JP2018100823A - 発破工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 振動や騒音を抑制しつつ作業量を減らし、施工期間を短縮することが可能な発破工法を提供する。【解決手段】 この発破工法は、設定された点火タイミングで点火する点火装置を使用して発破を行う工法で、発破対象を発破する工程と、発破対象から離間した所定の地点で、発破により発生した振動を測定する工程と、測定結果から所定の地点に伝播した振動が有する伝播特性を抽出する工程と、抽出した伝播特性に基づき、設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する工程と、変更すると判定した場合に、所定の地点における振動を低減するように点火タイミングの設定を変更する工程とを含む。【選択図】 図3

Description

本発明は、設定された点火タイミングで点火する点火装置を使用して発破を行う発破工法に関する。
電子遅延式電気雷管は、爆薬に点火するタイミングをミリ秒単位で設定することができる点火装置である。このため、電子遅延式電気雷管は、スムースブラスティング(破壊したい部分のみ破壊する工法)のような斉発性の効果を求める用途や、爆破を多段に分割して振動や騒音のピークを抑制する用途等の、爆薬点火の要求精度がシビアな用途に採用されている。ここで、斉発性とは、2孔以上の起爆を同時に行うことをいう。
電子遅延式電気雷管は、どのタイミングで点火するかという最適なタイミングや秒時間隔(タイムテーブル)を設計することができれば、そのタイムテーブルで忠実に再現することができるため、振動や騒音に対して優れた抑制効果を発揮することが知られている。そこで、最適なタイムテーブルを設計する手法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
最適なタイムテーブルを設計する場合に必要となる、人家や公共施設等の保全対象毎に定まる振動や騒音の伝播特性は、トンネルの掘進に伴って爆破地点が移動し、保全対象との位置関係が変化することから、伝播経路とその経路上の地質が相違し、1つに定まらない。伝播特性とは、保全対象に伝播した振動や騒音のもつ卓越周波数を特定したものをいう。卓越周波数は、最も振幅が大きい周波数(ピーク周波数)である。また、従来の電子遅延式雷管は、点火タイミングを製造工場でしか設定することができなかったため、現場での求めに応じて設定変更をすることは工程上困難であった。
ところが、近年になって、現場で点火のタイミングを設定することができる電子遅延式電気雷管が登場した(例えば、非特許文献1参照)。
これを受けて、適切な時期に既存のタイムテーブルを見直せるよう、トンネルを掘進するのに合わせて、保全対象毎に伝播特性を再測定し、タイムテーブルにフィードバックする技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
再公表98/21544号公報 特開平1−285800号公報 特開2015-137788号公報
"高精度電子雷管「eDev(イーデブ)」シリーズ"、[online]、2014年12月25日、国土交通省、[平成28年9月5日検索]、インターネット<URL:http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail6.asp?REG_NO=KT-140090&TabType=2&nt=nt>
しかしながら、上記特許文献3に記載の技術では、必要の有無に関係なくタイムテーブルを見直すため、作業量が増加し、施工期間も長くなる。これは、高コストの要因となり、現場の管理手法としては満足できるものではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、設定された点火タイミングで点火する点火装置を使用して発破を行う工法であって、発破対象を発破する工程と、発破対象から離間した所定の地点で、発破により発生した振動を測定する工程と、測定結果から所定の地点に伝播した振動が有する伝播特性を抽出する工程と、抽出した伝播特性に基づき、設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する工程と、変更すると判定した場合に、所定の地点における振動を低減するように点火タイミングの設定を変更する工程とを含む、発破工法が提供される。
