JP2018203870A - ビニルアルコール系重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い架橋反応性を有する新規な分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有するビニルアルコール系重合体及びその製造方法の提供。【解決手段】多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によって得られる、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体に、水と接触させて両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体を得た後、けん化することで得られるビニルアルコール系重合体の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、新規なビニルアルコール系重合体及びその製造方法に関する。
ビニルアルコール系重合体は、水素結合に起因して優れた強度特性やバリア特性を有することから、紙加工、繊維加工、バリア材やエマルジョン用の安定剤などに利用されている。特に反応性基を有するビニルアルコール系重合体は、その高い親水性という特長を生かしながら、自己架橋による高分子量化に起因する優れた機械物性や、他ポリマーとの架橋反応性などを利用した種々の用途展開が期待される。
中でも特に分子鎖の末端に反応性基を有するビニルアルコール系重合体は、分子運動性の高い末端に反応性基が導入されていることから優れた反応性が期待され、分子鎖の両末端又は片末端に反応性基を有する、種々のビニルアルコール系重合体が提案されている。
特許文献1には、分子鎖の両末端に水酸基又はカルボキシル基を有するビニルエステルオリゴマーが記載されている。非特許文献1には、分子鎖の片末端に反応性の高いアルデヒド基を導入したポリビニルアセテートが記載され、ビニルエステル系重合体の停止末端にアルデヒド基を効率良く導入する方法が例示されている。
Macromolecules 2003,36,9346−9354
しかしながら、特許文献1のビニルエステルオリゴマーは架橋反応性を有するものの、当該文献の実施例で記載されているように、架橋反応に多官能イソシアネート化合物や多官能アジリジン化合物など、水酸基又はカルボキシル基との反応性を有する架橋剤を併用しなければならない問題を抱えていた。また、非特許文献1の技術では、片末端のみにアルデヒド基が導入されるため、両末端に反応性基を有する特長を得ることができない。そこで、優れた架橋効果を得るため、両末端に反応性基が導入されたビニルアルコール系重合体が求められている。
本発明は、高い架橋反応性を有する新規なビニルアルコール系重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、高い架橋反応性を有する新規なビニルアルコール系重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有するビニルアルコール系重合体により、上記課題を解決し得ることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記[1]〜[8]に関する。
[1] 分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有する、ビニルアルコール系重合体。
[2] 分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.90である、前記[1]のビニルアルコール系重合体。
[3] 数平均分子量が500〜440,000である、前記[1]又は[2]のビニルアルコール系重合体。
[4] 全構造単位に対するアルデヒド基又はそのアセタール化体の含有量が0.4〜5.0mol%である、前記[1]〜[3]のいずれかのビニルアルコール系重合体。
[5] けん化度が50mol%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかのビニルアルコール系重合体。
[6] 多官能ヨウ素化合物の存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合する工程を含む、前記[1]〜[5]のいずれかのビニルアルコール系共重合体の製造方法。
[7] 下記工程1〜3を有する、前記[6]のビニルアルコール系重合体の製造方法。
工程1:ラジカル重合開始剤及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)を得る工程
工程2:工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)を得る工程
工程3:工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記ビニルアルコール系重合体を得る工程
[8] 前記多官能ヨウ素化合物が、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジエチル、2,2−ジヨード酢酸メチル及び2,2−ジヨードアセトニトリルからなる群より選択される1種以上である、前記[6]又は[7]のビニルアルコール系重合体の製造方法。
[1] 分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有する、ビニルアルコール系重合体。
[2] 分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.90である、前記[1]のビニルアルコール系重合体。
[3] 数平均分子量が500〜440,000である、前記[1]又は[2]のビニルアルコール系重合体。
[4] 全構造単位に対するアルデヒド基又はそのアセタール化体の含有量が0.4〜5.0mol%である、前記[1]〜[3]のいずれかのビニルアルコール系重合体。
[5] けん化度が50mol%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかのビニルアルコール系重合体。
[6] 多官能ヨウ素化合物の存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合する工程を含む、前記[1]〜[5]のいずれかのビニルアルコール系共重合体の製造方法。
[7] 下記工程1〜3を有する、前記[6]のビニルアルコール系重合体の製造方法。
工程1:ラジカル重合開始剤及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)を得る工程
工程2:工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)を得る工程
工程3:工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記ビニルアルコール系重合体を得る工程
[8] 前記多官能ヨウ素化合物が、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジエチル、2,2−ジヨード酢酸メチル及び2,2−ジヨードアセトニトリルからなる群より選択される1種以上である、前記[6]又は[7]のビニルアルコール系重合体の製造方法。
本発明によれば、高い架橋反応性を有する新規なビニルアルコール系重合体及びその製造方法を提供できる。このような特長を生かして、本発明のビニルアルコール系重合体は、例えば架橋反応を必要とする様々な用途に好適に用いられる。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態又は実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
[ビニルアルコール系重合体]
本発明のビニルアルコール系重合体(以下、単に「PVA」とも称する)は、分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有する。なお、本発明においてアルデヒド基又はそのアセタール化体を単に「反応性基」とも称する。
本発明のPVAは、高い架橋反応性を有するという効果を奏する。このような効果が得られる理由として、反応性基が分子運動性の高い分子鎖の両末端に導入されていることで、効率的に架橋反応が起こり、高い架橋反応性を得ることが可能となると考えられる。
本発明のビニルアルコール系重合体(以下、単に「PVA」とも称する)は、分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有する。なお、本発明においてアルデヒド基又はそのアセタール化体を単に「反応性基」とも称する。
本発明のPVAは、高い架橋反応性を有するという効果を奏する。このような効果が得られる理由として、反応性基が分子運動性の高い分子鎖の両末端に導入されていることで、効率的に架橋反応が起こり、高い架橋反応性を得ることが可能となると考えられる。
本発明において「そのアセタール化体」とは、アルデヒド基がアセタール構造になったものを意味する。本発明のPVAに含まれるアルデヒド基のアセタール化体の構造は特に限定されず、例えばジメチルアセタール、ジエチルアセタール等の非環状アセタール;エチレングリコール、ピナコール等によりアセタール化された環状アセタールなどが挙げられる。中でも、被架橋物が水酸基を有する親水性高分子の場合、親水性高分子の水酸基との架橋反応性の観点から、ジメチルアセタール、ジエチルアセタールなどの非環状アセタールが好ましく、ジメチルアセタールがより好ましい。
本発明のPVAは、反応性基としてアルデヒド基又はそのアセタール化体を含有するが、架橋反応性の観点からアルデヒド基であることが好ましい。
本発明のPVAの全構造単位に対する反応性基の含有量は、必要な架橋反応性に応じて適宜設定できるが、0.1〜5.0mol%であることが好ましい。0.1mol%以上であると架橋反応性が向上し、5.0mol%以下であると製造が容易となる。当該観点から、より好ましくは0.4〜5.0mol%、さらに好ましくは0.5〜5.0mol%、よりさらに好ましくは0.6〜3.0mol%、特に好ましくは0.7〜2.0mol%、最も好ましくは1.0〜1.5mol%である。
前記アルデヒド基の含有量は、実施例に記載の方法に準じて1H−NMRから測定される。本発明のPVAを製造する際に後述の水素原子を有しない制御剤を用いた場合には、実施例に記載の方法に準じて13C−NMRから測定される。また、前記アルデヒド基のアセタール化体の含有量は、該アセタール化体をアルデヒド基に変換した後、前記アルデヒド基の含有量と同様の方法で測定できる。
例えば、本発明のPVAの製造においてビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用い、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを用いた場合は、下記式(1)に示す構造に基づいて以下のとおり算出する。
