JP2019157123A - 炭素質材料のガス化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な触媒を用いて、化学平衡的にメタン生成が有利となる700℃以下の低温域で水蒸気および水素をガス化剤として低品位炭のような炭素質材料を高い反応速度でガス化することにより、高効率で経済的な低品位炭のガス化方法を提供する。【解決手段】無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、炭素質材料にカルシウムおよびナトリウムを担持する担持工程と、カルシウムおよびナトリウムを担持した炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含む炭素質材料のガス化方法。【選択図】なし
Description
本発明は、炭素質材料、特に褐炭等の比較的石炭化度の低い低品位炭のガス化方法に関する。
石炭の中でも石炭化度の低い褐炭、亜炭は水分量が多く運搬が難しく、乾燥すると発火する恐れもあることから、燃料としての利用が難しい場合が多く、活用されていないものが多くある。特許文献1には、このような低品位炭を加熱して脱水するとともに、重質油を吸着含有させて自然発火性の低い固形燃料とする方法が開示されている。このような改質された固形燃料とすることで、石炭化度の低い低品位炭を利用しやすくすることは可能であるが、石炭は燃焼利用した場合の単位発熱量当たりの二酸化炭素の排出量が多い問題もある。
石炭を部分燃焼等の方法によりガス化して、水素と一酸化炭素を主成分とするガスを得、これを触媒上でメタン化反応によりメタンを得るプロセスも知られている(非特許文献1,2)。この方法では、石炭はメタンと二酸化炭素に変換されるので、二酸化炭素を分離して地中に隔離することにより、化石燃料の中で最も単位発熱量当たりの二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスと同様の環境負荷の低い燃料として使用することが可能となる。
しかし、部分燃焼法による石炭のガス化には通常1000℃以上の高温が必要であり、設備コストが高価になる。また、高温でガス化した場合には、生成するガスは一酸化炭素と水素が主となるため、メタン化反応によりメタンを生成する際に、熱量の20%程度が発熱により失われる(図1)。
炭素(石炭)の水蒸気によるガス化反応(反応式1)は吸熱反応であるのに対して、メタン化反応(反応式2)は発熱反応である。炭素を水蒸気によりガス化して、水素、一酸化炭素および二酸化炭素を主成分とするガスを得て、これをメタン化反応によりメタンとした場合、総括反応としてはほぼ熱的に中性である。ガス化とメタン化を同時に行うことができれば、メタン化による発熱で、ガス化の吸熱を賄うことができて効率よくガス化することができる。しかし、一般的にガス化は有効な反応速度を得るのに高温を要するのに対して、メタン化は平衡的に低温でなければ進行しないため、ガス化とメタン化を併発させて断熱的に反応させることは極めて難しい。
C+H2O(g)→CO+H2 ΔH=+131.3kJ/mol(吸熱)(1)
CO+3H2→CH4+H2O(g) ΔH=−206.2kJ/mol(発熱)(2)
CO+3H2→CH4+H2O(g) ΔH=−206.2kJ/mol(発熱)(2)
触媒を用いることにより、水蒸気をガス化剤として700℃程度の比較的低い温度で石炭をガス化できることが知られている(非特許文献3)。Kなどのアルカリ金属、Caなどのアルカリ土類金属、Fe,Co,Niなどの遷移金属がガス化に有効であることが知られている。
特許文献2には、流動石油コークスの水蒸気を用いた触媒ガス化において、反応温度を593℃〜816℃の範囲に変えて、生成ガスのメタン濃度を比較しており、593℃では38.3%であったメタン濃度は、704℃では27.5%に、816℃では14.1%まで低下することを示している。触媒として、K2CO3,Li2CO3,CaCO3の使用が開示されている。
特許文献3には、約30%の揮発分を含む粘結性瀝青炭の水蒸気ガス化に際して、前記瀝青炭をNa,KもしくはLiの水酸化物と、Ca,MgもしくはBaの水酸化物もしくは炭酸塩を含む水溶液と混合して、150〜375℃で水熱処理してからガス化に供することで、ガス化温度675℃において原料石炭の825℃でのガス化と同等のガス化速度が得られたことが示されている。しかし、具体的なガス化性能(反応時間とガス化率)については記載がない。
特許文献4では、704℃(1300°F)における瀝青炭の水蒸気ガス化における、K、NaおよびCaの効果を比較している。それによれば、K2CO3を石炭に対し10および15重量%用いた場合、時間当たりのガス化率はそれぞれ72,100%、Na2CO3を石炭に対し5重量%用いた場合は21%、Ca(OH)2を2.9重量%(CaO換算)用いた場合は41%であったのに対し、Na2CO3を石炭に対し5重量%とCa(OH)2を8重量%(CaO換算)併せて用いた場合は、47〜89%となって、NaあるいはCaの単独でのガス化促進効果は小さいが、NaとCaを併用することによりKに近いガス化効果が得られることを示している。Kと比較して、NaやCaは一般に安価であるため、触媒コストの低減の観点では意義がある。
