以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る貨幣処理システム1が適用された施設の内部レイアウトを示す模式図である。当該施設は、この実施形態では銀行であるが、金融機関に関する施設に限らず、一般的な店舗等であってもよい。銀行内には、破線で示した境界によって区切られたATMコーナーおよびバックヤードが設けられている。貨幣処理システム1は、貨幣処理装置2と、管理装置3とを含む。
貨幣処理装置2は、ATMコーナーに設置された両替機2AおよびATM(Automated Teller Machine)2Bと、バックヤードに設置された出納機2Cとを含む。両替機2A、ATM2Bおよび出納機2Cのそれぞれの台数は、任意に設定できる。両替機2AおよびATM2Bは、紙幣および硬貨といった貨幣についての取引を顧客と行う装置である。なお、両替機2AおよびATM2Bにアクセスするユーザとして、顧客の他に、銀行の係員等が挙げられる。両替機2Aは、両替等の取引を行う装置であり、ATM2Bは、貨幣の預入れや払戻しや振込み等の取引を行う装置である。出納機2Cは、貨幣処理装置2に装填するための貨幣を保管している。出納機2Cのユーザである係員は、補充用の貨幣を出納機2Cから取り出して両替機2AやATM2Bに装填する。
管理装置3は、コンピュータを用いて構成されている。管理装置3は、各貨幣処理装置2に対して、有線または無線の通信回線によって構成されたLAN4を介して通信可能に接続されている。
次に、両替機2Aを例にとって、貨幣処理装置2の詳細について説明する。図2は、両替機2Aの内部構成を示す概略正面図である。両替機2Aは、ボックス状の装置本体10と、装置本体10内に収容された電源部11、カード処理部12、プリンタ部13、紙幣処理部14、バラ硬貨処理部15、包装硬貨処理部16および制御部17とを含む。なお、これらの部品の装置本体10内におけるレイアウトは、任意に変更できる。バラ硬貨処理部15および包装硬貨処理部16に関し、バラ硬貨は、文字通りバラの硬貨であるのに対し、包装硬貨は、例えば50枚等の所定数毎にまとまった状態にて包装された硬貨である。カード処理部12、プリンタ部13、紙幣処理部14、バラ硬貨処理部15、包装硬貨処理部16および制御部17は、電源部11から供給された電力によって作動する電気部品である。
図3は、両替機2Aを前側から見た斜視図である。装置本体10の前側上部は、L字状に切り欠かれている。装置本体10の前面は、略垂直に延びる垂直面20と、垂直面20の上端から後側へ略水平に延びる水平面21と、水平面21の後端から後上側へ少し傾斜して延びる傾斜面22とを含む。傾斜面22における幅方向の略中央部には、表示操作部23が設けられている。表示操作部23は、例えばタッチパネルディスプレイによって構成されている。表示操作部23には、顧客向けの情報等が表示される。
傾斜面22における表示操作部23の右隣には、バラ硬貨出金口24が形成されている。バラ硬貨出金口24は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けてスライドする第1シャッター25によって開閉される。傾斜面22においてバラ硬貨出金口24の上方には、貨幣処理装置2が両替機2Aであることを示す「両替」という表示が付されている。傾斜面22において、表示操作部23の下側には、カード挿入口26とレシート発行口27とが、左右に並んで設けられている。顧客のカード(図示せず)がカード挿入口26に挿入されると、カード処理部12(図2参照)は、このカードに記憶された情報を読み取ってカード挿入口26から顧客に返却する。プリンタ部13は、顧客との取引に係る明細等をレシート(図示せず)に印字して、このレシートをレシート発行口27から顧客に発行する。
水平面21において、左側に包装硬貨出金口28が形成され、右側に紙幣入出金口29が形成されている。包装硬貨出金口28は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けてスライドする第2シャッター30によって開閉される。紙幣入出金口29は、第2シャッター30と同様にスライドする第3シャッター31によって開閉される。
図4は、紙幣処理部14の概要を示す模式図である。紙幣処理部14は、装置本体10内に設けられた収納庫35、環状搬送路36、取込搬送路37、取出搬送路38、入金リジェクト部39、出金リジェクト部40および識別部41を含む。
収納庫35は、箱状に形成され、複数(ここでは5つ)存在し、前後(図4では左右)に並んで配置されている。5つの収納庫35のうち、3つの収納庫35は、出金のために準備された紙幣を金種別に積層状態にて収納する第1出金庫35A、第2出金庫35Bおよび第3出金庫35Cである。別の1つの収納庫35は、入金された紙幣を一時的に収納する一時保留部35Dであり、残りの1つの収納庫35は、入金された紙幣を最終的に収納する入金庫35Eである。一例として、第1出金庫35Aは、1万円札の紙幣を収納し、第2出金庫35Bは、5千円の紙幣を収納し、第3出金庫35Cは、千円札の紙幣を収納する。入金庫35Eは、複数の金種が混合した状態にて紙幣を収納する。
環状搬送路36は、ループ状をなしており、5つの収納庫35の上側に配置されている。環状搬送路36は、分岐路46、47、48、49および50を介して、第1出金庫35A、第2出金庫35B、第3出金庫35C、一時保留部35Dおよび入金庫35Eに接続されている。取込搬送路37は、紙幣入出金口29に入金された紙幣を1枚ずつ取り込み、環状搬送路36へ送るための搬送路である。取出搬送路38は、環状搬送路36内の紙幣を、紙幣入出金口29や、紙幣入出金口29と一体的に設けられた入金リジェクト部39に送るための搬送路である。
出金リジェクト部40は、分岐路51を介して、取込搬送路37の途中につながっている。識別部41は、環状搬送路36の途中に配置されている。識別部41は、環状搬送路36において搬送される紙幣の金種、正損、真偽等を識別する一般的なセンサである。損傷のある紙幣や偽の紙幣は、リジェクト紙幣であると識別部41によって識別される。
紙幣処理部14内の各搬送路や分岐路において、紙幣は、モータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けて回転する搬送ローラ(図示せず)や周回移動する搬送ベルト(図示せず)によって搬送される。紙幣処理部14内において、搬送路と分岐路との接続位置には、ソレノイド等の駆動部(図示せず)の作動に応じて紙幣の搬送方向を切り換える分岐爪(図示せず)が設けられている。
