本発明の実施形態の一例につき図1〜図9を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、フォトレジスト(感光材料)が塗布された矩形の平板ガラスよりなるプレートP(感光性基板)にマスクMのパターンの像を露光する走査露光方式のパネル露光装置である。露光装置EXで露光されたプレートPは、一例として、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置の表示部であるパネルを製造するために使用される。露光装置EXは、それぞれマスクMのパターンの像をプレートPの表面に投影する複数(本実施形態では一例として7つ)の部分投影光学系PLA,PLB,PLC,PLD,PLE,PLF,PLG(図5(A)参照)を有するマルチレンズ型の投影システムPS(投影光学系)を備えている。以下、投影システムPSに対して合焦されているときのプレートPの表面に垂直にZ軸を取り、その表面に平行な平面(本実施形態ではほぼ水平面)内で走査露光時のマスクM及びプレートPの走査方向に沿ってX軸を、X軸に直交する方向(非走査方向)に沿ってY軸を取って説明する。
図1において、露光装置EXは、露光用の照明光(露光光)ELを発生する例えば超高圧水銀ランプからなる光源10と、照明光ELでマスクMのパターン面の部分投影光学系PLA〜PLGと同じ個数の照明領域IRA,IRB,IRC,IRD,IRE,IRF,IRG(図5(A)参照)を均一な照度分布で照明する照明系ISと、マスクMをマスクホルダ(不図示)を介してXY平面に平行に保持して移動するマスクステージ21と、プレートPを保持して移動するプレートステージ22とを備えている。一例として、第1列の照明領域IRA〜IRCはY方向に一定間隔で配置され、第2列の照明領域IRD〜IRGは、第1列の照明領域IRA〜IRCに対して−X方向に所定間隔離れて、かつX方向に見たときに、第1列の照明領域IRA〜IRCを間に挟むように配置されている(図5(A)参照)。
さらに、露光装置EXは、マスクステージ21の端部に設けられたX軸の移動鏡23MX及びY軸の移動鏡23MYに計測用のレーザ光を照射して、マスクステージ21の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Aと、プレートステージ22の端部に設けられたX軸の移動鏡23PX及びY軸の移動鏡23PYに計測用のレーザ光を照射して、プレートステージ22の位置情報を計測する複数軸のレーザ干渉計23Bとを備えている。また、露光装置EXは、レーザ干渉計23A,23Bの計測結果に基づいてマスクステージ21及びプレートステージ22を駆動するそれぞれリニアモータ等を含むマスクステージ駆動系25及びプレートステージ駆動系26(図2参照)と、装置全体の動作を統括的に制御するコンピュータを含む主制御装置20(図2参照)とを備えている。
マスクステージ駆動系25は、走査露光時にマスクステージ21の走査方向(X方向)の位置及び速度を制御するとともに、必要に応じてマスクステージ21のZ軸に平行な軸の回り(以下、θz方向という)の回転角を所定範囲内で調整可能である。また、プレートステージ駆動系26は、走査露光時にマスクステージ21に同期してプレートステージ22のX方向の位置及び速度を制御するとともに、走査露光の間(ステップ移動時)に、プレートステージ22のX方向及び/又はY方向の位置を制御する。なお、一例として、マスクMは、X方向の幅が1〜2m程度、Y方向の幅が1〜1.5m程度の矩形の平板状であり、プレートPは、X方向の幅が2〜2.5m程度、Y方向の幅が2〜3m程度の矩形の平板状であり、マスクステージ21及びプレートステージ22はそれぞれマスクM及びプレートPを保持できる大きさに設定されている。また、プレートPの複数のパターン形成領域(不図示)にそれぞれマスクMのパターンの像が露光される。
次に、照明系IS及び投影システムPSにつき説明する。まず、光源10から射出された照明光ELは、楕円鏡、ミラー、シャッタ(不図示)、及び波長選択フィルター(不図示)を介して集光光学系11に入射する。集光光学系11を通過した照明光ELは、分岐光学系13の入射端12に入射し、部分投影光学系PLA〜PLGと同じ個数の分岐光学系13の射出端14A〜14Gから射出された照明光ELは、それぞれ対応する部分照明系ILA〜ILGを介して台形状の照明領域IRA〜IRGを照明する。なお、本実施形態では、部分投影光学系PLA〜PLGの物体面側の視野は、部分投影光学系PLA〜PLG中の視野絞り35(図3参照)によって規定される。このため、照明領域IRA〜IRGとは、視野絞り35の開口35aと光学的に共役な領域を意味しており、部分照明系ILA〜ILGは、それぞれ照明領域IRA〜IRGを含み照明領域IRA〜IRGよりもわずかに広い範囲を照明する。互いに実質的に同じ構成の部分照明系ILA〜ILGは、それぞれコリメートレンズ、フライアイインテグレータ(オプティカルインテグレータ)、及びコンデンサーレンズ系等を有する。集光光学系11から部分照明系ILA〜ILGまでの光学部材を含んで照明系ISが構成されている。
図3は、2つの部分照明系ILA,ILDのフライアイインテグレータ15からマスクMのパターン面Ma(被照射面)までの構成、及び部分照明系ILA,ILDに対応する部分投影光学系PLA,PLDの構成を示す。図3において、部分照明系ILAのフライアイインテグレータ15から射出された照明光ELは、第1コンデンサーレンズ16a、透過率分布を制御又は調整するための円板状の制御部材17A、及び第2コンデンサーレンズ16bを介してパターン面Maの照明領域IRA(実際にはこれよりも広い領域)を照明する。コンデンサーレンズ16a及び16bからコンデンサーレンズ系16が構成されている。
