以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下、図1〜図12を参照して、打込み工具の一例として、釘打ち機1について説明する。釘打ち機1は、釘101を直線状に打ち出すことで、被加工物(例えば、木材)100)に釘101を打込む釘打ち作業を行うことが可能な工具である。
まず、図1を参照して、釘打ち機1の概略構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の釘打ち機1の外郭は、工具本体10と、ハンドル13と、マガジン17とを主体として形成されている。
工具本体10は、本体ハウジング11とノーズ部12とを含む。本体ハウジング11には、モータ2、ドライバ3、ドライバ駆動機構400、戻し機構(図示せず)等が収容されている。ドライバ3は、所定の動作線Lに沿って直線状に移動可能に配置されている。ドライバ駆動機構400は、動作線Lに沿ってドライバ3を移動させることで、釘101を釘打ち機1から打ち出すように構成されている。戻し機構は、釘101を打ち出した後のドライバ3を元の位置に復帰させるように構成されている。ノーズ部12は、動作線Lの延在方向(以下、単に動作線L方向という)における本体ハウジング11の一端に連結されており、動作線L方向にノーズ部12を貫通するドライバ通路(図示せず)を有する。ドライバ通路の一端は本体ハウジング11の内部に開口し、他端は、釘101が打ち出される射出口123として、釘打ち機1の外部に開口している。ノーズ部12には、射出口123に隣接して、動作線L方向に進退可能な接触アーム125が保持されている。また、本体ハウジング11内には、常時にはオフ状態で維持され、接触アーム125の押込みに応じてオン状態とされる接触アームスイッチ(図示せず)が配置されている。
ハンドル13は、動作線L方向において本体ハウジング11の中央部から動作線Lと交差する方向に突出している。ハンドル13は、作業者によって把持される部位である。ハンドル13の基端部(本体ハウジング11に接続された端部)には、作業者によって引き操作されるトリガ14が設けられている。ハンドル13内には、常時にはオフ状態で維持され、トリガ14の引き操作に応じてオン状態とされるトリガスイッチ141が配置されている。また、ハンドル13の先端部(基端部とは反対側の端部)には、端子等を備えたバッテリ装着部15が設けられている。バッテリ装着部15には、充電式のバッテリ19が取り外し可能に装着されている。ハンドル13先端部の内部には、釘打ち機1の動作を制御するためのコントローラ18等が配置されている。コントローラ18には、前述の接触アームスイッチ、トリガスイッチ141、後述のモータ2、ソレノイド715等が電気的に接続されている。
マガジン17は、複数の釘101を充填可能に構成されており、ノーズ部12に装着されている。マガジン17に充填された釘101は、釘送り機構(図示せず)によって、ドライバ通路に一本ずつ供給される。なお、マガジン17の構成は周知であるため、その説明は省略する。
以下、釘打ち機1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、ドライバ3の動作線L方向(図1の左右方向)を釘打ち機1の前後方向と規定し、射出口123が設けられている側(図1の右側)を釘打ち機1の前側、反対側(図1の左側)を後側と規定する。また、動作線L方向に直交し、ハンドル13の延在方向に対応する方向(図1の上下方向)を釘打ち機1の上下方向と規定し、ハンドル13が工具本体10(本体ハウジング11)に接続されている側(図1の上側)を上側、ハンドル13の先端部(バッテリ19が装着される端部)が配置される側(図1の下側)を下側と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
まず、本体ハウジング11の内部に収容されたモータ2、ドライバ3、およびドライバ駆動機構400について順に説明する。なお、以下で参照する図1および図2では、説明の便宜上、後述するリング部材5の一部が破断された状態で図示されている。
モータ2について説明する。図2に示すように、ドライバ3の駆動源としてのモータ2は、本体ハウジング11の後下部に収容されている。また、モータ2は、出力シャフト(図示せず)の回転軸が動作線Lに直交して左右方向に延在するように配置されている。本実施形態では、モータ2として、小型で高出力であることから、ブラシレスDCモータが採用されている。モータ2の出力シャフトには、出力シャフトと一体的に回転するプーリ21が連結されている。なお、本実施形態では、ノーズ部12の接触アーム125(図1参照)が被加工物100に押し付けられ、接触アームスイッチがオン状態とされると、コントローラ18がバッテリ19からモータ2に対して電流を供給し、モータ2の駆動を開始する。
ドライバ3について説明する。図3に示すように、ドライバ3は、長尺状の部材であって、長軸に関して左右対称形状に形成されている。ドライバ3は、全体として概ね矩形薄板状に形成された本体部30と、本体部30よりも左右方向の幅が細く形成され、本体部30の前端から前方に延在する打撃部31と、本体部30の後部から左右に突出する一対のアーム部35とを含む。
本体部30は、後述する押圧ローラ83(図2参照)によって押圧されてリング部材5(図2参照)に摩擦係合する部位である。本体部30は、一対のローラ当接部301と、レバー当接部305と、一対のリング係合部306とを有する。以下、これらの部分について順に説明する。
一対のローラ当接部301は、本体部30の上面から上方へ突出し、本体部30の左右の端に沿って前後方向に延在するように、本体部30に一体的に形成されている。ローラ当接部301の突出端(上端)に形成された面部は、押圧ローラ83の外周面に当接する当接面として形成されている。また、ローラ当接部301の前端部は、後方に向けて高さ(上下方向の厚み)が漸増する傾斜部302として形成されている。一方、ローラ当接部301のうち傾斜部302の後側部分は、一定の高さを有する。レバー当接部305は、本体部30の上面から上方へ突出するように設けられ、本体部30の後部において左右のローラ当接部301をつなぐように、左右方向に延在する。レバー当接部305は、後述する押出しレバー711が後方から当接する部位である。
