JP2019152374A - スギ木材の乾燥方法、スギ木材の乾燥制御装置及びスギ木材の乾燥方法を実行するためのコンピュータプログラム。 - Google Patents

スギ木材の乾燥方法、スギ木材の乾燥制御装置及びスギ木材の乾燥方法を実行するためのコンピュータプログラム。 Download PDF

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悠 三好
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Abstract

【課題】スギ木材を、従来の人工乾燥方法よりも、短時間で乾燥する。【解決手段】スギ木材の乾燥方法(但し、前記乾燥方法は、蒸煮工程を含まない):乾球温度T1及び湿球温度T2である処理環境にスギ木材を暴露する工程であって、T1が50℃〜95℃であり、T1>T2であり、T1とT2の差が5℃〜25℃である。【選択図】なし

Description

本発明は、スギ木材の乾燥方法、スギ木材の乾燥制御装置及びスギ木材の乾燥方法を実行するためのコンピュータプログラムに関する。
日本の森林面積の約17%はスギ人工林であり、その半分近くは利用適齢期を迎えている。
一般的に大径材の心材は、伐採後に乾燥を施さないと木材として利用できない。特に、他の樹木に比べ、スギは心材の含水率が高く、注意深く乾燥しないと、木材に割れや曲がりが生じ、利用できなくなる。古くから、木材を、割れや曲がりを生じさせることなく乾燥させるため、少なくとも3か月以上、自然環境の条件下に放置する、天然乾燥が施されてきた。
近年では、乾燥時間を短縮するため、人為的に乾燥条件を作り出した環境に木材を曝して乾燥する、人工乾燥が開発されている(特許文献1〜5)。特許文献1〜3には、木材の割れを防ぐため、はじめに温度80℃〜100℃程度、相対湿度100%程度の環境に木材を曝す蒸煮工程を含む、木材の人工乾燥方法が開示されている。特許文献4には、蒸煮工程を行わずに、木材の表面から35mmにある平均含水率測定ポイントを指標として木材を乾燥させる方法が開示されている。特許文献5には、蒸煮工程を行わずに、乾球温度100℃〜150℃および湿球温度90℃以上で木材を乾燥させる方法が開示されている。
特開2013−177999号公報 特開2004−138338号公報 特開2008−307790号公報 特開2007−22077号公報 特開平6−257946号公報
蒸煮工程は、木材を一度飽和水蒸気圧に曝すため、その後の乾燥に時間がかかる。例えば、特許文献1では、蒸煮工程の後、10時間〜30時間の表層乾燥工程、3日間〜10日間の中内層乾燥工程、及び1〜5日間の調湿工程を要するため、乾燥が完了するまでに5日間〜19日間かかる。特許文献2及び3では、乾燥時間を短縮するため減圧機構を備えた乾燥装置を使用しているため、乾燥装置が高価になるという問題がある。特許文献5では、100℃未満の乾球温度条件下は、所期の乾燥速度が得られないため、木材乾燥には不向きであるとされている。
また、人工乾燥方法全体の課題として、乾燥後の木材の色調変化、並びに乾燥された木材のシロアリ耐性(以下、「耐蟻性」とも称する)、及び木材腐朽菌耐性(以下、「耐腐朽性」とも称する)が、少なくとも天然乾燥された木材と同程度であることが求められる。
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、乾球温度計で測定される温度と乾湿球温度差を所定の範囲内とする処理環境にスギ木材を暴露することにより、一般的な木材乾燥装置を利用して、蒸煮工程を行うことなく、従来の人工乾燥方法よりも短時間でスギ木材を乾燥できることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.下記工程を含む、スギ木材の乾燥方法(但し、前記乾燥方法は、蒸煮工程を含まない):乾球温度T1及び湿球温度T2である処理環境にスギ木材を暴露する工程であって、T1が50℃〜95℃であり、T1>T2であり、T1とT2の差が5℃〜25℃である、工程。
項2.T1は68℃〜92℃である、項1に記載の乾燥方法。
項3.T1とT2の差が8℃〜22℃である、項1又は2に記載の乾燥方法。
項4.処理環境の気圧が乾燥雰囲気圧である、項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥方法。
項5.スギ木材が、板材である、項1〜4のいずれか一項に記載の乾燥方法。
項6.処理時間が、10時間〜60時間である、項5に記載の乾燥方法。
項7.項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥方法により処理されたスギ木材。
項8.処理部を備えた乾燥制御装置であって、処理部は、項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥方法を実行する、スギ木材の乾燥制御装置。
項9.木材を乾燥するための乾燥装置と、項8に記載の乾燥制御装置とを備える、スギ木材の乾燥システム。
項10.項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥方法をスギ木材の乾燥制御装置に実行させるための、コンピュータプログラム。
本発明によれば、従来の人工乾燥方法よりも短時間でスギ木材を乾燥できる。
