本発明の現像剤は、酸基を有する樹脂と、ポリアミン、好ましくはポリアルキレンイミンに由来する構成単位を有し、所定の融点を有する塩基性化合物Xを含有するトナー粒子を含有するものであり、低温定着性及び耐ドキュメントオフセット性に優れるものである。このような効果を奏する理由は定かではないが、酸基を有する樹脂と、ポリアミン、好ましくはポリアルキレンイミンに由来する構成単位と特定の融点(結晶性)を有する塩基性化合物Xの組み合わせにより、定着時には、酸塩基相互作用により塩基性化合物Xが樹脂に相溶して低温定着性が向上し、印刷物の保管時には、塩基性化合物Xが結晶化し、樹脂と相分離して耐ドキュメントオフセット性が向上するものと推察される。
本発明の現像剤は、液体現像剤と乾式現像剤の2つの態様を含む。
本発明の第一の態様は、トナー粒子、分散剤及び絶縁性液体を含有する液体現像剤であり、トナー粒子が結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤を含有するものである。
結着樹脂は酸基を有する樹脂を含有する。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。
本発明において、酸基を有する樹脂は、塩基性化合物Xとの相互作用の観点から、カルボキシ基を有するポリエステル系樹脂が好ましい。
結着樹脂は、ポリエステル系樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂等の他の樹脂とを含有する複合樹脂等が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と2価以上のカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
2価のアルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
アルコール成分としては、低温定着性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、耐ドキュメントオフセット性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。テレフタル酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。また、低温定着性の観点からは、脂肪族ジカルボン酸系化合物が好ましく、フマル酸がより好ましい。フマル酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数7以上15以下、さらに好ましくは炭素数8以上12以下、さらに好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下であり、そして、耐オフセット性の観点から、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上である。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂の軟化点は、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上であり、そして、低温定着性を向上させる観点から、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下である。
ポリエステル系樹脂の酸価は、トナー粒子への分散剤の吸着の観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
酸基を有する樹脂の含有量は、結着樹脂中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%、即ち、酸基を有する樹脂のみを用いることがさらに好ましい。ただし、本発明の効果が損なわれない範囲において、酸基を有する樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。酸基を有する樹脂以外の樹脂としては、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
結着樹脂の含有量は、トナー粒子中、低温定着性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、そして、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
塩基性化合物Xは、ポリアミン、好ましくはポリアルキレンイミンに由来する構成単位を有する。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられるが、本発明では、耐ドキュメントオフセット性の観点から、ポリエチレンイミンが好ましい。
ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下、さらに好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下である。
塩基性化合物Xは、ポリアルキレンイミンとハロゲン化アルキルの反応、ポリアルキレンイミンと長鎖モノカルボン酸の反応、ポリアルキレンイミンとヒドロキシカルボン酸の反応、ポリアルキレンイミンとイソシアン酸アルキルの反応等の方法により得られるが、本発明においては、高融点化の観点から、ポリアルキレンイミンとイソシアン酸アルキルの反応物であることが好ましい。
イソシアン酸アルキルのアルキル基の炭素数は、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは16以上、より好ましくは18以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは22以下である。
イソシアン酸アルキルとしては、入手性と高融点化の観点から、イソシアン酸オクタデシルが好ましい。
ポリアルキレンイミンとイソシアン酸アルキルは、例えば、キシレン中で加熱することにより反応させることができる。
塩基性化合物Xの融点は、55℃以上であり、好ましくは57℃以上、より好ましくは60℃以上である。塩基性化合物Xの融点が55℃以上であると、塩基性化合物Xの結晶性が高いため耐ドキュメントオフセット性が向上する。また、塩基性化合物Xの融点は、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
塩基性化合物Xの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、低温定着性の観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、そして、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、そして、トナーの粉砕性を向上させて小粒径化する観点、低温定着性を向上させる観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
トナー粒子は、結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤に加えて、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
トナー粒子の製造方法としては、結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系結着樹脂分散液と水系着色剤分散液を混合し結着樹脂粒子と着色剤粒子を合一させる方法、又は水系結着樹脂分散液と着色剤を高速攪拌する方法等が挙げられる。現像性及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する工程を含む方法が好ましい。