一対のリング係合部306は、本体部30の下面から下方へ突出し、本体部30の左右の端部に沿って前後方向に延在するように、本体部30に一体的に形成されている。リング係合部306の前端部は、後方に向けて高さ(上下方向)の厚みが漸増する傾斜部307として形成されている。一対のリング係合部306には、夫々、後述する2つのリング部材5の外周係合部51に係合可能な係合溝308が形成されている。各係合溝308は、リング係合部306の突出端から上方へ凹むように形成され、リング係合部306の全長に亘って前後方向に延在する。また、係合溝308は、左右方向の幅が上方に向けて狭くなるように(言い換えると、係合溝308を規定するリング係合部306の左右方向の壁面が上方へ向けて近づくように)形成されている(図6参照)。なお、ドライバ3とリング部材5との係合態様については後で詳述する。
本体部30の後端32は、ドライバ3の後端を規定する。後端32は、本体ハウジング11の後端部内に固定された後方ストッパ部118(図1参照)に当接することで、ドライバ3がそれ以上後方へ移動するのを規制する部位である。打撃部31の前端310は、ドライバの前端を規定する。前端310は、釘101(図1参照)の頭部を打撃し、釘101を前方へ打出して被加工物100に打ち込む部位である。
一対のアーム部35は、本体部30の左右に突出している。アーム部35は、本体ハウジング11前端部の内部に固定された一対の前方ストッパ部117(図1参照)に当接することで、ドライバ3がそれ以上前方へ移動するのを規制する部位である。なお、詳細説明および図示は省略するが、アーム部35は、接続部材によって、戻し機構に接続されている。本実施形態の釘打ち機1では、戻し機構として、いかなる公知の構成が採用されてもよい。例えば、打込み位置まで前方へ移動されたドライバ3を、接続部材を介して弾性部材(例えば、圧縮コイルバネや捩りコイルバネ)の弾性力で動作線Lに沿って初期位置へ引き戻すように構成された戻し機構を採用することができる。
以上のように構成されたドライバ3は、その長軸が動作線Lに沿って釘打ち機1の前後方向に延在するように配置される。また、ドライバ3は、動作線Lに沿って(釘打ち機1の前後方向に、またはドライバ3の長軸方向にとも言い換えられる)、初期位置と打込み位置との間で移動可能に保持されている。
ここで、図1および図4を参照して、ドライバ3の初期位置および打込み位置について説明する。初期位置とは、ドライバ駆動機構400が作動していない状態(以下、初期状態という)でドライバ3が保持される位置である。本実施形態では、図1に示すように、ドライバ3の初期位置は、ドライバ3の後端32が、後方ストッパ部118に当接する位置に設定されている。打込み位置とは、ドライバ駆動機構400によって前方へ移動されたドライバ3が釘101を被加工物に打ち込む位置である。本実施形態では、図4に示すように、ドライバ3の打込み位置は、ドライバ3の前端310が射出口123から僅かに突出した位置に設定されている。打込み位置は、一対のアーム部35の前端が、一対の前方ストッパ部117に後方から当接する位置でもある。上記の配置から、本実施形態では、初期位置と打込み位置は、動作線Lに沿って移動するドライバ3の移動可能範囲の両端を規定する最後方位置と最前方位置であると言い換えることもできる。
ドライバ駆動機構400の詳細な構成について説明する。図2に示すように、本実施形態では、ドライバ駆動機構400は、フライホイール4と、2つのリング部材5と、保持機構6と、作動機構7と、押圧機構8とを含む。以下、これらの構成の詳細について順に説明する。
フライホイール4について説明する。図2に示すように、円筒状に形成されたフライホイール4は、本体ハウジング11内のモータ2の前側で、回転可能に支持されている。フライホイール4は、モータ2によって回転軸A1周りに回転駆動される。回転軸A1は、モータ2の回転軸と平行に、ドライバ3の動作線Lに直交する左右方向に延在する。フライホイール4の支持シャフトには、支持シャフトおよびフライホイール4と一体的に回転するプーリ41が連結されている。プーリ21とプーリ41にはベルト25が架け渡されている。よって、モータ2が駆動されると、モータ2の回転がベルト25を介してフライホイール4に伝達され、フライホイール4は図2の時計回り方向に回転する。
図5および図6に示すように、フライホイール4の外周45には、フライホイール4の全周に亘って延在する一対の係合溝47が形成されている。係合溝47には、リング部材5が係合可能である。係合溝47は、左右方向の幅が径方向内側に向けて狭くなるように形成されている。
リング部材5について説明する。図5に示すように、各リング部材5は、フライホイール4よりも大径のリング状に形成されている。本実施形態では、リング部材5の内径は、フライホイール4の外径(厳密には、フライホイール4の回転軸A1から係合溝47の底部までの径)よりも大きく設定されている。2つのリング部材5は、夫々、フライホイール4の外周45に設けられた一対の係合溝47に対して径方向外側に配置されている。本実施形態では、2つのリング部材5は、後述する保持機構6によって、フライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から離間した離間位置と、外周45(係合溝47)に一部が接触する接触位置との間で移動可能に保持されている。
