JP2018140063A - 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
水溶性バインダーを含有するとともに、
酵素処理したセルロースナノファイバーを含有しており、
前記水性薬剤は、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする。
水解性シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
原紙シートに対して、酵素処理したセルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有することを特徴とする。
請求項2に記載の水解性シートの製造方法であって、
前記水溶性バインダー及び前記酵素処理したセルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする。
請求項2又は3に記載の水解性シートの製造方法であって、
前記CNF付与工程において、原紙シートに対して、セルラーゼを用いて酵素処理したセルロースナノファイバーを付与することを特徴とする。
なお、水解性シートはトイレクリーナーを一例にして説明するが、水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の水性薬剤を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナーの製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の水性薬剤が含浸されている。なお、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
原紙シートの目付け量は、30〜150gsm程度である。なお、目付け量は、JIS P8124に基づくものである。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
水溶性バインダーとしては、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、水性薬剤中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが添加されている。
即ち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、酵素処理CNFが添加されている。
表Iにおいて、原紙シートへの水溶性バインダーの塗布量は一定値(0.6dry・g/m2)であり、その中のCNFの添加量は、0.0重量%、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%である。
また、湿潤引張り強度は、各サンプルのMD方向の引張強度[cN/25mm]を測定したものである。引張強度を測定する際、上記サンプルは、JIS P8113に準じてダンベルカッターで幅25mm×120mmに裁断し、試験機条件を引張速度500mm/分、チャック間距離50mmとして測定を行った。また、各湿潤引張り強度の値は、5回測定を行った引張強度の平均値である。
このような酵素処理CNFは、酵素によりセルロースの分子鎖が切れCNFが低分子化することで、酵素処理を施さないCNF(機械解繊したCNF)と比較して、溶液に添加した際に溶液の増粘性が抑えられる。このため、溶液への添加量を増やすことができる。
また、溶液の増粘性が抑えられるため、操業上、取り扱いを容易にすることができる。
セルラーゼとはセルロースを加水分解する酵素の総称で、大きく分けると、1)結晶セルロースの末端からセロビオースを遊離するエキソ型のセロビオハイドロラーゼ(CBH)、2)結晶セルロースを分解できないが、非結晶セルロース(アモルファスセルロース)鎖をランダムに切断するエンド型のエンドグルカナーゼ(EG)、および3)セロビオースや短い鎖(セロオリゴ糖)の末端からグルコースを生成するエキソ型のβ−グルコシダーゼ(BGL)の3種が存在する。
本発明においては公知のセルラーゼを使用できるが、その例には、セルラーゼ生産性糸状菌、細菌、放線菌、担子菌由来のセルラーゼや、遺伝子組み換え、細胞融合等の遺伝子操作により製造したセルラーゼが含まれる。これらの単独または2種以上を混合して使用できる。また、市販のセルラーゼを用いることもでき、その例には、ノボザイム社製Novozyme 476、FiberCareD、天野エンザイム社製セルラーゼ AP3、ヤクルト薬品工業社製 オノズカRS、ジェネンコア社製オプチマーゼCX40L、CX7L、合同酒精社製のGODO−TCL、ナガセケムテックス社製セルラーゼXL−522、洛東化成工業社製エンチロンCM、などが挙げられる。
また、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、酵素処理を施しても良い。
また、上記酵素処理CNFにカルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、パルプ繊維に対して化学的処理を施したものに、酵素処理を施しても良い。
図1において、横軸は濃度(%)であり、縦軸は粘度(Pa・s)である。
粘度は25℃でB型回転粘度計(TVB−10m:東機産業株式会社製)で、ローターNo.m4を用いて60rpmで測定した。
また、ここで使用した酵素処理CNFは、以下のように調整して得られたものである。
漂白手段にオゾン処理を用いた市販の広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を使用し、この漂白されたパルプをパルプ濃度20質量%でニーダー解繊機(山本百馬製作所製、型式SUS−T型)にて1回、混練処理をした。混練処理されたパルプ2,500g(水分80質量%)に18U/mlのセルラーゼ系酵素液(ジェネンコア社製、製品名CX7L)50g、清水2,450gを混合し、25℃で攪拌した後、水温50℃にしたウォーターバス中で5時間、酵素処理をした。酵素処理されたパルプをパルプ濃度10質量%に調整し、この調整されたパルプ300gをPFIミル(熊谷理機工業社製)にて9600回転で1回、叩解処理をし、石臼型分散機(増幸産業社製「スーパーマスコロイダー」)を用いて、微細化処理をして酵素処理CNFを得た。
