JP2018167999A - 多孔質焼結体および空気浄化装置 - Google Patents

多孔質焼結体および空気浄化装置 Download PDF

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Abstract

【課題】化合物超微粒子を前駆体とする基板の無い自立した多孔質焼結体の製造方法と、空気中の毒性あるいは悪臭気体分子の分解および病原体となる有機物質を除去するための、光触媒超微粒子の量子効率のさらなる向上を図りうる多孔質焼結体を用いた空気浄化装置を提供する。【解決手段】加熱処理をした超微粒子前駆体を加圧成型した後、表面官能基の解離温度領域で焼結をする。焼結温度と焼結時間をパラメータとして空隙サイズの制御を行う。空気浄化装置は、一または複数の光触媒フィルタ1と、励起光源装置2と、給排気装置3と、筐体4と、を備えている。光触媒フィルタ1は、本発明の一実施形態としての多孔質焼結体の自立膜によって形成されている。この多孔質焼結体の自立膜は、光触媒物質の超微粒子の表面官能基が解離して生成するダングリングボンド同士が結合し、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれている。【選択図】 図11

Description

本発明は、化合物超微粒子を前駆体とする多孔質焼結体の製造とその応用としての人体に有害な気体有機分子および大気中のウィルスなどの病原体や花粉等の有機物質の分解除去を目的とする光触媒フィルタ等に関する。
基板上に形成された多孔質セラミクス薄膜は、電極の絶縁材・電荷透過膜など機能性素材として利用されている。一般に、微粒子の焼結には加圧成型が必要と考えられている。しかし、多孔質焼結体の作製には加圧成型の利用は難しい。このため、これらの薄膜は焼結助剤を混入しセラミクス微粒子を有機溶剤中に混ぜて泥漿として基板に塗布して焼結して作製される。しかし、基板のない自立した多孔質焼結体を、溶剤や焼結助剤を用いずに加圧成型しないで作製することは行われていない。
酸化チタン(チタニア、TiO2)などの一部の化合物は、励起光を吸収すると電子・正孔対を生成し、電子および正孔は化合物表面でそれぞれ還元反応と酸化反応を起こす。これらの化合物を光触媒、この現象を光触媒作用と呼ぶ。当該酸化作用によって、光触媒表面では気体有機分子が分解されまたは病原体等の有機物質が分解される(非特許文献1および2参照)。光触媒を利用した製品の実用化には大きな期待が寄せられ、すでに建築物の外壁の防汚、衛生陶器の防汚と防臭および外科手術室壁面タイルでの殺菌を目的とする酸化チタンコーティング製品が市場に投入されている(非特許文献3参照)。
Paul T. Anastas, John C. Warner、(日本化学会・科学技術戦略推進機構訳編・渡部正、北島昌夫訳)、"グリーンケミストリー"、P29、丸善(1999) 橋本和仁・藤嶋 昭、"酸化チタン触媒のすべて−抗菌・防汚・空気浄化のために−"シーエムシー(1998) 「光触媒応用技術」橋本和仁監修 橋本和仁、坂井伸行、入江 寛、高見和之、砂田香矢之著 東京都書(2007)
本発明は化合物超微粒子を前駆体とする、空隙サイズが1〜3000[nm]と広い範囲に及ぶ、自立した多孔質焼結体を作製する方法を提供する。この多孔質焼結体を透過フィルタとして利用すると、触媒あるいは触媒担持体の表面積がけた違いに大きくなるので表面で起きる触媒作用の効率化を促進することができる。
例えば、光触媒作用の優劣は、吸収した光子数に対する生成物質の生成に要した電子・正孔の対の数の割合(量子効率))([非特許文献4] 「実力養成化学スクール 光触媒」日本化学会[編]藤嶋昭[責任編集]丸善株式会社(2005)参照)の高低によって評価されるところ、既存の光触媒を用いた製品の量子効率は十分に高いとは言えない。本発明は、量子効率のさらなる向上を図りうる光触媒超微粒子焼結フィルタを提供する。
本発明の化合物超微粒子焼結体は、表面官能基が解離する温度領域で焼結を行うことによって超微粒子の表面ダングリングボンドを持つ原子同士を結合させ、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれていることを特徴とする。
焼結前駆体が触媒である場合には、表面積を大きくできるので触媒作用効率化を実現する。さらに焼結前駆体中に微粒子状あるいは超微粒子状の触媒や助触媒を混入し均一化して焼結することによって、これら触媒や助触媒が均一に分散した多孔質焼結体を作製する。
本発明の空気浄化装置は、本発明の光触媒超微粒子焼結体をフィルタとして備えていることを特徴とする。
本発明の空気浄化装置が、光触媒超微粒子焼結フィルタにおいて電子を励起し、正孔を生成するために前記光触媒超微粒子焼結フィルタに対して励起光子を放射するための励起光源装置をさらに備えていることが好ましい。
本発明の空気浄化装置が、空気に前記光触媒超微粒子焼結フィルタを通過させる給排気装置をさらに備えていることが好ましい。