各リング部材5は、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達するための伝達部材であって、ドライバ3およびフライホイール4と摩擦係合可能に構成されている。具体的には、図6に示すように、リング部材5の外周側部分および内周側部分には、夫々、ドライバ3の係合溝308およびフライホイール4の係合溝47に係合可能な外周係合部51および内周係合部53が設けられている。外周係合部51は、リング部材5の径方向外側へ向けて突出する凸部として形成される一方、内周係合部53は、リング部材5の径方向内側へ向けて突出する凸部として形成されている。なお、リング部材5の径方向の断面形状は、概ね六角形状に形成されており、外周係合部51は、リング部材5の径方向外側へ向けて厚みが小さくなるように形成される一方、内周係合部53は、リング部材5の径方向内側へ向けて軸方向の厚みが小さくなるように形成されている。つまり、外周係合部51および内周係合部53は、いずれも先端に向けて断面が先細り形状に形成されている。なお、リング部材5と、ドライバ3およびフライホイール4との係合態様については後で詳述する。
保持機構6について説明する。保持機構6は、リング部材5を、フライホイール4の外周45(係合溝47)から離間した離間位置と、外周45(係合溝47)に接触する接触位置との間で移動可能に保持するように構成されている。図2および図5に示すように、本実施形態の保持機構6は、一対のリング付勢部60と、一対のストッパ66とで構成されている。一対のリング付勢部60は、リング部材5に対して斜め前下方と斜め後ろ下方に配置され、リング部材5を板バネによって下側から上方へ付勢した状態で回転可能に支持している。一対のストッパ66は、夫々、ドライバ3の下方、且つ、リング部材5に対して斜め前上方と斜め後ろ上方に配置され、リング部材5の回転を許容しつつ、リング部材5の上方への移動を規制するように構成されている。
ここで、保持機構6によるリング部材5の保持態様について説明する。図5に示すように、初期状態においては、リング付勢部60は下方からリング部材5に当接し、リング部材5を上方へ付勢する一方、ストッパ66はリング部材5に対して上方から当接し、リング部材5がそれ以上上方へ移動することを規制する。これにより、図6に示すように、リング部材5は、フライホイール4の全周に亘って、外周45(係合溝47)から離間した離間位置で保持される。なお、フライホイール4の上端部のみが図示されているが、フライホイール4の全周に亘って、同様に、リング部材5はフライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から離間している。一方、詳細は後述するが、作動機構7によってドライバ3が前方へ移動されるのに伴って、リング部材5がドライバ3によって下方へ押圧されると、リング付勢部60の付勢力に抗してリング部材5が下方へ移動し、フライホイール4の上部において、外周45(係合溝47)に接触する接触位置で保持されることになる(図10参照)。
作動機構7について説明する。図2に示すように、作動機構7は、本体ハウジング11内において、ドライバ3よりも上方、且つ、フライホイール4よりも後方に配置されている。作動機構7は、初期位置に配置されたドライバ3を、動作線Lに沿って後述する伝達位置に移動させるように構成された機構である。本実施形態では、作動機構7は、トリガスイッチ141(図1参照)がオン状態とされた場合にコントローラ18(図1参照)によって作動されるソレノイド715と、ソレノイド715によって回動される押出しレバー711とを主体として構成されている。初期状態では、押出しレバー711の先端部は、ドライバ3のレバー当接部305に対して斜め上後方に配置されている。ソレノイド715が作動されると、押出しレバー711が回動され、その先端部がレバー当接部305を後方から前方へ押圧することで、ドライバ3を前方へ移動させる(図9参照)。なお、ドライバ3およびドライバ駆動機構400の動作の詳細については後述する。
押圧機構8について説明する。図2に示すように、押圧機構8は、本体ハウジング11内において、フライホイール4とドライバ3との対向方向において、フライホイール4とは反対側でドライバ3と対向するように配置されている。つまり、押圧機構8は、ドライバ3に上方から対向するように配置されている。押圧機構8は、ドライバ3が初期位置から前方へ移動する過程で、リング部材5に向けて(つまり、フライホイール4に近づく方向に)ドライバ3を押圧することで、リング部材5を介したフライホイール4からドライバ3への回転エネルギの伝達を可能とするように構成されている。本実施形態では、押圧機構8は、ローラ支持部材81と、ローラ支持部材81に回転可能に支持された押圧ローラ83と、本体ハウジング11に支持されたホルダ85と、ローラ支持部材81とホルダ85の間に介在状に配置された弾性部材87とを含む。以下、これらの構成部材の詳細について順に説明する。
図2および図6に示すように、ローラ支持部材81は、バネ保持部811と、バネ受け部813と、ローラ支持部815とを含む。バネ保持部811は、上下方向を軸方向とする円柱状に形成された、ローラ支持部材81の上部を構成する部分である。バネ受け部813は、バネ保持部811の下端部から径方向外側に突出するフランジ状の部分である。ローラ支持部815は、バネ受け部813から下方に突出する、ローラ支持部材81の下部を構成する部分である。ローラ支持部815は、左右方向に延在するローラシャフト84を介して、左右一対の押圧ローラ83を回転可能に支持している。
図2および図6に示すように、ホルダ85は、ローラ支持部材81を上下方向に相対移動可能に保持している。また、ホルダ85は、本体ハウジング11に回動可能に支持され、通常は、後述の係止機構9によって係止されている。本実施形態では、ホルダ85は、収容部851と、バネ受け部853と、ストッパ部854と、支持部855と、係止受け部857とを含む。
収容部851は、概ね円筒状に形成されており、内部にローラ支持部材81の一部と弾性部材87を収容可能な収容空間852を有する。バネ受け部853は、収容部851の上部を覆う上壁部によって構成されている。バネ受け部853の中央部には、ローラ支持部材81の円柱状のバネ保持部811と概ね同径の貫通孔が形成されている。バネ保持部811は、この貫通孔で上下方向に移動可能である。ストッパ部854は、収容部851の下端部から径方向内側に突出する部分である。図2に示すように、支持部855は、収容部851の前下端部から前方へ向けて斜め下方に延在している。ホルダ85は、支持部855に左右方向に挿通された回動シャフト856を中心として回動可能に本体ハウジング11に支持されている。係止受け部857は、収容部851の後下端部から下方に突出し、更に後方へ屈曲して延在する、側面視L字状の板状部である。係止受け部857のうち、後方に延在する部分の上面は、後述する係止機構9による係止の受け面858として機能する。
