以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、カメラ100の要部断面図である。カメラ100は、レンズユニット200がカメラボディ300に装着されて構成されるレンズ交換式一眼レフカメラである。レンズユニット200は、レンズマウント224を備え、カメラボディ300は、カメラマウント311を備える。レンズマウント224とカメラマウント311が係合してレンズユニット200とカメラボディ300が一体化されると、レンズユニット200とカメラボディ300は、カメラ100として機能する。レンズユニット200とカメラボディ300が一体化された状態では、レンズマウント224に備えられる通信端子とカメラマウント311に備えられる通信端子は、電気的に接続され互いに制御信号の通信および電力の供給を行うことができる。
レンズユニット200は、光軸202に沿って配列されたレンズ群210、絞り221を備える。レンズ群210は、フォーカスレンズ211、ズームレンズ212、ブレ補正レンズ213を含む。レンズユニット200は、制御部であるレンズシステム制御部222を備える。レンズシステム制御部222は、レンズシーケンスを管理すると共に、各構成要素の入出力処理を行う。
レンズユニット200は、角速度センサ231および加速度センサ232を備える。角速度センサ231および加速度センサ232は、カメラ100の振動状態を検出するための振動検出センサである。角速度センサ231は、例えば振動式のジャイロセンサであり、カメラ100の角度ブレを検出する。加速度センサ232は、カメラ100のシフトブレを検出する。
レンズユニット200は、記憶部233を備える。記憶部233は、例えば、レンズユニット200の機種名、シリアル番号、焦点距離、Fナンバー等の情報を記憶する。さらに、記憶部233は、カメラ100が備える振動を誘引する駆動部を駆動させた使用状況に関する情報を記憶する。ここで、使用状況とは、例えば、レンズユニット200に装着されるカメラボディ300の機種名、シリアル番号、総レリーズ回数、現在の日時、現在の温度などである。レンズユニット200は、様々なカメラボディ300を接続することができるので、レンズシステム制御部222は、カメラボディ300が交換された場合に、どのようなカメラボディ300が接続されているかをその都度確認する。
カメラボディ300は、駆動部であるミラーユニット319を備える。ミラーユニット319は、メインミラー312、サブミラー314および回転軸318を含む。メインミラー312は、ピント板313へ被写体光束を導く。サブミラー314は、レンズユニット200から入射する光束の一部を焦点検出センサ322へ導く。サブミラー314は、メインミラー312に結合して配設される。回転軸318は、メインミラー312の一端に設けられる。
ミラーユニット319は、回転軸318を中心に回転することによって、光軸202を中心とする被写体光束中に斜設される状態と、被写体光束から退避する状態を取り得る。メインミラー312は、非駆動時にはピント板313へ被写体光束を導く目的で斜設される。また、ピント板313は、撮像素子315の受光面と共役の位置に配置されている。
ピント板313に結像した被写体像は、ペンタプリズム316によって正立像に変換され、接眼光学系317を介して使用者に観察される。斜設状態におけるメインミラー312の光軸202の近傍領域は、ハーフミラーとして形成されており、レンズ群210を通って入射する光束の一部がメインミラー312を透過する。透過した光束は、メインミラー312と連動して動作するサブミラー314によって反射されて、焦点検出センサ322へ入射される。なお、サブミラー314は、メインミラー312が被写体光束から退避する場合は、メインミラー312に連動して被写体光束から退避する。
斜設されたメインミラー312の後方には、光軸202に沿って、シャッタユニット323、ローパスフィルタ324、撮像素子315が配置されている。他の駆動部であるシャッタユニット323は、例えばフォーカルプレーンシャッタである。シャッタユニット323は、撮像素子315へ被写体光束を導く場合に開放状態を取り、その他の場合に遮蔽状態を取る。
ローパスフィルタ324は、撮像素子315の画素ピッチに対する被写体像の空間周波数を調整する役割を担う。撮像素子315は、例えばCMOSセンサなどの受光素子であり、受光面に結像した被写体像を電気信号に変換する。
撮像素子315によって光電変換された電気信号は、メイン基板325に搭載されたASICである画像処理部326によって画像データに処理される。メイン基板325は、画像処理部326の他に、カメラボディ300のシステムを統合的に制御するカメラシステム制御部327を搭載している。カメラシステム制御部327は、カメラシーケンスを管理すると共に、各構成要素の入出力処理等を行う。
