JP2019151832A - コアシェル型量子ドット分散液の製造方法及び量子ドット分散液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
金属窒化物ナノ粒子の中でも、所定のバンドギャップを有する半導体微粒子で構成されるコアと、コアの表面を被覆する、コアよりも大きいバンドギャップを有する半導体で構成されるシェルとを備えるコアシェル型量子ドットが注目されている。
この製造方法により得られるコアシェル型量子ドットは、前記励起光の連続照射により、前記蛍光の発光強度が増大する。これにより、本発明の製造方法により得られるコアシェル型量子ドットは、長期安定に優れた発光特性を備えるものである。
所定のバンドギャップを有する半導体微粒子で構成されるコアと、コアの表面を被覆する、コアよりも大きいバンドギャップを有する半導体で構成されるシェルとを備え、前記コアが金属窒化物から構成され、前記シェルがZnSから構成されており、励起光の連続照射により蛍光を発光するコアシェル型量子ドットを分散媒中に分散させてなる、コアシェル型量子ドット分散液の製造方法は、
以下の(α1)〜(α4)の各工程を備えている。
(α2)前記反応溶液を所定の第1温度に加熱し、前記第1化合物と前記金属アミドとの加熱反応によりコアを合成し、加熱反応により生成される副生成物を前記可溶化剤により前記溶媒に分散させる工程と、
(α3)コア合成後の反応溶液にシェルの原料である亜鉛を含有する第2化合物とこの第2化合物に含有される亜鉛を硫化するための硫黄供給源とを含ませ、これら第2化合物及び硫黄供給源を含ませた反応溶液を所定の第2温度に加熱し、前記第2化合物と前記硫黄供給源との加熱反応により生成されるZnS膜からなるシェルで前記コアを覆いコアシェル型量子ドットを形成する工程と、
(α4)前記第2化合物と前記硫黄供給源との加熱反応後の反応溶液からコアシェル型量子ドットを抽出して前記分散媒中に分散させる工程と、
を含み、
前記反応溶液を調製する工程において、HMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)からなる結晶成長抑制剤をさらに混合することを特徴とする。
特に、前記反応溶液を調製する工程において、HMDSからなる結晶成長抑制剤をさらに混合することにより、上述した本発明(第一発明)によれば、コアシェル型量子ドットを分散媒中に分散させてなるコアシェル型量子ドット分散液が安定して得られる。
本発明(第一発明)において、前記電子受容体として、窒化する金属の酸化還元電位よりも貴な方向となる位置に酸化還元電位を持つヨードホスフィン、ハロゲン、超原子価ヨウ素試薬類、ヨウ素化剤、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−クロロこはく酸イミド、N−プロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、ニトロキシルラジカル、硫黄、アルキルチオール、アルキルジスルフィド、アルキルトリスルフィド、テトラシアノキノジメタン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン及びクラウンエーテルから選択された少なくとも1つを用いてもよい。
所定のバンドギャップを有する半導体微粒子で構成されるコアが金属窒化物から構成され、励起光の連続照射により蛍光を発光する量子ドットを分散媒中に分散させてなる、量子ドット分散液の製造方法は、
以下の(β1)〜(β3)の各工程を備えている。
(β2)前記反応溶液を所定の第1温度に加熱し、前記第1化合物と前記金属アミドとの加熱反応によりコアを合成し、加熱反応により生成される副生成物を前記可溶化剤により前記溶媒に分散させる工程と、
(β3)加熱反応後の反応溶液から量子ドットを抽出して前記分散媒中に分散させる工程と、
を含み、
前記反応溶液を調製する工程において、HMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)からなる結晶成長抑制剤をさらに混合することを特徴とする。
特に、前記反応溶液を調製する工程において、HMDSからなる結晶成長抑制剤をさらに混合することにより、上述した本発明(第二発明)によれば、量子ドットを分散媒中に分散させてなる量子ドット分散液が安定して得られる。
分散媒Ldに好適な有機溶媒としては、たとえば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンのような主鎖の炭素数が6〜18である長鎖アルカン;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデセンのような環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼンのような芳香族炭化水素;ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオールのようなアルコール;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、フェニルエーテルのようなエーテル;ジメチルホルムアミド、N−N’−ジメチルプロピレン尿素、トリス(N,N−ジメチルアミノ)ホフフィンオキシド、ジアザビシクロウンデセン、が挙げられる。
実験例1〜5は「窒化物コアの合成例」であり、実験例6〜10は「窒化物コア/ZnSシェルの構成例」、実験例11〜15は「その他の構成例」である。
(実験例1):InN