本発明の空気浄化装置の筐体の内壁面の少なくとも一部が、前記光触媒超微粒子焼結体により構成されているまたは被覆されていることが好ましい。
(化合物超微粒子を用いた多孔質焼結体の製造方法)
本発明は、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に及ぶ自立した多孔質焼結体を作製する方法を提供する。化合物微粒子を前駆体とする焼結体の作製では、溶媒や焼結助剤を用いて基板の上に作製されている。超微粒子(粒径1〜100[nm]の範囲に含まれる粒子)を焼結前駆体として用い、表面の官能基の解離する温度領域で超微粒子同士が結合することにより(あるいは超微粒子の表面官能基が解離して生成したダンブリングボンドを持つ原子同士が結合することにより)、単位体積当たりの結合数が大きく機械的強度の大きな、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれている自立した多孔質焼結体を作製することができる。これにより、本発明の多孔質焼結体の密度は、バルク物質の数分の1となり、単位質量に対する表面積割合あるいは単位体積に対する表面積割合(いずれも比表面積という。)の著しい増大が図られている。表面官能基の解離する温度は、例えば、チタニア(TiO2)およびシリカ(SiO2)では600℃〜700℃と、比較的に低い温度なので混入した金属や酸化物の微粒子・超微粒子が偏析することなく均一に分布した多孔質体を作製できる。
(光触媒フィルタを用いた空気浄化装置)
本発明では量子効率の向上と有機物質の酸化の効率化が図られている。一般的に、量子効率は、入射した励起光子に対する酸化に寄与する正孔数の割合と考えることができる([非特許文献4]参照)。入射して電子を励起して正孔を生じるのは一部の光子で、そのほかは正孔を生成しないで消滅する。さらに、生成した正孔の一部は拡散して表面に到達する前に電子と再結合して消滅するので、酸化作用の場である表面に到達する正孔は限られている。
これらの過程が競合するため、光触媒の量子効率は大きくはない。これに対して、本発明の光触媒超微粒子焼結フィルタによれば、超微粒子(例えば、粒径1〜100[nm]の範囲に含まれる粒子)同士が結合することにより(あるいは超微粒子の表面官能基が解離して生成したダンブリングボンドを持つ原子同士が結合することにより)、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれている。
これにより、本発明の光触媒超微粒子焼結フィルタの密度は、バルク物質の数分の1となり、単位質量に対する表面積割合あるいは単位体積に対する表面積割合(いずれも比表面積という。)の著しい増大が図られている。このため、光触媒超微粒子焼結フィルタにおいては、小さな体積でも光触媒作用の場である表面積が大きいばかりでなく、光子の吸収励起によって生成した正孔および電子が超微粒子中を拡散して表面に到達する確率は、バルク物質と比較して著しく高くなる。よって、本発明の多孔質焼結体フィルタによれば、量子効率の増大が図られる。
空気浄化装置が励起光源装置を備えている場合、光触媒フィルタ中の励起光子密度を増加させることができるので、フィルタ表面の正孔数密度を大きくできる。この結果、気体有機分子および大気中のウィルスなどの病原体等が光触媒フィルタの空隙内壁等に衝突した場合、これら物質の酸化・分解が効率的に行われる。光触媒超微粒子焼結フィルタでは同じ表面積を持つバルク物質に比べて体積が桁違いに小さいので、紫外光ランプなどによって励起光子密度を増加することは極めて容易である。
空気浄化装置は、ある程度閉じた空間あるいは目的とする有機分子の排出源に直結して使用されてもよい。空気浄化装置が給排気装置を備えている場合、気体有機分子および大気中のウィルスなどの病原体等の有機物質は強制的に多孔質焼結体の空隙を通過させられる。これらの有機物質の熱運動の速度は空間座標x軸、y軸およびz軸方向に等しい速度成分を持っており、それぞれ強制吸排気による群速度よりも1000倍以上大きい。光触媒超微粒子焼結フィルタの気孔または空隙の径が十分に小さいので、気孔または空隙を通過する間にこれら有機物質は超微粒子空隙の内壁と無数の衝突を繰り返す。このように有機物質の光触媒物質表面と衝突する回数が多く、また衝突した場所の正孔の数密度が大きいので、本発明の空気浄化装置は大気中の有機物質を効率的に酸化・分解することができる。
空気浄化装置筐体の内壁面を光触媒超微粒子の多孔質焼結体とすることによって酸化・分解の効率を大きくするとともに、特に光触媒超微粒子焼結フィルタの気孔または空隙の径よりも大きな大気中の有機物質を酸化・分解してフィルタを通過できる大きさにすることができる。