弾性部材87は、ローラ支持部材81とホルダ85の間に介在状に配置されている。本実施形態では、弾性部材87は、ローラ支持部材81のバネ保持部811の外周に直列状に配置された4つの皿バネで構成されている。ローラ支持部材81は、バネ保持部811に弾性部材87が外装された状態で、ホルダ85の収容部851(収容空間852)内に配置されている。弾性部材87は、ホルダ85のバネ受け部853とローラ支持部材81のバネ受け部813との間に、僅かに圧縮された状態で配置されている。これにより、押圧ローラ83を介してローラ支持部材81を上方に押し上げる外力が付与されていない場合、バネ受け部813は、弾性部材87の弾性力によって下方へ付勢され、ストッパ部854に上方から当接した状態で保持される。つまり、ストッパ部854によって、ローラ支持部材81および押圧ローラ83は、下方への移動が規制され、最下方位置で保持される。
係止機構9について説明する。本実施形態では、図7に示すように、係止機構9は、ホルダ85に隣接して設けられた切替えレバー91と含む。切替えレバー91は、長尺状に構成されており、その長軸方向における一端部において、左右方向に延在する回動シャフト910を中心として回動可能に本体ハウジング11(図1参照)に支持されている。以下、切替えレバー91の長軸方向における2つの端部のうち、回動シャフト910が設けられている方の端部を支持端部911といい、もう一方の端部を自由端部912というものとする。切替えレバー91は、支持端部911がホルダ85の係止受け部857の上方に位置するように配置されている。また、本実施形態では、切替えレバー91の回動可能範囲は、自由端部912が支持端部911に対して前方に配置されるロック位置(図2参照)と、支持端部911に対して上方に配置される開放位置(図8参照)との間の90度程度に設定されている。
切替えレバー91は、本体当接部914と、ホルダ係止部916と、回動許容部917とを含む。本体当接部914は、自由端部912のうち、切替えレバー91がロック位置(図2参照)に配置されたときに下側に配置される部分である。ホルダ係止部916は、支持端部911のうち、切替えレバー91がロック位置に配置されたときに下側(つまり、係止受け部857に対向する側)に配置される部分である。回動許容部917は、支持端部911のうち、切替えレバー91が開放位置(図7参照)に配置されたときに下側に配置される部分である。切替えレバー91の回動軸(回動シャフト910の軸)とホルダ係止部916との間の距離は、回動軸と回動許容部917との間の距離よりも長く設定されている。
図7に示すように、切替えレバー91がロック位置に配置されると、本体当接部914がノーズ部12の上部に上方から当接し、ホルダ係止部916がホルダ85の係止受け部857の受け面858に上方から当接してホルダ85を係止する。なお、詳細は後述するが、切替えレバー91がロック位置に配置され、ホルダ85を係止している場合、ドライバ3が初期位置から前方へ移動する過程で、ドライバ3が押圧ローラ83によってリング部材5に押し付けられることで、リング部材5を介してフライホイール4の回転エネルギがドライバ3に伝達される。つまり、切替えレバー91は、ロック位置に配置された場合、押圧ローラ83がドライバ3を押圧可能な状態(ドライバ3への回転エネルギの伝達を可能とする状態)で、ホルダ85を係止した状態にある。以下、この状態を、ロック状態という。
一方、図8に示すように、切替えレバー91が開放位置に配置されると、本体当接部914がノーズ部12から離間し、ホルダ係止部916も係止受け部857の受け面858から離間する。受け面858の上方には回動許容部917が配置されるが、その位置は、切替えレバー91がロック位置に配置されたときのホルダ係止部916の位置(図7参照)よりも上方となる。これにより、ホルダ85は、回動シャフト856を中心として、回動許容部917に当接する位置まで、ドライバ3から離れる方向(つまり上方向)に回動可能となる。なお、この状態では、押圧ローラ83は、ドライバ3の上面に接触しても、ドライバ3を押圧することはできない。つまり、切替えレバー91は、開放位置に配置された場合、ロック状態が解除された状態となる。
なお、切替えレバー91は、釘101の打込み動作が行われる場合にはロック位置に配置されている必要がある。しかし、何らかの要因でドライバ3が移動経路の途中で移動不能となった場合には、使用者は、切替えレバー91を手動操作によって開放位置まで回動することで、ドライバ3を初期位置に復帰させることができる。この点については後述する。
以下、上述のように構成された釘打ち機1の動作について説明する。
上述の通り、初期状態では、ドライバ3は、図1および図2に示す初期位置に配置されている。また、切替えレバー91はロック位置に配置されてホルダ85を係止している。このとき、図6に示すように、リング部材5は、保持機構6によって、フライホイール4の外周45(より詳細には係合溝47)から径方向外側に僅かに離間した離間位置に保持されている。このとき、押圧ローラ83は最下方位置で保持され、ドライバ3の本体部30の前端部に上方から滑り状態で接触しているが、ドライバ3を下方へ押圧している状態ではない。この状態では、リング部材5は、ドライバ3からも離間した位置に保持されている。より詳細には、リング部材5は、外周係合部51がドライバ3の係合溝308に対して僅かに下方へ離間した位置で保持されている。