また、フライアイインテグレータ15の射出面(又はフライアイインテグレータ15を構成する各レンズエレメントの後側焦点面)が、この部分照明系ILAの瞳面PPA(パターン面Maに対する光学的なフーリエ変換面)である。
また、部分照明系ILAの一部に開口絞りを設けて、この開口絞りの設置面を瞳面PPAとすることもできる。また、瞳面PPAは一箇所とは限らず、互いに共役関係にして複数個所設けることもできる。
制御部材17Aは、第1コンデンサーレンズ16aと第2コンデンサーレンズ16bとの間(本実施形態では瞳面PPAとパターン面Maとの間のほぼ中央)にある設置面SPAに、保持機構18によって保持されている。なお、制御部材17Aは、瞳面PPA(又は瞳面PPAと光学的に共役な面)とパターン面Maとの間の任意の位置に設置可能である。
また、部分照明系ILA内に瞳面PPAを複数個所設けた場合には、それぞれの瞳面PPAとパターン面Maとの間の任意の位置に少なくとも1つの制御部材17Aを設置することもできる。
保持機構18は、制御部材17Aの周縁部(図4(A)の枠部17Ac)が載置されるリング状の回転部44と、回転部44に対して制御部材17Aの周縁部を押さえ付けて固定するリング状の固定部43と、回転部44が部分照明系ILAの光軸AXAに平行な軸の回りに回転可能に載置されるとともに照明光ELを通過させる開口が形成されたスライド部45と、スライド部45が載置されるとともに照明光ELを通過させる開口が形成された支持部46とを有する。固定部43は回転部44に対してボルト47によって固定され、スライド部45に設けられたX方向に平行なスリット45aを通して、スライド部45が支持部46にボルト47によって固定されている。回転部44の側面には、この回転部44を回転するためのピン状のレバー(不図示)が設けられている。保持機構18によって制御部材17Aの回転角を任意の角度に調整できるとともに、制御部材17AのX方向の位置を調整できる。なお、保持機構18の構成は任意である。例えば、保持機構18から制御部材17AをX方向に移動する機構を省略することもできる。
図4(A)に示すように、制御部材17Aは、リング形の枠部17Acの中に、ランダムな形状の多数の網目をほぼ半円状の領域に配置して形成されたメッシュ型のフィルタ部17Aaを保持したものであり、それ以外の領域は開口部17Ab(透過率100%)である。メッシュ型のフィルタ部17Aaは、ランダムウォーク型のフィルタ部と呼ぶこともできる。制御部材17Aの枠部17Acが保持機構18によって保持され、通常は、枠部17Acの中心が光軸AXAにほぼ一致するように制御部材17Aが位置決めされ、枠部17Acの内側で、かつフィルタ部17Aaの一部及び開口部17Abの一部を含む領域を照明光ELが通過する。フィルタ部17Aaの直線状のエッジ部はY軸に平行であるとともに、枠部17Acの中心を通りY軸に平行な直線に対して+X方向に所定のオフセットδx1だけずれている。一例として、フィルタ部17Aaの平均的な透過率は90%であり、オフセットδx1は部材17Acの内側の直径の5%程度である。ただし、保持機構18が制御部材17AのX方向の位置を調整する機構を備えているときには、保持機構18によって制御部材17AのX方向の位置を調整することも可能である。
この制御部材17Aは、例えば、ほぼ円状の領域に配置されたランダムな形状の多数の網目から、ほぼ半円状に網目を除去することにより比較的容易に作成できる。このため、一例として、調整部材17Aを保持機構18を介して部分照明系ILAに取り付けて、2つの露光領域の継ぎ部及びそれ以外の領域で露光された後の2つの積算露光量(又は平均的な照度)ができるだけ等しくなるように調整しても、その2つの積算露光量の差が許容範囲内に収まらなかったような場合を想定する。このような場合でも、調整部材17Aのメッシュ型のフィルタ部17Aaの一部を、ハサミ等の切断工具を用いて削除することによって、簡単に、短時間に、露光装置が設置されているその場で、継ぎ部及びそれ以外の領域で露光された後の積算露光量(又は平均的な照度)ができるだけ等しくなるように再調整を行うことができる。
なお、制御部材17Aの他に、オフセットδx1が0、又は図4(A)の場合の数倍等に設定された複数の制御部材(不図示)が用意されており、制御部材17Aはそれらの制御部材と交換可能である。また、図3では、制御部材17Aのフィルタ部17Aaが+X方向側に配置されているが、このときの制御部材17Aの回転角を0度とする。保持機構18によって制御部材17Aを180度回転してフィルタ部17Aaを−X方向側(又は光軸AXAに関して任意の方向)に配置することも可能である。さらに、制御部材17Aの代わりに、図4(B)の制御部材17B、図4(C)の制御部材17C、又は他の任意の構成の制御部材を使用することも可能である。制御部材17Bは、枠部17Bc中に、透過率が95%程度の半円状のメッシュ型のフィルタ部17Baを保持したものであり、それ以外の領域は開口部17Bbである。制御部材17Cは、枠部17Cc中に、透過率が97.5%程度でオフセットδx2(ほぼδx1と同じ程度)の半円状のメッシュ型のフィルタ部17Caを保持したものであり、それ以外の領域は開口部17Cbである。なお、メッシュ型のフィルタ部17Aa,17Ba,17Ca等の代わりに、透過率が同様(又は一様)のNDフィルタ(neutral density filter)などを使用することもできる。
