JP2019155441A - 連続鋳造用モールドフラックス及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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そして、モールドフラックスは、鋳型壁と凝固殻との間でフラックスフィルムを形成し、鋳型と凝固殻の間で潤滑作用を奏する。
また、このフラックスフィルム中の結晶化を促進すると、輻射伝熱の抑制により、フラックスフィルム中の伝熱抵抗が増大し、鋳型内の溶鋼が緩冷却化されることになり、凝固により生成する凝固殻の厚みを均一に成長させることが可能となる。これにより、鋳片の表面割れを抑制することができる。
ここで、例えば特許文献1−3には、フラックスフィルム中の結晶化を促進するために組成を規定したモールドフラックスが提案されている。
上述した特許文献1−3に記載されたモールドフラックスにおいては、溶鋼中の非金属介在物については何ら考慮されていないため、溶鋼の清浄度を向上させることはできなかった。
また、溶融したモールドフラックス中において、Fイオンはアルカリ金属酸化物イオンとの親和性が強いため、Fはアルカリ金属とフッ化物を構成していると考えられ、過剰なFがCaとフッ化物を構成していると考えられる。このため、モールドフラックス組成をCaO−SiO2−CaF2−(LiF+NaF+KF)系の組成であると考えることが適切であるとの知見を得た。
(1)式:0.90≦f(1)=(CaO)h/(SiO2)h≦1.90
(2)式:0.10≦f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h}≦0.40
(3)式:0.00≦f(3)={(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}≦0.40
ここで、
(SiO2)h=WSiO2
(Al2O3)h=WAl2O3
(CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05
(CaO)h=(WCaO−(CaF2)h×0.718)
(アルカリ金属の弗化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23
この構成の鋼の連続鋳造方法においては、溶鋼に含まれるAlと連続鋳造用モールドフラックスに含まれるNa2O及びK2Oとの酸化還元反応によってAl2O3の非金属介在物が生成することを抑制できるとともに、溶融モールドフラックスの巻き込みを抑制でき、介在物の少ない鋳片を得ることができる。
また、溶融したモールドフラックス中においてcuspidine(Ca4Si2O7F2)の結晶化が促進され、鋳型内の溶鋼が緩冷却化されることになり、凝固により生成する凝固殻の厚みを均一に成長させることが可能となる。これにより、鋳片の表面割れを抑制することができる。
本実施形態である連続鋳造用モールドフラックスは、質量比で、CaOを25%以上60%以下の範囲内、SiO2を15%以上45%以下の範囲内、アルカリ金属酸化物の一種以上を0%以上20%以下の範囲内、Fを5%以上25%以下の範囲内で含有し、その他の成分の合計濃度が2%以上10%以下の範囲内とされ、アルカリ金属酸化物であるNa2O及びK2Oの含有量が、それぞれ1.0%未満とされている。なお、本実施形態におけるモールドフラックスにおいては、溶融速度を調整するために。骨材としてC(炭素)が配合されることもある。
ここで、「その他の成分」とは、配合成分に含まれるFe2O3等の不純物であり、上述のように意図的に添加する「C」等は含まないものである。
(1)式:0.90≦f(1)=(CaO)h/(SiO2)h≦1.90
(2)式:0.10≦f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h}≦0.40
(3)式:0.00≦f(3)={(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}≦0.40
ここで、
(SiO2)h=WSiO2
(Al2O3)h=WAl2O3
(CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05
(CaO)h=(WCaO−(CaF2)h×0.718)
(アルカリ金属の弗化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23
(2)式及び(3)式についても、(1)式と同様に、連続鋳造用モールドフラックスの組成が、cuspidine(Ca4Si2O7F2)の組成に近似するようにそれぞれ規定したものである。
