JP2019189895A - 環状歯車の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環状歯車に歪みが生じることを抑制することができる、環状歯車の製造方法を提供する。【解決手段】環状の歯車素材100に焼入れ処理を施すことによって、環状歯車が製造される。歯車素材100は、第1環状部12、第1環状部12の外周部に設けられた第2環状部14、および第2環状部14の外周部に設けられた複数の歯20を有する。歯車素材100の軸方向において、第1環状部12の中心は第2環状部14の中心よりも一方側に位置している。第1環状部12は、第1環状部12の前記中心よりも軸方向における一方側に位置する第1側面12aと、第1環状部12の前記中心よりも軸方向における他方側に位置する第2側面12bとを有する。歯車素材100の冷却時には、歯車素材100の軸心が鉛直方向に略平行になるように歯車素材100が油302中に浸漬され、かつ冷却抑制材70によって第1側面12aが覆われる。【選択図】 図8

Description

本発明は、環状歯車の製造方法に関する。
自動車および産業機械(以下、自動車等と記載する。)において構成部材として使用される歯車には、高い応力が繰り返し付与される。このため、自動車等に使用される歯車には、優れた耐疲労性および耐摩耗性を備えることが要求される。そこで、従来、自動車等においては、肌焼鋼からなる素材に浸炭焼入れ処理を施すことによって製造された歯車が利用されている。
浸炭焼入れ時の冷却方法として、従来、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に開示された熱処理用治具は、複数のスペーサと、上下方向に延びる支柱とを有している。各スペーサの中心部は中空形状を有し、支柱を通すことができるように構成されている。また、各スペーサは、上記中心部から放射状に延びる複数の支持アームを有している。各支持アームの先端部には、歯車を支持する受部が形成されている。
実開昭57−59867号公報
特許文献1に開示された熱処理用治具を用いて冷却処理を行う場合には、複数のスペーサおよび複数の歯車が上下方向において交互に並ぶように、複数のスペーサおよび複数の歯車が支柱に交互に嵌められる。各歯車は、軸心が鉛直方向に略平行になるように、各支持アームの受部によって支持される。このように複数のスペーサによって支持された複数の歯車を、冷却材に浸漬することによって、複数の歯車を同時に冷却することができる。
しかしながら、本発明者らの検討の結果、上記のように軸心が鉛直方向に略平行になるように環状歯車を支持して冷却処理を行う場合、環状歯車の形状によっては、冷却後の環状歯車に歪みが生じ易くなることが分かった。
そこで、本発明は、環状歯車に歪みが生じることを抑制することができる、環状歯車の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、下記の環状歯車の製造方法を要旨とする。
(1)第1環状部、前記第1環状部の外周側に設けられかつ前記第1環状部よりも大きい厚みを有する第2環状部、および前記第2環状部の外周部に設けられた複数の歯を有し、かつ鋼からなる歯車素材を、加熱した後、油中で冷却して焼入れ処理を施すことによって環状歯車を製造する方法であって、
前記歯車素材の軸方向において、前記第1環状部の中心は、前記第2環状部の中心よりも一方側に位置し、
前記第1環状部は、前記第1環状部の前記中心よりも前記軸方向における前記一方側に位置する第1側面と、前記第1環状部の前記中心よりも前記軸方向における他方側に位置する第2側面とを有し、
前記油中での前記歯車素材の冷却時には、前記歯車素材の軸心が鉛直方向に略平行になるように前記歯車素材を前記油中に浸漬し、かつ前記第1側面の冷却速度が前記第2側面の冷却速度よりも小さくなるように、冷却抑制材によって前記歯車素材の前記第1側面を覆う、環状歯車の製造方法。
(2)前記油中での冷却時には、前記第1側面が下方を向き、前記第2側面が上方を向くように、前記歯車素材を前記油中に浸漬し、かつ前記冷却抑制材によって前記第1側面を下方から支持する、上記(1)に記載の環状歯車の製造方法。
(3)前記油中での冷却時には、複数の前記歯車素材が、鉛直方向に並ぶように設けられた複数のスペーサによってそれぞれ支持され、
