以下、本発明の炊飯器に係る好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。
先ず図1に基づいて、本実施形態における炊飯器の全体構成を説明すると、1は有底状の本体、2は本体1の上面開口を開閉自在に覆う蓋体で、これらの本体1と蓋体2とにより、炊飯器の外郭が形成される。本体1は、上面を形成する上枠3と、側面から底面を形成する外枠4とにより外観を構成しており、後述する鍋11を着脱可能に収容するために、上面を開口した鍋収容部5が形成される。鍋11は、蓋体2を開閉することにより鍋収容部5から取り出せるようになっている。
鍋11は、熱伝導性の良いアルミニウムを主材12とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13が、主材12の外面の側部下部から底部にかけて接合してある。鍋11は、米や水などの被炊飯物を収容するために有底筒状に形成され、その上端周囲には、外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成される。フランジ部14は、鍋収容部5に鍋11を収容したときに上枠3の上面に載置され、鍋収容部5と鍋11との間に隙間を形成した状態で、鍋11が鍋収容部5に吊設されるようになっている。
鍋収容部5は、椀状で樹脂製の内枠6や、金属製の内枠リング7などを組み合わせて構成され、全体が有底筒状に形成される。鍋11の外側面に対向する内枠リング7の外面には、加熱手段の一例としてコードヒータを用いた胴ヒータ8を備えている。また、鍋11の側面下部から底面に対向する内枠6の外面には、鍋11の発熱体13を電磁誘導加熱する加熱手段として、加熱コイル9を備えている。加熱コイル9の外周には、当該加熱コイル9を覆うように椀状のコイルカバー15が設けられている。また本体1の内部には、加熱コイル9に高周波電流を供給する加熱コイル駆動手段としての加熱基板組立16と、本体1外部からの冷却風を加熱基板組立16に送風するために、ファンとモータを組み合わせたファンモータ17がそれぞれ配設され、ファンモータ17の吸気口に臨んで、外枠4の底面部に本体1の内外を連通する通気孔18を設けている。
内枠6の底部中央部には、鍋温度検出手段としての鍋センサ21が、弾性手段となるスプリング22により、鍋11の外面底部と弾発的に接触するように配設される。本実施形態の鍋センサ21は、鍋11の温度を検知して加熱コイル9による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理する構成となっている。
蓋体2の前方上面には、蓋開ボタン23が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン23を押すと、本体1と蓋体2との係合が解除され、本体1の上部後方に設けたヒンジバネ(図示せず)により、ヒンジ軸24を回転中心として蓋体2が自動的に開く構成となっている。
蓋体2は、その上面外殻をなす外観部品としての外蓋27と、蓋体2の下面を形成する放熱板28と、外蓋27および放熱板28を結合させて、蓋体2の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー29とを主たる構成要素としている。また、蓋開ボタン23の後方には、外蓋27に収納される表示部31や操作部32を覆うようにして操作パネル33が配設される。蓋体2の内部にあって、放熱板28の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ35が設けられている。この蓋ヒータ35は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。
蓋体2の上部に設けられている操作パネル31の内側には、時間や選択したメニューなどを表示するLCD(液晶ディスプレイ)や、行程を表示するLED(発光ダイオード)などの表示部31の他に、各種スイッチなどの操作部32を基板に配置した表示基板組立37が配設される。操作部32は、例えば炊飯開始を指示する炊飯キーや、予約炊飯を行なうために指示する予約キーや、好みの炊飯コースを選択するコース選択キーなどの各種キーを含み、表示部31と別な位置に設けた押し釦式、および/または表示部31の上面に重ね合わせて設けたタッチ操作式の構成とすることができる。