非特許文献3には、水酸化カルシウム触媒を用いた各種石炭(無水無灰基準の炭素含有率66.5%〜83.6%)の水蒸気ガス化を600〜700℃で行った結果が示されている。それによれば、700℃における水蒸気ガス化では、炭素含有率75%以下の石炭ではCa触媒の効果は大きく、1時間で95%以上のガス化率が得られたのに対し、炭素含有率が75%を超えるものでは、1時間後のガス化率は60%程度にとどまっている。
またガス化温度を650℃ないし600℃に低下するとガス化率が大きく低下することも示されている。
またガス化温度を650℃ないし600℃に低下するとガス化率が大きく低下することも示されている。
非特許文献4には、鉄、コバルト、ニッケルを触媒とする650℃における水蒸気ガス化の結果が示されているが、コバルトおよびニッケルは、1時間で80%を超えるガス化率を示したのに対し、鉄ではこれらより低い70%にとどまっている。しかし、コバルトやニッケルは鉄よりもはるかに高価であるため、実用は難しい。
非特許文献5には、アルカリ金属(Na,K)、アルカリ土類金属(Mg,Ca)、Alおよび遷移金属(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Mo)を触媒とする炭素質材料の水蒸気および水素−水蒸気条件でのガス化を検討している。2種あるいは3種の成分を用いた2元系、3元系の触媒の効果についても検討されており、Na+Ca,Ca+Fe,Na+FeおよびNa+Ca+Feが水蒸気、二酸化炭素またはそれらの混合ガスによるガス化に有効であること、Fe+CaおよびFe+Ca+Naが水素によるガス化に有効であることを明らかにしている。ただし、検討された触媒の担持量は各成分とも0.25%〜1%程度と低く、またガス化温度は800℃と高いことから、これらがメタン生成に有利となる700℃以下、特に550〜650℃程度の低温域で実用的なガス化速度が得られるかどうかは不明である。
550〜650℃程度の低温域でガス化できたとしても、反応圧力にもよるがメタン化を完全に進行させることは困難であり、かなりの水素が残存することは化学平衡的に避けることができない。従って、従来のプロセス(図1)では、ガス化後のガスを必要に応じて温度を250〜450℃程度に冷却したのち、NiやRu、Rhなどのメタン化反応に活性を有する触媒を充填した反応器に通じて、メタン化反応を化学平衡上の制約に近いレベルにまで進行させて、水素、一酸化炭素および二酸化炭素の濃度を低減するとともに、メタンの濃度を高める。その上で、公知の二酸化炭素除去技術、例えばアミン吸収法や選択透過膜を用いる膜分離法などを用いて二酸化炭素を分離することによりメタン主成分ガスを得る。
この方法であれば、メタン化反応の操作条件と二酸化炭素の分離方法を適切に選択すれば、メタン純度の高いガスが容易に得られる利点がある一方で、550〜650℃程度で行われるガス化反応では大きな吸熱が生じる一方で、250〜450℃程度で行われるメタン化反応では大きな発熱を生じるため、ガス化反応の吸熱をメタン化反応の発熱で補えない部分が生じ、ガス化のエネルギー効率が低くとどまらざるを得ない。
特許文献5には、スチームおよび炭素質物質をガス化帯域において触媒の存在下に且つ水素および一酸化炭素を含有する再循環ガスの存在下に高められた温度および圧力で反応させ、前記ガス化帯域からメタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および未反応スチームを含有するガス状流れを引き出し、前記ガス状流れを処理して二酸化炭素およびスチームを除去し、前記処理済ガスからメタンを含有する生成物ガスを回収し、これによって水素および一酸化炭素を含有するガスを生成し、そして前記の水素および一酸化炭素を含有するガスを再循環ガスとして前記ガス化帯域に戻す、ことを含むメタン含有ガスの製造法が開示されている。しかし、特許文献5には、スチームに加えて、水素や一酸化炭素が共存する条件で、触媒ガス化に有効な触媒成分と具体的な反応結果については記載がない。
一方、非特許文献5には、各種の触媒成分を用いた炭素質材料(活性炭)の触媒ガス化を水蒸気のみと水蒸気−水素の混合ガスをガス化剤とした場合で比較しているが、水蒸気のみの場合と比較して、水蒸気−水素の混合ガスを用いた場合、CoおよびNiを除いて、ガス化速度が数分の1程度に低下することを示している。すなわち、水蒸気−水素の混合ガスをガス化剤として、550〜650℃程度で実用的なガス化速度が得られる触媒組成については確立されていないのが実情である。
Perry M, Eliason D. "C02 recovery and sequestration at Dakota Gasification Company Inc.", Technical report, Gasification Technology Conference, 2004.
