本発明は、隔膜により区画した陽極室と陰極室とを有し、水を供給しながら各極室に配設した電極間に前記隔膜を介して通電することにより前記水を電気分解して、前記陽極室より酸性水を吐出しつつ前記陰極室よりアルカリ性の電解水素水を吐出する電解槽を備えた電解水素水生成器であって、電解水素水中に含まれる水素量をより向上させることのできる電解水素水生成器を提供するものである。
本明細書において電解水素水は、水の電気分解により陰極側で生成されるアルカリ電解水であって、同じく陰極側で生成した水素ガスが溶存している水である。
したがって、本明細書における電解水素水生成器は、所謂アルカリイオン整水器についても、概念上含まれるものと解するべきである。
また、陽極室と陰極室とを区画する隔膜は、一般的なアルカリイオン整水器にて隔膜として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、中性膜やイオン交換膜等を採用することができる。
そして、本実施形態に係る電解水素水生成器の特徴としては、電解槽にて生成された酸性水の吐出流路と電解水素水の吐出流路との両方に、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつもそれぞれ対応する極室内を加圧する極室加圧手段を備えている点が挙げられる。
先に述べたように、本発明者らは本発明を完成するに先立って、陰極室より吐出された電解水素水の流量を制限するなどして背圧を生じさせ、陰極室の内圧を高める方法により得られた電解水素水中に溶存する実際の水素量は、理論上得られるはずの電解水素水中の水素量に比して低いことを見出している。
これは、本発明者らの鋭意研究によれば、陰極室の加圧環境下において陽極室と陰極室とを隔てる隔膜に所定量の液体流通性が生起することに由来しており、陰極室に付与された内圧によって陰極室内の原水又は電解水素水(以下、陰極室内容水と称する。)が陽極室へリークして圧力上昇が妨げられ、水素濃度の上昇が抑制されることが突き止められた。
そして、これまで知られていないこの新たな知見に基づき、陰極室と略同等又はそれ以上の内圧を陽極室側にも付与することで、陰極室内容水のリークを抑制し、陰極室内圧、より詳細には陰極室加圧手段よりも下流側となる陰極室内及び吐出流路における内圧により、存在する水素気泡の溶存効率を高めて高濃度水素を含む電解水素水の生成を実現している。
また、電解槽内に供給する原水が、一つの原水供給配管から二叉状に分岐して陰極室側と陽極室側とに供給するよう構成された電解水素水生成器にあっては、陰極室内圧が高められると原水の多くが陽極室側へ流れこむこととなって陰極室における内圧上昇が鈍ることも考えられるが、本実施形態に係る電解水素水生成器によれば上述の構成を備えることとしたため、陰極室側にも効率的に原水を供給することが可能となり、陰極室内圧の上昇を助長することができて更に溶存水素濃度を高めることができる。
なお、陰極室や陽極室へ供給する原水は、極端なpH調整がなされていない大凡pH6〜8程度の飲用可能な水であれば特に限定されるものではなく、一般的な水道水や井戸水などを使用することができる。
また、原水として特に好ましくは、上記水道水や井戸水に対して、フィルタ等による濾過処理や、活性炭などの多孔質体による吸着処理、イオン交換樹脂等を用いた脱イオン処理、水の電解効率を向上させるべく乳酸カルシウムやグリセロリン酸カルシウム等のカルシウム剤に接触させるカルシウム処理などから選ばれるいずれか1つ又は2つ以上を組み合わせて行うようにしても良い。
また、極室加圧手段は、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつ対応する極室や吐出配管内に背圧を生じさせることが可能な部材であれば特に限定されるものではなく、例えば制限オリフィスや、バルブ、ベンチュリの如く狭窄構造を有する部材など、流れに対して抵抗を生じさせる部材を挙げることができる。
ここで、図1を参照しつつ極室加圧手段の構造例について説明すると、例えば図1(a)に示す極室加圧ユニット81aの構造にあっては、水素気泡を含む電解水素水や酸素気泡を含む酸性水(以下、総称して気泡含有電解水ともいう。)が矢印方向から流入するとした場合、流径漸減部82aにおいて漸次狭窄する径の変化割合(狭窄変化割合)と、流径漸増部82bにおいて漸次拡開する径の変化割合(拡開変化割合)とが、最小径となる狭窄部82cを境に絶対値として略同じとなるような狭窄・拡開構造を備えており、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつ対応する極室や吐出配管内に背圧を生じさせることが可能となっている。
また、図1(b)に示す極室加圧ユニット81bは、極室加圧ユニット81aと略同様の構成としているが、流径漸減部82aにおける狭窄変化割合を流径漸増部82bのおける拡開変化割合よりも大きく形成しており、極室加圧ユニット81aに比してより大きな背圧が生起されるよう構成している。
また、図1(c)に示す極室加圧ユニット81cは、極室加圧ユニット81bと略同様の構成を備えているが、狭窄部82cの下流側において流径漸増部82bに代えて狭窄部82cと同じ流径の狭窄流路82dを備える点で構造を異にしている。
また、図1(d)に示す極室加圧ユニット81dは、極室加圧ユニット81cと比較して、狭窄部82cの下流側において狭窄流路82dに代えて流径漸減部82aの初期流入径と略同じ径を有する広幅流路82fを備える点で構造を異にしている。
また、図1(e)に示す極室加圧ユニット81eは、狭窄部82cを狭窄流路状に形成すると共に、狭窄部82cの上流側及び下流側の両方を広幅流路82fとしている点で構造を異にしている。
また、図(f)に示す極室加圧ユニット81fは、極室加圧ユニット81dと略同様の構成としているが、狭窄部82cの上流側の流径漸減部82aに相当する位置に流路抵抗体82hを配置している点で構造を異にしている。
このように、極室加圧手段の例としては、上記した極室加圧ユニット81a〜81fのようなバリエーションを挙げることができ、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつ対応する極室や吐出配管内に背圧を生じさせることができる。なお、本明細書において極室内等の内圧を生じさせる背圧は、単なる直管の流動抵抗によるものは含まれず、吐出流路上に積極的に付加された抵抗部材や抵抗構造をいう。抵抗部材としては上述した極室加圧ユニットが挙げられるほか、抵抗構造としては背圧上昇を目的とした蛇行配管などが挙げられる。
また特に、極室加圧手段はマイクロバブルやナノバブルを発生可能なベンチュリ構造(狭窄・拡開構造)を備えた管(以下、微細化気泡生成管ともいう。)とすることができる。
例えば上記例に当てはめるならば極室加圧ユニット81a,81b,81d,81fなどのように、狭窄部82cの上流側で流径が漸次狭窄し、狭窄部82cの下流側で狭窄部82cの狭窄径よりも大きな流径を有する構造を備えた極室加圧ユニットは、流入させた気泡含有電解水の気泡を微細化する微細化気泡生成管としての機能を期待することができる。