化合物超微粒子の加圧成型方法に関する説明図。 加熱処理中に荷重を加えるための型枠および荷重の説明図。 表面官能基と吸着分子による表面層に関する説明図。 超微粒子の加圧圧力および成型体の密度の関係に関する説明図。 金属超微粒子と化合物超微粒子のエネルギーダイアグラム。 表面原子の再配置によって現れる構造に関する説明図。 熱処理温度によるシリカ焼結体中の空隙サイズの変化に関する説明図。 熱処理温度によって変化するシリカ超微粒子成型試料(試料1)の赤外吸収スペクトル。 熱処理温度によって変化するシリカエアロゲルSP15試料(試料3)の赤外吸収スペクトル。 坩堝に入れたシリカ超微粒子の蓋あり状態で加熱処理後の様子に関する説明図。 坩堝に入れたシリカ超微粒子の蓋なし状態で加熱処理後の様子に関する説明図。 超微粒子間の臨界間隔に関する説明図。 物質中の空隙を通過する有機物質と内壁との衝突に関する説明図。 本発明の一実施形態としての空気清浄装置の構成説明図。
(多孔質焼結体(化合物超微粒子の焼結体)の製造方法)
化合物超微粒子として、例えば平均粒径5[nm]のTiO2の超微粒子が用いられる。なお、TiO2、CaIn24等の光触媒物質あるいは触媒効果を持つAl23やSiO2などのほか、ZrO2、ZnO、BaTiO3、BN、Si34,AlNなどの超微粒子により多孔質焼結体が作製されてもよい。この場合も、多孔質焼結体の作成方法は同様である。また、これら化合物および金属や金属酸化物の超微粒子の混合原料(金属の混合比は例えば0.1〜3%である)により多孔質焼結体が作製されてもよい。金属や金属酸化物が触媒効果(Ni、Fe,Co,Pd、 Pt、 Ag、Rhなど、MoO3、V25、Fe23、Cr23、MgO)あるいは助触媒効果(Pt、NiOx、RuO2、Rh2-xCry3など)を奏する場合、多孔質焼結体は触媒担持フィルタとして用いられる。
空隙サイズに応じ、多孔質焼結体を以下の2つの実施形態で作製する。
(第1実施形態)
前記のように製造された化合物の超微粒子が、図1Aに示されているように、型枠を用いて加圧成型されることにより、化合物バルクの密度の数分の1〜10分の1程度の密度を有する成型体が作製される。成型体の体積の大部分は、超微粒子表面層の表面官能基と外部の空間に通じた空隙により占められている。このときの圧力は100〜900[kg/cm2]で、成型体を型枠から取り出すときに破壊しない程度の圧力であればよい。加圧した場合の空隙サイズは10nm〜20nm程度なので、成型体を焼結して作製される多孔質体の空隙サイズは20nm以下となる。
次に、成型体を表面官能基が解離する温度領域で熱処理する。これにより、超微粒子の表面から官能基が解離し、ダングリングボンドが生成される。異なった微粒子の表面に存在するダングリングボンドを持つ原子同士の結合が生じるとともに超微粒子の焼結が開始される。
焼結が進行するにつれて焼結体は収縮し、焼結体の空隙サイズが減少する。焼結の進行度合いを加熱時間によって調節して、目的とする空隙サイズの化合物超微粒子多孔質焼結体を製造する。
加熱時間は加熱温度に依存するので、焼結のパラメータは焼結時間および焼結温度である。焼結の始状態の空隙サイズは、成型体の加圧圧力によって決定できるので加圧圧力もパラメータとなる。質量の小さな超微粒子では、気体分子の衝突によって容易に成型体の外部に反跳を受けて飛散してしまう。反跳を受けて超微粒子が飛散するのを防ぐために、熱処理によって吸着分子を除去した焼結前駆体を使用する、あるいは吸着気体分子が解離する温度領域で加熱温度を一定にして緩やかにしかも十分に吸着分子を脱離・排除することが好ましい。さらに表面官能基が解離する温度領域で熱処理することによって、表面官能基の解離・分解を緩やかに行い、気体分子の時間当たりの放出率を小さくして超微粒子の反跳を小さくしてもよい。表面官能基が解離する温度領域で気体分子の放出後には超微粒子の反跳は起きないのでので、温度を300℃程度上昇させて焼結を行ってもよい。表面官能基の解離温度は、例えば、チタニア(TiO2)およびシリカ(SiO2)表面の水酸基(−OH)では600℃である。製造コストの観点からは、可能な限り焼結温度を低くかつ焼結時間を短くという、二つの相反する要請を最適化することが重要である。なお、HIPにより多孔質焼結体が製造されてもよい。
(第2実施形態)
加圧成型に替えて、化合物超微粒子を型枠に入れて荷重(0〜100[kg/cm2])を加えながら焼結を行ってもよい。この場合は、型枠の上に蓋を置いて化合物超微粒子に荷重が加わるようにしてもよい。型枠や荷重を加えるための重量物は、焼結体の汚染を避けるためにモリブデン、タンタルあるいはタングステンなどの高融点金属の利用が好ましい。図1Bに示されているように、型枠に入れた化合物超微粒子に一軸方向に荷重(0〜100[kg/cm2])を加えながら熱処理が行われる。これにより、第1実施形態と同様に化合物超微粒子の多孔質焼結体が製造することができる。この方法は、HPと同じであるが、化合物超微粒子を前駆体とするときには、さらに荷重0の場合でも焼結体の作製が可能である。荷重0の場合であっても放出される気体分子の衝突による反跳によって超微粒子が飛散するのを防ぐために、タングステン箔などで蓋をすることが好ましい。反跳を受けて超微粒子が飛散する効果を小さくするために、熱処理によって吸着分子を除去した焼結前駆体を使用する、あるいは吸着気体分子が解離する温度領域で加熱温度を一定にして十分に吸着分子を脱離・排除することが好ましい。