本発明のPVAの全構造単位に対する反応性基の含有量は、必要な架橋反応性に応じて適宜設定できるが、0.1〜5.0mol%であることが好ましい。0.1mol%以上であると架橋反応性が向上し、5.0mol%以下であると製造が容易となる。当該観点から、より好ましくは0.4〜5.0mol%、さらに好ましくは0.5〜5.0mol%、よりさらに好ましくは0.6〜3.0mol%、特に好ましくは0.7〜2.0mol%、最も好ましくは1.0〜1.5mol%である。
前記アルデヒド基の含有量は、実施例に記載の方法に準じて1H−NMRから測定される。本発明のPVAを製造する際に後述の水素原子を有しない制御剤を用いた場合には、実施例に記載の方法に準じて13C−NMRから測定される。また、前記アルデヒド基のアセタール化体の含有量は、該アセタール化体をアルデヒド基に変換した後、前記アルデヒド基の含有量と同様の方法で測定できる。
例えば、本発明のPVAの製造においてビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用い、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを用いた場合は、下記式(1)に示す構造に基づいて以下のとおり算出する。
(式(1)中、a1及びa2はそれぞれビニルアルコール単位の繰り返し単位数であり、互いに同じでも異なっていてもよい。b1及びb2はそれぞれビニルアセテート単位の繰り返し単位数であり、互いに同じでも異なってもよい。式(1)において各単位の配列は特に限定されず、ブロック的であっても、ランダム的であってもよい。)
上記構造のPVAの1H−NMRスペクトルにおいて、δ2.7〜3.0ppmのピーク(ラクトン環のプロトン(−CHC(O)O−))の積分値をA、δ3.3〜3.9ppmのピーク(ビニルアルコール単位のメチンプロトン(−CH2CH(OH)−))の積分値をB、δ1.9〜2.0ppmのピーク(ビニルアセテート単位のアセチル基のメチルプロトン(CH3C(O)−))の積分値の1/3をC、δ9.4〜9.7ppmのピーク(末端アルデヒド基のプロトン(−CHO))の積分値をDとして、以下の式に従って算出する。
アルデヒド基の含有量[mol%]=D/(A+B+C+D)×100
アルデヒド基の含有量[mol%]=D/(A+B+C+D)×100
本発明のPVAの数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、500〜440,000であることが好ましい。数平均分子量が500以上であると、反応性基に起因する毒性が低減される。数平均分子量が440,000以下であると、高い架橋反応性が得られる。当該観点から、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上、特に好ましくは5,000以上であり、より好ましくは220,000以下、さらに好ましくは150,000以下、よりさらに好ましくは70,000以下、特に好ましくは30,000以下、最も好ましくは12,000以下である。
本発明のPVAの分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、分子量分布を狭く制御し、均一な架橋反応性を得る観点から、1.01〜1.90であることが好ましい。当該観点から、より好ましくは1.05〜1.85、さらに好ましくは1.10〜1.85、よりさらに好ましくは1.20〜1.80、特に好ましくは1.30〜1.80、極めて好ましくは1.40〜1.75、最も好ましくは1.50〜1.70である。
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)系カラムで測定した値である。具体的な測定方法は実施例に記載したとおりである。
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)系カラムで測定した値である。具体的な測定方法は実施例に記載したとおりである。
本発明のPVAのけん化度は特に限定されないが、被架橋物が親水性高分子の場合、親水性高分子との相溶性を向上させる観点から、好ましくは50mol%以上、より好ましくは60mol%以上、さらに好ましくは70mol%以上、特に好ましくは80mol%以上、最も好ましくは90mol%以上である。本発明のPVAのけん化度の上限は特に限定されず、100mol%以下であればよい。けん化度は、実施例に記載の方法に準じて1H−NMRから測定され、例えば前述のアルデヒド基の含有量の算出方法と同様に、1H−NMRスペクトルにおける積分値A〜Dより、以下の式に従って算出される。
けん化度[mol%]=(A+B+D)/(A+B+C+D)×100
けん化度[mol%]=(A+B+D)/(A+B+C+D)×100
本発明のPVAはビニルアルコール単位を含有する。また、さらにビニルエステル単位を含有してもよい。該PVAはビニルエステル系単量体を重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造される。該PVAにおいて各単位の配列は特に限定されず、本発明のPVAはブロック重合体であってもランダム重合体であってもよい。
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、i−酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、バレリン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル;安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル;クロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のハロゲン含有ビニルエステル;などが挙げられる。前記ビニルエステル系単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。中でも脂肪族ビニルエステルが好ましく、経済的観点から酢酸ビニルがより好ましい。
前記ビニルエステル系重合体におけるビニルエステル単位の含有量は、好ましくは90mol%超、より好ましくは95mol%超、さらに好ましくは100mol%である。
前記ビニルエステル系重合体におけるビニルエステル単位の含有量は、好ましくは90mol%超、より好ましくは95mol%超、さらに好ましくは100mol%である。
本発明のPVAは、本発明の効果が得られる限り、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の他の単量体に由来する構造単位を含有していてもよい。他の単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのN−アルキル(炭素数1〜18)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩若しくはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル(炭素数1〜18)アクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩もしくはその4級塩などのメタクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのアルキル(炭素数1〜18)ビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のアルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのモノ若しくはジアルキル(炭素数1〜18)エステル;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルが挙げられる。
上記の他の単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
他の単量体由来の構造単位の含有量は、前記PVAに含まれる量として前記PVAを構成する全構造単位に対して10mol%未満であることが好ましく、5mol%未満であることがより好ましい。
上記の他の単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
他の単量体由来の構造単位の含有量は、前記PVAに含まれる量として前記PVAを構成する全構造単位に対して10mol%未満であることが好ましく、5mol%未満であることがより好ましい。
本発明において「ビニルアルコール系重合体」とは、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計が重合体を構成する全構造単位に対して50mol%超(好ましくは70mol%超、より好ましくは90mol%超、さらに好ましくは95mol%超)である重合体を意味する。
本発明のPVAは、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の成分を含有していてもよい。他の成分として、光安定剤、酸化防止剤等が挙げられる。前記PVA100質量部に対する他の成分の含有量は、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。
[ビニルアルコール系重合体の製造方法]
本発明のPVAの製造方法は特に限定されず、例えば(i)制御剤の存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合する工程を含む方法、(ii)アルデヒド基のアセタール化体を有する単量体をビニルエステル系単量体と共重合した後けん化し、必要に応じてアセタールを加水分解しアルデヒド基を導入する方法、(iii)ビニルアルコール系重合体の1,2−グリコール結合を化学的又は熱的、機械的なエネルギーで開裂する方法などが挙げられる。中でも、反応性基がビニルアルコール系重合体の両末端により確実に導入される観点から、上記(i)の製造方法が好ましく、前記制御剤として多官能ヨウ素化合物を用いる上記(i)の製造方法がより好ましい。
本発明のPVAの製造方法は特に限定されず、例えば(i)制御剤の存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合する工程を含む方法、(ii)アルデヒド基のアセタール化体を有する単量体をビニルエステル系単量体と共重合した後けん化し、必要に応じてアセタールを加水分解しアルデヒド基を導入する方法、(iii)ビニルアルコール系重合体の1,2−グリコール結合を化学的又は熱的、機械的なエネルギーで開裂する方法などが挙げられる。中でも、反応性基がビニルアルコール系重合体の両末端により確実に導入される観点から、上記(i)の製造方法が好ましく、前記制御剤として多官能ヨウ素化合物を用いる上記(i)の製造方法がより好ましい。
本発明のPVAは、反応性基が分子鎖の両末端により確実に導入され、架橋反応性をより向上させる観点から、下記工程1〜3を有する製造方法により製造されることが好ましい。
工程1:ラジカル重合開始剤及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)を得る工程
