法を適宜選択することにより作製可能である。本実施形態では、基材11及び粘着剤層12それぞれの材料及び厚みを適宜決定することにより、これらの遮光率の条件を満たす穿孔補修シール1を作製することができる。穿孔補修シール1の遮光率は、例えば、JIS規格のL1055で規定された方法(カーテンの遮光性試験方法A方法)により測定可能である。
なお、図2に示されるとおり、穿孔を塞ぐために穿孔補修シール1を使用する前まで、粘着剤層12を保護するため、粘着剤層12の基材11とは反対側の面には、保護フィルム19が貼着されている。この保護フィルム19の材料は、穿孔補修シール1を使用する際に、粘着剤層12から剥離可能であれば、特に限定されなくてもよい。また、保護フィルム19の寸法は、粘着剤層12を保護可能に適宜決定されてよい。この保護フィルム19は省略されてよい。
§2 使用方法
次に、本実施形態に係る穿孔補修シール1の使用方法、換言すると、コンクリートに形成された穿孔を穿孔補修シール1により塞ぐ方法について説明する。
まず、図3A及び図3Bを用いて、穿孔補修シール1により塞ぐ対象となる穿孔の一例について説明する。図3A及び図3Bは、コンクリート2に穿孔3が形成される場面を模式的に例示している。図3A及び図3Bで例示されるコンクリート2は、いわゆる鉄筋コンクリートであり、強度を高めるための鉄筋4が埋め込まれている。看板等の取付物をコンクリート2に取り付ける場合には、このコンクリート2にアンカーボルトを埋め込むことがある。このアンカーボルトをコンクリート2に埋め込むためには、鉄筋4の存在する位置を避けて、コンクリート2の表面21から穿孔用ビット8により削孔を行う。
ただし、コンクリート2の表面21から鉄筋4の位置を探査しても、鉄筋4の位置を正確に特定するのは困難である。そのため、図3Aに示されるとおり、この探査結果に基づいて、鉄筋4を避けて削孔を行っても、結果的に、鉄筋4の存在する位置に穿孔3が形成されてしまう場合がある。
このような場合、穿孔3の深さDは、アンカーボルトを埋め込むのに十分ではないため、アンカーボルトを埋め込むのにこの穿孔3を利用することができない。そのため、図3Bに示されるように、鉄筋4を避けるように場所を変更して、穿孔用ビット8により削孔を行い、新たな穿孔5を形成する。そして、鉄筋4の位置を避けて形成された新たな穿孔5に、アンカーボルトが埋め込まれる。
一方で、アンカーボルトの施工には利用されない不要な穿孔3をそのままにしておくと、上記のとおり、形成された穿孔3を介して内部の鉄筋4が、外部に露出し、水分を含む空気に継続的に触れることで、この鉄筋4の表面に錆が生じやすくなってしまう。鉄筋4の表面に錆が生じると、発生した錆によって鉄筋4が膨張して、コンクリート2の内部にクラックが発生し、これによって、コンクリート片が表面21から剥離してしまう懸念がある。そこで、本実施形態では、穿孔補修シール1を利用して、この不要な穿孔3を塞ぐ。
なお、図3A及び図3Bは、穿孔(3、5)を形成する方向に沿って切断したコンクリート2の断面を模式的に例示している。穿孔3の深さDは、穿孔3を形成した方向の内部31の長さ、換言すると、穿孔3の一方の端部(開口32)から他方の端部(端壁)までの長さである。この深さDは、例えば、ノギスのデプスバーを穿孔3の中心に差し込み、差し込んだデプスバーの目盛りを読み取ることにより測定されてよい。
次に、図4A〜図4Dを用いて、本実施形態に係る穿孔補修シール1により、上記コンクリート2に形成された穿孔3を塞ぐ方法について説明する。図4A〜図4Dは、コンクリート2に形成された穿孔3を塞ぐ過程を模式的に例示する。なお、以下で説明する穿孔3を塞ぐ方法は、本発明の「補修方法」の一例である。ただし、以下で説明する方法は一例に過ぎず、各ステップは可能な限り変更されてもよい。また、以下で説明する方法について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が行われてもよい。
(第1ステップ)
まず、図4Aに示されるとおり、第1ステップでは、穿孔3の内部31に、モルタル等の充填材7を充填する。充填材7の組成は、コンクリート2に応じて適宜決定されてよい。穿孔3の内部31を満たす程度に充填材7適宜充填する。開口32から表面21に溢れ出た充填材7の一部は、適宜取り除かれてよい。充填材7の充填が完了すると、次のステップに作業を進める。