紙幣による両替の取引について説明すると、顧客の紙幣は、紙幣入出金口29に払い込まれ、その後、取込搬送路37を通って環状搬送路36に進入する。この紙幣は、環状搬送路36によって搬送され、その途中において識別部41によって識別される。リジェクト紙幣であると識別部41によって識別された紙幣は、取出搬送路38を通って入金リジェクト部39に搬送され、顧客に返却される。リジェクト紙幣でないと識別部41によって識別された紙幣は、分岐路49を経て一時保留部35Dに一時保留される。
以上の入金処理の後、顧客によって紙幣を含む貨幣への両替が指示されると、出金用に指定された金種の紙幣が、対応する第1出金庫35A〜第3出金庫35Cから環状搬送路36に繰り出される。環状搬送路36に繰り出された紙幣のうち、リジェクト紙幣であると識別部41によって識別された紙幣は、環状搬送路36から取込搬送路37および分岐路51を通過して出金リジェクト部40に送られる。出金リジェクト部40のリジェクト紙幣は、係員によって回収される。リジェクト紙幣でないと識別部41によって識別された出金用の紙幣は、取出搬送路38を通過して、紙幣入出金口29から顧客に出金される。このような出金処理の後に一時保留部35Dの紙幣が入金庫35Eに収納されると、両替の取引が完了する。
図5は、バラ硬貨処理部15の概要を示す模式図である。バラ硬貨処理部15は、装置本体10内に設けられた硬貨出金庫55および搬送路56を含む。硬貨出金庫55は、ホッパ状に形成され、複数(ここでは4つ)存在し、前後(図5では左右)に並んで配置される。各硬貨出金庫55の底部には、硬貨を1枚ずつ繰り出す繰出機構(図示せず)と、繰り出された硬貨の金種、正損、真偽等を識別する識別部57とが設けられている。4つの硬貨出金庫55は、出金のために準備されたバラ硬貨を収納する第1硬貨出金庫55A、第2硬貨出金庫55B、第3硬貨出金庫55Cおよび第4硬貨出金庫55Dである。一例として、第1硬貨出金庫55Aは、50円硬貨を収納し、第2硬貨出金庫55Bは、100円硬貨を収納し、第3硬貨出金庫55Cは、500円硬貨を収納し、第4硬貨出金庫55Dは、50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨のいずれかの硬貨または別の金種の硬貨(例えば10円硬貨)を収納する。
搬送路56は、4つの硬貨出金庫55を上下に取り囲むように配置されている。そのため、搬送路56は、4つの硬貨出金庫55の下側に跨って延びる下側搬送路56Aと、下側搬送路56Aに連通し、5つの硬貨出金庫55の上側に跨って延びる上側搬送路56Bとを含む。搬送路56において出金のために搬送されるバラ硬貨の搬送方向は、図5における時計回りである。バラ硬貨の搬送方向における上側搬送路56Bの下流端は、バラ硬貨出金口24につながっている。
下側搬送路56Aは、繰出通路58、59、60および61を介して、第1硬貨出金庫55A、第2硬貨出金庫55B、第3硬貨出金庫55Cおよび第4硬貨出金庫55Dのそれぞれの底部につながっている。上側搬送路56Bは、補充通路63、64、65および66を介して、第1硬貨出金庫55A、第2硬貨出金庫55B、第3硬貨出金庫55Cおよび第4硬貨出金庫55Dのそれぞれの上部につながっている。
搬送路56には、前述した搬送ローラや搬送ベルト等によって構成された搬送機構(図示せず)が、前述した繰出機構によって繰り出されたバラ硬貨を搬送するために設けられている。搬送機構がモータ等の駆動部(図示せず)の駆動力を受けると、下側搬送路56A内のバラ硬貨は、上側搬送路56Bに送り出され、上側搬送路56Bを通過した後にバラ硬貨出金口24に送られる。前述した分岐爪(図示せず)は、上側搬送路56Bと補充通路63〜66のそれぞれとの接続位置にも設けられている。この分岐爪の向きを切り換えることによって、上側搬送路56B内のバラ硬貨を、補充通路63〜66から所望の硬貨出金庫55に送り込むことができる。
バラ硬貨による両替の取引について説明すると、この取引のために入金された顧客の紙幣が、前述した入金処理により、紙幣処理部14の一時保留部35Dに一時保留される。その後、顧客によってバラ硬貨を含む貨幣への両替が指示されると、指定された金種のバラ硬貨が、対応する第1硬貨出金庫55A〜第4硬貨出金庫55Dから繰出機構(図示せず)によって繰り出され、識別部57を通って下側搬送路56Aに進入する。下側搬送路56Aに進入したバラ硬貨は、上側搬送路56Bを通過した後に、バラ硬貨出金口24から顧客に出金される。これに応じて、紙幣処理部14の一時保留部35Dに一時保留された紙幣が入金庫35Eに収納されると、両替の取引が完了する。
なお、リジェクト硬貨であると識別部57によって識別された硬貨は、バラ硬貨出金口24を通過した後に、バラ硬貨出金口24よりも下流側の出金リジェクト部68に収納される。出金リジェクト部68のリジェクト硬貨は、係員によって回収される。
図6は、両替機2Aにおいて包装硬貨処理部16の概要を示した模式的な右側面図である。包装硬貨処理部16は、円柱状の包装硬貨Kを金種毎(例えば、500円硬貨、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨、5円硬貨および1円硬貨の6金種毎)に収納している。包装硬貨処理部16は、取引の際に、必要な額に相当する金種および本数の包装硬貨Kを包装硬貨出金口28に払い出す。包装硬貨処理部16は、包装硬貨Kを包装硬貨出金口28に払い出すための払出機構71と、装着部72と、包装硬貨Kを金種別に収納する複数の金種別収納部73とを含む。
払出機構71は、装置本体10内において包装硬貨出金口28の真下の領域に配置されている。払出機構71は、上面が開放された箱状のバケット74と、バケット74を包装硬貨出金口28の直下の上位置(破線のバケット74を参照)と最下方の下位置(実線のバケット74を参照)との間で昇降させる昇降機構75と、金種別収納部73から包装硬貨Kをバケット74内へ繰り出すための繰出部76とを含む。昇降機構75は、モータ等の駆動部(図示せず)によって構成される。繰出部76は、バケット74に取り付けられ、1点鎖線の矢印にて示すように、バケット74とともに昇降する。