Kopyscinskiほか、フュエル(Fuel)、第89巻、2010年,p.1763−1783
Yasuo OhtsukaおよびKenji Asami、エネルギー アンド フュエルズ(Energy and Fuels),第9巻,1995年,p.1038−1042
Yasuo Ohtsukaほか、エネルギー アンド フュエルズ(Energy and Fuels),第1巻,1987年,p.32−36
Tetsuya Hagaほか、アプライド キャタリシス(Applied Catalysis),第67巻,1991年,p.189−202
本発明の課題は、安価な触媒を用いて、化学平衡的にメタン生成が有利となる700℃以下の低温域において、水蒸気および水素を含むガス化剤を用いて低品位炭のような炭素質材料を高い反応速度でガス化することにより、高効率で経済的な低品位炭のガス化方法を提供することにある。
本発明は、下記に示すとおりの炭素質材料のガス化方法を提供するものである。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法の第一の特徴構成は、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウムおよびナトリウムを担持する担持工程と、カルシウムおよびナトリウムを担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含む点にある。
また、本発明に係る炭素質材料のガス化方法の第二の特徴構成は、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液、ナトリウムの水溶性塩を含む水溶液、および鉄の水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウム、ナトリウム、および鉄を担持する担持工程と、カルシウム、ナトリウム、および鉄を担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含む点にある。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法において、炭素質材料の炭素含有率が上記の範囲であると、ガス化速度および生成ガスの後処理の観点で有利である。また、ガス化温度が上記の範囲であると、ガス化速度および生成ガスの組成の観点で有利である。さらに、本発明に係る炭素質材料のガス化方法においては、比較的安価なカルシウムおよびナトリウムを用いるため、従来のガス化方法に比べて安価に実行できる点で有利である。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法において、カルシウムおよびナトリウムに加えて鉄を含む触媒を用いると、COシフト反応に対する鉄の活性が高いことから、生成ガス中のCO濃度を低減できる点で有利である。
本発明の第一の特徴構成に係る炭素質材料のガス化方法の更なる特徴構成は、前記担持工程は、カルシウムの水溶性塩およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、前記炭素質材料を含浸する含浸ステップを有する点にある。
本発明の第二の特徴構成に係る炭素質材料のガス化方法の更なる特徴構成は、前記担持工程は、カルシウムの水溶性塩、ナトリウムの水溶性塩、および鉄の水溶性塩を含む水溶液に、前記炭素質材料を含浸する含浸ステップを有する点にある。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法において、含浸ステップを有する担持工程を用いると、担持量の制御が容易である点で有利である。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法の更なる特徴構成は、カルシウムおよびナトリウムの少なくとも1つが、イオン交換法により担持される点にある。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法において、カルシウムおよびナトリウムの少なくとも1つがイオン交換法により担持されると、比較的少ない金属成分量で高い触媒効果が得られる点で有利である。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法の更なる特徴構成は、前記ガス化剤が、前記生成ガスから分離される水素を含む点にある。
本発明に係る炭素質材料において、生成ガスから分離される水素をガス化剤として用いるように構成すると、物質収支の観点で効率が高くなるため有利である。
本発明に係る炭素質材料のガス化方法の更なる特徴構成は、前記生成ガスに含まれる一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に変換するCOシフト反応工程と、前記COシフト反応工程を経た前記生成ガスから、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去工程と、前記二酸化炭素除去工程を経た前記生成ガスから、水素を分離する水素分離工程と、をさらに含み、前記ガス化剤が、前記水素分離工程によって前記生成ガスから分離される水素を含む点にある。
本発明に係る炭素質材料において、製品ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を低減することができ、また不純物が減少することでメタンと水素の分離が容易になる点で有利である。
本発明の炭素質材料のガス化方法は、低品位炭のような安価な炭素質材料を700℃以下の低温域で速やかにガス化するので、高い効率で経済的にメタン濃度の高い代替天然ガスを得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
〔反応条件〕
まず、本発明の炭素質材料のガス化方法の反応条件について説明する。本発明の炭素質材料のガス化方法は、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウムおよびナトリウムを担持する担持工程と、カルシウムおよびナトリウムを担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含むことを特徴とする。
まず、本発明の炭素質材料のガス化方法の反応条件について説明する。本発明の炭素質材料のガス化方法は、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウムおよびナトリウムを担持する担持工程と、カルシウムおよびナトリウムを担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含むことを特徴とする。
また、本発明の炭素質材料のガス化方法は、一態様において、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料にカルシウムの水溶性塩およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液を含浸する含浸工程(担持工程の例)と、前記水溶液に含浸した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含むことを特徴とする。
