本発明は、スレート波板を使用した既存の屋根や壁に、新規の屋根や壁を重ねて改修する際に使用するスレート波板改修用支持金具に関するものである。
既存の屋根等に使用しているスレート波板は、昭和40年代の出荷量をピークに衰退してきているが、現在、その屋根等は改修期を迎えている。ところが当時のスレート波板はアスベストを含有しており、改修には特に気を使う作業になっている。
そこで、既存のスレート波板の改修を行う工法の一つとして、間接固定工法が行われている。この工法によると、既存のスレート波板にドリルやビスで孔をあけずに改修施工が可能になるので、アスベストやその他の粉塵の発生がほとんどなく、工事中の雨漏りの心配もないという利点がある。
この間接固定工法は、既存の屋根や壁に使用されている既設のフックボルト等に支持金具を固定し、支持金具相互間に金属下地を配設し、この金属下地の上に新設の屋根等を固定する工法である。
この間接固定工法に使用する従来の支持金具として、特許文献1の屋根改修用金具が提案されている。この改修用金具は、波状スレート板(スレート波板)の波の上面に配置される載置部と、波の底部に配置される脚部と、載置部に足場板を連結するための連結片とを備えた金具である。そして、この連結片に足場板を連結することによって、間接固定工法における作業時に、足場板で既設のスレート波板の踏み抜きを防止することができるというものである。
特許文献1の改修用金具は、金具の脚部をスレート波板の波の底部に配置し、載置部を波の上面に配置する構造を採用している。このため、既存のスレート波板を改修するには、スレート波板の各サイズに対応したサイズ別の改修用金具を製造する必要があった。
すなわち、既存のスレート波板には、大波スレートと小波スレートと称する2種類のスレート板が使用されている。これらのスレート板は、それぞれ波の底部から頂上までの高さが異なるサイズに形成されたものである。そのため、特許文献1の改修用金具のように、波の底部に脚部を配置し、波の頂上に載置部を配置する構成では、大波スレートと小波スレートのそれぞれのサイズに対応した2種類の改修用金具が必要になっている。
また、既設のフックボルトを利用して支持金具を固定する工法なので、仮に既設のフックボルトが傾斜しているような状態でも、このフックボルトに支持金具を固定することになる。そのため、このフックボルトの傾斜に伴って支持金具の取付け位置も傾斜してしまうと、支持金具相互間に配設する金属下地を正確な位置に配設できなくなる虞が生じる。
そこで、特許文献1の改修用金具では、既設のフックボルトを挿通するボルト挿通孔を長孔状に形成することで、既存のフックボルトが傾いていても改修用金具の取付け位置を正常な位置に調整できるように形成している。
ところが、このボルト挿通孔は、波の長手方向を横切る方向に延びた長孔が形成されているので、改修用金具の位置調整は、波の長手方向に対して横向きの方向に限られていた。そのため、特許文献1に記載のボルト挿通孔は、改修用金具の取付け位置を波の長手方向に沿って調整することはできない構成になっている。
間接固定工法では、支持金具相互間に金属下地を配設するので、横に並んだ既設のフックボルトの通り芯が出ていない場合は、支持金具の取付け位置を波の長手方向に沿って位置調整する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のボルト挿通孔のように、波の長手方向に沿った位置調整ができない構成では、フックボルトの通り芯が出ていない場合に、金属下地を正確に配置することはできないことになる。
そのため、特許文献1の改修用金具では、金属下地として使用する母屋材を略ハット型の特殊な構造材で形成し、この母屋材を改修金具の載置部の上に載せてスクリュービスなどで強制的に連結する構成を採用している。この構成によると、母屋材を載置部の上に載せて所定の位置に強制的に連結することができるので、横に並んだフックボルトの通り芯が出ていない場合でも、母屋材の連結位置を載置部上で修正することによって、正確な位置に配置できるというものである。
