JP2018120031A - 液晶表示装置 - Google Patents

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元 中山
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Katsufumi Omuro
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Atsushi Takeda
淳 武田
泰行 佐々田
Yasuyuki Sasada
泰行 佐々田
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Abstract

【課題】本発明は、IPS液晶表示装置の画面上側の斜め方向と、画面下側の斜め方向の表示性能の差異を解消することを課題とする。
【解決手段】上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS方式の液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子とを、この順に有したIPS液晶表示装置において、IPS液晶表示装置の液晶のプレチルト角を1°以下とし、さらに、上側位相差フィルムおよび下側位相差フィルムの光学特性を特定の範囲とした液晶表示装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶表示装置に有用な位相差フィルムに関し、さらにそれを用いた偏光板などの光学材料および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置として、液晶分子をほぼ基板と平行な面内で回転動作させ、液晶層の複屈折性を用いて表示を行うIPS(In Plane Switching)方式が、特許文献1等に開示されており、広く用いられている。
液晶分子の配向制御には、ポリイミド等の高分子膜からなる配向制御膜(以下、配向膜とも称する)が形成され、従来の液晶表示装置の量産技術においては、この配向制御膜をラビング処理することで液晶配向能を付与していた。
ラビング処理による液晶配向処理では、一般的にラビング布と基板との摩擦により発生する静電気や塵による配向乱れによる表示不良などの問題がある。
さらには、ラビング処理による液晶配向処理では、液晶分子が基板表面と完全に平行ではなく、わずかなプレチルト角を持つことにより、表示性能が低下する問題がある。
特許第3303766号公報
IPS液晶表示装置の画面水平方向を0度とし、液晶表示装置のセルの上下に配置された偏光板の吸収軸が0度方向と90度方向に配置される場合、黒表示時には方位角0度と90度に対して45度方向では相対的に光漏れによる輝度が生じるが、プレチルト角を持つIPS液表表示装置では、画面上側の45度および135度での輝度と、画面下側の方位角−45度、-135度の輝度に、差異が生じる課題がある。
本発明では、上記IPS液晶表示装置の画面上側の斜め方向と、画面下側の斜め方向の表示性能の差異を解消することを課題とする。
[1] 上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS方式の液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子とを、この順に有し、IPS方式の液晶セルが、電圧無印加時に、液晶セル内部の液晶性化合物のプレチルト角が1.0°以下である液晶セルであり、上側位相差フィルムおよび下側位相差フィルムが下記式(1)、(2)をそれぞれ満たし、
0≦Re(590)≦10 (1)
−10≦Rth(590)≦40 (2)
上側位相差フィルムのRe(590)と下側位相差フィルムのRe(590)の差が10nm以下であり、上側位相差フィルムのRth(590)と下側位相差フィルムのRth(590)の差が10nm以下である液晶表示装置。
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
[2] 上側位相差フィルムと下側位相差フィルムのいずれかがセルロースアシレートを含む[1]に記載の液晶表示装置。
[3] 上側位相差フィルムと下側位相差フィルムのいずれかがアクリル系高分子を含む[1]または[2]に記載の液晶表示装置。
[4] 上側位相差フィルムと下側位相差フィルムのいずれかがニル芳香族系樹脂を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[5] 上側位相差フィルムと下側位相差フィルムのいずれかがノルボルネン系高分子を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の液晶表示装置。
本発明によれば、上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS方式の液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子とを、この順に有した液晶表示装置において、IPS液晶表示装置の液晶のプレチルト角を1°以下とし、さらに、上側位相差フィルムおよび下側位相差フィルムの光学特性を最適化することで、画面上側の斜め方向と、画面下側の斜め方向の表示性能の差異を解消することができた。
以下、本発明の液晶セルおよび、位相差フィルムについて詳細に説明する。
本発明の液晶セルは、IPS方式の液晶セルであり、液晶の配向プレチルト角は基板に対して水平すなわち、基板と液晶配向の軸方向のなす角であるプレチルト角ができるだけ小さい角度となることが好ましい。プレチルト角は1.0度以下が好ましく、0.5度以下であることがより好ましい。
本発明の位相差フィルムは、IPSモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置に用いられる。このモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS方式の液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子とを、この順に配置する態様とすることで、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。
前記位相差フィルムの光学特性は、下記式(1)、(2)をそれぞれ満たし、
0≦Re(590)≦10 (1)
−10≦Rth(590)≦40 (2)
前記上側位相差フィルムのRe(590)と前記下側位相差フィルムのRe(590)の差が10nm以下であり、前記上側位相差フィルムのRth(590)と前記下側位相差フィルムのRth(590)の差が10nm以下である。
本発明において、上側位相差フィルムとは液晶セルの表示面に対して視認側を指し、下側位相差フィルムとは、液晶セルの表示面に対して反視認側、即ちバックライト側を指す。
位相差フィルムの光学特性が、前記の式(1)の値の範囲でない場合、本発明のIPS液晶表示装置の斜め方向からの表示性能、光漏れやカラーシフトが大きくなる。値の範囲としてより好ましくは、Reは0nm以上5nm以下であり、さらに好ましくは、Reは0nm以上3nm以下である。
位相差フィルムの光学特性が、前記の式(2)の値の範囲でない場合も、本発明のIPS液晶表示装置の斜め方向からの表示性能、光漏れやカラーシフトが大きくなる。−10nmより小さいと、特に斜め方向の光漏れが顕著となり、40nmより大きいと、特に斜め方向のカラーシフトが顕著となることから、好ましくない。式(2)の値の範囲として、より好ましくは、Rthは−5nm以上30nm以下であり、さらに好ましくは、0nm以上20nm以下である。
また、本発明に係る位相差フィルムは、液晶セルの表示面の視認側と反視認側(バックライト側)の両側に配置され、その二枚の光学特性ReおよびRthは、ほぼ同一であることが好ましい。上記二枚の光学特性が対象でない場合、IPS液晶セルの斜め方向からの視野角補償が不十分となり、光漏れを生じる。
上側位相差フィルムのRe(590)と下側位相差フィルムのRe(590)の差は、5nm以下が好ましく、3nm以下が特に好ましく、前記上側位相差フィルムのRth(590)と前記下側位相差フィルムのRth(590)の差は、5nm以下が好ましく、3nm以下が特に好ましい。
本発明において、Re及びRthは各々、波長590nmにおける面内レタデーション及び厚み方向のレタデーションを表す。
本発明において、Re及びRthは、AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)において、波長590nmで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d)を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
が算出される。nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルムの進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率である。
本発明の位相差フィルムを形成するには、ポリマー材料を用いることが好ましい。ポリマー材料としては、セルロースアセテート系ポリマー、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリカーボネートやポリノルボルネン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、液晶ポリマー、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型の樹脂などが挙げられる。特にセルロースアシレート系ポリマー、アクリル系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリスチレン等が好ましい。
(セルロースアシレート)
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを主成分として含有するのが好ましい。本発明で用いるセルロースアシレートは、特に制限はない。その中でも、アセチル置換度が2.70〜2.95のセルロースアシレートを用いることが好ましい。アセチル置換度が2.7以上であると、後述する条件を満たす芳香族エステルオリゴマーとの相溶性が良好であり、フィルムが白化しにくいため好ましい。さらに、透明性に加えて、透湿度や含水率が良好となるため好ましい。また、偏光板の偏光子耐久性やフィルム自体の湿熱耐久性も良好となるため好ましい。一方、置換度が2.95以下であることが光学性能の観点で好ましい。
前記セルロースアシレートのアセチル置換度は、2.75〜2.90であることがさらに好ましく、2.82〜2.89であることが特に好ましい。
なお、総アシル置換度の好ましい範囲も、前記アセチル置換度の好ましい範囲と同様である。
なお、アシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。
セルロースの水酸基に置換する炭素原子数2〜22のアシル基のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
本発明に使用されるセルロースアシレートは、置換基がアセチル基またはプロピオニル基であるものが好ましく、アセチル基であるものが好ましい。
また、混合脂肪酸セルロースアシレートを用いてもよく、該混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられ、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートの分子量は数平均分子量(Mn)で40000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。本発明で用いられるセルロースアシレートはMw/Mn比が4.0以下であることが好ましく、更に好ましくは1.4〜2.3である。