また、本発明の炭素質材料のガス化方法は、一態様において、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液を含む水溶液に浸漬した後にろ過により液を分離したのち乾燥する吸着工程(担持工程の例)と、カルシウムおよびナトリウムを担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含むことを特徴とする。なお、吸着工程において、カルシウムの水溶性塩およびナトリウムの水溶性塩を含む混合水溶液に炭素材料を浸漬した後にろ過および乾燥を行ってもよいし、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液について、別々に、浸漬、ろ過、および乾燥を行ってもよい。
炭素質材料としては、無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む常温で固形の炭素質材料であればよいが、通常褐炭ないし亜炭である。このほか木材等のバイオマスを不活性ガス雰囲気下で250〜400℃程度で熱処理(半炭化処理)して、前記の炭素含有量範囲としたものも同様に用いることができる。
炭素含有量がこれよりも高い炭素質材料では、ガス化速度が遅くなって、実用的な速度でガス化することが困難になる。逆に、炭素含有量がこれよりも低い炭素質材料、例えば半炭化処理をしない木材などでは、ガス化速度は速いものの、ガス化に際して多量のタールが発生するなどして生成ガスの後処理が必要になる。
ガス化温度は、550〜700℃とする。550℃より低い温度では、高活性な触媒を用いても実用的な速度でガス化することが困難になる。一方、700℃よりも高い温度では、高圧下でガス化した場合でも平衡的にメタンが生成しなくなり、メタン化による発熱でガス化反応の吸熱を補うことができなくなって、外部から加熱しなければガス化を進行できなくなる。また、700℃よりも高い温度であれば、本発明に開示される触媒ではなく、従来から知られているカリウム等の触媒でもガス化反応自体は進行させることができる。なお、ガス化温度の下限は好ましくは600℃であり、より好ましくは650℃である。
本発明の炭素質材料のガス化方法では、ガス化を促進する触媒としてカルシウムおよびナトリウムを用いる。これらは、炭素質材料に含浸担持されて、ガス化触媒として作用する。具体的には、硝酸塩、炭酸塩などの水溶性化合物を用いてカルシウムおよびナトリウムを含む混合水溶液を調製し、これに炭素質材料を浸漬し、乾燥して触媒を担持した炭素質材料を得る。これを所定の温度で、水蒸気および水素を含むガス化剤に接触させることにより、水素、一酸化炭素、二酸化炭素およびメタンを含むガスを得る。
炭素質材料に対する触媒成分の担持量は、公知の方法によって制御できるが、たとえば、次に例示する方法で制御できる。第一に例示される平衡吸着法を用いる場合には、担持させたい成分を含む水溶液を調製し、これに炭素質材料を浸漬したのち、ろ過により液を分離したのち乾燥する方法(イオン交換法)によって、触媒を担持した炭素質材料が得られる。この場合、担持量は炭素質材料を浸漬する水溶液の濃度および水溶液を浸漬する時間に依存する。そのため、含浸工程においてこれらの条件を制御することによって、任意の量の触媒を担持させた炭素質材料が得られる。なお、本発明において、カルシウムおよびナトリウムは、同時に担持させてもよく、順次担持させてもよい。同時に担持させる場合は、上記の水溶液としてカルシウム塩およびナトリウム塩を含む混合水溶液を用いる。順次担持させる場合は、上記の水溶液としてカルシウム塩またはナトリウム塩の一方の塩を含む水溶液を用いて当該一方の金属を担持させた後、他方の塩を含む水溶液を用いて当該他方の金属を担持させる。同様に、3種類以上の成分を担持させる場合、すべての成分を同時に担持させてもよく、一部または全ての成分を順次担持させてもよい。
第二に例示される蒸発乾固法を用いる場合には、カルシウム塩およびナトリウム塩を含む混合水溶液を調製し、これに炭素質材料を浸漬したのち、水分を蒸発によって除く方法によって、触媒を担持した炭素質材料が得られる。この場合、担持量は水溶液中に含まれる金属(カルシウムおよびナトリウム)の量で決まる。
蒸発乾固法では、用いた金属のすべてが担持されるので、担持量の制御が容易である一方、担持された金属の分散度は一般に平衡吸着法のほうが高くなるので、蒸発乾固法により触媒成分を担持させた場合と同等の担持量であっても、より高い触媒効果が得られやすい。
ここで、炭素質材料に対する触媒成分の担持量が、少なすぎるとガス化促進の効果がなく、多すぎると費用に見合う効果が得られないため、カルシウムおよびナトリウムとも、炭素質材料(乾燥質量)に対する各金属成分の質量比で1.5%〜10%とするのが好ましく、1.5%〜6%とするのがより好ましく、2%〜6%とするのがさらに好ましく、2〜5%とするのが特に好ましい。また、上記のカルシウムおよびナトリウムに加え、さらに鉄を担持する場合は、炭素質材料(乾燥質量)に対する各金属成分の質量比で1.5%〜6%とするのが好ましく、2%〜6%とするのがさらに好ましく、2〜5%とするのが特に好ましい。
なお、平衡吸着法(イオン交換法)により炭素質材料に触媒成分を担持させる場合、前述の通り蒸発乾固法により担持させる場合より高い触媒効果が得られやすいため、好ましい担持量の下限はより小さな値となる。具体的には、平衡吸着法(イオン交換法)による場合は、カルシウムおよびナトリウムとも、炭素質材料(乾燥質量)に対する各金属成分の質量比で0.1〜10%とするのが好ましく、0.2〜10%とするのがより好ましい。
ガス化反応の圧力は、特に制限はないが、高圧ほど平衡的にメタン生成が有利となる。
従って、メタン生成を目的とする場合は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上とする。
従って、メタン生成を目的とする場合は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは1MPa以上とする。
ガス化剤としての水蒸気の量は、少なすぎるとガス化反応が十分な速度で進行しない一方で、多すぎるとメタンの水蒸気改質反応が平衡的に有利となるためにガス化後のガス中のメタン濃度が低下してメタン収率が低下すること、加えて水蒸気を生成するためのエネルギーを余分に必要とすることからガス化のエネルギー効率が低下する問題がある。従って、一般的には石炭中の炭素原子の物質量Cに対する水蒸気(水)Sのモル比(S/C)として1〜10であることが好ましく、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
本発明の炭素質材料のガス化方法は、一態様として、前記水溶液がさらに鉄の水溶性塩を含むことが好ましい。鉄はCOシフト反応に対して活性が高いので、生成ガス中のCO濃度を低減するのに有効となる。
本発明の炭素質材料のガス化方法は、一態様として、前記ガス化剤が、前記生成ガスから分離される水素を含むことが好ましい。ここで、ガス化剤に含まれる水素は、ガス化後のガスから分離されたものをすべて回収利用してよい。しかし、水素の循環利用量が多くなると、分離後のガスをガス化反応の入口に戻すためのリサイクルコンプレッサーの動力が大きくなるなどの問題が生じる。この場合、水素の一部は循環利用に供しないこともできる。
