JP2019060005A - プラズマ窒化方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、プラズマ窒化プロセスとしては、処理容器内の正極と、被処理材との間で電圧を印加してプラズマを発生させる直流プラズマ窒化(DCP窒化と呼ぶこともある)が用いられていた。DCP窒化については、種々の改良技術も提案されている。例えば、特許文献1は、窒化プロセスを開始する前に、炉の内部にアルゴンおよび水素の混合気体を注入しながら被処理材に電圧を加えることにより、被処理材の表面の残留ガスおよび不純物を除去するスパッタリングを行う技術を開示している。
一方、DCP窒化では、被処理材の端部などに放電が集中し改質層が不均一になるエッジ効果が生じるなどの短所があるため、これを改善する方法の一つとしてアクティブ・スクリーン・プラズマ窒化(ASP窒化と呼ぶこともある)も着目されている。ASP窒化とは、被処理材の周囲を覆うように、導電性の金属メッシュなどによるスクリーンを設置し、正極とスクリーンとの間に電圧を印加してプラズマを形成し、このプラズマを利用して窒化プロセスする方法である。ASP窒化について、特許文献2は、炉の内部雰囲気をアルゴンと水素との混合気体で維持し、酸化性気体および還元性気体によって被処理材の表面の残留ガスおよび不純物を除去する表面活性化を行う技術を提案している。また、特許文献3は、ASP窒化において、被処理材を微小振動させることにより均一にプラズマ雰囲気を発生させる技術について開示する。
本発明は、これらの課題に鑑み、ASP窒化において、昇温時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
密閉された処理容器と、該処理容器内に設置された正極と、該正極内に設置された導電性のスクリーンとを備えるプラズマ窒化システムにより、プラズマを利用して金属の被処理材の表面に窒化層を形成するプラズマ窒化方法であって、
(a) 前記スクリーンで囲われた内部の処理空間内に前記被処理材を載置する工程と、
(b) 前記処理容器内に窒素またはアンモニアを含有するプロセスガスを供給しながら、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加して前記プロセスガスのプラズマを発生させ、該プラズマによって前記被処理材の窒化プロセスを行う工程とを備え、
さらに前記工程(b)に先立つ工程として、
(c) 前記処理容器内にアルゴンを含有するプロセスガスを供給しながら、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加して前記プロセスガスのプラズマを発生させ、該プラズマによって前記被処理材の温度を上昇させる昇温工程を有するプラズマ窒化方法として構成される。(b)(c)のプロセスガスの少なくとも一方は、水素を含有してもよい。
本発明によれば、窒化プロセスに先立って、アルゴンを含有するプロセスガスによるプラズマで被処理材を昇温させる。本発明の発明者による実験の結果、後述の通り、アルゴンを含有させることにより、昇温時間を大幅に短縮させる効果があることが見いだされた。かかる効果を生じる理由については完全に解明されていないものの、一般にアルゴンは分子量が大きいため、そのプラズマが保有するエネルギも大きくなり、かかるプラズマを被処理材に衝突させることによりエネルギが熱に変換されて被処理材を効率的に昇温させるものと考えられる。
本発明において、工程(c)と工程(b)とは必ずしも連続している必要はなく、両者の間に別工程が介在してもよい。また、完全に分離されている必要もなく、工程(c)における昇温が完全に終了する前に窒化プロセスを並行して開始するようにしてもよい。「工程(b)に先立つ」とは、このように工程(c)が工程(b)よりも先に開始されることを意味するものである。
前記工程(c)におけるプロセスガスは、窒素またはアンモニアと、水素と、アルゴンを含む混合ガスであるものとしてもよい。
実験の結果、かかる配合が効果的であることが見いだされた。窒素またはアンモニア、水素、アルゴンの比率は、任意に設定可能であるが、実験結果によれば、2:2:1とすることが好ましいが、他の比率でも差し支えない。
プロセスガスは、必ずしも上述の3成分を含む必要はなく、アルゴン単体、アルゴンと水素、アルゴンと窒素またはアンモニアなどとしてもよい。