本発明において、セルロースアシレート等の平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、国際公開WO2008−126535号公報に記載の方法により、その比を計算することができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、主成分であるセルロースアシレートとともに、添加剤を含んでいてもよく、例えば、少なくとも1種の芳香族エステルオリゴマーを含有することが好ましい。芳香族エステルオリゴマーを低添加量で添加するとセルロースアシレートフィルムのKnoop硬度を高めることができるので好ましい。例えば、芳香族エステルオリゴマーを含むセルロースアシレートフィルムを、延伸処理(好ましくは二軸延伸処理)することにより、セルロースアシレートフィルムのKnoop硬度を高めることができる。
また、本発明の偏光板の好ましい態様では、添加剤を添加することで、セルロースアシレートフィルムの薄膜化起因する透湿度の増加に伴うサーモ処理時の偏光性能の悪化の改善と、偏光子耐久性の改善の改善もすることができる。また、本発明の偏光板の好ましい態様では、その結果として、本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んだときのワープムラも改善することもできる。
以下、前記セルロースアシレートフィルムに好ましく用いられる添加剤について説明する。
(芳香族エステルオリゴマー)
本発明で用いられる芳香族エステルオリゴマーについて説明する。
前記芳香族エステルオリゴマーは、特に制限はない。その中でも、ジカルボン酸由来の繰り返し単位とジオール由来の繰り返し単位を有し、前記ジカルボン酸由来の繰り返し単位中、脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をm、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をnとしたときm:nが0:10〜3:7であることが好ましい。セルロースの自由体積部分にエステルオリゴマーが侵入した際に、フタル酸比率を上げることで素材由来の硬さが増大し、フィルムのKnoop硬度が上がると推定している。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、芳香族エステルオリゴマーを用いることでセルロースアシレートフィルムのKnoop硬度を高めることができ、さらに芳香族エステルオリゴマーの脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をm、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比nの比率を制御することでセルロースアシレートフィルムのKnoop硬度をさらに高めることができる。
薄膜フィルム同士で『同じKnoop硬度にも関わらず鉛筆硬度に違いが出る』のは可塑剤の性質によりハードコート層のセルロースアシレートフィルムへの染込みが変化するためと考えられる。セルロースアシレートフィルムへ染込みやすいほど、鉛筆硬度が低くなると考えられる。
芳香族エステルオリゴマーを用い、さらに芳香族エステルオリゴマーの脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をm、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比nの比率を制御することで、光学フィルムのKnoop硬度を高めると同時にハードコート層のセルロースアシレートフィルムへの染み込みを抑制することができ、ハードコート層を設けたときの鉛筆硬度を上げることができる。
また、芳香族エステルオリゴマーを用いることにより、偏光子の内側に配置された光学フィルムとして液晶表示装置に組み込んだときに表示ムラがない光学フィルムを提供することができる。
本発明における芳香族エステルオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、600〜2000であることが好ましく、600〜1500がより好ましく、600〜1200がさらに好ましい。芳香族エステルオリゴマーの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースアシレートフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
本発明における芳香族エステルオリゴマーの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
本発明で使用される芳香族エステルオリゴマーは、炭素数2〜10のジオールと炭素数4〜10のジカルボン酸とから合成することが好ましい。合成方法としては、ジカルボン酸とジオールの脱水縮合反応、又は、グリコールへの無水ジカルボン酸の付加および脱水縮合反応などの公知の方法を利用することができる。
ここで、芳香族エステルオリゴマーは、ジカルボン酸である芳香族ジカルボン酸とジオールとの合成により得られるポリエステル系オリゴマーであることが好ましい。
以下、本発明における芳香族エステルオリゴマーの合成に好ましく用いることができるジカルボン酸及びジオールについて説明する。
−ジカルボン酸−
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のいずれも用いることができる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。なかでも、フタル酸及びテレフタル酸が好ましく、ハードコート層を設けたときの鉛筆硬度を改善し、液晶表示装置に組み込んだときに表示ムラを改善し、かつ、偏光子耐久性を改善する観点からフタル酸が特に好ましい。二種以上の芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。具体的には、フタル酸とテレフタル酸との併用を挙げることができる。芳香族エステルオリゴマー中、ハードコート層を設けたときの鉛筆硬度を改善し、液晶表示装置に組み込んだときに表示ムラを改善し、かつ、偏光子耐久性を改善する観点から芳香族ジカルボン酸の中でもフタル酸の比率を高めることが好ましく、芳香族エステルオリゴマーに含まれるジカルボン酸由来の繰り返し単位中、フタル酸由来の繰り返し単位の比率は70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。なお、フタル酸とテレフタル酸の比率(モル比)は、セルロースアシレートフィルムのRthを低減する観点から、5:5〜10:0であることが好ましく、7:3〜10:0であることがより好ましく、10:0であることが特に好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸等が挙げられる。なかでも、コハク酸及びアジピン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
本発明に用いるジカルボン酸の炭素数は、4〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。本発明では2種以上のジカルボン酸の混合物を用いてもよく、この場合、2種以上のジカルボン酸の平均炭素数が上記範囲となることが好ましい。ジカルボン酸の炭素数が上記範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用してもよい。具体的には、アジピン酸とフタル酸との併用、アジピン酸とテレフタル酸との併用、コハク酸とフタル酸との併用、コハク酸とテレフタル酸との併用を挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを併用する場合、両者の比率(モル比)は脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をm、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位のモル比をnとしたときm:nが0:10〜3:7であり、0:10〜2:8であることがより好ましい。
−ジオール−
ジオールとしては、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールが挙げられ、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくは、エチレングリコール及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種であり、より特に好ましくはセルロースとの相溶性の観点からエチレングリコールである。2種用いる場合は、エチレングリコール及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
グリコールの炭素数は、2〜10であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。2種以上のグリコールを用いる場合には、該2種以上の平均炭素数が上記範囲となることが好ましい。グリコールの炭素数が上記範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
−封止−
本発明に用いられる前記芳香族エステルオリゴマーの両末端は封止、未封止を問わないが、前記芳香族エステルオリゴマーが特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止されたことが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、偏光板の偏光子耐久性の改善に有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記芳香族エステルオリゴマーの両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。前記芳香族エステルオリゴマーの水酸基価が10mgKOH/g以下であることが偏光子耐久性を改善する観点から好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0mgKOH/gであることが特に好ましい。
前記芳香族エステルオリゴマーの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、前記芳香族エステルオリゴマーの両末端はモノカルボン酸残基となっている。ここで、残基とは、前記芳香族エステルオリゴマーの部分構造で、前記芳香族エステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
前記芳香族エステルオリゴマーの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、該前記芳香族エステルオリゴマーの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することができる。即ち、封止に用いるモノカルボン酸類としては製造適性および面状品質の観点から芳香族ものカルボン酸よりも脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸またはプロピオン酸がより好ましく、酢酸(末端がアセチル基となる)が最も好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板の偏光子耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
−合成方法−
前記芳香族エステルオリゴマーの合成は、常法により上記芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、ジオールと、必要に応じて末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。
−添加量−
前記セルロースアシレートフィルムは、前記芳香族エステルオリゴマーの含有量が、前記セルロースアシレートに対して5質量%〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。
(偏光子耐久性改良剤)
−一般式(200)で表される化合物−
(一般式(200)中、R11、R13及びR15は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