微細化気泡生成管を採用すれば、極室加圧手段として機能させることができる他、例えば陰極室加圧手段として使用すれば、電解水素水に分散浮遊する水素の未溶解気泡を細分化させて溶解を助長し、電解水素水に含まれる水素量を更に向上させることができる。また、陽極室加圧手段として使用すれば、溶存酸素量が更に高められた酸性水を生成することができる。
また、酸性水吐出流路に設けられる陽極室加圧手段と、電解水素水吐出流路に設けられる陰極室加圧手段は、同じものであっても良く、異なるものであっても良い。
また、これらの極室加圧手段のいずれか一方、又は両方は、各極室の加圧度合いを変化させる圧力可変機構を備えるものであっても良い。極室加圧手段は背圧を生じさせる部材であるため、電解室から吐出される電解水素水や酸性水の水量が一定である場合、自ずとその吐出流量が制限されることとなるが、圧力可変機構を備えたならば、所望する吐出流量に自在に変更できると共に、電解水素水であれば水素含量を、酸性水であれば酸素含量を変化させることができる。
この圧力可変機構は、生じさせる背圧を段階的に変化できるものであっても良く、また無段階に変化できるものであっても良い。前者の例としては、例えば閉塞板の位置を段階的に変化させることのできるゲートバルブや、全開状態と半開状態とに切り替え可能なバルブが挙げられる。また、後者の例としては、蛇口内のコマの如く、螺合部材等によって無段階に開度調整可能がバルブなどが挙げられる。
例えば、図1(g)に示す極室加圧ユニット81gにあっては、流入から流出まで略同径で直管状の広幅流路82iとしつつも、管内へ無段階に出没可能なネジ状の流路狭窄体82jを螺合することで圧力可変機構を構成しており、狭窄部82cの位置、すなわち、気泡含有電解水に対する抵抗度合や背圧の発生度合を変化できるようにしている。この圧力可変機構は、電解水素水生成器の使用者等が手で調整しても良いし、電解水素水生成器に内蔵される制御部等の制御によって調整されるものであっても良い。なお、極室加圧手段は、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつもそれぞれ対応する極室内を加圧可能である必要があるが、流路を完全に閉塞する機能が備えられることを妨げるものではない。
また、陽極室加圧手段を圧力可変機構が備えられたものとした場合、この陽極室加圧手段を圧力可変機構の制御を行う制御部と接続して構成し、更に制御部は電解水素水の生成に際して陽極室加圧手段の圧力可変機構を制御して陽極室内の内圧を高めると共に、電気分解の通電量を増加させるよう構成しても良い。
通常、電解水素水を生成する際に陰極室では、水素発生量をできるだけ多くするために、通電量を高めて電気分解を行うことが望まれる。
しかし、通電量を高めると、陰極室内でより多くの水酸化物イオンが生成されるため、電解水素水のpHも上昇する。
ところが、飲用に適合する電解水素水のpHは10以下とされており、通電量を増大させてより溶存水素濃度を高めながらも飲用に適した電解水素水を得るためには、何らかの手段によりpHを低下させるのが望ましい。
そこで、電解水素水の生成に際して陽極室加圧手段の圧力可変機構を制御して陽極室内の内圧を高め、先に述べた新たな知見に基づいて隔膜を介して陽極室内の酸性水や酸性水と混合された原水(以下、陽極室内容水ともいう。)を陰極室側へリークさせ、陰極室内容水をリークさせた陽極室内容水によって中和しつつpHの上昇を抑制し、電気分解の通電量を増加させて水素発生量の増加を図ることとしている。
従って、高濃度に水素が溶存しながらも、pH上昇が抑制され飲用に適した電解水素水を生成することができる。なお、陰極室内容水のpH上昇抑制の度合いは、陽極室加圧手段の圧力可変機構により調整することができる。
また、陽極室加圧手段と陰極室加圧手段とはいずれも圧力可変機構を備えると共に同圧力可変機構を制御する制御部と接続し、同制御部は電解水素水の生成に際して両極室加圧手段を略同時に制御してそれぞれ対応する極室内の内圧を高めるよう構成しても良い。
このような構成とすることにより、電解水素水の取水時には、陰極室において陰極室内容水のリークを抑制しながら陰極室内圧上昇に伴う水素溶存性の向上を図ることができるのは勿論のこと、水素などの気体溶存量の向上を要しないときには、圧力可変機構にて背圧の生起を解除して単位時間あたりの取水量を増やすことができる。
また、本実施形態に係る電解水素水生成器では、電解槽に流入させる原水を供給路の中途から分岐して、電解水素水の吐出流路の陰極室加圧手段よりも下流側へ通水させる原水バイパス流路を備えるようにしても良い。
このような構成を備えることで、例えば電解水素水の生成時には、陰極室加圧手段が機能している時にこのバイパス流路を開放することにより、単位時間あたりの電解水素水の取水量が減少することなく適正にすることができる。
また、本実施形態に係る電解水素水生成器では、陽極室へ供給する原水に電解槽より吐出された酸性水の一部を合流させる還流バイパス流路を備えることとしても良い。
このような構成とすることにより、還流バイパス流路を備えない場合と比較して、陰極室内の水のpHをより低い状態とすることができ、隔膜を介した陰極室内容水のpH抑制を更に効果的なものとすることができる。
以下、本実施形態に係る電解水素水生成器に関し、図面を参照しながら具体的に説明する。図2は第1の実施形態に係る電解水素水生成器A1の外観を示した斜視図であり、図3は電解水素水生成器A1の全体構成を示したブロック図である。
図2に示すように電解水素水生成器A1は、略矩形状のケーシング10内に後述する装置部9(図3参照)を収容して構成しており、水道などから受水した水を必要に応じて電解し、取水管17を介して吐出口17bから使用者が所望する水を取水可能としている。また、電解水素水生成器A1は電源プラグ8(図3参照)を備えており、商用電源コンセント等から受電して電解が行われる。
また、図2に示すように、ケーシング10の正面部には操作パネルPが配されており、各種ボタンやランプ等が備えられている。
具体的には、操作パネルP上には、その上部中央に液晶表示装置からなる表示部Dを設け、その右上に電源ボタンB1を配設するとともに、前記表示部Dの下方位置にはORP表示ボタンB2と通水量表示ボタンB3とを横並びに配設している。
電源ボタンB1は、電解水素水生成器A1を起動させるためのボタンであり、どのような状態であっても有効なボタンである。例えば排水処理などの途中であって処理が終了していない場合は、電源ボタンB1が押下されても、それらの処理が終了してから電源が落ちるようにすることが好ましい。ORP表示ボタンB2は、表示部Dに現在の水のORPを表示させるためのボタンである。通水量表示ボタンB3は、表示部Dに現在の水の通水量を表示させるためのボタンである。
また、この通水量表示ボタンB3の下方には、縦一列にアルカリボタン群AL、浄水供給ボタンW、酸性ボタン群Acを配設している。