前記工程(c)から工程(b)への切り換えに伴って、前記プロセスガスにおけるアルゴンの供給を停止するものとしてもよい。
アルゴンは、窒化プロセス自体には、さほど寄与しないため、このようにアルゴンの供給を停止することにより、窒化プロセスを効率的に行うことができる。
アルゴンの供給停止は、種々の態様で行うことができる。即ち、工程(c)で用いるアルゴンを含有するプロセスガスの供給を停止し、工程(b)では、アルゴンを含有しないプロセスガスを供給するようにガスの切り換えを行ってもよい。また、工程(c)では、工程(b)で用いるプロセスガスにアルゴンを添加したものをプロセスガスとして供給し、工程(b)に移行する際に、アルゴンの供給のみを停止するようにしてもよい。
前記工程(b)において、前記被処理材の窒化プロセスを継続する保持時間は2時間以下としてもよい。
DCP処理の場合、保持時間は5時間ほどを要するが、本発明によれば、保持時間は2時間以下でも十分に窒化層を形成可能であることが見いだされた。
また、窒化プロセスでは、窒化層の表面に、被処理材に窒素が拡散した状態とは異なる化合物層が形成されることが知られているが、実験の結果、保持時間を2時間以下に抑えることにより化合物層を十分に薄くすることができる効果があることがわかった。
保持時間は、2時間より長時間としても差し支えないが、上述の理由から、2時間以下とすることにより、化合物層を抑制しつつ窒化層を十分に形成した良質の窒化プロセスを効率的に実現できる。
前記工程(b)は、前記処理容器内の圧力が200〜600Paで行うものとしてもよい。
こうすることにより、良好なプラズマが形成されることが見いだされた。また実験の結果、圧力は、350Paとすることが、より好ましいことがわかった。
前記工程(b)は、前記処理容器内の温度が470〜560℃で行うものとしてもよい。
かかる温度範囲で良好な窒化プロセスが得られることが見いだされた。
前記工程(b)および工程(c)において、アーク放電が検出された時に前記電圧の印加を0.5〜2.0秒間一時的に停止する電圧制御を行うものとしてもよい。
プラズマを安定して形成するためには、継続的にグロー放電を生じさせることが好ましい。ところが、実際に電圧を印加すると、アーク放電が生じることがある。本発明の上記態様では、アーク放電が生じると、電圧の印加をごく短時間、一時的に停止する。こうすることにより、アーク放電の継続を容易に抑制することができ、プラズマを安定して形成することが可能となる。
本発明では、種々のタイプの電源を利用可能であるが、電源からパルス状の電圧を印加するとともに、パルス幅を調整することによって印加される電圧を制御するPWM制御を施すことが好ましい。かかる電源を用いることにより、比較的容易に電圧を制御できるとともに、アーク放電が生じたときの印加の一時停止も容易に実現することができる。
前記工程(b)および工程(c)において、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加するとともに、該電圧とは独立して制御される電圧として、前記正極と前記被処理材との間にはバイアス電圧を印加するものとしてもよい。
バイアス電圧の印加により、被処理材は正極に対して相対的に負の電位を持つことになる。この結果、正極とスクリーンとの間で形成されたプラズマを効果的に被処理材に誘導することができ、効率的な窒化プロセスを実現することができる。バイアス電圧の電圧値は任意に設定可能である。本発明では、スクリーンとの間の電圧と、バイアス電圧とを独立して制御可能とすることにより、両者に適切な電圧を印加することができる。
独立の電圧制御は、スクリーンの電圧およびバイアス電圧に、電圧パルスを出力するための回路を個別に設け、両者のパルス幅を個別に制御すればよい。こうすることにより、電圧を容易に独立して制御可能になるだけでなく、アーク放電が生じたときも、個別に電圧を一時停止することが可能となる。
例えば、予め工程(c)または工程(b)の開始時からの経過時間、または容器内の温度などのパラメータに応じて印加されるべき電圧をマップとして記憶しておき、このマップに従って、電圧値を制御する方法としてもよい。
