JP2019120329A - 密封装置 - Google Patents

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【課題】軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる密封装置を提供する。【解決手段】密封装置1は、密封装置本体2とスリンガ3とを備え、密封装置本体2は、環状の補強環10と、環状の弾性体部20とを備えている。スリンガ3は、外周側に向かって延びる環状の部分であるフランジ部31を有している。弾性体部20は、内側に向かって延びる、フランジ部31の外側面31dと接触する環状の端面リップ21を有している。スリンガ3のフランジ部31の外側面31dには、少なくとも1つの溝33が形成されており、溝33は、その溝33の開口端に形成された面取部ec1、ec2を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、軸とこの軸が挿入される孔との間の密封を図るための密封装置に関する。
車両や汎用機械等において、例えば潤滑油等の密封対象物の漏洩の防止を図るために、軸とこの軸が挿入される孔との間を密封するために従来から密封装置が用いられている。このような密封装置においては、シールリップを軸に又は軸に取りけられる環状部材に接触させることにより軸と密封装置との間の密封を図っている。このような密封装置の中には、端面接触型と言われているものがある。端面接触型の密封装置は、軸に取り付けられたスリンガに対し軸に沿って延びるシールリップを接触させることにより密封対象物の漏洩の防止を図っている。
従来の端面接触型の密封装置には、シールリップが接触するスリンガに溝を設け、スリンガの回転時の溝のポンプ作用により、大気側の空気と一緒に油等の密封対象物を密封対象物側へ送ることによりシール性を向上させたものがある。このような従来の端面接触型の密封装置においては、上述のように、スリンガの回転時はポンプ作用により、滲み出た密封対象物を密封対象物側へ戻すことができるが、スリンガの停止時は、スリンガの溝と端面リップとの間に形成される隙間から密封対象物が漏れ出てしまう、所謂、静止漏れが発生してしまう場合がある。
この静止漏れを防止するため、従来の端面接触型の密封装置には、シールリップの内周側にスリンガと接触するシールリップを更に設けて、外周側のシールリップにおいて発生した静止漏れにより滲み出た密封対象物の更なる外部への漏洩の防止を図っているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
実開平4−88773号公報
このような従来の端面接触型の密封装置においては、上述のように、内周側のシールリップによって静止漏れの防止を図っているが、スリンガに対して2つのシールリップが接触しているため、スリンガの回転時に軸に対する摺動抵抗が上昇してしまう。近年、車両等の低燃費化の要求から、密封装置には、軸に対する摺動抵抗の低減が求められており、端面接触型の密封装置に対しては、静止漏れを防止しつつ軸に対する摺動抵抗の低減を図ることができる構造が求められている。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる密封装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、前記孔に嵌着される密封装置本体と、前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部の前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、少なくとも1つの溝が形成されており、前記溝は、その溝の開口端に形成された面取部を有する。
本発明の一態様に係る密封装置において、前記スリンガは、複数の溝を有している。
本発明の一態様に係る密封装置において、前記溝は、溝深さが0.1mm以下である。
本発明の一態様に係る密封装置において、前記面取部は、R面取り加工、または、C面取り加工が施されている。
本発明の一態様に係る密封装置において、前記溝は、その断面形状がV字状またはU字状である。
本発明に係る密封装置によれば、軸に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる。
