JP2018119158A - 光硬化型インクジェット記録用インク組成物、インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明者らはそのような別種の化合物について検討した。まず、特許文献1及び特許文献2に開示されたインク組成物や反応性希釈剤組成物は、ビニルエーテル基のみを有する化合物と、(メタ)アクリレート基のみを有する化合物と、をそれぞれ含有することを特徴とするが、これらの組成物は硬化性に劣ることを知見した。
[1]
重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、前記重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、フェノキシエチル(メタ)アクリレートと、色材とを含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、該インク組成物の総質量に対し、9〜60質量%である、[1]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7〜15質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して10〜15質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、該インク組成物の総質量に対し、10〜60質量%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線が、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射されることにより硬化する、[1]〜[7]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
[1]〜[8]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」とも言う。)は、重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。そして、当該重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、フェノキシエチル(メタ)アクリレートと、色材とを含む。
以下、本実施形態のインク組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により紫外線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。
本実施形態において必須の重合性化合物であるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、上記一般式(I)で示される。
さらに言えば、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル酸エステル基(ラジカル重合性基の一種)を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル酸エステル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、インクの硬化性を一層良好にする上で好ましい。
本実施形態のインク組成物は、重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む。上記インク組成物が、重合性化合物として、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類に加えてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むことにより、インクを低粘度化することができ、かつ、硬化性、耐擦性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性のいずれも優れたものとすることができる。
本実施形態のインク組成物は、重合性化合物として単官能(メタ)アクリレート(但し、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを除く。)をさらに含んでもよい。当該単官能(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、及びp−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレートが挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、重合性化合物として多官能(メタ)アクリレートをさらに含有してもよい。当該多官能(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレート(但し、上記所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を除く。)としては、以下に限定されないが、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、硬化性が早く、かつインクの低粘度化が容易であるため、ジプロピレングリコールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートのうち少なくともいずれかが好ましい。
なお、多官能(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であると、インクの高粘度化を防止し、かつ、記録物の良好な柔軟性を確保することもできる。
また、上記のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、単官能(メタ)アクリレート、及び多官能(メタ)アクリレート以外に、従来公知の、単官能及び多官能の種々のモノマー及びオリゴマーもさらに使用可能である(以下、「その他の重合性化合物」という。)。上記モノマーとしては、例えば、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、上記のモノマーから形成されるオリゴマーが挙げられる。
本実施形態のインク組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含む。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。耐光性に優れる点で顔料が好ましい。
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 32000,36000等〔以上、商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤をさらに含んでもよい。インク組成物が重合禁止剤を含有することにより、硬化前における上記重合性化合物の重合反応を防止できる。
本実施形態のインク組成物は、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。スリップ剤の市販品としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
スリップ剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、スリップ剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
上記インク組成物の25℃での粘度は、インクの吐出安定性を良好なものとし、かつ、インクの硬化性を一層優れたものとするため、35mPa・s未満が好ましく、25mPa・s以下がより好ましい。
本実施形態のインク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。後述する実施形態のインクジェット記録方法は、水性インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水性インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、上記のインク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。上記実施形態の光硬化型インクジェット記録用インク組成物は、本実施形態のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、画像、即ちインクの塗膜(硬化膜)が形成される。また、本発明の他の一実施形態は、本発明の一実施形態であるインクジェット記録方法に用いる本発明の前述の実施形態である光硬化型インクジェット記録用インク組成物である。ここで、本発明の一実施形態であるインクジェット記録方法に用いる本発明の実施形態である光硬化型インクジェット記録用インク組成物とは、本発明の一実施形態であるインクジェット記録方法によって記録を行う記録装置用として販売される本発明の実施形態である光硬化型インクジェット記録用インク組成物を意味する。
吐出工程において、被記録媒体上にインク組成物が吐出され、インク組成物が被記録媒体に付着する。吐出時におけるインク組成物の粘度は、3〜20mPa・sが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいは、インク組成物を加熱しない状態として上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出され付着したインク組成物が、光(紫外線)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
また、LEDの照射強度としては、800mW/cm2以上のピーク強度のUV−LEDを用いて硬化を行うことが好ましく、800〜2000mW/cm2のピーク強度であることがより好ましい。この場合、インク組成物の硬化性をさらによくすることができ、記録物の外観もよくすることができる。
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下の通りである。
・IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)、BASF社製商品名、以下では「BLUE GLVO」と略記した。)
・Solsperse 32000(LUBRIZOL社製商品名、以下では「SOL32000」と略記した。)
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。)
なお、表中では、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を「アクリル・ビニル含有モノマー」と記載している。