制御部であるカメラシステム制御部327は、角速度センサ231および加速度センサ232の出力を使用して、ブレ補正レンズ213を制御する。撮影される画像は、ブレ補正レンズ213がカメラシステム制御部327に制御されることによってブレのない画像となる。
表示部328は、カメラボディ300の背面に配設される例えば液晶モニタである。表示部328は、画像処理部326によって処理された被写体画像を表示する。また、表示部328は、撮像素子315が連続的に光電変換する被写界像を表示部328に逐次表示することによって、ライブビュー表示することができる。
カメラボディ300はさらに、着脱可能な二次電池329を収容している。二次電池329は、カメラボディ300に限らず、レンズユニット200にも電力を供給する。
図2は、カメラ100のシステム構成図である。カメラ100は、レンズユニット200とカメラボディ300のそれぞれに対応して、レンズシステム制御部222を中心とするレンズ制御系と、カメラシステム制御部327を中心とするカメラ制御系により構成される。
レンズシステム制御部222は、角速度センサ231および加速度センサ232の制御を行うとともに、カメラシステム制御部327との信号の授受をも行う。記憶部233は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、レンズユニット200を制御するプログラム、各種パラメータなどを記憶する役割を担う。温度センサ234は、レンズユニット200の内部の温度を検出する。
カメラ制御系に含まれる画像処理部326は、カメラシステム制御部327からの指令に則して、撮像素子315によって光電変換された撮像信号を予め定められた画像フォーマットに従った画像データに処理する。具体的には、画像処理部326は、静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス処理等の画像処理を行った後に、適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理をする。また、画像処理部326は、動画像としてMPEGファイルを生成する場合、例えば200万画素程度の所定の画素数に縮小して生成した連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化を施して圧縮処理をする。
カメラメモリ341は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、カメラ100を制御するプログラム、各種パラメータ、レリーズ回数などを記憶する役割を担う。ワークメモリ342は、例えばRAMなどの高速アクセスできるメモリであり、処理中の画像データを一時的に保管する役割などを担う。タイマ346は、時計として機能する。
表示制御部343は、カメラシステム制御部327の指示に従って、表示画面を表示部328に表示させる。モード切替部344は、使用者による撮影モード、フォーカスモード等のモード設定を受け付けて、カメラシステム制御部327へ出力する。
レリーズスイッチ345は、押し込み方向に2段階のスイッチ位置を備えている。カメラシステム制御部327は、第1段階のスイッチであるSW1がオンになったことを検出すると、焦点検出センサ322から位相差情報を取得する。また、カメラシステム制御部327は、SW1がオンになったことを検出すると、角速度センサ231および加速度センサ232を駆動する。さらに、カメラシステム制御部327は、第2段階のスイッチであるSW2がオンになったことを検出すると、予め定められた処理フローに従って撮影動作処理を実行する。
レリーズスイッチ345のSW2がオンになると、カメラシステム制御部327は、ミラーユニット319に対して駆動信号を出力する。そして、ミラーユニット319は、被写体光束中に斜設される状態から、被写体光束から退避する状態に変位するように駆動する。ミラーユニット319は、被写体光束中に斜設される状態から、被写体光束から退避する状態に変位するとき、いわゆるミラーショックと呼ばれる振動を誘引する。
シャッタユニット323は、ミラーユニット319が駆動した後、入射した光束を撮像素子315に導くように予め定められた速度によって開口する。シャッタユニット323は、開口駆動するとき、いわゆるシャッタショックと呼ばれる振動を誘引する。
図3は、角速度センサ231の出力を示す図である。図3(a)は、角速度センサ231の特性を示す図である。縦軸は信号強度(dB)、横軸は周波数(Hz)である。角速度センサ231は、離調周波数A近傍で出力される信号強度が高くなり、出力される信号が定常状態とは異なる挙動を示す。振動式のジャイロセンサにおいては、センサ内部の振動子に離調周波数相当の振動が加わると、過剰な信号が出力されることが知られている。ここで、離調周波数とは、ジャイロセンサ内部にある振動子の駆動方向の共振周波数と、コリオリ力による振動を検出する検出方向の振動子の共振周波数との差である。
