JP2018168452A - 層状組織を有する高強度チタン銅条および箔 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のチタン銅は、Tiを1.5〜5.0質量%で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な断面をSTEM−EDXで厚み方向に沿って分析して得られるTi濃度曲線において、Ti濃度がTi濃度曲線におけるTi濃度の平均値未満である低濃度Ti層と、Ti濃度がTi濃度曲線におけるTi濃度の平均値以上である高濃度Ti層とが、厚み方向に交互に存在するCu及びTiの層状組織を有し、前記圧延方向に平行な断面内にて、高濃度Ti層におけるTi濃度の最大値と低濃度Ti層におけるTi濃度の最小値との差である層状組織中のTi濃度差が3質量%以上である。
【選択図】図1
Description
しかし、近年のコストダウン要求により、Cu−Ni−Sn系銅合金より比較的材料価格が安いチタン銅箔が使用されるようになり、その需要は増加しつつある。
チタン銅の強度を高める手段としては、たとえば特許文献3、4に記載されたものがある。特許文献3には、チタン銅の製造工程を溶体化処理、亜時効処理、冷間圧延、時効処理とし、溶体化処理後の熱処理を二段階に分けることにより、スピノーダル分解によるTi濃度の幅(濃淡)を大きくさせ、強度と曲げ加工性のバランスを向上させる方法が提案されている。また、特許文献4ではチタン銅の製造工程を溶体化処理、予備時効処理、時効処理、仕上圧延、歪取焼鈍とすることで、同様にTi濃度のゆらぎを大きくすることが有効と記載されている。
また、特許文献11では、800〜1000℃で厚み5〜20mmまで熱間圧延した後、加工度30〜99%の冷間圧延を行い、400〜500℃の平均昇温速度を1〜50℃/秒として500〜650℃の温度帯に5〜80秒間保持することにより軟化度0.25〜0.75の予備焼鈍を施し、加工度7〜50%の冷間圧延を行い、次いで、700〜900℃で5〜300秒間の溶体化処理、及び、350〜550℃で2〜20時間の時効処理を行うことにより、ヤング率を小さくすることがそれぞれ提案されている。
なお、本発明のチタン銅は、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される1種以上の元素を、総量で0〜1.0質量%さらに含有することができる。
本発明のチタン銅では、Ti濃度を1.5〜5.0質量%とする。チタン銅は、溶体化処理によりCuマトリックス中へTiを固溶させ、時効処理により微細な析出物を合金中に分散させることにより、強度及び導電率を上昇させる。
Ti濃度が1.5質量%未満になると、析出物の析出が不充分となり所望の強度が得られない。Ti濃度が5.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなる。強度及び加工性のバランスを考慮すると、好ましいTi濃度は2.5〜4.5質量%である。
本発明の一の実施形態のチタン銅では、Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、CrおよびZrのうち一種以上を総量で0〜1.0質量%含有させることにより、強度を更に向上させることができる。これらの元素の合計含有量は0、つまり、これら元素を含まなくてもよい。これらの元素の合計含有量の上限を1.0質量%とする理由については、1.0質量%を超えると、加工性が劣化し、圧延の際に材料が割れやすくなるからである。強度及び加工性のバランスを考慮すると、上記元素の一種以上を総量で0.005〜0.5質量%含有させることが好ましい。
本発明の一の実施形態のチタン銅では、圧延方向に平行な方向の引張強さが、たとえば1100MPa以上、さらには1200MPa以上を達成することができる。圧延方向に平行な方向での引張強さが1200MPa以上であることは、オートフォーカスカメラモジュールの導電性ばね材として利用する上で望ましい特性である。好ましい実施形態では、圧延方向に平行な方向及び垂直な方向の引張強さはともに1300MPa以上であり、さらに好ましい実施形態ではともに1400MPa以上である。