本発明の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための軸線に沿う断面における断面図である。 本発明の実施の形態に係る密封装置の軸線に沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。 本発明の実施の形態に係る密封装置におけるスリンガを外側から見た側面図である。 溝の形状を説明するための図であり、図4(A)は、互いに隣接する溝を外側から見たスリンガの部分拡大側面図であり、図4(B)は、軸線に沿う断面における溝の形状を示すスリンガの部分拡大断面図であり、図4(C)は、溝の面取部の形状を示す部分拡大断面図である。 図1に示す密封装置が取付対象としてのハウジング及びこのハウジングに形成された貫通孔である軸孔に挿入された軸に取り付けられた使用状態における密封装置の部分拡大断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る密封装置1の概略構成を示すための軸線xに沿う断面における断面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る密封装置1の軸線xに沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
本実施の形態に係る密封装置1は、軸とこの軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であり、車両や汎用機械において、軸とハウジング等に形成されたこの軸が挿入される孔(軸孔)との間を密封するために用いられる。例えば、エンジンのクランクシャフトとフロントカバーやシリンダブロック及びクランクケースに形成されている軸孔であるクランク孔との間の環状の空間を密封するために用いられる。なお、本発明の実施の形態に係る密封装置1が適用される対象は、上記に限られない。
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向(軸線方向において一方の側)を内側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向(軸線方向において他方の側)を外側とする。より具体的には、内側とは、密封対象空間の側(密封対象物側)であり潤滑油等の密封対象物が存在する空間の側であり、外側とは内側とは反対の側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。
図1に示すように、密封装置1は、後述する取付対象としての孔に嵌着される密封装置本体2と、後述する取付対象としての軸に取り付けられるスリンガ3とを備えている。密封装置本体2は、軸線x周りに環状の補強環10と、補強環10に取り付けられている弾性体から形成されている軸線x周りに環状の弾性体部20とを備えている。
スリンガ3は、外周側(矢印c方向)に向かって延びる軸線x周りに環状の部分であるフランジ部31を有している。弾性体部20は、軸線x方向において一方の側(内側、矢印a方向)に向かって延びる、フランジ部31の軸線方向xにおいて他方の側(外側、矢印b方向側)の面である外側面31dと接触する軸線x周りに環状のリップである端面リップ21を有している。スリンガ3のフランジ部31の外側面31dには、少なくとも1つの浅い溝33が形成されている。以下、密封装置1の密封装置本体2及びスリンガ3の各構成について具体的に説明する。
密封装置本体2において補強環10は、図1、2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材であり、後述するハウジングの軸孔に密封装置本体2が圧入されて嵌合されて嵌着されるように形成されている。補強環10は、例えば、外周側(矢印c方向)に位置する筒状の部分である筒部11と、筒部11の外側(矢印b方向)の端部から内周側(矢印d方向)へ延びる中空円盤状の部分である円盤部12と、円盤部12の内周側(矢印d方向)の端部から内側(矢印a方向)且つ内周側(矢印d方向)へ延びる円錐筒状の環状の部分である錐環部13と、錐環部13の内側(矢印a方向)又は内周側(矢印d方向)の端部から内周側(矢印d方向)へ径方向に延びて補強環10の内周側(矢印d方向)の端部に至る中空円盤状の部分である円盤部14とを有している。
補強環10の筒部11は、より具体的には、外周側(矢印c方向)に位置する円筒状又は略円筒状の部分である外周側円筒部11aと、外周側円筒部11aよりも外側(矢印b方向)及び内周側(矢印d方向)において延びる円筒状又は略円筒状の部分である内周側円筒部11bと、外周側円筒部11aと内周側円筒部11bとを接続する部分である接続部11cとを有している。
筒部11の外周側円筒部11aは、密封装置本体2が後述するハウジング50(図3)の軸孔51に嵌着された際に、密封装置本体2の軸線xと軸孔51の軸線との一致が図られるように、軸孔51に嵌め込まれる。補強環10には、略外周側(矢印c方向)及び外側(矢印b方向)から弾性体部20が取り付けられており、補強環10により弾性体部20を補強している。
弾性体部20は、図1,2に示すように、補強環10の円盤部14の内周側(矢印d方向)の端の部分に取り付けられている部分である基体部25と、補強環10の筒部11に外周側(矢印c方向)から取り付けられている部分であるガスケット部26と、基体部25とガスケット部26との間において外側から補強環10に取り付けられている部分である後方カバー部27とを有している。