また別の方法として、工程(b)における処理時の温度を設定し、工程(c)では設定された温度に至るまで印加可能な最大値の電圧を印加するよう制御し、工程(b)では設定された温度が維持されるようフィードバック制御によって電圧値を設定するようにしてもよい。工程(b)においては、より簡易な制御方法として、設定された温度を超えた時点で電圧パルスの出力を停止し、設定された温度を下回った時点で、電圧パルスを出力するという態様、いわゆるチョッパ制御を適用してもよい。
また、本発明は、上述したプラズマ窒化方法としての態様に限らず、以下に示すように、プラズマ窒化プロセスを行うためのプラズマ窒化システムとして構成することもできる。
即ち、
プラズマを利用して金属の被処理材の表面に窒化層を形成するプラズマ窒化システムであって、
密閉された処理容器と、
該処理容器内に設置された正極と、
該正極内に設置された導電性のスクリーンと、
前記スクリーンで囲われた内部の処理空間内に前記被処理材を載置する載置台と、
前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加する電源装置と、
前記処理容器内にプロセスガスを供給するプロセスガス供給部と、
前記電圧を印加している間、前記被処理材の温度を上昇させる昇温工程では前記容器内にアルゴンを含有するプロセスガスを供給し、前記被処理材の窒化プロセスを行う工程では窒素またはアンモニアを含有するプロセスガスを供給するよう前記プロセスガス供給部を制御するプロセスガス制御部とを備えるプラズマ窒化システムと構成することができる。
A.装置構成:
図1は、プラズマ窒化システムの構成を示す説明図である。窒素またはアンモニアを含有するプロセスガスに電圧を印加してプラズマを形成し、鋼などの被処理材の表面に窒素を浸透させて窒化層を形成するプラズマ窒化プロセスを行うための装置である。
プラズマ窒化プロセスは、プラズマ窒化装置10、電源装置20、制御装置40などを備えている。
容器11の内部には、その内壁に沿うように、プラズマを発生させる電圧を印加するための正極12が設置されている。
正極12の内部には、正極と所定の間隔dsをあけて導電性のメッシュ状のスクリーン13が設置されている。正極12とスクリーン13との間隔dsは、プラズマPの形成に影響を与える。従って、両者の間隔は、プラズマPが良好に形成されるよう、解析的または実験的に設定すればよい。また、スクリーンのメッシュ形状も任意に選択すればよいが、開口の形状がひし形で一つの対角線長さが8mmから35mmと、もう一方の対角線の長さが8mmから15mmが好ましく、より好ましくは、一つの対角線長さが12mmと、もう一方の対角線の長さが30mmである。
スクリーン13の内部が、窒化プロセスを施すための処理空間となる。スクリーン13の内部には、被処理材Wを載置するための載置台16が設置されている。
容器11の上部には、窒化プロセスに要する一連のプロセスガスを供給するための供給口14が設けられている。また、容器11の下部には、プロセスガスを排出するための排出口15が設けられている。
本実施例では、アークセンサ17は一つだけ設けるものとしたが、スクリーン13で生じるアーク放電を検出するためのセンサ、載置台16で生じるアーク放電を検出するためのセンサを個別に設けるようにしてもよい。
電源装置20には、スクリーン電圧を印加するためのスクリーン電源回路22、バイアス電圧を印加するためのバイアス電源回路23が備えられている。スクリーン電源回路22、バイアス電源回路23は、それぞれスイッチングトランジスタ、サイリスタなどのスイッチング素子のオン・オフによって、スクリーン電圧、バイアス電圧を印加するための電圧パルスを出力する回路である。
スイッチング素子のオン・オフは電源制御装置21によって制御される。電源制御装置21は、スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、電圧パルスの時間幅・デューティを変調し、スクリーン電圧、バイアス電圧の電圧値を変化させる。より具体的には、一定周期で電圧パルスを出力する回路を構成し、電圧に応じてこの電圧パルスの一部を休止させるのである。こうすることで、時間的なパルス密度、即ちデューティを変調でき、電圧を制御することができる。本実施例では、5kHzの電圧パルスを利用した。
電圧の制御には、このようなパルス幅変調制御(PWM制御)に代えて、パルスのオン・オフの周波数を変調する周波数変調制御(PFM制御)を適用してもよい。
本実施例では、電源電圧は、容器11の内部のアーク放電の有無、および温度に応じて制御する。アーク放電の有無および温度は、アークセンサ17、温度センサ18によって検出される。