乾燥制御装置及び乾燥システムのハードウェアの概要を示す図である。 乾燥制御装置のハードウェアの構成の概略を示す図である。 乾燥制御装置の動作のフローチャートを示す図である。 aは、スギ大径材を示す。bは、1本の大径材から角材と板材を木取りする例を示す。cは、1本の大径材から板材を木取りする例を示す。 板材の各乾燥温湿度条件における乾燥時間の箱ひげ図を示す。それぞれ平均値、第1四分位点、第3四分位点、最小値、最大値を示す。 角材の各乾燥温湿度条件における乾燥時間の散布図を示す。 板材の各乾燥温湿度条件における板幅収縮率の箱ひげ図を示す。それぞれ平均値、第1四分位点、第3四分位点、最小値、最大値を示す。 板材の各乾燥温湿度条件における材色変化の箱ひげ図を示す。それぞれ平均値、第1四分位点、第3四分位点、最小値、最大値を示す。 角材の各乾燥温湿度条件における材色変化の散布図を示す。 本試験材における評価結果を示す。aは、乾燥時間経過に伴う含水率の変化を示す。グラフ中の●は、含水率の高い本試験材を示す。○は、含水率の低い本試験材を示す。bは、全ての本試験材の含水率の頻度分布を示す。cは、乾燥前後における本試験材のL値を示す。dは、乾燥後に本試験材表面に発生した割れの様子を示す。 aは、乾燥前後の本試験材における曲げヤング係数の頻度分布を示す。bは、乾燥前後の本試験材における曲げ強さの頻度分布を示す。 材80−5−B−5の各乾燥条件における重量減少を示す。 材80−5−B−7の各乾燥条件における重量減少を示す。 材80−6−B−5の各乾燥条件における重量減少を示す。 材80−6−B−7の各乾燥条件における重量減少を示す。 腐朽材重量減少率と腐朽材中心部に含まれるITS領域分子数の関係を示す。 耐蟻性試験の結果を示す。aは、コロニー暴露試験による辺材部の食害の様子を示す。bは、コロニー暴露試験による天然乾燥材への蟻道の構築と節部分に限定的な食害の様子を示す。cは、コロニー暴露試験による乾燥温度90℃−乾湿球温度差10℃試験片への蟻道の構築と節部分に限定的な食害の様子を示す。 スギ心材抽出エキスの抗腐朽菌活性試験の結果を示す。aは、コントロール及びスギ心材抽出エキス フラクションEを含む培地上でのオオウズラタケのコロニーの様子を示す。bは、スギ心材抽出エキスの各フラクションの抗腐朽菌活性を示す。
1.スギ木材の乾燥方法
本発明の第1の実施形態は、スギ木材の乾燥方法に関する。
スギは、日本に広く植林されている常緑針葉樹である。木材として使用する場合には、一般的に50年生以上、好ましくは50年生〜90年生程度のスギが好ましい。
スギ木材は、例えば、大径材から図4(b)又は(c)に示すように木取りされる。図4(b)は心材中央部が角材として木取りされ、その四方が板材として木取りされる例を示している。図4(c)では、心材から板材のみを木取りする例を示している。
したがって、本発明において「木材」には、角材及び板材が含まれる。好ましくは板材である。角材は、大径材の心材から木取りできる大きさであり、乾燥装置に格納できる大きさ(又は長さ)である限り制限されない。例えば、角材は、幅が300mm程度まで、厚みが135mm程度まで、長さが4000mm程度までを例示することができる。板材も、大径材の心材から木取りできる大きさであり、乾燥装置に格納できる大きさ(又は長さ)である限り制限されない。例えば、幅100〜200mm程度、長さが4000mm程度まで、厚み10〜45mmを例示することができる。
木材の木口(こぐち)は、シール材や塗料で処理する必要はないが、シール材や塗料で処理してもよい。シール材や塗料による木口の処理は、公知の方法にしたがって行うことができる。シール材としては、例えば、酸化チタン(IV)及びシリカを含む変成シリコーン系シーリング材(POSシール 変成シリコーンシーラント(SM−447,セメダイン株式会社製))を使用することができる。
本実施形態の乾燥方法は、蒸煮工程を経ることなく、乾球温度T1及び湿球温度T2である処理環境に木材を暴露する工程を含む。蒸煮工程は、一般的に乾湿球温度差が少ない条件下で行われる。蒸煮工程は、乾湿球温度差が好ましくは5℃未満、より好ましくは2℃未満、さらに好ましくは1℃未満で行われる。蒸煮工程の温度は、70℃以上、好ましくは80℃以上、より90℃以上である。蒸煮工程の温度の上限は100℃である。
乾球温度T1は、50℃〜95℃の範囲で設定することができる。乾球温度T1の下限値は、50℃、55℃、60℃、65℃、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、82℃、85℃、88℃及び90℃から選択することができる。好ましくは、68℃、70℃、72℃、75℃、78℃、80℃、82℃、85℃、88℃及び90℃から選択することができ、より好ましくは88℃及び90℃から選択することができる。乾球温度T1の上限値は、95℃、92℃、及び90℃から選択することができる。好ましくは、92℃、及び90℃から選択することができる。
湿球温度T2は、少なくとも乾球温度T1よりも低い温度(T1>T2)である。
乾球温度T1と湿球温度T2の差(乾湿球温度差:ΔT)は、5℃〜25℃の範囲で設定することができる。ΔTの下限値は、5℃、8℃、10℃、12℃、15℃、18℃及び20℃から選択することができる。好ましくは、8℃、10℃、12℃、15℃、18℃及び20℃から選択することができ、より好ましくは、15℃、18℃及び20℃から選択することができる。ΔTの上限値は、25℃、22℃及び20℃から選択することができる。好ましくは、22℃及び20℃から選択することができる。
乾燥時の木材周囲の気圧は、特に制限されない。例えば、処理環境の気圧は、上述した乾球温度T1、乾湿球温度差ΔTを好適な条件に調整した際に自然に木材周囲にもたらされる雰囲気の気圧(乾燥雰囲気圧)であればよい。しかし、減圧(例えば、乾燥装置内の気圧を大気圧よりも5〜100kPa程度下げる)等の処理を行ってもよい。好ましくは、処理環境の気圧は、乾燥雰囲気圧である。
乾燥時間は、含水率を指標として設定することができる。含水率は、例えば高周波木材水分計(株式会社ケット科学研究所製、HM−520)等を使用して測定することができる。また、木材の重さを測定し、重量から含水率を算出してもよい。乾燥前のスギ板材の含水率は100%に近い。乾燥後の含水率は、20%以下、18%以下、15%以下、13%以下、及び10%以下から選択することができる。好ましくは、15%以下、より好ましくは13%以下である。例えば、板材の場合、上記処理環境に10時間〜60時間曝すことにより、所望の含水率にすることができる。乾燥時間の下限値は、10時間、20時間、30時間、40時間、及び50時間から選択することができる。乾燥時間の上限値は、60時間、50時間、40時間、及び30時間から選択することができる。