ところが、このような改修用金具の構成では、特殊な構造材で形成された母屋材(金属下地材)が必要になるので、この母屋材の製造コストが嵩む構造になっていた。しかも、母屋材の位置を載置部上で修正しながらスクリュービスなどで連結する作業工程において課題が残されていた。
それは、母屋材を載置部の上に載せると、この載置部が母屋材の下に重なるため、載置部が見難くなる状況にある。この状況では、母屋材を修正位置に合わせながら行うネジ止め作業が困難になるばかりか、仮に載置部と母屋材とがずれた状態でドリルビスを打ち込んでしまうと、母屋材が連結されない状況も想定される。
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、既設のフックボルト等の通り芯が出ていない場合でも、支持金具や下地材を簡単に設置することができ、しかも、下地材として一般使用されている下地材を使用することが可能になり、製造コストを削減するスレート波板改修用支持金具の提供を目的とするものである。
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、スレート波板Pを使用した既存の屋根又は壁を改修するために、スレート波板Pの波P1の上端面から突出する既設のボルトAに固定するスレート波板改修用支持金具において、既設のボルトAを両側から挟む位置で波P1の上面に載置する一対の脚部1と、該脚部1の上部に設けられ既設のボルトAを挿通するスライド長孔4を有し該ボルトAに取付け固定する支持盤2とを備え、支持盤2のスライド長孔4を、波P1の長手方向に延長される長孔形状に形成し、該スライド長孔4で既設のボルトAに対する支持盤2の取付け位置を調整するように構成したことにある。
第2の手段の前記支持盤2は、前記支持盤2から上方に延長され下地材Qの長手側面を両側から保持する一対の保持片3を備え、該保持片3内で前記下地材Qを揺動自在に保持すると共に、前記保持片3から前記下地材Qの側面に止着する止着ネジ5にて、前記下地材Qを前記保持片3に角度調整自在に固定するように構成している。
第3の手段の前記脚部1は、前記スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abとを備えた複合載置面1Aが形成されている。
第4の手段は、前記支持盤2の上面で前記スライド長孔4の長手両側に沿った一対のナット支持片2Aを突設し、該ナット支持片2Aと前記支持盤2との間に、前記既設のボルトAに固定せしめるプッシュナット6を着脱自在に装着するように構成したものである。
本発明の請求項1のように、支持盤2のスライド長孔4を、波P1の長手方向に延長される長孔形状に形成し、該スライド長孔4で既設のボルトAに対する支持盤2の取付け位置を調整するように構成したことにより、既存のスレート波板Pから突出したボルトAの通り芯が正確でない場合でも、支持盤2の位置を波P1の長手方向に調整して下地材Qを正確に固定することが可能になった。
請求項2のように、支持盤2から上方に延長された一対の保持片3内で下地材Qを保持する構造により、常に保持片3と下地材Qとの位置関係が担保された状態で正確に下地材Qを配置することが可能になる。また、保持片3内で下地材Qを揺動して角度調整できるので、波P1の長手方向を横切る方向に傾斜した既設のボルトAに支持盤2が固定され、これに伴って保持片3が傾いている場合でも、下地材Qを所定の位置に設置することができる。
しかも、保持片3から下地材Qの側面に止着する止着ネジ5にて下地材Qを固定する構成により、保持片3と下地材Qの位置を常に確認しながら作業ができるので、固定作業が容易になる。また、この保持片3で保持する下地材Qとして、リップ溝形鋼の他、角パイプや木材等の一般に使用されている各種の下地材を使用することができるので、従来のように特殊な構造材の金属下地材を使用する必要がなくなった。この結果、施工コストを大幅に削減することができる。
更に、この保持片3による波P1の長手方向を横切る方向に沿った位置調整と、前述のごとく支持盤2による波P1の長手方向に沿った位置調整とを組み合わせることで、既設のボルトAが、波P1の長手方向や、長手方向を横切る方向のいずれに向けて傾斜している場合でも、既設のボルトAに対応した位置調整が簡単にできる構成になっている。