放熱板28の下側には、蓋体2の下部部材としての内蓋組立体41が着脱可能に設けられる。この内蓋組立体41は、鍋11の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有し、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属製の内蓋42と、鍋11と内蓋42との間をシールするために、当該内蓋42の外側全周に設けられ、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなる蓋パッキン43と、蓋パッキン43を内蓋42の外側全周に装着するための内蓋リング44と、鍋11の内圧力を調整する調圧部45とを備えている。環状に形成された蓋パッキン43は、蓋体2を閉じた時(蓋閉時)に、鍋11のフランジ部14上面に当接して、この鍋11と内蓋42との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。
前記放熱板28には、蓋体2の特に内蓋42の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ35による内蓋42の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋センサ47が設けられている。また、蓋体2の上面後方寄り部には、蓋体2の上面側から着脱可能な蒸気口48が設けられる。蒸気口48と調圧部45は蓋体2の内部で連通しており、これらを含めて蓋体2の内部には、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出する通路としての蒸気排出経路49が形成される。
前記調圧部45には、鍋11の内部と蒸気口48との間の蒸気排出経路49を開閉する調圧弁51が設けられる。調圧弁51はボール状で、蓋体2の内部に設けたソレノイド52と連動し、鍋11内の蒸気を外部へ放出する場合には蒸気排出経路49を開放し、鍋11内を加圧または減圧状態にする場合には蒸気排出経路49を閉塞するように、ソレノイド52が調圧弁51を転動させる。そして加圧時には、加熱コイル9への高周波通電により鍋11内の被炊飯物が加熱され、鍋11の内圧が所定値に達すると、調圧弁51の自重に抗して蒸気排出経路49を開放することで、鍋11内の圧力を大気圧以上に維持する構成となっている。
なお、本実施例の炊飯器では、蓋2を本体1に閉じた状態で、鍋11の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段53(図5参照)を設けている。減圧手段53は、鍋11を鍋収容体5に収容し、蓋2を閉じた後にソレノイド52を通電して、調圧弁51が調圧部45の蒸気排出経路49を塞いだ状態で、密閉した鍋11の内部圧力を低下させる。また、鍋11内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧手段53の動作源となる減圧ポンプ54(図5参照)の動作を停止し、鍋11内部を減圧状態に保っている。さらに、鍋11内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ54の動作を停止し、減圧ポンプと鍋11の内部との間を連通する図示しない経路を開放する。つまり減圧手段53は、鍋11内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
加熱基板組立16は、胴ヒータ8および加熱コイル9への通電を制御するために、マイクロコンピュータ(マイコン)などで構成される制御手段55や、加熱コイル9に高周波の電力を供給する誘導加熱駆動用の半導体素子となるスイッチング素子56や、スイッチング素子56などの発熱部品を冷却するための放熱器57や、スイッチング素子56の温度を検知する素子温度検知手段58などを、制御基板59に搭載して構成される。放熱器57はアルミニウムなどの熱伝導性の良好な金属からなり、本体1の内部でファンモータ17の排気口に臨んで配置される。また、発熱素子の温度検知手段となる素子温度検知手段58は、使用温度上限に対し温度上昇が高い素子など、スイッチング素子56以外で温度条件が厳しい発熱素子の近傍に設置して、その温度を検知する構成としてもよい。