2.スギ木材
本発明の第2の実施形態は、上記1.で述べた乾燥方法によって乾燥されたスギ木材に関する。
本実施形態に係るスギ木材は、天然乾燥されたスギ木材の材質に近い材質を目標として生産される。しかし、後述する実施例に示すように、本実施形態に係るスギ木材は、いくつかの点において天然乾燥されたスギ木材とは材質が異なる。
自然環境下で発育したスギは、同じ成分を含んでいても、個体によって成分含量が異なっている(後述する実施例4−6.成分分析結果参照)。したがって、本実施形態に係るスギ板材に含まれる成分も、由来するスギ個体に応じて異なるため、上記1.で述べた乾燥方法を施したスギ木材について、一定量の含有成分等でその性質を規定することは不可能である。そして、上記1.で述べた乾燥方法以外に、上記特徴を構造上又は特性上、明確に特定する文言はない。また、上記1.で述べた乾燥方法を施したスギ木材に共通する性質を探索するためには膨大な時間を要するため、先願主義の原則の下、このような性質を出願前に探索することは妥当ではない。したがって、本実施態様のスギ木材は、上記1.で述べた乾燥方法によって規定する。
3.スギ木材の乾燥制御装置及び乾燥システム
3−1.乾燥制御装置
本発明の第3の実施形態は、上記1.で述べた乾燥方法の実行を制御するスギ木材の乾燥制御装置に関する。
具体的には、処理部は、乾球温度T1及び湿球温度T2である処理環境にスギ木材を暴露するように、乾燥装置内を制御する。
図1及び図2に、乾燥制御装置10のハードウェアの構成の例を示す。乾燥制御装置10は、入力部111と、出力部112と、記憶媒体113とに接続されていてもよい。乾燥制御装置10は、入力部111と、出力部112と、記憶媒体113と一体となっていてもよい。また、乾燥制御装置10は、後述する乾燥装置30と接続されていてもよい。すなわち、乾燥制御装置10は、乾燥装置30と直接又はネットワーク等を介して接続された、スギ木材の乾燥システム50を構成してもよい。乾燥システム50は、乾燥制御装置10と乾燥装置30が、一体となっていてもよい。
乾燥制御装置10において、CPU101と、主記憶部102と、ROM(read only memory)103と、補助記憶部104と、通信インタフェース(I/F)105と、入力インタフェース(I/F)106と、出力インタフェース(I/F)107と、メディアインターフェース(I/F)108は、バス109によって互いにデータ通信可能に接続されている。主記憶部102と補助記憶部104とを合わせて、単に記憶部と呼ぶこともある。
CPU101は、乾燥制御装置10の処理部である。CPU101が、補助記憶部104又はROM103に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、乾燥装置30を制御する乾燥制御装置10として機能する。
ROM103は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成され、CPU101により実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータが記録されている。CPU101はMPU101としてもよい。ROM103は、乾燥制御装置10の起動時に、CPU101によって実行されるブートプログラムや乾燥制御装置10のハードウェアの動作に関連するプログラムや設定を記憶する。
主記憶部102は、SRAM又はDRAMなどのRAM(Random access memory)によって構成される。主記憶部102は、ROM103及び補助記憶部104に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、主記憶部102は、CPU101がこれらのコンピュータプログラムを実行するときの作業領域として利用される。
補助記憶部104は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等によって構成される。補助記憶部104には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムなどの、CPU101に実行させるための種々のコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いる各種設定データが記憶されている。具体的には、設定値等を不揮発性に記憶する。また、補助記憶部104は、乾球温度計320及び湿球温度計330で計測された温度、及び乾燥時間を記憶してもよい。
通信I/F105は、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース、ネットワークインタフェースコントローラ(Network interface controller:NIC)等から構成される。通信I/F105は、CPU101の制御下で、乾燥装置30又は他の外部機器からのデータを受信し、必要に応じて乾燥制御装置10が保存又は生成する情報を、乾燥装置30又は外部に送信又は表示する。通信I/F105は、ネットワークを介して乾燥装置30又は他の外部機器と通信を行ってもよい。
入力I/F106は、例えばUSB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成される。入力I/F106は、入力部111から文字入力、クリック、音声入力等を受け付ける。受け付けた入力内容は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。
入力部111は、タッチパネル、キーボード、マウス、ペンタブレット、マイク等から構成され、乾燥制御装置10に文字入力又は音声入力を行う。入力部111は、乾燥制御装置10の外部から接続されても、乾燥制御装置10と一体となっていてもよい。