一般式(200)中、R15は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20の芳香族基を表すことが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜18の芳香族基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基も含む)又は炭素数6〜12の芳香族基であることが特に好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基又はフェニル基であることがより特に好ましく、メチル基、イソプロピル基又はフェニル基であることが最も好ましい。
一般式(200)中、R11およびR13は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20の芳香族基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基又はフェニル基であることが特に好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基であることがより特に好ましく、メチル基又はフェニル基であることが最も好ましい。
一般式(200)中、R11が、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は炭素数6〜20の芳香族基でありであり、かつR13が水素原子または炭素数6〜20の芳香族基であることが好ましい。R11が、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基又は炭素数6〜12の芳香族基であり、かつR13が水素原子または炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましい。R11が、炭素数1〜3のアルキル基またはシクロヘキシル基であり、かつR13が水素原子またはフェニル基であることが特に好ましい。R11が、メチル基であり、かつR13が水素原子またはフェニル基であることがより特に好ましい。
15はさらに置換基を有していてもよい。前記R15が有していてもよい置換基としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、ハロゲン原子、アルキル基、又は芳香族基であることが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましく、塩素原子、メチル基、又はフェニル基であることが特に好ましい。特にR15が炭素数1〜20のアルキル基である場合は、置換基として芳香族基を有することが好ましく、炭素数6〜12の芳香族基を有することがより好ましく、フェニル基を有することが特に好ましい。また、特にR15が炭素数1〜20の芳香族基である場合は、置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基を有することが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基を有することがより好ましく、塩素原子またはメチル基を有することが特に好ましい。
11およびR13はさらに置換基を有していてもよい。前記R11が有していてもよい置換基としては本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、炭素数6〜12の芳香族基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
以下に、一般式(200)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
一般式(200)で表される化合物は、商業的に入手してもよく、公知の方法によって合成してもよい。
−含有量−
前記セルロースアシレートフィルムは、前記分子量/芳香族数の比が300以下であり、かつ、前記一般式(200)で表される化合物の含有量が、前記セルロースアシレートに対して0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。セルロースアシレートに対して1質量%以上であれば、弾性率の向上効果が得られやすく、またセルロースアシレートに対して20質量%以下であれば、セルロースアシレートフィルムを製膜した場合にブリードアウトや染み出しも発生しにくい。
前記分子量/芳香族数の比が300以下であり、かつ、前記一般式(200)で表される化合物の含有量は、セルロースアシレートに対して1〜15質量%であることが特に好ましく、1〜10質量%であることがより特に好ましい。
(UV吸収剤)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、主成分セルロースアシレートとともに、UV吸収剤を含有しているのが好ましい。UV吸収剤は、偏光子耐久性の改善に寄与する。特に、本発明の偏光板の前記セルロースアシレートフィルムを画像表示装置の視認側に配置した偏光板の表面保護フィルムとして利用する態様において、UV吸収剤の添加は有効である。
本発明に使用可能なUV吸収剤については特に制限はない。従来セルロースアシレートに使用されているUV吸収剤はいずれも用いることができる。前記紫外線吸収剤としては、特開2006−184874号公報に記載の化合物を挙げることができる。高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、前記紫外線吸収剤が、主成分であるセルロースアシレートに対して1〜3質量%の割合で含まれていることがより好ましい。
例として以下の構造の紫外線吸収剤を挙げるが、添加する紫外線吸収剤はこれらに限定されない。
(他の添加剤)
前記セルロースアシレートフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤の少なくとも1種をさらに含有していてもよい。他の添加剤の例には、芳香族エステルオリゴマー以外の可塑剤(例えば、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、重縮合オリゴマー系可塑剤等)、レタデーション湿度耐久性改善剤、酸化防止剤等が含まれる。
(セルロースアシレートフィルムの製造方法)
前記セルロースアシレートフィルムを製造する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いて製膜することができる。例えば、溶液流延製膜法及び溶融製膜法のいずれを利用して製膜してもよい。フィルムの面状を改善する観点から、前記セルロースアシレートフィルムは、溶液流延製膜法を利用して製造するのが好ましい。以下、溶液流延製膜法を用いる場合を例に説明するが、本発明は溶液流延製膜法に限定されるものではない。なお、溶融製膜法を用いる場合については、公知の方法を用いることができる。
−ポリマー溶液−
溶液流延製膜方法では、前記セルロースアシレート、芳香族エステルオリゴマー、及び必要に応じて各種添加剤を含有するポリマー溶液(セルロースアシレート溶液)を用いてウェブを形成する。以下において、溶液流延製膜方法に用いることができるポリマー溶液(以下、適宜セルロースアシレート溶液と称する場合もある)について説明する。
−溶媒−
本発明で用いられるセルロースアシレートは溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材上に流延しフィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒を用いることが好ましい。
更に、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。又、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
また、セルロースアシレートと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解し後に混合してもよい。
ここで、上記セルロースアシレートに対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
前記良溶媒の例としてはアセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチルおよび塩化メチレンが好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。
これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることでウェブ(支持体上にセルロースアシレートのドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースアシレートの溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。
これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からメタノール、エタノールが好ましい。エタノールがもっとも好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロースアシレートに対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
本発明においてセルロースアシレートの原料であるセルロースアシレートは、水酸基やエステル、ケトン等の水素結合性の官能基を含むため、全溶媒中に5〜30質量%、より好ましくは7〜25質量%、さらに好ましくは10〜20質量%のアルコールを含有することが流延支持体からの剥離荷重低減の観点から好ましい。
また、本発明においては、水を少量含有させることも溶液粘度や乾燥時のウェットフィルム状態の膜強度を高めたり、ドラム法流延時のドープ強度を高めたりするのに有効であり、例えば溶液全体に対して0.1〜5質量%含有させてもよく、より好ましくは0.1〜3質量%含有させてもよく、特には0.2〜2質量%含有させてもよい。
本発明におけるポリマー溶液の溶媒として好ましく用いられる有機溶媒の組み合せの例については、特開2009−262551号公報に挙げられている。
また、必要に応じて、非ハロゲン系有機溶媒を主溶媒とすることもでき、詳細な記載は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載がある。
本発明におけるポリマー溶液中のセルロースアシレート濃度は、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましく、15〜30質量%が最も好ましい。
前記セルロースアシレート濃度は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する段階で所定の濃度になるように調整することができる。また予め低濃度(例えば4〜14質量%)の溶液を調製した後に、溶媒を蒸発させる等によって濃縮してもよい。さらに、予め高濃度の溶液を調製後に、希釈してもよい。また、添加剤を添加することで、セルロースアシレートの濃度を低下させることもできる。
添加剤を添加する時期は、添加剤の種類に応じて適宜決定することができる。たとえば、芳香族エステルオリゴマーやUV吸収剤は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒或いはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアシレート中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
このような条件を満たし好ましい高分子化合物であるセルロースアシレートを高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
(1)溶解工程
セルロースアシレートに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該セルロースアシレート、添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいはセルロースアシレート溶液に添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
セルロースアシレートの溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中のセルロースアシレートの濃度は10〜35質量%が好ましい。溶解中または