そして本実施形態では、制御手段55からの制御信号を受けて、ファンモータ17を通電動作させると、本体1底部の通気孔18を通して冷却風が本体1内部のファンモータ17に吸込まれ、ファンモータ17から放熱器57に冷却風を当てることで、スイッチング素子56を含む発熱部品から効率よく熱を奪って、発熱部品の温度上昇を抑制する構成となっている。
次に、鍋センサ21とその周辺の構成を図2〜図4に基づき説明する。なお図2は、本体1に鍋11が収容されていない鍋無し状態を示し、図3は本体1に鍋11が正しく収容された正常状態を示し、図4は鍋11と鍋センサ21との間に、例えば米粒などの異物Fが挟まれた異物挟み込み状態を示している。
これらの各図において、鍋センサ21は前述したように、ここでは図示しないスプリング22により上方向に常時付勢されており、鍋11を本体1の鍋収容部5に装着して、鍋センサ21の上面に鍋11の底面が接するようになると、鍋11の重量によりスプリング22の弾発力に抗して、鍋センサ21が鍋11と共に下方向へ移動する構成となっている。鍋センサ21は、下側を開口する一方で、上側を閉じた有天井で略円筒形状のセンサ本体61と、センサ本体61の下側部に延出するセンサフランジ62と、センサフランジ62に開口形成されるスリット63,63とにより外観が構成され、センサ本体61の上面部に接して、サーミスタなどの感熱素子(図示せず)が配設される。
センサ本体61の天井部は、鍋11の底部と面接触するように形成されることが望ましく、本実施形態では鍋11の底面形状に合わせて平坦に形成される。またスリット63,63は、横断面略円形である鍋センサ21の中心を対称点として、点対称に設けるのが望ましい。
64は、鍋センサ21の姿勢を含めた位置を非接触で検知する光電センサとしてのフォトセンサである。フォトセンサ64は対をなす発光部65と受光部66とを備えて、内枠6の底部中央部に設けられ、発光部65に電流を流して、当該発光部65から光軸Fの方向に光を照射させたときに、鍋センサ21の位置に応じた受光部65からの電気的なセンサ出力信号を、制御手段55に送信するように構成される。また、ここで使用するフォトセンサ64は、発光部65と受光部66とを向い合せた透過型フォトセンサで、図2に示す鍋無し状態や、図4に示す異物Fの挟み込み状態では、発光部65から発する光の光軸Lが、途中でセンサ本体61の下側部をなすセンサフランジ62に遮られて受光部66に到達せず、図3に示す正常状態では、発光部65からの光軸Lがスリット63,63を通って受光部66に到達するように構成される。
なお、本実施形態では透過型のフォトセンサ64を使用しているが、鍋センサ21が正常状態のときに、発光部65から鍋センサ21の表面に反射した光を受光部66で受ける反射型フォトセンサを使用してもよい。また、2つの透過型のフォトセンサ64を使用し、それぞれの光軸Lを90°ずらして配置することで、検出精度を向上させるように構成してもよい。この場合、それぞれのフォトセンサ64に対応して、鍋センサ21の側部にスリット63,63を設けるのが好ましい。
次に、制御手段55の制御系統について、図5を参照しながら説明する。制御手段51は、鍋センサ21や蓋センサ47や温度検知手段58からの各温度検知信号と、フォトセンサ64からのセンサ出力信号と、操作部32からの操作信号とを受けて、炊飯時および保温時に鍋11を加熱する胴ヒータ8や加熱コイル9と、蓋体2を加熱する蓋ヒータ35を各々制御すると共に、表示部31の表示を制御し、さらにはファンモータ17と、ソレノイド52と、減圧ポンプ54の動作を各々制御するものである。特に本実施形態の制御手段55は、鍋センサ21の検知温度に基いて主に加熱コイル9を制御して鍋11の底部を温度管理し、蓋センサ47の検知温度に基いて主に蓋ヒータ35を制御して、被炊飯物に対向する内蓋42を温度管理するようになっている。
制御手段55は、記憶手段70に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、操作部からの炊飯開始の指示を受けて、鍋11に投入した米の吸水を促進させるひたしと、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる加熱と、被炊飯物の沸騰状態を継続させる沸騰継続と、被炊飯物をドライアップ状態のご飯に炊上げる炊上げと、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらしの各行程を順に実行して、鍋11内部の被炊飯物に対する加熱を制御する炊飯制御手段71と、鍋11内部のご飯を所定の保温温度に保つように制御する保温制御手段72の他に、炊飯開始を指示した直後に、フォトセンサ64からのセンサ出力信号を読み取って、本体1に鍋11が正常に収容されたか否かを判定するエラー判定手段73と、炊飯や保温中に素子温度検知手段58からの温度検知信号を読み取って、ファンモータ17の動作を制御するファンモータ制御手段74と、を備えている。