ドライバ3が初期位置に配置された状態で、接触アーム125が被加工物100に押し付けられ、接触アームスイッチ(図示せず)がオン状態とされると、モータ2が駆動され、フライホイール4の回転が開始される。しかしながら、この段階では、リング部材5は離間位置に配置されているため、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達不能な状態にある。よって、フライホイール4が回転しても、リング部材5およびドライバ3は動作しない。
その後、作業者によってトリガ14が引き操作され、トリガスイッチ141がオン状態とされることで、ソレノイド715が作動する。これにより、押出しレバー711が回動し、押出しレバー711の後端部がドライバ3のレバー当接部305を後方から前方へ押圧する。ドライバ3は、初期位置から打込み位置へ向かって、動作線Lに沿って前方へ移動を開始する。ドライバ3は、離間位置に保持されているリング部材5に対しても相対的に移動する。
押圧ローラ83は、後方へ向けて厚みが漸増する傾斜部302の当接面に前方から当接する。傾斜部302が押圧ローラ83に押圧されつつ前方へ移動するのに伴って、リング部材5の外周係合部51の一部がドライバ3の係合溝308(図3参照)に進入して、係合溝308の開口端に当接する。なお、リング係合部306の前端部に傾斜部307が形成されていること、また、係合溝308の左右方向の幅は、開口端側の方が広いことから、外周係合部51は、係合溝308にスムーズに進入することができる。押圧ローラ83が傾斜部302の当接面に当接し、外周係合部51の一部が係合溝308の開口端に当接した状態で、ドライバ3が更に前方へ移動すると、傾斜部302はカムとして機能し、また、くさび効果を発揮する。このため、離間位置に保持されていたリング部材5がリング付勢部60の板バネの付勢力に抗して下方へ押し下げられると共に、最下方位置に保持されていた押圧ローラ83が弾性部材87の弾性力に抗して上方へ押し上げられる。
ドライバ3が更に前方へ移動し、図9に示す伝達位置に達すると、図10に示すように、下方へ移動されたリング部材5の内周係合部53の一部がフライホイール4の係合溝47に進入して、係合溝47の開口端に当接し、リング部材5は、それ以上下方への移動が禁止された状態となる。このとき、リング部材5は、ストッパ66から離間した状態でリング付勢部60によって最下方位置で回転可能に支持されており、内周係合部53の一部のみがフライホイール4の上部に当接している。つまり、リング部材5は、保持機構6によって接触位置に保持されている。また、傾斜部302によって押圧ローラ83が押し上げられることで圧縮された弾性部材87の弾性力により、リング部材5は、ドライバ3を介してフライホイール4に対して押し付けられている。このため、ドライバ3の係合溝308の開口端において、ドライバ3とリング部材5の外周係合部51の一部が摩擦係合状態に置かれるとともに、フライホイール4の係合溝47の開口端において、フライホイール4とリング部材5の内周係合部53の一部が摩擦係合状態に置かれる。
このように、リング部材5がドライバ3およびフライホイール4と摩擦係合状態に置かれることで、リング部材5は、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達可能となる。なお、「摩擦係合状態」とは、2つの部材が互いに摩擦力によって係合した状態(滑り状態を含む)をいう。リング部材5は、リング部材5の内周係合部53のうち、ドライバ3によってフライホイール4に押し付けられた部分のみがフライホイール4と摩擦係合した状態で、フライホイール4によって回転軸A2周りに回転される。なお、本実施形態では、図9に示すように、リング部材5はフライホイール4よりも大径に形成されており、リング部材5の内径はフライホイール4の外径(厳密には、フライホイール4の回転軸A1から係合溝47の底部までの径)よりも大きい。このため、リング部材5の回転軸A2は、フライホイール4の回転軸A1とは異なっており、回転軸A1よりも下方(ドライバ3から離れる方向)に位置する。なお、回転軸A2は、回転軸A1に対して平行に延在する。リング部材5は、リング部材5と摩擦係合した状態のドライバ3を、図9に示す伝達位置から前方へ向けて押し出す。
ドライバ3が伝達位置から前方へ押し出され、図11に示すように、押圧ローラ83が、ローラ当接部301のうち傾斜部302の後側部分の当接面に当接すると、押圧ローラ83は最上方位置まで押し上げられ、弾性部材87の弾性力により、リング部材5は、ドライバ3を介してフライホイール4に対して更に押し付けられる。よって、ドライバ3と外周係合部51の一部、および、フライホイール4と内周係合部53の一部は、より強固に摩擦係合した状態となる。これにより、リング部材5は、より効率的にフライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達することができる。なお、図11は、ドライバ3が釘101(図1参照)を打撃する打撃位置に配置された状態を示している。
ドライバ3は、打撃位置に達して釘101を打撃し、更に、図4に示す打込み位置まで移動して、釘101を被加工物100に打ち込む。ドライバ3のアーム部35の前端が前方ストッパ部117に後方から当接することで、ドライバ3の移動が停止される。コントローラ18は、トリガスイッチ141がオン状態とされてからドライバ3が打撃位置に到達するまでに必要な所定時間が経過すると、ソレノイド715への電流供給を停止することで、押出しレバー711を初期位置に戻す。この状態で作業者が接触アーム125の被加工物100への押し付けを解除し、接触アームスイッチ(図示せず)がオフ状態とされると、コントローラ18は、モータ2の駆動を停止する。これに伴い、フライホイール4の回転が停止すると共に、戻し機構(図示せず)が作動し、ドライバ3を初期位置に復帰させる。
