JP2019140958A - アセト酢酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アセト酢酸を生物的に安定的に生産すること。【解決手段】ハロモナス属に属する好塩菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気培養工程、好気培養工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して、前記菌体をpH6.5〜8の中性領域で培養し、培養液にてアセト酢酸又はその塩を産生する微好気培養工程、微好気培養工程で得られる培養液から、アセト酢酸又はその塩を回収する回収工程を順に行う。【選択図】なし

Description

本発明は、アセト酢酸の製造方法に関する。
3−ヒドロキシ酪酸やその塩(以下3HBと称する場合がある)は、もともと人の体内に存在する物質であるため生体親和性が高く、糖質に代わる画期的なエネルギー源として期待されている。例えば、ココナツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸の摂取および体内での代謝により生成される3HBが、脳や体内において糖質をうまく利用できないアルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果を持つことが知られている。また3HBは体内において糖質よりも速やかにエネルギーに変換されること、細胞への脂肪や糖の吸収を抑制する効果を有することからダイエット・健康食品分野への応用が期待されている。
このような3HBは、代謝回路にて、3HBデヒドロゲナーゼにより、脱水素を受けアセト酢酸が合成されることが知られている。ここで、合成されたアセト酢酸は、3−ヒドロキシ酪酸及びアセトンとあわせてケトン体と呼ばれる。ケトン体は、肝臓でつくられる物質(アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、アセトン)の総称で、中鎖脂肪酸などの飽和脂肪酸を摂取したり、体脂肪が燃焼するときにケトン体は作られ、脳や体のエネルギー源となり、細胞の機能を回復させる働きがある。
そのため、アセト酢酸を効率的に合成することができれば、3HBと同様に、アルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果や、ダイエット・健康食品分野への応用が期待できる。
3HBの製造方法として、各種微生物にポリ3−ヒドロキシ酪酸(以下PHBと称する場合がある)を生産させたのち、得られたPHBを酵素等により分解する方法が知られている(特許文献1)。また、このような微生物としてハロモナス菌が、好気条件でPHBを蓄積し、微好気条件に移行することでPHBを分解して生成した3HBを培地中に分泌産生することが見出されている(特許文献2)。
特開2010−168595号公報 特開2013−081403号公報
ところが、3HBを生物的に生産することは試みられているのに対して、さらに、3HBデヒドロゲナーゼを3HBに作用させることにより、アセト酢酸を3HB同様に生物的に生産することは困難であり、実用化に至っていない。
したがって、本発明は上記実状に鑑み、アセト酢酸を生物的に安定的に生産することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明のアセト酢酸の製造方法の特徴構成は、
ハロモナス属に属する好塩菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気培養工程、
好気培養工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して前記菌体をpH6.5〜8.0の中性領域で培養し、培養液にてアセト酢酸又はその塩を産生する微好気培養工程、
微好気培養工程で得られる培養液から、アセト酢酸又はその塩を回収する回収工程
を順に行う点にある。
すなわち、特許文献2の3HBの生物的生産方法を行うと、好気培養工程においてハロモナス菌は3HBのオリゴマーを生産して体内に蓄積する。この3HBのオリゴマーは、通常微好気培養工程において単体の3HBとしてハロモナス菌が体外に放出するため3HBを回収する回収工程を行うことができる。
ここで、本発明者らは、3HBデヒドロゲナーゼ存在下で特許文献2に従って微好気培養工程を行えば、回収される3HBを脱水素して、ハロモナス菌体外にアセト酢酸として放出させることができるものと考えた。
しかし、このように微好気培養工程を行ったとしても、実際には3HBデヒドロゲナーゼが十分に機能せず、アセト酢酸として生産することが困難であることが分かった。本発明者らが鋭意研究したところ、このような現象は、ハロモナ属に属する好塩菌が、高pH条件下で3HBを体外に放出する性質を有しているのに対して、ハロモナス属に属する好塩菌由来の3HBデヒドロゲナーゼは、意外にもpH6.5〜8.0の中性領域で活性を有することに起因することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明者らは、特許文献2にいう微好気培養工程を、pH6.5〜8.0の中性領域で行うことにより、ハロモナス属に属する好塩菌由来の3HBデヒドロゲナーゼが活性化され、回収される3HBを脱水素して、ハロモナス菌体外にアセト酢酸として放出させることができることを実験的に明らかにした。