後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送ることが好ましい。
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(セルロースアシレートフィルムの完成品となる前の状態であって、まだ溶媒を
多く含むものをこう呼ぶ)を金属支持体上で加熱し、金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
また、該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150質量%とすることが好ましく、更に10〜120質量%とすることが好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)=[(M−N)/N]×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
(5)乾燥または熱処理工程、延伸工程
前記剥離工程後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置、および/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いて、ウェブを乾燥することが好ましい。
本発明において熱処理をする場合、該熱処理温度はTg−5℃未満であり、Tg−20℃以上Tg−5℃未満であることが好ましく、Tg−15℃以上Tg−5℃未満であることがより好ましい。
また、熱処理温度は、30分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましく、10分程度であることが特に好ましい。
乾燥および熱処理の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。使用する溶媒によって、温度、風量及び時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて条件を適宜選べばよい。
延伸処理は、MD及びTDのいずれか一方向に行ってもよいし、双方の方向に2軸延伸してもよい。2軸延伸が好ましい。延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。また、引張り弾性率は、使用するセルロースアシレートの種類やアシル置換度を調整したり、添加剤の種類を選択することで、又はその割合を調整したりすることで、上記範囲に調整することができる。
フィルム搬送方向MDへの延伸における延伸倍率は、0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0〜10%であることが特に好ましい。前記延伸の際のウェブの延伸倍率(伸び)は、金属支持体速度と剥ぎ取り速度(剥ぎ取りロールドロー)との周速差により達成することができる。例えば、2つのニップロールを有する装置を用いた場合、入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、搬送方向(縦方向)にフィルムを好ましく延伸することができる。このような延伸が施されることによって、MDの引張り弾性率を調整できる。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
フィルム搬送方向に直交する方向TDへの延伸における延伸倍率は、0〜30%であることが好ましく、1〜20%であることがより好ましく、20〜15%であることが特に好ましい。
なお、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向TDに延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
2軸延伸の際に縦方向に、例えば0.8〜1.0倍に緩和させて所望のリターデーション値を得ることもできる。延伸倍率は目的の光学特性に応じて設定される。前記セルロースアシレートフィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。
延伸の際の温度が、Tg以下であると、延伸方向の引張り弾性率が上昇するので好ましい。延伸温度は、Tg−50℃〜Tgであることが好ましく、Tg−30℃〜Tg−5℃であることがより好ましい。一方、上記温度条件で延伸すると、延伸方向の引張り弾性率が上昇する一方で、それに直交する方向の引張り弾性率は低下する傾向がある。従って、延伸によりMD及びTDの双方の方向の引張り弾性率を上昇するためには、上記温度範囲で、双方の方向に延伸処理する、即ち2軸延伸処理するのが好ましい。
なお、延伸工程後に乾燥してもよい。延伸工程後に乾燥する場合、使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。本発明では、延伸工程後の乾燥温度は、延伸工程の延伸温度よりも低い方が、フィルムを液晶表示装置に組み込んだときの正面コントラストを上昇させる観点から好ましい。
(6)巻き取り
以上のようにして得られた、フィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。フィルムの幅は、0.5〜5.0mが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mであり、さらに好ましくは1.0〜2.5mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
このようにして得られたウェブを巻き取り、セルロースアシレートフィルムを得ることができる。
(層構成)
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。例えば、コア層と外層(表層、スキン層と呼ばれることもある)の2層からなる積層構造であることや、外層、コア層、外層の3層からなる積層構造であることも好ましく、これらの積層構造を共流延によって製膜された態様であることも好ましい。
本発明で使用するセルロースアシレートフィルムが2層以上の積層構造を有している場合、外層には、さらにマット剤を添加することが好ましい。マット剤としては、例えば特開2011−127045号公報に記載のものなどを用いることができ、例えば平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子などを用いることができる。
(セルロースアシレートフィルムの厚み)
前記セルロースアシレートフィルムの厚みは、60μm以下であることが好ましく、55〜45μmであることがより好ましく、45〜35μmであることがさらに好ましい。
(アクリル系ポリマー)
アクリルポリマーとしては、(メタ)アクリル酸系樹脂を主成分とする組成物から形成さるものを挙げることができる。
前記(メタ)アクリル酸系樹脂の繰り返し構造単位は、特に限定されない。前記(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し構造単位を有することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル系樹脂とアクリル系樹脂の両方を含む概念である。また、(メタ)アクリル系樹脂には、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体も含まれる。
前記(メタ)アクリル酸系樹脂は、繰り返し構造単位として、更に、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸及び下記一般式(201)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
一般式(201)
CH2=C(X)R201
(式中、R201は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキ
ル基、アリール基、−CN基、−CO−R202基、又は−O−CO−R203基を表し、R202及びR203は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。)
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性が優れる点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは10〜100重量%、更に好ましくは40〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。
前記水酸基含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル;2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水酸基含有単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
前記不飽和カルボン酸を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記一般式(201)で表される単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記一般式(201)で表される単量体を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
前記単量体成分は重合した後にラクトン環を形成していてもよい。その場合、単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得ることが好ましい。
前記単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応の形態としては、溶剤を用いた重合形態であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
たとえば、下記の公報に記載の環状構造を導入したものも好ましい、特開2007−316366号公報、特開2005−189623号公報、WO2007/032304号公報、WO2006/025445号公報に記載のラクトン環構造である。
−ラクトン環含有重合体−
ラクトン環含有重合体は、ラクトン環を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは下記一般式(401)で示されるラクトン環構造を有する。
一般式(401):
一般式(401)中、R401、R402及びR403は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素
原子数1〜20の有機残基を表し、有機残基は酸素原子を含有していてもよい。ここで、炭素原子数1〜20の有機残基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが好ましい。
ラクトン環含有重合体の構造中における上記一般式(401)で示されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%である。ラクトン環構造の含有割合を5質量%以上とすることにより、得られた重合体の耐熱性、及び表面硬度が向上する傾向にあり、ラクトン環構造の含有割合を90質量%以下とすることにより、得られた重合体の成形加工性が向上する傾向にある。
ラクトン環含有重合体の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(p)を得た後に、得られた重合体(p)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによって得られる。
ラクトン環含有重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは50,000〜500,000である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の範囲内での質量減少率が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下であるのがよい。ダイナミックTGの測定方法については、特開2002−138106号公報に記載の方法を用いることができる。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成型品の製造過程で脱アルコール反応が少なく、該アルコールを原因とした成形後の成形品中に泡や銀条(シルバーストリーク)が入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によって、ラクトン環構造が重合体に充分に導入されるので、得られたラクトン環含有重合体は高い耐熱性を有する。