前記スペーサは、前記鉛直方向から見て、前記歯車素材の中心部に位置する本体部と、前記本体部から前記歯車素材の径方向外側に向かって延びる複数のアーム部とを有し、
前記複数のアーム部は、前記冷却抑制材を介して前記第1側面を支持する、上記(2)に記載の環状歯車の製造方法。
本発明によれば、環状歯車に歪みが生じることを抑制することができる。
図1は、歯車素材を示す図である。 図2は、解析モデルを示す図である。 図3は、解析で設定したヒートパターンを示す図である。 図4は、解析モデルの変形の様子を説明するための図である。 図5は、解析結果を示す図である。 図6は、解析モデルの変形の様子を説明するための図である。 図7は、解析結果を示す図である。 図8は、支持ユニットに支持された複数の歯車素材を示す図である。 図9は、歯車素材の冷却方法を説明するための図である。 図10は、冷却方法の他の例を示す図である。
(本発明者による検討)
本発明者は、焼入れ処理の冷却時に軸心が鉛直方向に略平行になるように歯車素材を支持する場合に、歯車素材に生じる熱処理歪みについて種々の研究を行ってきた。その研究のなかで、本発明者は、図1に示すような形状の歯車素材100を冷却する際に生じる熱処理歪みについて詳細な検討を行った。なお、図1において(a)は歯車素材100の側面図、(b)は(a)のb−b線断面を示す概略図である。
まず、図1に示す歯車素材100について簡単に説明する。図1を参照して、歯車素材100は、円環状の板状部10と、板状部10の外周部から板状部10の径方向外側に向かって突出するように形成された複数の歯20とを有している。
図1を参照して、板状部10は、中心に貫通孔を有する円環状の第1環状部12、および第1環状部12の外周側に設けられかつ第1環状部12よりも大きい厚みを有する円環状の第2環状部14を有している。ここでの「厚み」とは、歯車素材100の軸方向(歯車軸方向)における厚みである。なお、図1(b)では、歯車素材100の軸方向における第1環状部12の中心を通る直線30(以下、中心線30と記載する。)を一点鎖線で示し、歯車素材100の軸方向における第2環状部14の中心を通る直線32(以下、中心線32と記載する。)を二点鎖線で示している。また、以下においては、歯車素材の軸方向を単に軸方向と記載する。
複数の歯20は、第2環状部14の外周部から第2環状部14の径方向外側に突出するように形成されている。なお、複数の歯20はそれぞれ、歯車素材100の径方向から見て、歯筋が歯車素材100の軸心に対して傾斜するように形成されている。
図1(b)を参照して、第1環状部12の中心線30は、第2環状部14の中心線32に対して、軸方向における一方側に位置している。すなわち、軸方向において、第1環状部12の中心は、第2環状部14の中心から一方側にずれている。なお、以下においては、第1環状部12の一対の側面12a,12bのうち、中心線30に対して軸方向における一方側に位置する側面12aを第1側面12aと記載し、中心線30に対して軸方向における他方側に位置する側面12bを第2側面12bと記載する。
本発明者は、FEM解析を行うことによって、上述の歯車素材100に対して浸炭焼入れ処理を施す際に生じる熱処理歪みについて調査した。具体的には、図2に示す二次元軸対称の解析モデル50を用いて、図3に示すヒートパターンで浸炭焼入れ解析を行った。図3中の「Cp」はカーボンポテンシャルを表し、「120℃油焼入れ」は油温120℃の油中で歯車素材を冷却することを表す。
なお、図2に示す解析モデル50は、上述の歯車素材100を模擬したモデルであり、第1環状部12(図1参照)に対応する第1環状部52および第2環状部14に対応する第2環状部54を有している。図2においては、解析モデル50の軸心56を破線で示している。また、解析モデル50の軸方向において、第1環状部52の中心を通る直線60(以下、中心線60と記載する。)を一点鎖線で示し、第2環状部54の上記軸方向における中心を通る直線62(以下、中心線62と記載する。)を二点鎖線で示している。また、図2には、第1環状部52の内周面52aにおいて中心線60と交差するポイント52b、および第2環状部54の外周面54aにおいて中心線60と交差するポイント54bをそれぞれ破線の円で示している。