出力I/F107は、例えば入力I/F106と同様のインタフェースから構成される。出力I/F107は、CPU101が生成した情報を出力部112に出力する。出力I/F107は、CPU101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、出力部112に出力する。
出力部112は、例えばディスプレイ、プリンター等で構成され、乾燥装置30から送信される測定結果及び乾燥制御装置10における各種操作ウインドウ、分析結果等を表示する。
メディアI/F108は、記憶媒体113に記憶された例えばアプリケーションソフト等を読み出す。読み出されたアプリケーションソフト等は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。また、メディアI/F108は、CPU101が生成した情報を記憶媒体113に書き込む。メディアI/F108は、CPU101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、記憶媒体113に書き込む。
記憶媒体113は、フレキシブルディスク、CD−ROM、又はDVD−ROM等で構成される。記憶媒体113は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によってメディアI/F108と接続される。記憶媒体113には、コンピュータがオペレーションを実行するためのアプリケーションプログラム等が格納されていてもよい。
CPU101は、乾燥制御装置10の制御に必要なアプリケーションソフトや各種設定をROM103又は補助記憶部104からの読み出しに代えて、ネットワークを介して取得してもよい。前記アプリケーションプログラムがネットワーク上のサーバコンピュータの補助記憶部内に格納されており、このサーバコンピュータに乾燥制御装置10がアクセスして、コンピュータプログラムをダウンロードし、これをROM103又は補助記憶部104に記憶することも可能である。
また、ROM103又は補助記憶部104には、例えば米国マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーションシステムがインストールされている。第2の実施形態に係るアプリケーションプログラムは、前記オペレーティングシステム上で動作するものとする。すなわち、乾燥制御装置10は、パーソナルコンピュータ等であり得る。
3−2.乾燥装置
図1を用いて乾燥装置30の構造の例を説明する。乾燥装置30として、公知の木材の蒸気式乾燥機を使用することができる。
乾燥装置30は、乾燥制御装置10と通信するための通信I/F340、加熱機構305で加熱される水を給水源(図示せず)から摂水する摂水管301、摂水した水を貯蔵する補水タンク302、補水タンク中の水を加熱機構305に送るための配水管303及び配水ポンプ304、水を加熱するための加熱機構305、加熱機構305から気水分離器307に熱水を配水するための配水管306、熱水と水蒸気を分離する気水分離器304、木材360を格納し乾燥するための乾燥庫350、気水分離器304から乾燥庫350内に熱水を配水するための熱水配水管308、及び気水分離器304から乾燥庫350内に水蒸気を供給するための水蒸気配管309を備える。熱水配水管308と水蒸気配管309は、乾燥庫350内に配管される。熱水配水管308は、乾燥庫350内に備えられた温度調整機構310に熱水を配水し、温度調整機構310はその熱水を使って乾燥庫350内の温度を上昇させる。水蒸気配管309は、乾燥庫350内に備えられた湿度調整機構312に水蒸気を供給し、湿度調整機構312は、その水蒸気を使って、乾燥庫350内に水蒸気を供給する。乾燥庫350には、乾球温度計320と湿球温度計330が備えられており、乾球温度計320と湿球温度計330は、通信I/F301に接続される。乾燥庫350にはファン311が備えられており、ファン311は、乾燥庫内の空気を循環させる。矢印307は、空気の流れを示す。乾燥庫350はさらに、排気機構370と、吸気機構380とを備える。また、配水管306、熱水配水管308、水蒸気配管309は水量又は水蒸気量を調節するためのバルブ314を備えていてもよい。
3−3.乾燥制御装置の動作
図3を用いて、乾燥制御装置10の動作の例を説明する。乾燥制御装置10の動作は、後述するコンピュータプログラムにしたがって、乾燥制御装置10に備えられた処理部101が制御する。
はじめに処理部101は、ユーザーが入力部111から入力した乾球温度T1、乾湿球温度差ΔT、及び乾燥時間の設定値を取得する。あるいは、補助記憶部104に乾球温度T1、乾湿球温度差ΔT、及び乾燥時間等が記憶されている場合には、補助記憶部104から各設定値を読み出すことにより各設定値を取得する(ステップS11)。湿球温度T2の設定値は、乾球温度T1及び乾湿球温度差ΔTから算出されてもよく、湿球温度T2の設定値をユーザーの入力又は補助記憶装置104から読み出すことで取得してもよい。この場合、湿球温度T2の設定値は、ユーザーによって入力部111から入力されるか、補助記憶装置104から読み出される。
処理部101は、乾燥庫350内に備えられている乾球温度T1及び乾湿球温度差ΔTが各設定値にしたがって維持されるように乾燥装置30を制御し、乾燥ステップを維持する(ステップS12)。
処理部101は、ステップS12の乾燥ステップを維持しながら、乾燥庫350に備えられた乾球温度計320及び湿球温度計330で計測される各温度をモニタリングし、その情報を取得する(ステップS13及びステップS14)。ステップS13及びステップS14を行う順番は、制限されない。
処理部101は、乾燥庫350内の乾球温度計320及び湿球温度計330の計測値が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS15)。乾球温度T1の許容範囲は、設定値±5℃程度、好ましくは設定値±2℃程度、さらに好ましくは設定値±1℃程度である。乾湿球温度差ΔTの許容範囲は、設定値±2℃程度、好ましくは設定値±1℃程度である。