アルカリボタン群ALは、強アルカリ性水供給ボタンAL0や第1レベルのアルカリ性水供給ボタンAL1〜第3レベルのアルカリ性水供給ボタンAL3で構成している。強アルカリ性水供給ボタンAL0は、電解水素水生成器A1に強アルカリ性水の生成を指示するためのボタンである。強アルカリ性水は、例えば、pH10.5であり、煮物、アク抜き、野菜ゆで等に使用することができる。
第1レベルのアルカリ性水供給ボタンAL1は、電解水素水生成器A1に第1レベルのアルカリ性水の生成を指示するためのボタンである。第1レベルのアルカリ性水は、例えば、pH9.5であり、料理、お茶等に使用することができる。第2レベルのアルカリ性水供給ボタンAL2は、電解水素水生成器A1に第2レベルのアルカリ性水の生成を指示するためのボタンである。第2レベルのアルカリ性水は、例えば、pH9.0であり、炊飯等に使用することができる。第3レベルのアルカリ性水供給ボタンAL3は、電解水素水生成器A1に第3レベルのアルカリ性水の生成を指示するためのボタンである。第3レベルのアルカリ性水は、例えば、pH8.5であり、飲み始めの水等として使用することができる。電解水素水生成器A1は、これらのアルカリボタン群ALが使用者により押下されることで、それぞれ強アルカリ性水生成モードや各レベルのアルカリ性水生成モードに移行して、対応するアルカリ性水の生成を行う。特に、これらアルカリボタン群ALの押下によって生成されるアルカリ性水は、電解水素水に相当する水である。
浄水供給ボタンWは、電解水素水生成器A1にて電解を行うことなく水道水からの水を浄化して通水させることを指示するためのボタンである。電解水素水生成器A1は、浄水供給ボタンWが使用者により押下されることで、浄水生成モードに移行して浄水の生成を行う。
酸性ボタン群Acは、酸性水供給ボタンAc1や強酸性水供給ボタンAc2で構成している。酸性水供給ボタンAc1は、電解水素水生成器A1に酸性水の生成を指示するためのボタンである。酸性水は、例えば、pH5.5であり、洗顔、麺ゆで、茶渋とり等に使用することができる。また、強酸性水供給ボタンAc2は、電解水素水生成器A1に強酸性水(衛生水)の生成を指示するためのボタンである。強酸性水は、例えば、pH2.5であり、水回りの洗浄等に使用することができる。電解水素水生成器A1は、これらの酸性ボタン群Acが使用者により押下されることで、それぞれ酸性水を供給する酸性水生成モードや強酸性水を供給する強酸性水生成モードに移行して、対応する酸性水の生成を行う。なお、以下の説明において強アルカリ性水生成モードやアルカリ性水生成モード、浄水生成モード、酸性水生成モード、強酸性水生成モードを総称して水生成モードという。
また、操作パネルPの下部近傍には、更に幾つかのボタンやランプが配置されている。例えば強酸性水供給ランプL1は、電解水素水生成器A1が強酸性水生成モードであることを示すものである。また、L3は洗浄中ランプ、L4はすすぎランプ、L5,L6は電解水素水生成器A1の内部に備えられた後述の浄水部2のカートリッジ寿命設定ボタン及びランプ、L7,L8は浄水部2のカートリッジ交換ランプ、L9は温度上昇警告ランプ、B5はカートリッジ交換リセットボタンである。
また、本実施形態に係る電解水素水生成器A1の操作パネルPには、特徴的な構成の一つとして、操作パネルPの略中央部に溶存量増加ボタンFが設けられている。
溶存量増加ボタンFは、気泡含有電解水の気泡溶解を促進させるためのボタンであり、溶存量増加ボタンFが押下されると電解水素水生成器A1は溶存量増加モードとなり、電解水素水であれば水素気泡、酸性水であれば酸素気泡の溶解を促進させて、水素溶存量の高い電解水素水や、酸素溶存量の高い酸性水の生成が行われる。この溶存量増加ボタンFは強アルカリ性水生成モード時や、アルカリ性水生成モード時、酸性水生成モード時、強酸性水生成モード時に押下可能であり、これらのモードが選択されている時は溶存量増加ボタンFの周囲にリング状に配されたランプL10が点灯して使用者に利用可能である旨が報知される。なお、以下の説明において、気泡含有電解水の気泡溶解を促進させるこの機能を気泡溶解促進機能と称する。
また、溶存量増加ボタンFが押下されると原水バイパス機能が発揮され、取水管17の吐出口17bから吐出される電解水素水や酸性水の吐出量の増量がなされる。具体的には、電解水素水生成器A1は原水の一部を後述する陰極室加圧手段の下流側にバイパスして吐出量を増量する。
また、溶存量増加ボタンFが押下されると還流機能が発揮され、陽極室より吐出された酸性水の一部を陽極室へ供給する原水に合流させて陽極室へ還流させつつ電解電流量を増やすことにより、陰極室内容水のpH上昇抑制を図りつつも多量の水素が生成される。
次に、電解水素水生成器A1の内部構成、すなわち装置部9の構成について図3及び図4を参照しながら説明する。図3は装置部9の構成を示したブロック図であり、図4は電解槽1及びその近傍に配置された各流路構造の構築例を示した説明図である。
図3に示すように、装置部9の構成は、大きく、原水を電気分解する電解槽1を具備した電解部4と、電解槽1に供給する原水を予め浄化する浄水部5と、浄化された原水(浄水)に所定の添加物を添加する添加部6と、電解水素水生成器A1の各部を全体的に統括して制御する制御部7とに分けられる。
電解部4は、図4に示すように外観視矩形箱型に形成した電解槽1と、同電解槽1の周囲に電解槽1の表面から離隔して架空配管状態に配設された流路配管部42(大凡、図中にて一点鎖線で囲った部分)とで構成している。
電解槽1は、供給される水を電解してアルカリ性の電解水素水や酸性水を生成する部位である。なお、本実施形態に係る電解水素水生成器A1は前述のようにアルカリ性の電解水素水のみならず酸性水についても取水可能な装置である。具体的には、電解水素水生成器A1に備えられた電解槽1において、使用者が取水するための水を生成する所定極性に切替可能な電極板(以下、取水電極板という。)を備えた取水用電極室と、取水電極板の極性とは逆の極性に切替制御される電極板(以下、副生水電極板という。)を備えた副生水用電極室とが隔膜を隔てて形成されており、副生水電極板を陽極にして副生水用電極室を陽極室とする一方、取水電極板を陰極にして取水用電極室を陰極室とすることで、取水用電極室にてアルカリ性の電解水素水を生成して取水可能としたり、その逆に、副生水電極板を陰極にして副生水用電極室を陰極室とする一方、取水電極板を陽極にして取水用電極室を陽極室とすることで、取水用電解室にて酸性水を生成して取水可能としている。以下では、本発明の理解を容易にすべく、アルカリ性の電解水素水が取水可能なアルカリ性水生成モードを基準に、取水用電極室は陰極室、取水電極板は陰極、副生水用電極室は陽極室、副生水電極板は陽極であるものとしつつ各部構成に名称を付して説明する。
図4の説明に戻り、同電解槽1の下面側には、電解槽1内に形成された陽極室(副生水用電極室)内に水を供給する陽極室水供給口43aと、陰極室(取水用電極室)内に水(原水)を供給する陰極室水供給口43bが形成されている。