浸炭焼入れ解析において、歯車素材の材料は、JIS G 4053(2016)に規定されたSCM420とした。ヤング率および応力−歪線図等の機械的特性としては、SCM420の実測データを用いた。また、比熱および熱伝導率等の熱的特性としては、SCM420の化学成分に基づいて、予測式を用いて算出した値を用いた。冷却油としては一般的なセミホット油を用いるものとして、冷却油の熱伝達係数を設定した。解析モデル50の油中への浸漬速度は100mm/sに設定した。これらを基本条件として、以下のように特定の条件を変えて解析を行った。
(条件1〜3)
条件1の解析では、解析モデル50の軸心56が鉛直方向に平行(油面に対して垂直)になるように、かつ第1環状部52の中心線60が第2環状部54の中心線62よりも上方に位置するように、解析モデル50を油中に浸漬して冷却した。なお、条件1では、冷却油の熱伝達係数は、温度変化に従って解析モデル50の全面で均一に変化するものとした。また、解析では、内周面52a上のポイント52bの軸方向における変位を規制した。すなわち、ポイント52bは、第1環状部52の径方向にのみ変位できるものとした。
条件2の解析では、第2環状部54の外周面54aにおける冷却油の熱伝達係数を解析モデル50の他の部分における冷却油の熱伝達係数の1.2倍に設定した点を除いて、条件1と同じ条件で解析を行った。
条件3の解析では、第1環状部52の軸方向における一方側に位置する第1側面(上面)52cにおける冷却油の熱伝達係数を解析モデル50の他の部分における冷却油の熱伝達係数の1.1倍に設定した点を除いて、条件1と同じ条件で解析を行った。
条件1〜3のいずれの場合も、解析モデル50は、浸炭焼入れ処理によって図4に示すように変形した。なお、図4においては、浸炭焼入れ処理前の解析モデル50の形状を破線で示し、浸炭焼入れ処理後の解析モデル50の形状を実線で示している。ただし、浸炭焼入れ処理の前後における変形を分かり易くするために、図4においては、浸炭焼入れ処理によって生じる変形量を約20倍して得られる解析モデル50の形状を、浸炭焼入れ処理後の解析モデル50の形状として実線で示している。後述する図6においても同様である。
図4に示すように、条件1〜3のいずれの場合にも、第1環状部52が上方に凸となるように解析モデル50が変形した。これは、実際の製造現場において環状歯車に生じている熱処理歪みと同様である。すなわち、製造現場において焼入れ処理によって環状歯車に生じている熱処理歪みを、解析によって再現することができた。
図5は、ポイント52b(図2参照)に対するポイント54b(図2参照)の軸方向における変位量と冷却時間との関係を示す図である。なお、上述したように、ポイント52bの軸方向における移動は規制されているので、ポイント54bの軸方向における変位量とは、軸方向におけるポイント52bとポイント54bとの距離を示す。図5において横軸は、浸炭焼入れ解析において解析モデル50の冷却が開始されてからの経過時間を示す。また、図5においては、変位量が負の値である場合には、ポイント54b(図2参照)がポイント52b(図2参照)に対して軸方向における他方側(下方)に位置していることを意味し、ポイント54bの変位量が正の値である場合には、ポイント54bがポイント52bに対して軸方向における一方側(上方)に位置していることを意味する。したがって、図5において変位量が負の値で示されている場合には、第1環状部52が上方に向かって凸となるように、解析モデル50が変形している。
図5を参照して、冷却時の解析モデル50の変形態様は、以下の4段階に分けることができる。
(第1段階:0〜約15秒)
第1段階では、第2環状部54の温度低下が第1環状部52の温度低下よりも大きくなる。このため、第2環状部54と相対的に高温となる第1環状部52との収縮量の差によって、ポイント54bの下方への変位量が増加する。これにより、第1環状部52の内周部の、第2環状部54に対する上方への相対的な変位量が大きくなる。その結果、第1環状部52が上方に向かって凸となるように変形する。
(第2段階:約15〜25秒)