図3において、部分照明系ILDのフライアイインテグレータ15の射出面(瞳面PPD)とパターン面Maとの間の設置面SPDにも、保持機構18(不図示)によって制御部材17A(又は他の制御部材17B等)が保持されている。なお、図3では、一例として、部分照明系ILD中の制御部材17Aの光軸AXDに平行な軸の回りの回転角は、部分照明系ILA中の制御部材17Aに対して180度異なっている。同様に、他の照明領域IRB,IRC,IRE〜IRG(図5(A)参照)を照明する部分照明系にも制御部材17A,17B等が設置されている。ただし、部分照明系ILAに制御部材17Aを設置したときに、他の部分照明系ILD等には別の制御部材17B等を設置するというように、部分照明系ILA〜ILG毎に異なる制御部材17A,17B等を設置してもよい。さらに、一つの部分照明系(例えば部分照明系ILA)に制御部材17A(又は17B等)を設置したときに、他の部分照明系には制御部材17A,17B等を設置しないようにしてもよい。
次に、制御部材17A等の作用につき、部分照明系ILAの説明図である図6(A)及び(B)を参照して説明する。まず、図6(A)において、制御部材17Aが設置されていない場合のパターン面Maにおける照明光ELのX方向の照度分布は、点線の直線で示すように一定(値a2とする)であるとする。これに対して、部分照明系ILA内に、フィルタ部17Aaが−X方向側にあり、かつ制御部材17Aaのエッジ部が光軸AXAを通りY軸に平行な直線に合致するように透過率分布の制御部材17Aを設置したものとする。このとき、図3のフライアイインテグレータ15から射出されてコンデンサーレンズ16aを通過した照明光ELのうち、点線で示す−X方向側に最大に傾斜した光束EL1の大部分は、フィルタ部17Aaを透過して照度が低下した状態で、コンデンサーレンズ16bを介してパターン面Maの光軸AXAに対して−X方向に最も離れた位置に入射する。また、実線で示す光軸AXAに平行な光束EL2は、ほぼ半分がフィルタ部17Aaを透過するため、光束EL1に比べて照度の低下量がほぼ半分の状態でパターン面Maの光軸AXA上に入射し、破線で示す+X方向側に最大に傾斜した光束EL3の大部分は、光束EL2に比べて照度が低下しない状態で、パターン面Maの光軸AXAから+X方向に最も離れた位置に入射する。
この結果、パターン面Maにおける光束EL1の照度は最小値a1(照明光ELの光路の全面にフィルタ部17Aaと同じ透過率のフィルタ部があるときの照度)、光束EL3の照度は最大値a2となり、光束EL2の照度は、最小値a1及び最大値a2の中間値となる。また、コンデンサーレンズ16aを通過する光束の傾斜角が、光束EL1の傾斜角から光束EL2の傾斜角まで次第に変化すると、この光束のうちフィルタ部17Aaを透過する部分の割合が次第に減少するため、この光束のパターン面Maにおける照度は、図6(A)の照度ICEを示す直線A1のように、最小値a1から最大値a2まで次第に増加する。本実施形態の照明領域IRAは、パターン面Maで照明光ELが入射する領域の中央部であるため、照明領域IRAのX方向の照度分布は、最小値(値a1より大きい値)から最大値a3(値a2より小さい値)まで次第に大きくなるように傾斜している。言い換えると、部分照明系ILA内の瞳面とパターン面との間に制御部材17Aを設置することで、照明領域IRAの照度分布をX方向(走査方向)に傾斜させることができる。
さらに、フィルタ部17Aaが光軸AXAに対して+X方向側になるように制御部材17Aを回転することで、照明領域IRAの照度分布の傾斜角の符号を反転させることができる。また、制御部材17Aの代わりに、平均的な透過率が異なるフィルタ部17Ba,17Caを持つ制御部材17B,17Cを設置することで、照度分布の最小値a1の値が変化するため、照度分布の傾斜角を制御できる。
また、図6(B)に示すように、制御部材17Aのフィルタ部17Aaのエッジ部の位置に−X方向に対するオフセットδxaを与えると、光軸AXAに平行な光束EL2は、フィルタ部17Aaを透過する割合が低下して、パターン面Maにおける照度が上昇する。同様に、他の光束でも、フィルタ部17Aaを透過する割合が低下して、パターン面Maにおける照度が上昇するため、パターン面Maにおける照度分布は、図6(B)の折れ線A2で示すように全体として上昇するが、最大値a2に達したときに飽和する。このため、照明領域IRAにおける照度分布の最大値a4は最大値a2に近い値になり、照明領域IRAにおける照度の平均値を高くして、照明光ELを有効に利用できる。
図3の部分照明系ILAにおいて、制御部材17Aの設置面SPAが仮に瞳面PPAの近傍(または瞳面PPAと共役な面の近傍)にある場合、制御部材17Aのフィルタ部17Aaを通過した光束は、パターン面MaのX方向の領域にほぼ均等に入射するため、パターン面MaにおけるX方向の照度分布は均一に低下するのみで、傾斜することはない。一方、制御部材17Aの設置面SPAが仮にパターン面Maの近傍(またはパターン面Maと共役な面の近傍)にある場合、パターン面Maにおいてフィルタ部17Aaに対向する部分のみの照度が低下するため、パターン面MaにおけるX方向の照度分布は階段状に変化する。これに対して、本実施形態の制御部材17Aの設置面SPAは、瞳面PPAとパターン面Maとの間のほぼ中間の位置にあるため、制御部材17Aのフィルタ部17Aaによって、パターン面Maの照明領域IRAのX方向の照度分布を所望の傾斜角及びオフセットで傾斜させることができる。このように照度分布を傾斜させることによって、プレートP上の積算露光量の分布を高精度に制御できる(詳細後述)。また、制御部材17Aの設置精度は低くともよく、制御部材17Aを他の制御部材17B等と交換したときの位置決め精度も低い状態でよいため、制御部材17A,17B等の設置及び交換が容易である。