本実験例1は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をInNとした量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.050g(0.1ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムをエタノール中に分散させ、InNで構成されるコアのみからなる量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて量子ドット分散液を得た。
本実験例2は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をInGaNで構成した量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.3ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.7ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InGaNで構成されるコアのみからなる量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて量子ドット分散液を得た。
本実験例3は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をInNで構成した量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.05g(0.1ミリモル)と、金属アミドとし
ナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InNで構成されるコアのみからなる量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて量子ドット分散液を得た。
本実験例4は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をGaInNで構成した量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.03ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.07ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、GaInNで構成されるコアのみからなる量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて量子ドット分散液を得た。
本実験例5は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をZnInNで構成した量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.025g(0.5ミリモル)及びヨウ化亜鉛0.16g(0.5ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、ZnInNで構成されるコアのみからなる量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて量子ドット分散液を得た。
(実験例6):InN/ZnS
本実験例6は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をInN、シェル2をZnSとした量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.050g(0.1ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、亜鉛源として0.1Mステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液(第2化合物に相当)1ml(0.1ミリモル)を加え、260℃(第2温度)で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InN/ZnSで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
本実験例7は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をInGaN、シェル2をZnSで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.3ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.7ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、亜鉛源として0.1Mステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液(第2化合物に相当)1ml(0.1ミリモル)を加え、260℃(第2温度)で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InGaN/ZnSで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
本実験例8は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をInN、シェル2をZnSで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.05g(1ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、亜鉛源として0.1Mステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液(第2化合物に相当)1ml(0.1ミリモル)を加え、260℃(第2温度)で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InN/ZnSで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