第2環状部54において、第1環状部52よりも先にベイナイト変態が生じ、第2環状部54が膨張する。これにより、第1段階で生じていた第1環状部52と第2環状部54との収縮量の差が緩和され、第1環状部52の内周部の、第2環状部54に対する上方への相対的な変位量が小さくなる。その結果、第1環状部52の上方への凸形状の程度が小さくなる。
(第3段階:約25〜35秒)
第1環状部52においてベイナイト変態が生じ、第1環状部52が膨張することによって、第1環状部52の内周部の、第2環状部54に対する上方への相対的な変位量が再び大きくなる。これにより、第2段階に比べて、第1環状部52の上方への凸形状の程度が大きくなる。
(第4段階:約35秒以降)
第1環状部52および第2環状部54の冷却が進行し、第1環状部52と第2環状部54との温度差が減少する。これにより、第1環状部52の上方への凸形状の程度が小さくなる。
(条件1〜3の解析結果の比較)
図5に示した結果から、第2環状部54の外周面54aにおける冷却油の熱伝達係数を大きくした場合(条件2)、解析モデル50の全面において冷却油の熱伝達係数を均一にした場合(条件1)に比べて、冷却開始直後(第1段階)において、第1環状部52の上方への凸形状の程度が大きくなった。これは、条件2の解析では、条件1の解析に比べて、第2環状部54が第1環状部52に比べてより速く冷却されることによって、第1環状部52と第2環状部54との収縮量の差がより大きくなったからだと考えられる。
一方、第1環状部52の第1側面52cにおける冷却油の熱伝達係数を大きくした場合(条件3)、上述の条件1の解析に比べて、冷却開始直後(第1段階)において、第1環状部52の上方への凸形状の程度は小さくなった。しかし、冷却が進むと、条件3の解析でも、条件2の解析と同様に、第1環状部52の上方への凸形状の程度が大きくなった。この要因は、以下のように考えられる。まず、第1環状部52の第1側面52cの冷却速度が大きくなることによって、第1環状部52のうち第1側面52c側の部分が、第2側面52d(図2参照)側の部分よりも大きく収縮し、第1環状部52の上方への凸形状の程度が小さくなる。このとき、第1環状部52において、第1側面52c側の部分と第2側面52d側の部分とが互いに拘束し合うことで、第1側面52c側の部分において引張応力が発生し、第2側面52d側の部分において圧縮応力が発生する。これにより、第1環状部52のうち相対的に高温で強度が低い第2側面52d側の部分において圧縮の塑性歪みが生じる。その後、冷却が進むことによって、第1側面52c側の部分と第2側面52d側の部分との間の温度および熱歪みの差が減少するが、上記のように第2側面52d側の部分において圧縮の塑性歪みが生じている。このため、第2側面52d側の部分の収縮量が第1側面52c側の部分の収縮量よりも大きくなり、第1環状部52の上方への凸形状の程度が大きくなったと考えられる。
(条件4)
条件4の解析では、冷却時に、解析モデル50の上下を反転させた点を除いて、条件1と同じ条件で解析を行った。その結果、図6に示すように、第1環状部52が下方に凸となるように解析モデル50が変形した。この結果から、冷却油中における解析モデル50の浸漬方向が解析モデル50の変形の向きに与える影響よりも、第1環状部52の第2環状部54に対する位置関係が解析モデル50の変形の向きに与える影響の方が大きいことが分かる。具体的には、軸方向における第2環状部54の中心に対して、第1環状部52が軸方向における一方側に偏って設けられている場合には、その偏った一方側に凸となるように第1環状部52が変形することが確認できた。
(条件1〜4の解析結果に基づく検討)
図1を参照して、以上の結果から、軸心が鉛直方向に略平行になるようにして歯車素材100を冷却する場合には、形状の違いに起因する第1環状部12と第2環状部14との冷却速度の差、および第1環状部12の第1側面12aと第2側面12bとの冷却速度の差が、熱処理歪みに大きく影響することが分かった。
ここで、第2環状部14の中心線32に対して、第1環状部12が軸方向における一方側に偏って設けられる場合には、第1環状部12と第2環状部14との形状の違いに起因する熱処理歪みの発生を避けることは難しい。