(粉砕による超微粒子製造法)
化合物においては、電気陰性度が大きい原子が負に偏極し、結合相手の原子が正に偏極している。このため、大気中では分極が大きい水分子の水素原子が正に偏極した原子に吸着し、負に偏極した原子に酸素原子が吸着する。吸着が起きると化合物の結合が開裂してそれぞれの原子には表面官能基(−OH)が形成される(図2参照)。この結果、大気中の化合物表面は官能基により覆われている。表面官能基には水分子が水素結合し、さらに多数の気体分子が物理吸着して表面層が形成されている(図2参照)。表面層の厚さは数nmと考えられるので、この程度の表面層の影響は微粒子(粒径100[nm]以上)ではほとんど無視することができる。しかし、粒径100[nm]以下の超微粒子では比表面積が極めて大きく、表面層の影響は無視できなくなる。例えば、粒径10[nm]の超微粒子では全原子の2割の粒子が表面原子であり、粒径2[nm]程度の超微粒子ではほとんどすべての原子が表面原子と考えられる。このため、固体および気体のいずれとも異なる特徴を示すとともに表面エネルギーが高いことから化学的活性が極めて大きい。このため、粒径10[nm]の超微粒子表面に厚さ1[nm]の表面層が形成されているとしても、表面層を含めた全体積に対する表面層の割合はおよそ40%にもなる。
図3には、表面層の効果が、シリカ超微粒子(粒径約7[nm])を圧縮成型した時の密度変化および圧力の相関関係として表わされている。シリカ超微粒子試料に対して400[kg/cm2]の圧力を加えた場合、成型体の密度が0.45[g/cm3]にしかならないのは、van der Waals力による斥力の効果とともに、表面層を含めた見かけの粒径が本体の超微粒子の粒径よりも大きいためであると考えられる。シリカ超微粒子の密度は2.2[g/cm3]なので、成型体の体積のおよそ80%を空隙と表面層が占め、そのうちの半分は表面層と見積もられる。
乾式粉砕法またはジェット流粉砕法によって機械的な力を加えた場合、微粒子の粒径が小さくなるとそれ以上に粒径を小さくすることが困難になるといわれる([非特許文献5]守吉佑介、笹本 忠、植松敬三、井熊泰郎、門間英毅、池山隆康、丸山俊夫著、「セラミックスの焼結」2版、1998年、内田老鶴圃 参照)。このため超微粒子の製造には大きなエネルギーが必要となり、また粉砕媒体の損傷と不純物混入の問題も生じるといわれている。
材料力学の見地からすれば、不思議な現象である。固体の粉砕が剪断によって起きるとき、そのために必要な力Fは、1/d2に比例して小さくなるはずである。ここで、dは超微粒子の粒径、剪断に必要な剪断応力および剪断面垂直応力は、同じ物質であれば粒径によらず一定と考えている。したがって、粒径が小さくなるとともに小さな力で粉砕できるはずである。また、表面エネルギーを考えても、粒径の小さな粒子ほど表面エネルギーが高く不安定なので壊れやすくなるはずである。
粒径が小さくなると機械的な力によって粒径を小さくすることが困難になる原因の一つは、粒径が小さくなると微粒子中の欠陥および粒界が少なくなるためと考えられる。また、もう1つの原因として、大きな体積割合を占める表面層による保護効果が考えられる。表面層によって粉砕法で加えられる機械的な力は分散され、目的とする微粒子本体に加えられる力が小さくなってしまうと考えられる。表面層を含めた実際の粒子の断面積が大きいので、同じ大きさの力を加えても応力は小さいと考えてもよい。
表面層の保護効果が生じないようにして、TiO2等の化合物超微粒子を次のようにして製造する。
(1)原料となる超微粒子を熱処理して、表面吸着分子(主として水分子)を除去する。これによって表面層の厚さを1/3以下にできる。シリカ超微粒子の場合には、熱処理温度は400[℃]である。熱処理を、窒素気体、希ガス雰囲気あるいは真空中で行うことによって吸着分子の除去を効率化できる。
(2)熱処理した超微粒子を、吸着性の小さな窒素気体、希ガス雰囲気あるいは真空中で粉砕する。超微粒子のvan der Waals力による凝集を防ぐために、窒素気体、希ガス雰囲気中の粉砕が好ましい。
(3)粉砕法としては、通常の乾式粉砕法またはジェット流粉砕が利用できる。いずれの方法でも、吸着分子による保護効果は小さい。このようにして製造された超微粒子の分級は、飛散法にしたがって行う。
(焼結)
超微粒子がその物質の融点より低い温度で結合することを利用した焼結法は、金属の分野では焼結冶金また化合物の分野ではセラミックスとして技術的に確立されている。
