JP2019007053A - 軟磁性合金および磁性部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い飽和磁束密度および低い保磁力を両立した優れた軟磁気特性を有し、さらに飽和磁束密度の経時変化が小さく、保磁力の経時変化も小さい軟磁性合金の提供。
【解決手段】組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金。(X1はCoおよびNiから選択される1種以上;X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素から選択される1種以上;MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVから選択される1種以上;0.030≦a≦0.15;0.020<b≦0.20;0<c<0.050;0<d<0.030;α≧0;β≧0;0≦α+β≦0.50)
【選択図】なし
【解決手段】組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金。(X1はCoおよびNiから選択される1種以上;X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素から選択される1種以上;MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVから選択される1種以上;0.030≦a≦0.15;0.020<b≦0.20;0<c<0.050;0<d<0.030;α≧0;β≧0;0≦α+β≦0.50)
【選択図】なし
Description
本発明は、軟磁性合金および磁性部品に関する。
近年、電子・情報・通信機器等において低消費電力化および高効率化が求められている。さらに、低炭素化社会へ向け、上記の要求が一層強くなっている。そのため、電子・情報・通信機器等の電源回路にも、エネルギー損失の低減や電源効率の向上が求められている。そして、電源回路に使用させる磁器素子の磁心には飽和磁束密度の向上およびコアロス(磁心損失)の低減が求められている。コアロスを低減すれば、電力エネルギーのロスが小さくなり、高効率化および省エネルギー化が図られる。
特許文献1には、Fe−B−M(M=Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W)系の軟磁性非晶質合金が記載されている。本軟磁性非晶質合金は市販のFeアモルファスと比べて高い飽和磁束密度を有するなど、良好な軟磁気特性を有する。
なお、上記の磁心のコアロスを低減する方法として、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することが考えられる。
しかしながら、特許文献1の合金組成物は時間の経過に伴い飽和磁束密度および保磁力が大きく変化してしまう。すなわち、時間の経過に対する安定性が十分ではないという問題がある。
本発明は、高い飽和磁束密度および低い保磁力を両立した優れた軟磁気特性を有し、さらに飽和磁束密度の経時変化が小さく、保磁力の経時変化も小さい軟磁性合金等を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明に係る軟磁性合金は、
組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.15
0.020<b≦0.20
0<c<0.050
0<d<0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
であることを特徴とする。
組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.15
0.020<b≦0.20
0<c<0.050
0<d<0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
であることを特徴とする。
本発明に係る軟磁性合金は、上記の特徴を有することで、熱処理を施すことによりFe基ナノ結晶合金となりやすい構造を有しやすい。また、上記の特徴を有するFe基ナノ結晶合金は飽和磁束密度が高く保磁力が低いという好ましい軟磁気特性を有する軟磁性合金となる。さらに、上記の特徴を有するFe基ナノ結晶合金は、飽和磁束密度の経時変化が小さく、保磁力の経時変化も小さい。
本発明に係る軟磁性合金は、0.73≦1−(a+b+c)≦0.95であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、0≦α{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.40であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、α=0であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、0≦β{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.030であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、β=0であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、α=β=0であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、非晶質および初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有していてもよい。