先ず、結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤、必要に応じて用いる添加剤等を含有するトナー原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましく、結着樹脂中での着色剤及び塩基性化合物Xの分散性を向上させる観点から、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
ヘンシェルミキサーでの混合は、攪拌の周速度、及び攪拌時間を調整しながら行う。周速度は、着色剤及び塩基性化合物Xの分散性を向上させる観点から、好ましくは10m/sec以上30m/sec以下である。また、攪拌時間は、着色剤及び塩基性化合物Xの分散性を向上させる観点から、好ましくは1分以上10分以下である。
次いで、トナー原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。本発明においては、着色剤及び塩基性化合物Xの分散性を向上させる観点、及び粉砕後のトナー粒子の収率を向上させる観点から、オープンロール型混練機が好ましい。
次いで、溶融混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、及び必要に応じて分級工程等を経て、トナー粒子を得ることができる。
粉砕工程は、多段階に分けてもよい。例えば、溶融混練物を、約1〜5mmに粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕工程時の生産性を向上させるために、溶融混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、例えば、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、気流式ジェットミル、機械式ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。なお、必要に応じて粉砕工程と分級工程とを繰り返してもよい。
この工程で得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。トナー粒子は、絶縁性液体と混合後、湿式粉砕等によりさらに微細化されることが好ましい。
トナー粒子の含有量は、絶縁性液体100質量部に対して、高速印刷性の観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、そして、分散安定性の向上の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
本発明における分散剤は、酸性基を有する樹脂への吸着性が高い観点から、塩基性窒素含有基を有する塩基性分散剤が好ましい。塩基性窒素含有基としては、アミノ基(-NH2、-NHR、-NHRR’)、アミド基(-C(=O)-NRR’)、イミド基(-N(COR)2)、ニトロ基(-NO2)、イミノ基(=NH)、シアノ基(-CN)、アゾ基(-N=N-)、ジアゾ基(=N2)、及びアジ基(-N3)からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。ここで、R、R’は炭素数1〜5の炭化水素基を表す。これらの中では、分散剤のトナー粒子への吸着性の観点からは、アミノ基及び/又はイミノ基が好ましく、トナー粒子の帯電性の観点からは、イミノ基がより好ましい。
塩基性窒素含有基以外に含まれる官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、ホルミル基、アセタール基、オキシム基、チオール基等が挙げられる。
塩基性分散剤における塩基性窒素含有基の占める割合は、分散安定性の観点から、ヘテロ原子の個数換算で、好ましくは70個数%以上、より好ましくは80個数%以上、さらに好ましくは90個数%以上、さらに好ましくは95個数%以上、さらに好ましくは100個数%である。
塩基性分散剤は、液体現像剤の分散性の観点から、炭素数16以上の炭化水素、ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体、炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体、炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、ポリオレフィン等に由来する基(以下、「分散性基」ともいう)を含んでいることが好ましい。
炭素数16以上の炭化水素としては、炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、ヘキサデセン、オクタデセン、エイコサン、ドコサン等が挙げられる。
ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上の炭化水素としては、ハロゲン原子で一部置換された炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、クロロヘキサデカン、ブロモヘキサデカン、クロロオクタデカン、ブロモオクタデカン、クロロエイコサン、ブロモエイコサン、クロロドコサン、ブロモドコサン等が挙げられる。
反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素としては、反応性の官能基を有する炭素数16以上24以下の炭化水素が好ましく、例えば、ヘキサデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、ドコセニルコハク酸、ヘキサデシルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル、エイコシルグリシジルエーテル、ドコシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体としては、炭素数12以上24以下、好ましくは2炭素数16以上24以下のヒドロキシカルボン酸の重合体が好ましく、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸の重合体等が挙げられる。
炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体としては、例えば、エチレングリコールとセバシン酸の重合体、1,4-ブタンジオールとフマル酸の重合体、1,6-ヘキサンジオールとフマル酸の重合体、1,10-デカンジオールとセバシン酸の重合体、1,12-ドデカンジオールと1,12-ドデカン二酸の重合体等が挙げられる。
炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体としては、炭素数16以上24以下のアルキル(メタ)アクリレートの重合体が好ましく、例えば、ヘキサデシルメタクリレートの重合体、オクタデシルメタクリレートの重合体、ドコシルメタクリレートの重合体等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブテン、ポリメチルペンテン、ポリテトラデセン、ポリヘキサデセン、ポリオクタデセン、ポリエイコセン、ポリドコセン等が挙げられる。