ラクトン環含有重合体は、濃度15質量%のクロロホルム溶液にした場合、その着色度(YI)が、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。着色度(YI)が6以下であれば、着色により透明性が損なわれるなどの不具合が生じにくいので、本発明において好ましく使用することができる。
ラクトン環含有重合体は、熱質量分析(TG)における5%質量減少温度が、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱質量分析(TG)における5%質量減少温度は、熱安定性の指標であり、これを330℃以上とすることにより、充分な熱安定性が発揮されやすい傾向にある。熱質量分析は、上記ダイナミックTGの測定の装置を使用することができる。
ラクトン環含有重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは115℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは135℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
ラクトン環含有重合体は、それに含まれる残存揮発分の総量が、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは2,000ppm以下、さらに好ましくは1,500ppm、特に好ましくは1,000ppmである。残存揮発分の総量が5,000ppm以下であれば、成形時の変質などによって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良が起こりにくくなるので好ましい。
ラクトン環含有重合体は、射出成形により得られる成形品に対するASTM−D−1003に準拠した方法で測定された全光線透過率が、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の指標であり、これを85%以上とすると、透明性が向上する傾向にある。
溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の製造方法の第一の態様では、(メタ)アクリル系樹脂を有機溶媒に溶解させて溶液流延を行って形成するため、(メタ)アクリル系樹脂の合成時における有機溶媒は、溶融製膜を行う場合よりも限定されず、沸点が高い有機溶媒を用いて合成してもよい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
重合開始剤の量の調整により、重合体の重量平均分子量を調整することができる。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができる。添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。
前記アクリルポリマーとしては、従来知られている光学フィルムを用いることができる。
前記アクリルポリマーとして用いられる光学フィルムとしては、特許第4570042号公報に記載のスチレン系樹脂を含有する(メタ)アクリル樹脂からなる光学フィルム、特許第5041532号公報に記載のグルタルイミド環構造を主鎖に有する(メタ)アクリル樹脂からなる光学フィルム、特開2009−122664号公報に記載のラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂からなる光学フィルム、特開2009−139754号公報に記載のグルタル酸無水物単位を有する(メタ)アクリル系樹脂からなる光学フィルムを利用することができる。
(シクロオレフィン系ポリマー)
本発明に用いることができる前記シクロオレフィンポリマーの例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。
本発明に好ましい前記シクロオレフィンポリマーは下記一般式(102)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン系樹脂及び必要に応じ、一般式(101)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィン系樹脂である。また、一般式(103)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
一般式(101)
一般式(102)
一般式(103)
式(101)〜(103)中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3、Y1〜Y3は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)n
N、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、又はX1とY1あるいはX2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16 p3-p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR16又は−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3が好ましく、X3、及びY3は水素原子、Cl、−COOCH3が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、米国公開特許2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
本発明においては、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)に制限はないが、例えば200〜400℃というような高いTgの環状ポリオレフィン系樹脂も用いることができる。
前記シクロオレフィンポリマー層としては、従来知られている光学フィルムを用いることができる。
前記シクロオレフィンポリマー層として用いられる光学フィルムとしては、特開2009−237376号公報の段落[0029]以降に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、特許第4881827号公報、特開2008−063536号公報、特開2008−102475号公報、特開2007−256882号公報に記載のRthを低減する添加剤を含有する環状オレフィン樹脂フィルムを利用することができる。
(アクリルポリマーまたはシクロオレフィンポリマーの製造方法)
前記アクリルポリマーまたはシクロオレフィンポリマーの製造方法としては特に制限は無く、溶融製膜、溶液製膜等の公知の方法で製造することができる。一例としては、後述のセルロースアシレートフィルムの製造方法と同様の製造方法を挙げることができる。
前記アクリルポリマーまたはシクロオレフィンポリマーとしては、薄膜化の観点からは、塗布などにより形成された薄層などを用いてもよく、該薄層は自己支持性を必ずしも有さなくても良い。例えば、前記シクロオレフィンポリマー層または前記アクリルポリマーは、仮支持体上に前記アクリルポリマーまたはシクロオレフィンポリマーを形成したあと、偏光子に直接または接着剤層などを介して前記アクリルポリマーまたはシクロオレフィンポリマーを前記仮支持体ごと貼り合わせ、前記仮支持体を剥離して、転写して形成したものであってもよい。
(転写法を用いた位相差フィルム)
本発明にかかる位相差フィルムとしては、溶融製膜、溶液製膜以外の方法でも製造することができる。一例として、樹脂溶液を仮支持体上に塗工等の方法で透明層を形成した後、偏光子の一方の面に直接または接着剤層などを介して前記仮支持体付きである透明層の仮支持体側でない面を貼り合わせ、その後、前記仮支持体を剥離して、転写して形成した透明層もまた好ましい。
以下では本発明に係る「位相差フィルム」の一態様を表す用語として「透明層」という用語も用いる。
<透明層の材料>
本発明に係る位相差フィルムとして透明層を構成する材料は、配向複屈折と光弾性係数が好ましい範囲に入れば特に限定されないが、ポリマー樹脂、または反応性モノマーを含む硬化性組成物などを好適に用いることができる。
・ポリマー樹脂
本発明に係る位相差フィルムとして透明層を構成するポリマー樹脂としては、ビニル芳香族系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースアシレート樹脂、セルロースエーテル樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ビニル芳香族系樹脂以外のビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂等を挙げることができる。これらのうち、配向複屈折と光弾性係数との関係から、ビニル芳香族系樹脂であることが好ましい。ここで、ビニル芳香族系樹脂とは、少なくとも芳香環を含むビニル系樹脂であり、スチレン系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、1,1−ジフェニルスチレン系樹脂、ビニルナフタレン系樹脂、ビニルアントラセン系樹脂、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン系樹脂、ビニルピリジン系樹脂等が挙げられ、共重合成分として、適宜、ビニルピリジンユニット、ビニルピロリドンユニット、無水マレイン酸ユニット等が含まれていてもよい。ビニル芳香族系樹脂の中でも、光弾性係数及び吸湿性の制御の観点から、スチレン系樹脂であることがさらに好ましい。
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体を50質量%以上含む樹脂が挙げられ、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体のことであり、スチレン及びスチレン誘導体を指す。本発明ではポリマー樹脂として、以下に記載するスチレン系樹脂を最も好ましく用いることができる。スチレン系樹脂は、好ましい光弾性係数に制御し、且つ好ましい吸湿性に制御する目的で、スチレン系単量体に由来するモノマー単位を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、85質量%以上含むことがさらに好ましく、100質量%、すなわちスチレン系単量体のみからなる樹脂であることが最も好ましい。
スチレン系樹脂の具体例としては、スチレン系単量体のみからなる樹脂として、スチレンまたはスチレン誘導体の単独重合体、スチレンとスチレン誘導体との共重合体、及び二種以上のスチレン誘導体の共重合体が挙げられる。ここで、スチレン誘導体とは、スチレンに他の基が結合した化合物であって、例えば、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、tert−ブチルスチレンのようなアルキルスチレンや、ヒドロキシスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、o−クロロスチレン、p−クロロスチレンのような、スチレンのベンゼン核に水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲンなどが導入された置換スチレンなどが挙げられる。中でも、入手しやすさ、材料価格などの観点から、スチレンの単独重合体(すなわちポリスチレン)が好ましい。
また、スチレン系樹脂にはスチレン系単量体成分に他の単量体成分を共重合したものも含まれる。共重合可能な単量体としては、メチルメタクリレ−ト、シクロヘキシルメタクリレ−ト、メチルフェニルメタクリレ−ト、イソプロピルメタクリレ−ト等のアルキルメタクリレ−ト;メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト、シクロヘキシルアクリレ−ト等のアルキルアクリレ−ト等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