前記初期微結晶の平均粒径が0.3〜10nmであってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶からなる構造を有していてもよい。
前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5〜30nmであってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、薄帯形状であってもよい。
本発明に係る軟磁性合金は、粉末形状であってもよい。
また、本発明に係る磁性部品は、上記の軟磁性合金からなる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Fe,M,B,SiおよびCの含有量がそれぞれ特定の範囲内である組成を有する。具体的には、組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.15
0.020<b≦0.20
0<c<0.050
0<d<0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
である組成を有する。
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.15
0.020<b≦0.20
0<c<0.050
0<d<0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
である組成を有する。
上記の組成を有する軟磁性合金は、非晶質からなり、粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相を含まない軟磁性合金としやすい。そして、当該軟磁性合金を熱処理する場合には、Fe基ナノ結晶を析出しやすい。そして、Fe基ナノ結晶を含む軟磁性合金は良好な磁気特性を有しやすい。さらに、耐食性も優れた軟磁性合金としやすい。
言いかえれば、上記の組成を有する軟磁性合金は、Fe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金の出発原料としやすい。
Fe基ナノ結晶とは、粒径がナノオーダーであり、Feの結晶構造がbcc(体心立方格子構造)である結晶のことである。本実施形態においては、平均粒径が5〜30nmであるFe基ナノ結晶を析出させることが好ましい。このようなFe基ナノ結晶を析出させた軟磁性合金は、飽和磁束密度が高くなり、保磁力が低くなりやすい。
なお、熱処理前の軟磁性合金は完全に非晶質のみからなっていてもよいが、非晶質および粒径が15nm以下である初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することが好ましい。初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有することにより、熱処理時にFe基ナノ結晶を析出させやすくなる。なお、本実施形態では、前記初期微結晶は平均粒径が0.3〜10nmであることが好ましい。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の各成分について詳細に説明する。
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上である。また、飽和磁束密度を向上させる観点から、M全体に占めるNb,HfおよびZrからなる群から選択される元素の割合が50at%を超えることが好ましい。
Mの含有量(a)は0.030≦a≦0.15を満たす。aが小さい場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなる。さらに、飽和磁束密度および保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。aが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。さらに、保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。
Bの含有量(b)は0.020<b≦0.20を満たす。また、0.025≦b≦0.20を満たすことが好ましく、0.025≦b≦0.10を満たすことがより好ましい。bが小さい場合には、熱処理前の軟磁性合金に粒径が15nmよりも大きい結晶からなる結晶相が生じやすく、熱処理によりFe基ナノ結晶を析出させることができず、保磁力が高くなりやすくなる。さらに、飽和磁束密度および保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。bが大きい場合には、飽和磁束密度が低くなりやすくなる。さらに、保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。
Siの含有量(c)は0<c<0.050を満たす。また、0.001≦c≦0.040を満たすことが好ましく、0.010≦c≦0.030を満たすことがさらに好ましい。cが小さすぎる場合およびcが大きすぎる場合には、飽和磁束密度の経時変化および保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。
Feの含有量(1−(a+b+c))については、特に制限はないが0.73≦1−(a+b+c)≦0.95を満たすことが好ましい。0.73≦1−(a+b+c)である場合には飽和磁束密度を向上させやすい。また、1−(a+b+c)≦0.95である場合には熱処理前の軟磁性合金に、粒径が15nm以下の初期微結晶からなり、前記初期微結晶が非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有する非晶質相が生じやすい。なお、上記のFeの含有量(1−(a+b+c))は小数点以下3桁目を四捨五入した数値である。