次に、上記構成の炊飯器について、その作用を図6に基づき説明する。なお図6は、炊飯開始から炊飯終了に至るまでに、鍋11内の圧力値信号Pと、鍋センサ21の検知温度信号Taと、蓋センサ47の検知温度信号Tbと、加熱コイル9の消費電力となる出力信号Wがどのように変化するのかをそれぞれ示している。ここで、圧力値信号Pは鍋11内の圧力の上昇により、その電圧値が上がるのに対し、検知温度信号Taは鍋11の温度の上昇により、その電圧値が下がり、同様に検知温度信号Tbは蓋42の温度の上昇により、その電圧値が下がる。
先ず、炊飯時における動作を説明すると、本体1に対して蓋体2を開けた状態で、被炊飯物となる米や水を入れた鍋11を鍋収容部5に装着し、蓋体2を再び閉じる。そして、操作部32の炊飯開始キーを押動操作して炊飯開始を指示すると、制御手段55に組み込まれた炊飯制御手段71による炊飯が開始する。ここで炊飯制御手段71は、鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、鍋センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づき、胴ヒータ8と加熱コイル9を通断電制御して鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に一定時間保持するひたし行程を行なう。また鍋11内の米に対する吸水を促進させるために、このひたし行程中は減圧ポンプ54を一定時間動作させて減圧状態を保持するように、炊飯制御手段71が、ソレノイド52や減圧ポンプ54の動作を各々制御する。
その後、次の加熱行程に移行すると、炊飯制御手段71は加熱コイル9を連続通電することにより、ひたし行程よりも鍋11内部の被炊飯物を強く加熱し、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる。ここで炊飯制御手段71は、ひたし行程から引き続いて鍋11の内部を大気圧よりも低い減圧状態に維持するように、加熱行程開始から減圧ポンプ54を再度動作させ続ける。これにより、鍋11の内部は減圧されているため、鍋11に入れられた水の沸点が大気圧のときの沸点も低くなり、沸騰の開始が早くなる。沸騰の開始が早くなれば、その分、鍋11内での対流も激しくなり、結果として被炊飯物の温度ムラは低減されて、炊上がったご飯の炊きムラも抑制される。
従来の炊飯では、加熱行程から沸騰行程に至る時に鍋11内の熱対流が発生し、さらに沸騰時の気泡によってさらに激しい対流を起こすことで、鍋11内の被炊飯物の温度ムラが低減されていた。しかし、加熱が不足したり沸騰が弱かったりすると鍋11内の対流は弱くなり、その結果、被炊飯物に温度ムラが生じて炊上がりのご飯の炊きムラも大きくなっていた。
しかし本実施形態では、ひたし行程に引き続いて加熱行程中にも、減圧手段53により鍋11内を大気圧未満に減圧し続けると共に、加熱コイル9により鍋11への加熱を継続するように、炊飯制御手段71が減圧手段53の減圧ポンプ54や加熱コイル9を各々制御する構成としているので、鍋11内の被炊飯物を沸騰させる加熱行程で、鍋11内の気圧を大気圧未満に減らして沸点を下げることで、沸騰を早めることができる。また、減圧中にも加熱コイル9により鍋11への加熱を継続することで、気化熱による温度低下を防止して、加熱行程中の早くから沸騰状態を維持することができ、鍋11内で激しい対流を起こして、被炊飯物の温度ムラひいては炊上がったご飯の炊きムラを低減することができる。
こうして、加熱行程中に減圧手段53により鍋11内を大気圧よりも低く減圧し、沸点を下げた状態で、加熱コイル9により沸騰を維持するように加熱を継続して炊飯を行なっているときに、炊飯制御手段71は鍋センサ21からの温度検知信号を取り込み、鍋11の底部の検知温度が予め決められた温度に到達したら、加熱行程から沸騰行程に移行して、減圧手段53を構成する減圧ポンプ54の動作を停止させる。代わりに、鍋11内の圧力を図示しない圧力検知手段で検知することにより、鍋11内で蒸気圧が増大して鍋11内の圧力が大気圧に達したら、減圧ポンプ54の動作を停止するように炊飯制御手段71を構成してもよい。これにより、加熱行程中に減圧手段53が鍋11内を減圧しても、加熱コイル9による鍋11への加熱で、鍋11の温度が決められた温度に達したり、鍋11内の圧力が大気圧に達したりしたら、減圧ポンプ54の余計な動作を直ちに停止させることができる。