複数の装着部72は、装置本体10内において、バケット74の移動領域の後側(図6では右側)に配置されている。装着部72を、装置本体10の一部とみなしてよい。この実施形態における装着部72は、2つ存在し、左右(図6では紙面に直交する方向)に並んで配置されている。装着部72は、ボックス状に形成されている。装着部72の内部空間は、バケット74の移動領域に露出されている。装着部72の後面には、縦長の着脱口72Aと、着脱口72Aを開閉する扉状の開閉部77とが設けられている。なお、以降では、貨幣処理装置2を後方から見たときを基準として、左右方向を特定する。そのため、以降における「左」とは、貨幣処理装置2を後方から見たときにおける左であり、以降における「右」とは、貨幣処理装置2を後方から見たときにおける右である。
この実施形態における金種別収納部73は、28個存在している。14個の金種別収納部73が、縦に重なって配置されて1つの列を構成し、残りの14個の金種別収納部73も、縦に重なって配置されて、別の1列を構成している。そのため、金種別収納部73は、左右2列上下14段に並んで配置されている。つまり、これらの金種別収納部73は、左列および右列という2つのグループのいずれかにグループ分けされており、グループ毎にまとまって配置されている。左列に属する14個の金種別収納部73は、左側の装着部72に装着され、この装着部72の内部空間に配置されている。右列に属する14個の金種別収納部73は、右側の装着部72に装着され、この装着部72の内部空間に配置されている。各装着部72の開閉部77は、左列および右列のグループ毎に設けられている。
金種別収納部73は、前後(図6では左右)に長手のトレイ状またはカセット状に形成されている。金種別収納部73は、その左右方向(図6の紙面に垂直な方向)における両側面を塞いだ側板(図示せず)も含む。左右の各列における複数の金種別収納部73は、水平方向に対して後上側へ傾斜した姿勢にて上下方向に並んで配置されている。各金種別収納部73は、装着部72によって支持された状態において、金種別収納部73の傾斜に沿って前後にスライド可能である。係員は、金種別収納部73を後側へスライドさせて装着部72の着脱口72Aから引き出すことにより、装着部72から離脱させることができる。係員は、金種別収納部73を着脱口72Aから装着部72内に挿入することにより、装着部72に装着することができる。
各金種別収納部73には、500円硬貨、100円硬貨、50円硬貨、10円硬貨、5円硬貨および1円硬貨のいずれか1金種の包装硬貨Kが、金種別収納部73の左右方向に長手となった状態にて、金種別収納部73の傾斜に沿って並んで収納される。金種別収納部73内において、これらの包装硬貨Kは、自重によって、まとまった状態にて前側の払出機構71へ向けて片寄っており、金種別収納部73において上側へ湾曲した前端部73Aによって前側からせき止められている。
包装硬貨Kによる両替の取引について説明すると、この取引のために入金された顧客の紙幣が、前述した入金処理より、紙幣処理部14の一時保留部35Dに一時保留される。その後、顧客によって包装硬貨を含む貨幣への両替が指示されると、今まで下位置にあったバケット74が、顧客によって指定された金種の包装硬貨Kを収容する金種別収納部73の前端部73Aまで上昇する。その後、この金種別収納部73内の包装硬貨Kが、繰出部76において例えばモータ等の駆動部によって駆動回転される爪(図示せず)に引っ掛けられることによって、前側の包装硬貨Kから順にバケット74に1本ずつ繰り出される。なお、繰出部76の爪が金種別収納部73における先頭の包装硬貨Kに円滑に引っ掛かるように、繰り出し中において、当該金種別収納部73の下隣の金種別収納部73を後側へずらしてもよい。また、繰出部76は、金種別収納部73の左列および右列に応じて2つ存在してもよく、その場合、各繰出部76が、左列および右列のうち対応する列の金種別収納部73から、共通のバケット74に包装硬貨Kを繰り出す。
必要な金種の包装硬貨Kが必要数だけ各金種別収納部73からバケット74に繰り出されると、バケット74は、上位置まで上昇する。その後、第2シャッター30が開いて、バケット74内の包装硬貨Kは、包装硬貨出金口28に露出されて顧客に出金される。これに応じて、紙幣処理部14の一時保留部35Dに一時保留されていた紙幣が入金庫35Eに収納されると、両替の取引が完了する。
包装硬貨処理部16は、モータ等の駆動部の駆動力を受けて金種別収納部73の傾斜に沿ってスライド可能な計数部78を含む。計数部78は、スライドする際に、金種別収納部73内の包装硬貨Kにおいて長手方向の端部に位置する硬貨の模様等から当該包装硬貨Kの金種や真偽を識別するとともに、包装硬貨Kを1本ずつ計数する。計数部78として、光学式の計数センサ等の公知のものを用いることができる。計数部78は、金種別収納部73毎に設けられてもよいし、1つの計数部78が、各金種別収納部73まで昇降することによって、全ての金種別収納部73の包装硬貨Kを識別および計数できてもよい。
図7は、両替機2Aを背面側から見た斜視図である。両替機2Aの装置本体10の後壁には、この後壁のほぼ全域にわたる本体開口部10Aと、本体扉79とが設けられている。本体扉79は、装置本体10の後壁の左端部に設けられたヒンジ80を介して装置本体10に連結されている。本体扉79は、ヒンジ80を中心に回動することによって、本体開口部10Aを開閉する。本体扉79は、ロック機構(図示せず)によって、閉じた状態にてロックされる。係員は、専用の鍵(図示せず)を本体扉79の鍵穴(図示せず)に差し込んで回すことによって、ロック機構によるロックを解除して、本体扉79を開くことができる。本体扉79が開くと、図7に示すように、装置本体10の内部が本体開口部10Aから後方へ露出される。具体的には、包装硬貨処理部16における左右の装着部72および開閉部77と、表示操作部81とが、少なくとも露出される。
図7における各開閉部77は、対応する装着部72の着脱口72Aを閉じた閉位置にあって、当該装着部72内の全ての金種別収納部73、つまり、対応するグループに属する全ての金種別収納部73を後側から遮蔽している。閉位置にある開閉部77の左端部は、ヒンジ82を介して、対応する装着部72の後壁に連結されている。係員は、閉位置にある開閉部77の右端部における取っ手83を掴んで後側へ引くことにより、開閉部77を、ヒンジ82を中心に回動させて開位置まで開くことができる。つまり、開閉部77は、閉位置と開位置との間において開閉可能である。開閉部77が開位置まで開くと、対応する装着部72内の全ての金種別収納部73が着脱口72Aから後側へ開放される。