しかし、純金属超微粒子を除いては、焼結のメカニズムはまだ解明されていない。真空中において粒径ナノメータの超微粒子の融点は室温程度にまで低下することが報告されている([非特許文献6]G. Schmid and B.Corain, European Journal of Inorganic Chemistry 17 (2003):3081- 3098.参照)。粒径が約1〜100[nm]の超微粒子では、表面原子の占める割合が著しく大きいために、同じ原子数のバルクと比較すると高い表面エネルギーを持っている。一般に表面を形成するのに必要なエネルギーの1/2を表面エネルギーと呼ぶ。ここで、1/2とあるのは、1回の生成で表面は常に2つ生じることを表している。このため、室温程度の温度でも金属超微粒子では表面の物質が移動し、表面張力によって表面積を小さくなるように焼結が進む。大気中の化合物超微粒子についても、真空中の金属超微粒子の焼結と同じ説明がなされている。例えば、「非金属あるいは金属の粉体を加圧成型したものを融点以下の温度で熱処理した場合、粉体間の結合が生じ成型した形で固まる現象」を焼結と定義し、「焼結の駆動力は粉体の持つ余分の表面エネルギーである。加熱処理をすると、表面エネルギーを減少させようとする方向、つまり表面積を減少させる方向に物質移動が起こり、粒子同士の結合が起きる。」とされている([非特許文献7]「理化学辞典」第4版(1987)岩波書店 参照)。
確かに、結合相手の原子を持たない表面原子は、表面原子を生成するために必要なエネルギーの1/2に相当する分、バルク中の原子よりも高いエネルギー状態にある。金属微粒子の化学活性は、粒径が小さくなって比表面積が大きくなるとともに増加し、大気中では気体分子と容易に反応して酸化物を生じる。酸化物が形成されると、さらに表面には水分子などが吸着して水酸基などが形成されるとともに、水酸基などとの水素結合によって吸着する気体分子が増加して表面層が形成されている。これらの過程によって微粒子の表面エネルギーは低下し、安定化されている。図4には、金属超微粒子および化合物超微粒子のエネルギーダイアグラムが示されている。エネルギーダイアグラムに示すように大気中の金属超微粒子では、表面のエネルギー状態の安定化はまず酸化によって生じる。大気中で表面に酸化皮膜が形成されると、焼結が阻害されることが知られている。この阻害効果を抑制するために、還元性気体中、希ガス中あるいは真空中で行われる金属超微粒子の焼結は真空焼結と呼ばれている。大気中の金属微粒子の焼結を、真空中の金属微粒子の焼結と同視することはできない。
(化合物微粒子の焼結と表面エネルギー)
真空中の化合物の表面原子では、結合相手の原子が存在しないので再配置が起き、ダングリングボンド同士が結合してエネルギー的な利得が起きている(図4参照)。その結果、バルク中の原子の構造と異なる構造が表面にあらわれる(図5参照)。しかし、このように再構成された表面では、表面原子のエネルギー状態はバルク中の原子のエネルギー状態よりも高い。シリカを例に説明すると、Si−O−Si結合の結合角が小さく歪み、歪のエネルギー分だけ高いエネルギー状態にある。シリカ超微粒子について、エネルギー的に安定な内部とエネルギー状態の高い表面からなる2層構造が、シェルモデルとして理論的に説明されている。このモデルでは超微粒子の小さな曲率半径も考慮されている([非特許文献8]I.V.Schweigert, K.E.J.Lehtinen, M.J.Carrier and M.R.Zachariah, Phys.Rev.B, 16 (2006) 235410−1−9参照)。
真空中の金属超微粒子の焼結をモデルとした表面エネルギーによる焼結の説明は、大気中の化合物微粒子の焼結の説明としては適切ではない。大気中の焼結では、表面官能基および吸着物質の影響を考慮する必要がある。図4のエネルギーダイアグラムから理解できるように、化合物超微粒子が大気中に置かれると、結合角に歪の大きな原子間の結合から開裂が始まって気体分子が化学吸着し、表面は官能基で覆われてしまう。この結果、表面層の結合角の歪みが解消されるので、表面のエネルギー状態は安定化する。つまり表面の官能基が除去されない限り、表面エネルギーが高く化学的に不安定という状態は存在しないことになる。
(表面官能基と化合物超微粒子の焼結)
表面官能基が異なるシリカ超微粒子について、陽電子寿命測定を行って焼結による超微粒子間の空隙サイズの変化を熱処理温度の関数として調べ、熱処理による表面官能基の解離挙動と比較・検討を行った。
測定試料として、(試料1)シリカ超微粒子のディスク試料(超微粒子粒径7[nm]、密度0.45[g/cm3]、シグマアルドリッチ社製)、(試料2)シリカエアロゲルAG(超微粒子粒径5[nm]、密度0.1[g/cm3]、エアグラス社製)および(試料3)シリカエアロゲルSP15(超微粒子粒径4[nm]、密度0.06[g/cm3]、松下電工社製)が用いられた([非特許文献9]H.Yokogawa, M.Yokoyama, Journal of Non−Crystalline Solids IX (1995) 23−29参照)。