本発明によれば、振動や騒音を抑制しつつ作業量を減らし、施工期間を短縮することが可能な発破工法を提供することができる。
トンネルの掘削と保全対象について説明する図。 秒時間隔を変えることで振動を抑制できることを説明する図。 発破工法の作業の流れを例示したフローチャート。 発破パターンについて説明する図。 装薬孔内に設置する爆薬および雷管の位置を例示した図。 保全対象で測定される振動結果を例示した図。 図6における5段目の振動の波形(時刻歴特性)と周波数特性とを示した図。 図6における7段目の振動の波形(時刻歴特性)と周波数特性とを示した図。 図8に示す波形を代表波形とし、設計されたタイムテーブルで起振した場合に予測される振動の振動レベルを示した図。 秒時間隔をパラメータとして予測を行い、秒時間隔と最大速度および最大振動レベルとの関係を例示した図。 図8に示す波形を代表波形とし、設計されたタイムテーブルで起振した場合に予測される振動の波形(時刻歴特性)と周波数特性とを示した図。 情報処理装置のハードウェア構成を例示した図。 逆位相となる秒時間隔で振動波形を重ね合わせ、振幅を小さくすることができることを示す概念図。
本発明の発破工法について説明する前に、発破によるトンネルの掘削および保全対象について、図1を参照して説明する。発破は、爆薬の爆発力を利用して岩盤等を破砕する作業で、地盤を振動させ、地質調査を行う場合にも利用される。地山10等における発破によるトンネル12の掘削は、発破対象である切羽11に対し、ドリルジャンボ等の削岩機を使用して、爆薬を装薬するための孔(装薬孔)を形成し、装薬孔内に爆薬を装薬し、点火装置としての雷管により点火(起爆)することにより実施される。
装薬孔を形成する位置や数、装薬する爆薬の量、起爆する順序や時間間隔等は、地質、トンネル12の断面の形状や大きさ、周囲への破片の飛散、振動や騒音等を考慮し、適切な発破パターンや、最適な点火タイミングを設定するために必要とされる点火タイムテーブル(単にタイムテーブルともいう)等として設計される。タイムテーブルは、各装薬孔または各装薬孔群をどの順に、どのような時間間隔で点火するかを示す情報である。
雷管は、少量の熱や衝撃で発火する爆薬を管内に収納した火工品で、点火薬と起爆薬と添装薬とを含む。雷管としては、点火薬に電極が埋め込まれ、電極に電流を流すと点火薬に着火し、点火薬から起爆薬に点火後、装薬孔内に装薬した爆薬へ伝爆させるために添装薬を爆発させる電気雷管を用いることができる。その電気雷管の中でも、コンデンサや電子タイマをさらに含み、ミリ秒単位で点火タイミングを設定することができる電子遅延式電気雷管を用いることができる。
電子遅延式電気雷管は、点火タイミングを設定することができることから、爆破を意図的に複数に分割して行い、振動や騒音のピークを抑制する用途で利用され、個々の装薬孔から発生する振動や騒音がある短い瞬間で重ならないように分散させて最大振幅を抑制する目的や、分散の際に波の位相差で互いに振幅を打ち消し合うタイミングを得る目的等での利用が考えられている。
例えば、単発発破を1回行い、その後、3ミリ秒(ms)の時間間隔(秒時間隔)ずらして単発発破を行い、その振動を測定した結果を重ね合わせると、図2(a)に示すような波形となる。単発発破は、1発ずつ発破する方法である。ここでは、振動を経過時間に対する速度として計測している。1回目の発破の波形と2回目の発破の波形は、位相のみが違うだけで同じような波形となっている。3msという短い秒時間隔では、1段目の波形と2段目の波形を合成した波形は、その振幅が大きくなっている。
単発発破を1回行い、その後、12msという長い秒時間隔ずらして単発発破を行い、その振動を測定した結果を重ね合わせると、図2(b)に示すような波形となる。この場合も、1回目と2回目の波形は、位相のみが違うだけで同じような波形となっている。しかしながら、1回目と2回目の波形を合成した波形は、各段の波形の振幅より小さくなっている。