(第2ステップ)
次に、図4Bに示されるとおり、充填材7を充填した後、穿孔補修シール1を貼付する前の第2ステップでは、コンクリート2の表面21における穿孔3の開口32に対してプライマーを塗布する。プライマーは、例えば、ビニル共重合樹脂系、エポキシ樹脂系等の速乾タイプのプライマーであってよい。コンクリート2の表面21は脆弱である。これに対して、第2ステップにより、コンクリート2の表面21にプライマーを塗布することにより、表面21の脆弱な部分をプライマーで覆うことができ、これによって、表面21における粘着剤の保持力及び粘着力を高めることができる。プライマーの塗布が完了し、塗布したプライマーの乾燥を確認した後、次のステップに作業を進める。
(第3ステップ)
次に、図4Cに示されるとおり、第3ステップでは、コンクリート2の表面21における穿孔3の開口32を含む領域に穿孔補修シール1を貼付する。具体的には、穿孔補修シール1の粘着剤層12から保護フィルム19を剥離し、粘着剤層12(第1面111)側をコンクリート2の表面21に向けて、穿孔3の開口32を覆うように穿孔補修シール1を対象の領域に貼付する。
このとき、第2ステップによりプライマーを塗布していることで、穿孔補修シール1を貼付する対象の領域を乾燥させることができ、これによって、穿孔補修シール1を当該対象の領域に貼付しやすくすることができる。また、遮光率が90%以下となるように穿孔補修シール1を構成することで、穿孔3の開口32の位置を目視しながら、穿孔補修シール1を対象の領域に貼付することができる。更に、遮光率が80%以下となるように穿孔補修シール1を構成することで、穿孔3の開口32の中心位置を目視し、かつ粘着剤層12とコンクリート2の表面21との間に空気溜まりが生じているか否かを確認しながら、穿孔補修シール1を対象の領域に貼付することができる。
なお、コンクリートは、穿孔3の端壁から45度の角度でコーン状に剪断破壊しやすい性質を有している。すなわち、図4Cに例示されるとおり、コンクリート2では、深さDを有する穿孔3の端壁から線Lに沿って剪断破壊しやすくなっている。そこで、基材11が、穿孔3の深さDと同じ半径を有する円形状と等しい、又は当該円形状よりも大きい形状を有するように形成されている場合には、この線Lにより規定される、コンクリート片の剥離の生じやすい範囲Sを覆うように穿孔補修シール1を貼付するのが好ましい。穿孔補修シール1の中心を開口32の中心に位置合わせすることで、範囲Sを覆うように穿孔補修シール1を貼付することができる。
これにより、穿孔補修シール1は、基材11の第2面112が外側を向いた状態で対象の領域に貼り付けられる。穿孔補修シール1の貼付が完了すると、次のステップに作業を進める。
(第4ステップ)
次に、図4Dに示されるとおり、穿孔補修シール1を貼付した後の第4ステップでは、穿孔補修シール1に対してトップコートを塗布する。トップコートは、例えば、ウレタン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料等であってよい。これにより、外部の雰囲気による穿孔補修シール1の劣化を抑制することができる。また、トップコートを塗布することで、穿孔補修シール1の汚れを防止することができる。更に、穿孔補修シール1の外観を周囲と同化させ、これによって、穿孔補修シール1を貼付した部分の美観を高めることができる。
図5は、コンクリート2に形成された穿孔3を穿孔補修シール1で塞いだ後の状態を模式的に例示する。上記第4ステップによるトップコートの塗布が完了すると、図5に示されるとおり、コンクリート2に形成された穿孔3を穿孔補修シール1により塞ぐための作業は終了する。
§3 特徴
以上のとおり、本実施形態に係る補修方法では、穿孔3の内部31に充填材7を充填した後に、第3ステップにより穿孔補修シール1を貼付する。このとき、図5に示されるとおり、穿孔補修シール1の基材11は穿孔3の開口32よりも大きい形状を有しているため、コンクリート2の表面21に対して、穿孔3の開口32を完全に塞ぐように穿孔補修シール1を貼付することができる。したがって、穿孔補修シール1によれば、コンクリート2の表面21において、穿孔3の開口32が露出しないようにすることができる。そのため、コンクリート2に形成された穿孔3を十分に塞ぐことができ、水分を含む外部の空気が開口32から侵入するのを抑制することができる。これによって、穿孔3近傍の鉄筋4の表面に錆が生じやすくなるのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、常温で硬化せずに粘着性を有する粘着剤によって粘着剤層12を形成している。そのため、穿孔補修シール1をコンクリート2に貼着した後も、この穿孔補修シール1は軟質であることができる。これにより、仮に、穿孔補修シール1がコンクリート2から落下しても、落下する穿孔補修シール1によって何らかの事故が発生するのを防止することができる。