本発明の炭素質材料のガス化方法は、一態様として、前記生成ガスに含まれる一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に変換するCOシフト反応工程と、前記COシフト反応工程を経た前記生成ガスから、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去工程と、前記二酸化炭素除去工程を経た前記生成ガスから、水素を分離する水素分離工程と、をさらに含み、前記ガス化剤が、前記水素分離工程によって前記生成ガスから分離される水素を含むことが好ましい。
水素の分離は、次のように行うことができる。まず、ガス化反応で得られた水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンおよび水蒸気を含むガスから、公知のアミン吸収法などの二酸化炭素分離技術を用いて二酸化炭素を除去し、ついで公知の水素分離技術たとえば水素選択透過膜を用いる膜分離法を用いて水素を分離し、メタンと少量の一酸化炭素を含む製品ガスを得る。
この際に、ガス化後のガスをCOシフト触媒に通じ、一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に変換し、次いで二酸化炭素を分離して、水素およびメタンの混合ガスを得て、この混合ガスからさらに水素を分離回収してガス化剤として利用するように構成すると、製品ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を低減することができ、また不純物が減少することでメタンと水素の分離が容易になる。なお、COシフト反応(反応式3)も発熱反応ではあるが、メタン化反応と比較するとCOの1molあたりの発熱量はかなり小さく、ガス化効率への影響は小さい。
CO+H2O(g)→CO2+H2 ΔH=−41.2kJ/mol(発熱) (3)
〔装置構成〕
次に、本発明の炭素質材料のガス化方法の好適な態様に係る装置構成の例について、図面を参照して説明する。本発明の炭素質材料のガス化方法は、触媒ガス化反応器1と、二酸化炭素分離器3と、水素分離器4と、を含むガス化反応システムにより実現される(図2)。
次に、本発明の炭素質材料のガス化方法の好適な態様に係る装置構成の例について、図面を参照して説明する。本発明の炭素質材料のガス化方法は、触媒ガス化反応器1と、二酸化炭素分離器3と、水素分離器4と、を含むガス化反応システムにより実現される(図2)。
触媒ガス化反応器1には、あらかじめカルシウムの水溶性塩、ナトリウム塩の水溶性塩、および、鉄の水溶性塩、を含む水溶液を含浸させ、その後乾燥させた炭素質材料、すなわち触媒を担持した炭素質材料が充填されている。触媒ガス化反応器1を550〜700℃に加熱した後、水蒸気および水素を含むガス化剤を触媒ガス化反応器1に供給することで、触媒を担持した炭素質材料とガス化剤とが接触するガス化工程が実現され、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、および、水蒸気、を含む生成ガスMx1が得られる。
次に、生成ガスMx1は、二酸化炭素分離器3に導入される。二酸化炭素分離器3において、アミン吸収法などの公知の二酸化炭素分離技術を用いて生成ガスMx1から二酸化炭素を分離し、二酸化炭素が除去された生成ガスMx2が得られる。
続いて、生成ガスMx2は、水素分離器4に導入される。水素分離器4において、公知の水素分離技術(たとえば水素選択透過膜を用いる膜分離法)を用いて生成ガスMx2から水素を分離し、メタンを含む製品ガスが得られる。またこのとき、水素分離器4において生成ガスMx2から分離された水素は、触媒ガス反応器1に供給される。
なお、上記の触媒ガス反応器1と二酸化炭素分離器3との間に、さらにCOシフト反応器2´を備えるように構成してもよい(図3)。このように構成すると、生成ガスMx1に含まれる一酸化炭素を二酸化炭素および水素に変換した生成ガスMx1´が得られ、これを後工程に供給することができるので、製品ガスに含まれる一酸化炭素の量を低減することができる。
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔触媒担持炭素質材料の作成とガス化率の評価〕
以下に示すように試料A〜Tを作成し、試料A〜Tについてガス化率の評価を行った。
なお、カルシウムおよびナトリウムを担持して調製した試料A、I、M、N、O、R、S、およびT、ならびに、カルシウム、ナトリウム、および、鉄、を担持して調製した試料B、J、および、P、は、本発明の実施例である。また、上記の他の試料C、D、E、F、G、H、K、L、および、Q、は、本発明の比較例である。
以下に示すように試料A〜Tを作成し、試料A〜Tについてガス化率の評価を行った。
なお、カルシウムおよびナトリウムを担持して調製した試料A、I、M、N、O、R、S、およびT、ならびに、カルシウム、ナトリウム、および、鉄、を担持して調製した試料B、J、および、P、は、本発明の実施例である。また、上記の他の試料C、D、E、F、G、H、K、L、および、Q、は、本発明の比較例である。
《試料A》
炭素質材料としてオーストラリア産のLoy Yang褐炭(褐炭X)を用いた。この褐炭Xの工業分析結果は、水分59.3%、揮発分22.1%、固定炭素18.2%、灰分0.4%(いずれも質量ベース、以下も同様)であった。また、無水無灰基準の元素組成は、C:70.9%、H:4.56%、O:23.7%、N:0.63%、S:0.26%であった。
炭素質材料としてオーストラリア産のLoy Yang褐炭(褐炭X)を用いた。この褐炭Xの工業分析結果は、水分59.3%、揮発分22.1%、固定炭素18.2%、灰分0.4%(いずれも質量ベース、以下も同様)であった。また、無水無灰基準の元素組成は、C:70.9%、H:4.56%、O:23.7%、N:0.63%、S:0.26%であった。
この褐炭を、水分が17%になるまで乾燥し、粉砕し、53〜150μmに分級した。
次に、蒸発乾固法を用いて、乾燥褐炭に触媒を担持した。具体的には、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液を調製し、これに前記の分級した褐炭Xを混合して、よく混ぜ合わせ、室温で減圧乾燥し、さらに窒素流通下107℃で2時間乾燥して、試料Aを得た。なおこのとき、混合水溶液に含まれるCaおよびNaの乾燥褐炭の質量に対する量が、Caが5.1%、Naが5.3%、になるように、硝酸カルシウムおよび硝酸ナトリウムの濃度を調整した。
次に、蒸発乾固法を用いて、乾燥褐炭に触媒を担持した。具体的には、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液を調製し、これに前記の分級した褐炭Xを混合して、よく混ぜ合わせ、室温で減圧乾燥し、さらに窒素流通下107℃で2時間乾燥して、試料Aを得た。なおこのとき、混合水溶液に含まれるCaおよびNaの乾燥褐炭の質量に対する量が、Caが5.1%、Naが5.3%、になるように、硝酸カルシウムおよび硝酸ナトリウムの濃度を調整した。