その結果、3HBの生物的生産方法を改良し、微好気培養工程の培養条件を好適に設定することにより、アセト酢酸を生産させられるようになった。
したがって、アセト酢酸を生物的に安定的に生産できるようになった。
3HBデヒドロゲナーゼ活性試験結果を示すグラフ
以下に、本発明のアセト酢酸の製造方法を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
〔アセト酢酸製造方法〕
ハロモナス属に属する好塩菌を培養して、アセト酢酸又はその塩を生産する場合に、ハロモナス属に属する好塩菌用の培地に含有させる有機炭素源として、単糖や二糖類を用いる。
具体的には以下の工程に従って、培養を行う。
(1)ハロモナス属に属する好塩菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気培養工程、
(2)好気培養工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して前記菌体をpH6.5〜8.0の中性領域で培養し、培養液にてアセト酢酸又はその塩を産生する微好気培養工程、
(3)微好気培養工程で得られる培養液から、アセト酢酸又はその塩を回収する回収工程
<好気培養工程>
本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法における好気培養工程は、ハロモナス属に属する好塩菌を、有機炭素源及び無機塩を含有する培地中で好気培養する工程である。
<A:好塩菌>
本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法の好気培養工程にて用いる好塩菌は、下記の(i)又は(ii)のいずれかによって示されるハロモナス属に属する好塩菌を用いればよい。
(i)無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地にて好気的に増殖し、3HB又はその塩を菌体外の培地中に生産させることを特徴とする好塩菌。
(ii)無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地にて好気的に増殖し、PHBを自らの菌体内にて蓄積した後、pHを調整することで、3HB又はその塩を菌体外の培地に分泌産生することを特徴とする好塩菌。
「無機塩」及び「有機炭素源」については、<培地>の欄にて後述する通りにすることができる。
上述のハロモナス属に属する好塩菌は、0.1〜1.0Mの塩濃度を適とする好塩性を有し、時には塩を含まない培地においても生育する細菌である。そして、上述のハロモナス属に属する好塩菌は、通常はpH5〜12程度の培地にて生育する。
上述のハロモナス属に属する好塩菌として、例えば、ハロモナス・エスピー(Halomonas sp.)KM−1株が挙げられる。ハロモナス・エスピーKM−1株は、平成19年7月10日付で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305−8566茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に受託番号FERM P−21316として寄託されている。また、この菌株は、現在国際寄託に移管されており、その受託番号はFERM BP−10995である。当該ハロモナス・エスピーKM−1株の16S rRNA遺伝子は、DDBJにAccession Number AB477015として登録されている。
また、上述したようなハロモナス属に属する好塩菌の生育特性等に鑑みて、本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法において用いる好塩菌として、ハロモナス・エスピーKM−1株以外に、ハロモナス・パンテラリエンシス(Halomonas pantelleriensis:ATCC 700273)、ハロモナス・カンピサリス(Halomonas campisalis:ATCC 700597)等も挙げることができる。
さらに、16SリボゾームRNA配列による分析から、上述のハロモナス属に属する好塩菌に限らず、ハロモナス・ニトリトフィルス、ハロモナス・アリメンタリア等も、本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法にて用いるハロモナス属に属する好塩菌として使用してもよい。
なお、上述したハロモナス属に属する好塩菌には、遺伝子が導入されていてもよい。導入される遺伝子は、本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法において、3HB又はその塩の生産効率等を向上させる機能を発現させるものであれば特に限定されない。例えば、PHBの発現量を増大させる遺伝子、PHBの該菌体内への蓄積を上昇させる機能を発現させる遺伝子;3HB又はその塩を培地にて生産する機能を増大させる遺伝子;3HB又はその塩の産生量を増大させる遺伝子;PHBを分解する遺伝子等が挙げられる。組換えDNAの当該菌体への導入方法及びこれによる形質転換方法としては、一般的な各種方法を採用できる。
<B:培地>