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
<4.1>
上記実施形態では、充填材7を充填した後、穿孔補修シール1を貼付する前に、コンクリート2の表面21における穿孔3の開口32に対してプライマーを塗布する第2ステップを実施している。また、上記実施形態では、穿孔補修シール1を貼付した後に、穿孔補修シール1に対してトップコートを塗布する第4ステップを実施している。しかしながら、本発明の補修方法は、このような例に限定されなくてもよい。上記実施形態に係る補修方法において、第2ステップ及び第4ステップの少なくとも一方は省略されてもよい。
<4.2>
また、上記実施形態では、コンクリート2(鉄筋コンクリート)に形成された不要な穿孔3を塞ぐために穿孔補修シール1は利用されている。しかしながら、穿孔補修シール1の利用対象は、このような穿孔3に限定されなくてもよい。例えば、コンクリートに埋め込んだアンカーボルトが不要になった場合に、コンクリートの表面から突出したアンカーボルトの一部(以下、「突出部分」とも記載する)を切除することがある。このアンカーボルトの突出部分を切除した後に、アンカーボルトの残りの部分(以下、「残留部分」とも記載する)の端部を含む領域を覆って、アンカーボルトの残留部分を含む穿孔を塞ぐために、穿孔補修シール1は利用されてもよい。
<4.3>
上記実施形態では、基材11の第2面112は露出しており、上記第4ステップでは、基材11の第2面112にトップコートが塗布される。また、上記実施形態では、基材11の第1面111に直接的に粘着剤層12が積層される。しかしながら、穿孔補修シール1の構成は、このような例に限定されなくてもよい。例えば、以下の図6及び図7に例示されるように、穿孔補修シール1の構成は変更されてよい。
図6は、基材11の第2面112に積層された不織布15を更に備える本変形例に係る穿孔補修シール1Aの構成の一例を模式的に例示する。図6により例示される穿孔補修シール1Aは、第2面112に不織布15が積層されている点を除き、上記実施形態に係る穿孔補修シール1と同様の構成を有している。
不織布15の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。なお、不織布15には、ポリエステル繊維で構成され、湿式法で製造されたサーマルボンド不織布を用いるのが好ましい。サーマルボンド不織布には、繊維の毛羽立ちが殆どないため、塗料を塗布した後の仕上がりをきれいにすることができる。更に、サーマルボンド不織布は塗料を適度に含浸するため、塗料との付着強度を高く、トップコートを適切に定着させることができる。この不織布15は、例えば、ドライラミネート工法により、基材11の第2面112に積層させることができる。具体例として、基材11の第2面112にウレタン系2液硬化型接着剤を固形分5g/m2程度で塗布し、基材11の第2面112と不織布15とを貼り合わせる。これにより、基材11の第2面112に不織布15を積層させることができる。この不織布15により、上記第4ステップにおいて、トップコートを定着させやすくすることができる。このトップコートを定着しやすくするためには、不織布15の目付け(単位面積当たりの重量)は、5g/m2〜50g/m2であるのが好ましい。
なお、図6に示されるとおり、不織布15は、基材11の第2面112の全面に積層されてよい。ただし、不織布15を積層する範囲は、このような例に限定されなくてもよい。穿孔補修シール1Aにおいて、基材11の第2面112には、不織布15の積層されていない部分が存在してもよい。