請求項3のごとく、脚部1は、スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abとを組み合せた複合載置面1Aが形成されているので、本発明支持金具を、大小2種類のスレート波板Pに兼用することができる。この構成により、更に施工コストの削減を図ることができる。
請求項4により、前記支持盤2の上面でスライド長孔4の長手両側に沿った一対のナット支持片2Aを突設し、該ナット支持片2Aと支持盤2との間に、既設のボルトAに固定せしめるプッシュナット6を着脱自在に装着するように構成したことで、現場で簡単にプッシュナット6を装着することが可能になった。この結果、ボルトAにプッシュナット6を固定する際に、仮にプッシュナット6に不具合が生じたとしても、現場で簡単にプッシュナット6を交換することが可能になる。
本発明支持金具の使用状態を示す分解斜視図である。
本発明支持金具の固定状態を示す要部断面である。
本発明の支持盤を波の長手方向に沿って位置調整する斜視図である。
(イ)、(ロ)は、図3の位置調整の状態を示す平面図である。
本発明の兼用載置面を大波に載置した例を示す側面図である。
本発明の兼用載置面を小波に載置した例を示す側面図である。
本発明の保持片内で金属下地材の角度を調整する例を示す側面図である。
本発明で使用するプッシュナットの他の実施例を示す斜視図である。
本発明支持金具の他の実施例を示す斜視図である。
本発明は、アスベストを含有するスレート波板Pにて形成された既存の屋根又は壁に、新規の屋根又は壁を重ねて改修する際に使用する支持金具である。すなわち、既存のスレート波板Pの波P1の上端面から突出する既設のボルトAに固定し、新規の屋根又は壁を設置するための下地材Qを連結する支持金具である。
このように、既設のボルトAと新設の下地材Qとの間に固定する本発明支持金具の主要構成は、脚部1、支持盤2、保持片3を備えた構成である(図1参照)。
脚部1は、既設のスレート波板Pの波P1の上面に載置する一対の部材である。この脚部1は、波P1の上端面から突出している既設のボルトAを両側から挟むようにして載置する(図2参照)。同図の脚部1は、波P1の両側からボルトAを挟む位置に載置している。また、この脚部1を、波P1の上部の長手方向に沿った位置で対向するように載置するように形成することも可能である(図9参照)。
いずれの脚部1にも、波P1に接する面に複合載置面1Aが形成されている(図2、図9参照)。すなわち、この複合載置面1Aは、スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと(図5参照)、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abと(図6参照)を組み合せた複合載置面1Aが形成された部位である。図示の複合載置面1Aは、波P1の上面に接する面の上位に小波P3用の載置部1Abを形成し、下位に大波P2用の載置部1Aaを形成している(図2参照)。尚、本発明で波P1の上面とは波P1の頂点近傍を指し、この頂点を挟んだ上位の傾斜面を指すものである。
支持盤2は、各脚部1の上部に設けられた略板状の部位である。この支持盤2には、既設のボルトAを挿通するスライド長孔4が形成されている(図1参照)。このスライド長孔4は、波P1の長手方向に延長して形成したもので、既設のボルトAに支持盤2を固定する際に、支持盤2の取付け位置を波P1の長手方向に沿って調整することができる(図3参照)。また、図9に示す他の実施例においても、支持盤2のスライド長孔4は、波P1の長手方向に延長される長孔形状に形成するものである。
既設のボルトAに支持盤2を固定するには、支持盤2を貫通したボルトAにナットを固定することで固定する。固定用のナットとして、通常の六角ナット(図示せず)を使用する場合は、スライド長孔4に挿通したボルトAに六角ナットをネジ止めして固定する。図示例では固定用のナットとしてプッシュナット6を使用している(図1参照)。このプッシュナット6は、通常のナットのように回転させることなくボルトAを挿通するだけでボルトAに固定できるので、固定作業が迅速になる。しかも、このプッシュナット6を支持盤2に現場で装着できるので、仮に、ボルトAとプッシュナット6との相性が悪い場合は、新たなプッシュナット6に交換して固定することが可能になる。