本実験例9は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をGaInN、シェル2をZnSで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.03ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.07ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(1ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、亜鉛源として0.1Mステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液(第2化合物に相当)1ml(0.1ミリモル)を加え、260℃(第2温度)で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、GaInN/ZnSで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
本実験例10は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用せず、コア1をZnInN、シェル2をZnSで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.025g(0.5ミリモル)及びヨウ化亜鉛0.16g(0.5ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、260℃(第2温度)で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。なお、第2化合物は、残留する硫黄供給源である。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、ZnInN/ZnSで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
図5は、発光スペクトルの照射時間依存性を示すグラフであり、実験例4(HMDS使用したGaInN)の量子ドットについて評価した結果である。
(A1)本発明の量子ドットは、励起光の連続照射により蛍光を発光する。
(A2)本発明の量子ドットは、前記励起光の連続照射により、すなわち照射時間が長くなるに連れて、前記蛍光の発光強度(ピーク強度)が増大する。
(A3)従来例の量子ドットは、励起光の連続照射により蛍光を発光するが、照射時間が長くなるに連れて、前記蛍光の発光強度(ピーク強度)が減少する。
以上の結果より、本発明によれば、安定性(堅牢)と蛍光特性(発光)を兼ね備えたコアシェル型量子ドットが得られることが分かった。また、前記励起光の連続照射により、前記蛍光の発光強度が増大することから、本発明のコアシェル型量子ドットは、長期安定に優れた発光特性を備えることが確認された。
蛍光特性の評価において、×印は全く発光しないことを、○印は蛍光の発光が確認されたことを、各々表している。
寿命の評価において、−印は蛍光が見られないことを、○印は励起光を3時間連続照射で初期値の蛍光強度を維持している(Intenshity規格値が1.0以上である)ことを、×印は励起光を3時間連続照射した時点で蛍光強度の減衰が確認できる(Intenshity規格値が1.0を下回る)ことを、各々表している。
(B1)HDMSを含有する量子ドット(実験例3、4)は、波長550〜600nm付近に発光スペクトル(蛍光)が確認され、蛍光ピーク波長は576nm(半値幅FWHM:195nm)であった。
(B2)HDMSを含有しない量子ドット(実験例1、2)は、波長550〜600nm付近に、発光スペクトルは確認されなかった。(励起光のみ観測されている)
(B3)上記(B1)と(B2)の結果は、コアを構成する材料(InN、GaInN)に依存しない。
(B4)コアを構成する材料が、Gaに代えてZnを含む場合(実験例5:ZnInN)は、波長550〜600nm付近に発光スペクトル(蛍光)が確認され、蛍光ピーク波長は579nm(半値幅FWHM:134nm)であった。この場合(実験例5)は、優れた蛍光特性を持つ反面、寿命が短いことが分かった。
以上の結果より、本発明のコアシェル型量子ドットにおける、安定性(堅牢)と蛍光特性(発光)は、コア1がHMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)からなる結晶成長抑制剤を含んだ合成プロセスで生成されることによって達成されていることが確認された。
実験例4(GaInN)の場合、蛍光ピーク波長は576nm(半値幅FWHM:195nm)であり、CIE(x,y)は(0.440,0.460)であった。
実験例5(ZnInN)の場合、蛍光ピーク波長は579nm、(半値幅FWHM:134nm)であり、CIE(x,y)は(0.478,0.474)であった。
以上の結果より、実験例4(GaInN)のコアシェル型量子ドットは、実験例5(ZnInN)のコアシェル型量子ドットと同様の発光波長で発光可能であることが確認された。
加えて、得られたInN量子ドットに対し、X線光電子分光(XPS)を利用し、Inの3d5/2軌道のナロースキャン分析を行った。XPSにて前記軌道の結合エネルギーを測定したところ、In−In結合に由来する443.5eVに該当するピークが見られないことが確認された。当然ではあるが、444.0eVのIn−Nのピークがメインとして観測され、純度が高いInNナノ粒子が得られていることが確かめられた。
