JP2019007189A - 屋根架構を有した建築構造物 - Google Patents

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Abstract

【課題】片持ち梁状に張り出した屋根架構の揺れを効果的に抑えつつ、施工の長期化を抑え、スペースの有効利用を図る。【解決手段】建築構造物1は、基礎6上に構築された複数本の下層階柱11、および互いに隣り合う下層階柱11の間に架設された下層階梁12からなるラーメン構造の下部構造部10と、下部構造部10の上方に設けられ、基端部が固定端とされ、先端部が基端部から側方に延びて自由端とされた片持ち梁状の屋根架構30を有した上部構造部20と、を備え、下部構造部10は、上部構造部20よりも剛性が低い柔構造である。【選択図】図1

Description

本発明は、片持ち梁状に張り出した屋根架構を備える建築構造物に関する。
各種の競技、スポーツ、催し物等を行うフィールドを有した競技場等の建築構造物の多くには、フィールドの周囲に観客スタンドを構成するスタンド部が設けられている。特許文献1には、このようなスタンド部を備えた建築構造物において、スタンド部の上方を覆うように屋根架構を備えた構成が開示されている。
ところで、特許文献1に開示された屋根架構は、スタンド部とフィールドとの全体を覆うように設けられているが、屋根架構を、主に、フィールドの周囲のスタンド部の上方に設け、中央部のフィールド部の上方に開口部を設ける場合がある。このような屋根架構は、スタンド部においてフィールドから離れた側(後方)に基端部が支持され、先端部がフィールド側(前方)に張り出すように、片持ち梁状に張り出している。
このように、片持ち梁状に張り出した屋根架構は、地震発生時に大きく揺れる可能性がある。特に、地震により水平方向の揺れが生じた場合であっても、屋根架構が、基端部側を中心として、先端部が上下方向に揺れることがある。競技場の屋根にはテレビカメラや照明等が吊下されることがあるが、このような吊物等が屋根架構の先端部に設けられた際には上下方向の揺れは更に増大するため、設計が困難となる。
片持ち梁状に張り出した屋根架構の揺れを抑える対策の一つとして、屋根架構を構成する部材の断面積を増やす等して、屋根架構全体を硬くすることで変形を抑えようとする、いわゆる耐震構造を採ることが考えられる。
しかし、屋根架構を耐震構造とすると、地震が発生したときの振動周期が短くなり、応答加速度も高くなる。その結果、屋根架構の揺れを効果的に抑えることができない。
片持ち梁状に張り出した屋根架構の揺れを抑える対策の一つとして、屋根架構の基端部よりも下層に積層ゴム支承などの免震装置を設ける、いわゆる免震構造とすることも考えられる。免震構造を採用すると、免震装置により建築構造物の振動周期を長くすることができ、応答加速度を抑えることができる。
しかし、免震構造においては、免震装置を設けるための免震層として、建築構造物に1階層が余計に必要となる。このため、施工が長期化し、免震層を設けるためのスペースも必要となるという問題がある。また、屋根架構の先端部が上下方向に揺れた場合、免震装置には上下方向の引張力が入力されるが、免震装置は、上下方向の引張力には弱いという問題もある。
特開2014−69121号公報
本発明の目的は、片持ち梁状に張り出した屋根架構の揺れを効果的に抑えつつ、施工の長期化を抑え、スペースの有効利用を図ることが可能な、屋根架構を有した建築構造物を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の屋根架構を有した建築構造物は、基礎上に構築された複数本の柱、および互いに隣り合う前記柱の間に架設された梁からなるラーメン構造の下部構造部と、前記下部構造部の上方に設けられ、基端部が固定端とされ、先端部が前記基端部から側方に延びて自由端とされた片持ち梁状の屋根架構を有した上部構造部と、を備え、前記下部構造部は、前記上部構造部よりも剛性が低い柔構造であることを特徴とする。