次に、図1において、マスクMの照明領域IRA〜IRGからの照明光は、各照明領域に対応するようにY方向に沿って2列に配列された複数の部分投影光学系PLA〜PLGからなる投影システムPSに入射する。部分投影光学系PLA〜PLGは照明領域IRA〜IRG中のパターンの像を対応する台形状の露光領域PRA,PRB,PRC,PRD,PRE,PRF,PRG(図3(C)参照)に形成する。部分投影光学系PLA〜PLGは、互いに同一構成で一例としてZ方向に配列された2段の反射屈折系を有するほぼ両側にテレセントリックで高解像度の結像光学系である。また、部分投影光学系PLA〜PLGは、それぞれ一例として中間結像を行うとともに、マスクパターンの等倍の正立正像をプレートP上に形成する。
一例として、部分投影光学系PLAは、マスクMからの光をシフトする像シフタ31Aと、マスクMのパターンの一次像を形成する第1反射屈折系を構成する第1屈折系33A及び凹面鏡34Aと、マスクMからの光をその第1反射屈折系に向け、その第1反射屈折系からの光を−Z方向に向ける第1直角プリズム32Aと、その一次像の近傍に配置された視野絞り35と、その一次像の二次像をプレートP上に形成する第2反射屈折系を構成する第2屈折系33B及び凹面鏡34Bと、一次像からの光をその第2反射屈折系に向け、その第2反射屈折系からの光をプレートP側に向ける第2直角プリズム32Bと、プレートPに入射する光をシフトする像シフタ31Bとを備えている(図3参照)。像シフタ31A,31Bは例えば複数の平行平面板よりなる。また、部分投影光学系PLDは、部分投影光学系PLAとX方向に関して対称に構成されている。なお、マルチレンズ型の投影システムの詳細な構成の一例は、例えば特開2001−330964号公報に開示されている。
また、投影システムPSを構成する部分投影光学系PLA〜PLGの個数は、露光されるマスクMが大きくなるほど多くなり、投影システムPSは例えば11個の部分投影光学系(1列目が5個及び2列目が6個)を備えてもよい。このように、部分投影光学系PLA等の個数は任意であり、部分投影光学系PLA等の構成は任意である。
図5(A)に示すように、部分投影光学系PLA〜PLGは、Y方向に配置された第1列の3個の部分投影光学系PLA,PLB,PLCと、それらに対向するように−X方向に配置されるとともに、Y方向に半周期ずれて配置された第2列の4個の部分投影光学系PLD,PLE,PLF,PLGとに分かれて、光学系フレーム(不図示)に支持されている。また、部分投影光学系PLA〜PLGの中間結像面の近傍に配置された視野絞り35に設けられたY方向に平行なエッジ部を上辺及び底辺とする台形状の開口35aによって、露光領域PRA〜PRGの基本的な形状が規定される。
図5(B)に示すように、第2列の部分投影光学系PLD〜PLGの露光領域PRD〜PRGは、−X方向側を底辺とする台形状であり、第1列の部分投影光学系PLA〜PLCの露光領域PRA〜PRCは、Y方向に関して露光領域PRD〜PRGの間に位置しているとともに、露光領域PRA〜PRCは、+X方向側を底辺とする台形状である。また、例えば+X方向に向かって全部の露光領域PRA〜PRGを見ると、第1列の露光領域PRA〜PRCの走査方向(X方向)に対して傾斜した2つのエッジ部(以下、傾斜部という)は、それぞれ第2列の露光領域PRD〜PRGの対応する傾斜部と重なっている。なお、図5(B)において、第2列の外側の2つの露光領域PRD,PRGの外側のエッジ部は、例えばマスクMのパターン領域PA(図5(A)参照)を囲む遮光帯(不図示)によって遮光されているため、露光領域PRD,PRGの外側のエッジ部はX軸に平行になっている。
また、部分投影光学系PLA〜PLGは、一例としてそれぞれマスクパターンの等倍の正立正像をプレートP上に形成するため、照明領域IRA〜IRGの形状及び配列は、露光領域PRA〜PRGの形状及び配列と同じである。このため、例えば+X方向に見ると、露光領域PRA〜PRG(照明領域IRA〜IRG)はY方向に隙間なく配置されている。そこで、照明領域IRA〜IRGのパターンの投影システムPSによる像でプレートPを露光しつつ、マスクステージ21によって照明領域IRA〜IRGに対してマスクMを+X方向(又は−X方向)に移動(走査)することと、プレートステージ22によって露光領域PRA〜PRGに対してプレートPを+X方向(又は−X方向)に移動(走査)することとを同期して行うことで、マスクMの全面のパターンを1回の走査露光でプレートPの一つのパターン形成領域53Aに隙間なく露光できる。
また、パターン形成領域53Aにおいて、露光領域PRA〜PRCの一方の傾斜部、及び対応する露光領域PRD〜PRGの傾斜部(露光領域PRA〜PRCの傾斜部とY方向に対称な形状の傾斜部)によって二重露光される継ぎ部54A,54B,54C,54D,54E,54Fでは、二重露光後の設計上の露光量が他の領域の設計上の露光量と実質的に同じになるため、露光領域PRA〜PRGで露光されるパターンがY方向に高精度に繋がれる。露光領域PRA〜PRGの傾斜部のY方向の幅をdとすると、継ぎ部54A〜54FのY方向の幅もdとなる。
まず、図1において、マスクMの照明領域IRA〜IRGの上方に近接して、それぞれY方向に細長い平板状の遮光部材よりなる4個のマスク側のブラインド41A,41B,41C,41Dが、互いに重ならないようにかつ互いに独立にX方向に移動可能に配置されている。そして、ブラインド41A〜41Dの−Y方向の端部は、例えばリニアモータ方式でブラインド41A〜41DのX方向の位置及び速度を個別に制御する駆動部42Aに連結され、ブラインド41A〜41Dの+Y方向の端部はガイド部42Bに連結されている。一例として、駆動部42A及びガイド部42Bは、照明系ISを保持するフレーム(不図示)に支持されている。各走査露光の開始時及び終了時にブラインド41A〜41Dによって照明領域IRA〜IRGを開閉することによって、プレートP上に不要なパターンが露光されることが防止される。