このように単発発破の波形性状に関する再現性が高ければ、振動波形の重ね方、すなわち秒時間隔によって最大速度である振幅が大きく変わることが分かる。このことから、タイムテーブルの設計において、この振幅を小さくする等の最適な秒時間隔が設定される。
しかしながら、タイムテーブルの設計する前提の、所定の地点、すなわち保全対象に伝播する振動や音(騒音)の伝播特性は、トンネルの掘進に伴い、日々爆破地点が移動し、保全対象への伝播経路とその経路上の地質の相違が原因となって1つに定まらない。これは、爆破地点と保全対象までの距離が変化し、その間の地質も一定ではないからである。ここで、伝播特性は、保全対象に伝播した振動や騒音が有する最も大きい周波数(卓越周波数)を特定したもので、保全対象は、振動や騒音の影響により被害を受ける恐れのある人家、公共施設、農地等である。図1では、保全対象として住宅13、14が示されている。
電子遅延式電気雷管は、その製造工場で点火タイミングの設定を行っていることから、ある掘削時点の伝播特性に基づいて最適なタイムテーブルを設計したとしても、それを反映することができず、現実と乖離するに至っても、その製造工場で設定した点火タイミングの雷管を使用せざるを得ないことが多い。これでは、電子遅延式電気雷管を使用しても、望む振動や騒音の抑制効果を得ることはできない。
このことに鑑み、近年、現場で点火タイミングを設定可能なタイプの電子遅延式電気雷管が登場している。このタイプの電子遅延式電気雷管を使用することで、現場において最適なタイムテーブルを設計し、それを反映した点火タイミングを設定することができ、発破掘削において所望の振動や騒音の抑制効果を得ることができる。本発明の工法は、このタイプの電子遅延式電気雷管の使用を前提とした発破工法である。以下、このタイプの電子遅延式電気雷管を、単に雷管と記述する。騒音等の音は、空気や固体物の振動により発生し、地盤に伝播する振動と同様に考えることができるため、ここでは、地盤に伝播する振動のみを取り上げて説明する。
図3を参照して、本発明の発破工法の概要について説明する。この発破工法は、ステップ300から開始し、ステップ305では、保全対象毎の伝播特性(卓越周波数)を得るために、試験発破等の切羽11の一部を発破し、または切羽の一部に打撃を与えることにより切羽11を加振する。発破は、まず、作業員が、設計した発破パターンに従って、装薬孔の位置を決め、削岩機により削孔して装薬孔を形成する。そして、形成した装薬孔のいくつかに爆薬を装薬し、雷管を設置し、雷管と発破器とを点火コードにより接続する。その後、作業員が発破器の点火スイッチを押下し、装薬孔内に装薬された爆薬を爆発させることにより行われる。
切羽11への打撃は、例えばトンネル掘削において、トンネルの形を整えるために使用されるブレーカと呼ばれる機械により与えることができる。ここに、保全対象毎の卓越周波数を得るために切羽11を加振する方法の一例を挙げたが、保全対象毎の卓越周波数を得ることができれば、これらの方法に限定されるものではない。
ステップ310では、所定の地点である、住宅13、14等の保全対象において、地盤を伝播する振動を測定する。測定された振動の結果は、後述する情報処理装置に入力される。ステップ315では、情報処理装置により、測定した振動に基づき、卓越周波数等の伝播特性を抽出する。そして、ステップ320で、抽出された伝搬特性に基づき、タイムテーブルを設計し、各雷管の秒時間隔を設定する。
ステップ325では、装薬孔を形成し、装薬孔に雷管を取り付けた爆薬を装薬し、設定された秒時間隔で起爆して本発破を行い、トンネル12を掘削する。設定された最適なタイミングで起爆するので、保全対象において期待した通りの振動の抑制効果を得ることができる。発破後、発破により発生した砕石等のズリをトンネル坑外に搬出する。
ズリの搬出は、ズリ出しと呼ばれ、シャフローダやダンプトラック等を使用して行われる。シャフローダは、前方のバケットでズリを掻き込み、ベルトコンベアで積み込んだズリを後方へ移動し、ダンプトラック上に落下させることにより、ダンプトラックにズリを積み込む機械である。
