JP2018204077A - 高靭性を有する鋼材、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】日本刀のような複合構造を利用して高強度と高靭性の両立が所望される棒形状を有する鋼材を提供すること。【解決手段】コア部として断面円形状を有する軟鋼よりなる棒鋼材を用い、クラッド部として断面円環状形状を有する工具鋼よりなる中空棒鋼材を用いたコアクラッド構造を有することにより、縦断面の平均ビッカース硬さが300以上の高強度である特徴を有すると同時に、三点曲げ試験において10mmの変位量を与えても破断しない高靭性を有する棒鋼【選択図】図1
Description
本発明は、高強度と高靭性の両立が所望される棒形状を有する鋼材に関するものである。
切削工具の素材には、摩耗性を確保するための高強度と、耐久性を確保するための良好な靭性を有することが望まれている。しかし、一般に高強度にすると靭性は低下することが知られており、高強度と高靭性の両立のために、成分元素の調整や製造プロセス条件の最適化など、種々の手段がこれまで考案されてきた。特に代表的なものとして、バナジウム(V)やタングステン(W)などを添加し、炭化物の高強度化を達成する高速度鋼がある。
また、特許文献1にて公表された技術では、硫黄(S)を積極的に利用し合金元素量の省資源化を達成しているが、それでも、高級元素であるモリブデン(Mo)を利用している。特許文献2では、ケイ素(Si)の積極利用を添加することにより熱間工具鋼に求められる靭性等の各種特性をバランス良く付与する合金成分が示されているが、合金成分の最適化という意味では、特許文献1と同様を手法である。これらの技術で用いられる合金元素の利用は製造コストの増大や添加原料入手の安定性などに問題を有する。そのため、添加元素を全く必要としない新しい高強度化・高靭化方法が望まれる。
当該課題の新しい解決法として、発明者は日本刀の構造に着目した。日本刀の作刀工程は特徴ある製鋼プロセスにより得られる原料鋼片を組み合わせ、折り返し鍛錬により高炭素鋼および低炭素鋼素材を得る。これに続く、造り込みと呼ばれるプロセスでは、それらを組み合わせて鍛接することにより刀身を製造する。組合せには種々の構造があるとされるが、その多くは心鉄に軟質な低炭素鋼を、表面部の皮鉄には高炭素鋼を配置する構造を有している。結果として得られた刀身は複合構造を有し、優れた靭性を有している。
本発明は、日本刀のような複合構造を工具素材としての棒鋼に付与して、高強度と高靭性の両者を向上させるものである。
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、日本刀のような複合構造を利用して高強度と高靭性の両立が所望される棒形状を有する鋼材を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、この課題を解決できることを見出した。その具体的手段は以下の通りである。
[1] コア部として断面円形状を有する軟鋼よりなる棒鋼材を用い、クラッド部として断面円環状形状を有する工具鋼よりなる中空棒鋼材を用いたコアクラッド構造を有することにより、縦断面の平均ビッカース硬さが300以上の高強度である特徴を有すると同時に、三点曲げ試験において10mmの変位量を与えても破断しない高靭性を有する棒鋼。
[1] コア部として断面円形状を有する軟鋼よりなる棒鋼材を用い、クラッド部として断面円環状形状を有する工具鋼よりなる中空棒鋼材を用いたコアクラッド構造を有することにより、縦断面の平均ビッカース硬さが300以上の高強度である特徴を有すると同時に、三点曲げ試験において10mmの変位量を与えても破断しない高靭性を有する棒鋼。
[2] コア部に用いる軟鋼として、JIS−G3101により定義される一般構造用圧延鋼材、またはJIS−G3106により定義される溶接構造用圧延鋼材、またはJIS−G4051により定義される機械構造用炭素鋼鋼材を用いる[1]に記載する棒鋼。
JIS−G3101により定義される一般構造用圧延鋼材としては、例えば、SS540があり、その元素組成は、C:0.30%以下、Mn:1.60%以下、P:0.040%以下、S:0.040%以下となっている。
JIS−G3106により定義される溶接構造用圧延鋼材としては、例えば、SM490Aがあり、その元素組成は、C:0.25%以下、Si:0.55%以下、Mn:1.65%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下となっている。
JIS−G4051により定義される機械構造用炭素鋼鋼材としては、例えば、S10C−S55Cがあり、その元素組成は、C:0.08〜0.61%以下、Si:0.10〜0.35%以下、Mn:1.65%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Cu:0.30%以下となっている。
JIS−G3101により定義される一般構造用圧延鋼材としては、例えば、SS540があり、その元素組成は、C:0.30%以下、Mn:1.60%以下、P:0.040%以下、S:0.040%以下となっている。
JIS−G3106により定義される溶接構造用圧延鋼材としては、例えば、SM490Aがあり、その元素組成は、C:0.25%以下、Si:0.55%以下、Mn:1.65%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下となっている。