また、電解槽1の上端面略中央部には電解水素水吐出口17aが上方へ向けて突設されており、図3に示すように、電解槽1の陰極室(取水用電極室)にて生成した電解水素水を吐出配管17dを通じ、取水管17を介して吐出口17bから吐出可能としている。
また、吐出配管17dにはその中途部に陰極室加圧手段(取水用電極室加圧手段)として機能する陰極室加圧部17c(取水用電極室加圧ユニット)が介設されている。
陰極室加圧部17cは電磁弁にて構成しており、通電状態(ON状態)において開状態となり吐出配管17dの流量制限を行わず、通電が遮断された状態(OFF状態)においては半閉状態(加圧状態)となる圧力可変機構を備え、陰極室加圧部17cを通過する水の流量を制限しつつ背圧を生起する機能を有している。なお、図示は省略するが、陰極室加圧部17cは制御部7と電気的に接続されており、制御部7の制御によって開状態と半開状態とに切り替えが行われる。
特に、陰極室加圧部17cが加圧状態に切り替えられると、陰極室や吐出配管17d内に背圧を生じさせると共に、微細化気泡生成管としての機能を発揮して流入させた気泡含有電解水の気泡、例えば電解水素水に含まれる水素気泡の微細化を行って溶存水素濃度を高める働きをする。
また、図4に示すように、電解槽1の上端面から正面に沿ってL字状に、電解槽1の陽極室(副生水用電極室)にて生成された酸性水を吐出する排水流路上流部18aが筐体(ケーシング)部分と一体的に形成されており、その下端部には流路配管部42と接続して排水流路上流部18aを流れる酸性水を流路配管部42へ向けて吐出する電解槽側接続部18bが形成されている。
図3及び図4に示すように、流路配管部42は、原水を供給する主原水供給路24と、同主原水供給路24より分岐して陰極室水供給口43bに接続し陰極室内に原水を供給する副原水供給路24aと、主原水供給路24より分岐して陽極室水供給口43aに接続し陽極室内に原水を供給したり溶存量増加ボタンFが押下された際に原水及び酸性水からなる混合水を供給する副原水供給路24bと、前述の電解槽側接続部18bに接続して排水流路上流部18aを流れる酸性水を受け入れつつ同酸性水を分流する流路配管側接続部18cと、流路配管側接続部18cから下方に伸延させて設けられ流路配管側接続部18cにて分流された酸性水のうちの一部、すなわち還流させる酸性水を流通させる還流路主管部44aと、同還流路主管部44aの中途より分岐し主原水供給路24における副原水供給路24bの分岐部に臨ませて接続させた還流路枝管部44bと、流路配管側接続部18cから側方へ延出し下方へL字状に屈曲状態で設けられ流路配管側接続部18cにて分流された酸性水のうち排出する残部の酸性水を流通させる排水流路中流部18dと、還流路主管部44a及び排水流路中流部18dの下端に接続され排出口63に連通する排水流路下流部18eとを備えている。また、還流路枝管部44bと主原水供給路24との接続合流部分は、還流機能発揮時に原水に酸性水を混合させるための酸性水還流混合部44cとしている。なお以下の説明において、排水流路上流部18a、電解槽側接続部18b、流路配管側接続部18c、排水流路中流部18d、排水流路下流部18eを総称して排水流路18といい、還流路主管部44a、還流路枝管部44b、酸性水還流混合部44cを総称して還流バイパス流路70という。
電解槽側接続部18b及び流路配管側接続部18cは、図4(a)に示すように、排水流路18の中途に介設された屈曲流路として機能する部位であり、流路配管部42を電解槽1の正面側表面から離隔させて架空配管状とした離隔流路とする役割を有している。
また、図3及び図4に示す(図4においては二点鎖線で示す)ように、排水流路中流部18dの中途には、陽極室加圧手段(副生水用電極室加圧手段)として機能する陽極室加圧ユニット71(副生水用電極室加圧ユニット)が介設されている。
この陽極室加圧ユニット71は電磁弁にて構成しており、通電状態(ON状態)において開状態となり排水流路中流部18dを流れる酸性水の流量制限を行わず、通電が遮断された状態(OFF状態)においては半閉状態となる圧力可変機構を備え、陽極室加圧ユニット71を通過する酸性水の流量を約1/2に制限しつつ背圧を生起する機能を有している。また、陽極室加圧ユニット71は、流路配管側接続部18cにて分流される酸性水の分流割合、換言すれば還流路主管部44a及び還流路枝管部44bを介して原水に添加される酸性水の量を変更可能する役割も兼ねている。なお、図示は省略するが、陽極室加圧ユニット71は制御部7と電気的に接続されており、制御部7の制御によって開状態と半開状態とに切り替えが行われる。
また、排水流路下流部18eと排出口63との間には、図3及び図4において破線で示すように、必要に応じて電磁弁52を介設し、排出口63を開放したり閉塞できるよう構成しても良い。
更に、還流路主管部44aにおける還流路枝管部44bの分岐部よりも下流位置には、還流路主管部44aから排水流路下流部18e方向への流れを阻止する逆止弁41が介設されている。
電解槽1は、図3において模式的に示すように、中央に位置する第1の電極板21と、この第1の電極板21を挟み込むように位置する第2の電極板22と第3の電極板23とを備えている。そして、第1の電極板21と第2の電極板22との間、及び第1の電極板21と第3の電極板23との間に、それぞれ隔膜12を配設して、これら電極板21,22,23、隔膜12により、取水用電極室として機能する第1の電解室25、副生水用電極室として機能する第2の電解室26、副生水用電極室として機能する第3の電解室27、取水用電極室として機能する第4の電解室28とを区画形成している。
第2の電極板22と第3の電極板23は、ケーシング10内に配設した制御部7に設けた電源回路(図示せず)からの電力の供給を受け、取水電極板として陰極又は陽極の同一極の電極板となる一方、第1の電極板21は、副生水電極板として第2の電極板22と第3の電極板23の極性とは逆の極性となる。ここでは、第2の電極板22と第3の電極板23とを陰極とし、第1の電極板21を陽極としており、第1の電解室25と第4の電解室28とが陰極室に対応し、第2の電解室26と第3の電解室27とが陽極室に対応することになる。逆に、第2の電極板22と第3の電極板23が陽極となっている場合には、第1の電極板21は陰極となって、第1の電解室25と第4の電解室28とが陽極室に対応し、第2の電解室26と第3の電解室27とが陰極室に対応することになる。
各電解室25,26,27,28には水の流入口と流出口が設けられており、第1の電解室25と第4の電解室28の各流出口に連通した流路は電解水素水吐出口17aで互いに合流し、取水管17を介して所望するpHのアルカリ性水を取水することができる。
一方、第2の電解室26と第3の電解室27の各流出口に連通した流路は互いに合流して排水流路上流部18aを形成し、排水流路18を通じ排出口63を介して(排出口63近傍に電磁弁52を設けた場合は同電磁弁52を更に介して)酸性水を排水可能としている。なお、前述したように、各電極板21,22,23の極性が逆になれば、当然ながら、取水管17とした流路からは酸性水が取水され、排水流路18からはアルカリ性水が排水されることになる。また、電磁弁52は必要に応じて設けられるものであり、浄水生成モードにおいて第2の電解室26や第3の電解室27に流入した水の排水を妨げる必要がない場合には設けなくとも良い。