好気培養工程にて用いる培地は、無機塩及び有機炭素源を含有する。培地のpHは特に限定されないが、上述した好塩菌の生育条件を満たすpHであることが好ましく、具体的にはpH5〜12程度にすればよい。より好ましくはpH8.8〜12の培地である。アルカリ性の培地を用いれば、他の菌のコンタミネーションをより効果的に防止することができ、また分泌された3HBがクロトン酸へ変化するのを抑制するので好ましい。
好気培養工程にて用いる培地に配合する無機塩は、特に限定されることは無く、例えばリン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛、銅、コバルト等の金属塩が挙げられる。
例えば、ナトリウムを無機塩として用いる場合は、NaCl、NaNO、NaHCO、NaCO等を用いればよい。
これらの無機塩は、上述の好塩菌にとって窒素源やリン源となるような化合物を用いることが好ましい。
窒素源は、硝酸塩、亜硝酸塩、尿素、アンモニウム塩、グルタミン酸等を用いればよく、特に限定はされないが、例えばNaNO、NaNO、NHCl等の化合物を用いればよい。
窒素源の使用量は、菌体の生育に影響を及ぼすことなく、本発明の実施形態に係るアセト酢酸又はその塩の生産目的が達成される範囲において適宜設定すればよく、具体的には、培養初期の培地100ml当たり通常であれば硝酸塩として500mg程度以上とすればよく、より好ましくは1000mg程度以上、更に好ましくは1250mg程度以上である。
リン源は、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩等を用いればよく、特に限定はされないが、例えばKHPO、KHPO等の化合物を用いればよい。
リン源の使用量も、上記の窒素源の使用量と同様の観点から適宜設定すればよく、具体的には、リン酸二水素塩として培地100ml当たり通常は50〜400mg程度とすればよく、より好ましくは100〜200mg程度である。
これらの無機塩は単一で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の化合物等も含めた無機塩は、総量で通常は0.1〜2.5M程度となる濃度で用いればよく、好ましくは0.2〜1.0M程度、より好ましくは0.2〜0.5M程度である。
培地に配合する有機炭素源は、特に限定はされないが、例えばトリプトン、イーストエキストラクト、可溶性デンプン、エタノール、n−プロパノール、酢酸、酢酸ナトリウム、プロピオン酸、廃グリセロール、廃蜜糖、木材糖化液、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース等の六炭糖;リブロース、キシルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース等の五炭糖;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース等の二糖;エリスリトール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられる。
本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法では、塩濃度が比較的高い条件の培地で、ハロモナス属に属する好塩菌を培養するので、他の菌体の混入、増殖の恐れ等がほとんどない。従って、上述の培地に対して滅菌処理等を行っても行わなくともよく、且つ、簡便な設備で培養することも可能である。
<C:培養方法>
好気培養工程における上述のハロモナス属に属する好塩菌の培養は、好気培養を採用する。好気培養工程における好気培養は、当該菌体が増殖し、且つ、該菌体内にPHBが著量蓄積するような条件となる好気培養である限り、特に限定はされない。
具体的には、5ml程度の培地に当該好塩菌を植菌し、通常30〜37℃程度、攪拌速度は120〜180rpm程度で1晩振盪しながら前培養を行う。続いて前培養して得られた菌体を、三角フラスコ、発酵槽、ジャーファーメンター等に入った培地中に100倍程度に希釈し本培養する。
本培養は通常20〜45℃程度で可能であるが、30〜37℃程度で行うことが好ましい。この際の攪拌速度は通常は150〜250rpm程度とすればよい。なお、培養環境は培地が空気に触れる環境とすればよく、培地表面に積極的に酸素を含む気体を吹き付ける方法や培地中に係る気体を吹き込む方法を採用してもよい。
好気培養工程では、このような培養条件でハロモナス属に属する好塩菌を好気培養すればよい。具体的に好気培養時の培地中の溶存酸素濃度は、特に限定はされないが、通常は2mg/L以上とすればよく、5mg/L以上が好ましい。
好気培養工程での培養方法は、回分培養、半回分培養、連続培養等の培養方法が挙げられ、特に限定はされないが、3HB又はその塩又はアセト酢酸又はその塩を効率よく製造するには、本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法によって用いる好塩菌が他の菌が混入する可能性が極めて低いことを考慮して長期の連続培養も可能である。そして、培養環境も特に限定はされず、非滅菌環境下であっても滅菌環境下であってもよい。
<微好気培養工程>
本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法における微好気培養工程は、前記菌体をpH6.5〜8.0の中性領域で培養し、培養液にて微生物に酸素供給を積極的には行わない条件下でアセト酢酸又はその塩を産生する工程である。微生物に積極的に酸素供給を行わずに培養を継続すると、系内の酸素が消費され無酸素に近い状態となるが、絶対嫌気とまではならない酸素濃度数%の環境が維持されるため、微好気培養に適した環境を維持できる。