図3(b)は、正常時の角速度センサ231から出力される信号の波形を示す図である。ここでは、20Hzの振動を角速度センサ231に与えた場合の出力を示す。縦軸は出力電圧(V)、横軸は時間(s)である。角速度センサ231は、離調周波数帯域とは異なる20Hzの振動を受け、正しく信号を出力している。
図3(c)は、上記(b)の状態に離調周波数相当の振動を角速度センサ231に加えた場合の角速度センサ231から出力される信号の波形を示した図である。1000Hz近傍に離調周波数を持つ角速度センサ231が、1000Hzの振動を受けた場合の出力を例として説明する。ここで、角速度センサ231に加えた1000Hzの振動は、前述した20Hzの振動よりも振幅が小さい。範囲Bは、20Hzの振動を検出した場合の出力波形であり、範囲Cは、1000Hzの振動がさらに加わった場合の出力波形である。
角速度センサ231は、離調周波数近傍の振動が入力されると過剰な信号を出力する特徴がある。したがって、離調周波数に相当する1000Hzの振動が20Hzの振動よりも小さな振幅の振動であっても、角速度センサ231は異常な信号を出力してしまうことがある。
カメラシステム制御部327は、角速度センサ231の出力を使用してブレ補正制御するので、角速度センサ231が異常な信号を出力すると誤ったブレ補正制御を行うことになる。つまり、ミラーユニット319およびシャッタユニット323の少なくともいずれかが駆動時に離調周波数近傍の振動を発生させた場合、角速度センサ231は、異常な信号を出力し、カメラシステム制御部327は、誤ったブレ補正制御を行うので、得られる画像はブレの大きな失敗画像となる。本実施形態では、実際の被写体撮影に先立つ準備処理として、例えばレンズユニット200とカメラボディ300の組み合わせなどの特定の使用状況により、角速度センサ231が異常信号を出力するか否かを確認する。異常信号を出力する場合には、その使用状況を記憶しておく。そして、実際の被写体撮影において、その使用状況が記憶している特定の使用状況と一致あるいは類似するかを判断し、そのように判断する場合には、通常とは異なるブレ補正制御を実行する。
図4は、被写体撮影に先立って実行される準備処理のフロー図である。カメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222は、カメラメモリ341に記憶された制御プログラムを読み出して、共働してカメラ100の制御を行う。図中の実線は、各ステップの流れを示し、破線はカメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222との間の信号および電力の授受を示す。注記事項が記載されない破線は、信号の授受を示す。
フローは、レンズユニット200がカメラボディ300に接続された状態から開始する。カメラボディ300は、使用者が主電源をオンにすることによって起動する(ステップS101)。使用者は、モード切替部344を操作して、複数の動作モードの中から準備処理モードを選択する。準備処理モードが選択されると、カメラシステム制御部327およびレンズシステム制御部222は、準備処理モードに移行する。
カメラボディ300が起動すると、レンズユニット200は、カメラボディ300から電力供給を受けて起動する(ステップS201)。カメラシステム制御部327は、レンズシステム制御部222に振動を誘引する駆動部を駆動させた使用状況に関する情報を送信する(ステップS102)。レンズシステム制御部222は、使用状況に関する情報を受信する(ステップS202)。そして、カメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222は、共働して状況記憶処理を行う(ステップS103)。ステップS103は、サブルーチン化された工程である。
図5は、サブルーチン化された状況記憶処理ステップS103を示すフロー図である。図中の実線は、各ステップの流れ、破線はカメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222の間の信号の授受を示す。また、二点鎖線は、ミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動の伝播を示す。
レンズシステム制御部222は、記憶部233にミラーユニット319およびシャッタユニット323が駆動された時の使用状況に関する情報が予め記憶されているか否かを判断する(ステップS2000)。記憶部233が予め使用状況に関する情報を記憶していない場合は、ステップS2004へ進む。記憶部233が予め使用状況に関する情報を記憶していない場合とは、カメラボディ300が初めてレンズユニット200に接続される場合である。一方、記憶部233が予め使用状況に関する情報を記憶している場合は、ステップS2001へ進む。