工程2:工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)を得る工程
工程3:工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記ビニルアルコール系重合体を得る工程
以下、工程1〜工程3について詳細に説明する。
工程1:ラジカル重合開始剤及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)を得る工程
工程2:工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)を得る工程
工程3:工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記ビニルアルコール系重合体を得る工程
以下、工程1〜工程3について詳細に説明する。
(工程1)
工程1は、ラジカル重合開始剤(以下、単に「開始剤」とも称する)及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)(以下、単に「ビニルエステル系重合体(1)」とも称する)を得る工程である。
制御ラジカル重合とは、生長ラジカル末端(活性種)と、該活性種が制御剤と結合した共有結合種(ドーマント種)との間で、平衡状態が存在し、重合反応が進行する重合反応のことである。上記製造方法では、制御剤として多官能ヨウ素化合物が用いられる。
工程1は、ラジカル重合開始剤(以下、単に「開始剤」とも称する)及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)(以下、単に「ビニルエステル系重合体(1)」とも称する)を得る工程である。
制御ラジカル重合とは、生長ラジカル末端(活性種)と、該活性種が制御剤と結合した共有結合種(ドーマント種)との間で、平衡状態が存在し、重合反応が進行する重合反応のことである。上記製造方法では、制御剤として多官能ヨウ素化合物が用いられる。
ビニルエステル系単量体の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。中でも、分子量分布の狭い重合体を得る観点から、無溶媒で重合する塊状重合法あるいは種々の有機溶媒中で重合する溶液重合法が好ましい。連鎖移動等の副反応を起こすおそれのある溶媒や分散媒を使用しない観点からは塊状重合法が好ましく、反応液の粘度調整や重合速度の制御等の観点からは溶液重合が好ましい。
溶液重合時に使用される有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の低級アルコール;などが挙げられる。中でも、連鎖移動を防ぐ観点から、エステルや芳香族炭化水素が好ましく、エステルがより好ましく、酢酸エチルがさらに好ましい。有機溶媒の添加量は、目的とするPVAの数平均分子量に合わせ、反応溶液の粘度を考慮して決定すればよい。例えば、ビニルエステル系単量体に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/ビニルエステル系単量体)が0.01〜10の範囲であることが好ましい。質量比(有機溶媒/ビニルエステル系単量体)は、好ましくは0.1以上であり、好ましくは5以下である。
溶液重合時に使用される有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の低級アルコール;などが挙げられる。中でも、連鎖移動を防ぐ観点から、エステルや芳香族炭化水素が好ましく、エステルがより好ましく、酢酸エチルがさらに好ましい。有機溶媒の添加量は、目的とするPVAの数平均分子量に合わせ、反応溶液の粘度を考慮して決定すればよい。例えば、ビニルエステル系単量体に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/ビニルエステル系単量体)が0.01〜10の範囲であることが好ましい。質量比(有機溶媒/ビニルエステル系単量体)は、好ましくは0.1以上であり、好ましくは5以下である。
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤(開始剤)としては、従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。
アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V−70」)などが挙げられる。
過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;ジイソブチリルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらに過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などをさらに組み合わせて過酸化物系開始剤としてもよい。
レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
中でも、アゾ系開始剤が好ましく、比較的低温で重合し、副反応を抑制する観点から、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)がより好ましい。
開始剤の添加量は、重合触媒により異なり一概には決められず、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、ラジカル重合開示剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を用いる場合には、該開始剤の添加量は、ビニルエステル系単量体に対して、好ましくは0.01〜2mol%、より好ましくは0.1〜1.7mol%、さらに好ましくは0.3〜1.5mol%、よりさらに好ましくは0.5〜1.5mol%である。
ラジカル重合開始剤(開始剤)としては、従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。
アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、商品名「V−70」)などが挙げられる。
過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;ジイソブチリルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらに過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などをさらに組み合わせて過酸化物系開始剤としてもよい。
レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
中でも、アゾ系開始剤が好ましく、比較的低温で重合し、副反応を抑制する観点から、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)がより好ましい。
開始剤の添加量は、重合触媒により異なり一概には決められず、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、ラジカル重合開示剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を用いる場合には、該開始剤の添加量は、ビニルエステル系単量体に対して、好ましくは0.01〜2mol%、より好ましくは0.1〜1.7mol%、さらに好ましくは0.3〜1.5mol%、よりさらに好ましくは0.5〜1.5mol%である。
(多官能ヨウ素化合物)
制御剤として用いる多官能ヨウ素化合物は、その1分子中に少なくとも2つの炭素−ヨウ素結合を有する。本発明の制御ラジカル重合では、理論上は、添加する多官能ヨウ素化合物の炭素−ヨウ素結合1つから1つの分子鎖が生成する。したがって、多官能ヨウ素化合物1分子中の炭素−ヨウ素結合の数により、得られるビニルアルコール系重合体の分岐の度合いを調整できる。製造容易性の観点から、多官能ヨウ素化合物は、1分子中に2つの炭素−ヨウ素結合を有する二官能ヨウ素化合物が好ましい。
制御剤として用いる多官能ヨウ素化合物は、その1分子中に少なくとも2つの炭素−ヨウ素結合を有する。本発明の制御ラジカル重合では、理論上は、添加する多官能ヨウ素化合物の炭素−ヨウ素結合1つから1つの分子鎖が生成する。したがって、多官能ヨウ素化合物1分子中の炭素−ヨウ素結合の数により、得られるビニルアルコール系重合体の分岐の度合いを調整できる。製造容易性の観点から、多官能ヨウ素化合物は、1分子中に2つの炭素−ヨウ素結合を有する二官能ヨウ素化合物が好ましい。
二官能ヨウ素化合物としては、例えば、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,4−ジヨードブタン、1,6−ジヨードヘキサン、1,8−ジヨードオクタン、1,10−ジヨードデカン等の脂肪族炭化水素タイプ;1,2−ジヨードパーフルオロエタン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン等のパーフルオロアルキルタイプ;2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジエチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジメチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジエチル、2,6−ジヨード−1,7−ヘプタン二酸ジメチル、2,6−ジヨード−1,7−ヘプタン二酸ジエチル、2,2−ジヨード酢酸メチル等のカルボン酸エステルタイプ;2,2−ジヨードアセトニトリル等のニトリルタイプ;1,2−ビス(1−ヨードエトキシ)エタン、1−ヨード−1−[2−{2−(1−ヨードエトキシ)エトキシ}エトキシ]エタン、1,4−ビス{(1−ヨードエトキシ)メチル}シクロヘキサン、1,4−ビス{2−(1−ヨードエトキシ)エトキシ}ベンゼン、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス[{2−(1−ヨードエトキシ)エトキシ}ベンゼン]等のエーテルタイプ;1,4−ビス(1’−ヨードエチル)ベンゼン等の芳香族炭化水素タイプなどが挙げられる。中でも、製造コストの観点及び重合制御の観点から、カルボン酸エステルタイプ及びニトリルタイプからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジエチル、2,2−ジヨード酢酸メチル及び2,2−ジヨードアセトニトリルからなる群より選択される1種以上がより好ましく、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルがさらに好ましい。
反応液に添加される多官能ヨウ素化合物の添加量は、目的とするビニルエステル系重合体(1)及び該ビニルエステル系重合体(1)を経て得られるPVAの数平均分子量と重合率とを考慮して決定される。例えばビニルエステル系単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3質量部、特に好ましくは0.5〜1.5質量部である。