JIS−G4051により定義される機械構造用炭素鋼鋼材としては、例えば、S10C−S55Cがあり、その元素組成は、C:0.08〜0.61%以下、Si:0.10〜0.35%以下、Mn:1.65%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Ni:0.20%以下、Cr:0.20%以下、Cu:0.30%以下となっている。
[3] クラッド部に用いる工具鋼として、JIS−G4401により定義される炭素工具鋼鋼材、またはJIS−G4403により定義される高速度工具鋼鋼材、またはJIS−G4404により定義される合金工具鋼鋼材を用いる[1]に記載する棒鋼。
JIS−G4401により定義される炭素工具鋼鋼材としては、SK140−SK60があり、その元素組成は、C:0.55〜1.50%以下、Si:0.10〜0.35%以下、Mn:0.10〜0.50%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:0.25%以下、Cr:0.30%以下、Cu:0.25%以下となっている。
JIS−G4401により定義される炭素工具鋼鋼材としては、SK140−SK60があり、その元素組成は、C:0.55〜1.50%以下、Si:0.10〜0.35%以下、Mn:0.10〜0.50%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:0.25%以下、Cr:0.30%以下、Cu:0.25%以下となっている。
JIS−G4403により定義される高速度工具鋼鋼材としては、SKH2−SKH10(タングステン系高速度工具鋼)があり、その元素組成は、C:0.73〜1.60%以下、Si:0.45%以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.80〜4.50%以下、W:11.50〜18.70%以下、V:1.00〜5.20%以下、Cu:0.25%以下となっている。
JIS−G4403により定義される第2の高速度工具鋼鋼材としては、SKH40、SKH55−SKH59(モリブデン系高速度工具鋼)があり、その元素組成は、C:0.77〜1.35%以下、Si:0.70%以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.50〜4.50%以下、Mo:3.20〜10.00%以下、W:1.40〜10.00%以下、V:0.90〜3.50%以下、Co:4.50〜10.50%以下、Cu:0.25%以下、Mo+W:10.6〜13.90%以下となっている。
JIS−G4403により定義される第3の高速度工具鋼鋼材としては、SKH50−SKH54(モリブデン系高速度工具鋼)があり、その元素組成は、C:0.77〜1.40%以下、Si:0.45%以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.50〜4.50%以下、Mo:4.70〜9.00%以下、W:1.40〜6.70%以下、V:1.00〜4.20%以下、Cu:0.25%以下、Mo+W:9.40〜11.00%以下となっている。
JIS−G4403により定義される第2の高速度工具鋼鋼材としては、SKH40、SKH55−SKH59(モリブデン系高速度工具鋼)があり、その元素組成は、C:0.77〜1.35%以下、Si:0.70%以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.50〜4.50%以下、Mo:3.20〜10.00%以下、W:1.40〜10.00%以下、V:0.90〜3.50%以下、Co:4.50〜10.50%以下、Cu:0.25%以下、Mo+W:10.6〜13.90%以下となっている。
JIS−G4403により定義される第3の高速度工具鋼鋼材としては、SKH50−SKH54(モリブデン系高速度工具鋼)があり、その元素組成は、C:0.77〜1.40%以下、Si:0.45%以下、Mn:0.45%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:3.50〜4.50%以下、Mo:4.70〜9.00%以下、W:1.40〜6.70%以下、V:1.00〜4.20%以下、Cu:0.25%以下、Mo+W:9.40〜11.00%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第1の合金工具鋼鋼材としては、SKS(切削工具鋼用)があり、その元素組成は、C:0.75〜1.50%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.50%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:2.00%以下、Cr:0.20〜1.50%以下、W:4.00%以下、V:0.30%以下、Cu:0.25%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第2の合金工具鋼鋼材としては、SKS(耐衝撃工具鋼用)があり、その元素組成は、C:0.45〜1.10%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.50%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