図14より、以下の点が明らかとなった。
(C1)左側の瓶内の試料(InN)は、合成直後の写真と大気中1ヶ月後の写真を比べて、試料の色合いに変化が見られなかった。
(C2)右側の瓶内の試料(InP)は、合成直後の写真と大気中1ヶ月後の写真を比べて、試料の色合いに変化があり、光の吸収特性に変化が見られ材料の変質が確認された。
以上の結果より、InPに比べてInNの方が、定性的に安定な可能性があることが推察された。
図15より、以下の点が明らかとなった。
(D1)試料がInNの場合は、大気中1ヶ月後における光学エネルギーギャップの変化量が、+0.05eVであった。
(D2)試料がInPの場合は、大気中1ヶ月後における光学エネルギーギャップの変化量が、+0.17eVであった。
以上の結果より、InPに比べてInNの方が、光学的な安定性が高いコアが得られることが確認された。
本実験例11は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をInN、シェル2をIn2O3で各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.05g(1ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InNで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。大気中で励起光を照射し、表面酸化を行ったところ、InNコアのみの量子ドットと比較し蛍光強度の増大が見られた。なお、第2化合物は大気中の酸素であり、第2の温度は常温と言える。
本実験例12は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をInN、シェル2をIn2S3で各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.05g(1ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、第2温度である260℃で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。なお、第2化合物は残留する硫黄供給源である。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、InNで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
本実験例13は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をGaInN、シェル2をGaInOxで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.3ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.7ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、反応溶液を室温まで冷却した。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、GaInNで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。大気中で励起光を照射し、表面酸化を行ったところ、GaInNコアのみの量子ドットと比較し蛍光強度の増大が見られた。なお、第2化合物は大気中の酸素であり、第2の温度は常温と言える。
本実験例14は、結晶成長抑制剤(HMDS)を使用して、コア1をGaInN、シェル2をGaInSxで各々構成したコアシェル型量子ドットの分散液の製造方法について説明する。
第1化合物としてヨウ化インジウム0.015g(0.3ミリモル)及びヨウ化ガリウム0.032g(0.7ミリモル)と、金属アミドとしてナトリウムアミドを0.04g(5ミリモル)と、可溶化剤としてトリオクチルホスフィンオキシドを0.44g(1.14ミリモル)と、硫黄供給源としてドデカンチオール0.02g(0.3ミリモル)と、結晶成長抑制剤としてHMDS(0.3ミリモル)、溶媒としてDOWTHERM A2mlとを反応容器内で混合して反応溶液を調製した。この反応溶液を220℃(第1温度)まで急速に(150℃/min)加熱して10分保持した後、第2温度である260℃で加熱し、20分保持したのちに反応溶液を室温まで冷却した。なお、第2化合物は残留する硫黄供給源である。
冷却された反応溶液にオレイン酸0.5mlとエタノール20mlを加え、反応溶液に残存する副生成物であるヨウ化ナトリウム、ナトリウムチオラートやオレイン酸ナトリウムを分散させ、GaInNで構成されるコアシェル型量子ドットを遠心分離により沈降させ、この工程を3回繰り返した。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させてコアシェル型量子ドット分散液を得た。
従来、金属窒化物QDの研究を妨げている、長い反応時間、金属インジウムの汚染、制御不可能な単一のナノ粒子サイズなど、いくつかの深刻な問題が存在していた。本発明者らは、これらの問題を解決するために、穏やかな条件(220℃、10分、0.15MPa)でInN量子ドットを効率的に合成する方法を開発した。後述する実験例21〜25にて、本発明者らが開発した方法について詳細に述べる。この方法によれば、合成したInNナノ結晶は金属インジウムで汚染されておらず、その平均直径は図17(c)に示すように約2〜6nmであり、有機溶媒中での長期間安定した分散を示している。さらに、この方法を用いて合成したGaInNおよびZnInNナノ粒子は、フォトルミネッセンス(PL)を示した。