塩基性分散剤は、トナー粒子の分散性の観点から、ポリオレフィン骨格を有することが好ましく、ポリプロピレン骨格及び/又はポリイソブテン骨格を有することがより好ましく、分散剤のキャリアへの溶解性の観点から、ポリイソブテン骨格を有することがさらに好ましい。従って、前記分散性基のなかでは、ポリオレフィンに由来する基が好ましく、ポリプロピレンに由来する基及び/又はポリイソブテンに由来する基がより好ましく、ポリイソブテンに由来する基がさらに好ましい。
塩基性分散剤は、特に限定されるものではないが、例えば、塩基性窒素含有基原料と分散性基原料とを反応させて得られる。
塩基性窒素含有基原料としては、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート等のポリアミノアルキルメタクリレート等が挙げられる。
塩基性窒素含有基原料の数平均分子量は、酸性基の有する樹脂への吸着性の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、そして、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは15,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下である。
分散性基原料としては、ハロゲン化された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、炭素数12以上のヒドロキシカルボン酸の重合体、炭素数2以上22以下の二塩基酸と炭素数2以上22以下のジオールの重合体、反応性の官能基を有する炭素数16以上のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、反応性の官能基を有するポリオレフィン等が挙げられる。これらのなかでは、原料の入手性及び反応性の観点から、ハロゲン化された炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上の炭化水素、反応性の官能基を有する炭素数16以上24以下のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、又は反応性の官能基を有するポリオレフィンが好ましい。反応性の官能基としては、カルボキシ基、エポキシ基、ホルミル基、イソシアネート基等が挙げられ、これらの中では、安全性及び反応性の観点から、カルボキシ基又はエポキシ基が好ましい。従って、反応性の官能基を有する化合物としては、カルボン酸系化合物が好ましい。カルボン酸系化合物としては、フマル酸、マレイン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、それらの無水物、又はそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。分散性基原料の具体例としては、クロロオクタデカン等のハロゲン化アルカン、エポキシ変性されたポリオクタデシルメタクリレート、ポリエチレン無水コハク酸、塩素化ポリプロピレン、ポリプロピレン無水コハク酸、ポリイソブテン無水コハク酸等が挙げられる。
分散性基原料におけるポリオレフィン骨格を有する化合物の含有量は、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
分散性基原料の数平均分子量は、トナー粒子の分散性の観点から、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であり、そして、分散剤のトナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。
塩基性分散剤における塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)は、トナー粒子への吸着性の観点から、好ましくは3/97以上であり、より好ましくは5/95以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは20/80以下であり、より好ましくは15/85以下である。なお、塩基性分散剤における塩基性窒素含有基と分散性基の質量比は、塩基性分散剤のNMRで測定できるが、塩基性窒素含有基原料と分散性基原料とを反応させる塩基性分散剤の製造において、反応した原料化合物の質量比を、分散剤中の塩基性窒素含有基と分散性基の質量比(塩基性窒素含有基/分散性基)とみることもできる。
他の塩基性分散剤としては、アミノ基を有するモノマーAと、式(II):
(式中、R1は水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基、好ましくはメチル基、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1以上22以下のアルキル基又は炭素数2以上22以下のアルケニル基を示す)
で表されるモノマーBとの共重合体C等が挙げられる。
アミノ基を有するモノマーAとしては、式(III):
CH2=C(R5)COYR6NR3R4 (III)
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1以上4以下の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、R5は、水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基、好ましくはメチル基を示し、R6は、炭素数2以上4以下の直鎖又は分岐のアルキレン基を示し、Yは−O−又は−NH−を示す)
で表されるアミノ基を有するモノマー、又はこのモノマーの酸中和物(3級アミン塩)もしくは4級アンモニウム塩が好ましい。上記の酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン-2-カルボン酸、コハク酸等が挙げられる。上記第4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
式(III)において、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1以上4以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、NR3R4は3級アミノ基が好ましい。R3及びR4の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
R6としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、エチレン基が好ましい。
式(III)においてNR3R4が3級アミノ基であるモノマー(3級アミノ基を有するモノマー)の具体例としては、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドとメタクリルアミドの双方の場合を含むことを示す。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる1種以上等が挙げられる。
これらの中では、ジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、小粒径、低粘度、保存安定性、及び低温定着性の観点から好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
モノマーBは、前記式(II)で表されるものであり、前記式(II)において、R2で表されるアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、低温定着性の観点から、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは14以下である。R2のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、水酸基等の置換基を有していてもよい。