図示の支持盤2は、支持盤2の上面でスライド長孔4の長手両側の位置に一対のナット支持片2Aを横向きに突設している(図4(イ)、(ロ)参照)。そして、このナット支持片2Aと支持盤2との間に、プッシュナット6を着脱自在に装着するように構成し、このプッシュナット6がナット支持片2Aと支持盤2との間でスライド長孔4に沿ってスライド移動するように構成したものである。
ボルトAにプッシュナット6を固定するには、ナット支持片2Aと支持盤2との間にプッシュナット6を装着した後、既設のボルトAの先端を支持盤2のスライド長孔4の下からプッシュナット6に挿通することで簡単に固定できる。プッシュナット6は、スライド長孔4に沿ってスライド移動するので、プッシュナット6をボルトAに固定した場合、支持盤2側がスライド長孔4に沿って移動するようになる(図4(イ)、(ロ)参照)。この結果、ボルトAに対する支持盤2の取付け位置が、スライド長孔4に沿ってスライド調整自在になる。
また、このプッシュナット6を他のプッシュナット6に変更することも可能である(図8参照)。同図のプッシュナット6は、支持盤2上に固定するタイプのプッシュナット6である。すなわち、通常のプッシュナット6と基本構成は同じであるが、特に、枠体6Aを長方形状に形成して支持盤2全体に重ねるように構成すると共に、この枠体6Aにネジ孔6Bを形成し、枠体6Aを支持盤2上にネジ止めするように構成したものである。そして、ボルトAを挟着する一対の支持片6Cを、スライド長孔4に沿った帯板状に形成し、この支持片6Cの長手方向に沿って支持盤2の取付け位置をスライド調整するものである。このように、既設のボルトAに固定するナットは、市販のナットから特殊な構造のナットに至るまで任意に変更することが可能である。
保持片3は、支持盤2から上方に延長された一対の部材で、下地材Qの長手側面を両側から保持するように構成している(図1参照)。この保持片3は、波P1の長手方向に直交する方向に向いた下地材Qを保持するように設けており、この保持片3内で下地材Qを揺動自在に保持することができる(図7参照)。
そのため、波P1の長手方向を横切る方向に傾斜した既設のボルトAに支持盤2が固定され、これに伴って保持片3が傾いている場合でも、保持片3内で下地材Qを揺動して角度調整できるので、下地材Qを所定の位置に設置することができる。図7では、説明の便宜上、垂直上方を向いたボルトAに固定した保持片3に対して下地材Qが揺動するように示しているが、実際の工事では、傾斜した既設のボルトAに固定して保持片3が傾斜している場合に、この傾斜した保持片3内で下地材Qを所定の角度に調整する作業になる。
この保持片3は、支持盤2から延長形成されているので、一対の保持片3の間に下地材Qを設置すると、ボルトAに固定した支持盤2と下地材Qとの位置関係が常に一定になる(図5、図6参照)。したがって、下地材Qの配設作業を容易にすることができる。図示例では、保持片3にネジ挿通孔3Aを形成している。そして、このネジ挿通孔3Aにドリルビス等の止着ネジ5を挿通し、保持片3と下地材Qとをネジ止めするように構成している(図7参照)。
更に、一対の保持片3で保持する下地材Qとして、図1に示すリップ溝形鋼の他、角パイプや木材等の一般に使用されている下地材Qを使用することができる。このような下地材Qを使用することで、施工材料のコスト削減が可能になる。
尚、本発明支持金具は、図示例に限定されるものではなく、例えば、脚部1、支持盤2、保持片3、スライド長孔4等の各構成は任意の変更が可能であり、既存のスレート波板Pを使用した屋根や壁の補修に応じて、本発明の要旨を変更しない範囲で自由に設計変更することができる。
A ボルト
P スレート波板
P1 波
P2 大波
P3 小波
Q 下地材
1 脚部
1A 複合載置面
1Aa 載置部
1Ab 載置部