シリカエアロゲルはシリカ超微粒子が鎖状に3次元ネットワークをなした密度が小さな固体である。体積に占める空隙の比率(空隙率)が大きく、このため機械的強度は、指で簡単に押しつぶせるほど小さい。シリカ超微粒子ディスクは、シリカ超微粒子を400[kg/cm2]の圧力を印加しながら成形した円板状の成形体である。これらの試料を構成する超微粒子の粒径はほとんど変わらないが、表面官能基がそれぞれ異なっている。試料1の表面官能基はシラノール基(−Si−OH)であり、試料2の表面官能基はメトキシ基(−Si−O−CH3)であり、試料3の表面官能基はトリメチルシロキシ基(−Si−O−C(CH33)である。
室温および100℃から1100℃まで100℃毎の温度で12時間の熱処理を大気中で施した試料1〜3を対象として陽電子寿命が測定された。陽電子は一部の誘電体中に入射すると、電子と陽電子の束縛状態であるポジトロニウムを形成することがある。
ポジトロニウムの基底状態には、スピン1重項のパラポジトロニウム(p−Ps)とスピン3重項状態のオルソポジトロニウム(o−Ps)の2つの状態がある。寿命スペクトル中の長寿命成分に関係式(02)をフィッティングして、空隙中のポジトロニウム(o−Ps)の消滅率λo-Psを求める([非特許文献10]K.Wada and T.Hyodo. Journal of Physics: Conference Series, 443,(2013) 012003.参照)。
N(t)=(Aexp[−λo-Pst]+B)exp(Rt) ‥(02)。
ここで、tは陽電子の試料に入射した時刻を0としたo−Psの消滅までの時間、Rは消滅γ線の信号を弁別するCFDD(Constant fraction Differential Dscriminator)から出力される信号のカウントレートで、独立に得られる値である。測定値λo-Psと空隙中のo−Psの平均自由行程Lmeanの間には、次の関係式(04)および(06)が成り立つ。
mean<1.28[nm]の場合:
λo-Ps=λA[1−1/(1+αΔR)+(1/2π)sin(2π/(1+αΔR))]+λT‥(04)。
ここで、α=3Lmean/4である。パラメータΔRは経験的に0.165[nm]と求められる。λA=(λp-Ps+3λo-Ps)/4=2[ns-1]は真空中のp−Psおよびo−Psの平均寿命である。
mean≧1.28[nm]の場合:
λo-Ps=vthA/(Lmean−2Δmean)+λT ‥(06)。
ここで、vthは熱化したポジトロニウムの速度である。PAはポジトロニウムの衝突1回当たりのピックオフ消滅率であり、室温ではvthA=0.021±0.002[nm]である。パラメータΔmean=0.76[nm]である。
測定で得られたo−Psの消滅率を上の2つの関係式に代入すると、空隙中のo−Psの平均自由行程Lmeanが求まる。平均自由行程Lmeanを熱処理温度の関数として図6に示す。
Psの平均自由行程Lmeanは空隙の差し渡し(空隙サイズ)とみなすことができる。シリカ超微粒子ディスク試料、熱処理前の試料1〜3のそれぞれの空隙サイズは、16[nm]、40[nm]および42[nm]のそれぞれであった。シリカ超微粒子ディスク試料では熱処理温度700℃、シリカエアロゲルAG試料では600℃、そしてシリカエアロゲルSP15試料では900℃を超える空隙サイズが単調に減少し、これらの温度で焼結が始まったと考えられる。
陽電子寿命測定と同様に熱処理をした粉末試料に対し、赤外分光(FTIR−ATR)測定を行った。図7Aには試料1(シリカ超微粒子ディスク試料)の赤外吸収スペクトルが示され、図7Bには試料3(シリカエアロゲルSP15試料)の赤外吸収スペクトルが示されている。
図7Aに示されている熱処理前の試料1のスペクトルには、表面の孤立シラノール基による鋭い吸収ピークが3750[cm-1]に存在する。バックグラウンドを考慮してピークの変化を見ると、この吸収ピークは600℃を超えると急激に減少し、600℃を超えるとほとんどのシラノール基が解離することを示している。また3400[cm-1]で最大となる幅の広い吸収ピークは、シラノール基に水素結合した水分子とさらにこの分子に物理吸着した水分子によるものである。この吸収ピークは400℃を超えると急激に減少し、400℃までには、表面に吸着した水分子がほぼ脱離してしまうことを示している。
図7Bに示されている試料3の赤外吸収スペクトルには、室温では3750[cm-1]に存在する孤立シラノール基による吸収ピークは、水分子による3400[cm-1]で最大となる幅の広い吸収ピークに埋もれてしまっている。しかし、400℃あたりから増加し、900℃まで顕著なピークを示している。水分子による3400[cm-1]で最大となる幅の広い吸収ピークは、試料1のスペクトルとほとんど同じ挙動を示している。さらに赤外吸収スペクトルには、トリメチルシロキシ基による2950[cm-1]付近の鋭い吸収ピークが認められる。室温から300℃まで明らかな存在を示すこのピークは、300℃で減少を示し始めて400℃を超えると消失してしまう。