Cの含有量(d)は0<d<0.030を満たす。また、0.001≦d≦0.025を満たすことが好ましく、0.005≦d≦0.020を満たすことがさらに好ましい。dが小さすぎる場合およびdが大きすぎる場合には、飽和磁束密度の経時変化および保磁力の経時変化が大きくなりやすくなる。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Siのみを含有する場合(c=0)、またはCのみを含有する場合(d=0)と比較して、SiとCとを同時に含有することで著しく飽和磁束密度の経時変化および保磁力の経時変化を小さくすることができる。
また、本実施形態に係る軟磁性合金においては、Feの一部をX1および/またはX2で置換してもよい。
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上である。X1の含有量(α)はα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、X1の原子数は組成全体の原子数を100at%として40at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦α{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.40を満たすことが好ましい。
X2はW,Al,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上である。X2の含有量(β)はβ=0でもよい。すなわち、X2は含有しなくてもよい。また、X2の原子数は組成全体の原子数を100at%として3.0at%以下であることが好ましい。すなわち、0≦β{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.030を満たすことが好ましい。
FeをX1および/またはX2に置換する置換量の範囲としては、原子数ベースでFeの半分以下とする。すなわち、0≦α+β≦0.50とする。α+β>0.50の場合には、熱処理によりFe基ナノ結晶合金とすることが困難となる。
なお、本実施形態に係る軟磁性合金は上記以外の元素を不可避的不純物として含んでいてもよい。例えば、軟磁性合金100重量%に対して1重量%以下、含んでいてもよい。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について説明する
本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法には特に限定はない。例えば単ロール法により本実施形態に係る軟磁性合金の薄帯を製造する方法がある。また、薄帯は連続薄帯であってもよい。
単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法には特に制限はないが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られるFe基ナノ結晶からなる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(浴湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はないが、例えば1200〜1500℃とすることができる。
単ロール法においては、主にロール33の回転速度を調整することで得られる薄帯の厚さを調整することができるが、例えばノズルとロールとの間隔や溶融金属の温度などを調整することでも得られる薄帯の厚さを調整することができる。薄帯の厚さには特に制限はないが、例えば5〜30μmとすることができる。
後述する熱処理前の時点では、薄帯は粒径が15nmよりも大きい結晶が含まれていない非晶質である。非晶質である薄帯に対して後述する熱処理を施すことにより、Fe基ナノ結晶合金を得ることができる。
なお、熱処理前の軟磁性合金の薄帯に粒径が15nmよりも大きい結晶が含まれているか否かを確認する方法には特に制限はない。例えば、粒径が15nmよりも大きい結晶の有無については、通常のX線回折測定により確認することができる。
また、熱処理前の薄帯には、粒径が15nm未満の初期微結晶が全く含まれていなくてもよいが、初期微結晶が含まれていることが好ましい。すなわち、熱処理前の薄帯は、非晶質および該非晶質中に存在する該初期微結晶とからなるナノヘテロ構造であることが好ましい。なお、初期微結晶の粒径に特に制限はないが、平均粒径が0.3〜10nmの範囲内であることが好ましい。
また、上記の初期微結晶の有無および平均粒径の観察方法については、特に制限はないが、例えば、イオンミリングにより薄片化した試料に対して、透過電子顕微鏡を用いて、制限視野回折像、ナノビーム回折像、明視野像または高分解能像を得ることで確認できる。制限視野回折像またはナノビーム回折像を用いる場合、回折パターンにおいて非晶質の場合にはリング状の回折が形成されるのに対し、非晶質ではない場合には結晶構造に起因した回折斑点が形成される。また、明視野像または高分解能像を用いる場合には、倍率1.00×105〜3.00×105倍で目視にて観察することで初期微結晶の有無および平均粒径を観察できる。
ロールの温度、回転速度およびチャンバー内部の雰囲気には特に制限はない。ロールの温度は4〜30℃とすることが非晶質化のため好ましい。ロールの回転速度は速いほど初期微結晶の平均粒径が小さくなる傾向にあり、25〜30m/sec.とすることが平均粒径0.3〜10nmの初期微結晶を得るためには好ましい。チャンバー内部の雰囲気はコスト面を考慮すれば大気中とすることが好ましい。