処理部101はステップS15において各設定値が許容範囲内である(YES)と判断した場合には、ステップS16に進み、乾燥時間が設定値に達しているか否かを判断する。乾燥時間が設定値に達した場合には、乾燥ステップを終了する。乾燥時間が設定値に達していない場合にはステップS12に戻り、乾燥ステップを維持する。
処理部101はステップS15において各設定値が許容範囲内でない(NO)と判断した場合には、ステップS17に進み、乾燥庫350内の温度調整機構310及び湿度調節機構312を制御し、乾燥庫350内の処理環境が各設定値の許容範囲内となるように調整し、ステップS12に戻って、乾燥ステップを維持する。
処理部101は、乾燥時間が設定値に達するまで、ステップS12〜S16、又はステップS12〜ステップS15及びステップS17を繰り返す。
上記1.の各用語の説明は、ここに援用する。
4.コンピュータプログラム
本発明の第4の実施形態は、上記1.で述べた乾燥方法を乾燥制御装置に実行させるためのコンピュータプログラムに関する。
本実施形態にかかるコンピュータプログラムが実行する各ステップは、上記3−3.で述べたステップS12〜S17を含む。
前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記提示装置が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
前記コンピュータプログラムは、インターネット等を介して、ダウンロードしてもよい。
以下に、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定して解釈されるものではない。
1.板材の調達及び板材の性状
1−1.予備試験
徳島県が、亀井林業株式会社から80年生スギ丸太6本(図4(a))を調達した。坂本製材有限会社において角材及び板材を製材し、国立大学法人九州大学に送付した。各丸太の性状を表1に示す。
上記丸太から、各樹齢の3本ずつは、心材中央部から130 mm角の角材とその外周の心材部から40 mm厚の板材を製材した(図4(b))。残りは、心材中央部の心材部から40 mm厚の板材をわく挽きにより製材した(図4(c))。製材した角材及び板材から長さ400 mmの試験材を10体ずつ採取し、両木口をシリコンコーティング剤(POSシール 変成シリコーンシーラント(SM-447,セメダイン株式会社製)でシールした。これらを心材試験材とした。
後述する2.乾燥方法で述べる、乾燥予備試験が終了した心材試験材から20×20×10mm及び20×20×20mmの2種類の試験片を切り出した後、試験片を各協力機関へ送付した。
1−2.本試験
本試験には、図4(c)と同様にして得られたスギ板材(130mm×40mm×4,000mm)97枚を用いた。これらの板材を短軸方向に2分割(130mm×40mm×2,000mm)し、新たにできた切断面を上記1−1.と同様にコーティング剤でシールし、本試験材として人工乾燥、又は天然乾燥に供した。
2.人工乾燥試験
2−1.実施例
2−1−1.乾燥予備試験
上記1.1−1.で得られた心材試験材について、目標含水率15%で各種乾燥処理を実施した。試験材は長さ方向でマッチングされた各10分割の心材試験材である。乾球温度が50℃、70℃、90℃の3 条件と、乾湿球温度差が5℃、10℃、20℃(すなわち湿球温度は、乾球温度計が示す温度から、5℃、10℃、又は20℃引く温度を示す)の3 条件を組み合わせた9 条件で各条件一定温湿度により人工乾燥した。乾燥は温度湿度を高精度で均一に乾燥するため、恒温恒湿装置(幅500 mm、高さ600 mm、奥行き300 mm)を使用した。以下、実施例を「人工乾燥」とも称する。
2−1−2.乾燥本試験
本試験材に対して乾燥条件を乾球温度90℃、湿球温度70℃として木材乾燥試験(蒸気式木材乾燥機、株式会社新柴設備製、SK IF 20Lを使用)を実施した。
2−2.比較例
実施例と同様に、心材試験材の一部(生材)を試験棟内に一定期間静置し、半年から1年かけて含水率15%となるまで乾燥させた。以下、比較例を「天然乾燥」、「コントロール」とも称する。
3.評価方法
上記1に記載の心材試験材、乾燥後の心材試験材について、含水率、割れ、材色、収縮率及び収縮量、強度、含有成分、耐蟻性能、耐腐朽性能、を評価した。
3−1.含水率
高周波木材水分計(株式会社ケット科学研究所製、HM-520)によって、含水率を測定した。乾燥経過段階における含水率の変化は、試験材の重量を測定することにより行った。
3−2.割れ
割れは、目視で観察し、割れが見つかった場合には、その長さを計測した。
3−3.収縮率及び収縮量
乾燥前後で心材試験材の寸法を計測して、算出した。
3−4.材色
心材試験材、乾燥後の心材試験材の材色について、Lab表色系により試験体材面を測色した。測色は、分光測色計(ミノルタ株式会社製、CM-2002)を用い評価した。
3−5.強度試験
曲げ試験について、強度性能の指標となる曲げ強さ(MPa)、曲げヤング率(GPa)を評価した。強度は製材JAS機械等級区分に基づき、性能を記載する。
<試験片の強度試験測定条件>
以下の条件で試験片に単調増加の曲げ荷重を加え、試験片が破壊されるまで加重を続け、曲げ強さを測定した。また、試験中に試験片のたわみの測定を行い、見掛けの曲げヤング係数を求めた。
試験装置:インストロン社製5900型万能試験機
試験方法:中央集中荷重方式
試験片寸法:幅20mm×高さ20mm×長さ320mm スパン280mm
荷重速度:5mm/min
<板材の強度試験測定条件>
以下の条件で本試験材に単調増加の曲げ荷重を加え、本試験材が破壊されるまで加重を続け、曲げ強さを測定した。また、試験中に試験体のたわみの測定を行い、曲げヤング係数を求めた。
試験装置:島津製作所社製1000kNiR実大強度試験機
試験方法:三等分点四点荷重方式