電解槽1には、主原水供給路24から分岐した2つの副原水供給路24a,24bにより電解に必要な水が供給される。
図3に示すように、第1の電解室25及び第4の電解室28の流入口には、二叉に分岐させた副原水供給路24aの下流側先端をそれぞれ接続し、第2の電解室26及び第3の電解室27の流入口には、二叉に分岐させた副原水供給路24bの下流側先端をそれぞれ接続することで、主原水供給路24を流れる原水を各電解室25,26,27,28に供給可能としている。
また本実施形態では、還流機能が発揮された際に、主原水供給路24から副原水供給路24aを経て第1の電解室25及び第4の電解室28に流入する流量と、副原水供給路24b及び還流バイパス流路70を経て第2の電解室26及び第3の電解室27に流入する流量とは19.5:0.5〜18:2、例えば19:1となるように設定されている。具体的には、副原水供給路24aの分岐部よりも下流側で副原水供給路24bの分岐部よりも上流側の主原水供給路24の流路の中途(例えば、図2及び図3において符号Kで示す位置)に、副原水供給路24aに比して副原水供給路24bの圧力や流量を低下させるオリフィス構造を介設することで実現している。すなわち、このようなオリフィス構造の如き圧力抑制手段は、酸性水還流混合部44cにおける圧力を低下させ、還流バイパス流路70より合流する酸性水側の圧力を相対的に高くすることにより酸性水の循環を補助する役割を有している。
また、主原水供給路24と排水流路18とは、逆止弁41を介して接続されている。すなわち、図4において、主原水供給路24は還流路枝管部44bを通じ排水流路下流部18eに対し逆止弁41を介して接続されている。この逆止弁41は、通水時の水圧がある場合には流路を閉塞して主原水供給路24から排水流路18の方向への水の流れを止めるものであり、また、通水時の水圧が小さい場合には開放状態となり各電解室25,26,27,28や各流路に溜まった水を排水流路18へ流す役割を有している。
かかる電解槽1は、図3に示すように、水道管30から水道蛇口31を介して水の供給を受けているが、水道蛇口31には分岐栓32が配設され、かかる分岐栓32に給水ホース33の一方が接続し、同給水ホース33の他方が浄水部5の流入口と接続されている。
浄水部5は、活性炭などの多孔質素材が封入されており、水道管30より供給される水に含まれる夾雑物を吸着する吸着手段として機能する。また、浄水部5には金属メッシュや布材、ろ紙などの比較的粗いフィルター以外に中空糸膜のような雑菌等まで除去可能な濾過手段も内蔵されている。こうして、水道管30から供給される水は、浄水部5を通過して浄水化されることになる。
また、浄水部5の流出口は流量センサー53の流入口と接続している。流量センサー53は、流水量を測定可能に構成され、例えば、流量センサー53の中央部にプロペラを設け、かかるプロペラの回転数により流水量を測定するものである。流量センサー53の流出口は添加部6の流入口と接続している。
添加部6には、浄水にカルシウムを添加するためのカルシウム剤が収容されている。カルシウム剤には、乳酸カルシウムやグリセロリン酸カルシウム等が含まれており、カルシウム剤に浄水を接触させて溶出させることで電解物質の少ない水を電気分解しやすくするための促進効果を目的としている。本実施形態では、添加部6を通過した水を原水とし主原水供給路24を通じて電解槽1に供給する。
また、本実施形態に係る電解水素水生成器A1に特徴的な構成の一つとして、主原水供給路24の副原水供給路24aや副原水供給路24bよりも上流位置には、取水管17の陰極室加圧部17cよりも下流位置に至るまで原水をバイパスする原水バイパス流路83が接続されており、同原水バイパス流路83には、この原水バイパス流路83を閉鎖・開放するための原水バイパス流路弁83aが介設されている。
原水バイパス流路弁83aは、制御部7に電気的に接続されており、原水バイパス機能の発揮時には制御部7の制御により開状態に切り替えが行われる。原水バイパス流路弁83aが開状態となると、原水が陰極室加圧部17cよりも下流の取水管17へバイパスされることにより、陰極室加圧部17cによる流量の減少を補うことができる。
次に、電解水素水生成器A1の電気的構成について図5を参照しながら説明する。図5は電解水素水生成器A1の電気的構成を示したブロック図である。
図5に示すように制御部7は、その構成としてCPU101、ROM102、RAM103、RTC104等を備えており、電解水素水生成器A1の稼動に必要なプログラムを実行可能としている。
具体的には、ROM102はCPU101の処理において必要なプログラム等が格納されており、RAM103はそのプログラム等の実行に際し一時的な記憶領域として機能する。
例えばROM102の所定領域には、処理を実現するためのプログラムの他、例えば第1電極板21〜第3電極板23に電力を供給するにあたり参照される供給電力値テーブルが格納されている。
この供給電力値テーブルには、各水生成モードそれぞれについて、基本電力値や加算電力値が設定されている。
基本電力値は、溶存量増加ボタンFが押下されていない状態で電解する際の電力値である。また、加算電力値は、溶存量増加ボタンFが押下された際に基本電力値に加算される電力値である。
そして、所定のモードで電解を行うにあたっては、供給電力値テーブルを参照し、そのモードに該当する供給電力値を取得して後述の供給電力調整回路を介して第1電極板21〜第3電極板23への電力供給が行われる。例えば、第1レベルのアルカリ性水生成モードで且つ溶存量増加ボタンFが押下されていない場合には、第1レベルのアルカリ性水生成モードの基本電力値が供給電力値となる。また、第3レベルのアルカリ性水生成モードで且つ溶存量増加ボタンFが押下された場合には、第3レベルのアルカリ性水生成モードの基本電力値に、第3レベルのアルカリ性水生成モードの加算電力値を加算して供給電力値が生成される。
また例えばRAM103の所定領域には、現在選択されている水生成モードを示すモード選択値や、溶存量増加モードであることを示す溶存量増加フラグ、前述の供給電力値テーブルの参照により生成された供給電力値などが記憶される。
モード選択値は、浄水生成モード時に0、強アルカリ水生成モード時に1、第1レベルのアルカリ水生成モード時に2、第2レベルのアルカリ水生成モード時に3、第3レベルのアルカリ水生成モード時に4、酸性水生成モード時に5、強酸性水生成モード時に6の値をとる。また、溶存量増加フラグは溶存量増加モード時にONの値をとる。
符号104で示されるRTC(Real Time Clock)は、後述の割込処理を実行するための基準となるクロックパルスを発生させるためのものである。CPU101は、処理を実行している状態であっても、このRTC104から所定の周期(例えば2ミリ秒)毎に発生されるクロックパルスに応じて処理を中断させ割込処理を実行する。