ガスケット部26は、より具体的には、図2に示すように、補強環10の筒部11の内周側円筒部11bに取り付けられている。また、ガスケット部26の外径は、後述する軸孔51の内周面51a(図5参照)の径よりも大きくなっている。このため、密封装置本体2が後述する軸孔51に嵌着された場合、ガスケット部26は、補強環10の内周側円筒部11bと軸孔51との間で径方向に圧縮され、軸孔51と補強環10の内周側円筒部11bとの間を密封する。これにより、密封装置本体2と軸孔51との間が密封される。
また、ガスケット部26は、軸線x方向全体に亘って外径が軸孔51の内周面の径よりも大きくなっていなくてもよく、一部において外径が軸孔51の内周面の径よりも大きくなっていてもよい。例えば、ガスケット部26の外周側(矢印c方向)の面に、先端の径が軸孔51の内周面51aの径よりも大きい環状の凸部が形成されていてもよい。
また、弾性体部20において、端面リップ21は、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から内側(矢印a方向)に向かって延びている。密封装置1が取付対象において所望の位置に取り付けられた使用状態において、端面リップ21は、端面リップ21の内周側(矢印c方向)の面である内周面22のスリンガ接触部23が所定の締め代を持ってスリンガ3のフランジ部31に外側(矢印b方向)から接触するように形成されている。
端面リップ21は、例えば、軸線x方向において内側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径する円錐筒状の形状を有している。つまり、図1,2に示すように、端面リップ21は、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、基体部25から内側(矢印a方向)及び外周側(矢印c方向)に、軸線xに対して斜めに延びている。
また、弾性体部20は、ダストリップ28と中間リップ29とを有している。ダストリップ28は、基体部25から軸線xに向かって延びるリップであり、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から延びており、後述する密封装置1の使用状態において、先端部が所定の締め代を持ってスリンガ3に外周側(矢印c方向)から接触するように形成されている。
ダストリップ28は、例えば、軸線x方向において外側(矢印b方向)に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有している。ダストリップ28は、使用状態において、密封対象物側とは反対側である外側(矢印b方向)からダストや水分等の異物が密封装置1の内部に侵入することの防止を図っている。ダストリップ28は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触しないように形成されていてもよい。
中間リップ29は、図2に示すように、基体部25から断面略L字型に内側(矢印a方向)へ向かって延びるリップであり、軸線x方向を中心または略中心として円環状に基体部25から延びており、基体部25との間に内側(矢印a方向)に向かって開放する環状の凹部を形成している。
中間リップ29は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触していない。このように中間リップ29が接触していない分だけ、従来に比して摺動抵抗が低減されている。中間リップ29は、使用状態において、端面リップ21がスリンガ3に接触するスリンガ接触部23を越えて密封対象物が内部に滲み入った場合に、この滲み入った密封対象物がダストリップ28側へ流れ出すことの防止を図るために形成されている。中間リップ29は、他の形状であってもよく、例えば軸線x方向において内側(矢印a方向)に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有していてもよい。
上述のように、弾性体部20は、端面リップ21、基体部25、ガスケット部26、後方カバー部27、ダストリップ28、及び中間リップ29を有しており、各部分は一体となっており、弾性体部20は同一の材料から一体に形成されている。なお、弾性体部20の形状は、上述の形状に限られるものではなく、適用対象に応じて種々の形状とすることができる。
上述の補強環10は、金属材から形成されており、この金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。また、弾性体部20の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