また、露光装置EXは、プレートステージ22に設けられて露光領域PRA〜PRGのY方向の照度分布を計測する光量計測部24と、プレートステージ22に設けられて例えばマスクMのアライメントマーク(不図示)の像の位置情報を計測する空間像計測部28(図2参照)と、プレートPのアライメントマーク(不図示)の位置情報を計測するアライメント系AL(図2参照)と、各種データ等を記憶する記憶部29と、を備えている。さらに、露光装置EXは、主制御装置20と不図示のホストコンピュータとの間で各種情報の授受を行うインタフェース部(不図示)と、オペレータが主制御装置20に各種制御情報等を入力する入力装置(不図示)と、主制御装置20が計測結果等を表示する表示装置(不図示)とを備えている。光量計測部24は、一例として複数の微小な受光素子をY方向に配置したものであり、プレートPをX方向に走査したときに光量計測部24で検出される照度(単位面積当たり、単位時間当たりのエネルギー)を積算することによって、プレートPに対する積算露光量のY方向の分布を計測できる。また、空間像計測部及びアライメント系ALの計測結果に基づいてそれぞれマスクM及びプレートPのアライメントを行うことができる。
次に、本実施形態の露光装置EXによる露光方法の一例につき図7のフローチャートを参照して説明する。この露光方法は主制御装置20によって制御される。まず、露光装置EXのマスクステージ21及びプレートステージ22にそれぞれマスクM及びプレートPがロードされていないとともに、部分照明系ILA〜ILG中には制御部材17A等が設置されていないものとする。そして、図7のステップ102において、オペレータが主制御装置20に積算露光量分布を計測するように制御情報を入力する。これに応じて、光源10からの照明光ELの照射を行わせ、照明光ELで照明領域IRA〜IRGを介して露光領域PRA〜PRGを照明した状態で、プレートステージ22をY方向にステップ移動してからX方向に所定距離だけ移動するという動作を繰り返して、光量計測部24で露光領域PRA〜PRGをX方向に順次走査する。そして、主制御装置20において、光量計測部24で検出される複数の照度をX方向に積算して、露光領域PRA〜PRGで露光したときのプレートP上のY方向の積算露光量分布を求める。
その後、ステップ104において、主制御装置20は、求められた積算露光量分布のうち、図5(B)の継ぎ部54A〜54Fで計測された露光量の平均値が目標値(ここでは継ぎ部以外の領域の露光量の平均値とする)に対して許容範囲内かどうかを判定する。積算露光量分布の計測結果及び継ぎ部54A〜54Fの露光量の目標値からの偏差の情報は表示装置(不図示)に表示される。なお、以下では説明の便宜上、露光領域PRD,PRA,PREによる2つの継ぎ部54A,54Bをそれぞれ図8(B)及び図9(B)に示し、この2つの継ぎ部54A,54Bの露光量を調整する場合につき説明する。なお、図8(B)等では、説明の便宜上、−Y方向の端部の露光領域PRDの−Y方向のエッジ部も傾斜部として表されている。他の継ぎ部54C〜54Fの露光量も同様に調整される。
また、一例として、ステップ102で最初に計測されたY方向の積算露光量ΣEの分布において、図8(A)に示すように、継ぎ部54A,54Bの露光量の平均値が、他の領域の露光量の平均値(目標値)に対する許容範囲よりも小さい場合を想定する。この場合、動作はステップ104からステップ106に移行して、継ぎ部54A,54Bに対応する部分照明系ILA,ILD,ILEの上述の設置面SPA,SPD等に透過率分布の制御部材17A等が設置されているかどうかを確認する。そして、制御部材17A等が設置されていない場合には、ステップ108に移行して、主制御装置20は、ステップ102で計測した積算露光量分布の計測値から、継ぎ部54A,54Bの露光量を目標値にできるだけ近づけるために設置する制御部材17A等(ここでは制御部材17Aとする)、及びこの制御部材17Aの回転角及びX方向(走査方向)の位置の目標値を求め(これらの目標値の算出方法については後述する)、求めた結果の情報を記憶部29中のファイルに記録するとともに、表示装置を介してオペレータに提供する。これに応じて、オペレータは、設置面SPA,SPD等に保持機構18を介して制御部材17Aを設置するとともに、主制御装置20に、制御部材17A等の交換を行った回数(初期値は0)を示すパラメータに1を加算するように制御情報を入力する。
そして、ステップ110において、主制御装置20は、制御部材17A等の設置又は交換を所定回数(複数回で例えば3回等)行ったかどうかを判定する。その所定回数は、設置可能な制御部材17A等の種類以下の回数である。ここではその設置又は交換は1回であるため、動作はステップ112に移行し、制御部材17A等の交換を行うかどうかを判定する。制御部材17A等の交換を行うのは、現在、設置面SPA,SPD等に設置されている制御部材17Aの回転角等の調整が済んでいる場合である。ここでは、制御部材17Aの回転角等の調整が済んでいないため、動作はステップ114に移行して、主制御装置20は表示装置を介してオペレータに、設置面SPA,SPD等に設置されている制御部材17Aの回転角等を目標値に設定するように指示を行う。ここでは、露光領域PRAに対応する部分照明系ILA中の制御部材17Aの回転角の目標値は180度、位置のオフセットの目標値は0、露光領域PRD,PREに対応する部分照明系IRD,IRE中の制御部材17Aの回転角の目標値は0度、位置のオフセットの目標値は0であるとする。これに応じて、オペレータが対応する保持機構18を介して、図8(B)に示すように、露光領域PRA用の制御部材17Aのフィルタ部17Aaを−X方向に設定し、露光領域PRD,PRE用の制御部材17Aのフィルタ部17Aaを+X方向に設定する。