一方、引張強さの上限値について、本発明が目的とする強度の点では特に制限はないが、手間及びコストを考慮すると、圧延方向に平行な方向及び直角な方向の引張強さは一般には2000MPa以下であり、典型的には1800MPa以下である。
本発明においては、チタン銅の圧延方向に平行な方向での引張強さは、JIS Z2241:2011(金属材料引張試験方法)に準拠して測定する。
本発明の一の実施形態のチタン銅は、図1、2に例示するように、圧延方向に平行な断面に対して査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いたエネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析(STEM−EDX分析)を行った場合、圧延方向に平行な断面に、Ti濃度が平均濃度未満である低濃度Ti層と、Ti濃度が平均濃度以上である高濃度Ti層とが、厚み方向(図1では上下方向)に交互に存在するCuとTiの層状組織を有する。
このようなCuとTiの層状組織が圧延方向に平行な断面に連続的に安定して存在することにより、たわみに対する抵抗が強化されて永久変形が生じ難くなり、仮に厚みが0.1mm以下の薄い銅箔であっても、へたりを有効に抑制することができると考えられるが、本発明はこのような理論に限定されるものではない。
この「層状組織」とは、濃度Ti層と高濃度Ti層とが交互に存在する組織であり、それぞれの層が圧延方向に50nm以上連なるものとして定義される。また、圧延方向に対する層の長さが50nm未満であるものは斑点組織と定義される。
そして、Ti濃度曲線から、各高濃度Ti層の最もTi濃度が高くなる点のうちTi濃度が高い順から5点のTi濃度の平均値と、各低濃度Ti層の最もTi濃度が低くなる点のうちTi濃度が低い順から5点のTi濃度の平均値との差(層状組織中のTi濃度差)を求める。なお、CuとTiの層状組織は圧延方向と平行に発現されることから、上記の線分析は必ず、チタン銅の厚み方向に対して行う。
本発明のチタン銅は、たとえば厚みが0.1mm以下であり、典型的な実施形態では厚みが0.018mm〜0.08mmであり、より典型的な実施形態では厚みが0.02mm〜0.06mmである。
上述したようなチタン銅を製造するには、まず溶解炉で電気銅、Ti等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を得る。そして、この溶湯を鋳型の鋳造空間に供給し、ここでインゴットに鋳造する。チタンの酸化磨耗を防止するため、溶解及び鋳造は真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
鋳型の厚みは特に指定しないが、インゴットの厚みと同程度に調整することが望ましい。鋳型の周壁部分の厚みは、インゴットの厚みと平行な方向に沿って測るものとする。
また、残留歪の除去等の目的に合わせて冷間圧延3の後に200〜500℃で1〜5minの歪取焼鈍を行うことができ、不必要である場合には省略することもできる。
本発明に係るチタン銅は、限定的ではないが、スイッチ、コネクタ、ジャック、端子、リレー等の電子機器用部品の材料として好適に使用することができ、とりわけオートフォーカスカメラモジュール等の電子機器部品に使用される導電性ばね材として好適に使用することができる。
まず、真空溶解炉にて電気銅2.5kgを溶解し、表1に記載の合金組成が得られるよう合金元素を添加した。この溶湯を以下に示す鋳型に鋳込み、厚さ30mm、幅60mm、長さ120mmのインゴットを製造した。このインゴットを、次の工程順で加工し、表1に記載の所定の厚みをもつ製品試料を作製した。
(1)溶解鋳造:鋳造温度は1300℃とし、鋳型は耐火煉瓦、鋳鉄、銅から選択し、鋳造時の冷却速度を変化させた。冷却速度は速い順に銅、鋳鉄、耐火煉瓦である。鋳型の厚みは30mmとした。
(2)予備焼鈍:予備焼鈍条件は表1に示す通りとした。
(3)熱間圧延:上記のインゴットをさらに950℃で3時間加熱し、厚さ10mmまで圧延した。
(4)研削:熱間圧延で生成した酸化スケールをグラインダーで除去した。研削後の厚みは9mmであった。