従って、モノマーBは、R2が、炭素数が10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であるモノマーB2を少なくとも含むことが好ましい。
モノマーBにおいて、R2が、炭素数が1以上9以下のアルキル基又は炭素数2以上9以下のアルケニル基であるモノマーB1と炭素数が10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であるモノマーB2のモル比(モノマーB1/モノマーB2)は、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、0.1以下、好ましくは0.07以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下であり、0以上、好ましくは0である。
モノマーBの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ウンデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)トリデシル(メタ)アクリレート、(イソ)テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ペンタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘキサデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘプタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクタデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ノナデシル(メタ)アクリレート、(イソ)イコシル(メタ)アクリレート、(イソ)エイコシル(メタ)アクリレート、(イソ)ヘンイコシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
モノマーAとモノマーBのモル比(モノマーA/モノマーB)は、分散剤として機能し、低粘度化及び保存安定性の観点から、2/98以上、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは7/93以上であり、低粘度化、保存安定性、及び低温定着性の観点から、50/50以下、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下、さらに好ましくは25/75以下、さらに好ましくは20/80以下である。
共重合体Cに用いられる全モノマー中のモノマーAとモノマーBの合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは100質量%である。
モノマーAとモノマーBの重合は、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の重合開始剤の存在下、溶媒中で、40〜140℃程度に加熱して、反応させることができる。
また、塩基性分散剤の数平均分子量は、低粘度化及び低温定着性の観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは2,500以上、さらに好ましくは3,000以上、さらに好ましくは3,500以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは9,000以下、さらに好ましくは8,000以下である。
塩基性分散剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、そして、トナーの帯電性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
本発明の液体現像剤には、前記塩基性分散剤以外の公知の分散剤が含まれていてもよいが、前記塩基性分散剤の含有量は、分散剤中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本発明における絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、絶縁性液体の導電率は、好ましくは1.0×10-11S/m以下、より好ましくは5.0×10-12S/m以下であり、そして、好ましくは1.0×10-13S/m以上である。
絶縁性液体としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系絶縁性液体、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。本発明において、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、絶縁性液体は、炭化水素系絶縁性液体を含有することが好ましく、脂肪族炭化水素系溶媒を含有することがより好ましく、分散安定性及び帯電性の観点から、ポリイソブテンを含有することがさらに好ましい。
本発明においてポリイソブテンとは、イソブテンを公知の方法、例えば触媒を用いたカチオン重合法によって重合した後、末端の二重結合に水素添加を行って得られるものである。
カチオン重合法に使用される触媒としては、例えば、塩化アルミニウム、酸性イオン交換樹脂、硫酸、フッ化ホウ素及びその錯体等が挙げられる。また、前記触媒に塩基を加えることで重合反応を制御することもできる。
ポリイソブテンの重合度は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。また、チャージャー汚染を抑制する観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上である。
重合反応の際に生じるイソブテンの未反応成分や重合度の高い高沸点成分は、蒸留により除去されることが好ましい。蒸留の方法としては、例えば、単蒸留法、連続蒸留法、水蒸気蒸留法等が挙げられ、これらの方法を単独でまたは組み合わせることができる。蒸留に使用する装置としては、材質、形状、型式等は特に限定されず、例えば、ラシヒリング等の充填物を充填した蒸留塔や皿状の棚を有する棚段蒸留塔等が挙げられる。また蒸留塔の分離能を示す理論段数は10段以上が好ましい。その他、蒸留塔へのフィード量、還流比、取出し量等の条件については、蒸留装置により適宣選択することが可能である。
重合反応で得られた生成物は重合末端に二重結合を有しているため、水素化反応により水素添加物を得る。水素化反応は、例えば、180〜230℃の温度でニッケルやパラジウム等を水素化触媒として用い、水素を2〜10MPaの圧力で接触させて行うことができる。
ポリイソブテンを含有する絶縁性液体の市販品としては、「NAS-3」、「NAS-4」、「NAS-5H」(以上、いずれも日油(株)製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせることができる。
炭化水素系絶縁性液体の含有量は、絶縁性液体中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