以上のようなドライバ3による釘101の打込み動作の過程で、例えば釘101がドライバ通路に詰まってしまった場合、ドライバ3が移動経路上で停止してしまう可能性がある。例えば、ドライバ3が図11に示す打撃位置付近で停止してしまった場合、弾性部材87の弾性力によって押圧ローラ83がドライバ3とリング部材5をフライホイール4に強く押圧しているため、モータ2が停止されても、戻し機構(図示せず)によってドライバ3を初期位置に戻すことができない。このような場合、図8に示すように、使用者は、切替えレバー91を把持して開放位置まで回動させればよい。これにより、弾性部材87の圧縮が解除されるのとともにホルダ85が上方へ回動し、ドライバ3に対する押圧ローラ83の押圧が解除される。その結果、戻し機構(図示せず)がドライバ3を初期位置(図1参照)まで復帰させることが可能となる。
また、本実施形態では、リング部材5は、打込み動作時にモータ2によって高速で回転駆動されるフライホイール4に押し付けられる。このため、リング部材5(詳細には、内周係合部53)は、次第に摩耗する。これに伴い、打込み動作時に押圧ローラ83がドライバ3を介してリング部材5をフライホイール4に十分に押し付けることができなくなる可能性がある。つまり、フライホイール4からドライバ3への回転エネルギの伝達不良が生じうる。そこで、本実施形態では、係止機構9は、切替えレバー91に加え、ホルダ85に着脱可能なスペーサ部材92を備えている。そして、スペーサ部材92の着脱を介して、切替えレバー91がロック位置に配置されたときに(つまり、ロック状態にあるときに)切替えレバー91によってホルダ85が係止される位置を変更し、ドライバ3に対する押圧ローラ83の押圧力を調整することが可能とされている。
具体的には、図12に示すように、ホルダ85の係止受け部857は、スペーサ部材92が着脱可能に構成されている。より詳細には、ホルダ85の係止受け部857の後端部の下面には、上方へ凹む凹部859が設けられている。スペーサ部材92は、断面U字状に形成されており、係止受け部857の後端部を上下から挟み込むように、凹部859から受け面858に亘って装着される。このため、切替えレバー91がロック位置に配置されると、切替えレバー91のホルダ係止部916とホルダ85の受け面858との間に配置されたスペーサ部材92の厚み分だけ、ホルダ85は、スペーサ部材92が装着されていない場合(図7参照)に比べて下方(フライホイール4に近づく方向)へ移動される。
これにより、押圧ローラ83を支持するローラ支持部材81とホルダ85の相対位置が変化する。その結果、ホルダ85のバネ受け部853とローラ支持部材81のバネ受け部813との間に配置された弾性部材87の弾性力、ひいては押圧ローラ83によるドライバ3の押圧力を必要な押圧力まで高めることができる。そして、図12に示すように、ドライバ3を介してリング部材5を適切にフライホイール4に押し付けて、ドライバ3への回転エネルギの伝達不良を抑制することができる。なお、図12に示すスペーサ部材92のみならず、ホルダ係止部916に着脱可能で厚みが異なる複数種類のスペーサ部材が用意されていてもよい。この場合、使用者は、リング部材5の摩耗の度合いに応じて、適切な厚みのスペーサ部材をホルダ係止部916に装着するだけで、押圧ローラ83によるドライバ3の押圧力を適切に調整することができる。
また、本実施形態では、押圧機構8は、押圧ローラ83を回転可能に支持するローラ支持部材81とホルダ85の間に弾性部材87を介在状に配置するという簡易な構成によって、ドライバ3が初期位置から打込み位置へ移動する過程で、ドライバ3への回転エネルギの伝達を可能とすることができる。そして、使用者は、ローラ支持部材81とホルダ85の相対位置を変更するだけで、弾性部材87の弾性力、ひいてはドライバ3に対する押圧ローラ83の押圧力を調整することができる。本実施形態では、特に、本体ハウジング11に回動可能に支持されたホルダ85にスペーサ部材92を装着するだけで、ロック位置に配置された切替えレバー91によるホルダ85の係止位置を変更し、ドライバ3に対する押圧ローラ83の押圧力を調整することができる。なお、係止受け部857に着脱可能なスペーサ部材92に代えて、切替えレバー91に着脱可能なスペーサ部材が採用されてもよい。
更に、本実施形態では、フライホイール4の回転エネルギは、リング部材5によってドライバ3に伝達される。リング部材5は、ドライバ3への回転エネルギの伝達時には、フライホイール4の回転軸A1とは異なる回転軸A2周りに回転する。よって、伝達開始時にフライホイール4に当接するリング部材5の領域は、常に同じにはならないため、リング部材5の特定の箇所のみが摩耗することを防止することができる。なお、リング部材5の摩耗が許容量を超えた場合には、交換が必要となるが、リング部材5はドライバ3に比べれば安価であるため、交換部品のコストを低減することができる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打込み工具は、例示された釘打ち機1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す釘打ち機1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、押圧機構8のホルダ85を係止可能な係止機構9は、実施形態で例示された構成に限られるものではない。以下、図13〜図18を参照して、係止機構9の構成の変形例について説明する。
図13および図14に示す第1の変形例の係止機構901は、係止ボルト93と、スペーサ部材94とを含む。また、ホルダ85の係止受け部857の上方には、上下方向に延在するネジ穴を有するボルト装着部113が設けられている。なお、ボルト装着部113は、本体ハウジング11(図1参照)に対して固定されている。係止ボルト93は、ボルト装着部113のネジ穴に螺合可能に構成されている。使用者は、係止ボルト93を上方からの操作でボルト装着部113に着脱することができる。係止ボルト93は、その先端部がホルダ85に上方から当接することで、ホルダ85を係止する。