各装着部72には、ロック機構84が内蔵されている。ロック機構84は、例えば電磁ロックによって構成されており、ロック手段の一例として機能する。開閉部77は、通常、ロック機構84によって閉位置にてロックされている。開閉部77が閉位置にてロックされた装着部72では、係員が着脱口72Aからいずれの金種別収納部73にもアクセスできないので、金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が禁止された状態にある。ロック機構84による開閉部77のロックが解除された装着部72では、係員が開閉部77を開いて着脱口72Aから金種別収納部73にアクセスできるので、金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が許容された状態にある。ロック機構84が各装着部72に設けられるので、金種別収納部73への包装硬貨Kの装填は、装着部72毎つまり左列または右列のグループ毎に許容または禁止される。
表示操作部81は、例えばタッチパネルディスプレイによって構成されており、受付手段の一例として機能する。表示操作部81は、装着部72よりも高い位置において、前述したプリンタ部13の裏側に配置されている。表示操作部81には、係員向けの情報が表示される。なお、本体扉79が閉じた状態においても表示操作部81の内容が外から視認できるように、透明または半透明の窓79Aが本体扉79に設けられている。
図8は、貨幣処理装置2の電気的構成を示すブロック図である。制御部17は、例えばマイクロコンピュータによって構成されていて、受付手段、選定手段、許容手段、取引手段、設定手段および報知手段の一例として機能する。制御部17には、電源部11、カード処理部12、プリンタ部13、紙幣処理部14、バラ硬貨処理部15、包装硬貨処理部16、表示操作部23、第1シャッター25、第2シャッター30、第3シャッター31および表示操作部81のそれぞれと、通信I/F部85と、記憶手段の一例としての記憶部86とが電気的に接続されている。
制御部17は、カード挿入口26に挿入されたカードに記憶された情報をカード処理部12によって読み取ってカード挿入口26から返却する。制御部17は、プリンタ部13によってレシートを印刷してレシート発行口27から発行する。
制御部17は、紙幣処理部14における前述した駆動部(図示せず)を制御する。これにより、制御部17は、紙幣入出金口29、入金リジェクト部39および出金リジェクト部40のそれぞれと、各収納庫35との間において紙幣を移動させたり、収納庫35同士の間において紙幣を移動させたり、第3シャッター31を開閉したりすることができる(図3および図4参照)。紙幣処理部14の識別部41による紙幣の識別結果は、制御部17に入力される。
制御部17は、バラ硬貨処理部15における前述した駆動部(図示せず)を制御する。これによって、制御部17は、各硬貨出金庫55からバラ硬貨出金口24や出金リジェクト部68までバラ硬貨を移動させたり、硬貨出金庫55同士の間においてバラ硬貨を移動させたり、第1シャッター25を開閉したりすることができる(図3および図5参照)。バラ硬貨処理部15の各識別部57によるバラ硬貨の識別結果は、制御部17に入力される。
制御部17は、包装硬貨処理部16における前述した駆動部(図示せず)を制御する。これによって、制御部17は、各金種別収納部73の包装硬貨Kを繰り出して包装硬貨出金口28まで移動させたり、第2シャッター30を開閉したりすることができる(図6参照)。包装硬貨処理部16の計数部78による包装硬貨Kの識別結果および計数結果は、制御部17に入力される。また、制御部17は、包装硬貨処理部16の各装着部72におけるロック機構84を制御することによって、各装着部72の開閉部77を閉位置にてロックしたり、そのロックを解除したりすることができる。このように開閉部77のロックを制御する制御部17は、開閉部77によって開閉される各装着部72への包装硬貨Kの装填を許容したり禁止したりする制限手段の一例として機能する。
なお、制御部17をメイン制御部として、紙幣処理部14、バラ硬貨処理部15および包装硬貨処理部16のそれぞれにサブ制御部(図示せず)を設けてもよい。その場合、紙幣処理部14、バラ硬貨処理部15および包装硬貨処理部16のそれぞれについて前述した動作は、メイン制御部の指示を受けたサブ制御部によって制御される。
制御部17は、顧客による表示操作部23の操作を受け付けたり、表示操作部23の表示を制御したりすることができる。制御部17は、係員による表示操作部81の操作を受け付けたり、表示操作部81の表示を制御したりすることができる。通信I/F部85は、制御部17が他の貨幣処理装置2や管理装置3と通信するためのインターフェース部であって、LAN4(図1参照)に接続されている。
記憶部86は、不揮発性メモリやハードディスクドライブといった記憶デバイスによって構成されていて、両替機2Aに関する様々な情報を記憶している。当該情報の一例として、貨幣の在庫が挙げられる。例えば、包装硬貨Kの在庫として、記憶部86は、図9に示すテーブル87を記憶している。包装硬貨Kを収納する合計28個の金種別収納部73には、それぞれの金種別収納部73を識別するための1〜28のトレイNo.が1つずつ割り当てられている。右列に属する14個の金種別収納部73では、下端に位置するトレイNo.1の金種別収納部73から、上端に位置するトレイNo.14の金種別収納部73へ向けて、トレイNo.が1つずつ大きくなっている。左列に属する14個の金種別収納部73では、下端に位置するトレイNo.15の金種別収納部73から、上端に位置するトレイNo.28の金種別収納部73へ向けて、トレイNo.が1つずつ大きくなっている。なお、テーブル87の上端において、「W8」は、左列を指す記号として予め定められたものであり、「W9」は、右列を指す記号として予め定められたものである。これらの記号は、左右方向において対応する位置にある開閉部77の表面に、シールや刻印等によって表示されている(図7参照)。