ステップ330では、保全対象において、本発破により発生する振動を測定する。そして、ステップ335で、情報処理装置により本発破の測定結果に基づき、卓越周波数等の伝播特性を抽出し、伝播特性を把握する。ステップ340では、この発破方法を継続するか否かを判断する。例えば、地質の大きな変化等がなく、タイムテーブルの見直しで対応可能かどうかにより、この発破方法を継続するか否かを判断することができる。継続しない場合は、ステップ360へ進み、この発破方法での発破掘削を終了する。一方、この発破方法を継続する場合は、ステップ345へ進む。
ステップ345では、ステップ335で抽出した伝播特性に基づき、設計したタイムテーブルの見直しが必要かどうかを判定する。必要な場合、ステップ350へ進み、測定した伝播特性に基づき、タイムテーブルを見直す。ステップ355では、見直したタイムテーブルに基づき、各雷管の秒時間隔を再設定し、ステップ325へ戻る。一方、必要がない場合、既に設定された秒時間隔で良いので、直接ステップ325へ戻る。
ステップ325での本発破を繰り返すことで、トンネル12を掘削することができる。なお、本発破を行うごとに、上記のブレーカを使用してトンネル坑内に飛び出した部分や浮石を落とし、トンネルの形を整えることができる。また、掘削したトンネル周辺の地山等が崩れないように、トンネルの形に合わせた鋼製の枠(支保工)を建て込み、セメントを吹き付け、鉄筋の棒(ロックボルト)を打ち込む等して、覆工を行うことができる。さらに、地山等からの水がトンネル内に入らないようにシートを貼り、セントルと呼ばれる機械を使用してトンネルの表面にコンクリートを打設し、トンネルの仕上げを行うことができる。
本発明では、タイムテーブルの見直しが必要かどうかを判定し、必要な場合にのみタイムテーブルを見直すので、振動を低減しつつ作業量を減らし、施工期間を短縮することが可能となる。
本発明の発破工法の全体の概要は以上の通りであるが、以下、個々の詳細な工程について説明する。図4を参照して、図1に示す切羽11において形成される装薬孔の位置について説明する。これらの装薬孔は、図3のステップ325の本発破を行う際に形成される孔である。切羽11には、複数の装薬孔15が形成される。装薬孔15は、上述した削岩機を使用して形成することができる。複数の装薬孔15は、段発発破を行うための複数の装薬孔群A1〜A15を成している。段発発破は、数発ずつ順次発破する方法である。
切羽11中央の装薬孔群A1は、芯抜きのためのものである。芯抜きとは、最初に爆破させ、壊れやすい自由面を形成する作業である。自由面は、発破により発生した砕石等が押し出される面である。芯抜きを行った後、その外周側へ空間を広げるように、装薬孔群A2、A3、…の順に発破していく。図4に示した発破パターンは一例であり、各装薬孔の数や配列パターンは適宜変更することができる。また、段発発破を行う際の段数および配列は、これまでに知られたいかなる方法を用いて決定してもよい。
図5を参照して、装薬孔における爆薬および雷管の配置について説明する。各装薬孔15には、複数の爆薬(いわゆる親ダイおよび増ダイ)20と、装薬孔15の奥側の爆薬(親ダイ)20に設けられた雷管21と、爆薬20の開口側に設けられた、各装薬孔15を閉塞させるための粘土等の込め物22とが設けられる。雷管21からの導線23は、込め物22を通して点火スイッチを備える発破器24に接続される。
雷管21は、1ms単位での秒時間隔の設定が可能な雷管で、現場において秒時間隔を任意に設定し、変更することができる。雷管21の秒時間隔の設定には、後述する情報処理装置を含むチェッカー25と呼ばれる機器等が使用される。チェッカー25は、秒時間隔の確認や設定のほか、雷管21が正しく機能するかどうかの確認を行うことができる。また、導線23を接続後の電気抵抗等を測定し、結線本数を確認するために、結線カウンタ26や抵抗測定機器等を使用することができる。
次に、図3のステップ305〜ステップ315の切羽11の加振から保全対象毎の伝播特性を抽出する方法について説明する。保全対象毎の伝播特性は、発破地点で加振して振動を発生させ、保全対象において振動を測定し、測定した振動の結果から抽出することができる。振動を測定するために、保全対象に伝播する振動による変位速度や変位加速度を測定する振動計を用いることができる。ちなみに、騒音の場合は、音圧を測定する騒音計を用いることができる。