また、Fe基ナノ結晶合金を製造するための熱処理条件には特に制限はない。軟磁性合金の組成により好ましい熱処理条件は異なる。通常、好ましい熱処理温度は概ね400〜700℃、好ましい熱処理時間は概ね0.5〜10時間となる。しかし、組成によっては上記の範囲を外れたところに好ましい熱処理温度および熱処理時間が存在する場合もある。また、熱処理時の雰囲気には特に制限はない。大気中のような活性雰囲気下で行ってもよいし、Arガス中のような不活性雰囲気下で行ってもよい。
また、得られたFe基ナノ結晶合金における平均粒径の算出方法には特に制限はない。例えば透過電子顕微鏡を用いて観察することで算出できる。また、結晶構造がbcc(体心立方格子構造)であること確認する方法にも特に制限はない。例えばX線回折測定を用いて確認することができる。
また、本実施形態に係る軟磁性合金を得る方法として、上記した単ロール法以外にも、例えば水アトマイズ法またはガスアトマイズ法により本実施形態に係る軟磁性合金の粉体を得る方法がある。以下、ガスアトマイズ法について説明する。
ガスアトマイズ法では、上記した単ロール法と同様にして1200〜1500℃の溶融合金を得る。その後、前記溶融合金をチャンバー内で噴射させ、粉体を作製する。
このとき、ガス噴射温度を4〜30℃とし、チャンバー内の蒸気圧を1hPa以下とすることで、上記の好ましいナノヘテロ構造を得やすくなる。
ガスアトマイズ法で粉体を作製した後に、400〜700℃で0.5〜10分、熱処理を行うことで、各粉体同士が焼結し粉体が粗大化することを防ぎつつ元素の拡散を促し、熱力学的平衡状態に短時間で到達させることができ、歪や応力を除去することができ、平均粒径が10〜50nmのFe基軟磁性合金を得やすくなる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。
本実施形態に係る軟磁性合金の形状には特に制限はない。上記した通り、薄帯形状や粉末形状が例示されるが、それ以外にもブロック形状等も考えられる。
本実施形態に係る軟磁性合金(Fe基ナノ結晶合金)の用途には特に制限はない。例えば、磁性部品が挙げられ、その中でも特に磁心が挙げられる。インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。本実施形態に係る軟磁性合金は、磁心の他にも薄膜インダクタ、磁気ヘッドにも好適に用いることができる。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金から磁性部品、特に磁心およびインダクタを得る方法について説明するが、本実施形態に係る軟磁性合金から磁心およびインダクタを得る方法は下記の方法に限定されない。また、磁心の用途としては、インダクタの他にも、トランスおよびモータなどが挙げられる。
薄帯形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、薄帯形状の軟磁性合金を巻き回す方法や積層する方法が挙げられる。薄帯形状の軟磁性合金を積層する際に絶縁体を介して積層する場合には、さらに特性を向上させた磁芯を得ることができる。
粉末形状の軟磁性合金から磁心を得る方法としては、例えば、適宜バインダと混合した後、金型を用いて成形する方法が挙げられる。また、バインダと混合する前に、粉末表面に酸化処理や絶縁被膜等を施すことにより、比抵抗が向上し、より高周波帯域に適合した磁心となる。
成形方法に特に制限はなく、金型を用いる成形やモールド成形などが例示される。バインダの種類に特に制限はなく、シリコーン樹脂が例示される。軟磁性合金粉末とバインダとの混合比率にも特に制限はない。例えば軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜10質量%のバインダを混合させる。
例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜5質量%のバインダを混合させ、金型を用いて圧縮成形することで、占積率(粉末充填率)が70%以上、1.6×104A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.45T以上、かつ比抵抗が1Ω・cm以上である磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的なフェライト磁心と同等以上の特性である。
また、例えば、軟磁性合金粉末100質量%に対し、1〜3質量%のバインダを混合させ、バインダの軟化点以上の温度条件下の金型で圧縮成形することで、占積率が80%以上、1.6×104A/mの磁界を印加したときの磁束密度が0.9T以上、かつ比抵抗が0.1Ω・cm以上である圧粉磁心を得ることができる。上記の特性は、一般的な圧粉磁心よりも優れた特性である。
さらに、上記の磁心を成す成形体に対し、歪取り熱処理として成形後に熱処理することで、さらにコアロスが低下し、有用性が高まる。なお、磁心のコアロスは、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することで低下する。
また、上記磁心に巻線を施すことでインダクタンス部品が得られる。巻線の施し方およびインダクタンス部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁心に巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、巻線コイルが磁性体に内蔵されている状態で加圧成形し一体化することでインダクタンス部品を製造する方法がある。この場合には高周波かつ大電流に対応したインダクタンス部品を得やすい。