図1に示すように、酵素処理CNFは、機械解繊したCNFと比較して、同一濃度の溶液の粘度が、格段に抑えられることがわかる。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図3(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図3(b)に示すように、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向比率を0.8〜2.0、好ましくは、0.8〜1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナー100を提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
また、エンボスEM12は、図4(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
次に、トイレクリーナーの製造方法について説明する。図6は、トイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。図7は、トイレクリーナーの原紙シート(抄紙シート)に対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図8は、図7に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
なお、原紙シートには、パルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図7に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図7に示すように、プライ連続シート(抄紙シート)1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3によりバインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
本実施形態において、スプレーノズル3のノズル径は、0.09gal/min以下とする。また、本実施形態のスプレー条件としては、バインダー溶液の濃度;3.4%(CMC:2.8%、酵素処理CNF0.6%)以下、バインダー溶液の粘度;55℃で700cps以下、液圧;2MPa以上、エア圧;0.05〜0.2MPsとなるようにすることが好ましい。
バインダー溶液の粘度を上記のようにすることで、スプレー塗布する際のスプレー詰まりが発生するのを防止することができる。
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で水性薬剤が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該水性薬剤を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナーを乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの外面付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナーの表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図8に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図8に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水性薬剤(水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等を含む)の含浸、当該水性薬剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナーが製造される。
酵素処理CNFを用いることで、機械処理したCNFを用いる場合と比べて、バインダー溶液の粘度を低粘度化できるため、CNFの添加量を増やすことができるので、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させることができる。
そして、バインダー溶液の粘度を低粘度化できるため、操業上、取り扱いを容易にすることができる。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、水解性シートとして、トイレクリーナーを例示したが、これに限らず、身体を拭くための体拭き用シート、お尻拭き用シートなど、使用後にトイレなどで大量の水とともに流して廃棄するニーズのある物品に適用可能である。
図11〜13において、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 仕上げ加工設備
14 フォーマー
15 ワイヤー
16 サクションボックス
17 第1ドライパート
18 回転ドラム
19 フード
20 上コンベアベルト
21 下コンベアベルト
22 真空ロール
23 スプレーノズル
24 第2ドライパート
25 回転ドラム
26 フード
EM11 エンボス
EM12 エンボス
PR21 膨出部
PR22 膨出部
HT21 膨出部の高さ
HT22 膨出部の高さ
CN31 接触面積
SN32 接触面積
e1 凸部
e2 凹部
Claims (4)
- 原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
前記原紙シートは、
目付量が30〜150gsmであり、
水溶性バインダーを含有するとともに、
酵素処理したセルロースナノファイバーを含有しており、
前記水性薬剤は、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含んでいることを特徴とする水解性シート。 - 水解性シートの製造方法であって、
原紙シートに対して、水溶性バインダーを含有する溶液を付与するバインダー付与工程と、
原紙シートに対して、酵素処理したセルロースナノファイバーを付与するCNF付与工程と、
原紙シートに対して、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を付与する水性薬剤付与工程と、
を有することを特徴とする水解性シートの製造方法。 - 前記水溶性バインダー及び前記酵素処理したセルロースナノファイバーの付与されたシートを乾燥させる乾燥工程を有し、
前記水性薬剤付与工程は、前記乾燥工程で乾燥させたシートに対して、前記水性薬剤を付与することを特徴とする請求項2に記載の水解性シートの製造方法。 - 前記CNF付与工程において、原紙シートに対して、セルラーゼを用いて酵素処理したセルロースナノファイバーを付与することを特徴とする請求項2又は3に記載の水解性シートの製造方法。
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