プロセス条件入力部43は、オペレータの操作などに応じて窒化プロセスの条件を入力する。条件としては、窒化プロセスの温度、圧力などが挙げられる。
プロセスメイン制御部41は、窒化プロセスの条件に基づき、プラズマ窒化システム全体の処理を行う。電源装置20に対しては、容器11の内部の設定温度など、電源制御に必要な条件を指定する。プロセスガス制御部42に対しては、プロセスガスの構成比その他の条件を指定する。後述する通り、本実施例では、窒化プロセスの前処理として被処理材を昇温する昇温処理を行うが、この過程ではアルゴンを含有したプロセスガスを用い、窒化プロセスの過程では、アルゴンを含有しないプロセスガスを用いる。プロセスメイン制御部41からプロセスガス制御部42には、これらの各過程で用いられるプロセスガスの配合比などが指示されることになる。
プロセスガス制御部42は、バルブ34、35、36の開閉を制御することで、窒素、水素、アルゴンの供給を制御する。本実施例では、容器内の圧力および各ガスの供給量に応じて制御される。
以下、窒化プロセスの処理内容について説明する。
図2は、窒化プロセス制御処理のフローチャートである。この処理は、制御装置40によって実行される処理である。
処理を開始すると、制御装置40は、プロセス条件を入力する(ステップS10)。プロセス条件は、制御装置40に設けたキーボードその他の入力装置をオペレータが操作することで指示できる。プロセス条件としては、窒化プロセスを行う際のプロセス温度、圧力などが挙げられる。
条件を設定すると、制御装置40は、アルゴン含有プロセスガスの供給を開始するとともに、電源制御装置21に対して、電源制御の開始を指示する(ステップS12)。アルゴン含有プロセスガスの供給は、バルブ34、35、36を開き、窒素タンク31、水素タンク32、アルゴンタンク33から、それぞれガスを供給するのである。本実施例では、窒素、水素、アルゴンの配合比が、2:2:1となるように供給量が制御される。
アルゴン非含有プロセスガスを供給しながら、電圧を印加することにより、容器11の内部にはプラズマが発生し、窒化プロセスが行われる。
制御装置40は、窒化プロセスを開始してからの経過時間が、設定された保持時間を経過するまで(ステップS16)、アルゴン非含有プロセスガスの供給を継続する(ステップS15)。
保持時間に至ると、制御装置40は、電源制御装置21に対して、電源制御を停止するよう指示して(ステップS17)、窒化プロセス制御処理を終了する。
処理を開始すると、電源制御装置21は、スクリーン電源回路22に対して、スクリーン電源電圧の印加指示を出力する(ステップS20)。また、バイアス電源回路23に対して、バイアス電源電圧の印加指示を出力する(ステップS21)。スクリーン電源回路22、バイアス電源回路23では、これらの指示に応じて、スイッチング素子のオン・オフが行われ、指定されたスクリーン電圧およびバイアス電圧が印加される。
電源制御装置21は、制御装置40から、電源の出力を停止する旨の指示を受けるまで(ステップS26)、以上の処理を実行する。プロセス温度に到達した後は、制御装置40は、スクリーン電源電圧印加指示(ステップS20)、バイアス電源電圧印加指示(ステップS21)において、プロセス温度を維持するように電圧を制御する。例えば、プロセス温度が維持されるようフィードバック制御によって電圧値を設定するようにしてもよい。また、より簡易な制御方法として、設定された温度を超えた時点で電圧パルスの出力を停止し、設定された温度を下回った時点で、電圧パルスを出力するという態様、いわゆるチョッパ制御を適用してもよい。
本実施例では、プロセス温度に到達するまでの期間は、アルゴン含有プロセスガスを供給する。こうすることにより、本実施例では、被処理材がプロセス温度に到達するまでの昇温時間を短縮することができる。
図4は、昇温時間を示すグラフである。曲線C21は、アルゴン含有プロセスガスを用いた場合の温度変化を示し、曲線C22は、アルゴン含有プロセスガスを用いない場合の温度変化を示している。プロセス温度を約520℃とすると、アルゴン含有プロセスガスを用いない場合は(曲線C22)、約7時間半を要するのに対し、アルゴン含有プロセスガスを用いた場合は(曲線C21)、6時間で足りることが分かる。約20%の短縮効果があることになる。