このような構成によれば、屋根架構を有した上部構造部に対し、下部構造部をラーメン架構からなる柔構造とすることで、屋根架構を有した建築構造物において、いわゆるソフトストーリー制振構造を導入することができる。これにより、地震発生時には、下部構造部に変形を集中させて地震エネルギーを吸収することができる。したがって、免震装置を有した免震層を設けることなく、屋根架構を有する上部構造部の変形を抑え、屋根架構の揺れ、とくに屋根架構の先端部における上下方向の揺れを抑えることができる。しかも、免震装置を有した免震層を設ける必要がないので、免震層を設けるための施工期間やスペースも不要である。
本発明の一態様においては、本発明の屋根架構を有した建築構造物は、前記上部構造部が、前記下部構造部上に設けられた上層階部と、前記上層階部上に設けられた前記屋根架構とを有し、前記上層階部は、上下方向に延びる上層階柱と水平方向に延びる上層階梁とからなる柱梁架構と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁と、前記柱梁架構に設けられた補強ブレースと、を備える。
このような構成によれば、上部構造部において、屋根架構を支持する上部構造部が、斜梁と補強ブレースとによって補強され、柔構造の下部構造部に対し、上部構造部を、より強固な剛構造とすることができる。これによって、柔構造の下部構造部に変形を集中させて地震エネルギーを吸収することで、屋根架構を有する上部構造部の変形を抑えるという、ソフトストーリー制振構造の効果を、より顕著に発揮することができる。
本発明の一態様においては、本発明の屋根架構を有した建築構造物は、前記下部構造部が、互いに上下に位置する前記梁同士の水平方向における相対変位を減衰するダンパー部を備えている。
このような構成によれば、柔構造の下部構造部に集中して生じる変形をダンパー部で減衰することで、屋根架構を有する上部構造部の変形および揺れを、より確実に抑えることができる。
本発明の一態様においては、本発明の屋根架構を有した建築構造物は、前記屋根架構が、平面視すると、中央部に開口を有し、前記開口の外周側で周方向に連続する環状に設けられ、前記ダンパー部は、前記周方向の複数個所に設けられるとともに、前記開口から径方向外側に向かう放射方向を含む鉛直面内に位置する放射方向ダンパー部と、前記周方向を含む鉛直面内に位置する周方向ダンパー部と、を備えている。
このような構成によれば、平面視すると環状に連続する屋根架構において、放射方向ダンパー部と周方向ダンパー部とを、周方向の複数個所に設けることで、あらゆる方向の震動成分による下部構造部の変形を、効果的に抑制することができる。
本発明の一態様においては、前記下部構造部は、複数層で構成されている。
このような構成によれば、下部構造部において、上部構造部よりも剛性が低い柔構造をより容易に実現可能であり、ソフトストーリー制振構造の効果を、より顕著に発揮することができる。
本発明によれば、片持ち梁状に張り出した屋根架構の揺れを効果的に抑えつつ、施工の長期化を抑え、スペースの有効利用を図ることが可能となる。
屋根架構を有した建築構造物のスタンド部の構成を示す断面図である。 屋根架構を有した建築構造物を示す平面図である。 下部構造部におけるダンパー部のレイアウト例を示す平面図である。 上層階部における補強ブレースのレイアウト例を示す平面図である。 地震発生時におけるスタンド部の変形の様子を模式的に示した図である。 上記したようなスタンド部において、下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答層間変形角についてシミュレーションした結果を示す図である。 下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答層せん断力係数についてシミュレーションした結果を示す図である。 下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答加速度についてシミュレーションした結果を示す図である。 屋根架構の屋根本体における最大応答鉛直加速度についてシミュレーションした結果を示す図である。 屋根架構の屋根本体における最大応答曲げモーメントについてシミュレーションした結果を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明による屋根架構を有した建築構造物を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