反応液に添加される多官能ヨウ素化合物の添加量は、目的とするビニルエステル系重合体(1)及び該ビニルエステル系重合体(1)を経て得られるPVAの数平均分子量と重合率とを考慮して決定される。例えばビニルエステル系単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3質量部、特に好ましくは0.5〜1.5質量部である。
工程1での重合温度は0℃〜80℃であることが好ましい。重合温度が0℃以上であると、重合速度が十分となり、生産性が向上する。当該観点から、重合温度は好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。一方、重合温度が80℃以下であると、分子量分布が狭いビニルエステル系重合体を得ることができる。当該観点から、重合温度は好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
工程1において目的とする重合率になったところで、反応系内の急冷又は重合停止剤の添加、あるいはその両方を同時に行うことによって重合反応を停止させる。添加される重合停止剤のモル数は、添加された多官能ヨウ素化合物のモル数の1〜100倍であることが好ましい。重合停止剤のモル数が多官能ヨウ素化合物のモル数の1倍以上であると速やかに重合停止させることができる。一方、重合停止剤のモル数が多官能ヨウ素化合物のモル数の100倍以下であると生産コストを低減できる。
反応系内を急冷する場合は、反応器のジャケットに冷却水を流す方法もあるが、予め冷却された液体媒体を反応器に添加する方法が好ましい。また、後者の方法の場合、液体媒体として水を使用すると、重合停止とともに末端の炭素−ヨウ素結合がアルデヒドに変換される反応も同時に起きることから、重合停止操作と後述する工程2を一度に行ってもよい。
反応系内を急冷する場合は、反応器のジャケットに冷却水を流す方法もあるが、予め冷却された液体媒体を反応器に添加する方法が好ましい。また、後者の方法の場合、液体媒体として水を使用すると、重合停止とともに末端の炭素−ヨウ素結合がアルデヒドに変換される反応も同時に起きることから、重合停止操作と後述する工程2を一度に行ってもよい。
本発明においてビニルエステル系重合体(1)のヨウ素の末端導入率とは、全分子鎖末端に対する炭素−ヨウ素結合の導入率である。該末端導入率の上限値は理論上100%であるが、本発明の制御ラジカル重合による製造方法は、全く制御されていない一般的なラジカル重合法に比べ、連鎖移動や停止反応などの副反応が生じる確率が低減されているものの、重合中に一部はこうした副反応が生じる。そのため、該末端導入率は、架橋反応性を向上させる観点から、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上であり100%であってもよい。上記末端導入率の上限値は特に限定されないが、生産容易性及び制御剤の入手性の観点からは、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。
ビニルエステル系重合体(1)のヨウ素の末端導入率は、実施例に記載の方法に準じて1H−NMRから測定される。本発明のPVAを製造する際に前述の水素原子を有しない制御剤を用いた場合には、実施例に記載の方法に準じて13C−NMRから測定される。
例えば、PVAのビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用い、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを用いた場合は、下記式(2)に示す構造に基づいて以下のとおり算出する。
ビニルエステル系重合体(1)のヨウ素の末端導入率は、実施例に記載の方法に準じて1H−NMRから測定される。本発明のPVAを製造する際に前述の水素原子を有しない制御剤を用いた場合には、実施例に記載の方法に準じて13C−NMRから測定される。
例えば、PVAのビニルエステル系単量体として酢酸ビニルを用い、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを用いた場合は、下記式(2)に示す構造に基づいて以下のとおり算出する。
(式(2)中、c1及びc2はビニルアセテート単位の繰り返し単位数であり、互いに同じでも異なっていてもよい。)
上記構造を有するビニルエステル系重合体(1)の1H−NMRスペクトルにおいて、δ3.7ppmのピーク(分子鎖中心のメチルエステル基のメチルプロトン(CH3OC(O)−))の積分値を6として、δ6.7〜6.8ppmのピーク(末端ヨウ素に隣接するメチンプロトン(−CH(OAc)I))の積分値αを算出する。全分子鎖末端に炭素−ヨウ素結合が導入された場合(すなわち、末端導入率100%の場合)、分子鎖中心のメチルエステルのピーク面積と末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピーク面積は、上記構造において6対2の関係にあることから、以下の式に従って、炭素−ヨウ素結合の末端導入率を算出する。
末端導入率[%]=α/2×100
末端導入率[%]=α/2×100
(工程2)
工程2は、工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)(以下、単に「ビニルエステル系重合体(2)」とも称する)を得る工程である。
工程2における水の添加量は、多官能ヨウ素化合物の等モル以上あればよいが、短時間で両末端にアルデヒド基を導入するためには、工程1で得られるビニルエステル系重合体(1)100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、200質量部以上がさらに好ましく、300質量部以上がよりさらに好ましい。
工程2では、末端の炭素−ヨウ素結合は水との接触で比較的容易にアルデヒド基に変換されることから、過剰な加熱は行わずにビニルエステル系重合体(2)を得ることができる。工程2における反応液の温度は、好ましくは5℃〜50℃、より好ましくは10℃〜40℃である。
工程1で無溶媒あるいは水に不溶の溶媒を使用し重合した場合は、そのまま水を添加して両末端にアルデヒド基を導入した後、ビニルエステル系重合体(2)が存在する有機層との二層に分離し、水層を除去した後、有機層に残留するビニルエステル系単量体及び溶媒を留去してビニルエステル系重合体(2)を得ることもできる。なお、抽出等によりビニルエステル系重合体(2)を単離した後、工程3を行ってもよい。
工程2は、十分に両末端にアルデヒド基を導入する観点から、工程1後にビニルエステル系重合体(1)を単離し、ビニルエステル系重合体(1)を水と混和性を有する溶媒に溶解した後、水を添加して行うことが好ましい。該溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
工程2は、工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)(以下、単に「ビニルエステル系重合体(2)」とも称する)を得る工程である。
工程2における水の添加量は、多官能ヨウ素化合物の等モル以上あればよいが、短時間で両末端にアルデヒド基を導入するためには、工程1で得られるビニルエステル系重合体(1)100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、200質量部以上がさらに好ましく、300質量部以上がよりさらに好ましい。
工程2では、末端の炭素−ヨウ素結合は水との接触で比較的容易にアルデヒド基に変換されることから、過剰な加熱は行わずにビニルエステル系重合体(2)を得ることができる。工程2における反応液の温度は、好ましくは5℃〜50℃、より好ましくは10℃〜40℃である。
工程1で無溶媒あるいは水に不溶の溶媒を使用し重合した場合は、そのまま水を添加して両末端にアルデヒド基を導入した後、ビニルエステル系重合体(2)が存在する有機層との二層に分離し、水層を除去した後、有機層に残留するビニルエステル系単量体及び溶媒を留去してビニルエステル系重合体(2)を得ることもできる。なお、抽出等によりビニルエステル系重合体(2)を単離した後、工程3を行ってもよい。
工程2は、十分に両末端にアルデヒド基を導入する観点から、工程1後にビニルエステル系重合体(1)を単離し、ビニルエステル系重合体(1)を水と混和性を有する溶媒に溶解した後、水を添加して行うことが好ましい。該溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
(工程3)
工程3は、工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記PVAを得る工程である。工程2で得られた両末端にアルデヒド基を有するビニルエステル系重合体(2)をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位がビニルアルコール単位に変換され、本発明のビニルアルコール系重合体を得る。
工程3は、工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記PVAを得る工程である。工程2で得られた両末端にアルデヒド基を有するビニルエステル系重合体(2)をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位がビニルアルコール単位に変換され、本発明のビニルアルコール系重合体を得る。
けん化は、ビニルエステル系重合体(2)をアルコール又は含水アルコールに溶解した状態で行うことが好ましい。工程2で、得られたビニルエステル系重合体(2)を単離した場合には、再度アルコール又は含水アルコールに溶解させることが好ましい。
また、工程1で無溶媒あるいは水に不溶の溶媒を使用し重合した場合は、工程2で両末端にアルデヒド基を導入した後、水層とビニルエステル系重合体(2)が存在する有機層との二層に分離し、水層を除去した後、有機層に残留するビニルエステル系単量体及び溶媒を、アルコール又は含水アルコールをフィードしながら留去することで、ビニルエステル系重合体(2)のアルコール又は含水アルコール溶液を調製することもできる。
また、工程1で無溶媒あるいは水に不溶の溶媒を使用し重合した場合は、工程2で両末端にアルデヒド基を導入した後、水層とビニルエステル系重合体(2)が存在する有機層との二層に分離し、水層を除去した後、有機層に残留するビニルエステル系単量体及び溶媒を、アルコール又は含水アルコールをフィードしながら留去することで、ビニルエステル系重合体(2)のアルコール又は含水アルコール溶液を調製することもできる。
けん化反応に使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられ、メタノールが好ましい。けん化反応に使用されるアルコールは、アセトン、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル、トルエンなどの他の溶媒を含有していてもよいが、前記アルコール中に含まれる他の溶媒の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