.50%以下、W:3.50%以下、V:0.25%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.25%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第3の合金工具鋼鋼材としては、SKS(冷間金型用)があり、その元素組成は、C:0.80〜1.10%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.80〜1.20%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.20〜1.20%以下、W:1.50%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第2の合金工具鋼鋼材としては、SKS(耐衝撃工具鋼用)があり、その元素組成は、C:0.45〜1.10%以下、Si:0.35%以下、Mn:0.50%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.50%以下、W:3.50%以下、V:0.25%以下、Cu:0.25%以下、Ni:0.25%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第3の合金工具鋼鋼材としては、SKS(冷間金型用)があり、その元素組成は、C:0.80〜1.10%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.80〜1.20%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.20〜1.20%以下、W:1.50%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第4の合金工具鋼鋼材としては、SKD(クロム系冷間金型用)があり、その元素組成は、C:1.40〜2.30%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:11.00〜13.00%以下、Mo:0.70〜1.20%以下、W:0.80%以下、V:1.00%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第5の合金工具鋼鋼材としては、SKD(タングステン系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.25〜0.45%以下、Si:1.20%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.00〜5.50%以下、W:5.00〜9.50%以下、V:0.30〜0.50%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第6の合金工具鋼鋼材としては、SKD(モリブデン系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.25〜0.45%以下、Si:1.20%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.70〜5.50%以下、Mo:1.00〜3.00%以下、V:0.2〜1.15%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第7の合金工具鋼鋼材としては、SKT(ニッケル系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.40〜0.60%以下、Si:0.40%以下、Mn:0.20〜1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Ni:0.25〜4.30%以下、Cr:0.90〜1.50%以下、Mo:0.15〜0.55%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第5の合金工具鋼鋼材としては、SKD(タングステン系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.25〜0.45%以下、Si:1.20%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.00〜5.50%以下、W:5.00〜9.50%以下、V:0.30〜0.50%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第6の合金工具鋼鋼材としては、SKD(モリブデン系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.25〜0.45%以下、Si:1.20%以下、Mn:0.60%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:2.70〜5.50%以下、Mo:1.00〜3.00%以下、V:0.2〜1.15%以下となっている。
JIS−G4404により定義される第7の合金工具鋼鋼材としては、SKT(ニッケル系熱間金型用)があり、その元素組成は、C:0.40〜0.60%以下、Si:0.40%以下、Mn:0.20〜1.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Ni:0.25〜4.30%以下、Cr:0.90〜1.50%以下、Mo:0.15〜0.55%以下となっている。