試料Aを酸分解したのち、ICP分析によって担持量を定量した。試料AのCaおよびNa担持量(乾燥褐炭の単位質量あたりの金属換算の担持量)はCa5.1%、Na5.3%であった。
示差熱天秤(株式会社リガク製TG−DTA/HUM−1)を用いて試料Aのガス化評価を行った。試料Aを約20mg装填し、水蒸気20%、水素17%と残部窒素からなるガスを300mL/分の流量で流通しながら、所定温度(550℃、600℃、650℃、700℃)まで10℃/分の昇温速度で昇温したのち、所定温度に維持して、1時間後の質量減少率(水分、灰分、触媒成分を控除した試料量に対する)をもってガス化率とした。
表1に示す通り、550℃、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ61.6%、78.3%、94.1%、96.8%となった。
《試料B》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸鉄(III)の混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Bを得た。試料BのCa、NaおよびFe担持量(乾燥褐炭の単位質量あたりの金属換算の担持量)はCa5.7%、Na6.0%、Fe5.9%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸鉄(III)の混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Bを得た。試料BのCa、NaおよびFe担持量(乾燥褐炭の単位質量あたりの金属換算の担持量)はCa5.7%、Na6.0%、Fe5.9%であった。
試料Bについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、550℃、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ58.7%、83.9%、95.8%、97.4%となった。
《試料C》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを、触媒を担持することなく用いた(試料Cとする)。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを、触媒を担持することなく用いた(試料Cとする)。
試料Cについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ51.6%、55.8%、54.6%となった。触媒を担持しない場合のガス化率は低いことがわかる。褐炭Xの揮発分は乾燥ベースで55%程度であるから、得られた結果は無触媒の場合は700℃であっても固定炭素分のガス化はほとんどできないことを示している。
《試料D》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、炭酸ナトリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Dを得た。試料DのNa担持量は4.9%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、炭酸ナトリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Dを得た。試料DのNa担持量は4.9%であった。
試料Dについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ53.0%、67.8%、91.9%となった。Naの触媒ガス化に対する効果は、700℃では顕著だが、650℃以下では低いことが見て取れる。
《試料E》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Eを得た。試料EのCa担持量は5.1%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Eを得た。試料EのCa担持量は5.1%であった。
試料Eについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ64.9%、83.9%、92.8%となった。Caの触媒ガス化に対する効果は、700℃ではNaよりも劣るが、650℃以下の低温ではNaより優れることが見て取れる。試料A1と試料D、Eを比較すると、NaとCaを組み合わせるとNa単独あるいはCa単独の場合よりもはるかに高い効果が表れることがわかる。
《試料F》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸鉄(III)の水溶液を用いたほかは同様にして試料Fを得た。試料FのFe担持量は5.5%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸鉄(III)の水溶液を用いたほかは同様にして試料Fを得た。試料FのFe担持量は5.5%であった。
試料Fについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ51.4%、59.8%、54.7%となった。
《試料G》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Gを得た。試料GのK担持量は5.1%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Gを得た。試料GのK担持量は5.1%であった。
試料Gについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ59.4%、78.5%、97.4%となった。
水蒸気をガス化剤とする触媒ガス化ではKの触媒効果が高いとされるが、少なくとも本発明のように水蒸気に加えて水素をガス化剤とする場合には、650℃以下の温度域ではKの触媒効果は小さいことがわかる。
《試料H》
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カリウムと硝酸鉄(III)の水溶液を用いたほかは同様にして試料Hを得た。試料HのFe担持量は5.9%、K担持量は5.6%であった。
試料Aの調製時と同じ褐炭Xを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カリウムと硝酸鉄(III)の水溶液を用いたほかは同様にして試料Hを得た。試料HのFe担持量は5.9%、K担持量は5.6%であった。
試料Hについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ60.8%、81.8%、100%となった。FeとKの組み合わせでは、650℃以下の低温でのガス化性能はあまり向上しない。
《試料I》
炭素質材料としてオーストラリア産のLoy Yang褐炭(褐炭Y)を用いた。この褐炭Yの工業分析結果は、水分61.3%、揮発分20.2%、固定炭素17.8%、灰分0.7%(いずれも質量ベース、以下も同様)であった。また、無水無灰基準の元素組成は、C:66.8%、H:5.30%、O:26.9%、N:0.57%、S:0.35%であった。