本実施形態では、部分投影光学系PLA〜PLGはそれぞれ等倍の正立正像を形成するため、台形状の露光領域PRA〜PRGと制御部材17Aとの位置関係は、照明領域IRA〜IRGと制御部材17Aとの位置関係と同じである。この結果、図6(A)を参照して説明したように、露光領域PRAにおける照明光ELのX方向の照度分布は、+X方向の照度が高くなるように傾斜し、露光領域PRD,PREにおける照明光ELのX方向の照度分布は、+X方向の照度が低くなるように傾斜する。また、露光領域PRAは+X方向の辺が長い台形状であり、露光領域PRD,PREは−X方向の辺が長い台形状であるため、露光領域PRA,PRD,PREの照度の平均値は、継ぎ部54A,54Bを形成する部分(台形状の領域の傾斜部)での低下量に比べて、継ぎ部54A,54B以外の部分(台形状の領域の平行な2つの辺で挟まれた部分)の低下量が大きくなる。
このため、制御部材17Aを設置したことによる露光領域PRA,PRD,PREの照度の変化量(補正量)En(n=1〜7)は、図8(C)に示すように、継ぎ部54A,54Bに対応する部分で小さくなる。この補正量Enを加算した全体の照度の補正量(積算露光量に対応する量)のY方向の分布は、図8(E)の点線の曲線56Bのようになる。また、制御部材17Aを設置する前の積算露光量は、図8(E)の点線の曲線56Aであるため、制御部材17Aを設置した後の積算露光量ΣEのY方向の分布は、図8(D)に示すように平坦になり、継ぎ部54A,54Bの露光量は目標値と同じになる。このため、図8(A)に示すように、制御部材17Aを設置する前の継ぎ部54A,54Bの露光量が目標値よりも低い場合には、露光領域PRA用の制御部材17Aの回転角を180度、露光領域PRD,PRE用の制御部材17Aの回転角を0度にすればよいことが分かる。
また、制御部材17Aを設置する前の継ぎ部54A,54Bの露光量と目標値との偏差がより小さい場合には、露光領域PRA〜PRGの照度の傾斜角は小さくともよいため、制御部材17Aの代わりに、より平均的な透過率の高い制御部材17B又は17Cを使用すればよい。このように予め、継ぎ部54A,54Bの露光量と目標値との偏差に応じてどの制御部材17A〜17Cを使用すればよいかが、記憶部29のファイルに記録されており、主制御装置20は、その偏差に応じて使用する制御部材17A等を選択する。また、より照明光ELの利用効率を高めたい場合には、図6(B)を参照して説明したように、照度を高精度に制御できる範囲内で、制御部材17A等(制御部材17Aa等)のX方向の位置のオフセットを設定してもよい。
逆に、図9(A)に示すように、制御部材17A等を設置する前の積算露光量ΣEのY方向の分布に関して、継ぎ部54A,54Bの露光量が目標値よりも高い場合には、図9(B)に示すように、露光領域PRA用の制御部材17Aのフィルタ部17Aaを+X方向に設定し、露光領域PRD,PRE用の制御部材17Aのフィルタ部17Aaを−X方向に設定すればよい。この結果、図6(A)を参照して説明したように、露光領域PRAにおける照明光ELのX方向の照度分布は、−X方向の照度が高くなるように傾斜し、露光領域PRD,PREにおける照明光ELのX方向の照度分布は、−X方向の照度が低くなるように傾斜する。このため、露光領域PRA,PRD,PREの照度の平均値は、継ぎ部54A,54Bを形成する部分(台形状の領域の傾斜部)での低下量が、継ぎ部54A,54B以外の部分(台形状の領域の平行な2つの辺で挟まれた部分)の低下量よりも大きくなる。
このため、制御部材17Aを設置したことによる露光領域PRA,PRD,PREの照度の変化量(補正量)Enは、図9(C)に示すように、継ぎ部54A,54Bに対応する部分で大きくなる。この補正量Enを加算した全体の照度の補正量(積算露光量に対応する量)のY方向の分布は、図9(E)の点線の曲線57Bのようになる。また、制御部材17Aを設置する前の積算露光量は、図9(E)の点線の曲線57Aであるため、制御部材17Aを設置した後の積算露光量ΣEのY方向の分布は、図9(D)に示すように平坦になり、継ぎ部54A,54Bの露光量は目標値と同じになる。このため、制御部材17Aを設置する前の継ぎ部54A,54Bの露光量が目標値よりも低い場合には、露光領域PRA用の制御部材17Aの回転角を0度、露光領域PRD,PRE用の制御部材17Aの回転角を180度にすればよいことが分かる。
その後、オペレータが主制御装置20に制御部材17Aの回転角等の調整が済んだことを示す制御情報を入力すると、動作はステップ102に戻り、再び光量計測部24を用いて露光領域PRA〜PRGによる露光後の積算露光量分布を計測し、ステップ104において、継ぎ部の露光量が目標値に対して許容範囲内かどうかを判定する。継ぎ部の露光量が目標値に対して許容範囲内である場合には、主制御装置20はオペレータに照明系ISの調整が終了したことを示す情報を提供し、照明系ISの調整が終了する。その後、動作はステップ120に移行してマスクステージ21に対するマスクMのロードが行われ、さらにプレートステージ22に対するプレートPのロードが行われ(ステップ122)、プレートPに対するマスクMのパターンの走査露光が行われる。