連続鋳造用モールドフラックスが溶融した状態の構造は、一般的にイオンの集合体であると考えられる。すなわち、CaF2やCaO等の化合物原料を配合してモールドフラックスを製造しても、溶融状態では、Ca2+,F−,O2−の各イオンになっていると考えられる。
したがって、弗化物の状態を定量的に把握する場合には、以下の2点を考慮することで精度が向上することになる。
<1> モールドフラックス中のFは、Li,Na,Kと優先的に化合する。
<2> Li,Na,Kと化合した後に残存したFがCaと化合する。
以上のことから、上述の(1)〜(3)式においては、Li2O,Na2O,K2Oの質量濃度を用いて、それぞれの化合物の質量濃度を規定している。
Na2O、K2Oは、Li2Oに比べて、溶鋼中のAlと酸化還元反応しやすく、Al2O3の非金属介在物が生成しやすくなる。また、酸化還元反応によって界面の張力が低下し、溶融フラックスが巻き込まれやすくなる。
このため、本実施形態である連続鋳造用モールドフラックスにおいては、Na2O及びK2Oの含有量を、質量比でそれぞれ1.0%未満に制限している。なお、Na2O及びK2Oの含有量は、質量比でそれぞれ0.5%未満とすることが好ましい。
ここで、鋳型内の溶鋼の上に形成されるモールドフラックスの溶融層厚さが5mm以上20mm以下の範囲内となるように、本実施形態である連続鋳造用モールドフラックスを添加する。
また、モールドフラックスの組成をさらにcuspidineの組成に近似させるためには、f(1)が、1.10≦f(1)≦1.70の範囲であることが好ましく、f(2)が、0.15≦f(2)≦0.30の範囲であることが好ましく、f(3)が、0.02≦f(3)≦0.20の範囲であることが好ましい。
表1に示す組成の亜包晶鋼を、垂直曲げ型連続鋳造機(以下、連鋳機)により鋳造して、熱間圧延用素材のスラブを製造した。連鋳機は2つのストランドから構成され、各ストランドの鋳型は、厚みを250mm、幅を1450mm、長さ1100mmとした。
鋳型には、電磁ブレーキを適用した。電磁ブレーキのためのコイル鉄芯の中心を幅中央および、溶鋼表面の高さから下方600mmの高さに配置した。この電磁ブレーキの強度を4000Gとした。
引き抜き時の潤滑性を得るために鋳型を振動させており、鋳型振動のストロークを6mmとした。
鋳造中、溶鋼表面の高さを鋳型上端から80mmの位置に一定に制御しながら溶鋼を供給し、鋳造速度は設定値を1.3m/minとした。
そして、連続鋳造用モールドフラックスとして、表2に示すものを用いた。
なお、比較例4においては、鋳型温度変動が大きく、ブレイクアウト予知システムが鋳造中に1回作動した。
また、比較例6,7においては、鋳造後の浸漬ノズルの外観を観察した結果、モールドフラックスの溶融層と接する部分の溶損が大きく、多連鋳が困難であると判断された。
Claims (2)
- 質量比で、CaOを25%以上60%以下の範囲内、SiO2を15%以上45%以下の範囲内、アルカリ金属酸化物の一種以上を0%以上20%以下の範囲内、Fを5%以上25%以下の範囲内で含有し、その他の成分の合計濃度が2%以上10%以下の範囲内とされ、
含まれる各元素又は各化合物Mの含有量(質量%)をWMと表記した場合において、SiO2、CaO、アルカリ金属酸化物、Fの含有量が、以下の(1)〜(3)式を満足し、
Na2O及びK2Oが、それぞれ単独の濃度で1.0%未満とされていることを特徴とする連続鋳造用モールドフラックス。
(1)式:0.90≦f(1)=(CaO)h/(SiO2)h≦1.90
(2)式:0.10≦f(2)=(CaF2)h/{(CaO)h+(SiO2)h+(CaF2)h}≦0.40
(3)式:0.00≦f(3)={(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}/{(CaO)h+(SiO2)h+(アルカリ金属の弗化物)h+(Al2O3)h}≦0.40
ここで、
(SiO2)h=WSiO2
(Al2O3)h=WAl2O3
(CaF2)h=(WF−WLi2O×1.27−WNa2O×0.613−WK2O×0.403)×2.05
(CaO)h=(WCaO−(CaF2)h×0.718)
(アルカリ金属の弗化物)h=WLi2O×1.74+WNa2O×1.35+WK2O×1.23 - 請求項1に記載の連続鋳造用モールドフラックスを鋳型内に供給することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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