JP2019201920A - 金属火災用感温性無機組成消火剤及び金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤 - Google Patents
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Abstract
Description
項1.
アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成消火剤。
アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、飽和濃度以下のホウ酸塩と、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成消火剤。
前記アルカリ金属ケイ酸化合物が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、項1又は2に記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
前記ホウ酸塩が、四ホウ酸二ナトリウム10水和物、四ホウ酸二ナトリウム5水和物、五ホウ酸ナトリウム10水和物、八ホウ酸二ナトリウム4水和物、メタホウ酸ナトリウム2水和物、メタホウ酸ナトリウム4水和物、四ホウ酸二カリウム4水和物、及び五ホウ酸カリウム4水和物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、項2に記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
平均粒子径が10μm〜200μmの粉体である、項1〜4のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
粘度が1 mPa・s〜50mPa・sである、項1〜5のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
項1〜6のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成消火剤を有する基材を含む塗料。
項11.
アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、飽和濃度以下のホウ酸塩と、水を含有する、金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
前記アルカリ金属ケイ酸化合物が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、項11又は12に記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
前記ホウ酸塩が、四ホウ酸二ナトリウム10水和物、四ホウ酸二ナトリウム5水和物、五ホウ酸ナトリウム10水和物、八ホウ酸二ナトリウム4水和物、メタホウ酸ナトリウム2水和物、メタホウ酸ナトリウム4水和物、四ホウ酸二カリウム4水和物、及び五ホウ酸カリウム4水和物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、項12に記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
平均粒子径が10μm〜200μmの粉体である、項11〜14のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
粘度が1 mPa・s〜50mPa・sである、項11〜15のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
項11〜16のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤を有する基材を含む塗料。
本発明の金属火災用感温性無機組成消火剤及び金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤を、合わせて「本発明の金属火災用感温性無機組成物」とも記す。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、マグネシウム等の金属類の火災に使用する事が出来る。金属火災の対象金属は、マグネシウムに加えて、鉄、亜鉛等である。金属火災の消火では、消火剤中に金属炭酸塩が含有すると、爆発の恐れがある。よって、本発明の金属火災用感温性無機組成物は、通常、金属炭酸塩を含まない事が好ましい。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、アルカリ金属ケイ酸化合物を含む。このアルカリ金属ケイ酸化合物は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である事が好ましい。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムを含む。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、水を含み、水は、その目的を損なわない範囲で含まれる。本発明の金属火災用感温性無機組成物の含水率は、通常、7〜95重量%程度である。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、必要に応じて、飽和濃度以下のホウ酸塩を含有する事が好ましい。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、乾燥し、破砕することで、粉体化することができる。