こうした減圧ポンプ54の動作を停止させた状態で、加熱制御手段71はソレノイド52を一時的に非通電にして、調圧弁51を蒸気排出経路49から退避させると、蒸気排出経路49は鍋11の内外を連通させた開放状態となり、鍋11内部は直ちに外気と同じ常圧に戻る。その後、ソレノイド52を短時間で通電状態に切替え、鍋11の内部を再び密閉した状態にすると、引き続き鍋11内部の被炊飯物への強い加熱により、鍋11内部の被炊飯物が大気圧以上の例えば1.2気圧に達するまで加圧され、その加圧状態で被炊飯物を沸騰させることができる。
沸騰行程において、炊飯制御手段71は、蓋センサ47の検知温度の傾き(所定の時間に検知温度がどの程度上昇するのか)を算出する。この検知温度の傾きが一定値以下になって安定したら、鍋11内部の被炊飯物が加圧状態で沸騰したと判断して、沸騰行程から沸騰継続行程に移行する。
沸騰継続行程に移行すると、炊飯制御手段71は蓋ヒータ35による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋42の温度が100℃になるように、蓋センサ47の検知温度により管理される。そして炊飯制御手段71は、鍋センサ21による鍋11の底部の検知温度が所定の温度上昇を生じたら、沸騰継続行程から炊上げ行程に移行し、ここで鍋センサ21の検知温度が所定のドライアップ温度に達すると、鍋11内部の被炊飯物の炊上がりを検知して、むらし行程に移行する。むらし中は蓋センサ47の検知温度による温度管理によって蓋ヒータ35を通断電し、内蓋42への露付きを防止すると共に、鍋11内部のご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、加熱コイル9を断続通電して、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(例えば12分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段72による保温状態に移行する。
次に、制御手段55に組み込まれたエラー判定手段73の動作について、エラー検出の手順を示す図7のフローチャートを参照して詳しく説明する。前述のように、炊飯開始指示手段となる操作部32の炊飯開始キーを押動操作することにより、ステップS1の「炊飯スタート」で炊飯開始が指示されると、エラー判定手段73は次のステップS2で、フォトセンサ64からのセンサ出力信号を取り込み、センサ出力信号が「High」すなわち高レベルであるか、或いは「Low」すなわち低レベルであるかを判定する。
ここで図3に示すように、鍋11が異物Fなどの挟み込みのない状態で、鍋収容部5に正しく収容された場合には、鍋11の底部にセンサ本体61の天井部が当接し、鍋11の重量が鍋センサ21に加わることにより、鍋センサ21がスプリング22の弾性力に抗して下方に移動する。そのため、発光部65から照射される光の光軸Lが、スリット63,63を通って受光部66に受光され、フォトセンサ64からのセンサ出力信号は「High」レベルとなる。エラー判定手段73は、ステップS2でフォトセンサ64から取り込んだセンサ出力信号が「High」レベルであると判定すると、鍋無しや異物挟み込みがないと判断して、前述した炊飯制御手段71による炊飯動作を行なわせる(ステップS3)。
一方、図2に示すように、鍋11が鍋収容部5に正しく収容されていない鍋無し状態では、鍋11の重量が鍋センサ21に加わることがなく、スプリング22の弾性力により鍋センサ21が鍋収容部5から突出する上方向に付勢される。そのため、発光部65から照射される光の光軸Lが、受光部66に達することなくセンサフランジ62に遮られる。また図4に示すように、鍋11と鍋センサ21との間に異物Fが挟まれた異物挟み込み状態では、フォトセンサ64に対して鍋センサ21が傾いたまま、鍋11の重量が鍋センサ21に加わり、鍋センサ21がスプリング22の弾性力に抗して下方に移動する。そのためこの場合も、発光部65から照射される光の光軸Lが、受光部66に達することなくセンサフランジ62に遮られる。エラー判定手段73は、ステップS2でフォトセンサ64から取り込んだセンサ出力信号が「Low」レベルであると判定すると、次のステップS4で鍋無しや異物Fの挟み込みなどのエラーを検知して、図示しないブザーなどの報知手段よりエラー通知音を発生させて使用者に通知する(ステップS5)。これにより、使用者は炊飯の開始時にその場を離れる前に、何らかの異常が炊飯器に発生したことをすぐに認識できる。