2 支持盤
2A ナット支持片
3 保持片
3A ネジ挿通孔
4 スライド長孔
5 止着ネジ
6 プッシュナット
本発明は、スレート波板を使用した既存の屋根や壁に、新規の屋根や壁を重ねて改修する際に使用するスレート波板改修用支持金具に関するものである。
既存の屋根等に使用しているスレート波板は、昭和40年代の出荷量をピークに衰退してきているが、現在、その屋根等は改修期を迎えている。ところが当時のスレート波板はアスベストを含有しており、改修には特に気を使う作業になっている。
そこで、既存のスレート波板の改修を行う工法の一つとして、間接固定工法が行われている。この工法によると、既存のスレート波板にドリルやビスで孔をあけずに改修施工が可能になるので、アスベストやその他の粉塵の発生がほとんどなく、工事中の雨漏りの心配もないという利点がある。
この間接固定工法は、既存の屋根や壁に使用されている既設のフックボルト等に支持金具を固定し、支持金具相互間に金属下地を配設し、この金属下地の上に新設の屋根等を固定する工法である。
この間接固定工法に使用する従来の支持金具として、特許文献1の屋根改修用金具が提案されている。この改修用金具は、波状スレート板(スレート波板)の波の上面に配置される載置部と、波の底部に配置される脚部と、載置部に足場板を連結するための連結片とを備えた金具である。そして、この連結片に足場板を連結することによって、間接固定工法における作業時に、足場板で既設のスレート波板の踏み抜きを防止することができるというものである。
特許文献1の改修用金具は、金具の脚部をスレート波板の波の底部に配置し、載置部を波の上面に配置する構造を採用している。このため、既存のスレート波板を改修するには、スレート波板の各サイズに対応したサイズ別の改修用金具を製造する必要があった。
すなわち、既存のスレート波板には、大波スレートと小波スレートと称する2種類のスレート板が使用されている。これらのスレート板は、それぞれ波の底部から頂上までの高さが異なるサイズに形成されたものである。そのため、特許文献1の改修用金具のように、波の底部に脚部を配置し、波の頂上に載置部を配置する構成では、大波スレートと小波スレートのそれぞれのサイズに対応した2種類の改修用金具が必要になっている。
また、既設のフックボルトを利用して支持金具を固定する工法なので、仮に既設のフックボルトが傾斜しているような状態でも、このフックボルトに支持金具を固定することになる。そのため、このフックボルトの傾斜に伴って支持金具の取付け位置も傾斜してしまうと、支持金具相互間に配設する金属下地を正確な位置に配設できなくなる虞が生じる。
そこで、特許文献1の改修用金具では、既設のフックボルトを挿通するボルト挿通孔を長孔状に形成することで、既存のフックボルトが傾いていても改修用金具の取付け位置を正常な位置に調整できるように形成している。
ところが、このボルト挿通孔は、波の長手方向を横切る方向に延びた長孔が形成されているので、改修用金具の位置調整は、波の長手方向に対して横向きの方向に限られていた。そのため、特許文献1に記載のボルト挿通孔は、改修用金具の取付け位置を波の長手方向に沿って調整することはできない構成になっている。
間接固定工法では、支持金具相互間に金属下地を配設するので、横に並んだ既設のフックボルトの通り芯が出ていない場合は、支持金具の取付け位置を波の長手方向に沿って位置調整する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のボルト挿通孔のように、波の長手方向に沿った位置調整ができない構成では、フックボルトの通り芯が出ていない場合に、金属下地を正確に配置することはできないことになる。
そのため、特許文献1の改修用金具では、金属下地として使用する母屋材を略ハット型の特殊な構造材で形成し、この母屋材を改修金具の載置部の上に載せてスクリュービスなどで強制的に連結する構成を採用している。この構成によると、母屋材を載置部の上に載せて所定の位置に強制的に連結することができるので、横に並んだフックボルトの通り芯が出ていない場合でも、母屋材の連結位置を載置部上で修正することによって、正確な位置に配置できるというものである。