培養を継続した場合、有機酸の精製により、培地のpHは下がる傾向がある。この様な培地のpHは適宜公知のpH測定用装置又はこれが付随したジャーファーメンター等によって確認することができる。
用語「調整及び維持」とは、上述のようなpHの確認を行いながら、pH調整剤を添加してpH6.5〜8.0の状態を保つことを意味する。
微好気工程にて調整及び維持するpHは好ましくは6.5以上8.0以下とする。これにより、3HBデヒドロゲナーゼの酵素活性を高く維持することができる。
pH調整剤としては、特に限定はされないが、例えば水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩等が挙げられる。より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、アンモニア水等が挙げられ、中でも弱アルカリ性を示すものが好ましく、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水が最も好ましい。
pHの調製時期は、菌体内でのPHBの蓄積量がほぼ一定となる時期であれば特に限定されないが、例えば、好気培養工程によって得られるハロモナス属に属する好塩菌体中のPHBの蓄積量が乾燥菌体100重量部当たり15重量部程度以上となる時期等が挙げられる。
また、好気培養工程によって得られるハロモナス属に属する好塩菌体の乾燥菌体重量が培地1L当たり30重量部程度以上となる時期であってもよい。
具体的なハロモナス属に属する好塩菌体中のPHBの蓄積量は、下記の実施例に示す方法を採用して測定する。
<回収工程>
回収工程において、「培地中にアセト酢酸を生産させる」とは、好気培養工程〜微好気培養工程にて培養して得られたハロモナス属に属する好塩菌体内から、その培地中に3HBに3HBデヒドロゲナーゼを作用させ、アセト酢酸を分泌させることを意味する。
そして、「培地中にアセト酢酸の塩を生産する」とは、好気培養工程及び微好気培養工程にて培養して得られたハロモナス属に属する好塩菌体内から、その培地中にアセト酢酸の塩を分泌させることのみならず、好気培養工程及び微好気培養工程にて培養して得られたハロモナス属に属する好塩菌体内から培地中に分泌されたアセト酢酸が、培地中に存在する陽イオン成分と反応して、アセト酢酸の塩を形成することも意味する。
陽イオン成分とは、培地中に含まれているものであれば、特に限定はされないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、モリブデンイオン、アンモニウムイオン、マンガンイオン等が挙げられる。
本発明の実施形態に係るアセト酢酸の製造方法における回収工程は、上記微好気培養工程で得られた培地中から、アセト酢酸又はその塩を回収する工程である。ここで、回収とは培地中にアセト酢酸又はその塩が存在している時に上述の微好気培養工程の培養を停止し、アセト酢酸又はその塩を含む培地と、上記好塩菌体を分離すればよい。
具体的な分離の手法は、遠心操作、濾過等の公知の固液分離の操作を採用すればよい。また、培養の停止方法も特に限定はされず、例えば、上記微好気培養工程によって得られるハロモナス属に属する好塩菌を加熱、酸処理等の方法によって殺菌する方法、遠心操作、濾過等の公知の固液分離手段を用いて培地と前記好塩菌体を分離する方法等が挙げられる。
培地中のアセト酢酸又はその塩の存在を確認する方法は、菌種、培地成分、培養条件等により変わり得るものであるので、これらの要素を考慮して適宜決定する。例えば、継時的に培地を採取し、これをHPLC等の分析方法を供して、培養を停止する時間を決定することもできる。
なお、回収されるアセト酢酸の塩は、培地中に含まれる無機塩に基づくナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属;アルカリ土類金属陽イオン等と反応したアルカリ金属塩として回収される。従って、アセト酢酸を製造するには、回収した培地を塩析等の常法に供すればよい。
また、回収した培地を適切なカラムを用いたカラムクロマトグラフィーによって精製工程に供してもよい。これら以外の他の方法として、回収した培地のpHを適宜変更して、所望のアセト酢酸又はその塩のいずれかを精製工程に供してもよい。また、回収した培地に低級アルコール類を添加し、エステル化反応を経て、アセト酢酸エステルとして蒸留等で精製することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明が実施例に限定されないことは言うまでも無い。