なお、鍋センサ21の位置を検出するフォトセンサ64が複数設けられている場合、鍋無しや異物挟み込みの異常検出精度を高めるために、エラー判定手段73はステップS2で、その全てのフォトセンサ64からのセンサ出力信号を取り込み、センサ出力信号の少なくとも一つが「Low」レベルであれば、ステップS3の炊飯動作には移行せず、ステップS4のエラー検知に移行して、ステップS5でエラー通知音を出力させる。何れにせよ、ステップS2におけるフォトセンサ64からのセンサ出力信号のレベル判定は、それまでに加熱コイル9などの加熱手段が鍋11を一切加熱することなく、エラー判定手段73で即座に行われる。
ステップS4で何らかのエラーが検知された場合、エラー判定手段73はさらに、従来の鍋無し検出を併用して、エラーの原因が鍋無しであるのか、或いは異物挟み込みであるのかを特定するのが好ましい。これは図7の点線で囲んだ手順Aに示すように、エラー判定手段73はステップS6で鍋無しであるか否かを判定するために、加熱コイル9を予め決められた設定出力で通電させ、加熱コイル9の加熱出力が一定レベル以下に達していれば、ステップS7に移行して、鍋無し状態のエラーであると判断する一方で、加熱コイル9の加熱出力が一定レベル以下に達していなければ、ステップS8に移行して、鍋無しではなく異物挟み込みのエラーであると判断する。こうして、フォトセンサ64からのセンサ出力信号を取り込むだけでなく、既存の鍋無し検出をエラー判定手段73に組み込んで、その判断結果を報知手段や表示部31で通知すれば、使用者がエラーの原因をすぐに認識し特定できる。
続いて、制御手段55に組み込まれたファンモータ制御手段74の動作について、炊飯から保温にかけての鍋11の温度変化を示す図8のグラフを参照して詳しく説明する。同図において、横軸は炊飯開始からの経過時間、縦軸は鍋11の温度で、破線は従来品の鍋11の温度変化を示しており、実線は本実施形態の炊飯器における鍋11の温度変化を示している。また、「制御開始」とあるのは、炊飯終了後の保温行程で、鍋11内に炊上がったご飯を、所定の温度(60℃)に維持する保温制御の開始に相当する。
従来の炊飯器は、スイッチング素子の温度上昇を抑えるため、炊飯中の全ての行程においてファンモータへの通電を行ない、ファンが回転し続けるように制御を行っていた。こうしたファンモータへの通電は、スイッチング素子の温度を下げる効果がある反面、ファンの風切り音による騒音や、ファンモータへの通電に伴う消費電力量の増加という問題があった。
そこで、本実施形態のファンモータ制御手段74は、炊飯開始からのひたし、加熱、沸騰、沸騰継続の各行程で、ファンモータ17を通電動作させるものの、炊飯動作が沸騰継続からむらしの行程に切替わったら、ファンモータ17への通電を停止させ、騒音や消費電力の低減(省エネ)を図っている。図8はそのときの鍋11の温度変化を示しているが、炊飯の途中でファンモータ17を停止させた本実施形態の炊飯器の方が、従来の炊飯中にファンモータを動作させ続ける従来品と比較して、保温制御の開始までの時間が長く、その分、加熱コイル9を通断電し始めるタイミングを遅くして、さらなる省エネを図ることが可能になる。
つまり本実施形態では、本体1に着脱可能に収容される炊飯用の内鍋としての鍋11と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル9と、加熱コイル9の電流を制御するスイッチング素子56を具備する制御基板59と、スイッチング素子56を冷却するための放熱器57と、放熱器57に送風するファンモータ17とを備えた炊飯器において、炊飯制御手段71による炊飯がむらし行程に切替わった時点で、ファンモータ17を停止させる構成として、制御手段55にファンモータ制御手段74を具備している。