ところが、このような改修用金具の構成では、特殊な構造材で形成された母屋材(金属下地材)が必要になるので、この母屋材の製造コストが嵩む構造になっていた。しかも、母屋材の位置を載置部上で修正しながらスクリュービスなどで連結する作業工程において課題が残されていた。
それは、母屋材を載置部の上に載せると、この載置部が母屋材の下に重なるため、載置部が見難くなる状況にある。この状況では、母屋材を修正位置に合わせながら行うネジ止め作業が困難になるばかりか、仮に載置部と母屋材とがずれた状態でドリルビスを打ち込んでしまうと、母屋材が連結されない状況も想定される。
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、既設のフックボルト等の通り芯が出ていない場合でも、支持金具や下地材を簡単に設置することができ、しかも、下地材として一般使用されている下地材を使用することが可能になり、製造コストを削減するスレート波板改修用支持金具の提供を目的とするものである。
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、スレート波板Pを使用した既存の屋根又は壁を改修するために、スレート波板Pの波P1の上端面から突出する既設のボルトAに固定するスレート波板改修用支持金具において、既設のボルトAを両側から挟む位置で波P1の上面に載置する一対の脚部1と、該脚部1の上部に設けられ既設のボルトAを挿通する挿通孔4を有し該ボルトAに取付け固定する支持盤2とを備え、前記脚部1は、スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abとを備えた複合載置面1Aが形成されたことにある。
第2の手段の前記支持盤2は、前記支持盤2から上方に延長され下地材Qの長手側面を両側から保持する一対の保持片3を備え、該保持片3内で前記下地材Qを揺動自在に保持すると共に、前記保持片3から前記下地材Qの側面に止着する止着ネジ5にて、前記下地材Qを前記保持片3に角度調整自在に固定するように構成している。
第3の手段は、前記支持盤2の上面で前記挿通孔4の長手両側に沿った一対のナット支持片2Aを突設し、該ナット支持片2Aと前記支持盤2との間に、前記既設のボルトAに固定せしめるプッシュナット6を着脱自在に装着するように構成したものである。
本発明の請求項1のように、スレート波板Pを使用した既存の屋根又は壁を改修するために、スレート波板Pの波P1の上端面から突出する既設のボルトAに固定するスレート波板改修用支持金具において、既設のボルトAを両側から挟む位置で波P1の上面に載置する一対の脚部1と、該脚部1の上部に設けられ既設のボルトAを挿通する挿通孔4を有し該ボルトAに取付け固定する支持盤2とを備えたことにより、既存のスレート波板Pから突出したボルトAの通り芯が正確でない場合でも、支持盤2の位置を波P1の長手方向に調整して下地材Qを正確に固定することが可能になった。更に、脚部1は、スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abとを組み合せた複合載置面1Aが形成されているので、本発明支持金具を、大小2種類のスレート波板Pに兼用することができる。この構成により、更に施工コストの削減を図ることができる。
請求項2のように、支持盤2から上方に延長された一対の保持片3内で下地材Qを保持する構造により、常に保持片3と下地材Qとの位置関係が担保された状態で正確に下地材Qを配置することが可能になる。また、保持片3内で下地材Qを揺動して角度調整できるので、波P1の長手方向を横切る方向に傾斜した既設のボルトAに支持盤2が固定され、これに伴って保持片3が傾いている場合でも、下地材Qを所定の位置に設置することができる。
しかも、保持片3から下地材Qの側面に止着する止着ネジ5にて下地材Qを固定する構成により、保持片3と下地材Qの位置を常に確認しながら作業ができるので、固定作業が容易になる。また、この保持片3で保持する下地材Qとして、リップ溝形鋼の他、角パイプや木材等の一般に使用されている各種の下地材を使用することができるので、従来のように特殊な構造材の金属下地材を使用する必要がなくなった。この結果、施工コストを大幅に削減することができる。