さらに、軟磁性合金粒子を用いる場合には、軟磁性合金粒子にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した軟磁性合金ペースト、および、コイル用の導体金属にバインダおよび溶剤を添加してペースト化した導体ペーストを交互に印刷積層した後に加熱焼成することで、インダクタンス部品を得ることができる。あるいは、軟磁性合金ペーストを用いて軟磁性合金シートを作製し、軟磁性合金シートの表面に導体ペーストを印刷し、これらを積層し焼成することで、コイルが磁性体に内蔵されたインダクタンス部品を得ることができる。
ここで、軟磁性合金粒子を用いてインダクタンス部品を製造する場合には、最大粒径が篩径で45μm以下、中心粒径(D50)が30μm以下の軟磁性合金粉末を用いることが、優れたQ特性を得る上で好ましい。最大粒径を篩径で45μm以下とするために、目開き45μmの篩を用い、篩を通過する軟磁性合金粉末のみを用いてもよい。
最大粒径が大きな軟磁性合金粉末を用いるほど高周波領域でのQ値が低下する傾向があり、特に最大粒径が篩径で45μmを超える軟磁性合金粉末を用いる場合には、高周波領域でのQ値が大きく低下する場合がある。ただし、高周波領域でのQ値を重視しない場合には、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を使用可能である。バラツキの大きな軟磁性合金粉末は比較的安価で製造できるため、バラツキの大きな軟磁性合金粉末を用いる場合には、コストを低減することが可能である。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
下表に示す各実施例および比較例の合金組成となるように原料金属を秤量し、高周波加熱にて溶解し、母合金を作製した。
その後、作製した母合金を加熱して溶融させ、1300℃の溶融状態の金属とした後に、大気中において20℃のロールを下表に示す回転速度で用いた単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作成した。回転速度の記載がない実施例および比較例では回転速度30m/sec.とした。薄帯の厚さ20〜25μm、薄帯の幅約15mm、薄帯の長さ約10mとした。
得られた各薄帯に対してX線回折測定を行い、粒径が15nmよりも大きい結晶の有無を確認した。そして、粒径が15nmよりも大きい結晶が存在しない場合には非晶質相からなるとし、粒径が15nmよりも大きい結晶が存在する場合には結晶相からなるとした。
その後、各実施例および比較例の薄帯に対し、下表に示す熱処理温度で熱処理を行った。熱処理温度の記載がない実施例および比較例では550℃で熱処理を行った。熱処理後の各薄帯に対し、後述する酸化処理前の飽和磁束密度(Bs0)および保磁力(Hc0)を測定した。飽和磁束密度は振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁場1000kA/mで測定した。保磁力は直流BHトレーサーを用いて磁場5kA/mで測定した。
さらに、各薄帯に対して3000分間の酸化処理を施し、酸化処理後の飽和磁束密度(Bs3000)および保磁力(Hc3000)を測定した。酸化処理は大気雰囲気下で150℃50時間の条件下で行った。
本実施例では、Bs0≧1.30T、Bs3000/Bs0≦0.85、Hc0≦10.0A/mおよびHc3000/Hc0≦1.30である場合を良好とした。また、Bs0≧1.60TおよびHc0≦5.0A/mである場合をさらに良好とし、Bs0≧1.60TおよびHc0≦3.0A/mである場合を最も良好とした。
なお、以下に示す実施例では特に記載の無い限り、全て平均粒径が5〜30nmであり結晶構造がbccであるFe基ナノ結晶を有していたことをX線回折測定、および透過電子顕微鏡を用いた観察で確認した。
表1はMの含有量(a)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。
これに対し、a=0.025である比較例は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく高くなった。さらに、酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が大きくなった。また、a=0.180である比較例は飽和磁束密度が低下し、酸化処理による保磁力の変化が大きくなった。
表2はBの含有量(b)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。
これに対し、b=0.020である比較例は熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく高くなった。さらに、酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が大きくなった。また、b=0.230である比較例は飽和磁束密度が低下し、酸化処理による保磁力の変化が大きくなった。
表3は本願発明の範囲内でMの含有量(a)またはBの含有量(b)を変化させ、さらに、Siの含有量(c)およびCの含有量(d)を同時に変化させた実施例および比較例を記載したものである。
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。
これに対し、c=0かつd=0である比較例、すなわちSiおよびCを含まない比較例は酸化処理による保磁力の飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が大きくなった。また、一部の比較例では保磁力も大きくなった。