注目すべきは、トリメチルシロキシ基による吸収ピークが消滅するとともにシラノール基による吸収ピークが顕著に増加することである。この現象は次のように説明できる。
トリメチルシロキシ基が解離すると、多量に含まれる水素原子は、大気中に含まれる酸素分子とともにシリカのシロキサン結合を解離してシラノール基を形成する。このためシラノール基の解離平衡は高温側にシフトしたためと考えられる。
(化合物超微粒子焼結体の機械的強度)
一般に、加圧成型しない微粒子を焼結することはできないと考えられている。このため溶媒を使用し、さらに焼結助剤が使用される。しかし、超微粒子では加圧成型をしないで、また溶媒も使用しないで焼結が可能である。吸着分子の除去処理をしていないシリカ超微粒子を、加圧しないでアルミナ製の坩堝に入れ、坩堝に蓋をし、大気中で温度1100℃、12時間の加熱処理を行った。坩堝を逆さにして試料を取り出したので、熱処理後の試料の写真では(図8A参照)、上下が逆になっている。蓋との隙間の空間で超微粒子が広がって焼結した下方(坩堝開口部側)の一部を除いて、ほぼ坩堝の形状に焼結している。上記の実験は、特に圧力を加えてはいない。したがって、大きな圧力を加えることは焼結のために必須ではない。
大気中での化合物超微粒子の焼結は、異なる微粒子表面に存在するダングリングボンドを持つ原子同士の結合によって生じるので、結合が生じるためには2つの原子の間隔Lは次の関係式(08)で表わされる条件を満たす必要がある。
L≦LC ‥(08)。
ここで、LCは2つの原子が結合できる最大の間隔で臨界間隔と呼ぶことにする(図9参照)。
臨界間隔LCを考慮に入れると、微粒子の粒径が小さくなるとともに焼結体の強度が増加することを説明できる。ここで、2つの球形粒子が1点で接している場合を考える。図9のように、粒子の半径をr、粒子の中心に対し接点PとLとなる点のなす角をθとすると、異なる微粒子表面の原子と結合できる原子は、Lとなる点の作る円よりも接点に近い表面上に存在するものに限られる。この円の面積Sは、次の関係式(10)で表される。
S=2πr2(1−cosθ) ‥(10)。
図9より
(1−cosθ)=LC/r ‥(12)
とあらわすことができるので、関係式(10)は
S=2πrLC ‥(14)
となる。
単位面積上の表面官能基の数は、化合物ごとに一定(例 シリカSiO2;4nm2あたり1個[非特許文献10])と考えられるので、単位体積当たりのすべての微粒子の接点の数をNとすると、単位体積当たりの結合数Nには次の関係式(16)が成り立つ。
b=NS∝(1/r3)2πrLC=2πLC(1/r2)∝(1/r2) ‥(16)。
したがって、粒径1[μm]の微粒子に対し、粒径1[nm]の超微粒子の単位体積中の結合数は100万倍となる。実際には、ダングリングボンドを持つ原子同士が結合すると超微粒子間の間隔は狭まり焼結体は収縮し、さらに結合数が増加する。単位体積当たりの結合数が増加すると剪断すべり面形成の抵抗が大きくなるので、粒径が小さくなるほど機械的強度が増加し、超微粒子では加圧成型しなくとも、焼結助剤なしでも焼結体を作製できる。焼結温度および焼結時間によって焼結の程度を調節することは、焼結を途中で停止することである。この場合には、焼結体の強度が問題となる。単位体積当たりの大きな結合数を考えると、超微粒子の場合には完全な焼結でなくとも実用に適した強度の焼結体を作製できる。
上記の実験では、さらに外部に飛び出す気体分子から受ける反跳が超微粒子に及ぼす影響を調べるために、坩堝に蓋をしないで加熱処理をして比較した。蓋をしない場合には上下の部分が大きく変形しており、とくに下部(蓋のない坩堝開口部側)の変化が顕著である(図8B参照)。一定の温度領域で気体分子が爆発的に外部に放出されるときに、シリカ超微粒子も一緒に外部に噴出し、噴出したシリカ超微粒子の一部がそのまま焼結したと考えられる。気体分子であっても、質量の小さな超微粒子に対しては大きな反跳を与えることができることを示している。
(空隙の見積もり)
物質中の空隙(空孔、気孔および自由空間)は、物質の外部空間との接続の観点から3種類に分類される。空隙が焼結体を貫通した完全開空隙、外部空隙と1か所で接続する閉空隙および外部空間から切り離された完全閉空隙である(図10参照)。これらの空隙のサイズと分布を見積もることは極めて難しく、測定試料、測定条件などによる相違と制約を十分に考慮して評価しなければならない。
試料の構成物質の密度ρ0および焼結体試料の密度ρを用いて、焼結体の全体積に対する空隙体積の割合(空孔率)Wは関係式(16)にしたがって評価される。
W=(1−ρ)/ρ0 ‥(16)。
シリカ超微粒子の多孔質焼結体の密度は0.45[g/cm3]であり、超微粒子の密度を石英の密度2.2[g/cm3]に等しいと考えると、多孔質焼結体の空隙率は「約0.80」と評価される。