更に、この保持片3による波P1の長手方向を横切る方向に沿った位置調整と、前述のごとく支持盤2による波P1の長手方向に沿った位置調整とを組み合わせることで、既設のボルトAが、波P1の長手方向や、長手方向を横切る方向のいずれに向けて傾斜している場合でも、既設のボルトAに対応した位置調整が簡単にできる構成になっている。
請求項3により、前記支持盤2の上面で挿通孔4の長手両側に沿った一対のナット支持片2Aを突設し、該ナット支持片2Aと支持盤2との間に、既設のボルトAに固定せしめるプッシュナット6を着脱自在に装着するように構成したことで、現場で簡単にプッシュナット6を装着することが可能になった。この結果、ボルトAにプッシュナット6を固定する際に、仮にプッシュナット6に不具合が生じたとしても、現場で簡単にプッシュナット6を交換することが可能になる。
本発明支持金具の使用状態を示す分解斜視図である。
本発明支持金具の固定状態を示す要部断面である。
本発明の支持盤を波の長手方向に沿って位置調整する斜視図である。
(イ)、(ロ)は、図3の位置調整の状態を示す平面図である。
本発明の兼用載置面を大波に載置した例を示す側面図である。
本発明の兼用載置面を小波に載置した例を示す側面図である。
本発明の保持片内で金属下地材の角度を調整する例を示す側面図である。
本発明で使用するプッシュナットの他の実施例を示す斜視図である。
本発明支持金具の他の実施例を示す斜視図である。
本発明は、アスベストを含有するスレート波板Pにて形成された既存の屋根又は壁に、新規の屋根又は壁を重ねて改修する際に使用する支持金具である。すなわち、既存のスレート波板Pの波P1の上端面から突出する既設のボルトAに固定し、新規の屋根又は壁を設置するための下地材Qを連結する支持金具である。
このように、既設のボルトAと新設の下地材Qとの間に固定する本発明支持金具の主要構成は、脚部1、支持盤2、保持片3を備えた構成である(図1参照)。
脚部1は、既設のスレート波板Pの波P1の上面に載置する一対の部材である。この脚部1は、波P1の上端面から突出している既設のボルトAを両側から挟むようにして載置する(図2参照)。同図の脚部1は、波P1の両側からボルトAを挟む位置に載置している。また、この脚部1を、波P1の上部の長手方向に沿った位置で対向するように載置するように形成することも可能である(図9参照)。
いずれの脚部1にも、波P1に接する面に複合載置面1Aが形成されている(図2、図9参照)。すなわち、この複合載置面1Aは、スレート波板Pの大波P2の上面の曲面に沿って当接する載置部1Aaと(図5参照)、小波P3の上面の曲面に沿って当接する載置部1Abと(図6参照)を組み合せた複合載置面1Aが形成された部位である。図示の複合載置面1Aは、波P1の上面に接する面の上位に小波P3用の載置部1Abを形成し、下位に大波P2用の載置部1Aaを形成している(図2参照)。尚、本発明で波P1の上面とは波P1の頂点近傍を指し、この頂点を挟んだ上位の傾斜面を指すものである。
支持盤2は、各脚部1の上部に設けられた略板状の部位である。この支持盤2には、既設のボルトAを挿通する挿通孔4が形成されている(図1参照)。この挿通孔4は、波P1の長手方向に延長して形成したもので、既設のボルトAに支持盤2を固定する際に、支持盤2の取付け位置を波P1の長手方向に沿って調整することができる(図3参照)。また、図9に示す他の実施例においても、支持盤2の挿通孔4は、波P1の長手方向に延長される長孔形状に形成するものである。
既設のボルトAに支持盤2を固定するには、支持盤2を貫通したボルトAにナットを固定することで固定する。固定用のナットとして、通常の六角ナット(図示せず)を使用する場合は、挿通孔4に挿通したボルトAに六角ナットをネジ止めして固定する。図示例では固定用のナットとしてプッシュナット6を使用している(図1参照)。このプッシュナット6は、通常のナットのように回転させることなくボルトAを挿通するだけでボルトAに固定できるので、固定作業が迅速になる。しかも、このプッシュナット6を支持盤2に現場で装着できるので、仮に、ボルトAとプッシュナット6との相性が悪い場合は、新たなプッシュナット6に交換して固定することが可能になる。