炭素質材料としてオーストラリア産のLoy Yang褐炭(褐炭Y)を用いた。この褐炭Yの工業分析結果は、水分61.3%、揮発分20.2%、固定炭素17.8%、灰分0.7%(いずれも質量ベース、以下も同様)であった。また、無水無灰基準の元素組成は、C:66.8%、H:5.30%、O:26.9%、N:0.57%、S:0.35%であった。
褐炭Xに代えて褐炭Yを用いたほかは、試料Aと同様にして試料Iを調製した。試料IのCaおよびNa担持量(乾燥褐炭の単位質量あたりの金属換算の担持量)はCa5.6%、Na5.6%であった。
試料Iについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、550℃、600℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ58.5%、72.2%、94.4%となった。
《試料J》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸鉄(III)の混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Jを得た。試料JのCa、NaおよびFe担持量はCa5.5%、Na5.5%、Fe5.3%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウムおよび硝酸鉄(III)の混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Jを得た。試料JのCa、NaおよびFe担持量はCa5.5%、Na5.5%、Fe5.3%であった。
試料Jについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、550℃、600℃、700℃におけるガス化率は、それぞれ59.6%、84.7%、97.1%となった。
《試料K》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸ナトリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Kを得た。試料JのNa担持量は4.8%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸ナトリウムの水溶液を用いたほかは同様にして試料Kを得た。試料JのNa担持量は4.8%であった。
試料Kについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、600℃、650℃および700℃におけるガス化率は、それぞれ57.1%、71.5%、93.2%となった。
《試料L》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸カリウムの混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Lを得た。試料LのCaおよびK担持量は、それぞれ5.1%、4.8%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、硝酸カルシウムと硝酸ナトリウムの混合水溶液に代えて、硝酸カルシウム、硝酸カリウムの混合水溶液を用いたほかは同様にして試料Lを得た。試料LのCaおよびK担持量は、それぞれ5.1%、4.8%であった。
試料Lについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、550℃、600℃および700℃におけるガス化率は、それぞれ55.6%、68.7%、98.4%となった。試料Iとの比較から、CaとKの二元系触媒のガス化性能はCaとNaとあまり変わらず、Kよりも安価なNaを用いる本発明の方法が有利である。
《試料M〜P》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、Ca、NaおよびFeの担持量を変えた試料M,N,O,Pを調製して、ガス化性能を評価した。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを用い、Ca、NaおよびFeの担持量を変えた試料M,N,O,Pを調製して、ガス化性能を評価した。
表1に示す通り、600℃でのガス化率は59.7〜67.7%となり、Naのみを4.8%担持した試料Kよりも高く、本発明のカルシウムとナトリウムを複合化した触媒が高いガス化性能を示すことが明らかである。
《試料Q》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを、触媒を担持することなく用いた(試料Qとする)。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを、触媒を担持することなく用いた(試料Qとする)。
試料Qについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。
表1に示す通り、550℃におけるガス化率は46.2%となった。試料Iおよび試料Jの結果と比較すると、触媒を担持した場合には、550℃という低い温度であっても固定炭素のガス化が進行することがわかる。
《試料R》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。この石炭30gに対して、300mLの硝酸ナトリウム水溶液(0.222mol/L)中で3時間煮沸処理を行って、石炭にNaをイオン交換担持し、ろ過してNaイオン交換炭を回収した。次いで3gのCa(OH)2を300mLのイオン交換水に懸濁した溶液を調製し、ここに前記のNaイオン交換炭を加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaイオン交換を行った。ろ過によりCa−Naイオン交換炭を回収した。室温で乾燥し、さらに減圧乾燥し、107℃で2時間減圧乾燥を行って、53〜150μmに分級し試料Rを得た。試料RのNa担持量は0.24%、Ca担持量は5.1%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。この石炭30gに対して、300mLの硝酸ナトリウム水溶液(0.222mol/L)中で3時間煮沸処理を行って、石炭にNaをイオン交換担持し、ろ過してNaイオン交換炭を回収した。次いで3gのCa(OH)2を300mLのイオン交換水に懸濁した溶液を調製し、ここに前記のNaイオン交換炭を加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaイオン交換を行った。ろ過によりCa−Naイオン交換炭を回収した。室温で乾燥し、さらに減圧乾燥し、107℃で2時間減圧乾燥を行って、53〜150μmに分級し試料Rを得た。試料RのNa担持量は0.24%、Ca担持量は5.1%であった。
試料Rについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。表1に示す通り、600℃におけるガス化率は77.7%となった。試料Iおよび試料Nの結果と比較すると、イオン交換法を用いた場合、ごく少ないNa担持量でも、ガス化が効率的に進行することがわかる。