本発明の金属火災用感温性無機組成物を粉体化しても、水分は残り、水はその目的を損なわない範囲で含まれる。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、水を含む態様であり、粘度を有する。本発明の金属火災用感温性無機組成物の25℃における粘度は、取扱い容易性の観点から、1 mPa・s〜50mPa・s程度が好ましい。粘度は、1 mPa・s〜30 mPa・s程度がより好ましく、1 mPa・s〜25 mPa・s程度が更に好ましい。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、これを有する基材を含む塗料として使用する事が有用である。本発明の金属火災用感温性無機組成物を単独で使用する事に加えて、基材となる本発明の金属火災用感温性無機組成物を用いて塗料を調製する事も出来る。その際、公知の添加剤や、溶剤として水を本発明の目的を損なわない範囲で加える事が出来る。
本発明の金属火災用感温性無機組成物は、消火する対象物や延焼を抑止する対象物がシート形状でなくても、高温環境下において遮熱効果のある泡や膜の形成制御を行う事で、より一層消火剤として機能を発揮する事が出来る。本発明の金属火災用感温性無機組成物を、金属火災時に燃焼する物質に供給する事で、消火剤中の水による気化熱と脱水縮合反応によって生成する水の気化熱による冷却効果を発揮する事が出来る。
1.実験目的
小型ガス着火試験による平均着火時間を調査すると、鉄やニオブ、チタン等の粉末と比較してマグネシウム粉末は着火に至るまでの時間が非常に短く(3秒)、その発熱量も高い。マグネシウム火災では、近隣住民に対する危険性の除去や、消防隊員自身の安全性の向上・確保の為、マグネシウム火災を短時間で消火出来る革新的方法が望まれる。
本消火剤は、含水率を制御する事で様々な状態に変化させる事が出来る。図1に3gのマグネシウム消火に用いた様々な状態の消火剤サンプルを示す。この様に種々の状態に変化する事が出来る本消火剤が、着火し易く発熱量の高いマグネシウムに対して、どの状態まで消火可能であるか調査した。
表1に各サンプルの状態、固形分濃度、消火に使用した消火剤の量及び300℃到達時間を示す。ここで、固形分濃度は、熱処理前後の重量差を熱処理前の重量で除し、100を乗じて算出した。前述の熱処理は、空気雰囲気下において、600℃の電気炉中に4時間保持したものである。
JIS規格3号ケイ酸ソーダ水溶液を50℃に恒温した乾燥器にて平坦に伸展させ、1週間乾燥させた。板状に固体化した乾燥物を破砕し、約10mmの粒径のフレーク状に調製した。
JIS規格3号ケイ酸ソーダ水溶液の固形分100重量部に対し3.5重量部のケイ酸アルミニウムを混合して母剤を濃縮調製した。その後、50℃に恒温した乾燥器にて平坦に伸展させ、1週間乾燥させた。板状に固体化した乾燥物を破砕し、約3〜7mmの粒径のフレーク型消火剤を調製した。
JIS規格3号ケイ酸ソーダ水溶液を50℃に恒温した乾燥器にて平坦に伸展させ、1週間乾燥させた。板状に固体化した乾燥物を粉砕機にて破砕し、約2mmの粒径のペレット状に調製した。
JIS規格3号ケイ酸ソーダ水溶液の固形分100重量部に対し2.4重量部の硼砂(Na2B4O7・10H2O)を混合して濃縮することでペースト状に調製した。
JIS規格1号ケイ酸カリウム水溶液の固形分と、JIS規格2号ケイ酸カリウム水溶液の固形分を合計した100重量部(体積比1:3)に対し、2.4重量部の硼砂(Na2B4O7・10H2O)を混合して母剤を調製した。母剤を水で希釈することにより39.6[mPa・s]の粘度の液体として調製した。
フレーク状に調製した消火剤を投下し、1,300℃を越す状態から1,000℃まで降温した。その後、900〜1,000℃を約100秒間保ち、若干温度が上昇した後、次第に緩やかに降温した。300℃に到達した時間は447秒であり、使用した消火剤量は25gであった。サンプル1-1を燃焼しているMgに投下しても降温が少なかったのは、粒径がMgに対して大きいため、投下直後のサンプルとMgの接触する面積が小さく、窒息効果が直ちに発揮しなかったと考えられる。その後の若干の温度の上昇は、サンプル1-1が熱によって変形することでMgを被覆し、生成した発泡層がMgの放熱を阻害したため、若干の温度上昇があったものである。その後の緩やかな降温は、Mgに酸素が供給されない燃焼を阻害する効果と発泡層による放熱を阻害する効果の相互関係によって緩やかな降温になった。
測定開始後約50秒の領域における温度の急激な昇温は、消火剤投下の有無に依らずほぼ同じと見られた。これは、成形したMgが双方ともほぼ同じ形状にする事が出来たものと考えられる。フレーク状に調製した消火剤を火源に投下して直ちに約650℃まで降温した。その後、600〜700℃の温度域を約150秒間保ち、次第に緩やかに降温した。300℃に到達した時間は443秒であり、使用した消火剤量は22gであった。
耐火材を基にした本発明の消火剤は、約130℃で発泡を開始する。図4には、サンプル1-2の消火剤を投下した場合の実験の様子を写真で示す。a)は、図3の60秒の様子であり、消火剤を投下する前であり、白色燃焼している事が分かる。b)は、図3の80秒の様子であり、消火剤を投下した直後である。Mg全面に被覆しており、Mgの発光も非常に押さえられ、温度が低下している事が分かる。発泡と未発泡が混在している状況である。c)は、図3の100秒の様子であり、Mgに接している消火剤の発泡が進行しつつあり、外殻のフレークが未発泡のまま外に押し出されている。d)は、図3の200秒の様子であり、c)の隙間から消火剤を追加で投下しており、非常に嵩高くなっている事が分かる。e)は、図3の350秒の様子であり、安定した状態であり、これ以降は時間が経過しても発泡体の形状は変化する事はなかった。また、外殻には未発泡のフレークが存在していた。