図示の支持盤2は、支持盤2の上面で挿通孔4の長手両側の位置に一対のナット支持片2Aを横向きに突設している(図4(イ)、(ロ)参照)。そして、このナット支持片2Aと支持盤2との間に、プッシュナット6を着脱自在に装着するように構成し、このプッシュナット6がナット支持片2Aと支持盤2との間で挿通孔4に沿ってスライド移動するように構成したものである。
ボルトAにプッシュナット6を固定するには、ナット支持片2Aと支持盤2との間にプッシュナット6を装着した後、既設のボルトAの先端を支持盤2の挿通孔4の下からプッシュナット6に挿通することで簡単に固定できる。プッシュナット6は、挿通孔4に沿ってスライド移動するので、プッシュナット6をボルトAに固定した場合、支持盤2側が挿通孔4に沿って移動するようになる(図4(イ)、(ロ)参照)。この結果、ボルトAに対する支持盤2の取付け位置が、挿通孔4に沿ってスライド調整自在になる。
また、このプッシュナット6を他のプッシュナット6に変更することも可能である(図8参照)。同図のプッシュナット6は、支持盤2上に固定するタイプのプッシュナット6である。すなわち、通常のプッシュナット6と基本構成は同じであるが、特に、枠体6Aを長方形状に形成して支持盤2全体に重ねるように構成すると共に、この枠体6Aにネジ孔6Bを形成し、枠体6Aを支持盤2上にネジ止めするように構成したものである。そして、ボルトAを挟着する一対の支持片6Cを、挿通孔4に沿った帯板状に形成し、この支持片6Cの長手方向に沿って支持盤2の取付け位置をスライド調整するものである。このように、既設のボルトAに固定するナットは、市販のナットから特殊な構造のナットに至るまで任意に変更することが可能である。
保持片3は、支持盤2から上方に延長された一対の部材で、下地材Qの長手側面を両側から保持するように構成している(図1参照)。この保持片3は、波P1の長手方向に直交する方向に向いた下地材Qを保持するように設けており、この保持片3内で下地材Qを揺動自在に保持することができる(図7参照)。
そのため、波P1の長手方向を横切る方向に傾斜した既設のボルトAに支持盤2が固定され、これに伴って保持片3が傾いている場合でも、保持片3内で下地材Qを揺動して角度調整できるので、下地材Qを所定の位置に設置することができる。図7では、説明の便宜上、垂直上方を向いたボルトAに固定した保持片3に対して下地材Qが揺動するように示しているが、実際の工事では、傾斜した既設のボルトAに固定して保持片3が傾斜している場合に、この傾斜した保持片3内で下地材Qを所定の角度に調整する作業になる。
この保持片3は、支持盤2から延長形成されているので、一対の保持片3の間に下地材Qを設置すると、ボルトAに固定した支持盤2と下地材Qとの位置関係が常に一定になる(図5、図6参照)。したがって、下地材Qの配設作業を容易にすることができる。図示例では、保持片3にネジ挿通孔3Aを形成している。そして、このネジ挿通孔3Aにドリルビス等の止着ネジ5を挿通し、保持片3と下地材Qとをネジ止めするように構成している(図7参照)。
更に、一対の保持片3で保持する下地材Qとして、図1に示すリップ溝形鋼の他、角パイプや木材等の一般に使用されている下地材Qを使用することができる。このような下地材Qを使用することで、施工材料のコスト削減が可能になる。
尚、本発明支持金具は、図示例に限定されるものではなく、例えば、脚部1、支持盤2、保持片3、挿通孔4等の各構成は任意の変更が可能であり、既存のスレート波板Pを使用した屋根や壁の補修に応じて、本発明の要旨を変更しない範囲で自由に設計変更することができる。
A ボルト
P スレート波板
P1 波
P2 大波
P3 小波
Q 下地材
1 脚部
1A 複合載置面
1Aa 載置部
1Ab 載置部
2 支持盤
2A ナット支持片
3 保持片
3A ネジ挿通孔
4 挿通孔
5 止着ネジ
6 プッシュナット