ハロモナス属に属する好塩菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気培養工程を行い、培養液を得る。具体的には、糖質を含む培養液を収容した発酵容器に3HB生産性のハロモナス菌を添加して、まず撹拌通気しつつ好気発酵工程を行う。これにより、ハロモナス菌により糖質を資化させ、PHBを生産させることができ、ハロモナス菌体内にPHBを蓄積する。次に、糖類がほぼ完全に消費されたころに、発酵容器内への通気を停止して、前記菌体をpH6.5〜8.0の中性領域で培養する微好気培養工程を行う。これにより、ハロモナス属に属する好塩菌由来の3HBデヒドロゲナーゼは高い活性を発揮し、ハロモナス菌は体内に蓄積したPHBを分解消費するとともに、3HBデヒドロゲナーゼが作用して発酵液中にアセト酢酸を放出する。その結果、アセト酢酸及び菌体を含有する発酵液が得られる。次に回収工程として、得られた発酵液中の菌体成分や、高分子量のたんぱく質等の夾雑物を濾過して除去する。具体的には、得られた発酵液は限外ろ過膜(UF膜)によりろ過する。すると簡便に菌体やタンパク質等の大分子量の夾雑物を除去することができ、主にアセト酢酸を含有する発酵液とすることができる。ここで得られた発酵液は、アセト酢酸を約0.5〜0.8g/L程度含有するものとなっていた。
<3HBデヒドロゲナーゼ活性試験>
上記実施例における好気培養工程で得られた培養液のうち、微好気培養工程に供する直前のものを採取し、下記にしたがって、3HBデヒドロゲナーゼ活性試験を行った。
(培養液)
・好気培養工程で得られた培養液のうち、微好気培養工程に供する直前のものを用いた。
(A)0.1M buffer solutionの調整
・Tris−HCI bufferの作製
Tris 1.011g 100mlに溶解し、HClでpH調整し、pH6.98、7.47、8.04、8.49の0.1M bufferとした。
・Na−NaHCO bufferの作製
NaCO 10.6gおよび、NaHCO 8.4gをそれぞれ1Lの水に溶解し、NaCO水溶液300mlにNaHCO水溶液を加えてpH調整し、pH8.86の0.1M bufferとした。
(B)基質の調整
3HB 158mM (200mg D,L−3−Hydroxybutyrate Na (MW=126.09)/10ml HO)を作成し、基質溶液とした。
(C)補酵素の調整
NAD 27.9mM (74mg NAD+(MW=663.42g)/4.0ml of HO)を作成し、補酵素として用いた。
(D)粗酵素液の調整
・菌体破砕用緩衝液は、蒸留水にEDTA 終濃度1mM(50倍濃度溶液を作製して1/50量添加)に調整、Tween20 終濃度0.1%に調整した。上記培養液を5ml 採取し、遠心後、3回水洗浄。最終5mlになるように調整した。
超音波破砕機を使用し、氷上で1分間×5回超音波破砕を行い、13500rpmで遠心後、上清を0.2μmで濾過したろ過液を粗酵素液とした。
(反応プロトコール)
(A) 0.1M buffer solution 153μL
(B) Substrate solution 30μL
(C) NAD+ solution 30μL
上記反応液を8連ピペットマン使用して、マイクロタイタープレートに添加。粗酵素液を入れるまで、5分間37℃で保温。最後に、粗酵素液を30μL添加して、波長340nmで反応液の組成の変化を測定し、反応時間600秒まで30秒ごとに測定した(採用測定値:30秒〜210秒)。また、反応後に、pHを測定し、微好気培養工程のpHとした。測定は、BLANK、粗酵素の希釈倍率1倍、1/2倍、1/4倍のものでそれぞれ比較した。
尚、酵素活性は下記計算式にて求めた。(分子/分母の区割りの確認お願いします。)
酵素活性(U/ml)=ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×Vt×df/6.22×0.25×Vs
=ΔOD/min×5.21×df
但し、
Vt :Total volume (0.243ml)
Vs :Sample volume (0.03ml)
6.22 :Millimolar extinction coefficient of NADH at 340nm (F/micromole)
0.25 :Light path length (cm)
df :Dilution factor
である。
その結果、ハロモナス属に属する好塩菌由来の3HBデヒドロゲナーゼの酵素活性は、pHに従って図1に示すように変化することが分かった。すなわち、ハロモナス属に属する好塩菌由来の3HBデヒドロゲナーゼは、pH6.5〜8.0程度の中性領域で活性が高く、pH8程度で活性が低下し始め、pH8.49のアルカリ領域を超えると活性が大きく低下し始めることが分かった。
本発明に係るアセト酢酸の製造方法によるとアセト酢酸を高効率に製造でき、アルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果や、ダイエット・健康食品分野への応用が期待できる。

Claims (1)

  1. ハロモナス属に属する好塩菌を、無機塩と単一若しくは複数の有機炭素源とを含む培地で好気培養する好気培養工程、
    好気培養工程の培養条件を好気培養から微好気培養に変更して、前記ハロモナス属に属する好塩菌をpH6.5〜8.0の中性領域で培養し、培養液にてアセト酢酸又はその塩を産生する微好気培養工程、
    微好気培養工程で得られる培養液から、アセト酢酸又はその塩を回収する回収工程
    を順に行うアセト酢酸の製造方法。
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JPH0838169A (ja) * 1994-08-02 1996-02-13 Asahi Chem Ind Co Ltd 3−ヒドロキシ酪酸脱水素酵素の製造法
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