ただし、熱処理によって試料の収縮する力の大きさは形状あるいは試料の部位によって異なるため、大きさのみならず形状も変化し、試料の嵩体積の評価精度は不可避的に低くなる。このため、流体中に試料を入れて流体の体積の変化から試料の嵩体積を求める方法は、多孔質物質に対しては誤差が大きくなる。
空隙率または空隙率が多くなるとともに多孔質体の比表面積が大きくなる。これを利用し、1層の気体分子を吸着させて表面を完全に覆い、気体分子の吸着量から比表面積を求めて、外部空間につながった空隙の空隙割合を見積もることが行われる。吸着気体分子として窒素やヘリウムを用いるBET法がよく利用されている。この方法では、外部空間に対して完全に閉じた空隙(完全閉空孔)の表面(内表面)は測定できない。
ポジトロニウムの平均寿命を測定し、空隙中のポジトロニウムの平均自由行程から空隙サイズを評価する。試料の空隙が完全閉空孔だけの場合(金属や半導体中の格子欠陥など)には、この方法は空隙サイズを評価する唯一の方法である。しかし、この方法で得られる空隙サイズは、すべての種類の空隙の平均の値である。
超微粒子焼結体をフィルタとして利用する場合、フィルタで仕切られた2つの外部空間につながる空隙(完全開空孔)の評価が重要である。完全開空孔については、目的とする流体分子と焼結体の壁面との相互作用など複雑な要因が関係することを考慮し、流体の透過率から具体的に評価する必要がある。フィルタとしての焼結体の評価には、空隙割合よりもむしろ目的とする流体の透過量が重要である。
(光触媒フィルタを用いた空気浄化装置)
図11に示されている本発明の一実施形態としての空気浄化装置は、一または複数の光触媒超微粒子焼結フィルタ1と、励起光源装置2と、光触媒超微粒子焼結体による筐体内壁3と、給排気装置4と、筐体6と、を備えている。
光触媒フィルタ1は、本発明の一実施形態としての略平板状の多孔質焼結体によって形成されている。この多孔質焼結体は、光触媒超微粒子表面の官能基の解離によって生成したダングリング同士が結合し、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれている。光触媒物質としては、TiO2(酸化チタン)のほか、WO3(酸化タングステン)など、光触媒作用を呈する任意の物質が採用される。光触媒フィルタ1またはこれを構成する多孔質焼結体の空隙サイズまたは空隙サイズは、1〜3000[nm]の範囲に含まれているため、空気または気体のコンダクタンスが極めて小さいことを勘案し、光触媒フィルタ1の厚さは例えば100〜2000[μm]の範囲に調節されている。光触媒フィルタ1は機械的手段によって、通気路を画定する筐体6に対して固定されている。
励起光源装置2は、例えば紫外光ランプにより構成されている。励起光源装置2は、励起光としての紫外光を光触媒フィルタ1および筐体内壁3に対して照射することができるように筐体6の壁部に対して固定されている。励起光源装置2としては、超微粒子における電子を励起可能な波長帯の光を照射しうる任意の光源装置が用いられてもよい。励起光源装置2が省略され、筐体6の一部に採光用の窓が設けて、当該窓を通じて筐体6の外部に設定された励起光源装置からの励起光を用いられてもよい。
給排気装置4は、ファンあるいは真空ポンプ等により構成され、筐体6により画定される通気路において、フィルタ1を経由する気流を生じさせる。
1‥光触媒フィルタ(多孔質焼結体)、2‥励起光源装置、3‥光触媒超微粒子焼結体による筐体内壁、4‥給排気装置、6‥筐体。

Claims (6)

  1. 熱処理によって吸着気体分子を除去した超微粒子を焼結前駆体とする、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれていることを特徴とする多孔質焼結体。
  2. 請求項1記載の多孔質焼結体において、前記超微粒子として光触媒物質の超微粒子を焼結前駆体とする、空隙サイズが1〜3000[nm]の範囲に含まれ、かつ、空隙率が10〜90%の範囲に含まれていることを特徴とする多孔質焼結体。
  3. 請求項2記載の多孔質焼結体を光触媒フィルタとして備えていることを特徴とする空気浄化装置。
  4. 請求項3記載の空気浄化装置において、前記光触媒物質において電子を励起し、正孔を生成するために前記光触媒フィルタに対して励起光子を放射するための励起光源装置をさらに備えていることを特徴とする空気浄化装置。
  5. 請求項3または4記載の空気浄化装置において、空気に前記光触媒フィルタを通過させる給排気装置をさらに備えていることを特徴とする空気浄化装置。
  6. 請求項3〜5のうちいずれか1つに記載の空気浄化装置において、内壁面の少なくとも一部が、前記光触媒超微粒子の多孔質焼結体により構成されているまたは被覆されている筐体をさらに備えていることを特徴とする空気浄化装置。
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