屋根架構を有した建築構造物のスタンド部の構成を示す断面図を図1に示す。屋根架構を有した建築構造物を示す平面図を図2に示す。
図1、図2に示されるように、建築構造物1は、いわゆるスタジアムであり、中央部に設けられ、競技、スポーツ、催し物等を行うフィールド2と、フィールド2の外周側を取り囲むように、周方向に環状に連続して設けられたスタンド部3と、を備える。
図1に示されるように、スタンド部3は、下部構造部10と、上層階部40および屋根架構30を有した上部構造部20と、を備える。下部構造部10、下部構造部10上に設けられた上層階部40は、それぞれ上下方向に複数の階層9を有している。本実施形態において、下部構造部10は、1階9A〜3階9Cを有し、上層階部40は、4階9D〜7階9Gを有している。
また、図2に示されるように、屋根架構30は、平面視すると、中央部に開口34を有し、開口34の外周側で周方向に連続する環状に設けられている。
図1に示されるように、下部構造部10は、地盤に構築された基礎6上に設けられている。本実施形態において、下部構造部10は、上下方向に3層を有している。
下部構造部10は、基礎6上に構築された複数本の下層階柱(柱)11と、互いに隣り合う下層階柱11の間に架設された下層階梁(梁)12とからなるラーメン構造とされている。ここで、下層階柱11と下層階梁12とからなるラーメン構造の架構の構面は、平面視すると、フィールド2側から外周側に延びる放射方向を含む鉛直面内と、放射方向に交差する周方向を含む鉛直面内とに位置するよう設けられている。
下層階柱11は、1階9Aおよび2階9Bにおいては、全て高強度材からなる鋼管造とされている。下層階柱11を高強度材により形成することで、下層階柱11の断面積を小さくし、地震発生時における下層階柱11の変形性能を高めつつ、強度を確保する。また、下部構造部10の3階9Cにおいては、フィールド2から離間した外周側に位置し、後述する屋根架構30を支持する下層階柱(柱)11Sのみが、プレキャストコンクリート造からなる。3階9Cにおいて、外周側の下層階柱11Sを除いたフィールド2側の下層階柱11は、1階9Aおよび2階9Bと同様、高強度材からなる鋼管造とされている。
下部構造部10において、全ての下層階梁12は、高強度材からなる鉄骨造とされている。下層階梁12上には、下部構造部10の各層(各階)の床を形成する床スラブ13が設けられている。床スラブ13は、下層階梁12に、スタッド(図示無し)を介して一体に設けられている。これにより、下層階梁12は、床スラブ13と一体化した合成梁を構成し、高い剛性を有している。
ここで、フィールド2から離間した外周側に位置する下層階梁12Sは、一方の端部が、ピン12Pを介して下層階柱11Sに回動変位可能に連結されている。
このような下部構造部10は、下層階柱11と下層階梁12とからなるラーメン構造であり、後述する上部構造部20よりも層剛性が低い柔構造とされている。
さらに、下部構造部10には、互いに隣り合う下層階柱11と互いに上下に位置する下層階梁12とに囲まれた部分に、V字状のブレース14と、ダンパー15と、を備えるダンパー部16が設けられている。ブレース14は、その上端部が、上方の下層階梁12と互いに隣り合う2本の下層階柱11との接合部に連結されている。ダンパー15は、例えばオイルダンパーからなり、ブレース14の下端部と下側の下層階梁12との間に設けられている。このダンパー部16は、互いに上下に位置する下層階梁12どうしの水平方向における相対変位をダンパー15により減衰する。
下部構造部におけるダンパー部のレイアウト例を示す平面図を図3に示す。
このようなダンパー部16は、下部構造部10の各層にそれぞれ設けられている。さらに、図3に示されるように、ダンパー部16は、スタンド部3が連続する周方向の複数個所に分散して設けられている。ダンパー部16には、フィールド2側(屋根架構30の開口34側)から外周側に向かう放射方向を含む鉛直面内に位置する放射方向ダンパー部16Rと、周方向(接線方向)を含む鉛直面内に位置する周方向ダンパー部16Sと、が設けられている。下部構造部10の各層において、放射方向ダンパー部16Rと周方向ダンパー部16Sとは、放射方向と周方向とで略同等の減衰効果が得られるように、略同等数が設けられている。