補強環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋接着により補強環10に接着され、弾性体部20と補強環10とが一体的に成形される。
スリンガ3は、後述する密封装置1の使用状態において軸に取り付けられる環状の部材であり、軸線xを中心又は略中心とする円環状の部材である。スリンガ3は、断面が略L字状の形状を有しており、フランジ部31と、フランジ部31の内周側の端部に接続する軸線x方向に延びる筒状又は略筒状の筒部34とを有している。
フランジ部31は、具体的には、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の内周側円盤部31aと、内周側円盤部31aよりも外周側(矢印c方向)において広がっている径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の外周側円盤部31bと、内周側円盤部31aの外周側(矢印c方向)の端部と外周側円盤部31bの内周側(矢印d方向)の端部とを接続する接続部31cとを有している。外周側円盤部31bは、内周側円盤部31aよりも軸線x方向において外側(矢印b方向)に位置している。
なお、フランジ部31の形状は、上述の形状に限られるものではなく、適用対象に応じて種々の形状とすることができる。例えば、フランジ部31は、内周側円盤部31a及び接続部31cを有しておらず、外周側円盤部31bが筒部34まで延びて筒部34に接続しており、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の部分であってもよい。
スリンガ3が端面リップ21に接触する部分であるリップ接触部32は、フランジ部31において、外周側円盤部31bの外側(矢印b方向)に面する面である外側面31dに位置している。外側面31dは径方向に広がる平面に沿う面であることが好ましい。
上述のように、スリンガ3の外側面31dには、少なくとも1つの浅い溝33が形成されている。本実施の形態においては、図3に示すように、スリンガ3の外側面31dには複数の溝33が形成されている。
図3は、密封装置1におけるスリンガ3を外側から見た側面図である。図3に示すように、スリンガ3の外側面31dには、溝33,33,33・・・・33のn個の溝33が形成されている。つまり、スリンガ3が有する溝33の数(条数)はnである。この場合、例えば4条である。
複数の溝33〜33の各溝33(m=1,2,3,〜,n)は、図3に示すように、端面リップ21が接触する部分と交差している。具体的には、溝33は、内周側(矢印d方向)と外周側(矢印c方向)との間に延びており、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bの外側面31dにおける端面リップ21との接触部であるリップ接触部32と交差している。
図4は、溝33(m=1〜n)の形状を説明するための図であり、図4(A)は、互いに隣接する溝33,33m+1(m=1〜n)を外側から見たスリンガ3の部分拡大側面図であり、図4(B)は、軸線xに沿う断面における溝33(m=1〜n)の形状を示すスリンガ3の部分拡大断面図であり、図4(C)は、溝の面取部の形状を示す部分拡大断面図である。図4(A)に示すように、互いに隣接し互いに異なる溝33と溝33m+1との間には、径方向における間隔(ピッチ)pが設けられている。
また、図3に示すように、溝33は螺旋状(渦巻き状)に延びており、溝33のリードは、リードlとなっている。なお、リードlは、溝33が一周した際に、溝33が径方向に広がる幅である。
また、図4(B)に示すように、溝33は内側(矢印a方向)へ向かって凹んだ凹状空間であり、例えば底面44がV字状の又は略V字状の輪郭を有している。底面44の挟角は角度α(以下、これを「挟角α」ともいう。)となっている。この挟角αは、0度<α<180度である。ただし、溝33は、底面44がV字状又は略V字状に限らず、U字状または略U字状の輪郭を有していてもよい。
図4(C)に示すように、溝33は、フランジ部31の外側面31dと底面44とが交差する開口端の交点k1、k2に形成された面取部ec1、ec2を備えている。この面取部ec1、ec2は、溝33の2つの開口端(交点k1、k2)にR面取り加工が施された部分であって双方ともに共通の構造を有しているため、以下、面取部ec1についてのみ説明する。
面取部ec1は、交点k1、k2において交差する外側面31dおよび底面44(辺44a、辺44b)の2辺と内接する半径r1の内接円Cir1の一部分の形状を有し、外側面31dと辺44a、辺44bと滑らかに繋がるR面を為している。