テーブル87には、各トレイNo.の金種別収納部73に現在収納されている包装硬貨Kの金種、本数および金額が記録されている。ここでの金額とは、金種に本数(収納本数)と包装硬貨Kの1本に含まれる硬貨の枚数(ここでは50枚)とを乗じることによって得られる金種別収納部73毎の合計金額である。各金種別収納部73に収納される包装硬貨Kの金種は、係員による表示操作部81の操作等に基く初期設定によって予め定められている。図9では、左列および右列において、同じ段(高さ位置)にある金種別収納部73に収納する包装硬貨Kの金種が同じであるが(例えばトレイNo.1および15の金種別収納部73を参照)、包装硬貨Kの金種は、左列および右列の各段において同じでなくてもよい。図9では、左列および右列において、全ての金種別収納部73に、いずれかの金種の包装硬貨Kが収納されているが、金種の包装硬貨Kが収納されない空きの金種別収納部73が設定されてもよい。図9は、全ての金種別収納部73において包装硬貨Kが上限(最大収納本数)まで収納された状態を示している。前述した両替等の取引によって金種別収納部73から包装硬貨Kが繰り出されると、制御部17は、当該金種別収納部73における包装硬貨Kの本数を減らすことによってテーブル87の内容を更新する。
制御部17は、包装硬貨Kの精査処理として、所定のタイミングにおいて、計数部78(図6参照)をスライドさせて各金種別収納部73内の包装硬貨Kを識別および計数してもよい。制御部17は、計数部78による識別および計数に応じて、各金種別収納部73内の包装硬貨Kの最新の収納本数を取得するとともに、今までテーブル87に記憶されていた直前の収納本数と比較する。最新の収納本数と直前の収納本数とが一致すれば、各金種別収納部73の包装硬貨Kについての精査処理が無事終了する。なお、営業開始前等のタイミングにおいてテーブル87内の収納本数がリセットされている状態にて精査処理が行われると、制御部17は、この精査処理にて得られた収納本数を、最新の在庫としてテーブル87に記録する。
係員は、両替機2Aに後側からアクセスすることによって、各金種別収納部73に包装硬貨Kを装填することができる。なお、顧客との取引中であっても、両替機2Aでは、ノンストップ運用として、包装硬貨Kを装填できる。係員は、包装硬貨Kの装填のために、前述した本体扉79を開いて装置本体10の後壁における本体開口部10Aを開放し、左右の装着部72および開閉部77と、表示操作部81とを後側へ露出させる(図7参照)。係員が表示操作部81を操作することによってログイン等すると、制御部17は、図10に示す係員画面88を表示操作部81に表示する。係員画面88の例えば上端部には、複数のタブ89が左右に並んで表示され、係員画面88の例えば下端部には、かんたん装填キー90が表示されている。タブ89およびかんたん装填キー90は、タッチキーである。
係員が「状態表示」と記されたタブ89にタッチすると、係員画面88において上端部と下端部との間の領域には、紙幣、バラ硬貨および包装硬貨の金種別の状態が表示される。ある金種の貨幣(図10では500円包装硬貨)が貨幣処理装置2内に全く存在しなければ、この金種の状態は、エンプティである。ある金種の貨幣(図10では50円包装硬貨)について、貨幣処理装置2全体の在庫数が、所定値(下限値)を下回っていれば、この金種の状態は、ニアエンプティである。ある金種の貨幣について、貨幣処理装置2全体の在庫数が、前記所定値以上であれば、この金種の状態は、正常である。係員は、このような状態表示に基いて、紙幣、バラ硬貨および包装硬貨の金種別の在庫を大まかに把握できる。係員は、在庫についての詳細な情報を知りたければ、「残量表示」と記されたタブ89にタッチする。すると、係員画面88には、紙幣、バラ硬貨および包装硬貨の金種別の在庫数が詳細に表示される。例えば、包装硬貨の場合には、前述したテーブル87の内容が係員画面88に表示される。係員が、「取引明細」と記されたタブ89にタッチすると、今までの取引の履歴に関する情報が、係員画面88に表示される。
貨幣を装填したい係員は、係員画面88において、かんたん装填キー90にタッチする。すると、制御部17は、図11に示すメニュー画面91を表示操作部81に切替表示する。例えば、メニュー画面91の上端部には、「かんたん装填メニュー」という見出しと、「処理を選択してください」という案内文とが表示され、メニュー画面91の下端部には、取消キー92が表示されている。メニュー画面91において上端部と下端部との間の領域には、複数(ここでは4つ)の選択キー93が上下に並んで表示されている。取消キー92および複数の選択キー93は、タッチキーである。係員が、取消キー92にタッチすると、制御部17は、1つ前の画面(ここでは係員画面88)を表示操作部81に切替表示する。
係員は、紙幣、バラ硬貨および包装硬貨のいずれかを装填したい場合には、当該いずれかが記された選択キー93にタッチする。今回、係員は、包装硬貨を装填したいので、メニュー画面91において「包装硬貨装填」と記された選択キー93にタッチする。係員による選択キー93のタッチは、貨幣処理装置2の金種別収納部73への包装硬貨Kの装填指示である。図12に示すフローチャートを参照して、制御部17は、このような装填指示を表示操作部81にて受け付けると(ステップS1においてYES)、前述した左列および右列という複数のグループのうち、包装硬貨Kの装填対象となるグループを選定する(ステップS2)。
装填対象として選定されるグループは、以下の第1選定条件を最低限満たしている必要がある。装填対象として選定されるグループは、以下の第2〜第5選定条件の少なくともいずれかをさらに満たしている必要があってもよい。これらの選定条件は、記憶部86に記憶されている。
・第1選定条件:現在取引に用いられている金種別収納部73が属するグループとは別のグループであること。ただし、現在取引が行われていなければ、第1選定条件は無視できる。
・第2選定条件:グループ全体における全金種または特定金種の包装硬貨Kの収納量が他のグループの収納量よりも少ないグループであること。当該特定金種として、出金頻度が高い1種類または複数種類の金種(例えば100円)が挙げられ、係員は、表示操作部81の操作等によって当該特定金種を事前に指定できる。
・第3選定条件:各金種別収納部73に収納された包装硬貨Kのグループ全体の全金種または前記特定金種の合計金額が他のグループよりも少ないグループであること。
・第4選定条件:包装硬貨Kの収納量が所定値を下回ったエンプティまたはニアエンプティの金種別収納部73の数が他のグループよりも多いグループであること。