また制御部7の入力側には、電源ボタンB1や各種ボタンB2〜B5、アルカリボタン群AL、浄水供給ボタンW、酸性ボタン群Ac、溶存量増加ボタンF、流量センサー53が接続されており、使用者からの入力を受け付けたり、制御部7におけるプログラムの実行状況に応じて参照されるよう構成している。また、電源プラグ8からは商用電源等から受電可能としている。
また、制御部7の出力側には、表示部Dや陰極室加圧部17c、陽極室加圧ユニット71、原水バイパス流路弁83a、各ランプ類L1〜L10、第1電極板21、第2電極板22、第3電極板23が接続されており、制御部7におけるプログラムの実行状況に応じて制御駆動するよう構成している。
また、制御部7には、極性切替回路105が備えられている。この極性切替回路105は、CPU101の命令により第1電極板21と、第2及び第3電極板22,23との正負の極性切替を行う。
また、制御部7には、供給電力調整回路106が備えられている。この供給電力調整回路106は、CPU101の命令によりRAM103に記憶されている供給電力値を参照し、第1電極板21と、第2及び第3電極板22,23とに電力を付与する。
次に、制御部7において実行される処理について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は制御部7のCPU101にて実行されるメイン処理を示したフローであり、図7はサブルーチンでの処理を示したフローである。なお、本実施形態に係る電解水素水生成器A1では、例えば使用者がORP表示ボタンB2を押下すれば表示部DにORP値が表示されたり、浄水カートリッジの交換時期がくれば所定のランプが点灯するなど様々な機能が実装されているが、ここでは電解水の生成処理を中心に説明し、付帯機能の処理については説明を省略する。
図6に示すように、メイン処理においてCPU101はまず、電源ボタンB1が押下されたか否かについて判断を行う(ステップS11)。ここで電源ボタンB1が押下されていないと判断した場合(ステップS11:No)には、CPU101は処理を再びステップS11へ戻す。一方、電源ボタンB1が押下されたと判断した場合(ステップS11:Yes)には、CPU101は処理をステップS12へ移す。
ステップS12においてCPU101は、初期設定処理を行う。本実施形態に係る電解水素水生成器A1では、一例として電源投入後は浄水生成モードで立ち上がることとしており、モード選択値を0、原水バイパス流路弁83aを閉状態、陰極室加圧部17cを非加圧状態(開状態)、陽極室加圧ユニット71を非加圧状態、溶存量増加フラグをOFF、ランプL10を消灯、供給電力値を0に設定し、表示部Dに浄水生成モードである旨の表示を行う。
次にCPU101は、浄水供給ボタンWが押下されたか否かについて判断を行う(ステップS13)。ここで浄水供給ボタンWが押下されたと判断した場合(ステップS13:Yes)には、CPU101は処理を再びステップS12へ移し、電解水素水生成器A1を浄水生成モードの状態とする。一方、浄水供給ボタンWが押下されていないと判断した場合(ステップS13:No)には、CPU101は処理をステップS14へ移す。
ステップS14においてCPU101は、アルカリボタン群ALが押下されたか否かについて判断を行う。ここでアルカリボタン群ALが押下されていないと判断した場合(ステップS14:No)には、CPU101はステップS16へ処理を移す。一方、アルカリボタン群ALが押下されたと判断した場合(ステップS14:Yes)には、CPU101は、ステップS15へ処理を移す。
ステップS15においてCPU101は、第1電極板21が陰極、第2及び第3電極板22,23が陽極となるよう極性切替回路105に対して指示を行うと共に、押下されたボタンが強アルカリ性水供給ボタンAL0であれば1に、第1レベルのアルカリ性水供給ボタンAL1であれば2に、第2レベルのアルカリ性水供給ボタンAL2であれば3に、第3レベルのアルカリ性水供給ボタンAL3であれば4にモード選択値の設定を行う。
また、ステップS15においてCPU101は、ランプL10を点灯させ、表示部Dに押下されたボタンに応じたモードの表示を行いアルカリ性水生成モードに移行している旨を使用者に報知し、処理をステップS16へ移す。
ステップS16においてCPU101は、酸性ボタン群Acが押下されたか否かについて判断を行う。ここで酸性ボタン群Acが押下されていないと判断した場合(ステップS16:No)には、CPU101は処理をステップS18へ移す。一方、酸性ボタン群Acが押下されたと判断した場合(ステップS16:Yes)には、CPU101は処理をステップS17へ移す。
ステップS17においてCPU101は、第1電極板21が陽極、第2及び第3電極板22,23が陰極となるよう極性切替回路105に対して指示を行うと共に、押下されたボタンが酸性水供給ボタンAc1であれば5に、強酸性水供給ボタンAc2であれば6にモード選択値の設定を行う。
また、ステップS17においてCPU101は、ランプL10を点灯し、表示部Dに押下されたボタンに応じたモードの表示を行い酸性水生成モードに移行している旨を使用者に報知し、処理をステップS18へ移す。
ステップS18においてCPU101は、溶存量増加ボタンFが押下されたか否かについて判断を行う。ここで溶存量増加ボタンFが押下されていないと判断した場合(ステップS18:No)には、CPU101はステップS13に処理を移す。一方、溶存量増加ボタンFが押下されたと判断した場合(ステップS18:Yes)には、CPU101は処理をステップS19へ移す。
ステップS19においてCPU101は、RAM103の所定アドレスを参照し、モード選択値の値が0であるか否か、すなわち、浄水生成モードであるか否かについて判断を行う。ここでモード選択値の値が0であると判断した場合(ステップS19:Yes)には、CPU101はステップS13へ処理を移す。一方、モード選択値の値が0ではないと判断した場合(ステップS19:No)には、CPU101は処理をステップS20へ移す。
ステップS20においてCPU101は、陰極室加圧部17cを加圧状態に切替を行い、これと略同時に陽極室加圧ユニット71についても加圧状態に切替をおこなって、陰極室や陽極室が加圧されるようにする。
また、ステップS20においてCPU101は、原水バイパス流路弁83aを開状態に切り替え、溶存量増加フラグをONとした上で表示部Dに溶存量増加モードに移行している旨を表示し、処理をステップS13へ移す。なお、ステップS20を実行する際に、既に溶存量増加フラグがONである場合には、CPU101は溶存量増加フラグをOFFとした上で陰極室加圧部17cや陽極室加圧ユニット71を非加圧状態に、原水バイパス流路弁83aを閉状態に切り替え、溶存量増加モードから離脱して、モード選択値に応じた通常の生成モードである旨を表示部Dに表示する。以下、溶存量増加モード離脱処理という。
次に、図7を参照しつつ割込処理について説明する。CPU101は、処理を実行している状態であっても処理を中断させ割込処理を実行する場合がある。RTC104から所定の周期(例えば2ミリ秒)毎に発生されるクロックパルスに応じて、以下の割込処理を実行する。