また、図1に示されるように、下部構造部10に対し、フィールド2側には、1階観客席50が設けられている。1階観客席50は、基礎6上に構築された複数本の鉄筋コンクリート造の柱52と、柱52に支持された最下層斜梁51Aと、を備えている。ここで、複数本の柱52は、外周側からフィールド2側に向かって、段階的に低くなっている。これにより、最下層斜梁51Aは、外周側からフィールド2側に向かって漸次低くなるように傾斜して設けられている。最下層斜梁51Aは、鉄骨鉄筋コンクリート造である。この最下層斜梁51A上には、フィールド2側から外周側に向かって段階的に高くなる階段状の段床(図示無し)が設けられている。階段状の段床(図示無し)上には、観客が着座するベンチやシート(図示無し)が設けられている。
上記最下層斜梁51Aを有した1階観客席50は、上記下部構造部10とは縁が切られて別体に設けられている。
上部構造部20は、下部構造部10上に設けられた上層階部40と、上層階部40上に設けられた屋根架構30とを有している。
上層階部40は、各下層階柱11上に連続して設けられ、上下方向に延びる上層階柱41と、互いに隣り合う上層階柱41間に架設された上層階梁42と、からなる柱梁架構43を有している。ここで、上層階柱41と上層階梁42とからなる柱梁架構43の構面は、平面視すると、フィールド2側から外周側に延びる放射方向を含む鉛直面内と、放射方向に交差する周方向を含む鉛直面内とに位置するよう設けられている。
上層階柱41は、後述する外周側の上層階柱41Sを除き、鋼管造とされている。また、上部構造部20において、フィールド2から離間した外周側に位置し、後述する屋根架構30を支持する上層階柱41Sは、下層階柱11Sに連続し、プレキャストコンクリート造からなる。
上層階梁42は、鉄骨造からなる。上層階梁42上には、上層階部40の各層(各階)の床を形成する床スラブ46が設けられている。床スラブ46は、上層階梁42に、スタッド(図示無し)を介して一体に設けられている。これにより、上層階梁42は、床スラブ46と一体化した合成梁を構成し、高い剛性を有している。
上層階部40の柱梁架構43には、補強ブレース45が設けられている。補強ブレース45は、例えばV字状で、その上端部が上方の上層階梁42と互いに隣り合う2本の上層階柱41との接合部に連結され、下端部が下方の上層階梁42に連結されている。この補強ブレース45により、柱梁架構43は補強され、下部構造部10よりも高い剛性を有している。
上層階部における補強ブレースのレイアウト例を図4に示す。
このような補強ブレース45は、上層階部40の各層にそれぞれ設けられている。さらに、図4に示されるように、補強ブレース45は、スタンド部3が連続する周方向の複数個所に分散して設けられている。補強ブレース45には、フィールド2側(屋根架構30の開口34側)から外周側に向かう放射方向を含む鉛直面内に位置する放射方向補強ブレース45Rと、周方向を含む鉛直面内に位置する周方向補強ブレース45Sと、が設けられている。上部構造部40の各層において、放射方向の補強成分となる放射方向補強ブレース45Rおよび斜梁51B,51Cと、周方向の補強成分となる周方向補強ブレース45Sとが、放射方向と周方向とで同等の剛性が得られるように設けられている。
また、図1に示されるように、上層階部40には、フィールド2側に、中層部の斜梁51Bと、高層部の斜梁51Cとが設けられている。斜梁51B、51Cを支持する複数本の上層階柱41は、外周側からフィールド2側に向かって、段階的に低くなっている。これにより、斜梁51B、51Cは、それぞれ、外周側からフィールド2側に向かって漸次低くなるように傾斜して設けられている。斜梁51B、51Cは、鉄骨鉄筋コンクリート造である。斜梁51B、51C上には、それぞれ、フィールド2側から外周側に向かって段階的に高くなる階段状の段床(図示無し)が設けられている。階段状の段床(図示無し)上には、観客が着座するベンチやシート(図示無し)が設けられている。