・第5選定条件:いずれの金種も収納対象として設定されていない空きの金種別収納部73の数が他のグループよりも多いグループであること。
制御部17は、包装硬貨Kの収納量(前述した収納本数)や、合計金額を、記憶部86のテーブル87(図9参照)から取得し、前述した選定条件も記憶部86から取得する。そのため、制御部17は、ステップS2において、記憶部86に記憶された情報に基いて、包装硬貨Kの装填対象となるグループを選定する。特に、第2〜第4選定条件の場合には、包装硬貨Kの装填についての必要性が高いグループが、装填対象として自動的に選定される。そのため、両替機2Aへの効率的な包装硬貨Kの装填が可能になるので、包装硬貨Kの装填について使い勝手の向上を図れる。なお、選定条件や包装硬貨Kの収納量や合計金額は、記憶部86でなく、外部の管理装置3に記憶されてもよく、その場合、制御部17は、管理装置3と通信することによって、これらの情報を取得してから、包装硬貨Kの装填対象となるグループを選定する。
制御部17は、係員による表示操作部81の操作等を受け付けることによって、選定条件の優先順位、つまり、選定されるグループの優先順位を事前に設定し、記憶部86に記憶しておくことができる。その場合、制御部17は、この優先順位も考慮して、包装硬貨Kの装填対象となるグループを選定する。そのため、係員にとって都合のよい装填が可能になるので、包装硬貨Kの装填について使い勝手の一層の向上を図れる。仮に、左列および右列における包装硬貨Kの収納状態(金種別の在庫数)が全く同じである場合には、制御部17は、これらのグループのうち、予め定めたグループ(例えば左列)を優先して選定してもよい。この場合も、係員にとって都合のよい装填が可能になるので、包装硬貨Kの装填について使い勝手の向上を図れる。
以上のように装填対象のグループが選定されると、制御部17は、当該グループに対応する開閉部77について、ロック機構84によるロックを解除する(ステップS3)。これにより、係員は、ロックが解除された開閉部77を開いて、当該グループに属する金種別収納部73に包装硬貨Kを収納することができる。つまり、制御部17は、ステップS2にて選定したグループに属する金種別収納部73への包装硬貨Kの装填を許容する。
また、ステップS3において、制御部17は、ロックを解除した開閉部77を開けて包装硬貨Kを装填するようユーザに促す。例えば、左列が選定された場合には、制御部17は、左側の装着部72の開閉部77のロックを解除し、図13に示すように「左側(W8側)の扉を開けてください」といった案内文を含む案内画面94を表示操作部81に表示して、係員を装填先の開閉部77へ誘導する。つまり、制御部17は、ステップS2にて選定したグループについての情報(図13では、当該グループに対応する扉の情報)を表示操作部81によって係員に報知する。そのため、報知を受けた係員は、装填対象となる金種別収納部73を速やかに見つけることができる。これにより、包装硬貨Kの装填について使い勝手の向上を図れる。なお、報知に関する変形例として、制御部17は、選定したグループに対応する開閉部77や金種別収納部73の周辺を、LED等の光源によってライトアップしてもよい。
案内画面94を見た係員が、指定された開閉部77を開位置まで開くと、制御部17は、図14に示す入力画面95を表示操作部81に表示する。貨幣処理装置2は、開閉部77が開位置および閉位置のどちらにあるかを検知するセンサ(図示せず)を備え、制御部17は、このセンサの検知結果が入力されることによって開閉部77の開閉を把握する。
例えば、入力画面95の上端部には、「包装硬貨装填」という見出しと、「データを入力し、[確認]を押してください」という案内文とが表示され、入力画面95の下端部には、前述した取消キー92が表示されている。入力画面95において上端部と下端部との間の領域には、テンキー96と、装填本数表示欄97と、確認キー98と、合計金額表示欄99とが表示されている。テンキー96、装填本数表示欄97および確認キー98は、タッチキーである。
装填本数表示欄97は、包装硬貨Kの金種毎に1つずつ存在する。係員は、開いた開閉部77に対応する装着部72に装着された金種別収納部73を後側へ引き出して、この金種別収納部73に補充用の包装硬貨Kを後側から装填してから、この金種別収納部73を装着部72に装着し直す。このようにある金種別収納部73への包装硬貨Kの装填を終えた係員は、先ほど装填した金種に対応する装填本数表示欄97にタッチしてから、当該金種についての装填した包装硬貨Kの本数(装填本数)をテンキー96によって入力する。その後、係員が、テンキー96におけるOKキー96Aにタッチすると、先ほど入力された装填本数が、装填本数表示欄97に表示される。なお、装填本数の入力が、対応する金種別収納部73への包装硬貨Kの装填よりも先に行われてもよい。また、装填する包装硬貨Kの本数に代えて金額を入力および表示するようにしてもよい。
係員が、装填本数を入力してOKキー96Aにタッチする度に、制御部17は、当該装填本数に、1本の包装硬貨Kに含まれる硬貨の枚数(ここでは50枚)と、当該包装硬貨Kの金種とを乗じることによって金種別の装填金額を算出し、装填金額の合計を、合計金額として合計金額表示欄99に表示する。係員は、装填が必要と判断した全ての金種別収納部73に包装硬貨Kを装填して、該当する全ての装填本数表示欄97に装填本数を表示させると、確認キー98にタッチする。係員は、確認キー98のタッチに前後して、先ほど開いた開閉部77を閉位置まで閉じる。
すると、制御部17は、図15に示す確認画面100を表示操作部81に表示する。例えば、確認画面100の上端部には、「包装硬貨装填」という見出しと、「データを確認し、[完了]を押してください」という案内文とが表示され、確認画面100の下端部には、前述した取消キー92と、完了キー101とが表示されている。完了キー101は、タッチキーである。入力画面95において上端部と下端部との間の領域には、前述した合計金額表示欄99が引き続き表示され、包装硬貨の装填内容が合計金額表示欄99の下に表示される。装填内容とは、今回装填した包装硬貨Kの金種別の装填本数および装填金額である。合計金額表示欄99には、最終的な合計金額が表示される。