レンズシステム制御部222は、前回の準備処理の実施から所定の時間が経過しているか否かを記憶部233に記憶された閾値を参照することによって比較する(ステップS2001)。ミラーユニット319およびシャッタユニット323が駆動時に発生させる振動は、短期間であれば振動の伝播状況に変化が少ないので、所定時間を経過していない場合はステップS2002へ進む。一方、所定時間を経過している場合は、例えば構造部材の経年変化によって振動の伝播状況が変化するので、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断し、ステップS2004へ進む。具体的には、タイマ346がカメラボディ300のカレンダーとして機能しているので、レンズシステム制御部222は、前回の準備処理時の日時と現在の日時からこの間の経過時間S1を算出する。そして、レンズシステム制御部222は、記憶部233に記憶された閾値S0と経過時間S1を比較する。経過時間S1が閾値Sより小さい場合、レンズシステム制御部222は、準備処理しないと判断する。経過時間S1が閾値S0以上である場合、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断する。
レンズシステム制御部222は、カメラボディ300が前回の準備処理実施から所定の回数動作した否かを記憶部233に記憶された閾値を参照することによって比較する(ステップS2002)。ミラーユニット319およびシャッタユニット323が駆動時に発生させる振動は、動作回数が少なければ振動の伝播状況の変化が少ないので、所定回数動作していない場合はステップS2003へ進む。一方、所定回数動作した場合は、例えば構造部材の摩耗によって振動の伝播状況が変化するので、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断し、ステップS2004へ進む。具体的には、カメラメモリ341にはレリーズ回数が記憶されているので、レンズシステム制御部222は、前回の準備処理時のレリーズ回数と現在のレリーズ回数からこの間の動作レリーズ回数N1を算出する。そして、レンズシステム制御部222は、記憶部233に記憶された閾値N0と動作レリーズ回数N1を比較する。レリーズ回数N1が閾値N0より小さい場合、レンズシステム制御部222は、準備処理しないと判断する。レリーズ回数N1が閾値N0以上である場合、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断する。
レンズシステム制御部222は、前回の準備処理時からの温度差を記憶部233に記憶された閾値を参照することによって比較する(ステップS2003)。ミラーユニット319およびシャッタユニット323が駆動時に発生させる振動は、温度差が小さければ振動の伝播状況の変化が少ないので、温度差が所定の閾値を超えていない場合は、レンズシステム制御部222は、準備処理は行わないと判断し準備処理を終了する。温度差が所定の閾値を超えた場合は、例えば構造部材の膨張によって振動の伝播状況が変化するので、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断し、ステップS2004へ進む。レンズシステム制御部222は、温度センサ234の出力を記憶部233に記憶させているので、具体的には、レンズシステム制御部222は、前回の準備処理時の温度と現在の温度との温度差T1を算出する。そして、レンズシステム制御部222は、記憶部233に記憶された閾値T0と温度差T1を比較する。温度差T1が閾値T0より小さい場合、レンズシステム制御部222は、準備処理しないと判断する。温度差T1が閾値T以上である場合、レンズシステム制御部222は、準備処理を行うと判断する。
ミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動を、精度よく角速度センサ231が検出するために、カメラ100は、静止していることが望ましい。そこで、レンズシステム制御部222は、カメラ100が静止しているときにミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動を角速度センサ231を使用して測定する。レンズシステム制御部222は、角速度センサ231が振動を検出しているか否かを判断する(ステップS2004)。振動を検出していない場合は、ステップS2005へ進む。振動を検出している場合は、ステップS2004を繰り返し振動が止まるまで待機する。なお、手振れによる振動と離調周波数は、周波数帯域が大きく異なるので、レンズシステム制御部222は、カメラ100が静止していないときに、ミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動を測定してもよい。