割込処理においてCPU101は、使用者により電源ボタンB1が長押し(例えば2秒)されたか否かについて判断を行う(ステップS31)。ここで電源ボタンB1の長押しが検出されたと判断した場合(ステップS31:Yes)には、CPU101は供給電力調整回路106に対して電力の供給を停止する命令をするなど、終了動作に必要な処理を行い(ステップS32)、処理を終了する。終了後は例えば、ステップS11のループへ戻し、電源の再投入まで待機するようにしても良い。
一方、ステップS31において電源ボタンB1の長押しが検出されていないと判断した場合(ステップS31:No)には、CPU101は処理をステップS33へ移す。
ステップS33においてCPU101は、流量センサー53からの入力信号の有無を確認し、水流が検出されたか否かについて判断を行う。ここで水流が検出されていないと判断した場合(ステップS33:No)には、CPU101は処理をステップS34へ移す。
ステップS34においてCPU101は、供給電力調整回路106に対し、電力供給の停止を命令し、分岐前のアドレスに処理を戻す。
一方、ステップS33において水流が検出されたと判断した場合(ステップS33:Yes)には、CPU101は処理をステップS35へ移す。
ステップS35においてCPU101は、RAM103の所定アドレスを参照し、モード選択値が0であるか否か、すなわち、浄水生成モードであるか否かについて判断を行う。ここでモード選択値が0であると判断した場合(ステップS35:Yes)には、CPU101は処理をステップS34へ移す。一方、モード選択値が0ではないと判断した場合(ステップS35:No)には、CPU101は処理をステップS36へ移す。
ステップS36においてCPU101は、ROM102の所定アドレスに記憶されている供給電力値テーブルからモード選択値に応じた基本電力値を読み出し、RAM103の所定アドレスに供給電力値として設定する。
次にCPU101は、RAM103の所定アドレスを参照し、溶存量増加フラグがONであるか否かについて判断を行う。ここで溶存量増加フラグがONではないと判断した場合(ステップS37:No)には、CPU101は処理をステップS41へ移す。一方、溶存量増加フラグがONであると判断した場合(ステップS37:Yes)には、CPU101は処理をステップS38へ移す。
ステップS38においてCPU101は、ROM102の供給電力値テーブルを参照してモード選択値に応じた加算電力値を供給電力値に加算し、処理をステップS41へ移す。
ステップS41においてCPU101は、RAM103の所定アドレスを参照して供給電力値を取得し、取得した供給電力値にて電力供給を行うよう供給電力調整回路106に対して指示を行い、分岐前のアドレスに処理を戻す。
次に、上述してきた構成を備える電解水素水生成器A1における一連の動作について説明する。
商用電源等に電源プラグ8を接続した状態の電解水素水生成器A1において、使用者が電源ボタンB1を押下すると、電解水素水生成器A1は浄水生成モードの状態で立ち上がり、通水又はボタン入力の待ち受け状態となる。
使用者が水道蛇口31を開けて通水させると、原水は電解部4において電解されることなく電解水素水吐出口17aを通じ、非加圧状態の陰極室加圧部17cを介して取水管17より浄水として吐出される。
この状態において使用者がアルカリボタン群AL、例えば第1レベルのアルカリ性水供給ボタンAL1を押下すると、電解水素水生成器A1は第1レベルのアルカリ性水生成モードとなり、取水管17からは第1レベルのアルカリ性水が吐出される。
ここで、使用者が溶存量増加ボタンFを押下すると、制御部7は圧力可変機構を有する陰極室加圧手段としての陰極室加圧部17cを加圧状態に切り替えるとともに原水バイパス流路弁83aを開状態とし、陰極室加圧部17cによる流量の減少を補い、これと略同時に圧力可変機構を有する陽極室加圧手段としての陽極室加圧ユニット71についても加圧状態に切替が行われる。
従って、電解水素水吐出口17aを通過した水素気泡を含む第1レベルのアルカリ性水は加圧状態の陰極室加圧部17cに流入し、微細化気泡生成管の機能により水素気泡のマイクロバブル化やナノバブル化が行われ、水素が豊富に溶存した第1レベルのアルカリ性水が電解水素水として取水管17より吐出されるが、陰極室加圧部17cにより流量が絞られたにもかかわらず原水がバイパスされることで、溶存量増加ボタンFを押さない場合と略同量の取水を得られる。
なお、この場合、原水によりアルカリ水の場合pHが低下することになるが、溶存水素向上のための電解制御を行っているため、むしろ過度なpH向上を抑制でき、結局、使用者にとっては溶存量が増加した水を取水状態やpHに変化なく得られるという効果がある。
また、陰極室内の圧力上昇に由来して、電解水素水としてのアルカリ性水に含まれる水素気泡の溶解性が向上し、気泡溶解促進機能が発揮されて更に溶存水素量が高められることとなる。
また、陽極室内の内圧向上により隔膜12を介して陽極室内容水を陰極室側へリークさせ、陰極室内容水をリークさせた陽極室内容水によって中和することができ、比較的pHの低い電解水素水を生成できる。
また、溶存量増加ボタンFの押下により、供給電力値が第1レベルのアルカリ性水の基本電力値に加算電力値を加えた値となるため、電解電力が向上する。
従って、第2及び第3電極板22,23からはより多くの水素ガスが生成されることとなり、更なる水素含量の向上が図られることとなる。
また、溶存量増加ボタンFの押下により、制御部7は原水バイパス流路弁83aを開状態とし、主原水供給路24を流れる原水の一部を原水バイパス流路83を介して陰極室加圧手段としての陰極室加圧部17cよりも下流側へ通水させ、原水バイパス機能が発揮される。
従って、取水管17から吐出される電解水素水は希釈されつつも増量することとなり、比較的pHが低く、陽極室加圧手段や陰極室加圧手段を備えない状態で原水をバイパスさせた場合に比して水素含量の高い電解水素水を多量に供給することができる。
また、溶存量増加ボタンFの押下により陽極室加圧ユニット71が加圧状態に切り替えられると、排水流路18を流れる酸性水の一部が還流バイパス流路70を介して原水と混合されて陽極室に還流され、還流機能が発揮されることとなる。
また、供給電力値が第1レベルのアルカリ性水の基本電力値に加算電力値を加えた値となっているため、電解電力が向上している。
そして、還流バイパス流路70は、陰極室内の水のpHをより低い状態とすることができるので、電解電力が向上しているにもかかわらず隔膜12を介した陰極室内容水のpH抑制を更に効果的なものとすることができる。
したがって、陰極室内の圧力上昇に由来して、電解水素水としてのアルカリ性水に含まれる水素気泡の溶解性が向上するだけでなく、電解電力の向上により第2及び第3電極板22,23からはより多くの水素ガスが生成され更に溶存水素量が高められることとなる。