図5は、圧力とプラズマの関係を示す説明図である。容器11内の圧力を150〜700Paで変化させた場合のプラズマの状態、メッシュ単位の放電数をそれぞれ示した。いずれもプロセス温度525℃における結果である。圧力150Pa、700Paでは、メッシュ単位の放電数がそれぞれ0.1、0.0となっており、圧力200〜600Paでは、放電数が0.5以上となっていることが分かる。即ち、圧力200〜600Paのときに、プラズマが安定して形成されていることが分かる。従って、プロセス条件は、この圧力範囲で選択することが好ましい。
これらのグラフから、温度470℃(曲線C11)、500℃(曲線C12)では、表面から60μm付近まで硬度が高いことが分かる。即ち、窒化層の厚さは60μmであると言える。同様に、温度525℃(曲線C13)では窒化層の厚さは105μm、温度560℃(曲線C14)では窒化層の厚さは180μmであることが分かる。この結果から、プロセス温度470℃〜560℃であれば、十分な窒化層が得られることが分かる。
一方、表面の硬度は、温度470℃では約1200Hvであり、他の温度よりも低くなっていることが分かる。従って、表面硬度を確保する観点からは、プロセス温度は、500〜560℃とすることが、より好ましいと言える。
図7(c)は、それぞれの保持時間における化合物層の厚さ(μm)を示している。従来(DCP窒化)では0.17μm、本実施例では、保持時間1時間、2時間、5時間のそれぞれに対して、0.045μm、0.044μm、0.100μmとなることがわかる。即ち、本実施例では、保持時間2時間以下のときの化合物層の厚さは、保持時間5時間のときの厚さの半分以下であり、非常に薄くなっていることが分かる。かかる観点から、保持時間は2時間以下とすることが好ましいと言える。化合物層の厚さは、温度には依存しないことも併せて見いだされた。
図8は、窒化プロセスの例を示す説明図である。図8(a)に、窒化プロセスを施した被処理材の断面を模式的に示した。図中の上側が表面、下側が被処理材の内部である。図中の層L4は、窒化層が及ばない母材自体を表している。その表面側は、窒素が母材に拡散された窒化層L3が形成される。さらにその表面側には、窒化層とは異なる化合物層L2が形成される。さらにその表面には、FeNなどの不純物が堆積する堆積層L1が形成される。化合物層L2、堆積層L1は、窒化プロセスの後、研磨等によって除去される層であり、薄く形成される方が好ましい。
図8(b)には、プロセス温度500℃、圧力350Pa、保持時間5時間のときの被処理材の断面の写真を示した。図8(c)には、プロセス温度525℃、圧力350Pa、保持時間1時間のときの被処理材の断面の写真を示した。図8(b)における厚さd1の部分、図8(c)における厚さd2の部分が、それぞれ化合物層である。保持時間1時間の場合(d2)は、保持時間5時間の場合(d1)の半分以下の厚さとなっていることが分かる。
即ち、容器11内の圧力は200〜600Paとすることが好ましい。
容器11内のプロセス温度は470〜560℃とすることが好ましい。
また保持時間は2時間以下とすることが好ましい。
これらのプロセス条件は、全てを満たすようにしてもよいし、一部のみを満たすようにしてもよい。
上述の実施例において説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、本発明は、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして実施することができる。また本発明は、さらに種々の変形例を実現することも可能である。
11 :容器
12 :正極
13 :スクリーン
14 :供給口
15 :排出口
16 :載置台
17 :アークセンサ
18 :温度センサ
19 :圧力センサ
20 :電源装置
21 :電源制御装置
22 :スクリーン電源回路
23 :バイアス電源回路
31 :窒素タンク
32 :水素タンク
33 :アルゴンタンク
34 :バルブ
35 :バルブ
36 :バルブ
37 :流量センサ
38 :流量センサ
39 :流量センサ
40 :制御装置
41 :プロセスメイン制御部
42 :プロセスガス制御部
43 :プロセス条件入力部
Claims (9)
- 密閉された処理容器と、該処理容器内に設置された正極と、該正極内に設置された導電性のスクリーンとを備えるプラズマ窒化システムにより、プラズマを利用して金属の被処理材の表面に窒化層を形成するプラズマ窒化方法であって、