また、図7は、基材11の第1面111と粘着剤層12との間に配置された不織布17を更に備える本変形例に係る穿孔補修シール1Bの構成の一例を模式的に例示する。図7により例示される穿孔補修シール1Bでは、基材11の第1面111に粘着剤層12が直接的に積層されるのではなく、基材11の第1面111には不織布17が積層し、この不織布17上に粘着剤層12が積層している。これにより、本変形例では、粘着剤層12が、基材11の第1面111に間接的に積層されている。これらの点を除き、本変形例に係る穿孔補修シール1Bは、上記穿孔補修シール1Aと同様の構成を有している。
不織布17の種類及び積層方法は、上記不織布15と同様であってよい。この不織布17により、基材11の第1面111側に粘着剤層12を定着させやすくすることができる。粘着剤層12を定着させやすくする観点から、この不織布17には、ポリエステル短繊維で構成され、乾式法で製造されたサーマルボンド不織布を用いるのが好ましい。この粘着剤層12を定着しやすくするためには、不織布17の目付け(単位面積当たりの重量)は、10g/m2〜200g/m2であるのが好ましい。これにより、穿孔補修シール1Bがコンクリート2から剥離し難いようにすることができる。
なお、図7に示されるとおり、不織布17は、基材11の第1面111の全面に積層されてよい。ただし、不織布17を積層する範囲は、このような例に限定されなくてもよい。穿孔補修シール1Bにおいて、基材11の第1面111には、不織布17の積層されていない部分が存在してもよい。また、穿孔補修シール1Bにおいて、基材11の第2面112に清掃された不織布15は省略されてもよい。
1・1A・1B…穿孔補修シール、
11…基材、12…粘着剤層、
15・17…不織布、19…保護フィルム、
2…(鉄筋)コンクリート、21…表面、
3…穿孔、31…内部、32…開口、
4…鉄筋、5…穿孔、
7…充填材、8…穿孔用ビット

Claims (10)

  1. コンクリートに形成された穿孔を塞ぐための穿孔補修シールであって、
    前記穿孔の開口よりも大きい形状を有する基材と、
    基材の第1面側に設けられた粘着剤層であって、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口を含む領域に貼付するための粘着剤層と、
    を備える、
    穿孔補修シール。
  2. 前記基材は、前記穿孔の深さと同じ半径を有する円形状と等しい、又は当該円形状よりも大きい形状を有するように形成される、
    請求項1に記載の穿孔補修シール。
  3. 前記穿孔補修シールは、遮光率が90%以下となるように構成される、
    請求項1又は2に記載の穿孔補修シール。
  4. 前記穿孔補修シールは、遮光率が80%以下となるように構成される、
    請求項3に記載の穿孔補修シール。
  5. 前記基材の前記第1面と前記粘着剤層との間に不織布が配置される、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の穿孔補修シール。
  6. 前記基材の第2面に不織布が積層される、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の穿孔補修シール。
  7. 前記基材の厚みは、10μm〜1mmである、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の穿孔補修シール。
  8. コンクリートに形成された穿孔を塞ぐ補修方法であって、
    前記穿孔の内部に充填材を充填するステップと、
    前記充填材を充填した後に、請求項1から7のいずれか1項に記載の穿孔補修シールを、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口を含む領域に貼付するステップと、
    を備える、
    補修方法。
  9. 前記充填材を充填した後、前記穿孔補修シールを貼付する前に、前記コンクリートの表面における前記穿孔の前記開口に対してプライマーを塗布するステップを更に備える、
    請求項8に記載の補修方法。
  10. 前記穿孔補修シールを貼付した後に、前記穿孔補修シールに対してトップコートを塗布するステップを更に備える、
    請求項8又は9に記載の補修方法。
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