化学物質:ヨウ化インジウム(99.99%)、ヨウ化ガリウム(99.99%)およびヨウ化亜鉛(99.99%)は、日本のKojundo Chemicalから購入した。
ナトリウムアミド(98%)およびオクタデカンチオール(98%、ODT)はSigma−Aldrichから購入した。
オレイルアミン(>50.0%、OLA)、トリオクチルホスフィンオキシド(> 95.0%、TOPO)、およびフェニルエーテル(>99%)は、日本のTCIから購入した。
ヘキサメチルジシラザン(>98%、HMDS)、オレイン酸(>85%、OA)、およびシクロヘキサン(99.5%)は、日本の関東化学から購入した。
蒸留後にOLAを使用した。他の化学物質はそれ以上精製せずに使用した。
以下では、OLA−InN 量子ドット(OLA−InN QDとも呼ぶ)の作製方法について述べる。本作製方法は、以前に報告された作製方法に従って、いくつかの修正を加えて合成された。
グローブボックス内の10mLバイアル中でヨウ化インジウム(0.05g、0.1mmol)、ナトリウムアミド(0.04g、1mmol)、およびOLA(0.1mL、0.03mmol)を1.5mLのフェニルエーテル(1.5mL)と混合した。
その後、バイアルを220℃(150℃/分)に加熱し、その温度に10分間保った後、室温(RT)に冷却した。
次に洗浄工程として、0.5mLのOAを加え、そして混合物を室温で撹拌して配位子を交換しそして過剰のナトリウムアミドを除去し、QDを20mLのエタノールで沈殿させ、6000rpmで3分間の遠心分離するまでの工程を、3回行うことにより、QDを集めた。この沈降物を分散媒としてのシクロヘキサン中に再分散させて、量子ドット分散液を得た。
以下では、TOPO−InN 量子ドット(TOPO−InN QDとも呼ぶ)の作製方法について述べる。
0.03mmolのOLAに替えて0.5mL(0.11mmol)のTOPOを使用した点のみ、実験例21に記載した合成方法と異なる。他の点については、実験例21に記載した合成方法と同様にした。
以下では、TOPO/ODT−InN 量子ドット(TOPO/ODT−InN QDとも呼ぶ)の作製方法について述べる。
0.03mmolのOLAに替えて0.5mL(0.11mmol)のTOPOおよび0.1mL(0.03mmol)のODTを使用した点のみ、実験例21に記載した合成方法と異なる。他の点については、実験例21に記載した合成方法と同様にした。
以下では、TOPO/ODT− GaInN 量子ドット(TOPO/ODT−GaInN QDとも呼ぶ)の作製方法について述べる。
ヨウ化インジウム(0.025g、0.05mmol)、ヨウ化ガリウム(0.023g、0.05mmol)、ナトリウムアミド(0.04g、1mmol)、TOPO(0.5mL、0.11mmol)、ODT(0.1mL、0.03mmol)およびHMDS(グローブボックス内の10mLバイアル中で、0.062mL、0.03mmol)を1.5mLのフェニルエーテル(1.5mL)と混合した。
次いで、バイアルを220℃(150℃/分)に加熱し、その温度に10分間保った後、室温に冷却した。
精製工程は、実験例21(OLA−InN QD)に記載した合成方法と同様にした。
以下では、TOPO/ODT−ZnInN 量子ドット(TOPO/ODT−ZnInN QDとも呼ぶ)の作製方法について述べる。
ヨウ化インジウム(0.025g、0.05mmol)、ヨウ化亜鉛(0.016g、0.05mmol)、ナトリウムアミド(0.04g、1mmol)、TOPO(0.5mL、0.11mmol)、およびODT(0.1mL、0.03mmol)を混合した。
グローブボックス中の10mLバイアル中に1.5mLのフェニルエーテル(1.5mL)を加えた。
次いで、バイアルを220℃(150℃/分)に加熱し、その温度に10分間保った後、室温に冷却した。
精製工程は、実験例21(OLA−InN QD)に記載した合成方法と同様にした。
X線回折(XRD)パターンは、Cu KαX線源(λ= 1.5418Å)を備えたBruker D8 DISCOVERを使用することによって得た。
XRD分析用のサンプルは、シクロヘキサン中に分散させた精製QDをガラス基板上にドロップキャスティングすることによって調製した。
200kVで動作するJEOL JEM−ARM200F顕微鏡を使用して、透過型電子顕微鏡(TEM)および高角度環状暗視野走査TEM(STEM−HAADF)画像を得た。
TEMサンプルは、希釈したQDを炭素被覆200メッシュ銅グリッド上に滴下することによって調製した。
X線光電子分光法(XPS)スペクトルは、224.0eVの通過エネルギーおよび0.1eVのステップサイズを有するULVAC−PHI Quantera SXMを使用することによって得た。
全ての結合エネルギーは、C 1(284.6eV)を用いて較正した。
シクロヘキサン中に分散した量子ドット(QD)のUV−visスペクトルは、JASCO V−770 UV−vis−NIR分光光度計を使用して、1cmの光路長の石英キュベットで記録した。
シクロヘキサン中に分散されたQDのPLスペクトルは、大塚電子のMCPD−7000アレイ分光計(λexc=365nm)を用いて記録された。
図16(a)は、顕微鏡スライド上に調製されたInNナノ粒子の面外XRDパターンを示すグラフである。3種類の量子ドット(OLA−InN QD、TOPO−InN QD、およびTOPO/ODT−InN QD)のXRDパターンを並記してある。
以前の報告によれば、OLA−InN量子ドットのXRDパターンでは、インジウム金属に対応するピークが観察された[非特許文献4]。この観察結果は、おそらく、ナトリウムアミドの分解中に発生した電子によるInNの減少によるものである。