(a) 前記スクリーンで囲われた内部の処理空間内に前記被処理材を載置する工程と、
(b) 前記処理容器内に窒素またはアンモニアを含有するプロセスガスを供給しながら、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加して前記プロセスガスのプラズマを発生させ、該プラズマによって前記被処理材の窒化プロセスを行う工程とを備え、
さらに前記工程(b)に先立つ工程として、
(c) 前記処理容器内にアルゴンを含有するプロセスガスを供給しながら、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加して前記プロセスガスのプラズマを発生させ、該プラズマによって前記被処理材の温度を上昇させる昇温工程を有するプラズマ窒化方法。 - 請求項1記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(c)におけるプロセスガスは、窒素またはアンモニアと、水素と、アルゴンを含む混合ガスであるプラズマ窒化方法。 - 請求項1または2記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(c)から工程(b)への切り換えに伴って、前記プロセスガスにおけるアルゴンの供給を停止するプラズマ窒化方法。 - 請求項1〜3いずれか記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(b)において、前記被処理材の窒化プロセスを継続する保持時間は2時間以下とするプラズマ窒化方法。 - 請求項1〜4いずれか記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(b)は、前記処理容器内の圧力が200〜600Paで行うプラズマ窒化方法。 - 請求項1〜5いずれか記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(b)は、前記処理容器内の温度が470〜560℃で行うプラズマ窒化方法。 - 請求項1〜6いずれか記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(b)および工程(c)において、アーク放電が検出された時に前記電圧の印加を0.5〜2.0秒間一時的に停止する電圧制御を行うプラズマ窒化方法。 - 請求項1〜7いずれか記載のプラズマ窒化方法であって、
前記工程(b)および工程(c)において、前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加するとともに、該電圧とは独立して制御される電圧として、前記正極と前記被処理材との間にはバイアス電圧を印加するプラズマ窒化方法。 - プラズマを利用して金属の被処理材の表面に窒化層を形成するプラズマ窒化システムであって、
密閉された処理容器と、
該処理容器内に設置された正極と、
該正極内に設置された導電性のスクリーンと、
前記スクリーンで囲われた内部の処理空間内に前記被処理材を載置する載置台と、
前記正極と前記スクリーンとの間に電圧を印加する電源装置と、
前記処理容器内にプロセスガスを供給するプロセスガス供給部と、
前記電圧を印加している間、前記被処理材の温度を上昇させる昇温工程では前記容器内にアルゴンを含有するプロセスガスを供給し、前記被処理材の窒化プロセスを行う工程では窒素またはアンモニアを含有するプロセスガスを供給するよう前記プロセスガス供給部を制御するプロセスガス制御部とを備えるプラズマ窒化システム。
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EP4249626A1 (de) * | 2022-03-22 | 2023-09-27 | Plasmanitriertechnik Dr. Böhm GmbH | Verfahren und vorrichtung zum plasmanitrieren und anschliessendem oxidieren einer oberfläche eines bauteils |
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