この場合、炊飯の途中でファンモータ17の動作を停止させることで、モータ17の風切り音による騒音や、ファンモータ17への通電に伴う消費電力量を軽減することができる。また、ファンモータ17の送風に伴う本体1外部への熱の流出を抑えることで、炊飯時や保温時の消費電力を低減できる。
上記構成では、炊飯がむらし行程に切替わる前のひたし、加熱、沸騰、沸騰継続の各行程中に、素子温度検知手段58で検知されるスイッチング素子56の温度が、任意の設定温度よりも高いときにのみ、ファンモータ17を通電動作させるように、ファンモータ制御手段74を構成するのが好ましい。これにより、スイッチング素子56の強制冷却が必要な時にのみ、ファンモータ17を通電駆動させることにより、騒音と消費電力量の軽減について、より高い効果を得ることができる。
また、ファンモータ17を通電動作させる際に、素子温度検知手段58で検知したスイッチング素子56の温度に応じて、ファンモータ17の回転数を段階的若しくは連続的(リニア)に可変制御するように、ファンモータ制御手段74を構成するのが好ましい。ファンモータ17を単に通断電するのではなく、ファンモータ17の動作中に回転数を可変制御することで、騒音と消費電力量の軽減について、さらに高い効果を得ることができる。
素子温度検知手段58は、制御基板55上の任意の点として、例えば使用温度上限に対し温度上昇が高い素子の近傍に設置して、その素子の温度を検知する構成としてもよい。こうすれば、スイッチング素子56以外に温度条件の厳しい素子が搭載されていたとしても、その素子の近傍に素子温度検知手段58を設置すれば、当該素子の温度に合せて、ファンモータ17の駆動を制御することができる。
代わりに、素子温度検知手段58を設けることなく、加熱コイル9の通電に応じて、ファンモータ17の通電動作を制御する構成としてもよい。この場合、素子温度検知手段58を備えていない炊飯器でも、炊飯制御手段71による加熱コイル9への通電制御に合せて、ファンモータ17を効果的に駆動させることが可能になる。
次に、本実施形態に関連した変形例について、図9を参照して詳しく説明する。同図において、ここでは本体1内部の加熱基板組立16に熱電素子81が設けられ、蓋体2の内部に蓄電池82が設けられる。それ以外の構成は、図1〜図8で説明した炊飯器と共通する。
熱電素子81は、ゼーベック効果により熱エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有し、これは一側の受熱部81aと他側の放熱部81bとの間に生じる温度差により、電気エネルギーとなる起電力を発生するものである。本変形例の熱電素子81は、加熱基板組立16に搭載されたスイッチング素子56に受熱部81aが接触するように、ファンモータ17の上方に設置され、ファンモータ17からの冷却風が放熱部81bに直接当たるように配置されている。
蓄電池82は、熱電素子81で発生した電気エネルギーを蓄える蓄電手段として、蓋体2内部の表示基板組立37に設置される。蓄電手段は他にコンデンサなどを用いてもよく、表示基板組立37以外の任意の箇所に設置してもよい。また、スイッチング素子56以外の温度条件が厳しい素子に、熱電素子81の受熱部81aを接触させてもよい。
本変形例では、放熱器57や熱電素子81の放熱部81bを含む加熱基板組立16に、ファンモータ17からの冷却風を送風している。放熱器57は、加熱基板組立16に搭載される各種の発熱素子を冷却するために、本体1の内部に設けられる。
上記構成の炊飯器についてその作用を説明すると、炊飯時や保温時には、スイッチング素子56の通断電に伴い加熱コイル9に高周波電流を供給することで、鍋11の発熱体13が発熱して、鍋11内部の被炊飯物が加熱される。このときスイッチング素子56から発生する熱で、熱電素子81の受熱部81aも熱くなり、ファンモータ17からの冷却風で冷やされている放熱部81bとの間に温度差が生じることで、熱電素子81に電気エネルギーが発生する。この電気エネルギーは、表示基板組立17に設置された蓄電池82に蓄えられる。
そして、炊飯が終了して保温状態になると、炊飯時に蓄えられた電気エネルギーを、蓄電池82と同じく表示基板組立33に搭載された表示部31の、例えばメニューを表示するLCDや行程を表示するLEDに使用することにより、保温時の消費電力量を減らすことができる。また、予約した時刻に炊飯を開始または鍋11内部の被炊飯物を炊上げる炊飯予約時の待機状態で、蓄電池82に蓄えられた電気エネルギーを使用することで、予約設定から炊飯開始までの待機電力をゼロにすることも可能である。