試験片寸法:幅130mm×高さ40mm×長さ2,000mm スパン1,500mm
荷重速度:15mm/min
3−6.腐朽試験
(1)評価システム
JIS Z 2101(2009)に準拠し、JIS K 1571(2010)を参考にした培養条件で腐朽試験を行った。実施例又は比較例で乾燥され、徳島県が調製した試験片(20 mm × 20 mm × 10 mm、20 mm × 20 mm × 20 mm)に、鉛筆で試料名を記載した。試験片を、60℃、48時間乾燥させた後、試験片の重量を測定した。試験片を、14時間、40℃でエチレンオキサイドガス滅菌した。
腐朽試験用培養ビンに、珪砂5号200 g、規定の培地(Agarは含まない) 50 mlを加えた。その上に、ネットを置いた。ふたには、直径10 mmの穴を2つ開け、フィルター(0.45 μm)でシールした。シールされた腐朽試験用培養ビンを121℃、40分滅菌した。室温に戻った腐朽試験用培養ビン内に、木材腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris TYP0507 (WD1080 MAFF-11-20001 JIS 0507)の菌糸ホモジネートを植菌した。27℃、75%RHにて、7日間静置培養した。滅菌済み腐朽試験片を、オオウズラタケが培養された腐朽試験用培養ビン1ビンあたり1片ずつ、木口面が菌糸に接するように置き、腐朽試験を開始した。試験は60日間行った。
(2)オオウズラタケ腐朽による重量減少率と菌糸量との関係の評価
腐朽試験に用いた試験片(20 mm × 20 mm × 20 mm)を使って、腐朽試験片の菌糸の侵入程度を評価した。
まずオオウズラタケのinternal transcribed spacer (ITS)領域をクローニングした。
つぎに、腐朽試験片中心部に存在する菌糸からゲノムDNAを抽出し、その中に存在する135 bpの領域をqPCRで定量し菌糸量を相対的に比較した。
具体的には、以下の方法にしたがって、菌糸量を定量した。
腐朽試験の重量減少率が高い物から低い物まで含むように、試験片(20 mm ×20 mm ×20 mm)を選択した。試験片は腐朽試験後60℃48時間乾燥させ、サンプルとして用いた。
各サンプルを、木口面の対角線に沿ってサンプルの軸方向にカッターナイフで切り、木口面に対して対角線で軸方向に4分割し、1サンプルから4つの三角柱の木片を作製した。
各サンプルから得られた三角柱の木片について、分割前の両端の木口面の中心同士を結ぶ辺において、その中心辺りを鑢で削り、各木片から木粉を採取した。鑢は、両刃スリ込鑢 100 mm Tsuboman (Feather edge file, 100 mm Tsuboman File Co. LTD.)を使用した。
採取された木粉を2 ml-microcentrifuge tubeに入れ、秤量した。約10 mgをDNA抽出に使用した。
各木粉は、Tungsten Carbide Beads,3mm (QIAGEN #69997)を3個、Phire Plant Direct PCR Kit(without sampling tools 500 reactions; Thermo Scientific #F130WH )に入っているdilution buffer 200 μl加え、QIAGEN Tissuelyser IIで25 Hz 1 minの粉砕を3回10秒のインターバルをおいて行った。
17900 g 60 min遠心し、上澄み液を回収した。上澄み液を1000培に希釈した0.001× 希釈液を調製し、PCR用サンプルとした。
検量線を作成するための標準品は、Fomitopsis palustris TYP0507(WD1080 MAFF-11-20001 JIS 0507)からクローニングされたITS領域591 bpがpTA2ベクターに組み込まれたプラスミドを用いた。このITS領域が、分子数として、2.5 × 107、2.5 × 106、2.5 × 105、2.5 × 104、2.5 × 103、2.5 × 102に調整し、以下のPCR反応を行い検量線を作成した。
PCR反応液(KOD SYBR qPCR Mix 5 μl、Primer 10 μM 111516 F. palustris qRT-PCR-f1(配列番号1:ACACACCTGTGCACACACTG) 0.32 μl、Primer 10 μM 111516 F. palustrisqRT-PCR-r1(配列番号2:GCGTTAGACGCAAGAGTACATT) 0.32 μl、超純水3.36 μl、サンプル液 (0.001× 希釈液) 1 μl、又は検量線プラスミド1μl)を調製し、以下の条件でPCR反応を行った。
PCR 反応条件
94℃ 2 min→(98℃ 10 sec→65℃ 30 sec→68℃ 30 sec)×45サイクル
Melting test 反応条件
95℃ 2 min→(65℃ 30 sec→95℃ 30 sec)×Step size 0.5
3−7.耐蟻試験
(1)室内飼育イエシロアリコロニーの維持と活性の評価
餌木及び水の定期的な補充を実施するとともに、無処理スギ辺材試験体に対する摂食活性を調査し、JIS K 1571(2010)における試験成立基準、すなわち20 mm x 20 mm x 10 mmの試験体における3週間後の質量減少率15%を満たしていることを確認した。4回の調査における平均質量減少率は18.7%であった。
(2)耐蟻試験
活性が維持されていることが確認されたイエシロアリコロニーを用いて、耐蟻試験を行った。9種類の異なった条件で乾燥した試験片についてナンバリングを行うとともに、JISに準拠した方法、すなわち60℃で48時間乾燥して試験前乾燥質量を測定した。