上記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレンの単独重合体である汎用ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体;2種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体;スチレン−ジエン系共重合体;スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体;ポリスチレンと合成ゴム(例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等)の混合物、合成ゴムにスチレンをグラフト重合させたポリスチレンなどの耐衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン系単量体を含む重合体(例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体)の連続相中にゴム状弾性体を分散させ、上記ゴム状弾性体に上記共重合体をグラフト重合させたポリスチレン(グラフトタイプ耐衝撃性ポリスチレン「グラフトHIPS」という);スチレン系エラストマーなどが挙げられる。
また、上記ポリスチレン系樹脂は、特に限定されないが、水素添加されていてもよい。即ち、上記ポリスチレン系樹脂は、水素添加されたポリスチレン系樹脂(水添ポリスチレン系樹脂)であってもよい。上記水添ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、SBSやSISに水素を添加した樹脂である水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)や水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等の水素添加されたスチレン−ジエン系共重合体が好ましい。上記水添ポリスチレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
また、上記ポリスチレン系樹脂は、特に限定されないが、極性基が導入されていてもよい。即ち、上記ポリスチレン系樹脂は、極性基が導入されたポリスチレン系樹脂(変性ポリスチレン系樹脂)であってもよい。なお、上記変性ポリスチレン系樹脂には、極性基が導入された水添ポリスチレン系樹脂が含まれる。
上記変性ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系樹脂を主鎖骨格として、極性基を導入されたポリスチレン系樹脂である。上記極性基としては、特に限定されないが、例えば、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基などが挙げられる。中でも、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、エポキシ基が好ましく、より好ましくは無水マレイン酸基、エポキシ基である。上記極性基は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記変性ポリスチレン系樹脂は、ポリエステル系樹脂と親和性が高いまたは反応可能な極性基を有し、かつ、ポリスチレン系樹脂と相溶可能であることにより、ポリエステル系樹脂を主成分とする層やポリスチレン系樹脂を主成分とする層との常温での接着性が高くなる。上記極性基は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
上記変性ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)の変性体、水添スチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)の変性体が好ましい。即ち、上記変性ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、酸無水物変性SEBS、酸無水物変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSが好ましく、より好ましくは、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSである。上記変性ポリスチレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本発明で好適に用いることができるスチレン系樹脂は、耐熱性が高いという理由から、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体を用いることもできる。
また、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体は、アクリル系樹脂との相溶性が高いため、透明性が高く、使用中に相分離を起こして透明性が低下することがないフィルムを得られる。
スチレン−アクリロニトリル共重合体の場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合体割合は1〜40質量%であることが好ましい。さらに好ましい範囲は1〜30質量%であり、とりわけ好ましい範囲は1〜25%である。共重合体中のアクリロニトリルの共重合体割合が1〜40質量%の場合、透明性に優れるため好ましい。
スチレン−メタクリル酸共重合体の場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合体割合は0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1〜30質量%である。共重合体中のメタクリル酸の共重合体割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体の場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合体割合は0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1質量%〜30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸含量が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%以下の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
スチレン系樹脂として、組成、分子量等が異なる複数種類のものを併用することができる。
スチレン系樹脂は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂においては、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
スチレン系樹脂としては、市販品を用いても良く、例えば、電気化学工業(株)製「クリアレン 530L」、「クリアレン 730L」、旭化成(株)製「タフプレン 126S」、「アサプレン T411」、クレイトンポリマージャパン(株)製「クレイトン D1102A」、「クレイトン D1116A」、スタイロルーション社製「スタイロルクス S」、「スタイロルクス T」、旭化成ケミカルズ(株)製、「アサフレックス 840」、「アサフレックス 860」(以上、SBS)、PSジャパン(株)製「679」、「HF77」、「SGP−10」、DIC(株)製「ディックスチレン XC−515」、「ディックスチレン XC−535」(以上、GPPS)、PSジャパン(株)製「475D」、「H0103」、「HT478」、DIC(株)製「ディックスチレン GH−8300−5」(以上、HIPS)などが挙げられる。水添ポリスチレン系樹脂としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックHシリーズ」、シェルジャパン(株)製「クレイトンGシリーズ」(以上、SEBS)、JSR(株)製「ダイナロン」(水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体)、(株)クラレ製「セプトン」(SEPS)などが挙げられる。また、変性ポリスチレン系樹脂としては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製「タフテックMシリーズ」、(株)ダイセル製「エポフレンド」、JSR(株)製「極性基変性ダイナロン」、東亞合成(株)製「レゼダ」などが挙げられる。
本発明に係る位相差フィルムとして透明層を構成するポリマー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、5,000〜100,000であることが好ましく、8,000〜70,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることが更に好ましい。
なお、樹脂の重量平均分子量は、以下の条件で標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、Mnは標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。
GPC:ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶離液;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度;0.7〜0.8質量%、サンプル注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;示差屈折(RI)計(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)
本発明に係る位相差フィルムとして透明層を構成するポリマー樹脂は、1種類でもよく、2種類以上を含んでいてもよい。また、透明層が多層から形成される場合、各層のポリマー樹脂は異なっていてもよい。
本発明に係る位相差フィルムとして透明層において、ポリマー樹脂の含有率は、透明層の全質量に対して、80〜100質量%であることが好ましく、90〜99質量%であることがより好ましい。
(基材フィルム)
透明層を、コーティング法で形成させるために用いられる基材フィルムは、膜厚が5〜100μmであることが好ましく、10〜75μmがより好ましく、15〜55μmが更に好ましい。膜厚が5μm以上であると、十分な機械強度を確保しやすく、カール、シワ、座屈等の故障が生じにくいため、好ましい。また、膜厚が100μm以下であると、本発明の透明層と基材フィルムとの複層フィルムを、例えば長尺のロール形態で保管する場合に、複層フィルムにかかる面圧を適正な範囲に調整しやすく、接着の故障が生じにくいため、好ましい。
基材フィルムの表面エネルギーは、特に限定されることはないが、透明層の材料やコーティング溶液の表面エネルギーと、基材フィルムの透明層を形成させる側の表面の表面エネルギーとの関係性を調整することによって、透明層と基材フィルムとの間の接着力を調整することができる。表面エネルギー差を小さくすれば、接着力が上昇する傾向があり、表面エネルギー差を大きくすれば、接着力が低下する傾向があり、適宜設定することができる。
水及びヨウ化メチレンの接触角値からOwensの方法を用いて、基材フィルムの表面エネルギーを計算することが出来る。接触角の測定には、例えば、DM901(協和界面科学(株)製、接触角計)を用いることができる。
基材フィルムの透明層を形成する側の表面エネルギーは、41.0〜48.0mN/mであることが好ましく、42.0〜48.0mN/mであることが、より好ましい。表面エネルギーが41.0mN/m以上であると、透明層の厚みの均一性を高められるため好ましく、48.0mN/m以下であると、透明層を基材フィルムとの剥離力を適切な範囲に制御しやすいため、好ましい。
また、基材フィルムの表面凹凸は、特に限定されることはないが、透明層表面の表面エネルギー、硬度、表面凹凸と、基材フィルムの透明層を形成させる側とは反対側の表面の表面エネルギー、硬度との関係性に応じて、例えば本発明の複層フィルムを長尺のロール形態で保管する場合の接着故障を防ぐ目的で調整することができる。表面凹凸を大きくすれば、接着故障を抑制する傾向にあり、表面凹凸を小さくすれば、透明層の表面凹凸が減少し、透明層のヘイズが小さくなる傾向にあり、適宜設定することができる。