図13に示すように、スペーサ部材94は、係止ボルト93の頭部とボルト装着部113の間に配置可能な環状部材として構成されている。リング部材5がそれほど摩耗していない場合には、係止ボルト93は、頭部とボルト装着部113とでスペーサ部材94を挟持する状態までボルト装着部113にねじ込まれ、先端部でホルダ85を係止する。一方、リング部材5の摩耗が進行した場合には、使用者は、係止ボルト93とスペーサ部材94を一旦取り外し、図14に示すように、係止ボルト93のみを、頭部がボルト装着部113の上面に当接するまでボルト装着部113にねじ込めばよい。
このように、本変形例の係止機構901によれば、使用者は、スペーサ部材94を取り外し、ボルト装着部113に対して係止ボルト93をねじ込むという非常に簡単な操作で係止ボルト93の先端部の位置を変更し、押圧ローラ83によるドライバ3の押圧力を調整して、ドライバ3への回転エネルギの伝達不良を抑制することができる。なお、上述の実施形態のスペーサ部材92と同様、図13に示すスペーサ部材94のみならず、厚みが異なる複数種類のスペーサ部材が用意されていてもよい。
図15および図16に示す第2の変形例の係止機構902は、切替えレバー91と、カム部材95とを含む。切替えレバー91は、上述の実施形態の切替えレバー91と同一構成を有し、回動シャフト910を中心として回動可能に配置されている。カム部材95は、切替えレバー91の支持端部911に回動可能に支持されている。より詳細には、カム部材95は、左右方向に延在するピン950を中心として回動可能に切替えレバー91に支持されている。カム部材95は、外周部(カム面)が、切替えレバー91のホルダ係止部916と概ね面一に配置される第1位置(図15参照)と、ホルダ係止部916の外側へ突出する第2位置(図16参照)との間で回動可能である。カム部材95が第2位置に回動され、切替えレバー91がロック位置に配置された場合、カム部材95はホルダ係止部916よりも下方に突出する。
よって、切替えレバー91がロック位置に配置されたときのカム部材95の回動位置を第1位置と第2位置との間で切り替えることで、切替えレバー91によるホルダ85の係止位置を変更することができる。リング部材5がそれほど摩耗していない場合には、図15に示すように、ホルダ85は、第1位置に配置されたカム部材95によって係止されればよい。一方、リング部材5の摩耗が進行した場合には、使用者は、図16に示すように、カム部材95を第2位置へ回動させることで、ホルダ85の係止位置を下方に移動させればよい。
このように、本変形例の係止機構901によれば、使用者は、カム部材95を回動させるという非常に簡単な操作で、押圧ローラ83によるドライバ3の押圧力を調整し、ドライバ3への回転エネルギの伝達不良を抑制することができる。なお、カム部材95は、第1位置および第2位置に加え、より多くの回動位置でホルダ85を係止可能に構成されていてもよい。
図17および図18に示す第3の変形例の係止機構903は、切替えレバー96と、スペーサ部材97とを含む。上述の実施形態の切替えレバー91(図7参照)と同様、長尺状の切替えレバー96は、左右方向に延在する回動シャフト960を中心として回動可能に本体ハウジング11(図1参照)に支持されている。また、回動シャフト960によって支持された支持端部961は、切替えレバー91の支持端部911と同様の構成を有し、ホルダ係止部966と回動許容部967を含む。本変形例の切替えレバー96は、常時、図示しない付勢バネによって、自由端部962が下方へ回動する方向(図17および図18の時計回り方向)に付勢されている。
図17に示すように、スペーサ部材97は、ノーズ部12の上部に設けられた凹部127に配置可能に構成されている。リング部材5がそれほど摩耗していない場合には、凹部127にスペーサ部材97が配置され、自由端部962がスペーサ部材97の上面に当接することで、切替えレバー96がそれ以上下方へ回動することが規制される。一方、リング部材5の摩耗が進行した場合には、使用者は、図18に示すように、スペーサ部材97を凹部127から取り外せばよい。これにより、切替えレバー96は、自由端部962が凹部127の上面に当接する位置まで、スペーサ部材97が配置されている場合に比べて下方へ回動する。切替えレバー96の回動に伴って、ホルダ係止部966によってホルダ85が係止される位置は下方へ移動する。
このように、本変形例の係止機構903によれば、使用者は、スペーサ部材97をノーズ部12の凹部127から取り外すという非常に簡単な操作で、押圧ローラ83によるドライバ3の押圧力を調整し、ドライバ3への回転エネルギの伝達不良を抑制することができる。
係止機構9のみならず、釘打ち機1のその他の構成についても、適宜、変更が可能である。
打ち込み工具は、釘101以外の打込み材を打出す工具であってもよい。例えば、鋲、ピン、ステープル等を打出すタッカ、ステープルガンとして具現化されてもよい。また、フライホイール4の駆動源は、特にモータ2に限定されない。例えば、直流モータに代えて交流モータが採用されてもよい。
押圧機構8のローラ支持部材81やホルダ85の構成は、変更されてもよい。例えば、ローラ支持部材81は、ホルダ85に対して上下方向に移動可能な状態で、ホルダ85ではなく本体ハウジング11によって支持されていてもよい。ホルダ85は、回動シャフト856を中心として上下方向に回動可能に本体ハウジング11に支持されているが、ホルダ85全体が上下方向に移動可能であってもよい。弾性部材87は、3以下の数の皿バネで構成されていてもよいし、その他の弾性体(例えば、圧縮コイルバネ)で構成されていてもよい。また、押圧ローラ83の数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。
ドライバ3の形状や、ドライバ3を駆動するドライバ駆動機構400の構成は、適宜、変更可能である。例えば、ドライバ3のローラ当接部301において、傾斜部302は、側面視で全体が直線状に形成されていてもよいし、少なくとも一部が緩やかな円弧状に形成されていてもよい。つまり、傾斜部302の上面(押圧ローラ83との当接面)は、全体が平面であってもよいし、全体が湾曲面であってもよいし、一部が平面で一部が湾曲面であってもよい。また、傾斜部302の傾斜度合いは途中で変化していてもよい。傾斜部302はより長く設けられてもよいし、ローラ当接部301は、後方に向けて厚みが漸増する傾斜部を複数含んでいてもよい。