耐蟻試験は、JIS K 1571(2010)に準拠したして行った。具体的な方法は以下の通りである。試験容器は、底部を硬石膏で固めた内径80mm、高さ60mmのアクリル製円筒容器である。1試験容器につき、試験片1片(プラスチック製網の上にセット)とイエシロアリ職蟻150頭+兵蟻15頭を投入し、蒸留水で湿らせた脱脂綿上に置いて水分を補給しながら、シロアリ飼育室内で暗所下、28±2℃、相対湿度80%以上で保管した。3週間後にシロアリの死亡率と試験片の重量減少量を測定した。なお、利用可能なシロアリの頭数を勘案し、2本の丸太からの同一部位の板材を用いて試験を実施した(計60試験片)。
3−8.成分分析
スギに含まれる耐蟻及び耐腐朽菌活性成分を20×20×10mmの試験片から効率よく抽出するため、試験片を剪定バサミで約3×3×10mmに断片化した後、液体窒素を用いて凍結、粉砕した。内部標準として、スギに含まれないセスキテルペンであるβ-カリオフィレンを使用した。樹齢や乾燥条件の異なる117種の試験片×n=3の合計351個の試験片からn-ヘキサンを用いて成分の抽出を行った。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、高速液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を用いて定量した。
4.評価結果
4−1.乾燥条件の評価
4−1−1.乾燥予備試験における評価
木材の腐朽特性やシロアリ食害特性に対する人工乾燥温度の影響を基礎的に調査するため、本実験は板材、角材をそれぞれエンドマッチして各乾燥条件で乾燥した。この木材の腐朽特性やシロアリ食害特性は乾燥温度だけではなく、その熱をかけた時間、すなわち含水率15%までの乾燥時間にも影響するものと考えられる。そこで、各乾燥温度、各乾湿球温度差の板材の乾燥時間を比較した(図5)。乾湿球温度差が小さいほど乾燥時間は大きくなり、10℃と20℃では比較的乾燥時間の差が小さいことがわかった。また、乾燥温度が高いほど乾燥時間は短い。
角材の乾燥においても各乾燥条件で乾燥時間を比較したところ、同様に乾燥温度が高いほど乾燥時間は短く、乾湿球温度差が大きいほど乾燥が短い(図6)。なお、今回の80年生丸太で黒心が見られた。
各種乾燥に伴う板材幅方向の収縮率を測定したところ、すべてではないが高温ほど大きい傾向が見られる。その原因については現状では不明で、さらなる調査解析が必要である。(図7)。
乾燥前後の材面材色変化の大きさを測定した。板材、角材とも乾燥温度が高いほど、乾湿球温度差が小さいほど材色変化が大きい傾向が見られる。(図8、図9)。
上述した温湿度条件で乾燥した結果、これら乾燥条件により乾燥時間で5倍以上の違いが見られた。特に温度50℃の乾燥や、乾湿球温度差5℃の乾燥では長時間の乾燥期間を要することがわかった。
4−1−2.本試験における評価
(1)本試験材の中から選択した含水率測定用サンプル材を、乾球温度90℃、湿球温度70℃(乾湿球温度差20℃)で乾燥した結果、約50時間の乾燥により含水率が13%以下となった(図10(a))。試験に供した本試験材全ての含水率が15%以下となった(図10(b))。
(2)本試験材の平均の収縮率と収縮量の総平均は、幅方向では3.1%、約4mm、厚さ方向では3.3%、約1.3mmとなった(表2、表3)。
(3)Lab表色系により本試験材の材面を測色した結果、 L値,a値及びb値の全ての値が僅かに減少し、色差の平均値は9.14となった(図10(c))。
(4)乾燥本試験後、材面に割れが発生した本試験材の割合は13%、平均の割れ長さは180mmであった(図10(d))。
乾燥条件が乾球温度90℃、湿球温度70℃と、比較的高い温度に加えて乾湿球温度差を大きくすることにより、短時間で目標含水率以下にまで乾燥が進行した。
一般的には、乾燥温度が高くなると耐久性が低下すると考えられている。しかし、本実施例では、50℃、70℃及び90℃で比較した結果、90℃でも良好な強度が得られた。
乾燥時間は乾球温度が高いほど短くなるため、乾燥温度だけでなく、乾燥時間が短いほど木材の耐久性が高くなることが示唆された。
一般的な木材の人工乾燥スケジュールでは、通常、徐々に昇温させるとともに段階的に乾湿球温度差を広げていくが、今回は乾燥温度を直ちに90℃まで昇温させて乾湿球温度差を20℃としたにも関わらず、材面に生じた損傷等は比較的少ない結果であった。
4−2.強度の評価
4−2−1.乾燥予備試験で得られた試験片の評価
乾燥予備試験の各条件で得られた試験片を用いて曲げ試験を行った。
乾燥条件別強度性能試験結果について、表4に示す。強度性能試験では、コントロールと実施例の試験片の間で差は認められなかった。
4−2−2.乾燥本試験で得られた本試験材の評価
本試験材の曲げ試験について、乾燥前試験体(平均含水率31.6%)の曲げヤング係数の平均値で6.6 GPa、曲げ強さの平均値で35.7 MPaを得た。同様に、乾燥後試験体(平均含水率9.24%)の曲げヤング係数の平均値で7.7 GPa、曲げ強さの平均値で40.6 GPaを得た。
本試験材について、乾燥本試験の条件で乾燥処理を施した試験体と施していない試験体に分けて製材JASを参考にして曲げ試験を行い、乾燥処理が強度性能に与える影響を明らかにした。
その結果、曲げヤング係数について平均値は16.9%増加した。また、曲げ強さについて平均値は13.8%増加した。曲げヤング係数の平均値は製材JAS機械等級区分のE70同等であり(表5、図11(a),(b))、良好な強度を得た。
4−3.腐朽試験
(1)腐朽試験
各乾燥条件において乾燥予備乾燥を行った試験片の一部の個別の重量減少率を図12−1〜図12−4に示す。さらにこれらの結果を基にして、上記の結果に関し、i.人工乾燥及び天然乾燥を施した心材の重量減少率が、辺材コントロールの重量減少率と比較して、統計的に優位に小さいか否か、ii.人工乾燥を施した心材の重量減少率が、天然乾燥を施した心材の重量減少率と比較して、統計的に優位に小さいか否か、観点から、表6に取りまとめた。
今回行った実験条件では、(乾燥温度, 乾湿球温度差)が(50, 20), (70, 5), (70, 20), (90, 20)の条件が、天然乾燥と統計的に差が認められない、耐腐朽性を与える乾燥条件と考えられる。さらに、乾燥にかかる時間を考慮すると、(90, 20)の条件が最適であると考えられる。