レンズシステム制御部222は、準備処理すると決定し、カメラシステム制御部327へ準備処理フラグを送信する(ステップS2005)。レンズシステム制御部222は、準備処理フラグを送信した後、角速度センサ231の出力をサンプリングする準備を行う(ステップS2006)。
準備処理は、実際の被写体撮影を行わないが、ミラーユニット319およびシャッタユニット323を駆動させる。頻繁に準備処理を行うことは、カメラボディ300の総レリーズ回数を増加させるので使用者にとって好ましくない。したがって、レンズシステム制御部222は、上述のように、所定の時間、所定の動作回数、温度差に基づいて準備処理するか否かを判断する。つまり、レンズシステム制御部222は、記憶部233に記憶されている準備処理時の使用状況に関する情報と使用時の状況に大きな変化がある場合に準備処理を行うので、カメラボディ300の総レリーズ回数が増えることはなく、カメラボディ300の耐久性が損なわれない。なお、ステップS2001からステップS2003の処理は、上記説明の順でなくてもよい。
カメラシステム制御部327は、準備処理フラグを受信すると(ステップS1000)、レンズシステム制御部222へ駆動フラグを送信する(ステップS1001)。そして、レンズシステム制御部222は、駆動フラグを受信した後(ステップS2007)、角速度センサ231の出力をサンプリングし始める(ステップS2008)。
カメラシステム制御部327は、ミラーユニット319およびシャッタユニット323に対して駆動信号を出力する(ステップS1002)。まず、ミラーユニット319が、被写体光束から退避する位置に変位し、次にシャッタユニット323が開口する。ミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動は、カメラ100の内部あるいは空気中を伝播し、角速度センサ231に検出される。ミラーユニット319およびシャッタユニット323が特定の振動を発生する場合、角速度センサ231は、異常な信号を出力する。レンズシステム制御部222は、角速度センサ231が検出するミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生する振動を予め定められた時間サンプリングした後にサンプリングを終了する(ステップS2009)。
レンズシステム制御部222は、サンプリングした角速度センサ231から出力される信号が異常か否かを判断する(ステップS2010)。異常か否かの判断は、記憶部233に予め記憶された閾値を参照することによって行う。具体的には、レンズシステム制御部222は、記憶部233記憶された閾値V0と角速度センサ231の出力電圧V1を比較する。角速度センサ231の出力電圧V1が閾値V0より小さい場合、レンズシステム制御部222は、角速度センサ231の出力は異常ではないと判断する。角速度センサ231の出力電圧V1が閾値V0以上である場合、レンズシステム制御部222は、角速度センサ231の出力は異常であると判断する。角速度センサ231から出力される信号が異常である場合に、記憶部233は、ミラーユニット319およびシャッタユニット323を駆動させたときの使用状況に関する情報を記憶する(ステップS2011)。
カメラシステム制御部327は、レンズシステム制御部222に終了フラグを送信し(ステップS1003)、レンズシステム制御部222が終了フラグを受信すると(ステップS2012)、図4に示すフローに戻り、一連の準備処理が終了する。
なお、レンズユニット200に接続されるカメラがミラーユニットを備えない場合には、角速度センサ231は、シャッタユニットを駆動させたときの振動を検出すればよい。同様に、レンズユニット200に接続されるカメラがフォーカルプレーンシャッタを備えない場合には、角速度センサ231は、ミラーユニットを駆動させたときの振動を検出すればよい。なお、上記実施例では、所定の時間、所定の動作回数、温度変化などの条件に従って、レンズシステム制御部222が準備処理を実行するか否かを判断し、条件によっては準備処理を行わないこともある。レンズシステム制御部222が準備処理を行わないと判断しても、使用者の指示に従って、レンズシステム制御部222は、準備処理を実行してもよい。
上記の実施例では、レンズユニット200がカメラボディ300に取付けられ、使用者がカメラボディ300の主電源がオンにすることによって一連の準備処理を実行した。準備処理は、カメラ100の動作のタイミングに合わせて行われてもよい。例えば、カメラシステム制御部327は、カメラボディ300の主電源がオフされるタイミングで一連の準備処理を行ってもよい。
図6は、被写体撮影時のカメラ100の制御を示すフロー図である。カメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222は、共働してカメラ100の制御を行う。図中の実線は、各ステップの流れを示し、破線はカメラシステム制御部327とレンズシステム制御部222との間の信号および電力の授受を示す。特に明示しない破線は、信号の授受を示す。