屋根架構30は、下部構造部10上に設けられた上層階部40に支持されている。屋根架構30は、上層階部40において、フィールド2から離間した外周側の上部から上方に延びる屋根支持部31と、屋根支持部31に支持された屋根本体32と、を有している。
屋根支持部31は、上層階部40の外周側に位置するプレキャストコンクリート造の上層階柱41S上に連続して設けられた支持柱33を有している。
屋根本体32は、基端部32bが屋根支持部31に固定され、先端部32sが基端部32bからフィールド2側(側方)に延びるように設けられている。このような屋根本体32は、基端部32bが屋根支持部31に固定された固定端とされ、先端部32sが自由端とされた片持ち梁状をなしている。屋根本体32は、例えばトラス構造で、上弦材32fと、上弦材32fの下方に設けられた下弦材32gと、上弦材32fと下弦材32gとの間にジグザグ状に設けられた連結材32hと、を有する。上弦材32f上には、屋根材35が敷設されている。
地震発生時におけるスタンド部の変形の様子を模式的に示した図を図5に示す。
上記したような構成においては、地震発生時には、上部構造部20に対して柔構造の下部構造部10に変形が集中する。その結果、図5に示されるように、下部構造部10は、互いに上下に位置する下層階梁12が水平方向に相対変位するにともない、下層階柱11Sが撓み変形する。また、互いに上下に位置する下層階梁12の水平方向の相対変位はダンパー部16のダンパー15により減衰され、下部構造部10の変形が減衰される。また、下部構造部10は、1階観客席50と切り離されて別体とされているので、下部構造部10の変形が1階観客席50によって阻害されるのを抑えている。
一方、下部構造部10上に設けられた上部構造部20は、特に上層階部40が補強ブレース45および斜梁51B,51Cによって強固に補強されて剛構造となっている。このため、上部構造部20は、その全体が変形量を抑えたまま、下部構造部10の変形にともなって水平方向に変位する。その結果、屋根架構30の屋根本体32は、先端部32sが上下方向に揺れるのを抑えることができる。
上記したようなスタンド部において、下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答層間変形角についてシミュレーションした結果を図6に示す。また、上記したようなスタンド部において、下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答層せん断力係数についてシミュレーションした結果を図7に示す。また、上記したようなスタンド部において、下部構造部と上層階部とからなる観客席部分の最大応答加速度についてシミュレーションした結果を図8に示す。なお、図6〜図8に示すシミュレーションにおいては、本実施形態で示した制振構造のシミュレーションに加え、比較のため、従来の耐震構造、免震構造を採用した場合についてもシミュレーションを行った。
図6に示されるように、本実施形態で示す構成を備えた制振構造においては、柔構造とした下部構造を除き、上層階にいくほど最大応答層間変形角が小さくなり、免震構造と同等レベルとなっている。
また、図7に示されるように、本実施形態で示す構成を備えた制振構造においては、最大応答層せん断力係数が、耐震構造を採用した場合に比較して大幅に小さく、免震構造に近いレベルとなっている。
さらに、図8に示すように、上記構成の建築構造物1において、下部構造部10と、下部構造部10上に設けられた上層階部40とからなる観客席部分は、その最大応答加速度が、耐震構造においては上層階に行くほど大きくなっていたのに対し、本実施形態で示す構成を備えた制振構造においては、上層階でも増大せず、免震構造に近いものとなっている。
上記したようなスタンド部において、屋根架構の屋根本体における最大応答鉛直加速度についてシミュレーションした結果を図9に示す。また、上記したようなスタンド部において、屋根架構の屋根本体における最大応答曲げモーメントについてシミュレーションした結果を図10に示す。
図9に示されるように、本実施形態で示す構成を備えた制振構造においては、屋根本体32における鉛直方向の最大応答加速度が、先端部32sにおいて、耐震構造よりも小さく、免震構造に近いレベルとなっている。