絶縁性液体、好ましくは炭化水素系絶縁性液体の沸点は、液体現像剤のローラー上での増粘を抑制し成膜性を向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは160℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上であり、そして、トナーの低温定着性をより向上させる観点、湿式粉砕時にトナーの粉砕性をより向上させて小粒径のトナー粒子を得る観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、さらに好ましくは260℃以下である。絶縁性液体を2種以上組み合わせる場合には、組み合わせた絶縁性液体混合物の沸点が上記範囲内であることが好ましい。
絶縁性液体の25℃における粘度は、現像性を向上させる観点、及び液体現像剤のローラー上での増粘を抑制し成膜性を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上であり、そして、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは10mPa・s以下、さらに好ましくは5mPa・s以下である。
液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させて得られる。トナー粒子の粒径を小さくする観点から、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させた後、湿式粉砕して液体現像剤を得ることが好ましい。
トナー粒子、分散剤、及び絶縁性液体の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス(株)製)、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
高速攪拌混合装置による混合によって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
トナー粒子分散液の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工(株)製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス(株)製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機又は混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、トナー粒子の粒径を小さくする観点、及びトナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点、及びその分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
液体現像剤の固形分濃度は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
液体現像剤中のトナー粒子の含有量は、高速印刷の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。
液体現像剤中の絶縁性液体の含有量は、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、そして、高速印刷の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
固形分濃度が25質量%の液体現像剤の25℃における粘度は、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは6mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上であり、そして、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは60mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは37mPa・s以下、さらに好ましくは35mPa・s以下、さらに好ましくは32mPa・s以下、さらに好ましくは28mPa・s以下、さらに好ましくは24mPa・s以下、さらに好ましくは20mPa・s以下、さらに好ましくは16mPa・s以下である。
本発明の第二の態様は、結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤を含有するトナー粒子を含有する乾式現像剤である。
結着樹脂、塩基性化合物X、及び着色剤については、第一の態様と同様である。
第二の態様において、結着樹脂の含有量は、トナー粒子中、低温定着性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
第二の態様において、塩基性化合物Xの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、低温定着性の観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、そして、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
第二の態様において、着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
第二の態様のトナー粒子には、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
第二の態様のトナー粒子は、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
トナー粒子には、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
第二の態様のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナー粒子を外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
トナー粒子のガラス転移温度は、耐ドキュメントオフセット性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは43℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下である。
トナー粒子は、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂及びトナー粒子のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔塩基性化合物の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させる。その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔ポリアルキレンイミン及び塩基性窒素含有基原料の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、試料を0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として0.15mol/LでNa2SO4を1%酢酸水溶液に溶解させた溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の標準プルラン(昭和電工(株)製のP-5(Mw 5.9×103)、P-50(Mw 4.73×104)、P-200(Mw 2.12×105)、P-800(Mw 7.08×105))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:α+α-M+α-M(東ソー(株)製)
〔分散性基原料の数平均分子量(Mn)〕