《試料S》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。3gのCa(OH)2を懸濁した300mLの硝酸ナトリウム水溶液(0.222mol/L)を調製し、ここに前記の石炭30gを加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaおよびNaイオン交換を行った。ろ過によりCa−Naイオン交換炭を回収した。室温で乾燥し、さらに減圧乾燥し、107℃で2時間減圧乾燥を行って、53〜150μmに分級し試料Sを得た。試料SのNa担持量は1.0%、Ca担持量は4.8%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。3gのCa(OH)2を懸濁した300mLの硝酸ナトリウム水溶液(0.222mol/L)を調製し、ここに前記の石炭30gを加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaおよびNaイオン交換を行った。ろ過によりCa−Naイオン交換炭を回収した。室温で乾燥し、さらに減圧乾燥し、107℃で2時間減圧乾燥を行って、53〜150μmに分級し試料Sを得た。試料SのNa担持量は1.0%、Ca担持量は4.8%であった。
試料Sについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。表1に示す通り、600℃におけるガス化率は78.1%となった。試料Iおよび試料Nの結果と比較すると、イオン交換法を用いた場合、少ないNa担持量でも、ガス化が効率的に進行することがわかる。試料Rと比較すると、必要なNa量は増えるが、NaとCaを同時にイオン交換しているので、工程としては簡単であるというメリットがある。
《試料T》
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。2.4gのCa(OH)2をイオン交換水240mLに懸濁した溶液を調製し、ここに前記の石炭24gを加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaイオン交換を行った。ろ過によりCaイオン交換炭を回収した。室温で乾燥したCaイオン交換炭を、硝酸ナトリウム水溶液とよく混ぜ合わせ、室温で減圧乾燥し、さらに減圧下107℃で2時間乾燥して、試料Tを得た。なおこのとき、硝酸ナトリウム水溶液に含まれるNaが乾燥褐炭に対する質量比が5%になるように、硝酸ナトリウムの濃度を調整した。試料TのNa担持量は4.7%、Ca担持量は4.6%であった。
試料Iの調製時と同じ褐炭Yを室温で減圧乾燥して、53〜150μmに分級した。2.4gのCa(OH)2をイオン交換水240mLに懸濁した溶液を調製し、ここに前記の石炭24gを加えた。1日に数回、各1時間程度撹拌しながら、3日かけてCaイオン交換を行った。ろ過によりCaイオン交換炭を回収した。室温で乾燥したCaイオン交換炭を、硝酸ナトリウム水溶液とよく混ぜ合わせ、室温で減圧乾燥し、さらに減圧下107℃で2時間乾燥して、試料Tを得た。なおこのとき、硝酸ナトリウム水溶液に含まれるNaが乾燥褐炭に対する質量比が5%になるように、硝酸ナトリウムの濃度を調整した。試料TのNa担持量は4.7%、Ca担持量は4.6%であった。
試料Tについて、試料Aと同様にしてガス化評価を行った。表1に示す通り、550℃におけるガス化率は67.9%、600℃におけるガス化率は82.5%となった。試料Iおよび試料Nの結果と比較すると、まずCaをイオン交換法によって担持し、次いでNaを含浸法で担持した場合には、低温でも極めて高いガス化性能を示すことが分かる。
1 :触媒ガス化反応器
2 :メタン化反応器
2´:COシフト反応器
3 :二酸化炭素分離器
4 :水素分離器
Mx1 :触媒ガス化反応器で得られる生成ガス
Mx1´:COシフト反応器で得られる生成ガス
Mx2 :二酸化炭素分離器で得られる生成ガス
2 :メタン化反応器
2´:COシフト反応器
3 :二酸化炭素分離器
4 :水素分離器
Mx1 :触媒ガス化反応器で得られる生成ガス
Mx1´:COシフト反応器で得られる生成ガス
Mx2 :二酸化炭素分離器で得られる生成ガス
Claims (7)
- 無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、
前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウムおよびナトリウムを担持する担持工程と、
カルシウムおよびナトリウムを担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、
前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含む炭素質材料のガス化方法。 - 無水無灰基準で60〜75質量%の炭素を含む炭素質材料のガス化方法であって、
前記炭素質材料を、カルシウムの水溶性塩を含む水溶液、ナトリウムの水溶性塩を含む水溶液、および鉄の水溶性塩を含む水溶液に、同時にまたは順次に接触させて、前記炭素質材料にカルシウム、ナトリウム、および鉄を担持する担持工程と、
カルシウム、ナトリウム、および鉄を担持した前記炭素質材料を、550〜700℃の温度条件下で水蒸気および水素を含むガス化剤と接触させるガス化工程と、を含み、
前記ガス化工程によって得られる生成ガスが、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および、メタン、を含む炭素質材料のガス化方法。 - 前記担持工程は、カルシウムの水溶性塩およびナトリウムの水溶性塩を含む水溶液に、前記炭素質材料を含浸する含浸ステップを有する請求項1に記載の炭素質材料のガス化方法。
- 前記担持工程は、カルシウムの水溶性塩、ナトリウムの水溶性塩、および鉄の水溶性塩を含む水溶液に、前記炭素質材料を含浸する含浸ステップを有する請求項1に記載の炭素質材料のガス化方法。
- カルシウムおよびナトリウムの少なくとも1つが、イオン交換法により担持される請求項1または2に記載の炭素質材料のガス化方法。
- 前記ガス化剤が、前記生成ガスから分離される水素を含む請求項1ないし5のいずれか1項に記載の炭素質材料のガス化方法。
- 前記生成ガスに含まれる一酸化炭素の少なくとも一部を二酸化炭素に変換するCOシフト反応工程と、
前記COシフト反応工程を経た前記生成ガスから、二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去工程と、
前記二酸化炭素除去工程を経た前記生成ガスから、水素を分離する水素分離工程と、をさらに含み、
前記ガス化剤が、前記水素分離工程によって前記生成ガスから分離される水素を含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の炭素質材料のガス化方法。
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- 2019-03-04 JP JP2019038689A patent/JP2019157123A/ja active Pending
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