しかしながら、OLAの代わりにTOPOを配位子として使用すると、インジウム金属のXRDピークは消失した。TOPOを添加することにより、有機溶媒中のナトリウムアミドの分散能力が改善され、InNの粒子成長はより速くなる傾向があった。
TOPOとODTを共添加するとInN(002)の回折ピークがシャープになることが明らかになった。これはナトリウムアミドを取り囲む極性の高いTOPO分子が電子の分解や生成を防ぐためと考えられる。
TOPO−InN QDの懸濁液は、OLA−InN QDとは対照的に凝集体を形成せず、そして1ヶ月以上にわたって有機溶媒中で安定な分散を示した。
TOPO/ODT−InN QDの懸濁液もまた、同様の均一分散を示した。
以上の結果より、合成中にインジウム金属の形成が抑制され、TOPOを添加することによってシクロヘキサン中での安定な分散が達成されることが分かった。
図17(b)は、TOPO−InN QDのSTEM−HAADF画像である。
図17(c)は、TOPO/ODT−InN QDのSTEM−HAADF画像である。
図17(b)および図17(c)の挿入図は、QDのサイズ分布ヒストグラムおよび対応する標準偏差である。
図17(d)は、量子ドットの拡大TEM像である。
図17(e)は、TOPO/ODT−InN QDの拡大TEM画像である。
図17(b)は、TOPO−InN QDは、2〜3個の粒子を含む凝集体の形態であり、それらの平均直径は4.3nmであり、標準偏差は約38%であった。
図17(a)で観察されたインジウム金属の粒子は、図17(b)では同定されなかった。これにより、TOPOの添加により、インジウム金属は量子ドット(QD)を汚染しなかったことが分かった。
図17(c)は、TOPO/ODT−InN QDの平均直径が2.9nmであり、標準偏差が約45%であることを示している。
したがって、粒径は、ODTを添加することによって、分散を含め、小さくなるように制御された。
粒子は凝集しているように思われるが、それらがTEM用の試料調製中にまたは合成時に凝集したかどうかは明らかではない。
これは、InN量子ドットのインジウム金属への分解抑制と、励起子ボーア半径以下の粒子径制御を同時に達成した最初の報告である。
さらに、図17(d)および図17(e)は、InNの(100)格子縞に対応する、0.31nmの格子定数を有するTOPO−InNおよびTOPO/ODT−InN QDの結晶度を示す。
図18(b)は、バックグラウンドを除去した後に、In3d5/2スペクトルを関数を用いてフィットさせたグラフである。
図18(a)に示したN 1s光電子エネルギー領域図では、ピークは2つの成分に分けられた。
図19は、N1sスペクトル及びIn3d5/2スペクトルに関するPeekとFWHMを示す一覧表である。
これらのピークの起源は、InNナノ結晶およびナノ粒子表面上の欠陥であると同定された。
これに対して、図18(b)に示したIn3d5/2の場合は、444.0eV付近のピークはIn−N結合のInに帰属し、445.0eVのピークはIn−O結合のInに帰属した。
In−N結合はInN結晶に由来し、In−O結合は表面のOA配位に由来すると考えられる。
一方、In−In結合に帰属することができる443.5eVでのピークは観察されず、インジウム金属が量子ドット(QD)の副産物として形成されなかったことを示唆している。
さらに、XPSワイドスキャン測定の結果に基づいて、ナトリウム汚染の量は驚くべきことに検出限界未満(<0.1%)であることが分かった。
図20(b)は、量子ドットの光吸収スペクトルを示すグラフである。
図20(a)は、紫外可視分光測定の結果である。
特に、吸収開始波長は、ODTを添加することによって約50nmで青方偏移(blue shift)することが観察された。
1200nm付近のピークは、シクロヘキサンの強い吸収によって引き起こされる実験的なアーチファクトである。
図20(b)は、光吸収スペクトルを示す。
直接バンド間遷移の光学的エネルギーギャップ(Eg)と吸収係数(α)は、次の式(1)により関連付けられる[非特許文献4、5]。
TOPO−InN QD(図21ではSample bと呼ぶ)およびTOPO/ODT−InN QD(図21ではSample cと呼ぶ)のEg値は、それぞれ約1.66eVおよび約1.77eVであると推定された(図21)。なお、図21では、金属(Metallic)の場合をSample aと呼ぶ。
これは、ODTを添加すると、QDの平均直径が4.3nmから2.9nmに変化し、その結果、量子サイズ効果のためにより大きなエネルギーギャップが生じるためである。
したがって、量子ドットは、赤色蛍光体および太陽電池における光電変換材料としての使用に適している可能性がある。
図22(b)は、TOPO/ODT−GaInN QDおよびTOPO/ODT−ZnInN QDのPLおよび吸収スペクトルである。
図23は、GaInN量子ドット(QD)とZnInN量子ドットにおけるPLピークとFWHMを示す一覧表である。
その理由は、ナノ粒子表面に存在する欠陥が励起子の非放射再結合を引き起こしたからである。
コア/シェル構造を形成することによって、表面欠陥をカバーすることができ、コア内の励起子再結合の可能性が高まることが報告されている[非特許文献6]。
ZnInN量子ドットの場合、Plピークは579nm、FWHMは134nmであった[図22(b)、図23]。
本発明の合成方法は異なるが、混晶としての窒化亜鉛含有InNは先の研究で報告されたものと同じであると考えられる。
上述したように、発光窒化物量子ドットは、本発明の合成方法(第一発明、第二発明)を用いることにより安定して製造できることが確認された。
本発明者らは、原料にTOPOおよびODT配位子を共添加することにより、InNの分解を防ぎ、短い反応時間を達成することができる合成方法を開発した。