(5)冷間圧延1:圧下率に応じて所定の厚みまで圧延した。
(6)溶体化処理:800℃に昇温した電気炉1に試料を装入し、5分間保持した後、試料を水槽に入れて急冷却した。
(7)冷間圧延2:後述の冷間圧延3を実施しなかったものについては、表1に示す圧下率で表1に示す製品厚みまで圧延した。
(8)時効処理:表1に示す条件の下、Ar雰囲気中で加熱した。
(9)冷間圧延3:冷間圧延3を実施したものについては、表1に示す圧下率で表1に示す製品厚みまで圧延した。なお、冷間圧延3を実施しなかったものについては「‐」としている。
(10)歪取り焼鈍:冷間圧延2又は冷間圧延3を行った後、400℃に昇温した電気炉に試料を装入し、10秒間保持した後、試料を水槽に入れて急冷却した。表1には、この歪取り焼鈍を実施したものについては歪取り焼鈍の温度及び時間を記載し、実施しなかったものについては「‐」と記載した。
<引張強さ>
JIS Z2241:2011に基き、引張試験機を用いて上述した測定方法に従い圧延方向と平行な方向の引張強さを測定した。
幅15mm、長さ25mmの短冊試料を長手方向が圧延平行方向となるように採取し、図7のように、試料の片端を固定し、この固定端から距離Lの位置に、先端をナイフエッジに加工したポンチを1mm/分の移動速度で押し当て、試料に距離dのたわみを与えた後、ポンチを初期の位置に戻し除荷した。除荷後、へたり量δを求めた。
試験条件は試料の箔厚が0.05mm以下の場合、L=3mm、d=2mmとし、箔厚が0.05mmより厚い場合、L=5mm、d=4mmとした。また、へたり量は0.01mmの分解能で測定し、へたりが検出されなかった場合は<0.01mmと表記している。
先述したように、圧延方向に平行な断面に対してSTEM−EDXにより観察を行い、それによる画像から層状もしくは斑点のいずれの組織であるかを判断した。ここで用いた査型透過電子顕微鏡は、JEOL社製のJEM−2100Fであり、測定条件は試料傾斜角度0°、加速電圧200kVとした。
また、STEM−EDXで圧延方向に平行な断面を厚み方向に線分析し、厚み方向の距離に対するTi濃度曲線を得た。また、Ti濃度曲線の解析により、層状組織中のTi濃度差を求めた。
Claims (7)
- Tiを1.5〜5.0質量%で含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなり、圧延方向に平行な断面をSTEM−EDXで厚み方向に沿って分析して得られるTi濃度曲線において、Ti濃度がTi濃度曲線におけるTi濃度の平均値未満である低濃度Ti層と、Ti濃度がTi濃度曲線におけるTi濃度の平均値以上である高濃度Ti層とが、厚み方向に交互に存在するCu及びTiの層状組織を有し、前記圧延方向に平行な断面内にて、高濃度Ti層におけるTi濃度の最大値と低濃度Ti層におけるTi濃度の最小値との差である層状組織中のTi濃度差が3質量%以上であるチタン銅。
- 前記層状組織中のTi濃度差が3〜50質量%である請求項1に記載のチタン銅。
- 圧延方向に平行な方向の引張強さが1100MPa以上である請求項1又は2に記載のチタン銅。
- Ag、B、Co、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、P、Si、Cr及びZrから選択される一種以上の元素を、総量で0〜1.0質量%さらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のチタン銅。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載のチタン銅を備えた電子機器部品。
- 電子機器部品がオートフォーカスカメラモジュールである請求項5に記載の電子機器部品。
- レンズと、このレンズを光軸方向の初期位置に弾性付勢するばね部材と、このばね部材の付勢力に抗する電磁力を生起して前記レンズを光軸方向へ駆動可能な電磁駆動手段を備え、前記ばね部材が請求項1〜4のいずれか一項に記載のチタン銅であるオートフォーカスカメラモジュール。
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