従来の炊飯器では、省エネ性能の向上を目的として、炊飯時における被炊飯物への加熱量を減らし、消費電力量を下げることが行われていたが、これでは食味の低下につながる恐れがあった。しかし本変形例では、炊飯時に外部に排出している熱エネルギーを、熱電素子81で電気エネルギーに変換して回収し、蓄電池82に一時的に蓄えて利用することで、炊飯時の加熱量を下げることなく、省エネ性能を向上させることが可能になる。
つまり本変形例では、被炊飯物としての米を収容する鍋11と、その鍋11を収容する本体1と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル9を設けた炊飯器において、受熱部81aおよび放熱部81bを有し、その受熱部81aと放熱部81bとの間に生じる温度差により、電気エネルギーを発生する熱電素子81を備え、スイッチング素子56などの半導体素子から発生する熱を、熱電素子81の受熱部81aで受熱する構成としている。そのため、加熱コイル9により鍋11内の被炊飯物を加熱する際に、発熱素子から発生する熱を熱電素子81により電気エネルギーに変換して回収することで、被炊飯物への加熱量を減らすことなく、すなわち食味を低下させることなく、炊飯器として省エネ性能を向上させることが可能になる。
また、熱電素子81から発生した電気エネルギーを蓄えることが可能な蓄電手段として、蓄電池82やコンデンサを備えることで、熱電素子81からの電気エネルギーを蓄電手段で一時的に蓄えて、保温時の消費電力量を減らしたり、予約炊飯時の待機状態に待機電力を少なくしたりすることができる。
以上説明したように、本実施形態では、被炊飯物を収容する鍋11と、鍋11を着脱可能に収容する本体1と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル9と、鍋11の温度を検知する鍋温度検知手段としての鍋センサ21と、を備えた炊飯器において、本体1の内部にフォトセンサ64を搭載し、鍋11に接して応動する鍋センサ21の姿勢を含めた位置を、フォトセンサ64で非接触に検出する構成としている。
この場合、本体1に鍋11を正しく収容したときの鍋センサ21の位置は、本体1に鍋11を正しく収容していない鍋無し状態や、鍋11と鍋センサ21との間に異物Fが挟まった状態での位置とは異なる。したがって、鍋センサ21の位置を非接触のフォトセンサ64で検出すれば、鍋11をわざわざ加熱しなくても、炊飯を開始してからすぐに、異物Fの挟み込みだけでなく、鍋無しも検出することが可能となる。
因みに、フォトセンサ64が鍋センサ21ではなく、鍋11の姿勢を含めた位置を直接検出した場合、仮に鍋11と鍋センサ21との間に異物Fが挟まれていても、鍋11の位置が正常である限り、異常を検出することができず、そのまま炊飯加熱手段71による炊飯加熱が行われると、鍋11の温度検知が正しく行われなくなる。この点を考慮して、本実施形態では鍋11そのものではなく、鍋11の重量に応動する鍋センサ21の位置を、フォトセンサ64で検出する構成としている。
また本実施形態では、操作部32の操作に伴う炊飯開始と同時に、フォトセンサ64からの出力を取り込んで、本体1に鍋11が正しく収容されていない鍋無しや、鍋11と鍋センサ21との間の異物Fの挟み込みを判定し、その判定結果を通知する構成として、炊飯開始時にフォトセンサ64からのセンサ出力信号を取り込んで、鍋無しや異物挟み込みの有無を判定するエラー判定手段73をさらに備えている。
この場合、炊飯を開始すると、鍋無しや異物Fの挟み込みに関する判定結果がすぐに通知されるので、使用者がその場を離れる前に炊飯器の異常を認識することができる。
また、ここでのフォトセンサ64は、発光部65からの光を受光部66で受ける2つの透過型フォトセンサまたは反射型フォトセンサで構成され、前記光の光軸Lを好ましくは90°ずらして、2つのフォトセンサ64をそれぞれ配置するのが好ましい。
この場合、単独のフォトセンサ64ではなく、2つのフォトセンサ64を用いることで、鍋無しや異物挟み込みの異常検出精度を向上させることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、エラー判定手段73の判定結果に基づいて、鍋無しや異物挟み込みを使用者に通知するために、報知手段による報知音の音色を変えたり、表示部31でその旨を表示させたりすることが可能である。