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、分散性基原料をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2) 分子量分布測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-1000(Mw 1.01×103)、A-2500(Mw 2.63×103)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-1(Mw 1.02×104)、F-2(Mw 1.81×104)、F-4(Mw 3.97×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-20(Mw 1.90×105)、F-40(Mw 4.27×105)、F-80(Mw 7.06×105)、F-128(Mw 1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー(株)製)
〔分散剤の数平均分子量(Mn)〕
以下に示す、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.2g/100mLになるように、分散剤をクロロホルムに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液として1.00mmol/LのファーミンDM2098(花王(株)製)のクロロホルム溶液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、予め作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(Mw 5.0×102)、A-5000(Mw 5.97×103)、F-2(Mw 1.81×104)、F-10(Mw 9.64×104)、F-40(Mw 4.27×105))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:K-804L(昭和電工(株)製)
〔絶縁性液体の導電率〕
絶縁性液体25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」((株)マルエム製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を絶縁性液体に浸し、25℃で20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定する。数値が小さいほど高抵抗であることを示す。
〔絶縁性液体の沸点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて、試料6.0〜8.0mgをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで350℃まで昇温し、吸熱ピークを測定する。最も高温側の吸熱ピークを沸点とする。
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
10mL容のスクリュー管に測定液を6〜7mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」((株)セコニック製、検出端子:チタン製、φ8mm)を用い、検出端子の先端部の15mm上に液面が来る位置にスクリュー管を固定し、25℃にて粘度を測定する。
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」((株)コクサン製)を用いて、回転数25,000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
〔乾式現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
樹脂製造例1
表1に示すポリエステル樹脂の原料モノマー、エステル化触媒、及び重合禁止剤を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、マントルヒーターを用いて、210℃にて4時間反応、さらに8.3kPaにて表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、表1に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂P1)を得た。
樹脂製造例2
表1に示すポリエステル樹脂の原料モノマーとエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れた。180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行い、反応率が90%に達するまで反応させた。さらに、8.3kPaにて反応を行い、目的の軟化点に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有するポリエステル樹脂(樹脂P2)を得た。なお、樹脂製造例において、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
樹脂製造例3
キシレン1567gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、130℃に昇温した。表1に示すスチレン系樹脂の原料モノマー及び重合開始剤の混合液を130℃で攪拌しながら1.5時間かけて滴下し、さらに1.5時間同温度を保持して付加重合反応を行った。160℃に昇温し、1時間反応を行った後、200℃に昇温し、1時間保持してキシレンを除去した。さらに8.3kPaにて残りのキシレンを除去し、表1に示す物性を有するスチレンアクリル樹脂(樹脂S)を得た。
塩基性化合物の製造例
表2に示すポリアルキレンイミンを冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。撹拌しながら、反応原料として30℃で溶融した表2に示すイソシアン酸オクタデシルを添加し、30分間撹拌した。その後、反応容器内を160℃に加温して1時間保持して、表2に示す物性を有する化合物A〜Dを得た。
分散剤Aの製造例
塩基性窒素含有基原料としてポリエチレンイミン(ポリエチレンイミン600、純正化学(株)製、分岐構造、Mn:2,500)20質量部を冷却管、窒素導入管、撹拌機、脱水管及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。撹拌しながら、分散性基原料としてポリイソブテン無水コハク酸(PIBSA)(OLOA15500、シェブロンジャパン(株)製、有効分:78質量%、Mn:1,100)197質量部を、キシレン217質量部に溶解した溶液を室温で1時間かけて滴下した。滴下終了後、30分間室温で保持した。その後、反応容器内を150℃に加温して1時間保持した後、160℃に昇温して1時間保持した。160℃で8.3kPaに減圧して溶剤を留去し、IR分析からPIBSA由来の酸無水物のピーク(1780cm-1)が消失し、イミド結合由来のピーク(1700cm-1)が生じた時点を反応終点として、分散剤A(Mn:6,700、塩基性窒素含有基原料/分散性基原料(質量比):11/89)を得た。
分散剤Bの製造例