アルコールの添加量は、ビニルエステル系重合体(2)100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは100〜200質量部である。
けん化反応に用いられる触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒が挙げられる。中でも、取り扱いが簡便な観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。水酸化ナトリウムの添加量は、ビニルエステル系重合体(2)100質量部に対して、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
アルコールの添加量は、ビニルエステル系重合体(2)100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは100〜200質量部である。
けん化反応に用いられる触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒が挙げられる。中でも、取り扱いが簡便な観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。水酸化ナトリウムの添加量は、ビニルエステル系重合体(2)100質量部に対して、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
けん化反応の温度は、例えば20〜60℃が好ましい。20℃以上であるとけん化反応を速やかに進行させることができる。60℃以下であると、末端アルデヒド基に隣接する水酸基が脱水することによるポリエン化を防止し、色相の悪化を抑制できる。
なお、ナトリウムメチラート等のアルコラートでけん化した場合、末端アルデヒド基の一部又は全部がアセタール化されることがあるが、上記のとおりそのまま架橋剤として使用できる。再度アルデヒド基に変換する場合は、得られたPVAを過剰量の水と接触させればよい。水と接触させる際の温度は、20〜90℃が好ましい。
けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出してくる場合には、その時点で分離し、生成物を粉砕し、洗浄後、乾燥することにより、本発明のPVAが得られる。
なお、ナトリウムメチラート等のアルコラートでけん化した場合、末端アルデヒド基の一部又は全部がアセタール化されることがあるが、上記のとおりそのまま架橋剤として使用できる。再度アルデヒド基に変換する場合は、得られたPVAを過剰量の水と接触させればよい。水と接触させる際の温度は、20〜90℃が好ましい。
けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出してくる場合には、その時点で分離し、生成物を粉砕し、洗浄後、乾燥することにより、本発明のPVAが得られる。
上記製造方法により得られる本発明のPVAは、多官能ヨウ素化合物由来の基を基点として、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位、及びさらに必要に応じて他の構造単位を有する複数のポリビニルアルコール鎖を有し、かつ各ポリビニルアルコール鎖の末端に前記反応性基を有する。本発明のPVAは、架橋反応性を向上させる観点、及び製造容易性の観点から、二官能ヨウ素化合物由来の基を介して2つの前記ポリビニルアルコール鎖を有し、かつそれぞれのポリビニルアルコール鎖の末端に反応性基を有する直鎖状ポリマーが好ましい。
本発明のPVAは、その高い架橋反応性を利用して、各種用途に使用できる。例えば、紙用コーティング剤、紙用内添剤、顔料バインダー、接着剤、不織布バインダー、塗料、繊維加工剤、繊維糊剤、フィルム、シート、ボトル、繊維、増粘剤、凝集剤などに用いられる、自己架橋による架橋物用の架橋剤や他の親水性高分子用の架橋剤として使用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。なお、実施例、比較例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
[ビニルアルコール系重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC−8320GP
C」を用い、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。測定条件
は以下のとおりである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR−H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム−HFIP溶液(濃度20×10-3mol/L)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC−8320GP
C」を用い、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。測定条件
は以下のとおりである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR−H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒及び移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム−HFIP溶液(濃度20×10-3mol/L)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
[ビニルエステル系重合体(1)の炭素−ヨウ素結合の末端導入率を算出するための1H−NMR測定の測定]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、両末端に炭素−ヨウ素結合が導入されたビニルエステル系重合体(1)の1H−NMR測定を行った。測定条件は以下のとおりである。
(測定条件)
観測周波数:500MHz
溶媒:CDCl3
ポリマー濃度:2%
測定温度:25℃
積算回数:32回
パルス遅延時間:7秒
サンプル回転速度:20Hz
パルス幅(45°パルス):7.5μsec
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、両末端に炭素−ヨウ素結合が導入されたビニルエステル系重合体(1)の1H−NMR測定を行った。測定条件は以下のとおりである。
(測定条件)
観測周波数:500MHz
溶媒:CDCl3
ポリマー濃度:2%
測定温度:25℃
積算回数:32回
パルス遅延時間:7秒
サンプル回転速度:20Hz
パルス幅(45°パルス):7.5μsec
[ビニルアルコール系重合体のアルデヒド基(反応性基)の含有量を算出するための1H−NMR測定の測定]
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、1H−NMR測定により算出した。測定条件は以下のとおりである。
(測定条件)
観測周波数:500MHz
溶媒:DMSO−d6
ポリマー濃度:2%
測定温度:25℃
積算回数:32回
パルス遅延時間:7秒
サンプル回転速度:20Hz
パルス幅(45°パルス):7.5μsec
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、1H−NMR測定により算出した。測定条件は以下のとおりである。
(測定条件)
観測周波数:500MHz
溶媒:DMSO−d6
ポリマー濃度:2%
測定温度:25℃
積算回数:32回
パルス遅延時間:7秒
サンプル回転速度:20Hz
パルス幅(45°パルス):7.5μsec
[けん化度]
ビニルアルコール系重合体のけん化度は、前記アルデヒド基(反応性基)の含有量を算出するための1H−NMR測定方法と同じ方法で1H−NMR測定を行い、前述の積分値A〜Dより、以下の式に従ってけん化度を算出した。
けん化度[mol%]=(A+B+D)/(A+B+C+D)×100
ビニルアルコール系重合体のけん化度は、前記アルデヒド基(反応性基)の含有量を算出するための1H−NMR測定方法と同じ方法で1H−NMR測定を行い、前述の積分値A〜Dより、以下の式に従ってけん化度を算出した。
けん化度[mol%]=(A+B+D)/(A+B+C+D)×100
[架橋反応性の評価]
以下の実施例又は比較例で得られたPVAを架橋剤とし、市販のポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、グレード「PVA 28−98」)を親水性高分子として、前記ポリビニルアルコール樹脂70部に対して前記PVA30部を水に溶解し、該ポリビニルアルコール樹脂の濃度が10%となる水溶液を調製した後、さらに塩酸を添加してpHを2に調整した塗工液を得た。
次いで、前記塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、厚さ約40μmの評価用フィルムを作製した。
得られた評価用フィルムを沸騰水中に1時間浸漬し煮沸した後、水から取り出して、80℃で3時間真空乾燥した後に質量(W1)を測定した。得られた質量(W1)と浸漬前の質量(W2)とから、以下の式に従って煮沸条件下における溶出率を算出し、当該溶出率を架橋反応性の指標とした。溶出率が50%以下であれば架橋反応が十分であることを示し、当該観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。なお、水に浸漬中に評価用フィルムが溶解した場合には「測定不能」と評価した。
溶出率(%)=〔([W2]−[W1])/[W2]〕×100
以下の実施例又は比較例で得られたPVAを架橋剤とし、市販のポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、グレード「PVA 28−98」)を親水性高分子として、前記ポリビニルアルコール樹脂70部に対して前記PVA30部を水に溶解し、該ポリビニルアルコール樹脂の濃度が10%となる水溶液を調製した後、さらに塩酸を添加してpHを2に調整した塗工液を得た。
次いで、前記塗工液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、厚さ約40μmの評価用フィルムを作製した。
得られた評価用フィルムを沸騰水中に1時間浸漬し煮沸した後、水から取り出して、80℃で3時間真空乾燥した後に質量(W1)を測定した。得られた質量(W1)と浸漬前の質量(W2)とから、以下の式に従って煮沸条件下における溶出率を算出し、当該溶出率を架橋反応性の指標とした。溶出率が50%以下であれば架橋反応が十分であることを示し、当該観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。なお、水に浸漬中に評価用フィルムが溶解した場合には「測定不能」と評価した。