リング部材5と、ドライバ3およびフライホイール4との係合態様は、上記実施形態で例示された態様には限られない。例えば、リング部材5の数と、リング部材5に対応するドライバ3の係合溝308およびフライホイール4の係合溝47の数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。また、例えば、外周係合部51および内周係合部53、並びに対応する係合溝308および係合溝47の形状、配置、数、係合位置等は、適宜変更が可能である。リング部材5は、ドライバ3が初期位置に配置されている場合、フライホイール4の回転エネルギをドライバ3に伝達不能に配置され、ドライバ3が伝達位置に移動された場合に伝達を開始するように保持されていればよい。よって、保持機構6のリング付勢部60およびストッパ66の構成は、何れも適宜変更可能である。
また、ドライバ駆動機構400に代えて、押圧ローラ83によってドライバ3を直接フライホイール4に押し付けることで、リング部材5を介することなく、フライホイール4からドライバ3に直接回転エネルギを伝達するように構成された駆動機構が採用されてもよい。但し、この場合、フライホイール4にドライバ3の一定の領域が押し付けられるため、ドライバ3の摩耗度合いに応じて押圧機構8による押圧力を調整すると、ドライバ3への動力伝達不良は抑制できる一方、この領域がさらに摩耗するという一面もある。これに対し、上述の実施形態では、ドライバ3へのフライホイール4の回転エネルギの伝達が、摩耗する領域が偏ることがないリング部材5を介して行われるため、押圧機構8を採用した場合の効果が顕著であるといえる。なお、ドライバ3へのフライホイール4の回転エネルギの伝達が、フライホイール4とドライバ3の間に配置されるリング部材5以外の伝達部材(例えば、ローラ)を介して行われる場合も同様のことがいえる。
上記実施形態および変形例の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。釘打ち機1は、本発明の「打込み工具」に対応する構成例である。釘101は、本発明の「打込み材」に対応する構成例である。工具本体10は、本発明の「工具本体」に対応する構成例である。射出口123は、本発明の「射出口」に対応する構成例である。モータ2は、本発明の「モータ」に対応する構成例である。フライホイール4は、本発明の「フライホイール」に対応する構成例である。ドライバ3は、本発明の「ドライバ」に対応する構成例である。動作線Lは、本発明の「動作線」に対応する例である。押圧ローラ83は、本発明の「押圧ローラ」に対応する構成例である。
押圧機構8、ローラ支持部材81、ホルダ85、弾性部材87は、夫々、本発明の「押圧機構」、「第1部材」、「第2部材」、「弾性体」に対応する構成例である。係止機構9、901、902、903は、各々、本発明の「係止機構」に対応する構成例である。係止ボルト93は、本発明の「ネジ部材」に対応する構成例である。切替えレバー91、96は、各々、本発明の「切替えレバー」に対応する構成例である。リング部材5は、本発明の「リング部材」に対応する構成例である。作動機構7は、本発明の「ドライバ移動機構」に対応する構成例である。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の構成(態様)が構築される。以下の構成のうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態およびその変形例に示す釘打ち機1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記係止機構は、前記ネジ部材の頭部と前記工具本体の間に着脱可能なスペーサ部材を含んでもよい。
なお、スペーサ部材94は、本態様における「スペーサ部材」に対応する構成例である。
[態様2]
前記係止機構は、前記切替えレバーまたは前記第2部材に着脱可能なスペーサ部材であって、前記切替えレバーまたは前記第2部材に装着された場合、少なくとも一部が前記切替えレバーと前記第2部材の間に配置されるように構成されたスペーサ部材を含み、
前記ロック状態にある前記切替えレバーによって前記第2部材が係止される位置は、前記切替えレバーまたは前記第2部材に前記スペーサ部材が着脱されることで変更可能であってもよい。
なお、スペーサ部材92は、本態様における「スペーサ部材」に対応する構成例である。
[態様3]
前記係止機構は、前記切替えレバーに回動可能に取り付けられたカム部材を含み、
前記ロック状態にある前記切替えレバーによって前記第2部材が係止される位置は、前記カム部材の回動位置に応じて変更可能であってもよい。
なお、カム部材95は、本態様における「カム部材」に対応する構成例である。
[態様4]
前記ロック状態にある前記切替えレバーによって前記第2部材が係止される位置は、前記切替えレバーの回動角度に応じて変更可能であってもよい。
[態様5]
前記打込み工具は、前記リング部材を、前記フライホイールの前記外周から離間した離間位置と、前記外周に一部が接触する接触位置の間で移動可能に保持する保持機構を更に備え、
前記保持機構は、
前記ドライバが前記初期位置に配置されている場合には、前記リング部材を前記離間位置で保持し、且つ、
前記ドライバ移動機構によって前記ドライバが前記伝達位置に移動された場合に、前記ドライバの移動に応じて移動された前記リング部材を前記接触位置で保持してもよい。
なお、保持機構6は、本態様における「保持機構」に対応する構成例である。
[態様6]
前記ドライバは、前記ドライバが前記伝達位置から前記打込み材を前記被加工物に打込む打込み位置へ移動する際、前記押圧ローラに当接する当接面を有し、
前記ドライバのうち、前記前後方向において前記当接面に対応する領域の少なくとも一部は、前記対向方向における厚みが後方に向けて漸増するように形成されていてもよい。
なお、ローラ当接部301の上面は、本態様における「当接面」に対応する構成例である。