[4] コア部に軟鋼を有し、クラッド部に工具鋼を有するコアクラッド構造を持つように組み立てられたコアクラッド鋼用前駆体に対して、溝ロール圧延加工などによる塑性加工を施してコア部とクラッド部を一体化した、[1]に記載する棒鋼。
[5] [1]に記載する棒鋼を得るために、コア部に軟鋼を有し、クラッド部に工具鋼を有するコアクラッド構造を持つように組み立てられたコアクラッド鋼用前駆体。
[5] [1]に記載する棒鋼を得るために、コア部に軟鋼を有し、クラッド部に工具鋼を有するコアクラッド構造を持つように組み立てられたコアクラッド鋼用前駆体。
[6] 軸芯部に装着される軟鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管と、を有する軟芯材を準備し、
工具鋼のオーステナイト域の再結晶温度又は軟鋼のオーステナイト域の再結晶温度の何れか高い方の再結晶温度よりも高い温度に加熱して、減面率が50%以上の熱間加工を実施し、
熱間加工後に、水冷又は空冷を施し、
工具鋼のフェライト域の再結晶温度又は軟鋼のフェライト域の再結晶温度の何れか低い方の再結晶温度よりも低い温度(例えば300℃から850℃)に加熱して、減面率が50%以上の温間加工を実施して得られることを特徴とする高靭性を有する鋼材の製造方法。
[7] 前記熱間加工及び温間加工は、溝ロール圧延加工であることを特徴とする[6]記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
[8] 前記熱間加工の温度は900℃以上1200℃以下の範囲であり、
前記熱間加工の温度は300℃以上850℃以下の範囲であることを特徴とする[6]又は[7]記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
工具鋼のオーステナイト域の再結晶温度又は軟鋼のオーステナイト域の再結晶温度の何れか高い方の再結晶温度よりも高い温度に加熱して、減面率が50%以上の熱間加工を実施し、
熱間加工後に、水冷又は空冷を施し、
工具鋼のフェライト域の再結晶温度又は軟鋼のフェライト域の再結晶温度の何れか低い方の再結晶温度よりも低い温度(例えば300℃から850℃)に加熱して、減面率が50%以上の温間加工を実施して得られることを特徴とする高靭性を有する鋼材の製造方法。
[7] 前記熱間加工及び温間加工は、溝ロール圧延加工であることを特徴とする[6]記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
[8] 前記熱間加工の温度は900℃以上1200℃以下の範囲であり、
前記熱間加工の温度は300℃以上850℃以下の範囲であることを特徴とする[6]又は[7]記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
本発明者らは、工具鋼棒の軸中心部の円筒状領域を軟鋼に置き換えて得られるコアクラッド構造により、高強度と高靭性の両立が達成できることを見出した。すなわち、本発明で得られる棒鋼は表層部に工具鋼を有しているため、工具に必要な高強度を取り得る。また、棒鋼の内部(コア部)に高靭性を有する軟鋼を有することにより、棒鋼に高靭性を付与することができる。
以下、本発明の実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
以下では、本発明の棒鋼をコアクラッド鋼と称することとする。コア部に用いる軟鋼としては、0.10%C鋼(0.10%C−0.3%Si−1.5%Mn)鋼を用いた。コア部は、軸芯部ともいう。クラッド部に用いる工具鋼として、JIS−SK105炭素工具鋼(1.05質量%C−0.3%Si−1.0%Mn−Fe)を用いた。クラッド部は、軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管ともいう。
以下では、本発明の棒鋼をコアクラッド鋼と称することとする。コア部に用いる軟鋼としては、0.10%C鋼(0.10%C−0.3%Si−1.5%Mn)鋼を用いた。コア部は、軸芯部ともいう。クラッド部に用いる工具鋼として、JIS−SK105炭素工具鋼(1.05質量%C−0.3%Si−1.0%Mn−Fe)を用いた。クラッド部は、軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管ともいう。
炭素(C):炭素は鋼材の硬さを決める。往々にして硬さと粘り強さ(折れにくさ)は反比例する。炭素の量によって、鋼の区分が変わり、軟鋼や硬鋼などの別がある。コア部に用いる軟鋼であれば、Cは軟化抵抗を上げるのに有効な元素である。その量が0.05%未満であるとその効果が無い。また0.4%を越えると、靱性低下を引き起こす。そこでC量の範囲を0.05〜0.4%とした。
Cは焼入れによって生じるマルテンサイト組織やベイナイト組織の硬さを高めるために必須の元素である。但し添加量が過剰になると、炭化物形成元素(例えば、Cr、Mo、W、V)を含有している場合には、炭化物形成元素と結合して、粗大な晶出炭化物の量や微細な析出炭化物の量が増加し、炭化物起因によって特性(衝撃値や疲労強度)が低下する。そこで、クラッド部に用いる工具鋼であれば、0.55%〜1.50%がよい。