そこで、本発明者は、第1側面12aと第2側面12bとの冷却速度差に起因する熱処理歪みを故意に大きくすることを考えた。具体的には、第1側面12aおよび第2側面12bの冷却速度差に起因する熱処理歪みと、第1環状部12および第2環状部14の形状の違いに起因する熱処理歪みとが、互いに打ち消し合うことができるように、第1側面12aと第2側面12bとに冷却速度差を設けることを検討した。この場合、第1環状部12の軸方向における一方側への凸形状の程度を小さくすることができる。
冷却速度差に起因する上記の熱処理歪みと、形状の違いに起因する上記の熱処理歪みとが互いに打ち消し合うようにするためには、例えば、第2側面12bの冷却速度を大きくすることが考えられる。しかしながら、第2側面12bの冷却速度を大きくすることは、実際の製造条件を考慮すると困難である。そこで、本発明者は、第1側面12aに、第1側面12aと冷却油との接触を阻害する環状の部材を設けて、第1側面12aの冷却速度を低下させることを考えた。この考えに基づいて、本発明者は、さらに下記の条件5の解析を行った。
(条件5)
図6を参照して、条件5の解析では、第1環状部52の第1側面52cにおける冷却油の熱伝達係数を解析モデル50の他の部分における冷却油の熱伝達係数の0.7倍に設定した点を除いて、条件4と同じ条件で解析を行い、解析モデル50に生じる熱処理歪みを調べた。図7に解析結果を示す。なお、図7においては、ポイント52b(図6参照)に対するポイント54b(図6参照)の上方への変位量を示している。また、図7には、条件4の解析におけるポイント54bの変位量を比較のために示している。
図7に示した結果から、第1側面52cの冷却速度を低下させた条件5の解析では、条件4の解析に比べて、ポイント52bに対するポイント54bの上方への変位量が大幅に低下したことが分かる。すなわち、第1側面52cの冷却速度を低下させることによって、第1環状部52の下方への凸形状の程度を小さくできることが分かった。
(本発明の実施形態)
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の一実施形態に係る環状歯車の製造方法について図面を参照しつつ説明する。以下においては、図1で説明した形状を有する歯車素材100に焼入れ処理(例えば、浸炭焼入れ処理)を施して環状歯車を製造する場合について説明する。
なお、歯車素材100は、例えば、素材鋼を通常の方法で溶製した後、熱間で圧延又は鍛造し、更に必要に応じて熱処理を行い、次いで切削および圧造等によって所望の歯車形状とすることによって製造することができる。素材鋼としては、公知の種々の肌焼鋼を用いることができる。焼入れ処理のヒートパターンとしては、公知の焼入れ処理のヒートパターンを採用できるので、ヒートパターンの詳細な説明は省略する。
図8は、冷却処理時に利用される支持ユニットおよび支持ユニットに支持された複数の歯車素材を示す図である。また、図9は、複数の歯車素材の冷却方法を説明するための図である。
図8を参照して、本実施形態では、複数の歯車素材100は、各歯車素材100の軸心が鉛直方向に略平行になるように、支持ユニット200に支持される。言い換えると、複数の歯車素材100は、各歯車素材100の第1環状部12の一対の側面12a,12bが鉛直方向を向くように、支持ユニット200に支持される。そして、複数の歯車素材100は、上記のように支持ユニット200に支持された状態で、図9に示すように、油槽300に貯留された油302中に浸漬される。すなわち、本実施形態では、各歯車素材100の軸心が鉛直方向に略平行になるように複数の歯車素材100を油302中に浸漬して、冷却処理が行われる。
図8を参照して、支持ユニット200は、鉛直方向に延びる柱状(本実施形態では円柱状)のガイド部材202と、鉛直方向に並ぶようにガイド部材202に嵌められた複数のスペーサ204とを含む。
スペーサ204は、鉛直方向から見て、歯車素材100の中心部に位置する本体部40と、本体部40から歯車素材100の径方向外側に向かって延びる複数のアーム部42とを有する。本体部40は、ガイド部材202を通すことができるように、筒形状(本実施形態では円筒形状)を有している。