溶出率(%)=〔([W2]−[W1])/[W2]〕×100
[合成例1]
撹拌機、還流管を備えた反応器に、塩化銅(I)2.8部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン13.9部、ジクロロ酢酸メチル857部、アクリル酸メチル138部、およびトルエン8.7部を添加し、80℃で82時間撹拌した。その後、ドライアイス/メタノール浴(−78℃)に移し、急冷して反応を停止した。残留するアクリル酸メチル、トルエンを減圧留去したのち、展開溶媒にヘキサン/ジエチルエーテルを用いたシリカカラムにより銅触媒を除去した。得られた残渣を蒸留精製することで2,4−ジクロロ−1,5−ペンタン二酸ジメチルを合成した。
次に、撹拌機、還流管を備えた反応器に、ヨウ化ナトリウム89.9部、上記で得た2,4−ジクロロ−1,5−ペンタン二酸ジメチル29.6部、およびアセトン315部を仕込み、50℃で10時間撹拌した。アセトンを減圧留去した後、塩化メチレンとチオ硫酸ナトリウム水溶液(濃度20%)を添加し、塩化メチレン層を抽出した。塩化メチレン層を減圧留去し、得られた残渣をヘキサン/ジエチルエーテルで再結晶精製し、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを合成した。
撹拌機、還流管を備えた反応器に、塩化銅(I)2.8部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン13.9部、ジクロロ酢酸メチル857部、アクリル酸メチル138部、およびトルエン8.7部を添加し、80℃で82時間撹拌した。その後、ドライアイス/メタノール浴(−78℃)に移し、急冷して反応を停止した。残留するアクリル酸メチル、トルエンを減圧留去したのち、展開溶媒にヘキサン/ジエチルエーテルを用いたシリカカラムにより銅触媒を除去した。得られた残渣を蒸留精製することで2,4−ジクロロ−1,5−ペンタン二酸ジメチルを合成した。
次に、撹拌機、還流管を備えた反応器に、ヨウ化ナトリウム89.9部、上記で得た2,4−ジクロロ−1,5−ペンタン二酸ジメチル29.6部、およびアセトン315部を仕込み、50℃で10時間撹拌した。アセトンを減圧留去した後、塩化メチレンとチオ硫酸ナトリウム水溶液(濃度20%)を添加し、塩化メチレン層を抽出した。塩化メチレン層を減圧留去し、得られた残渣をヘキサン/ジエチルエーテルで再結晶精製し、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを合成した。
[実施例1]
(工程1)
撹拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、制御剤として合成例1で得られた2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル0.9部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名「V−70」)を2.8部添加し、反応器内を真空にした後、窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。
その後、単蒸留精製した酢酸ビニル79.1部、有機溶媒として酢酸エチル9.5部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温20℃で撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が25%に到達したところで水浴をドライアイス/アセトン浴(−78℃)に置換し急冷して反応を停止した。残留する酢酸ビニル、酢酸エチルを減圧留去し、再び酢酸エチルを添加、溶解し、当該溶液をヘキサンに滴下しポリ酢酸ビニルを析出させ回収した。その後40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、両末端にヨウ素が導入されたポリ酢酸ビニル(1−1)を得た。1H−NMRスペクトルによりポリ酢酸ビニル(1−1)の構造は下記式(2)であることを確認した。重合条件及び以下によって算出された末端導入率を表1に示す。
(工程1)
撹拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、制御剤として合成例1で得られた2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル0.9部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名「V−70」)を2.8部添加し、反応器内を真空にした後、窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。
その後、単蒸留精製した酢酸ビニル79.1部、有機溶媒として酢酸エチル9.5部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温20℃で撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が25%に到達したところで水浴をドライアイス/アセトン浴(−78℃)に置換し急冷して反応を停止した。残留する酢酸ビニル、酢酸エチルを減圧留去し、再び酢酸エチルを添加、溶解し、当該溶液をヘキサンに滴下しポリ酢酸ビニルを析出させ回収した。その後40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、両末端にヨウ素が導入されたポリ酢酸ビニル(1−1)を得た。1H−NMRスペクトルによりポリ酢酸ビニル(1−1)の構造は下記式(2)であることを確認した。重合条件及び以下によって算出された末端導入率を表1に示す。
(式(2)中、c1及びc2は前記と同様である。)
〔末端導入率の算出〕
ポリ酢酸ビニル(1−1)のNMRスペクトルより、δ3.7ppmのピーク(分子鎖中心のメチルエステル基のメチルプロトン(CH3OC(O)−))の積分値を6として、δ6.7〜6.8ppmのピーク(末端ヨウ素に隣接するメチンプロトン(−OCHI))の積分値α1を算出した。
前述の方法のとおり、以下の式に従ってポリ酢酸ビニル(1−1)の炭素−ヨウ素結合の末端導入率を算出した。
末端導入率[%]=α1/2×100
ポリ酢酸ビニル(1−1)のNMRスペクトルより、δ3.7ppmのピーク(分子鎖中心のメチルエステル基のメチルプロトン(CH3OC(O)−))の積分値を6として、δ6.7〜6.8ppmのピーク(末端ヨウ素に隣接するメチンプロトン(−OCHI))の積分値α1を算出した。
前述の方法のとおり、以下の式に従ってポリ酢酸ビニル(1−1)の炭素−ヨウ素結合の末端導入率を算出した。
末端導入率[%]=α1/2×100
(工程2)
次に、上記と同様の反応器に、工程1で得られたポリ酢酸ビニル(1−1)20部とテトラヒドロフラン120部を添加し溶解した後、水60部を添加し室温で1時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、酢酸エチルと水を添加し、酢酸エチル層を抽出した。酢酸エチル層を減圧留去し、両末端にアルデヒド基が導入されたポリ酢酸ビニル(2−1)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−1)を1H−NMRで分析したところ、工程1で確認された末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失して末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
次に、上記と同様の反応器に、工程1で得られたポリ酢酸ビニル(1−1)20部とテトラヒドロフラン120部を添加し溶解した後、水60部を添加し室温で1時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、酢酸エチルと水を添加し、酢酸エチル層を抽出した。酢酸エチル層を減圧留去し、両末端にアルデヒド基が導入されたポリ酢酸ビニル(2−1)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−1)を1H−NMRで分析したところ、工程1で確認された末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失して末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
(工程3)
次に、上記と同様の反応器に、工程2で得られたポリ酢酸ビニル(2−1)15.0部、メタノール21.7部を添加し、40℃で撹拌し溶解させた。ここに、内温を40℃に維持した状態で、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度18%)0.8部を添加して、40℃で1時間けん化反応を行った。
その後、酢酸メチル10.0部、水5.0部を加えて残存するアルカリを中和し、けん化で生成した粉体状の析出物を濾別し、これをメタノールで洗浄した。その後、再び粉体状の析出物を濾別し、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、アルデヒド基がジメチルアセタール化されたPVAを得た。当該PVAを水に溶解し、80℃で1時間撹拌した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、得られたフィルムを粉砕して、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−1)を得た。1H−NMRにより、PVA−1の構造は下記式(1)であることが確認された。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。PVA−1の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
次に、上記と同様の反応器に、工程2で得られたポリ酢酸ビニル(2−1)15.0部、メタノール21.7部を添加し、40℃で撹拌し溶解させた。ここに、内温を40℃に維持した状態で、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度18%)0.8部を添加して、40℃で1時間けん化反応を行った。
その後、酢酸メチル10.0部、水5.0部を加えて残存するアルカリを中和し、けん化で生成した粉体状の析出物を濾別し、これをメタノールで洗浄した。その後、再び粉体状の析出物を濾別し、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、アルデヒド基がジメチルアセタール化されたPVAを得た。当該PVAを水に溶解し、80℃で1時間撹拌した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、得られたフィルムを粉砕して、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−1)を得た。1H−NMRにより、PVA−1の構造は下記式(1)であることが確認された。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。PVA−1の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