Cは焼入れによって生じるマルテンサイト組織やベイナイト組織の硬さを高めるために必須の元素である。但し添加量が過剰になると、炭化物形成元素(例えば、Cr、Mo、W、V)を含有している場合には、炭化物形成元素と結合して、粗大な晶出炭化物の量や微細な析出炭化物の量が増加し、炭化物起因によって特性(衝撃値や疲労強度)が低下する。そこで、クラッド部に用いる工具鋼であれば、0.55%〜1.50%がよい。
マンガン(Mn):Mnは焼き入れ性の改善に有効な元素である。その量が0.10%未満であると、その効果がなく、また1.65%を越えるとMnが偏析し、靱性や高温強度を低下させる。そこでMn量を、コア部に用いる軟鋼であれば、靱性が問題とならないことから、1.65%以下とした。クラッド部に用いる工具鋼であれば、焼き戻し脆化の関係もあり0.10〜0.50%以下がよい。
リン(P):リンは不純物として含まれ、靱性低下を防止するために、0.040%以下に制限する。リンは、氷点下になると鉄鋼材料が本来の強度よりも弱い力で破壊されてしまう「低温脆性」に寄与する有害元素の一つと考えられている。またリンを多く含有していると溶接性にも悪影響を及ぼす。コア部に用いる軟鋼であれば0.040%以下がよい。クラッド部に用いる工具鋼であれば0.030%以下がよい。
硫黄(S):硫黄は不純物として鉄鋼に含まれ、硫黄の含有量によっては、高温環境、例えば900℃以上で用いる場合などでは強度が脆くなることが知られている。そこで、コア部に用いる軟鋼であれば0.040%以下がよい。クラッド部に用いる工具鋼であれば0.030%以下がよい。
ケイ素(Si):ケイ素が鉄鋼に含まれる場合、降伏点(耐力)と引張強さに影響する。コア部に用いる軟鋼としては、任意的組成物としてSi:0.30%以下でよい。0.30%を超えると、鉄鋼の材質が脆くなる。クラッド部に用いる工具鋼であれば、Si添加により焼き入れ性の確保と強度の安定確保の効果が得られるが、0.45%以上になるとその効果は小さく、いたずらにコスト増を招く。このためクラッド部におけるSi含有量は0.45%以下がよい。
次に、クラッド部に用いる工具鋼に添加される任意的組成元素として、Cr、Mo、W、V、Co、Niについて説明する。これらは、いずれも高級元素であり、少ないほうが商業的には望まれる。本発明のコアクラッド構造にすることにより、合金元素の添加に依ることなく靭性を付与できるため、クラッド鋼に合金工具鋼を用いるとしても、通常用いられている量よりも少なくて済む。そこで、合金工具鋼に含まれる任意的組成元素の上限値に関しては、JISのような規格値の上限値に依拠するが、下限値に関してはJISのような規格値の下限値に満たなくても良い。
クロム(Cr):Crは材料中に固溶し、マルテンサイト組織やベイナイト組織の硬さを向上させるととともに、焼戻しによって微細な析出炭化物を生じるため、焼戻し温度に依存して硬さ向上の効果が得られる。一方添加しすぎれば晶出炭化物となり、材料中に固溶できないCrが増加し、硬さに寄与しなくなるのと同時に、晶出炭化物の増加が衝撃値や疲労強度を低下させる。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Crを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、Cr量を4.50%以下に規定した。
クロム(Cr):Crは材料中に固溶し、マルテンサイト組織やベイナイト組織の硬さを向上させるととともに、焼戻しによって微細な析出炭化物を生じるため、焼戻し温度に依存して硬さ向上の効果が得られる。一方添加しすぎれば晶出炭化物となり、材料中に固溶できないCrが増加し、硬さに寄与しなくなるのと同時に、晶出炭化物の増加が衝撃値や疲労強度を低下させる。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Crを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、Cr量を4.50%以下に規定した。
モリブデン(Mo):Moは、(焼戻し)軟化抵抗を高めるために、合金工具鋼では必要により少なくとも一種添加される。ただし、Mo:3%超〜10%添加する場合には、Wを添加するとよく、またCrやCoと金属間化合物を形成させて軟化抵抗をさらに高める場合には、後述するように、Moは3%超〜10%とさらに多量の添加を必要とする。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Moを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、Mo量を10%以下に規定した。
タングステン(W):WもMoと同様に軟化抵抗の上昇に有効な元素である。しかし10%を越えると炭化物を形成し靱性を低下させるため、W量の上限値を10%とした。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Wを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、W量を18.70%以下に規定した。MoおよびWは、焼入性を高めるとともに、焼戻しにより微細炭化物を析出させて強度を付与し、軟化抵抗を向上させるために単独または複合で添加できる。WはMoの約2倍の原子量であることからMo+1/2Wで規定することができる(当然、いずれか一方のみの添加としても良いし、双方を共添加することもできる)。