各スペーサ204のアーム部42は、環状の冷却抑制材70を介して歯車素材100の第1環状部12の第1側面12aを下方から支持している。すなわち、本実施形態では、冷却抑制材70によって第1側面12aが覆われている。なお、冷却抑制材70は、第1側面12aの全面を覆う必要はない。したがって、例えば、冷却抑制材70が環形状を有していなくてもよい。ただし、第1側面12aの全周において冷却速度を均一に低下させる観点からは、冷却抑制材70が第1側面12aの全周に接触できるように、冷却抑制材70が環形状を有していることが好ましい。また、冷却抑制材70は、板状であってもよく、シート状であってもよく、第1側面12aに塗布形成されたものであってもよい。冷却抑制材70としては、例えば、鋼やセラミックスを用いることができる。
本実施形態では、上記のように冷却抑制材70によって第1側面12aを覆うことによって、油302(図9参照)中での冷却時に、第1側面12aと油302との間の熱伝達を阻害することができる。これにより、第1側面12aの冷却速度を第2側面12bの冷却速度よりも小さくすることができ、第1側面12aと第2側面12bとの冷却速度差に起因する熱処理歪みを大きくすることができる。その結果、第1側面12aおよび第2側面12bの冷却速度差に起因する熱処理歪みと、第1環状部12および第2環状部14の形状の違いに起因する熱処理歪みとが、互いに打ち消し合う。これにより、第1環状部12が下方に向かって凸となるように変形することを抑制することができる。すなわち、環状歯車に歪みが生じることを抑制することができる。
なお、支持ユニット200の構成は上述の例に限定されず、歯車素材100を支持できる構成であればよい。また、上述の実施形態では、スペーサ204と冷却抑制材70とが別個の部材である場合について説明したが、スペーサ204と冷却抑制材70とが一体的に構成されていてもよい。
また、上述の実施形態では、第1側面12aが下方を向き、第2側面12bが上方を向くように、歯車素材100が油302中に浸漬される場合について説明したが、図10に示すように、第1側面12aが上方を向き、第2側面12bが下方を向くように、歯車素材100を油302中に浸漬してもよい。この場合も、上述の実施形態と同様に、第1側面12aに接触するように冷却抑制材70を設ければよい。
本発明によれば、環状歯車に歪みが生じることを抑制することができる。
10 板状部
12 第1環状部
12a 第1側面
12b 第2側面
14 第2環状部
20 歯
40 本体部
42 アーム部
50 解析モデル
70 冷却抑制材
100 歯車素材
200 支持ユニット
202 ガイド部材
204 スペーサ
302 油

Claims (3)

  1. 第1環状部、前記第1環状部の外周側に設けられかつ前記第1環状部よりも大きい厚みを有する第2環状部、および前記第2環状部の外周部に設けられた複数の歯を有し、かつ鋼からなる歯車素材を、加熱した後、油中で冷却して焼入れ処理を施すことによって環状歯車を製造する方法であって、
    前記歯車素材の軸方向において、前記第1環状部の中心は、前記第2環状部の中心よりも一方側に位置し、
    前記第1環状部は、前記第1環状部の前記中心よりも前記軸方向における前記一方側に位置する第1側面と、前記第1環状部の前記中心よりも前記軸方向における他方側に位置する第2側面とを有し、
    前記油中での前記歯車素材の冷却時には、前記歯車素材の軸心が鉛直方向に略平行になるように前記歯車素材を前記油中に浸漬し、かつ前記第1側面の冷却速度が前記第2側面の冷却速度よりも小さくなるように、冷却抑制材によって前記歯車素材の前記第1側面を覆う、環状歯車の製造方法。
  2. 前記油中での冷却時には、前記第1側面が下方を向き、前記第2側面が上方を向くように、前記歯車素材を前記油中に浸漬し、かつ前記冷却抑制材によって前記第1側面を下方から支持する、請求項1に記載の環状歯車の製造方法。
  3. 前記油中での冷却時には、複数の前記歯車素材が、鉛直方向に並ぶように設けられた複数のスペーサによってそれぞれ支持され、
    前記スペーサは、前記鉛直方向から見て、前記歯車素材の中心部に位置する本体部と、前記本体部から前記歯車素材の径方向外側に向かって延びる複数のアーム部とを有し、
    前記複数のアーム部は、前記冷却抑制材を介して前記第1側面を支持する、請求項2に記載の環状歯車の製造方法。

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