また、図10に示されるように、本実施形態で示す構成を備えた制振構造においては、屋根本体32の基端部32bに生じる最大応答曲げモーメントが、耐震構造よりも小さく、免震構造に近いレベルとなっている。
上述したような屋根架構30を有した建築構造物1によれば、基礎6上に構築された複数本の下層階柱11、および互いに隣り合う下層階柱11の間に架設された下層階梁12からなるラーメン構造の下部構造部10と、下部構造部10の上方に設けられ、基端部32bが固定端とされ、先端部32sが基端部32bから側方に延びて自由端とされた片持ち梁状の屋根架構30を有した上部構造部20と、を備え、下部構造部10は、上部構造部20よりも剛性が低い柔構造となっている。
このような構成によれば、屋根架構30を有した上部構造部20に対し、下部構造部10をラーメン架構からなる柔構造とすることで、屋根架構30を有した建築構造物1において、いわゆるソフトストーリー制振構造を導入することができる。これにより、地震発生時には、下部構造部10に変形を集中させて地震エネルギーを吸収することができる。したがって、屋根架構30を有する上部構造部20の変形を抑え、屋根架構30の変形を抑えて先端部32sの上下方向の揺れを抑えることができる。しかも、免震装置を有した免震層を設ける必要がないので、免震層を設けるための施工期間やスペースも不要である。その結果、片持ち梁状に張り出した屋根架構30の揺れを効果的に抑えるとともに、施工の長期化を抑え、スペースの有効利用を図ることが可能となる。
また、上部構造部20は、下部構造部10上に設けられた上層階部40と、上層階部40上に設けられた屋根架構30とを有し、上層階部40は、上下方向に延びる上層階柱41と水平方向に延びる上層階梁42とからなる柱梁架構43と、水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、柱梁架構43により支持された斜梁51B,51Cと、柱梁架構43に設けられた補強ブレース45と、を備える。
このような構成によれば、上部構造部20において、屋根架構30を支持する上部構造部20が、斜梁51B,51Cと補強ブレース45とによって補強され、柔構造の下部構造部10に対し、上部構造部20を、より剛構造とすることができる。これによって、柔構造の下部構造部10に変形を集中させて地震エネルギーを吸収することで、屋根架構30を有する上部構造部20の変形を抑えるという、ソフトストーリー制振構造の効果を、より顕著に発揮することができる。
さらに、上部構造部40は、放射方向補強ブレース45Rと斜梁51B,51Cとによって放射方向に補強され、周方向補強ブレース45Sによって周方向に補強されている。このように、放射方向と周方向とにバランス良く剛性を高め、上部構造部40の剛構造化を図ることができる。
また、下部構造部10は、互いに上下に位置する下層階梁12同士の水平方向における相対変位を減衰するダンパー部16を備えている。
このような構成によれば、柔構造の下部構造部10に集中して生じる変形を、ダンパー部16によって減衰することで、屋根架構30を有する上部構造部20の変形および揺れを、より確実に抑えることができる。
また、屋根架構30は、平面視すると、中央部に開口34を有し、開口34の外周側で周方向に連続する環状に設けられている。ダンパー部16は、周方向の複数個所に設けられるとともに、開口34から径方向外側に向かう放射方向を含む鉛直面内に位置する放射方向ダンパー部16Rと、周方向を含む鉛直面内に位置する周方向ダンパー部16Sと、を備えている。
このような構成によれば、平面視すると環状に連続する屋根架構30において、放射方向ダンパー部16Rと周方向ダンパー部16Sとを、周方向の複数個所に分散して設けることで、あらゆる方向の震動成分による下部構造部10の変形を、効果的に抑制することができる。
さらに、ダンパー部16は、下部構造部10の各層にそれぞれ設けられている。これによって、何れかの層のダンパー部16が機能しなかったとしても、他の層のダンパー部16で所定の減衰機能を発揮することで、下部構造部10の変形を有効に抑えることができる。