確認画面100の内容を確認して納得した係員が完了キー101にタッチすると、今回の包装硬貨Kの装填が完了したことになる。図12を参照して、制御部17は、装填完了に応じて(ステップS4においてYES)、係員が先ほど閉じた開閉部77を閉位置にてロックする(ステップS5)。また、制御部17は、今回装填された包装硬貨Kの装填本数に応じて、テーブル87の内容を更新する。制御部17は、前述した精査処理を、設定に応じて実行してもよい。
係員は、今回の装填に係る明細についてのレシートが必要であれば、表示操作部81にメニュー画面91を表示させて、「未印字レシート出力」と記された選択キー93(図11参照)にタッチする。すると、制御部17は、図16に示すレシート発行画面102を、例えばポップアップ画面としてメニュー画面91に重ねて表示する。例えば、レシート発行画面102には、「未印字レシートが1件あります レシート印字を行いますか?」という案内文と、「はい」と記されたYESキー103と、「いいえ」と記されたNOキー104とが表示されている。YESキー103およびNOキー104は、タッチキーである。
係員向けのレシート発行口110は、前述したレシート発行口27とは異なり、プリンタ部13の後面部等に設けられていて、普段は、表示操作部81の前側に隠れている(図7参照)。そこで、レシートが必要な係員は、YESキー103にタッチしてから、表示操作部81をずらして、レシート発行口110を後側へ露出させる。そのために、表示操作部81は、装置本体10によって、例えばスライド可能に支持されている。YESキー103のタッチを受け付けた制御部17は、今回の装填についてのレシートをプリンタ部13によって印刷してレシート発行口110から発行する。なお、プリンタ部13が顧客向けのレシートを発行する都合上、係員向けのレシートの発行は、顧客の取引が行われていないタイミングに行われることが好ましい。係員が、必要に応じてレシートを発行してもらった後に、本体扉79を閉じてロックすると、包装硬貨Kについての一連の装填処理が完了する。
以上のように、グループ分けされた複数の金種別収納部73を含む両替機2Aでは、金種別収納部73への包装硬貨Kの装填指示があると、包装硬貨Kの装填対象となるグループが自動的に選定され、当該グループに属する金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が許容される。そのため、包装硬貨Kを装填したい係員は、装填対象となるグループを自ら選定するために考慮せずに済む。その結果、両替機2Aにおける包装硬貨Kの装填について使い勝手の向上を図れる。また、選定されたグループに属する全ての金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が許容されるので、係員は、当該グループ内の金種別収納部73に対して、事前に補充を予定した金種の包装硬貨Kだけでなく、急遽補充が必要になった金種の包装硬貨Kも装填できる。
前述したように、両替機2Aは、顧客との取引中であっても、ノンストップ運用として、包装硬貨Kを装填できる。そのため、包装硬貨Kの装填のために選定されたグループに属する金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が許容されている状態(ステップS2以降の状態)において、制御部17は、選定したグループとは別のグループ(図13の場合は右列)に属する金種別収納部73を用いて顧客と取引を行うことができる。そのため、顧客は、金種別収納部73への包装硬貨Kの装填中でも、両替等の取引を両替機2Aと継続できる。これにより、包装硬貨Kの装填について使い勝手の一層の向上を図れる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述した実施形態では、包装硬貨Kを装填したい係員が、表示操作部81のメニュー画面91において「包装硬貨装填」と記された選択キー93(図11参照)にタッチすれば、制御部17は、装填指示があったものとして(ステップS1においてYES)、装填対象となるグループを選定する(ステップS2)。変形例として、装填指示は、装填する包装硬貨Kの金種情報を含んでもよい。具体的には、係員が「包装硬貨装填」と記された選択キー93にタッチすると、制御部17は、図17に示す金種選択画面105を表示操作部81に切替表示する。例えば、金種選択画面105の上端部には、「かんたん装填メニュー」という見出しと、「装填する包装硬貨の金種を選択し、[実行]を押して下さい」という案内文とが表示され、金種選択画面105の下端部には、前述した取消キー92と、実行キー106とが表示されている。金種選択画面105において上端部と下端部との間の領域には、包装硬貨Kの金種と同数の金種選択キー107が並んで表示されている。実行キー106および複数の金種選択キー107は、タッチキーである。
係員が、装填したい包装硬貨Kの金種が記された金種選択キー107にタッチしてから実行キー106にタッチすると、制御部17は、図18のフローチャートに示すように、ステップS1において装填指示を受け付けるとともに(ステップS1においてYES)、装填する包装硬貨Kの金種情報も受け付ける(ステップS11においてYES)。これに応じて、制御部17は、左列および右列のグループのうち、当該金種情報の金種と同じ金種の包装硬貨Kを収納対象とするグループの中から、包装硬貨Kの装填対象となるグループを選定する(ステップS2)。つまり、変形例の場合には、以下の第6選定条件を満たすグループが、包装硬貨Kの装填対象となるグループとして優先して選定される。
・第6選定条件:係員により金種選択キー107によって選択された金種の包装硬貨Kを収納対象とする金種別収納部73が属するグループであること。
変形例の場合、装填対象として選定されるグループは、前述した第1および第6選定条件を最低限満たす必要がある。装填対象として選定されるグループは、前述した第2〜第5選定条件および以下の第7選定条件の少なくともいずれかをさらに満たす必要があってもよい。ただし、第2選定条件に関し、変形例では、ステップS11にて指定された金種についての包装硬貨Kの収納量が他のグループの収納量よりも少ないグループが装填対象となる。同様に、第3選定条件に関し、変形例では、ステップS11にて指定された金種の包装硬貨Kについてのグループ全体の合計金額が他のグループよりも少ないグループが装填対象となる。また、変形例では、ステップS11にて指定された金種に限定して第4選定条件や第7選定条件を適用してもよい。