(式(1)中、a1、a2、b1及びb2は前記と同様である。式(1)において各単位の配列は特に限定されず、ブロック的であっても、ランダム的であってもよい。)
〔アルデヒド基の含有量〕
PVA−1の1H−NMRスペクトルより、δ2.7〜3.0ppmのピーク(ラクトン環の−CHC(O)O−)の積分値をA1、δ3.3〜3.9ppmのピーク(ビニルアルコール単位のメチンプロトン(−CH2CH(OH)−))の積分値をB1、δ1.9〜2.0ppmのピーク(ビニルアセテート単位のアセチル基のメチルプロトン(CH3C(O)−))の積分値の1/3をC1、δ9.4〜9.7ppmのピーク(末端アルデヒド基のプロトン(−CHO))の積分値をD1とした。以下の式に従ってPVA−1のアルデヒド基の含有量を算出した。
アルデヒド基の含有量[mol%]=D1/(A1+B1+C1+D1)×100
PVA−1の1H−NMRスペクトルより、δ2.7〜3.0ppmのピーク(ラクトン環の−CHC(O)O−)の積分値をA1、δ3.3〜3.9ppmのピーク(ビニルアルコール単位のメチンプロトン(−CH2CH(OH)−))の積分値をB1、δ1.9〜2.0ppmのピーク(ビニルアセテート単位のアセチル基のメチルプロトン(CH3C(O)−))の積分値の1/3をC1、δ9.4〜9.7ppmのピーク(末端アルデヒド基のプロトン(−CHO))の積分値をD1とした。以下の式に従ってPVA−1のアルデヒド基の含有量を算出した。
アルデヒド基の含有量[mol%]=D1/(A1+B1+C1+D1)×100
[実施例2]
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.4部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を1.2部、及び有機溶媒として酢酸エチルを11.6部添加し、転化率30%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−2)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−2)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−2)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−2)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−2)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−2)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−2)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.4部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を1.2部、及び有機溶媒として酢酸エチルを11.6部添加し、転化率30%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−2)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−2)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−2)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−2)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−2)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−2)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−2)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.2部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を0.6部、及び有機溶媒として酢酸エチルを12.7部添加し、転化率25%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−3)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−3)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−3)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−3)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−3)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−3)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−3)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.2部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を0.6部、及び有機溶媒として酢酸エチルを12.7部添加し、転化率25%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−3)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−3)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−3)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−3)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−3)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒド基が導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−3)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−3)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.1部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を0.3部、及び有機溶媒として酢酸エチルを13.2部添加し、転化率20%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−4)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−4)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−4)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−4)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−4)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒドが導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−4)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−4)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
実施例1の工程1において、制御剤として2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチルを0.1部、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)を0.3部、及び有機溶媒として酢酸エチルを13.2部添加し、転化率20%で重合反応を停止したこと以外は実施例1の工程1と同様にして、ポリ酢酸ビニル(1−4)を得た。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−4)の末端導入率を表1に示す。
次に、ポリ酢酸ビニル(1−4)を用いて、実施例1の工程2と同様の反応を行い、ポリ酢酸ビニル(2−4)を得た。ポリ酢酸ビニル(2−4)を1H−NMRで分析したところ、末端ヨウ素に隣接するメチンプロトンのピークが完全に消失し、末端にアルデヒドが導入されていることを確認した。
次に、ポリ酢酸ビニル(2−4)を、実施例1の工程3と同様にけん化し、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−4)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例1の工程3において、けん化反応後、生成した粉体状の析出物を濾別、メタノールで洗浄した後、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−5)を得た。
当該PVA−5の1H−NMR測定を行った(溶媒:DMSO−d6)ところ、アルデヒド基のピークが確認できなかった。13C−NMR測定及び2次元1H/13C−NMR測定の結果を図2、図3に示す。13C−NMRのδ52ppmのピークがジメチルアセタール化体のメトキシ基のピーク(−CH(OCH3)2)、δ102〜103ppmのピークがジメチルアセタール化体のメチン基のピーク(−CH(OCH3)2)であることを確認した。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−5)の末端導入率を表1に示し、構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
実施例1の工程3において、けん化反応後、生成した粉体状の析出物を濾別、メタノールで洗浄した後、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−5)を得た。