バナジウム(V):Vは軟化抵抗の上昇に必要な元素である。その量が3.50%を越えるとMo、Wと同様に炭化物を形成し靱性低下を招く。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Vを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、V量は3.50%以下に規定した。
コバルト(Co):Coは軟化抵抗を上げる(Mo)−Cr−Coの金属間化合物の生成に必要な元素であり、所望により添加される。しかし1%未満ではその効果がなく、10.50%を越えると炭化物を形成し靱性を低下させる。このためクラッド部に用いる工具鋼では、Coを任意的組成元素として含有する高速度工具鋼に準拠して、Co量を10.50%以下に規定した。
銅(Cu):Cuは、不可避的不純物として、残留する可能性のある元素である。本発明の作用効果を最大限に達成するためには、Cuや他の不可避的不純物(P、S、Al、Ca、Mg、O、N等)はできるだけ低い方が望ましいが、一方では、介在物の形態制御や、リサイクル鋼のように原材料にCuを含有する場合にも対処して製造効率を向上させる等の作用効果を得る目的のもとでは、多少の含有が許容されるし、また添加することもできる。
ニッケル(Ni):Niは焼入性を高め、組織を微細化する元素である。但しNi元素は高価であり、製造コストの観点から添加量を定める。Mn添加だけでは組織の微細化効果が小さかった場合や、製造上の成分配合を考慮した場合などでは、NiをMnの代替として使用できる。そこで、Ni量を4.30%以下に規定した。
表1に示す各実施例および比較例について、棒鋼を試作し、光学顕微鏡観察、ビッカース硬さ試験および3点曲げ試験による評価を行った。
<コアクラッド鋼圧延材の作製>
コアクラッド鋼については、軸芯部に装着される軟鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管と、を有する軟芯材と、軸芯部に装着される工具鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される軟鋼円管と、を有する軟芯材硬芯材の二種類を作成した。軟芯材については、直径20mm×長さ100mmの軟鋼丸棒を、直径40mm×内径20mm×長さ100mmの工具鋼円管にはめ込こんで素材を組み立てた。軟芯材と逆の構成を有する硬芯材については、軸中心部の工具鋼径を12mm、17mmおよび20mmとなるよう組み立てた三種類の素材を準備した。
コアクラッド鋼については、軸芯部に装着される軟鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管と、を有する軟芯材と、軸芯部に装着される工具鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される軟鋼円管と、を有する軟芯材硬芯材の二種類を作成した。軟芯材については、直径20mm×長さ100mmの軟鋼丸棒を、直径40mm×内径20mm×長さ100mmの工具鋼円管にはめ込こんで素材を組み立てた。軟芯材と逆の構成を有する硬芯材については、軸中心部の工具鋼径を12mm、17mmおよび20mmとなるよう組み立てた三種類の素材を準備した。
これらに対して、1000℃に設定された電気炉中で30分間保持加熱し、その後ただちに溝ロール圧延加工を実施し、断面形状が32mm角となるまで加工した。加工後は、水冷あるいは空冷を施した。その後、さらに500℃に設定された電気炉内で30分間保持後、ただちに溝ロール圧延加工を施し、断面形状が14mm角となるよう変形させた。
<コアクラッド鋼焼戻材の作製>
前記の圧延により得たコアクラッド鋼および前記と同じ方法にて1000℃に加熱後、溝ロール圧延により14mm角材に加工し、その後に空冷した棒鋼(比較例7)に対して、850℃に設定された電気炉中で30分間保持後水冷して焼入を施したのち、300℃または500℃に設定された電気炉中で30分間保持後空冷することにより焼戻しを施した。
前記の圧延により得たコアクラッド鋼および前記と同じ方法にて1000℃に加熱後、溝ロール圧延により14mm角材に加工し、その後に空冷した棒鋼(比較例7)に対して、850℃に設定された電気炉中で30分間保持後水冷して焼入を施したのち、300℃または500℃に設定された電気炉中で30分間保持後空冷することにより焼戻しを施した。
<工具鋼の焼入焼戻材の作製>
比較材として、コアクラッド鋼の素材として用いたものと同じ工具鋼に対して、各種条件で焼入焼戻処理を行った。工具鋼をフライス加工により14mm角×55mm長さに加工したのちに、850℃に設定された電気炉中で30分間保持後油冷して焼入を施した。なお、予備実験として水冷も試みたが、焼き割れが生じてしまい健全な棒鋼が得られなかった。得られた焼入材に対して、300℃から700℃までの各種温度に設定された電気炉中で30分間保持後空冷することにより焼戻しを施した。
比較材として、コアクラッド鋼の素材として用いたものと同じ工具鋼に対して、各種条件で焼入焼戻処理を行った。工具鋼をフライス加工により14mm角×55mm長さに加工したのちに、850℃に設定された電気炉中で30分間保持後油冷して焼入を施した。なお、予備実験として水冷も試みたが、焼き割れが生じてしまい健全な棒鋼が得られなかった。得られた焼入材に対して、300℃から700℃までの各種温度に設定された電気炉中で30分間保持後空冷することにより焼戻しを施した。