2mm程度のペレット状に調製した消火剤を火源に投下すると、直ちに約600℃まで降温した。その後、600〜650℃を約100秒間保ち、次第に緩やかに降温した。300℃に到達した時間は495秒であり、使用した消火剤量は12gであった。サンプル1-1と同組成でサイズの異なるサンプル1-3は、粒径が小さいためMgに接触する面積が大きい。そのため、被覆形成が良好であり、窒息効果が直ちに発揮したためである。固体の消火剤を用いた場合の投下直後の劇的な降温は、消火剤組成も関係するが、消火剤の粒径で簡便に効果を制御出来る事を示している。緩やかな降温は、発泡した泡による断熱効果であり、外気への放熱が阻害されたためである。
ペースト状に調製したサンプル1-4は、マグネシウム火源に投下を試みるものの粘度が高く、燃焼するマグネシウムへの瞬間的な投下ができなかった。そのため、劇的な温度低下が始まるまで時間を費やしている事が分かる。Mgへの投下が完了した時間が計測開始から170秒であり、その後は急激に降温した。300℃に到達した時間は370秒であり、使用した消火剤量は29gであった。被覆後の降温が速いのは、ペースト状であるためマグネシウムとの密着が固体の場合よりも良く、強い窒息効果があった事に加え、ペーストに含有する水の量が固体よりも多い(図1中に含水率記載)ためである。ペースト状の消火剤では、300℃に到達した時間は図3の中で最も短く、明らかに消火作用を発揮した。降温挙動は優れているが、火源投入の操作性が悪かった。そこで、噴霧可能な状態にすれば操作性良く、マグネシウム火源への水の供給量も増加し、消火効率が良くなるのではないかと考えた。
高粘度の液体に調製した消火剤サンプル1-5を燃焼するマグネシウムへ噴霧した。噴霧した瞬間を図3中の左の写真に示す。マグネシウムが弾け飛ぶ様子は見られない。噴霧する度に微小な発泡体がマグネシウムに付着し、続けて噴霧すると先に付着した泡の隙間を縫うように新しい発泡体が被覆した。被覆が完了した直後の写真を図3の右の写真に示す。図3右の写真のマグネシウムの底面温度は約800℃であり、被覆内部は赤熱状態にある。しかしながら、図3の写真右では、被覆物が白色を呈する状態であり、赤色は目視できない。サンプル1-5では噴霧直後から急激に降温しており、その後は時間の経過と共に緩やかな曲線で降温した。300℃に到達した時間は438秒であり、使用した消火剤量は僅か5gであった。
図5に表す通り、マグネシウムを12gにスケールアップし、石膏ボードの裏面温度を新たに計測出来るようにした。頂部の熱電対は、上2枚の石膏ボードの中央に穴を空け、1枚目の石膏ボードからの突き出し距離は40mmとし、図5のように設置した。底部の熱電対は、頂部熱電対の穴を中心とした5mmの距離で穴を空け、2mm程度石膏ボードから突き出すように設置した。裏面の熱電対は、図5中の中心線付近に設置した。図5に表す通り、石膏ボード(縦200 x横200mm x厚12.5mm)を4枚重ね、金属Mgの12gの粉体を円錐状に成型した。このとき円錐頂点が頂部熱電対の位置に合うようにした。熱データはデータロガーを介し、パソコンに取り込んだ。消火剤の噴霧操作は、熱電対が底面温度1,000℃を計測して直ちに行い、赤熱状態のマグネシウムが見えなくなるまで続けた。
液体の各サンプルの調製は、原液の消火剤を希釈して、粘度を1.96mPa・s〜20.4 mPa・sの範囲で変えて行った。JIS規格1号ケイ酸カリウム水溶液の固形分と、JIS規格2号ケイ酸カリウム水溶液の固形分を合計した100重量部(体積比1:3)に対し、3.5重量部のケイ酸アルミニウムを混合して母剤(粘度20.4mPa・s)を調製した。母剤を水で希釈することにより12.5mPa・s、3.83 mPa・s、及び1.96mPa・sに調節し、各サンプルを調製した。
調製した母剤をそのまま使用し、燃焼するMgへ噴霧した。噴霧する度に微小な発泡体がMgに付着し、続けて噴霧すると発泡体の隙間を覆うように隙間無く発泡体で被覆できた。固形分濃度が高く、Mgを被覆するまでの時間が短かった。噴霧直後から昇温を約70秒抑制した後、時間の経過とともに降温した。300℃に到達した時間は796秒であり、使用した消火剤量は20gであった(図6)。消火しないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い事が明らかとなった。
約13mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。消火剤の被覆挙動はサンプル2-1とほぼ変わらなかった。また、温度変化もサンプル2-1とほとんど変わらず、噴霧直後から昇温を約50秒抑制した後、時間の経過とともに降温した。300℃に到達した時間は786秒であり、使用した消火剤量は17gであった(図6)。サンプル2-2も消火しないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い事が明らかとなった。
約4mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。固形分濃度が低いため、12gのMgを覆うまでに時間が掛かった。噴霧直後から昇温を約150秒抑制した後、時間の経過とともにサンプル2-1及び2-2の降温挙動に沿うように降温した。300℃に到達した時間は810秒であり、使用した消火剤量は35gであった(図6)。サンプル2-3も消火しないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い事が明らかとなった。