なお、これらの動作は第1レベルのアルカリ性水生成モードに限定されるものではなく、他の第2や第3レベルのアルカリ性水生成モードや強アルカリ性水生成モードは勿論のこと、前述のフロー等が許容する範囲内で酸性水生成モードや強酸性水生成モードにおいても同様に、酸素を豊富に含んだ酸性水を吐出させることも可能である。
次に、第2実施形態に係る電解水素水生成器A2について図8を参照しながら説明する。この電解水素水生成器A2は、前述の電解水素水生成器A1と略同様の構成を備えているが、還流機能を備えておらず電解水素水生成器A1に比して構成をシンプルにした点で特徴的である。なお、以下の説明において電解水素水生成器A1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
図8に示す電解水素水生成器A2は、電解水素水生成器A1と比較して、還流バイパス流路70を備えておらず、また、排水流路18の中途には陽極室加圧手段として機能する陽極室加圧ユニット91が備えられている。
陽極室加圧ユニット91は圧力可変機構を備えており、制御部7と電気的に接続されているが、圧力可変機構のない通常の加圧機構であってもよい。
また、図6に示したメイン処理におけるステップS20に代えて、図9に示すステップS21を実行するよう構成している。
そして、このような構成を備える電解水素水生成器A2の動作について説明すると、例えば電解水素水生成器A2の第2レベルのアルカリ性水供給ボタンAL2を押下して第1電極板21を陽極、第2電極板22及び第3電極板23を陰極として通電しつつ主原水供給路24を介して電解部4に原水を供給すると、陽極室加圧ユニット91の存在により陽極室内圧が高められ、陽極室内容水が隔膜を介して陰極室内にリークすることで陰極室内のpHの上昇が抑制される。
ここで使用者により溶存量増加ボタンFが更に押下されると、制御部7は圧力可変機構を有する陰極室加圧手段としての陰極室加圧部17cを加圧状態に切り替える。このタイミングで陽極室加圧ユニット91が加圧状態となるような制御を行うことが望ましいが、陽極室加圧ユニット91が常時加圧状態であっても良い。
これに伴い、気泡溶解促進機能が発揮され、第2電極板22及び第3電極板23にて生成された水素ガスの溶解が助長されて、取水管17から水素溶存量が高められた電解水素水としてのアルカリ性水が吐出されることとなる。
また、溶存量増加ボタンFの押下により、供給電力値が第2レベルのアルカリ性水の基本電力値に加算電力値を加えた値となるため電解電力が向上しており、第2及び第3電極板22,23からはより多くの水素ガスが生成されることとなって、更なる水素含量の向上が図られることとなる。
また、溶存量増加ボタンFの押下により、制御部7は原水バイパス流路弁83aを開状態とすることで原水バイパス機能が発揮され、取水管17から吐出される電解水素水は増量することとなる。
このように、電解水素水生成器A2の様な構成によっても、本発明を実現することが可能である。
次に、第3実施形態に係る電解水素水生成器A3について図10を参照しながら説明する。この電解水素水生成器A3は、前述の電解水素水生成器A1と略同様の構成を備えているが、還流機能と原水バイパス機能とを備えておらず電解水素水生成器A1や電解水素水生成器A2に比して、構成を更にシンプルにした点で特徴的である。
図10に示す電解水素水生成器A3は、電解水素水生成器A1と比較して、原水バイパス流路83や還流バイパス流路70を備えておらず、吐出配管17dの中途には陰極室加圧手段として機能する陰極室加圧ユニット90が備えられ、また、排水流路18の中途には陽極室加圧手段として機能する陽極室加圧ユニット91が備えられている。
陰極室加圧ユニット90は圧力可変機構を備えるものではなく、また微細化気泡生成管としての機能も殆ど有していない図1(c)に示した構造を備えるユニットであって、制御部7とは電気的に接続されていない。
また、陽極室加圧ユニット91についても圧力可変機構を備えるものではなく、一般的な制限オリフィスであり、制御部7とは電気的に接続されていないが、上記第1実施形態に示す還流バイパス流路70のような加圧機構を備えても良い。
また、電解水素水生成器A3の操作パネルPには溶存量増加ボタンFが設けられておらず、図6に示したメイン処理におけるステップS18〜S20は実行されることなくステップS13へループし、また、図7に示した割込処理におけるステップS37及びステップS38も実行されないよう構成している。
そして、このような構成を備える電解水素水生成器A3の動作について説明すると、第1電極板21を陽極、第2電極板22及び第3電極板23を陰極として通電しつつ主原水供給路24を介して電解部4に原水を供給すると、陰極室加圧ユニット90により陰極室としての第1電解室25及び第4電解室28の内圧が高められ、気泡溶解促進機能により第2電極板22及び第3電極板23にて生成された水素ガスの溶解が助長されて、取水管17から水素溶存量が高められた電解水素水としてのアルカリ性水が吐出されることとなる。
またこのとき、陽極室加圧ユニット91により第2電解室26や第3電解室27、排水流路18の内圧も高められているため、隔膜12を介した陽極室側への陰極室内容液のリークや、陰極室への原水流入不足が回避され、陰極室内圧向上による溶存水素効率の向上効果を堅実に享受することができる。
また、陰極室加圧ユニット90が生起する背圧よりも陽極室加圧ユニット91が生起する背圧が高くなるようにすれば、隔膜12を介して陽極室内容液を陰極室内に浸入させることができ、陰極室内容液のpH上昇を効果的に抑制することも可能である。
このように、電解水素水生成器A3の様なシンプルな構成によっても、本発明を実現することが可能である。
また、上述した電解水素水生成器A3や先に述べた電解水素水生成器A1及び電解水素水生成器A2は実施態様の一例であり、各電解水素水生成器A1〜A3が有する構成の一部を欠いた電解水素水生成器や、電解水素水生成器A1〜A3が有する構成の一部を他の電解水素水生成器A1〜A3に加えた電解水素水生成器など、本実施形態において開示したあらゆる構成の組み合わせは、勿論、本発明の概念に含まれる。また、出願人がこのような電解水素水生成器の態様に特許請求の範囲等を補正することも妨げない。
上述してきたように、本実施形態に係る電解水素水生成器(例えば、電解水素水生成器A1〜A3)によれば、隔膜により区画した陽極室と陰極室とを有し、水を供給しながら各極室に配設した電極間に前記隔膜を介して通電することにより前記水を電気分解して、前記陽極室より酸性水を吐出しつつ前記陰極室よりアルカリ性の電解水素水を吐出する電解槽を備えた電解水素水生成器であって、前記酸性水の吐出流路と前記電解水素水の吐出流路との両方に、酸性水又は電解水素水の流通は許容しつつもそれぞれ対応する極室内を加圧する極室加圧手段を備えることとしたため、陰極室加圧手段のみを備える電解水素水生成装置に比して、電解水素水中に含まれる水素量をより向上させることができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。