・第7選定条件:所定のタイミング以降(例えば前回の装填処理以降)の期間において、ステップS11にて指定された金種の包装硬貨Kについてのグループ全体の出金本数が他のグループよりも多いグループであること。
係員は、金種選択画面105において2つ以上の金種選択キー107(図17参照)にタッチすることによって、装填したい包装硬貨Kの金種を複数種類指定することができる。その場合、制御部17は、係員によって指定された複数種類の金種のうち、予め設定された優先順位が最も高い金種、または、収納本数が最も少ない金種に限定して前記選定条件を適用することによって、装填対象のグループを選定してもよい。ステップS3以降の処理は、前述した実施形態(図12参照)におけるステップS3以降の処理と同じである。
変形例の場合、ユーザは、装填したい包装硬貨Kの金種だけを選択すれば、両替機2Aにおいて、その金種の包装硬貨Kを収納対象とするグループの中から、包装硬貨Kの装填対象となるグループが自動的に選定される。これにより、包装硬貨Kの装填について使い勝手の一層の向上を図れる。なお、金種を選択する必要がない係員は、金種選択画面105において、いずれの金種選択キー107にもタッチせずに、実行キー106(図17参照)だけにタッチすれば(ステップS11においてNO)、制御部17は、前述した実施形態(図12参照)と同様にステップS2以降の処理を行う。
以上の実施形態では、左列および右列のそれぞれのグループに対応する開閉部77についてのロック機構84によるロックおよびロック解除によって、各グループに属する全ての金種別収納部73への包装硬貨Kの装填が許容または禁止される。開閉部77をロック機構84によってロックする構成に代えて、各金種別収納部73をロックするロック機構108(図8参照)が各装着部72に設けられてもよい。この場合、開閉部77およびロック機構84を省略できる。ロック機構108は、例えば電磁ロックによって構成されており、制御部17によって制御される。ロック機構108は、通常は、対応するグループに属する全ての金種別収納部73を後側へ引き出せないようにロックしている。ステップS3において、制御部17は、装填対象として選定されたグループに属する全ての金種別収納部73についてのロック機構108によるロックを解除することによって、当該金種別収納部73が装着部72から離脱することを許容する。このようなロック機構108を用いることにより、装着部72からの金種別収納部73の離脱がグループ毎に許容または禁止されてもよい。
開閉部77の開閉をロックするロック機構84と、金種別収納部73の離脱をロックするロック機構108とが組み合わせて適用されてよい。この場合には、ステップS3において、制御部17は、装填対象として選定されたグループに属する全ての金種別収納部73についてのロック機構108によるロックを解除するとともに、このグループに対応する開閉部77のロックを解除する。
ロック機構108は、金種別収納部73毎に設けられてもよい。例えば、前述した変形例において、装填したい金種が指定されたうえで装填対象のグループが選定された場合には、当該グループのうち、指定された金種についての金種別収納部73だけがロック解除される。そのため、当該グループでも、ロックされたままの他の金種別収納部73を用いて取引を継続できる。
それぞれの金種別収納部73は、装着部72に対して着脱可能でなく、装置本体10に固定されていてもよい。その場合、各金種別収納部73の後部には、包装硬貨Kを装填するための装填口(図示せず)が形成され、各グループの金種別収納部73の装填口は、対応する開閉部77によって一括開閉される。または、開閉部77は、金種別収納部73毎に設けられ、各開閉部77は、対応する金種別収納部73の装填口を個別に開閉してもよい。この場合、装填対象のグループが選定された場合には、当該グループに属する全ての金種別収納部73に対応する開閉部77についてのロックが解除されるので、係員は、ロックが解除された開閉部77を開いて、包装硬貨Kを装填口(図示せず)から各金種別収納部73に装填することができる。なお、前述したように装填したい金種が指定されたうえで装填対象のグループが選定された場合には、当該グループのうち、指定された金種についての金種別収納部73に対応する開閉部77だけがロック解除されてもよい。そうすれば、当該グループでも、開閉部77がロックされたままの他の金種別収納部73を用いて取引を継続できる。
両替機2Aにおける金種別収納部73のグループは、前述した実施形態では、左列および右列の2つだけであったが、3つ以上存在してもよい。3つ以上のグループが存在する場合、1つだけでなく、2つ以上のグループが、包装硬貨Kの装填対象として選定されてもよい。
両替機2Aでは、包装硬貨Kを用いた顧客との取引として、両替の際に包装硬貨Kを金種別収納部73から出金する取引が可能であったが、例えば、包装硬貨出金口28に投入された包装硬貨Kを金種別収納部73に入金する取引が可能であってもよい。
また、以上では、両替機2Aに着目して説明したが、本発明は、ATM2Bや出納機2C等の他の貨幣処理装置2にも適用可能である。
また、以上では、貨幣の一例として、包装硬貨Kに着目して説明したが、本発明は、バラ硬貨の装填や、紙幣(バラ紙幣)の装填の場合にも適用可能である。その場合、紙幣処理部14における複数の収納庫35(図4参照)や、バラ硬貨処理部15における複数の硬貨出金庫55(図5参照)がグループ分けされて、紙幣処理部14およびバラ硬貨処理部15では、貨幣の装填対象となるグループが自動的に選定される。また、貨幣処理装置2が、所定枚数毎に帯封された包装紙幣を取り扱う場合には、本発明は、包装紙幣の装填の場合にも適用可能である。
包装硬貨Kを含む貨幣全体の在庫についての情報は、両替機2Aだけでなく、バックヤードの出納機2Cや管理装置3(図1参照)に記憶されて、係員は、この情報を出納機2Cや管理装置3において確認できてもよい。前述したエンプティまたはニアエンプティが発生した場合には、貨幣処理システム1におけるいずれかの装置が、係員に対して補充を促すためにブザー等によって発報してもよい。また、貨幣処理システム1では、包装硬貨Kの装填指示を受け付ける構成と、装填指示に基いて両替機2Aにおける装填対象のグループを選定する構成と、選定されたグループに属する金種別収納部73への包装硬貨Kの装填を許容する構成とが、両替機2Aではなく、管理装置3等の別の装置に設けられてもよい。