加えて、下部構造部10において、フィールド2から離間した外周側に位置する下層階梁12Sは、一方の端部が、ピン12Pを介して下層階柱11Sに回動変位可能に連結されている。これにより、下部構造部10を、より変形しやすい柔構造とすることができる。したがって、柔構造の下部構造部10に変形を集中させて地震エネルギーを吸収することで、屋根架構30を有する上部構造部20の変形を抑えるという、ソフトストーリー制振構造の効果を、より顕著に発揮することができる。
また、下部構造部10は、複数層で構成されている。
このような構成によれば、下部構造部10において、上部構造部40よりも剛性が低い柔構造をより容易に実現可能であり、ソフトストーリー制振構造の効果を、より顕著に発揮することができる。
また、下層階柱11を高強度材により形成することで、下層階柱11の断面積を小さくし、地震発生時における下層階柱11の変形性能を高めつつ、強度を確保することができる。
(実施形態の変形例)
なお、本発明の屋根架構を有した建築構造物は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、建築構造物1の全体に構成について説明したが、あくまでも一例に過ぎず、各部の構成を適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態においては下部構造部10は複数層で構成されていたが、1つの階層で構成されていてもよい。
また、ダンパー部16や補強ブレース45のレイアウト例を図4、図5に示したが、言うまでもなく、そのレイアウトは適宜変更することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
1 建築構造物 32b 基端部
6 基礎 32s 先端部
10 下部構造部 34 開口
11、11S 下層階柱(柱) 40 上層階部
12、12S 下層階梁(梁) 41、41S 上層階柱
16 ダンパー部 42 上層階梁
16R 放射方向ダンパー部 43 柱梁架構
16S 周方向ダンパー部 45 補強ブレース
20 上部構造部 45R 放射方向補強ブレース
30 屋根架構 45S 周方向補強ブレース
32 屋根本体 51B、51C 斜梁

Claims (5)

  1. 基礎上に構築された複数本の柱、および互いに隣り合う前記柱の間に架設された梁からなるラーメン構造の下部構造部と、
    前記下部構造部の上方に設けられ、基端部が固定端とされ、先端部が前記基端部から側方に延びて自由端とされた片持ち梁状の屋根架構を有した上部構造部と、を備え、
    前記下部構造部は、前記上部構造部よりも剛性が低い柔構造であることを特徴とする屋根架構を有した建築構造物。
  2. 前記上部構造部は、前記下部構造部上に設けられた上層階部と、前記上層階部上に設けられた前記屋根架構とを有し、
    前記上層階部は、
    上下方向に延びる上層階柱と水平方向に延びる上層階梁とからなる柱梁架構と、
    水平面に対し斜め方向に延在して設けられ、前記柱梁架構により支持された斜梁と、
    前記柱梁架構に設けられた補強ブレースと、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の屋根架構を有した建築構造物。
  3. 前記下部構造部は、互いに上下に位置する前記梁同士の水平方向における相対変位を減衰するダンパー部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の屋根架構を有した建築構造物。
  4. 前記屋根架構は、平面視すると、中央部に開口を有し、前記開口の外周側で周方向に連続する環状に設けられ、
    前記ダンパー部は、前記周方向の複数個所に設けられるとともに、前記開口から径方向外側に向かう放射方向を含む鉛直面内に位置する放射方向ダンパー部と、前記周方向を含む鉛直面内に位置する周方向ダンパー部と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の屋根架構を有した建築構造物。
  5. 前記下部構造部は、複数層で構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の屋根架構を有した建築構造物。
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