得られたナノ結晶は、XRDピークからInNとして同定され、およびシクロヘキサン中での安定な分散を示した。
さらに、以前報告された方法を使用して得られたものとは対照的に、結晶サイズは大きな不純物を含まず2〜6nmに制御された。
XPS測定は主にIn−N結合の存在を示し、In−In結合は観察されなかった。
また、InN量子ドットは特定の波長を吸収し、そのバンドギャップは光吸収スペクトルから1.66eV〜1.77eVと見積もられた。
また、本発明の方法で合成したGaInN量子ドットおよびZnInN量子ドットは、PLを示した。
本発明の方法(第一発明、第二発明)は、より堅牢で様々なオプトエレクトロニクス用途において高性能を示す新しいタイプの量子ドット(QD)を製造するために貢献する。
Claims (21)
- 所定のバンドギャップを有する半導体微粒子で構成されるコアと、該コアの表面を被覆する、該コアより大きいバンドギャップを有する半導体で構成されるシェルとを備え、
前記コアが金属窒化物から構成され、前記シェルがZnSから構成されており、励起光の連続照射により蛍光を発光するコアシェル型量子ドットを分散媒中に分散させてなる、コアシェル型量子ドット分散液の製造方法であって、
コアの原料である金属を含有する第1化合物と、該第1化合物に含有される金属を窒化するための窒素供給源として機能する金属アミドと、副生成物を溶媒に分散させる可溶化剤と、溶媒とを混合して反応溶液を調製する工程と、
前記反応溶液を所定の第1温度に加熱し、前記第1化合物と前記金属アミドとの加熱反応によりコアを合成し、加熱反応により生成される副生成物を前記可溶化剤により前記溶媒に分散させる工程と、
コア合成後の反応溶液にシェルの原料である亜鉛を含有する第2化合物とこの第2化合物に含有される亜鉛を硫化するための硫黄供給源とを含ませ、これら第2化合物及び硫黄供給源を含ませた反応溶液を所定の第2温度に加熱し、前記第2化合物と前記硫黄供給源との加熱反応により生成されるZnS膜からなるシェルで前記コアを覆いコアシェル型量子ドットを形成する工程と、
前記第2化合物と前記硫黄供給源との加熱反応後の反応溶液からコアシェル型量子ドットを抽出して前記分散媒中に分散させる工程と、
を含み、
前記反応溶液を調製する工程において、HMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)からなる結晶成長抑制剤をさらに混合する
ことを特徴とするコアシェル型量子ドッド分散液の製造方法。 - 前記反応溶液を調製する工程に先立ち、結晶核の原料を混合し、この混合された原料を所定の第3温度に加熱して結晶核を合成する工程をさらに含み、
前記反応溶液を調製する工程にて前記結晶核をさらに混合することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。 - 前記第2化合物と前記硫黄供給源との加熱反応後の反応溶液に、パッシべーション層の原料を加え、このパッシベーション層の原料が加えられた反応溶液を所定の第4温度に加熱し、前記シェルの表面を前記パッシベーション層で覆う工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記結晶核の原料として、ZnO、ZnS、ZnSe、InN、GaInN、GaN、AlN、AlInN、ZnMgO、InP、GaP、AlP、Zn3P2、Cd3P2、ZnPbN2、ZnSnN2、ZnGeN2、ZnSiN2、LiGaO2、LiAlO2、NaGaO2、NaAlO2、CuGaO2、及びAgAlO2から選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項2に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記パッシべーション層の原料として、ZnS、ZnSe、ZnO、ZnSO、ZnSSe、ZnSeO、MgO、InNxOx、GaNxOx、AlNxOx、In2O3、Ga2O3、Al2O3、SiO2、SiNOx、LiInO2、LiGaO2、LiAlO2、NaGaO2、NaAlO2、CuGaO2、AgAlO2、AgGaO2、及びAgInO2から選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項3に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記可溶化剤として、トリオクチルホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド類、トリアルキルホスフィンスルフィド類、トリアルキルホスフィンセレニド類、トリアルキルイミノホスホラン類、モノリン酸エステル類、ジリン酸エステル類、トリリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド及びN,N’−ジメチルプロピレン尿素から選択された少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記反応溶液を調製する工程において、電子受容体を更に混合することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記電子受容体として、窒化する金属の酸化還元電位よりも貴な方向となる位置に酸化還元電位を持つヨードホスフィン、ハロゲン、超原子価ヨウ素試薬類、ヨウ素化剤、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−クロロこはく酸イミド、N−プロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、ニトロキシルラジカル、硫黄、アルキルチオール、アルキルジスルフィド、アルキルトリスルフィド、テトラシアノキノジメタン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン及びクラウンエーテルから選択された少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項7に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記反応溶液を調製する工程において、前記コアシェル型量子ドットを覆う分散剤をさらに混合することを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記分散剤として、アルキルカルボン酸類、モノアルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類、トリアルキルホスフィン類、アルキルエステル類、アルキルチオール類、スルフィド類、トリカプリル酸グリセリン、アルキルニトリル類及びステアリン酸無水物から選択された少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項9に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記コアシェル型量子ドットを合成した後、酸解離定数が4.5より大きく、官能基の末端に水素を有する物質を反応溶液に添加し、反応溶液に残存する金属を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 前記物質として、オレイン酸又はドデカンチオールを用いることを特徴とする請求項11に記載のコアシェル型量子ドット分散液の製造方法。
- 所定のバンドギャップを有する半導体微粒子で構成されるコアが金属窒化物から構成され、励起光の連続照射により蛍光を発光する量子ドットを分散媒中に分散させてなる、量子ドット分散液の製造方法であって、
コアの原料である金属を含有する第1化合物と、該第1化合物に含有される金属を窒化するための窒素供給源として機能する金属アミドと、副生成物を溶媒に分散させる可溶化剤と、溶媒を混合して反応溶液を調製する工程と、
前記反応溶液を所定の第1温度に加熱し、前記第1化合物と前記金属アミドとの加熱反応によりコアを合成し、加熱反応により生成される副生成物を前記可溶化剤により前記溶媒に分散させる工程と、
加熱反応後の反応溶液から量子ドットを抽出して前記分散媒中に分散させる工程と、
を含み、
前記反応溶液を調製する工程において、HMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)からなる結晶成長抑制剤をさらに混合する
ことを特徴とする量子ドッド分散液の製造方法。 - 前記反応溶液を調製する工程に先立ち、結晶核の原料を混合し、この混合された原料を所定の第3温度に加熱して結晶核を合成する工程をさらに含み、
前記反応溶液を調製する工程にて前記結晶核をさらに混合することを特徴とする請求項13に記載の量子ドット分散液の製造方法。 - 前記結晶核の原料として、InN、GaInNから選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項14に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記可溶化剤として、トリオクチルホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド類、トリアルキルホスフィンスルフィド類、トリアルキルホスフィンセレニド類、トリアルキルイミノホスホラン類、モノリン酸エステル類、ジリン酸エステル類、トリリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド及びN,N’−ジメチルプロピレン尿素から選択された少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項13に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記反応溶液を調製する工程において、前記コアシェル型量子ドットを覆う分散剤をさらに混合することを特徴とする請求項13に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記分散剤として、アルキルカルボン酸類、モノアルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類、トリアルキルホスフィン類、アルキルエステル類、アルキルチオール類、スルフィド類、トリカプリル酸グリセリン、アルキルニトリル類及びステアリン酸無水物から選択された少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項17に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記分散剤として、オクタデカンチオールを用いることを特徴とする請求項17に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記コアシェル型量子ドットを合成した後、酸解離定数が4.5より大きく、官能基の末端に水素を有する物質を反応溶液に添加し、反応溶液に残存する金属を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項13乃至19のいずれか一項に記載の量子ドット分散液の製造方法。
- 前記物質として、オレイン酸又はドデカンチオールを用いることを特徴とする請求項20に記載の量子ドット分散液の製造方法。
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