このような基材フィルムとしては、公知の素材やフィルムを適宜使用することができる。具体的な材料として、ポリエステル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアミド系ポリマー等を挙げることができる。また、基材フィルムの表面性を調整する目的で、適宜表面処理を行うことが出来る。表面エネルギーを低下させるには、例えば、コロナ処理、常温プラズマ処理、鹸化処理等、を行うことができ、表面エネルギーを上昇させるには、シリコーン処理、フッ素処理、オレフィン処理等を行うことができる。
(透明層と基材フィルムとの剥離力)
本発明に係る位相差フィルムとして透明層を、コーティング法で形成させる場合、透明層と基材フィルムとの間の剥離力は、透明層の材料、基材フィルムの材料、透明層の内部歪み等を調整して制御することができる。この剥離力は、例えば、基材フィルムを90°方向に剥がす試験で測定することができ、300mm/分の速度で測定したときの剥離力が、0.001〜5N/25mmが好ましく、0.01〜3N/25mmがより好ましく、0.05〜1N/25mmがさらに好ましい。0.001N/25mm以上であれば、基材フィルムの剥離工程以外での剥離を防ぐことができ、5N/25mm以下であれば、剥離工程における剥離不良(例えば、ジッピングや、透明層の割れ)を防ぐことができる。
<偏光板の製造方法>
本発明に係る透明層を含む偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、前記セルロースアシレートフィルムの裏面(ハードコート層が形成されていない側の面)と、偏光子とを貼り合わせることで作製することができる。前記セルロースアシレートフィルムの貼合面は、アルカリ鹸化処理を行うことが好ましい。また、貼合には、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いることができる。
前記偏光子としては、従来公知の方法で製造したものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールあるいはエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。
また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことにより10μm以下の偏光子フィルムを得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第5048120号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、特許第4751486号公報を挙げることができ、これらの偏光子に関する公知の技術も本発明に係る透明層を含む偏光板に好ましく利用することができる。
こうして得られた偏光子を、偏光板保護フィルムと貼合する。
本発明における偏光板の製造方法は、前記の方法にて得られた偏光子の両面に、2枚の偏光板保護フィルムを積層する工程を含むことが好ましい。
積層には、通常、接着剤が用いられる。偏光子と両面の偏光板保護フィルムの間の接着剤層は、その厚さを0.01〜30μm程度とすることができ、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μmである。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される偏光板保護フィルムと偏光子との間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
好ましい接着剤の一つとして、水系接着剤、すなわち、接着剤成分が水に溶解又は分散しているものを挙げることができ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤が好ましく用いられる。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤において、ポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。
この接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキシル酸塩等が架橋剤として添加されていてもよい。水系接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層の厚みは通常、1μm以下である。
もう一つの好ましい接着剤として、活性エネルギー線の照射又は加熱により硬化するエポキシ化合物を含有する硬化性接着剤組成物が挙げられる。ここで硬化性のエポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものである。この場合、偏光子と保護フィルムとの接着は、当該接着剤組成物の塗布層に対して、活性エネルギー線を照射するか、又は熱を付与し、接着剤に含有される硬化性のエポキシ化合物を硬化させる方法により行うことができる。エポキシ化合物の硬化は、一般に、エポキシ化合物のカチオン重合により行われる。また生産性の観点から、この硬化は活性エネルギー線の照射により行うことが好ましい。
硬化性接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層の厚みは通常、0.5〜5μm程度である。
硬化性接着剤を用いる場合には、貼合ロールを用いてフィルムを貼合した後、必要に応じて乾燥を行ない、活性エネルギー線を照射するかまたは加熱することにより硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましく用いられる。
耐候性、屈折率、カチオン重合性などの観点から、硬化性接着剤組成物に含有されるエポキシ化合物は、分子内に芳香環を含まないものであることが好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、水素化エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。このような硬化性接着剤組成物に好適に用いられるエポキシ化合物は、例えば、特開2004−245925号公報に詳細に説明されている。
[液晶表示装置]
本発明において、IPS方式の液晶セルとしては、少なくとも一方が透明な一対の基板と、前記一対の基板間に配置された液晶層と、前記一対の基板の一方の基板に形成され、この基板面にほぼ平行成分を持った電界を前記液晶層に印加するための電極群およびこれらの電極に接続された複数のアクティブ素子と、前記液晶層と前記一対の基板の少なくともどちらか一方の基板の間に配置された配向制御膜と、前記一対の基板の少なくともどちらか一方の基板に形成され前記液晶層の分子配向状態に応じて光学特性を変える光学手段とを有するものであって、前記配向制御膜の少なくとも一方が、光反応性の材料からなり、ほぼ直線に偏光した光を照射して配向制御膜を形成することができる。
そして上記直線偏光を照射して得られた配向制御膜の作用により本発明にかかるIPS方式の液晶セルは、電圧無印加時に液晶セル内部の液晶性化合物のプレチルト角は、1.0度以下となる。
特に前記液晶性化合物のプレチルト角は、0.5度以下が好ましく、0.1度以下が特に好ましい。
配向制御膜の材料、その形成方法については、特開2004−206091号公報、特開2005−351924号公報、特開2004−206091号公報、特開2009−075569号公報に記載された光反応性の配向制御膜、及びその作製方法を基に作製することができる。
本発明に関する液晶表示装置としては、背面にバックライト光源を有する透過型の液晶表示装置が好ましく、視認側から見て前記した電圧無印加時の液晶セル内部の液晶性化合物のダイレクターは、上下方向、水平方向のいずれであってもよいが、上下方向であることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
(IPS液晶セル001の作製)
IPS液晶セル001を、特開2005−351924の実施例2に基づき作製した。クリスタルローテーション法を用いてこの液晶表示装置の液晶のプレチルト角を測定したところ、0.5度を示した。
(IPS液晶セル002の作製)
IPS液晶セル002を、特開2005−351924の実施例11に基づき作製した。クリスタルローテーション法を用いてこの液晶表示装置の液晶のプレチルト角を測定したところ、0.1度以下を示した。
(IPS液晶セル003の作製)
IPS液晶セル003を、特開2005−351924の実施例1の配向制御膜以外はそれに基づき作製し、段落[0133]に記載の化合物23と化合物24を用いて光反応性の配向制御膜とする代わりに、化合物24のみを用いて光反応性がないポリイミド膜とした。また、段落[0135]に記載のUV照射による液晶配向能の付与の代わりに、ラビング処理することで液晶配向能を付与した。それ以外については本実施例1と同様の操作により、液晶セル001を作製した。クリスタルローテーション法を用いてこの液晶表示装置の液晶のプレチルト角を測定したところ、2.0度を示した。
(位相差フィルム001の作製)
(セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
コア層セルロースアシレートドープ001の組成:
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アセチル置換度2.85のセルロースアセテート 100質量部
エステルオリゴマー(下記可塑剤1) 15質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(可塑剤1)
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアセテート溶液を調製した。
マット剤溶液の組成:
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(セルロースアシレートフィルムの作製)
前記コア層セルロースアシレートドープ001とその両側に上記外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、残留溶剤が3〜15質量%の状態で、横方向に1.1倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、厚み40μmのセルロースアシレートフィルムを作製し、位相差フィルム001とした。
(位相差フィルム002の作製)
(セルロースアシレートドープ002の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
セルロースアシレートドープ002の組成:
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
エステルオリゴマー(下記可塑剤2) 10質量部
添加剤(下記化合物A) 4質量部
光学調整剤(下記化合物B) 1.6質量部
紫外線吸収剤(下記UV剤A) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 438質量部
メタノール(第2溶剤) 65質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(可塑剤2)
(化合物B)
(セルロースアシレートフィルムの作製)
前記コア層セルロースアシレートドープ002とその両側に前記位相差フィルムと同様に準備した外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、残留溶剤が3〜15質量%の状態で、横方向に1.1倍延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、厚み40μmのセルロースアシレートフィルムを作製し、位相差フィルム002とした。
(位相差フィルム003の作製)
上記位相差フィルム002の作製において、セルロースアシレートドープ002の組成物中、光学調整剤(化合物B)を4.0質量部とする以外は、位相差フィルム002と同様にして、セルロースアシレートフィルムを作製し、位相差フィルム003とした。
(位相差フィルム004の作製)