(2)オオウズラタケ腐朽による重量減少率と菌糸量との関係の評価
木粉1 mgあたりに含まれるITS領域の分子数と重量減少率との関係を図13に示す。ここで、木粉1 mgあたりに含まれるITS領域の分子数は、木粉1 mgあたりに含まれる菌糸量と正の相関を持つ。従って、図13の縦軸は、木粉1 mgあたりに含まれる菌糸量の相対値とも見てとれる。
重量減少率が大きいと、木粉1 mgあたりに含まれる菌糸量も高く、重量減少率が低いと、木粉1 mgあたりに含まれる菌糸量も低い傾向が観察された。この結果は、腐朽の際、木材に侵入する菌糸の量に依存して腐朽が進行していることを強く示唆している。即ち、木材に侵入する菌糸の量が高くても、有る理由により腐朽が行われないというわけではない事を示していると考えられる。
その結果から考えると、この度の実験において腐朽の防止は、たとえ木材の周りに菌糸がまとわりついていたとしても、木材中への菌糸の侵入を阻害したことが主な原因となっていると示唆される。
乾燥条件即ち乾燥温度と乾湿球温度差と耐腐朽性との関連性については、一般的な傾向は見いだせなかった。しかし、結果として、 (乾燥温度, 乾湿球温度差)が(50, 20), (70, 5), (70, 20), (90, 20)の木材乾燥条件が、天然乾燥と統計的に差が認められない、耐腐朽性を与えた。さらに、耐腐朽性を付与する機構に関しては、木材の周りに菌糸がまとわりついていたとしても、木材への菌糸の侵入を阻害することにより、耐腐朽性を付与していることが示唆された。
4−5.耐蟻耐性評価
計60個の試験片の結果を、3試験片の平均質量減少率及び標準偏差として表7に示す。丸太No.5からの板材5で、乾湿球温度差が20℃の時にすべての乾燥温度において平均質量減少率が3.4〜3.8%となり、天然乾燥材(平均質量減少率3.5%)とほぼ同一の耐蟻性能を示した。一方、乾湿球温度差が5℃あるいは10℃の場合は、平均質量減少率は6.4〜11.4%となり、乾湿球温度差が20℃の結果と比較して明らかに低い耐蟻性能を示した。丸太No.6からの板材5では、乾湿球温度差が5℃の時に平均質量減少率が6.3〜6.9%、乾湿球温度差が10℃の時に平均質量減少率が4.7〜5.0%、乾湿球温度差が20℃の時に平均質量減少率が5.8〜6.7%となり、明瞭な差は観察されなかった。この板材における天然乾燥の場合の平均質量減少率は6.1%であった。
コロニーへの80日間の暴露試験の結果、48個の試験片のうち14試験片で蟻道の構築が認められた。蟻道を取り除いてみたところ、14試験片のうちでイエシロアリによる食害が認められたのは3試験片の限られた部分、すなわち、辺材部分を含む1試験体の辺材部分(図14(a))及び1天然乾燥材(図14(b))と乾燥温度90℃の1試験片の節の周囲の部分(図14(c))のみであった。すなわち、用いた心材試験体は天然乾燥材と比較して同等の耐蟻性を有していた可能性が高い。
今回の乾燥条件の中で天然乾燥材の有する耐蟻性等のレベルを達成できる乾燥条件、より具体的には、乾燥温度50℃〜90℃、乾湿球温度差20℃の乾燥条件が、存在することが示された。
コロニー暴露試験の結果、食害を受けた部位が辺材及び節周囲の部分に限られていたことから丸太及び乾燥温度と耐蟻性能との相関関係は明瞭ではなかった。しかしながら、今回の暴露試験に使用した試験片が、天然乾燥材と比較して著しい耐蟻性の低下を引き起こしことはないといえる。
4−6.成分分析結果
スギ心材粗抽出画分が木材腐朽菌オオウズラタケの生長に及ぼす影響を調べた。スギ心材抽出エキスを、シリカゲルを用いて分画し、極性の低いものから順にFr. A〜Fr. Mを得ることができた。各画分について試験を行った結果、最も生育阻害活性が強い画分はFr. Dで、500 mg / Lの濃度で生育を57 % に阻害することが判明した。(図15(a)、(b))
スギに関しては、これまで耐腐朽菌活性成分の探索は行われていない。そこで、これまでヒノキ等の耐腐朽菌活性成分として知られているカジノール、耐蟻成分であるクリプトメリオンについて、心材抽出エキスを分析した。その結果、カジノール、クリプトメリオンなどのセスキテルペン類の含量は、丸太の個体による差が大変大きいことが明らかになった。また、乾燥条件とこれら成分の含量との関係は特に見られなかった。

Claims (9)

  1. 下記工程を含む、スギ木材の乾燥方法(但し、前記乾燥方法は、蒸煮工程を含まない):
    乾球温度T1及び湿球温度T2である処理環境にスギ木材を暴露する工程であって、
    T1が50℃〜95℃であり、T1>T2であり、T1とT2の差が5℃〜25℃である、工程。
  2. T1は68℃〜92℃である、請求項1に記載の乾燥方法。
  3. T1とT2の差が8℃〜22℃である、請求項1又は2に記載の乾燥方法。
  4. 処理環境の気圧が乾燥雰囲気圧である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾燥方法。
  5. スギ木材が、板材である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乾燥方法。
  6. 処理時間が、10時間〜60時間である、請求項5に記載の乾燥方法。
  7. 処理部を備えた乾燥制御装置であって、処理部は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥方法を実行する、スギ木材の乾燥制御装置。
  8. 木材を乾燥するための乾燥装置と、請求項7に記載の乾燥制御装置とを備える、スギ木材の乾燥システム。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の乾燥方法をスギ木材の乾燥制御装置に実行させるための、コンピュータプログラム。
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