溶媒(メチルエチルケトン)100gを、冷却管、窒素導入管、撹拌機及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに入れ、窒素ガスで反応容器内を置換した。反応容器内を80℃に加温して、ジメチルアミノエチルメタクリレート(和光純薬工業社製)80g、1-オクタデシルメタクリレート(和光純薬工業社製)20gと、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製)3gの混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、80℃でさらに3時間反応させた。80℃で溶媒を留去し、分散剤B(Mn/Mw=4,700/15,000)を得た。
実施例A1〜A4及び比較例A1〜A5
表3に示す結着樹脂、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー15:3)20質量部及び塩基性化合物(比較例A1〜A3は使用せず)を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック(株)製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子35質量部と絶縁性液体「NAS-4」(日油(株)製、ポリイソブテン、導電率:1.52×10-12S/m、沸点:247℃、25℃における粘度:2mPa・s)63.95質量部、及び分散剤A1.05質量部(トナー粒子100質量部に対して3質量部)を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス(株)製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度36質量%のトナー粒子分散液を得た。
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス(株)製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて表3に示す体積中位粒径(D50)になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去した後、ろ液100質量部に対し絶縁性液体「NAS-4」(日油(株)製)44質量部を加えて希釈し、固形分濃度を25質量%の、表3に示す物性を有する液体現像剤を得た。
実施例A5
分散剤Aの代わりに「ソルスパース11200」(日本ルブリゾール社製、ポリエチレンイミンとカルボン酸(12-ヒドロキシステアリン酸の縮合体、平均重合度7.0)の縮合物)を使用した以外は、実施例A1と同様にして、液体現像剤を得た。
実施例A6
分散剤Aの代わりに分散剤Bを使用した以外は、実施例A1と同様にして、液体現像剤を得た。
実施例B1〜B5及び比較例B1〜B3
表4に示す結着樹脂、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー15:3)20質量部及び塩基性化合物を、予め20L容のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
〔溶融混練条件〕
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、混練物供給口側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が90℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック(株)製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部、疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン(株)製、平均粒子径;12nm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過したトナー粒子からなる乾式現像剤を得た。
実施例A1〜A6及び比較例A1〜A5で得られた液体現像剤及び実施例B1〜B5及び比較例B1〜B3で得られた乾式現像剤の低温定着性及び耐ドキュメントオフセット性を下記方法により評価した。結果を表3、4に示す。
試験例1〔低温定着性〕
(1) 液体現像剤
「OKトップコート紙」(王子製紙(株)製、坪量:127.9g/m2、紙厚:約103μm)に液体現像剤を滴下し、ワイヤーバーにより乾燥後のトナー質量が3.4g/m2になるように薄膜を作製した。その後、80℃の恒温槽中で10秒間保持した。
続いて、「OKI MICROLINE 3010」((株)沖データ製)から取り出した定着機を用いて、定着ロールの温度が80℃、定着速度が280mm/secで定着処理を行った。その後、定着ロール温度を160℃まで10℃ずつ上昇させながら、上記のような定着処理を行い、各温度で定着画像を得た。
得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(スリーエムジャパン(株)製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ貼付前と剥離後の画像濃度を、色彩計「GretagMacbeth Spectroeye」(グレタグ社製)を用いて測定した。画像印字部分を各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。定着率(%)を、剥離後の画像濃度/貼付前の画像濃度×100の値から算出し、定着率が90%以上となる温度を最低定着温度とした。
(2) 乾式現像剤
非磁性一成分現像装置「MICROLINE 5400」(沖データ社製)に乾式現像剤を実装し、J紙(富士ゼロックス製)に付着量0.3mg/cm2の未定着のベタ画像を印字した。
続いて、「OKI MICROLINE 3010」((株)沖データ製)から取り出した定着機を用いて、定着ロールの温度が80℃、定着速度が280mm/secで定着処理を行った。その後、定着ロール温度を160℃まで10℃ずつ上昇させながら、上記のような定着処理を行い、各温度で定着画像を得た。
得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(スリーエムジャパン(株)製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ貼付前と剥離後の画像濃度を、色彩計「GretagMacbeth Spectroeye」(グレタグ社製)を用いて測定した。画像印字部分を各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。定着率(%)を、剥離後の画像濃度/貼付前の画像濃度×100の値から算出し、定着率が90%以上となる温度を最低定着温度とした。
試験例2〔耐ドキュメントオフセット性〕
試験例1の定着試験において、140℃で定着した定着画像部を対向させ重ね合わせたものに面圧80g/cm2の荷重をかけて温度50℃の環境下に静置した。1日静置後、重ね合わせた画像を取り出し、開いたあとの定着画像部の状態を観察し、下記基準に従って、耐ドキュメントオフセット性を評価した。
〔評価基準〕
A:剥離時に全く剥離音がなく、画像の欠損も見られない
B:剥離時に剥離音がするが、画像の欠損は見られない
C:剥離時に剥離音がし、微小な画像の欠損が見られる
D:剥離時に剥離音がし、大きな画像の欠損が見られる
E:融着して剥離できない
以上の結果より、実施例の液体現像剤及び乾式現像剤は、低温定着性に優れ、耐ドキュメントオフセット性も良好であることが分かる。
これに対して、塩基性化合物を使用していない比較例及びスチレン系樹脂を用いた比較例では低温定着性に欠けており、塩基性化合物の融点が低すぎる比較例では耐ドキュメントオフセット性に欠けている。