上記位相差フィルム002の作製において、セルロースアシレートドープ002の組成物中、光学調整剤(化合物B)を6.0質量部とする以外は、位相差フィルム002と同様にして、セルロースアシレートフィルムを作製し、位相差フィルム004とした。
(位相差フィルム005の作製)
上記位相差フィルム002の作製において、セルロースアシレートドープ002の組成物中、アセチル置換度2.88のセルロースアセテートの代わりに、アセチル置換度0.1、プロピオニル置換度2.5のセルロースアセテートとし、光学調整剤(化合物B)を0.6質量部とする以外は、位相差フィルム002と同様にして、セルロースアシレートフィルムを作製し、位相差フィルム005とした。
(位相差フィルム006の作製)
上記一般式中、R1は水素原子、R2およびR3はメチル基であるラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂{共重合モノマー質量比=メタクリル酸メチル/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル=8/2、ラクトン環化率約100%、ラクトン環構造の含有割合19.4%、重量平均分子量133000、メルトフローレート6.5g/10分(240℃、10kgf)、Tg131℃}90質量部と、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂{トーヨーAS AS20、東洋スチレン社製}10質量部との混合物(Tg127℃)のペレットを二軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、厚さ60μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この樹脂シートを、160℃の温度条件下、縦1.20倍、横1.25倍に延伸して厚さ40μmの位相差フィルム006を得た。
(位相差フィルム007の作製)
上記位相差フィルム006の作製において、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂90質量部を75質量部に、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂10質量部を25質量部に変える以外は、位相差フィルム007と同様にして、位相差フィルム007を得た。
(位相差フィルム008の作製)
上記位相差フィルム006の作製において、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂90質量部を75質量部に、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂10質量部を25質量部に変え、この混合物の混合物のペレットを二軸押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、厚さ195μmのラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂シートを得た。この樹脂シートを、160℃の温度条件下、縦1.50倍、横1.67倍に延伸して厚さ78μmの位相差フィルム008を得た。
(位相差フィルム009の作製)
100℃で5時間乾燥したノルボルネン系樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR1060」)のペレットを用いて、押し出し成形により、膜厚40μmの位相差フィルム009を得た。
(位相差フィルム010の作製)
下記組成物の調製を下表の組成で混合した後、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて5時間攪拌後、孔径5μmのポリプロピレン製デプスフィルターでろ過し、シクロオレフィンポリマー形成用組成物を得た。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ゼオノア1020R:環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン(株)製)
100質量部
シクロヘキサン 510質量部
シクロヘキサノン 57質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
仮支持体として用いる厚み100μmのPETフィルム上に、前記シクロオレフィンポリマー層形成用組成物をグラビアコーターを用いて塗布した後、25℃で1分間乾燥し、続いて80℃で約5分間乾燥して膜厚40μmの位相差フィルム010を得た。
(偏光板001〜010の作製)
1)フィルムの鹸化
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタック ZRD40、富士フイルム(株)製)を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
2)偏光子の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて膜厚20μmの偏光子を作製した。
3)貼り合わせ
この偏光子の片面に、コロナ処理を施した位相差フィルム001を、アクリル接着剤を用い、UV照射により貼合した。もう片側に、上記鹸化した市販のセルローストリアセテートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、位相差フィルム001を用いた偏光板001を作製した。ここで、偏光子の透過軸とフィルムの搬送方向とが直交するように配置した。得られた偏光板001を2組作製して以後の液晶表示装置における実装評価に用いた。
上記位相差フィルム001を用いた偏光板001の作製と同様の操作により、位相差フィルム002〜010を用いた偏光板002〜010を作製した。
(位相差フィルム011〜013の作製)
<透明層1>
(樹脂溶液の調製)
20質量部の樹脂1(市販のポリスチレン、PSジャパン製、SGP−10、Tg100℃)を吸湿率が0.2質量%以下の酢酸エチル溶媒と共にミキシングタンクで攪拌して溶解させ、固形分濃度9質量%の樹脂溶液を得た。
続いて、得られた溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(FH025、ポール社製)にて濾過して樹脂溶液1を得た。
(透明層の作製)
片面はマット処理、もう片面は表面処理されていないポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚38μm、以後基材1と呼ぶ)を作製し、基材1の表面処理されていない面に、上記樹脂溶液1を、乾燥後の膜厚が3μmとなるようにダイコーターを用いて連続塗布し、100℃で乾燥してポリエチレンテレフタレート上に透明層1を形成させた。
<透明層2>
上記透明層1の形成において、樹脂1を樹脂2(市販の環状オレフィン系樹脂、JSR製アートンRX4500を110℃で加熱し、常温に戻してから用いた)に変更し、酢酸エチル溶媒をトルエン溶媒に変更し、透明層の作製において、厚さを15μmの透明層となるようにした以外は透明層1と同様に実施し、透明層2を形成させた。
<透明層3>
上記透明層2の形成において、厚さを30μmの透明層となるようにした以外は透明層2と同様に実施し、透明層3を形成させた。
(透明層の評価)
上記で作製した透明層1〜3を、前述の方法で評価し、結果を下表に示した。
積層体の作製と評価
(積層体の作製)
1)透明層1〜3の表面処理
透明層1〜3について、ポリエチレンテレフタレート基材とは反対側の面にコロナ処理を行い、表面処理した透明層1〜3を作製した。
また、セルロースアセテートフィルム(富士フイルム製、フジタックTG40)を37℃に調温した1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したセルロースアセテートフィルムを作製した。
2)偏光板011〜013の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み12μmの偏光層を作製した。
3)貼り合わせ
表面処理した透明層1〜3を偏光層の一方の面に有し、上記鹸化処理したセルロースアセテートフィルムを偏光層の他方の面に有する積層体を作製した。より詳細には、透明層1〜3と、上記鹸化処理したセルロースアセテートフィルムと(以下、これらを「保護フィルム」とも呼ぶ。)で前述の偏光層を挟んだ後、下記接着剤1を用いて、偏光層の吸収軸と保護フィルムの長手方向とが平行になるようにロールツーロールで積層した。
ここで、偏光層に保護フィルムを貼り合せる際には、表面処理した透明層1〜3については、コロナ処理面が偏光層側となるようにした。
・接着剤1:
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として用いた。
続けて、70℃で乾燥した後、透明層1〜3の基材であるポリエチレンテレフタレートを、セパレータの剥離装置と同様の装置を用いて連続剥離した。
以上のようにして作製した、透明層1〜3が偏光子上に転写されたフィルムを、位相差フィルム011〜013として用い、偏光板011〜013を得た。
(IPS液晶表示装置の作製および実装評価)
以上のようにして得た、IPS液晶セル001〜003および、位相差フィルム001〜013を用いた偏光板001〜013を用いて、下表のようにIPS液晶表示装置を作製し、実装評価した。ここで、上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子、の順となるように積層した。
IPS液晶表示装置は、長方形の画面の長辺を視認者から見て水平方向に配置し、液晶セル内部の液晶性化合物のダイレクターの方向は画面の短辺、即ち、視認者から見て上下方向となるように配置した。
また、上側位相差フィルム、下側位相差フィルムは同一のものを使用したのでRe、Rthの位相差値の差はなかった。
25℃、相対湿度60%の環境にて、IPS液晶表示装置を黒表示状態で点灯させ続け、2時間後に、装置正面から水平方向を0度として、方位角方向45、135度、−45度、−135度(いずれも極角方向60度)における黒表示時の輝度光漏れ(cd;単位カンデラ)および、方位角方向45度、極角方向60度におけるカラーシフト量(Δu’v’)を測定し、以下のランクで評価した。
(光漏れ)
A :上方位(方位角45度、135度)と下方位(-45度、-135度)との差がない。
B :方位(方位角45度、135度)と下方位(-45度、-135度)との差が大きい。
(カラーシフト)
A :Δu’v’が0.20未満
B :Δu’v’が0.20以上

Claims (5)

  1. 上側偏光子、上側位相差フィルム、IPS方式の液晶セル、下側位相差フィルム、下側偏光子とを、この順に有し、
    前記IPS方式の液晶セルが、電圧無印加時に、液晶セル内部の液晶性化合物のプレチルト角が1.0°以下である液晶セルであり、
    前記上側位相差フィルムおよび前記下側位相差フィルムが下記式(1)、(2)をそれぞれ満たし、
    0≦Re(590)≦10 (1)
    −10≦Rth(590)≦40 (2)
    前記上側位相差フィルムのRe(590)と前記下側位相差フィルムのRe(590)の差が10nm以下であり、前記上側位相差フィルムのRth(590)と前記下側位相差フィルムのRth(590)の差が10nm以下である液晶表示装置。
    [式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
  2. 前記上側位相差フィルムと前記下側位相差フィルムのいずれかがセルロースアシレートを含む請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記上側位相差フィルムと前記下側位相差フィルムのいずれかがアクリル系高分子を含む請求項1または2に記載の液晶表示装置。
  4. 前記上側位相差フィルムと前記下側位相差フィルムのいずれかがニル芳香族系樹脂を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記上側位相差フィルムと前記下側位相差フィルムのいずれかがノルボルネン系高分子を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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