この場合、溝33の幅wLは、面取部ec1と外側面31dとが繋がる接点t1と、面取部ec2と外側面31dとが繋がる接点t2との間の距離となる。すなわち、溝33の幅wLは、面取部ec1、ec2が設けられていない場合の開口端(交点k1、k2)間の距離である幅wrに比べて各段に大きくなる。
また、溝33の底面44の底部(辺44a、辺44bの交点である頂部)にも、面取部ec3が形成されている。この面取部ec3は、辺44a、辺44bの交点k3において交差する辺44aおよび辺44bの2辺と内接する半径r2の内接円Cir2の一部分であり、辺44aと辺44bと滑らかに繋がるR面を為している。
面取部ec1〜ec3においては、必ずしも内接円Cir1、Cir2によってR面取加工が施されている必要はなく、楕円の一部であったり、その他の方法によるR面取加工が施されていてもよい。また、面取部ec1〜ec3は、R面取加工が施されている場合だけではなく、例えばC面取加工が施されている場合であってもよい。なお、内接円Cir2の半径r2は内接円Cir1の半径r1よりも小さく、r2<r1の関係を有している。ここで、溝33の深さは深さhLとなっており、溝33の面取部ec3における最底点bt1と、フランジ部31の外側面31dとの間の距離である。
次いで、上述の構成を有する密封装置1の作用について説明する。図5は、密封装置1が取付対象としてのハウジング50及びこのハウジング50に形成された貫通孔である軸孔51に挿入された軸52に取り付けられた使用状態における密封装置1の部分拡大断面図である。
ハウジング50は、例えばエンジンのフロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースであり、軸孔51は、フロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースに形成されたクランク孔である。また、軸52は、例えば、クランクシャフトである。
図5に示すように、密封装置1の使用状態において、密封装置本体2は軸孔51に圧入されて軸孔51に嵌着されており、スリンガ3は軸52に締り嵌めされて軸52に取り付けられている。
具体的には、補強環10の外周側円筒部11aが軸孔51の内周面51aに接触して、密封装置本体2の軸孔51に対する軸心合わせが図られ、また、弾性体部20のガスケット部26が軸孔51の内周面51aと補強環10の内周側円筒部11bとの間で径方向に圧縮されてガスケット部26が軸孔51の内周面51aに密着して、密封装置本体2と軸孔51との間の密封が図られている。また、スリンガ3の円筒部35が軸52に圧入され、円筒部35の内周面35aが軸52の外周面52aに密着し、軸52にスリンガ3が固定されている。
密封装置1の使用状態において、弾性体部20の端面リップ21が、内周面22の先端21a側の部分であるスリンガ接触部23において、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bの外側面31dの部分であるリップ接触部32と接触するように、密封装置本体2とスリンガ3との間の軸線x方向における相対位置が決められている。
密封装置1の非使用状態、特に軸52の回転していない静止状態において、端面リップ21とフランジ部31のリップ接触部32との接触により、密封装置本体2とスリンガ3との間の密封が図られており、密封対象物側からの密封対象物の漏洩の防止が図られている。
なお、ダストリップ28は先端側の部分においてスリンガ3の筒部34に外周側から接触している。ダストリップ28は、例えば、スリンガ3の円筒部35の外周面35bに接触している。
また、上述のように、溝33は、端面リップ21が接触するスリンガ3の部分であるリップ接触部32を内周側(矢印d方向)と外周側(矢印c方向)との間で交差しており、互いに接触するスリンガ接触部23とリップ接触部32との間に、溝33によって内周側(矢印d方向)と外周側(矢印c方向)との間に延びる隙間が形成される。このため、軸52が静止している、つまりスリンガ3が静止している密封装置1の静止状態において、溝33を通って密封対象物側から密封対象物が滲み出てくる静止漏れが発生すると考えられる。
しかしながら、本発明の密封装置1では、上述したように、端面リップ21の内周面22のスリンガ接触部23が所定の締め代を持ってスリンガ3のフランジ部31に外側(矢印b方向)から接触する際、端面リップ21のスリンガ接触部23が開口端にR面取加工の施された面取部ec1、ec2によって幅wLが大きく形成された溝33の凹部空間に対して容易に入り込んで底面44(辺44a、辺44b)と密着する。これにより、端面リップ21のスリンガ接触部23とスリンガ3のフランジ部31の外側面31dとの間が更に一段と密封されるため、密封装置1の静止状態においても、静止漏れの発生を防止することができる。