フローは、レンズユニット200がカメラボディ300に接続された状態から開始する。カメラボディ300は、使用者が主電源をオンにすることによって起動する(ステップS301)。すると、レンズユニット200は、カメラボディ300から電力供給を受けて起動する(ステップS401)。
カメラシステム制御部327は、レンズシステム制御部222に使用状況に関する情報を送信する(ステップS302)。送信する情報は、準備処理時にステップS102においてカメラシステム制御部327が送信する情報と同一である。そして、レンズシステム制御部222は、使用状況に関する情報を受信する(ステップS402)。
レンズシステム制御部222は、ステップS402で受信した情報と、記憶部233に記憶されている準備処理時の使用状況に関する情報とが相応するか否かを判断する。(ステップS403)。レンズシステム制御部222は、受信した情報が記憶された使用状況に関する情報に相応すると判断した場合ステップS405へ進む。一方、レンズシステム制御部222は、受信した情報が記憶された使用状況に関する情報に相応しないと判断する場合、ステップS404へ進む。本実施形態においては、記憶部に記憶されている使用状況が、被写体撮影を行う現時点での使用状況に相応する場合に、角速度センサ231が異常信号を出力する可能性が高いと判断する。使用状況が相互に相応するとは、例えばレンズユニット200に装着されているカメラボディ300のシリアル番号が一致するなどの使用条件が一致する場合、さらには、環境温度の差が予め定められた温度以内などの使用条件が類似する場合をいう。
レンズシステム制御部222は、ステップS402において取得した情報と記憶部233が記憶する使用状況に関する情報とが相応しないと判断する場合、カメラシステム制御部327へ通常フラグを送信する(ステップS404)。
レンズシステム制御部222は、ステップS402において取得した情報と記憶部233が記憶する使用状況に関する情報とが相応すると判断する場合、通告フラグをカメラシステム制御部327へ送信する(ステップS405)。つまり、レンズシステム制御部222は、通告フラグをカメラシステム制御部327へ送信することにより、ブレ補正制御を異ならせる。このように、通常フラグと通告フラグを介して、レンズシステム制御部222が主体的にブレ補正制御を統括する。
カメラシステム制御部327は、受信したフラグが通常フラグまたは通告フラグのいずれであるかを判断する(ステップS303)。カメラシステム制御部327は、受信したフラグが通告フラグであると判断した場合、「ブレ補正制御を実行しないので注意してください」などの通告を表示部328に表示して使用者に注意を促す(ステップS304)。そして、カメラシステム制御部327は、ブレ補正制御を停止する(ステップS306)。カメラシステム制御部327は、ブレ補正制御を停止する場合にブレ補正レンズ213が光軸中心を通る中立な位置に保持されるように制御する。カメラシステム制御部327は、受信したフラグが通常フラグであると判断した場合、通常のブレ補正制御を行う(ステップS306)。
ステップS304において通告表示が行われると、使用者は、ブレ補正制御が停止されることを認識できるので、手振れを起こさないように注意深く被写体撮影することができる。なお、使用者に対する通告は、表示部328への表示に限定するものではなく、警告音の発生または警告ランプの点灯および点滅など使用者に注意を促す手段であれば別の手段でもよい。そして、カメラシステム制御部327は、レリーズスイッチ345のSW2がオンになったことを検出すると、ミラーユニット319およびシャッタユニット323を駆動し、撮影動作処理を行う。
上記の実施例では、レンズシステム制御部222は、連続するミラーユニット319の動作とシャッタユニット323の動作に対して、角速度センサ231から異常信号が出力されるか否かを一括して判断した。しかし、レンズシステム制御部222は、それぞれの出力信号を分けて判断することもできる。具体的には、ミラーユニット319を動作させたときに異常信号が出力されるか否かと、シャッタユニット323を動作させたときに異常信号が出力されるか否かを区別して判断する。このように個別に判断することにより、さらに厳密な制御変更を行うことができる。例えば、ミラーユニット319から発生する振動が角速度センサ231の異常な出力を誘引する場合は、カメラシステム制御部327は、ミラーユニット319を駆動させた後、予め定められた時間が経過してからシャッタユニット323を駆動させることができる。このような制御を行えば、シャッタユニット323が駆動する時点では、角速度センサ231の出力信号を正常な信号として利用できるので、カメラシステム制御部327は、露光期間中に適切なブレ補正制御を実行できる。また、シャッタユニット323から発生する振動が角速度センサ231の異常な出力を誘引する場合は、シャッタユニット323の先幕を走行させた後、予め定められた時間が経過してから撮像素子315のリセット信号による電子シャッタを実行する。このような制御を行えば、電荷蓄積が行われる時点では、角速度センサ231の出力信号を正常な信号として利用できるので、カメラシステム制御部327は、露光期間中に適切なブレ補正制御を実行できる。なお、この場合における「予め定められた時間」は、ステップS2008からステップS2009にかけてサンプリングされる信号から算出される、異常信号が継続する時間以上に定めればよい。