<硬さ試験>
得られた棒鋼に対して、長手方向を法線方向とする面に平行に切断し、機械研磨により鏡面とした断面に対して、辺の中心から面中心を通る線にそって、ビッカース硬さ試験を行った。圧痕は5gfで15秒間押し込み、測定ピッチは0.5mmとした。平均硬さは、中心部側の10mmの範囲(曲げ試験片の大きさ)で得られた測定結果を総和平均することにより求めた。
得られた棒鋼に対して、長手方向を法線方向とする面に平行に切断し、機械研磨により鏡面とした断面に対して、辺の中心から面中心を通る線にそって、ビッカース硬さ試験を行った。圧痕は5gfで15秒間押し込み、測定ピッチは0.5mmとした。平均硬さは、中心部側の10mmの範囲(曲げ試験片の大きさ)で得られた測定結果を総和平均することにより求めた。
<光学顕微鏡組織観察>
硬さ試験で用いたもとの同じ鏡面試料に対して、3体積%硝酸+97%エタノール混合液を用いてエッチンクを施し、現出させた組織を光学顕微鏡で観察した。コアクラッド構造を有する棒鋼については、得られた画像より中心部(コア部)が次項で述べる曲げ試験片の断面に占める割合(コア率)を測定した。
硬さ試験で用いたもとの同じ鏡面試料に対して、3体積%硝酸+97%エタノール混合液を用いてエッチンクを施し、現出させた組織を光学顕微鏡で観察した。コアクラッド構造を有する棒鋼については、得られた画像より中心部(コア部)が次項で述べる曲げ試験片の断面に占める割合(コア率)を測定した。
<3点曲げ試験>
前述の方法にて得られた棒鋼に対して、切削加工により10mm角(誤差±0.1mm)×長さ55mmの角材を作製し、JIS−Z2248に定められた方法に従って室温にて3点曲げ試験を行った。支持部間隔は40mmとし、直径10mmの丸棒鋼で両端支持し、試験片長手方向中心に対して、直径12mmの丸面を有する鋼板を押し当てストローク速さ0.5mm/minにて負荷を与えた。試験片が破断しない限り、最大変位10mmまで負荷を与えた。
前述の方法にて得られた棒鋼に対して、切削加工により10mm角(誤差±0.1mm)×長さ55mmの角材を作製し、JIS−Z2248に定められた方法に従って室温にて3点曲げ試験を行った。支持部間隔は40mmとし、直径10mmの丸棒鋼で両端支持し、試験片長手方向中心に対して、直径12mmの丸面を有する鋼板を押し当てストローク速さ0.5mm/minにて負荷を与えた。試験片が破断しない限り、最大変位10mmまで負荷を与えた。
曲げ試験により得られる荷重-変位曲線より、降伏荷重(荷重と変位の比例関係が終了し、塑性変形量が0.2mm生じたところでの荷重)、最大荷重および荷重―変位曲線を積分して得られる吸収エネルギーを評価した。
図1は、溝ロール圧延により得られたコアクラッド構造を有する鋼棒の断面の光学顕微鏡組織を示している。圧延加工によりコア部と残部(クラッド部)が一体化していることがわかる。また、コア部の断面はおおむね円形形状をしていた。硬芯材の場合はコア部が、軟芯材の場合はクラッド部が、比較的黒くエッチングされている。これは工具鋼により形成される部分において、マルテンサイト変態により導入された結晶格子欠陥や析出した炭化物が、軟鋼部よりも数多く存在していることを意味している。また、コア部の面積率(コア率)は圧延前の素材の組み合わせの比率とほぼ同じ割合を示していた。
図2は、図1に示した棒鋼の横断面の硬さ分布を示している。いずれの場合も工具鋼で構成される部分が概ね450Hvの硬さを有し、軟鋼部が250Hvの硬さを有していた。ここで、ピッカース硬さHVと引張強度TS(MPa)との間には、以下の関係式があることが知られている(SAEJ417硬さ換算表参照)。
TS(MPa)=3.12xHV+16 (1)
そこで、450Hvは1420MPa、250Hvは796MPaに相当している。
TS(MPa)=3.12xHV+16 (1)
そこで、450Hvは1420MPa、250Hvは796MPaに相当している。
図3は、図1で示した棒鋼の曲げ試験を行った結果得られた荷重-変位曲線である。参考のため、コアクラッド鋼の部品素材として用いて軟鋼に対して、500℃にて溝ロール圧延を施して得られた14mm角棒鋼(0.1%C鋼)、および工具鋼に対して1000℃にて溝ロール圧延を施し、その後空冷して得られた14mm角棒鋼(SK105圧延材)の荷重−変位曲線も破線で併せて示している。0.1%C鋼では低い荷重で変形し続けており、SK105圧延材は大きな荷重を示すものの4.6mmの変位を与えた時点で破断してしまう。一方で、コアクラッド構造を有する鋼は、SK105圧延材と同様に、大きな荷重で変形し、一度荷重低下を伴うものの、さらに変形し続け、10mmの変位を与えても破断しなかった。
図4はコアクラッド構造を有する鋼に対して、曲げ試験により10mmの変位を与えた後の試験片形状を示している。硬芯材(b)はコア部の工具鋼が全面で脆性的に破断しているが、クラッド部の軟鋼が一部破断せずに連結を保っている。一方で、軟芯材(c)の場合、コア部の軟鋼がクラッド部から剥離して分離し大きく塑性変形しており、なおかつクラッド部も一部破断していない。SK105圧延材(d)は3点曲げ試験中に破断する。このように、コア部に軟鋼を配置することにより、特に大きな塑性変形が可能となり、その結果として、表1に示すように大きな吸収エネルギーを得ることが可能となることが明らかとなった。