一方、ステップ104において、継ぎ部の露光量が目標値に対して許容範囲内でない場合には、ステップ106において、部分照明系ILA,ILD,ILEの設置面SPA,SPD等に透過率分布の制御部材17A等が設置されているかどうかを確認する。今回は制御部材17Aが設置されているため、動作はステップ110に移行して、主制御装置20は、制御部材17A等の設置又は交換を所定回数行ったかどうかを判定する。その設置又は交換の回数がその所定回数に達した場合には、動作はステップ118に移行して、主制御装置20はオペレータに、照明系ISの調整を行って照明領域IRA〜IRGの光量分布の調整等を行うように指令を発する。
また、ステップ110において、その設置又は交換の回数がその所定回数に達していない場合には、ステップ112に移行して、制御部材17A等の交換を行うかどうかを判定する。ここでは、設置面SPA,SPD等に制御部材17Aが設置されているため、動作はステップ116に移行して、主制御装置20は、表示装置を介してオペレータに交換用の制御部材(制御部材17Bとする)、及びこの制御部材17Bの回転角等の目標値の情報を供給する。これに応じてオペレータは設置面SPA,SPD等の制御部材17Aを制御部材17Bに交換し、主制御装置20に、制御部材17A等の交換を行った回数を示すパラメータに1を加算するように制御情報を入力する。
その後、動作はステップ114に移行して、主制御装置20は表示装置を介してオペレータに、設置面SPA,SPD等に設置されている制御部材17Bの回転角等を目標値に設定するように指示を行う。このようにして、照明領域IRA〜IRGの設置面には、それぞれ積算露光量分布のうち、継ぎ部54A等に対応する露光量が目標値に近づくように、制御部材17A等が設置される。
この露光方法によれば、継ぎ部54A〜54Fの露光量が目標値に近づき、走査露光後の積算露光量のY方向の分布が均一になっているため、プレートPに対する露光量むらが低減されて高精度に露光を行うことができる。
また、ステップ102〜114の動作は、露光装置EXのメンテナンス時等に実行してもよい。これによって、経時変化等によって、照明領域IRA〜IRGの照度分布が次第に変化して、積算露光量分布が変化したような場合でも、制御部材17A等の交換等を行うのみで容易に露光量むらを低減させることができる。
上述のように、本実施形態の露光方法及び露光装置EXは、照明系IS(照明光学系)からの露光用の照明光EL(露光光)でマスクMのパターン及び投影システムPS(投影光学系)を介してプレートP(基板)を露光しつつ、マスクM及びプレートPを投影システムPSに対して同期して走査する露光方法及び装置である。そして、露光装置EXにおいて、投影システムPSは、プレートP上の互いに異なる複数の露光領域PRA〜PRGを露光するとともに、露光領域PRA〜PRGは、プレートPをX方向(走査方向)に走査したときに、隣接する2つの露光領域のX方向に直交するY方向(非走査方向)の端部の二重露光によって、プレートP上に継ぎ部54A〜54Fが形成されるように配置されている。また、露光装置EXは、継ぎ部54A〜54Fの露光量を制御するために、マスクMのパターン面Maと照明系ISの瞳面PPA,PPD等との間に設置されて、少なくとも一つの露光領域PRA〜PRGの端部の光強度分布を調整する制御部材17A等(調整部材)を備えている。
また、露光装置EXを用いる露光方法は、プレートP上の複数の露光領域PRA〜PRGを露光しつつ、プレートPをX方向に走査して、隣接する2つの露光領域の非走査方向の端部の二重露光によって、プレートP上に継ぎ部54A〜54Fを形成するステップ124と、継ぎ部54A〜54Fの露光量を制御するために、パターン面Maと照明系ISの瞳面との間に設置された制御部材17A等を設置するステップ108と、を有する。
本実施形態の露光装置EX又は露光方法によれば、制御部材17A等の設置によって、継ぎ部54A〜54Fの露光量を目標値に対して高精度に設定できるため、複数の露光領域PRA〜PRGを用いてプレートPを走査露光する場合に、継ぎ部54A〜54Fの露光量むらを低減して高精度に露光を行うことができる。
また、制御部材17A等は、マスクMのパターン面Maと照明系ISの瞳面PPA,PPD等との間に設置されているため、制御部材17A等の設置精度を低く設定しても、継ぎ部54A〜54Fの露光量を高精度に制御でき、制御部材17A等の設置及び交換を容易に行うことができる。
なお、上述の実施形態では、図4(A)〜(C)に示すように、半円状のフィルタ部17Aa等を有する制御部材17A等が使用されているが、図10に示すように、開口部17Dbを囲むように配置された輪帯状のメッシュ型のフィルタ部17Daを有する透過率分布の制御部材17Dを使用してもよい。フィルタ部17Daの平均的な透過率は例えば70%〜90%程度であり、フィルタ部17Daの内径は、台形状の露光領域PRA〜PRGの傾斜部の中央付近の直径程度である。制御部材17Dは、制御部材17A等の代わりに、部分照明系ILA,ILDの設置面SPA,SPD等に保持機構18を介して設置可能である。
例えば、図11(A)に示すように、制御部材17A等を設置する前の積算露光量ΣEのY方向の分布に関して、継ぎ部54A,54Bの露光量が目標値よりも高い場合には、図10(B)に示すように、露光領域PRA,PRD,PRE用の部分照明系ILA,ILD,ILEにそれぞれ制御部材17Dを設置する。この場合、制御部材17Dの輪帯状のフィルタ部17Daによって、露光領域PRA,PRD,PREのY方向の端部(傾斜部の先端部)における照明光ELの照度が低下する。