当該PVA−5の1H−NMR測定を行った(溶媒:DMSO−d6)ところ、アルデヒド基のピークが確認できなかった。13C−NMR測定及び2次元1H/13C−NMR測定の結果を図2、図3に示す。13C−NMRのδ52ppmのピークがジメチルアセタール化体のメトキシ基のピーク(−CH(OCH3)2)、δ102〜103ppmのピークがジメチルアセタール化体のメチン基のピーク(−CH(OCH3)2)であることを確認した。重合組成及びポリ酢酸ビニル(1−5)の末端導入率を表1に示し、構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
[比較例1]
市販のポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、グレード「PVA 3−98」)をビニルアルコール系重合体(PVA−C1)として構造解析及び評価を行った。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
市販のポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、グレード「PVA 3−98」)をビニルアルコール系重合体(PVA−C1)として構造解析及び評価を行った。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
[比較例2]
(工程1’)
撹拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、開始剤としてAIBN[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)]を0.5部添加し、反応器内を真空にした後、窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。
その後、ヨード酢酸エチル1.1部、単蒸留精製した酢酸ビニル86.0部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温72℃で撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が35%に到達したところで水浴を氷浴に置換し急冷して反応を停止した。残留する酢酸ビニル、酢酸エチルを減圧留去し、再び酢酸エチルを添加、溶解し、当該溶液をヘキサンに滴下しポリ酢酸ビニルを析出させ回収した。その後40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、片末端にヨウ素が導入されたポリ酢酸ビニル(1’−2)を得た。
(工程1’)
撹拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、開始剤としてAIBN[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)]を0.5部添加し、反応器内を真空にした後、窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。
その後、ヨード酢酸エチル1.1部、単蒸留精製した酢酸ビニル86.0部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温72℃で撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が35%に到達したところで水浴を氷浴に置換し急冷して反応を停止した。残留する酢酸ビニル、酢酸エチルを減圧留去し、再び酢酸エチルを添加、溶解し、当該溶液をヘキサンに滴下しポリ酢酸ビニルを析出させ回収した。その後40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、片末端にヨウ素が導入されたポリ酢酸ビニル(1’−2)を得た。
(工程2’)
次に、上記と同様の反応器に、工程1’で得られたポリ酢酸ビニル(1’−2)20部とテトラヒドロフラン120部を添加し溶解した後、水60部を添加し室温で1時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、酢酸エチルと水を添加し、酢酸エチル層を抽出した。酢酸エチル層を減圧留去し、片末端にアルデヒド基が導入されたポリ酢酸ビニル(2’−2)を得た。
次に、上記と同様の反応器に、工程1’で得られたポリ酢酸ビニル(1’−2)20部とテトラヒドロフラン120部を添加し溶解した後、水60部を添加し室温で1時間撹拌した。テトラヒドロフランを減圧留去した後、酢酸エチルと水を添加し、酢酸エチル層を抽出した。酢酸エチル層を減圧留去し、片末端にアルデヒド基が導入されたポリ酢酸ビニル(2’−2)を得た。
(工程3’)
次に、上記と同様の反応器に、工程2’で得られたポリ酢酸ビニル(2’−2)15.0部、メタノール21.7部を添加し、40℃で加熱撹拌し溶解させた。ここに、内温を40℃維持した状態で、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度18%)0.8部を添加して、40℃で1時間けん化反応を行った。
その後、酢酸メチル10.0部、水5.0部を加えて残存するアルカリを中和し、けん化で生成した粉体状の析出物を濾別し、これをメタノールで洗浄した。その後、再び粉体状の析出物を濾別し、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、アルデヒド基がジメチルアセタール化されたPVAを得た。当該PVAを水に溶解し、80℃で1時間加熱撹拌した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、得られたフィルムを粉砕して、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−C2)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
1H−NMRスペクトルより、δ3.3〜3.9ppmのピーク(ビニルアルコール単位のメチンプロトン(−CH2CH(OH)−))の積分値をB’、δ1.9〜2.0ppmのピーク(ビニルアセテート単位のアセチル基のメチルプロトン(CH3C(O)−))の積分値の1/3をC’、δ9.4〜9.7ppmのピーク(末端アルデヒド基のプロトン(−CHO))の積分値をD’とした。以下の式に従ってアルデヒド基の含有量を算出した。
アルデヒド基の含有量[mol%]=D’/(B’+C’+D’)×100
次に、上記と同様の反応器に、工程2’で得られたポリ酢酸ビニル(2’−2)15.0部、メタノール21.7部を添加し、40℃で加熱撹拌し溶解させた。ここに、内温を40℃維持した状態で、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度18%)0.8部を添加して、40℃で1時間けん化反応を行った。
その後、酢酸メチル10.0部、水5.0部を加えて残存するアルカリを中和し、けん化で生成した粉体状の析出物を濾別し、これをメタノールで洗浄した。その後、再び粉体状の析出物を濾別し、真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、アルデヒド基がジメチルアセタール化されたPVAを得た。当該PVAを水に溶解し、80℃で1時間加熱撹拌した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムの端を折り曲げて作製した5cm×8cmの型枠に流延し、熱風乾燥機内で80℃、30分乾燥し、得られたフィルムを粉砕して、目的のビニルアルコール系重合体(PVA−C2)を得た。構造解析結果及び評価結果を表2に示す。
1H−NMRスペクトルより、δ3.3〜3.9ppmのピーク(ビニルアルコール単位のメチンプロトン(−CH2CH(OH)−))の積分値をB’、δ1.9〜2.0ppmのピーク(ビニルアセテート単位のアセチル基のメチルプロトン(CH3C(O)−))の積分値の1/3をC’、δ9.4〜9.7ppmのピーク(末端アルデヒド基のプロトン(−CHO))の積分値をD’とした。以下の式に従ってアルデヒド基の含有量を算出した。
アルデヒド基の含有量[mol%]=D’/(B’+C’+D’)×100
*1:ビニルエステル系重合体(1)の炭素−ヨウ素結合の末端導入率を示す。
表2中の反応性基は、PVAのアルデヒド基又はそのアセタール化体を示す。
表2から、実施例1〜5に示すように、本発明のPVAは、両末端に反応性基を有するため、ポリビニルアルコール樹脂の架橋剤として用いると水への溶出率が低く、高い架橋反応性を有していることがわかる。
比較例1は、汎用的なビニルアルコール系重合体であるため、架橋反応性を発現しなかった。
比較例2は、片末端にアルデヒド基を導入したビニルアルコール系重合体であるため、架橋反応性を発現しなかった。
比較例1は、汎用的なビニルアルコール系重合体であるため、架橋反応性を発現しなかった。
比較例2は、片末端にアルデヒド基を導入したビニルアルコール系重合体であるため、架橋反応性を発現しなかった。
本発明のビニルアルコール系重合体(PVA)は、高い架橋反応性を有することから、自己架橋による架橋物や、例えば他の親水性高分子用の架橋剤として幅広い用途に利用できる。
Claims (8)
- 分子鎖の両末端にアルデヒド基又はそのアセタール化体を有する、ビニルアルコール系重合体。
- 分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.90である、請求項1に記載のビニルアルコール系重合体。
- 数平均分子量が500〜440,000である、請求項1又は2に記載のビニルアルコール系重合体。
- 全構造単位に対するアルデヒド基又はそのアセタール化体の含有量が0.4〜5.0mol%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体。
- けん化度が50mol%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルアルコール系重合体。
- 多官能ヨウ素化合物の存在下でビニルエステル系単量体をラジカル重合する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のビニルアルコール系共重合体の製造方法。
- 下記工程1〜3を有する、請求項6に記載のビニルアルコール系重合体の製造方法。
工程1:ラジカル重合開始剤及び多官能ヨウ素化合物の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル系単量体を重合し、両末端にヨウ素が導入されたビニルエステル系重合体(1)を得る工程
工程2:工程1で得られたビニルエステル系重合体(1)と水とを接触させ、両末端にアルデヒド基が導入されたビニルエステル系重合体(2)を得る工程
工程3:工程2で得られたビニルエステル系重合体(2)をけん化し、前記ビニルアルコール系重合体を得る工程 - 前記多官能ヨウ素化合物が、2,4−ジヨード−1,5−ペンタン二酸ジメチル、2,5−ジヨード−1,6−ヘキサン二酸ジエチル、2,2−ジヨード酢酸メチル及び2,2−ジヨードアセトニトリルからなる群より選択される1種以上である、請求項6又は7に記載のビニルアルコール系重合体の製造方法。
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