約2mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。固形分濃度が低いため、12gのMgを覆うまでに時間が掛かった。噴霧直後から昇温を約250秒抑制した後、時間の経過とともに劇的に降温した。この劇的な降温は、被膜形成までに使用した液体(消火剤)がマグネシウム周辺に留まる事で、間接的な冷却作用を窒息作用と共に相乗的に発揮したと考えられる。300℃に到達した時間は最も短く640秒であり(図6)、使用した消火剤量は57gであった。
図7に燃焼前の12gのマグネシウム及び消火無しと、消火後のマグネシウム外観の様子を示す。図7中の上から1段目に燃焼前の12g-マグネシウムの様子を示す。この様に成形した後、消火実験を行っている。図7中の上から2段目は消火剤を噴霧せずに12g-マグネシウムをそのまま空気中で燃焼させた結果である。白色を呈する外殻の物質は、酸化マグネシウムである。また、マグネシウムを貫通する熱電対に堆積している物質は、燃焼時に発生するマグネシウムヒュームであり、熱電対に付着・堆積した。
空気中でマグネシウムを燃焼させると、酸素や窒素と熱反応し、白色或いは黒色の酸化マグネシウム、更には黄色の窒化マグネシウムを生成する。酸化マグネシウムは水と反応して発熱する事は無いが、窒化マグネシウムは水とたやすく反応し、アンモニアガスの生成を伴って発熱する事が分かっている。鎮火を考慮した場合、消火したはずの物質が、別の発熱体(例えば窒化マグネシウム)に大量に変性すると、消火現場の混乱は避けられないと予想出来る。
実験目的
延焼は、燃焼しているMgから発生した熱が燃えていない物体に伝わる現象であり、木材の着火温度が260℃であることはよく知られている。延焼を阻止するには、物質が燃焼しない温度以下であれば良いと考えられる。
JIS規格1号ケイ酸カリウム水溶液の固形分と、JIS規格2号ケイ酸カリウム水溶液の固形分を合計した100重量部(体積比1:3)に対し、3.5重量部のケイ酸アルミニウムを混合して母剤を調製し、母剤を水で希釈することにより1.96mPa・sに調節して、サンプル5を調製した。
図9中の頂点温度はマグネシウムの燃焼熱によって劇的に昇温するが、サンプル2-4の噴霧によって瞬時に降温する。噴霧開始して約180秒後に一旦頂点の温度が上がったのは、マグネシウムの被覆がまだ完全ではないためであるが、その200秒後には100℃を下回った。その後、頂点温度は100℃近傍を保持しており、ほとんど温度の上昇は見られなかった。
実施例の各サンプルの調製法
JIS規格1号ケイ酸カリウム水溶液の固形分と、JIS規格2号ケイ酸カリウム水溶液の固形分を合計した100重量部(体積比1:3)に対し、2.4重量部の硼砂(Na2B4O7・10H2O)を混合して母剤を調製した。母剤を水で希釈することにより39.6mPa・s、13.7 mPa・s、及び4.17mPa・sに調節し、各サンプルを調製した。
表3に3g-Mgを消火対象とした場合の同一母剤から希釈した各サンプルの粘度、固形分濃度、使用量及び300℃到達時間を示す。
図10にサンプル3-1を用いた場合の結果を示す。
図10にサンプル3-2を用いた場合の結果を示す。約14mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。噴霧する度に微小な発泡体がMgに付着し、続けて噴霧すると発泡体の隙間を覆うように隙間無く発泡体で被覆できた。噴霧直後から降温し、一旦1,000℃付近で50秒程度保ったが、時間の経過と急激に降温した。300℃に到達した時間は369秒であり、使用した消火剤量は9gであった。消火していないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い。3gのMg消火に対して良好な結果であった。
図10にサンプル3-3を用いた場合の結果を示す。約4mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。粘度と固形分率が低いため、当初は燃焼しているMgに付着しにくく、何度も噴霧する必要があった。付着しはじめると薄い膜を被せるようにMgを完全に被覆できた。降温は噴霧直後からあり、900〜1,100℃の幅広い温度領域で約80秒間保ち、以降は時間の経過と急激に降温した。300℃に到達した時間は377秒であり、使用した消火剤量は15gであった。消火していないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い。図10において、他の消火剤よりも使用量が多いのは、粘度と固形分濃度が低いためである。この使用量と固形分濃度の低さを同時に考慮すれば、火源であるMg周辺の温度も低くできるため、周辺に対する延焼抑制も同時に行える事を示唆している。
実施例の各サンプルは、前記「3g-Mg消火」と同一サンプルを用いた。サンプル3-1と4-1、サンプル3-2と4-2及びサンプル3-3と4-3は同一である。
表4に12g-Mgを消火対象とした場合の同一母剤から希釈した各サンプルの粘度、固形分濃度、使用量および300℃到達時間を示す。
図11にサンプル4-1を用いた場合の結果を示す。粘度を約37mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。噴霧する度に微小な発泡体がMgに付着し、続けて噴霧すると発泡体の隙間を覆うように隙間無く発泡体で被覆できた。スケールアップしたため、Mgを被覆するまで時間が掛かり、噴霧直後から降温した後、一旦900〜1,000℃付近で50秒程度保ったことが3g-Mgの場合と異なる。その後、時間の経過とともに降温した。300℃に到達した時間は894秒であり、使用した消火剤量は14gであった。消火しないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い事が明らかとなった。