・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、以下では「PEA」と略記した。)
・IBXA(イソボルニルアクリレート、大阪有機化学社製商品名、以下では「IBXA」と略記した。)
・NKエステル APG−100(ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、以下では「DPGDA」と略記した。)
・NKエステル APG−200(トリプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業社製商品名、以下では「TPGDA」と略記した。)
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。)
・Speedcure TPO(Lambson社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。)
・Speedcure DETX(Lambson社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX」と略記した。)
・p−メトキシフェノール(東京化成工業社製商品名、p−メトキシフェノール、以下では「MEHQ」と略記した。)
・BYK−UV3500(BYK社製商品名、以下では「UV3500」と略記した。)
〔顔料分散液の調製〕
インク組成物の調製に先立ち、顔料分散液を調製した。顔料、分散剤、並びに下記表1及び表2中「分散液由来モノマー」欄に記載した重合性化合物を、下記表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように混合し、1時間スターラーで撹拌した。撹拌後の混合液をビーズミルで分散し、顔料分散液を得た。なお、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間を2〜4時間とした。
下記表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように添加、混合し(表1及び表2中、顔料と分散剤と「分散液由来モノマー」欄に記載の重合性化合物とは上記顔料分散液として添加した。)、これを高速水冷式撹拌機により撹拌することにより、シアン色の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を調製した。
各実施例及び各比較例で調製した光硬化型インクジェット記録用インク組成物について、以下の方法により粘度、光重合開始剤の溶解性、硬化性、密着性、及び耐擦性を評価した。
各実施例及び各比較例のインク組成物の粘度を、DVM−E型回転粘度計(東京計器社(TOKYO KEIKI INC)製)を用いて、温度25℃、回転数10rpmの条件下で測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:25mPa・s以下、
B:25mPa・sを超えて35mPa・s未満、
C:35mPa・s以上。
顔料及び顔料分散剤以外の成分を用いて、上記の各実施例及び各比較例と同様に顔料抜きのインク組成物を調合し、十分に撹拌して各インク組成物を調製した。その後、光重合開始剤の溶け残りがあるか否かを目視で観察した。そして、光重合開始剤の溶け残りが無いインク組成物は、0℃の恒温槽に入れ、24時間後に取り出して室温に戻した後、光重合開始剤が析出しているか否かを再度目視で観察した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。なお、表3及び表4における本評価名は「開始剤溶解性」と略記した。
A:室温撹拌後及び0℃保管後共に、光重合開始剤の溶け残りや析出は見られなかった。
B:室温撹拌後は光重合開始剤の溶け残りが無かったが、0℃保管後は光重合開始剤の析出が見られた。
C:室温撹拌後に光重合開始剤の溶け残りが見られた。
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、各実施例及び各比較例のインク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPVCシート(Flontlite Grossy 120g〔商品名〕、Cooley社製)上に、インクの吐出量を調整しつつ、印刷物(記録物)の膜厚が10μmとなるようにベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷した。このとき、各インク組成物の吐出性は良好であった。併せて、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1W/cm2であり、且つピーク波長が395nmである紫外線を、1パス当たり100mJ/cm2の照射条件下、タックフリーとなるまでパス数を追加して、ベタパターン画像を硬化させた。以上のようにして、PVCシート上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。
なお、「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。また、「パス数」は、ヘッドが記録物に対して移動し、ヘッドに搭載した紫外線照射装置から塗膜に向けて紫外線照射した回数を意味する。また、照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。
ここで、塗膜に関する硬化性は、タックフリー時の照射エネルギーを指標として評価した。ここで、タックフリーといえるか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付くか否かで判断し、綿棒にインクが付着せず、かつ被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付かない場合をタックフリーとした。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:200mJ/cm2以下、
B:200mJ/cm2超300mJ/cm2以下、
C:300mJ/cm2超。
上記「3.硬化性」の試験で、タックフリーになるまで紫外線照射を行い硬化させた記録物を用いた。JIS K−5600−5−6(ISO2409)(塗料一般試験法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、記録物の塗膜面にクロスカットを行い、セロハンテープによる剥離試験の結果から、下記のランクA〜Eに基づき密着性を評価した。ここで、上記クロスカット法について説明する。
切込み工具として単一刃切り込み工具(一般に市販されているカッター)と、単一刃切り込み工具を用いて等間隔に切り込むためのガイドと、を用意した。
まず、塗膜に対して垂直になるように切込み工具の刃を当てて、記録物に6本の切り込みを入れた。この6本の切込みを入れた後、90°方向を変え、既に入れた切り込みと直行するよう、さらに6本の切り込みを入れた。
次に、約75mmの長さになるよう透明付着テープ(幅25±1mm)を取り出し、塗膜に形成された格子状にカットした部分にテープを貼り、塗膜が透けて見えるように十分指でテープを擦った。次に、付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5〜1.0秒で確実に引き離した。
評価基準は下記のとおりである。なお、各ランクの値は、ハガレ率を計算して得られた値の小数点第1位を四捨五入したものである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:ハガレ率 0〜5%、
B:ハガレ率 6〜15%、
C:ハガレ率 16〜35%、
D:ハガレ率 36〜65%、
E:ハガレ率 66〜100%。
JIS K5701(ISO 11628)(平版印刷に用いられるインク、展色試料、及び印刷物を試験する方法について規定。)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業社(TESTER SANGYO CO., LTD.)製)を用いて、耐擦性の評価を行った。評価方法は、上記「3.硬化性」の試験で得られた記録物の表面に金巾を乗せ、荷重500gをかけて擦り、擦った後の、上記記録物の硬化面の剥離を目視にて比較した。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。
A:金巾に汚れなし、記録面の剥離・傷なし。
B:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷なし。
C:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が線状に少し見られた。
D:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が面上に大きく見られた。
Claims (9)
- 重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
前記重合性化合物は、下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類と、
フェノキシエチル(メタ)アクリレートと、色材とを含む、光硬化型インクジェット記録用インク組成物。 - 前記フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、該インク組成物の総質量に対し、9〜60質量%である、請求項1に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して7〜15質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対して10〜15質量%のアシルフォスフィンオキサイド化合物を含む、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、該インク組成物の総質量に対し、10〜60質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線が、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射されることにより硬化する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録媒体上に吐出する吐出工程と、
前記吐出工程により吐出された光硬化型インクジェット記録用インク組成物に紫外線を照射して、前記光硬化型インクジェット記録用インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む、インクジェット記録方法。
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