具体的には、この場合、開口端の交点k1、k2にR面取加工が施された面取部ec1、ec2と端面リップ21のスリンガ接触部23とが隙間無く密着するとともに、溝33の底面44の底部(辺44a、辺44bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3と端面リップ21のスリンガ接触部23とが隙間無く密着するため、密封装置1の静止状態における静止漏れ防止性能を一段と向上させることができる。
なお、本発明の密封装置1では、特に軸52の回転する動作状態において、当該軸52の高速回転によって端面リップ21のスリンガ接触部23が溝33の底面34から僅かに浮き上がるため、ポンプ作用が生じて油等の密封対象物を密封対象物側へ送ることによりシール性を発揮することができる。すなわち、密封装置1では、軸52の回転時および静止時の何れにおいても油等の密封対象物に対するシール性を確保することができる。
次いで、本発明の実施の形態に係る密封装置1の密封性能について説明する。具体的には、密封装置1の静止漏れ防止性能について説明する。
本出願人は、上述した面取部ec1、ec2が形成された溝33を有する本発明の実施の形態に係る密封装置1を製作し(試験例1乃至3および比較例(従来技術))、密封装置1の静止漏れ防止性能の評価試験を行った。なお、挟角αの角度を一定とするが、面取部ec1、ec2の半径r1の大きさに応じて溝33の幅wLも変化するものとする。その評価試験の結果を下記の表1において示す。
この評価試験においては、比較例(従来)、試験例1乃至試験例3の全てにおいてリードl=5.6mm、条数n=4の溝33とした。
評価試験は、以下の試験条件で行った。
[試験条件]
軸52の軸偏心:0.2mmT.I.R.(Total Indicator Reading)
取付偏心(軸孔51の偏心):0.2mmT.I.R.(Total Indicator Reading)
スリンガ3の面ぶれ:0.05mm(実測値)
油温:120℃
油種:0W−20(SEA規格、SAEJ300 エンジン油粘度分類(2015年1月)に基づく。)
油量:充満(密封対象の空間がオイルで満たされている状態であり、リップ全周の背面までオイルが満たされている。)
軸52(スリンガ3)の回転速度:0rpm
評価試験は、1,000時間を上限として、上記試験条件での漏れの発生が確認されるまでの時間を測定することにより行われた。また、評価試験は、図5に示すような使用状態を擬似的に作った評価装置において行われた。この評価装置において、密封対象物側に上述の密封対象物としての油を注ぎ、密封対象物側において密封装置1全体が油に覆われるようにした。なお、静止漏れ開始時間(h)とは、オイルの静止漏れ量を測定するために、ダストリップ28、中間リップ29を削除し、試験開始後に端面リップ21から染み出たオイルが密封装置1の外に漏れるまでを時間(h)とする。
表1に示すように、比較例(従来)では溝33の底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が0.3mmであり、かつ、開口端に面取部ec1、ec2が形成されていない場合の静止漏れ開始時間(h)は16時間であった。
これに対して、試験例1では、底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が0.3mmであり、かつ、開口端にR面取加工が施された面取部ec1、ec2の半径r1が0.3mmの場合の静止漏れ開始時間(h)は33時間となった。
また、試験例2では底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が0.4mmであり、かつ、開口端にR面取加工が施された面取部ec1、ec2の半径r1が0.4mmの場合の静止漏れ開始時間(h)は48時間となった。
さらに、底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が0.5mmであり、かつ、開口端にR面取加工が施された面取部ec1、ec2の半径r1が0.5mmの場合の静止漏れ開始時間(h)は66時間となった。
すなわち、溝33は、開口端に形成された面取部ec1、ec2の半径r1が大きくなるほど静止漏れ開始時間(h)が長くなることが分かった。これは、面取部ec1、ec2の半径r1が大きくなるとともに幅wLが広がり、端面リップ21のスリンガ接触部23が溝33の凹部空間に対して容易に入り込んで底面34(辺34a、辺34b)と密着する度合いが増し、密封性能が上がるためであると考えられる。
このように、上述の静止漏れ防止性能の評価試験の結果から、溝33は、面取部ec1、ec2の半径r1が大きくなって幅wLが広がるほど、静止漏れを抑制することができ、静止漏れ防止性能が高いことが分かった。より具体的には、本静止漏れ防止性能の評価試験から、静止漏れ防止に関しては、試験例1乃至3の中で、試験例3、試験例2、試験例1の順で好ましいことが分かった。