このため、制御部材17Dを設置したことによる露光領域PRA,PRD,PREの照度の変化量(補正量)Enは、図10(C)に示すように、継ぎ部54A,54Bに対応する部分で大きくなる。この補正量Enを加算した全体の照度の補正量(積算露光量に対応する量)のY方向の分布は、図10(E)の点線の曲線58Bのようになる。また、制御部材17Dを設置する前の積算露光量は、図10(E)の点線の曲線58Aであるため、制御部材17Dを設置した後の積算露光量ΣEのY方向の分布は、図10(D)に示すように平坦になり、継ぎ部54A,54Bの露光量は目標値と同じになる。
このように輪帯状のフィルタ部17Daを有する制御部材17DをマスクMのパターン面Maと照明系ISの瞳面PPA,PPD等との間に設置しても、継ぎ部54A〜54Fにおける露光量むらを低減させることができる。
また、メッシュ型(又はNDフィルタ型)のフィルタ部を有する制御部材17A等の代替として、図12(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)に示すように、それぞれ線状部材が所定形状に配置されたフィルタ部を有する制御部材17F,17G,17H,17I,17J,17Kを使用することもできる。制御部材17Fのリング状の枠部17Faには、例えばボルトで固定できるように複数の開口17Fhが形成されている。これは他の制御部材17G〜17Kも同様である。
また、制御部材17F,17G,17Hのフィルタ部17Fa,17Ga,17Haは、走査方向(X方向)の半面側の領域に、それぞれ線状部材で、X方向及びY方向に平行な格子状パターン、X方向にほぼ45度で交差するように傾斜した格子状パターン、及び多数の正六角形状のパターンを形成したものである。
また、図12(D)、(E)、(F)の制御部材17I,17J,17Kのフィルタ部17Ia,17Ja,及び17Kaは、それぞれ台形状の視野絞りの長手方向と平行な2本の直線状部材、台形状の視野絞りの長手方向と平行な1本の直線状部材、及び台形状の視野絞りの長手方向に対して傾斜した1本の直線状部材から形成されている。制御部材17I,17J,17Kを用いた場合には、Y方向に平行な線状部材が使用されていないため、走査露光後のY方向(非走査方向)の積算露光量のむら(又はY方向の照度むら)を減少させることができる。
また、上述の制御部材17A〜17D及び制御部材17F〜17Kにおいて、フィルタ部を構成する線状部材の太さを全体的に調整するか、又は部分的に調整することによって、透過率分布を調整することもできる。
また、上述の実施形態では、マルチレンズ型で等倍の投影システムPSが使用されているが、投影システムPSとして単一の投影光学系を使用して、例えばスティッチング方式で基板を露光する場合にも本発明が適用できる。さらに、投影光学系の投影倍率が拡大又は縮小の場合にも本発明が適用できる。
また、上記の各実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて、基板上に所定のパターン(TFTパターン等)を形成することによって、電子デバイス(マイクロデバイス)としての液晶ディスプレイ用のパネル(液晶表示パネル)を得ることもできる。以下、図13のフローチャートを参照して、この製造方法の一例につき説明する。
図13のステップS401(パターン形成工程)では、先ず、露光対象の基板上にフォトレジストを塗布して感光基板(プレートP)を準備する塗布工程、上記の露光装置を用いてパネル用のマスク(例えばマスクMを含む)のパターンをその感光基板上の複数のパターン形成領域に露光する露光工程、及びその感光基板を現像する現像工程が実行される。この塗布工程、露光工程、及び現像工程を含むリソグラフィ工程によって、その基板上に所定のレジストパターンが形成される。このリソグラフィ工程に続いて、そのレジストパターンをマスクとしたエッチング工程、及びレジスト剥離工程等を経て、その基板上に所定パターンが形成される。そのリソグラフィ工程等は、その基板上のレイヤ数に応じて複数回実行される。
その次のステップS402(カラーフィルタ形成工程)では、赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの組をマトリックス状に多数配列するか、又は赤R、緑G、青Bの3本のストライプ状の複数のフィルタの組を水平走査線方向に配列することによってカラーフィルタを形成する。その次のステップS403(セル組立工程)では、例えばステップS401にて得られた所定パターンを有する基板とステップS402にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶セルを製造する。
その後のステップS404(モジュール組立工程)では、そのようにして組み立てられた液晶セルに表示動作を行わせるための電気回路、及びバックライト等の部品を取り付けて、液晶表示パネルとして完成させる。
上述の電子デバイスの製造方法によれば、上記の実施形態の露光装置又は露光方法を用いてマスクのパターンを基板に転写する工程(ステップS401の一部)と、この工程によりそのパターンが転写された基板をそのパターンに基づいて加工(現像、エッチング等)する工程(ステップS401の他の部分)とを含んでいる。
この製造方法によれば、マスクのパターンを効率的に、及び露光量むらの影響を小さくして高精度に基板に露光できるため、液晶表示パネルを効率的に、及び高精度に製造できる。
なお、上述の電子デバイスの製造方法は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、又はプラズマディスプレイ等の他のディスプレイ用のパネル等を製造する場合にも適用できる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。