図5は実施例1および比較例1に対して、前述の焼入焼戻材の作製手順に従って得られた焼戻材の硬さ分布を示している。圧延後の付加的な熱処理により、工具鋼部分では、650Hv〜700Hv(300℃焼戻)または450Hv(500℃焼戻)程度の高い硬さを実現できることが明らかとなった。
図6に得られた焼戻し材の荷重―変位曲線を示している。軟芯材において初期に大きな荷重が得られ、かつ10mmの変位を与えても破断しないことが明らかとなった。軟芯材の初期の大きな荷重は、曲げ試験において初期に塑性変形が開始するのは表面近傍であるためである。この大きな荷重も、表1に示す大きな吸収エネルギーの主因の一つとなっている。
比較材として作製した工具鋼焼戻材の平均硬さを図7に、荷重―変位曲線を図8に示している。工具鋼単体の曲げ試験では、いずれも10mmの変位を与える前に破断してしまう。
図9に圧延材、コアクラッド鋼の焼戻材および工具鋼焼戻材の降伏開始荷重と吸収エネルギーの関係を示している。参考のため、グラブの上軸には、材料力学の理論を用いて、降伏開始荷重を曲げ降伏応力に換算した値も示している。降伏開始荷重と吸収エネルギーはそれぞれ、強度と靭性を示す値であり、図中の右上にデータ点が位置するほど、すなわち、降伏開始荷重と吸収エネルギーとの積が大きいほど、強度と靭性がともに優れていることになる。硬芯材は、降伏開始荷重と吸収エネルギーとの積が6000kN・Jから8000kN・Jの間を示しており、その値は工具鋼焼戻材と大きな差はない。一方で、軟芯材は最も低いものでも約8000kN・Jの値を示しており、いずれも工具鋼焼戻材よりも優れた特性を有していることが見出された。
以上の結果、コア部に軟鋼を配置し、クラッド部に工具鋼を配置するコアクラッド鋼が高強度と高靭性の両立を図る有効な手段であることが示された。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
Claims (8)
- コア部として断面円形状を有する軟鋼よりなる棒鋼材を用い、クラッド部として断面円環状形状を有する工具鋼よりなる中空棒鋼材を用いたコアクラッド構造を有することにより、縦断面の平均ビッカース硬さが300以上の高強度である特徴を有すると同時に、三点曲げ試験において10mmの変位量を与えても破断しない高靭性を有する棒鋼。
- 前記棒鋼において、コア部に用いる軟鋼として、JIS−G3101により定義される一般構造用圧延鋼材、またはJIS−G3106により定義される溶接構造用圧延鋼材、またはJIS−G4051により定義される機械構造用炭素鋼鋼材を用いる請求項1に記載する棒鋼。
- 前記棒鋼において、クラッド部に用いる工具鋼として、JIS−G4401により定義される炭素工具鋼鋼材、またはJIS−G4403により定義される高速度工具鋼鋼材、またはJIS−G4404により定義される合金工具鋼鋼材を用いる請求項1に記載する棒鋼。
- コア部に軟鋼を有し、クラッド部に工具鋼を有するコアクラッド構造を持つように組み立てられたコアクラッド鋼用前駆体に対して、溝ロール圧延加工などによる塑性加工を施してコア部とクラッド部を一体化した、請求項1に記載する棒鋼
- 請求項1に記載する棒鋼を得るために、コア部に軟鋼を有し、クラッド部に工具鋼を有するコアクラッド構造を持つように組み立てられたコアクラッド鋼用前駆体。
- 軸芯部に装着される軟鋼丸棒と、この軸芯部の周縁部に装着される工具鋼円管と、を有する軟芯材を準備し、
工具鋼のオーステナイト域の再結晶温度又は軟鋼のオーステナイト域の再結晶温度の何れか高い方の再結晶温度よりも高い温度に加熱して、減面率が50%以上の熱間加工を実施し、
熱間加工後に、水冷又は空冷を施し、
工具鋼のフェライト域の再結晶温度又は軟鋼のフェライト域の再結晶温度の何れか低い方の再結晶温度よりも低い温度(例えば300℃から850℃)に加熱して、減面率が50%以上の温間加工を実施して得られることを特徴とする高靭性を有する鋼材の製造方法。 - 前記熱間加工及び温間加工は、溝ロール圧延加工であることを特徴とする請求項6記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
- 前記熱間加工の温度は900℃以上1200℃以下の範囲であり、
前記熱間加工の温度は300℃以上850℃以下の範囲であることを特徴とする請求項6又は7記載の高靭性を有する鋼材の製造方法。
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JP2017112147A JP2018204077A (ja) | 2017-06-07 | 2017-06-07 | 高靭性を有する鋼材、及びその製造方法 |
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JP2019026881A (ja) * | 2017-07-28 | 2019-02-21 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼部材 |
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- 2017-06-07 JP JP2017112147A patent/JP2018204077A/ja active Pending
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