参考までに、本出願人は、上述した面取部ec1、ec2が形成された溝33を有する本発明の実施の形態に係る密封装置1を製作し(試験例4、5)、密封装置1の静止漏れ防止性能の評価試験についても行った。この場合、試験例4では、挟角αは150度、かつ、リードl=5.6mm、条数n=2の溝33とした。また、試験例5では、挟角αは170度、かつ、リードl=5.6mm、条数n=1の溝33とした。この試験例4、5では、試験例1〜3と条件が幾つか異なるため、厳密には正確な比較とはならない可能性もあるが、参考までに開示する。評価条件は上述した通りである。その評価試験の結果を下記の表2において示す。
試験例4では、底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が1.0mmであり、かつ、開口端にR面取加工が施された面取部ec1、ec2の半径r1が1.0mmの場合の静止漏れ開始時間(h)は300時間となった。
試験例5では、底面34の底部(辺34a、辺34bの交点)にR面取加工が施された面取部ec3の半径r2が3.0mmであり、かつ、開口端にR面取加工が施された面取部ec1、ec2の半径r1が3.0mmの場合の静止漏れ開始時間(h)は500時間止まりとなった。500時間止まりとは、試験を継続すればそれ以上の静止漏れ時間を見込めることを意味する。
このように、上述の静止漏れ防止性能の評価試験の結果から、溝33は、面取部ec1、ec2の半径r1が大きくなって幅wLが広がるほど、静止漏れを抑制することができ、静止漏れ防止性能が高いことが分かった。
このように、本発明の実施の形態に係る密封装置1によれば、軸52(スリンガ3)に対する摺動抵抗を増加させることなく密封対象物の静止漏れを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る密封装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
また、本実施の形態に係る密封装置1は、エンジンのクランク孔に適用されるものとしたが、本発明に係る密封装置の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。
1…密封装置、2…密封装置本体、3…スリンガ、10…補強環、11…筒部、11a…外周側円筒部、11b…内周側円筒部、11c…接続部、12…円盤部、13…錐環部、14…円盤部、20…弾性体部、21…端面リップ、21a…先端、22…内周面、23…スリンガ接触部、25…基体部、26…ガスケット部、27…後方カバー部、28…ダストリップ、29…中間リップ、21…端面リップ、31…フランジ部、31a…内周側円盤部、31b…外周側円盤部、31c…接続部、31d…外側面、32…リップ接触部、33…溝、34…筒部、35…円筒部、35a…内周面、35b…外周面、44…底面、44a、44b…辺、50…ハウジング、51…軸孔、51a…内周面、52…軸、52a…外周面、h…深さ、l…リード、p…ピッチ、S…挟空間、w…幅、x…軸線、α…挟角

Claims (5)

  1. 軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、
    前記孔に嵌着される密封装置本体と、
    前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、
    前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、
    前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、
    前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部の前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、
    前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、少なくとも1つの溝が形成されており、
    前記溝は、その溝の開口端に形成された面取部を有する、密封装置。
  2. 前記スリンガは、複数の溝を有している、請求項1記載の密封装置。
  3. 前記溝は、溝深さが0.1mm以下である、請求項2記載の密封装置。
  4. 前記面取部は、R面取り加工、または、C面取り加工が施されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の密封装置。
  5. 前記溝は、その断面形状がV字状またはU字状である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の密封装置。
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