表4はSiの含有量(c)および/またはCの含有量(d)を変化させた実施例および比較例を記載したものである。
各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。
これに対し、c=0である比較例、c=0.050である比較例、d=0である比較例およびd=0.030である比較例は、酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が大きくなった。
表5はMの種類を変化させた実施例を記載したものである。
Mの種類を変化させても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。特にNb,HfまたはZrを用いた場合に残留磁束密度が向上する傾向にあった。
表6はMとして2種類の元素を用いた実施例を記載したものである。
Mの種類を変化させても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。特にNb,HfおよびZrから2種類の元素を選択して用いた場合に飽和磁束密度が向上する傾向にあった。
表7はMとして3種類の元素を用いた実施例および比較例を記載したものである。
Mの種類を変化させても各成分の含有量が所定の範囲内である実施例は酸化処理前の飽和磁束密度および保磁力が良好であった。さらに酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が小さかった。特にNb,HfおよびZrから2種類以上の元素を選択して用い、M全体に占めるNb,HfおよびZrの割合が50at%を超えた場合に飽和磁束密度が向上する傾向にあった。
これに対し、a=0.029である比較例は、熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理前の薄帯が結晶相からなり、熱処理後の保磁力が著しく高くなった。さらに、酸化処理による飽和磁束密度の変化および保磁力の変化が大きくなった。また、a=0.160である比較例は、飽和磁束密度が低下し、酸化処理による保磁力の変化が大きくなった。
表8は実施例28についてFeの一部をX1および/またはX2で置換した実施例である。
Feの一部をX1および/またはX2で置換しても良好な特性を示した。
表9は実施例28についてロールの回転速度および/または熱処理温度を変化させることで初期微結晶の平均粒径およびFe基ナノ結晶合金の平均粒径を変化させた実施例である。
初期微結晶の平均粒径が0.3〜10nmであり、Fe基ナノ結晶合金の平均粒径が5〜30nmである場合には、上記の範囲を外れる場合と比較して良好な特性を示す傾向にあった。
Claims (14)
- 組成式((Fe(1−(α+β))X1αX2β)(1−(a+b+c))MaBbSic)1−dCdからなる軟磁性合金であって、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1種以上、
X2はAl,Mn,Ag,Zn,Sn,As,Sb,Bi,N,Oおよび希土類元素からなる群より選択される1種以上、
MはNb,Hf,Zr,Ta,Ti,Mo,WおよびVからなる群から選択される1種以上であり、
0.030≦a≦0.15
0.020<b≦0.20
0<c<0.050
0<d<0.030
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.50
であることを特徴とする軟磁性合金。 - 0.73≦1−(a+b+c)≦0.95である請求項1に記載の軟磁性合金。
- 0≦α{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.40である請求項1または2に記載の軟磁性合金。
- α=0である請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 0≦β{1−(a+b+c)}(1−d)≦0.030である請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性合金。
- β=0である請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性合金。
- α=β=0である請求項1〜6のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 非晶質および初期微結晶からなり、前記初期微結晶が前記非晶質中に存在するナノヘテロ構造を有する請求項1〜7のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 前記初期微結晶の平均粒径が0.3〜10nmである請求項8に記載の軟磁性合金。
- Fe基ナノ結晶からなる構造を有する請求項1〜7のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 前記Fe基ナノ結晶の平均粒径が5〜30nmである請求項10に記載の軟磁性合金。
- 薄帯形状である請求項1〜11のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 粉末形状である請求項1〜11のいずれかに記載の軟磁性合金。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の軟磁性合金からなる磁性部品。
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