カメラシステム制御部327は、ステップS303において通告フラグであると判断した場合に、ステップS305において、ブレ補正制御を停止するのではなく、加速度センサ232の出力を使用してブレ補正制御を継続してもよい。加速度センサ232の出力を利用したブレ補正制御は、必ずしも高精度なブレ制御を行えるわけではないが、ブレ補正制御を停止するよりはブレを低減させることができる。
また、カメラシステム制御部327は、ステップS303において通告フラグであると判断した場合に、ステップS305において、ブレ補正制御を停止するのではなく、直前までの角速度センサ231の出力を利用してブレ補正制御を継続してもよい。具体的には、実際の角速度センサ231の出力を利用するのではなく、直前のサンプリング値に対して外挿補間することによって得られる仮想的な出力信号を用いてブレ補正制御を継続する。
上記の実施例では、ミラーユニット319およびシャッタユニット323の少なくともいずれかを駆動させることに伴って発生する振動が、角速度センサ231から異常な信号を出力させる例を説明した。しかし、振動を誘引する駆動部は、ミラーユニット319およびシャッタユニット323に限らず、例えばAFモータなどの駆動部が、角速度センサ231に影響を与える場合もある。この場合、振動を誘引する駆動部をステップS1002において駆動すればよい。そして、ステップS2011における記憶処理では、駆動した駆動部の情報を併せて記憶するとよい。
上記の実施例では、図4および図5を用いて説明した準備処理を被写体撮影に先立って予め実行する場合を説明した。予め準備処理を行うのではなく、実際の被写体撮影での撮影処理中に角速度センサ231の異常出力を監視しておき、異常出力が検出された場合に、その時点での使用状況を記憶部233に記憶するように構成してもよい。このように構成すれば、予め準備処理を行う手間が省け、再度の被写体撮影における撮影処理では、異なるブレ補正制御を実行することができるので、失敗画像の取得も低減できる。
また、カメラボディ300が記憶部を備え、レンズシステム制御部222は、角速度センサ231の出力をカメラシステム制御部327へ送信し、カメラシステム制御部327が主体的にブレ補正制御を統括してもよい。記憶部がカメラボディ300に備えられることの他は、上記実施例の構成と同じである。具体的には、カメラシステム制御部327は、レンズシステム制御部222からレンズユニット200に関する情報を受信し、状況記憶処理を行う。カメラシステム制御部327は、前回の準備処理の実施から経過した時間および回数、温度差を予め定められた閾値を参照して、準備処理するか否かを判断する。カメラシステム制御部327は、準備処理を行うと判断した場合に、ミラーユニット319およびシャッタユニット323を駆動させる。そして、角速度センサ231は、ミラーユニット319およびシャッタユニット323の駆動に伴って発生した振動を検出する。レンズシステム制御部222は、角速度センサ231から出力される信号が異常であると判断すると、カメラシステム制御部327に異常フラグを送信する。カメラシステム制御部327は、異常フラグを受信すると、このときの使用状況に関する情報を記憶部に記憶させる。被写体撮影時においては、カメラシステム制御部327は、レンズユニット200の情報を受信した後に、現時点の使用状況に関する情報が、記憶部に記憶された使用状況に関する情報に相応するか否かを判断する。カメラシステム制御部327は、記憶された使用状況に関する情報に相応すると判断した場合は、例えばブレ補正制御を停止して、撮影動作処理を実行する。カメラシステム制御部327は、記憶された使用状況に関する情報に相違しないと判断すると、通常のブレ補正制御によって撮影動作処理を実行する。なお、相応すると判断した場合の、通常とは異なる制御のバリエーションについては、上記と同様である。
以上の実施例においては、一眼レフカメラを例に説明したが、光学ファインダを持たないレンズ交換式カメラ、レンズユニットが一体化されたコンパクトカメラ、動画撮影を行うこともできるビデオカメラといった装置に対しても適用することができる。この場合、カメラボディを撮像装置と捉えることもできるし、レンズユニットと一体化された装置全体を撮像装置と捉えることもできる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。