図11にサンプル4-2を用いた場合の結果を示す。約14mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。噴霧する度に微小な発泡体がMgに付着し、続けて噴霧すると発泡体の隙間を覆うように隙間無く発泡体で被覆できたものの、被覆するまでに時間を要した。発泡体が被覆したあとは、比較的急速に降温した後、緩やかな降温へ変化した。300℃に到達した時間は896秒であり、使用した消火剤量は39gであった。消火しないMgの経時変化と比較すると、ほぼ全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短かった。
図11にサンプル4-3を用いた場合の結果を示す。約4mPa・sの粘度に調製した消火剤を燃焼するMgへ噴霧した。粘度と固形分率が低いため、当初は燃焼しているMgに付着しにくく、何度も噴霧する必要があった。付着しはじめると薄い膜を被せるようにMgを完全に被覆できた。降温は噴霧直後からあり、900〜1,100℃の幅広い温度領域で約180秒間保ち、以降は時間の経過と急激に降温した。300℃に到達した時間は769秒であり、使用した消火剤量は32gであった。消火しないMgの経時変化と比較すると、明らかに全温度領域で温度が低く、また300℃到達時間も短い。
本消火剤の特徴は、(1)燃焼するマグネシウム表面上にのみ無機被覆物を形成し、密着度の高い窒息作用を発揮する事、(2)マグネシウム内部への液体の浸透が無く、水蒸気爆発しない事、(3)窒素ガスをバリアし、消火残物は安全な酸化マグネシウムである事、(4)消火剤の粘度を低くすれば冷却効果が高くなり、短時間で消火可能である事、(5)粘度を高くすれば水損被害を抑える事、(6)低粘度の消火剤でも遮熱性が非常に高く延焼抑止効果を有する事、(7)木材火災も消火する事が出来る事、(8)液体としても使用可能である事の8点である。
Claims (12)
- アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成消火剤。
- アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、飽和濃度以下のホウ酸塩と、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成消火剤。
- 前記アルカリ金属ケイ酸化合物が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1又は2に記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
- 前記ホウ酸塩が、四ホウ酸二ナトリウム10水和物、四ホウ酸二ナトリウム5水和物、五ホウ酸ナトリウム10水和物、八ホウ酸二ナトリウム4水和物、メタホウ酸ナトリウム2水和物、メタホウ酸ナトリウム4水和物、四ホウ酸二カリウム4水和物、及び五ホウ酸カリウム4水和物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2に記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
- 平均粒子径が10μm〜200μmの粉体である、請求項1〜4のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成消火剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成消火剤を有する基材を含む塗料。
- アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、水とを含有する、金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
- アルカリ金属ケイ酸化合物と、前記アルカリ金属ケイ酸化合物の二酸化ケイ素の固形分100重量部に対し、0〜26重量部のケイ酸アルミニウムと、飽和濃度以下のホウ酸塩と、水を含有する、金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
- 前記アルカリ金属ケイ酸化合物が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びケイ酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項7又は8に記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
- 前記ホウ酸塩が、四ホウ酸二ナトリウム10水和物、四ホウ酸二ナトリウム5水和物、五ホウ酸ナトリウム10水和物、八ホウ酸二ナトリウム4水和物、メタホウ酸ナトリウム2水和物、メタホウ酸ナトリウム4水和物、四ホウ酸二カリウム4水和物、及び五ホウ酸カリウム4水和物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項8に記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
- 平均粒子径が10μm〜200μmの粉体である、請求項7〜10のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤。
- 請求項7〜11のいずれかに記載の金属火災用感温性無機組成延焼抑止剤を有する基材を含む塗料。
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