発破地点で振動を発生させる1つの方法としては、上記に簡単に説明した試験発破を行う方法を挙げることができる。具体的には、切羽11での単発発破を行う方法である。発破対象の一部である、例えば芯抜きだけの6〜10孔程度に、各孔からの振動の主要部が重ならないように、例えば300ms以上の秒時間隔を雷管21に設定し、1孔1段で試験的に起爆する。
図6は、芯抜きのための6孔(6段)に、補助芯抜き用の4孔(4段)を加えて全10段とし、秒時間隔を300msとした仮想の保全対象で測定した経過時間と速度(kine)との関係を例示した図である。kineは、1秒間に変位する変位量を表す単位で、1kineは1cm/sである。この速度は、上記の速度計で測定された変位速度であってもよいし、上記の加速度計で測定された加速度を時間で積分することにより算出したものであってもよい。
上記の振動の主要部が重ならないとは、図6に示すように、各段の振動を表す主要部の波形が互いに重なり合わないように間隔をあけることをいう。図6では、秒時間隔を300msとすることで、各段の主要部の波形を区別することができる。なお、各段の波形は、単発発破したときに大きく変位し、次第に小さくなり、その後も小さいながら変位が継続する。このため、特徴を有する大きく変位する部分を主要部とし、主要部の波形を基準に秒時間隔を設定している。なお、4段目と8段目の波形がほとんど現れていないが、これは、爆破により岩盤等がうまく破壊されず、保全対象に振動がうまく伝達されなかったものと推定される。
図6は、三方向(X軸、Y軸、Z軸)の振動をそれぞれ表しており、300ms間隔で単発発破したときの各段の主要部の波形には、振幅が最も大きくなる部分が存在している。三方向は、例えば切羽11の面に平行な方向をX軸とし、掘削方向をY軸とし、鉛直方向をZ軸とすることができる。この例では、5段目および7段目が、他の段と比較して大きくなっている。また、振幅の最大値(ピーク)は、5段目および7段目が、他の段と比較して大きくなっている。ピークが大きいことは、実際に求めたい信号と雑音(ノイズ)の比であるS/N比が高いことを意味し、秒時間隔を設定する時に、良好な結果を得ることができることを意味する。
図7(a)は、5段目の波形の経過時間のスケールを変えて表示した図で、図8(a)は、7段目の波形の経過時間のスケールを変えて表示した図である。この経過時間と速度との関係を表す波形は、時刻歴特性と呼ばれる。この時刻歴特性をフーリエ変換することで、周波数(Hz)と加速度フーリエスペクトル(m/s2)との関係を表す周波数特性を得ることができる。フーリエ変換は、任意の波形を各周波数成分に分解し、その大きさ(振幅)およびその位置(位相)を求める、よく知られた手法であるため、ここでは詳述しない。
図7(b)は、5段目の周波数特性を表した図で、図8(b)は、7段目の周波数特性を表した図である。図7(b)および図8(b)に示す周波数特性は、特定の周波数でピークを有する。これらの周波数特性では、約200Hzの周波数でピークを有している。このピークは、発破に起因する卓越周波数に、伝播経路や地質等に起因するものが含まれると考えられる。また、図7(b)と図8(b)は、ピークの周波数が同じで、類似したグラフになっている。このことから、5段目および7段目のいずれかの段で保全対象の伝播特性(卓越周波数)を評価することができる。
このように、5段目の単発発破で評価できる1つ目の卓越周波数を得ることができ、7段目の単発発破で評価できる2つ目の卓越周波数を得ることができることから、少なくとも6孔程度あれば、保全対象の伝播特性を評価できる1つの卓越周波数を得ることができる。このため、少なくとも6孔程度用意し、単発発破を試験的に行うことで、振動振幅のバラツキを考慮した上で、保全対象毎の伝播特性としての目的の卓越周波数を抽出することができる。この目的の卓越周波数は、保全対象卓越周波数と呼ばれる。
この保全対象卓越周波数を得ることで、最適なタイムテーブルを設計することができる。この最適なタイムテーブルの設計方法については後述する。
発破地点で振動を発生させる別の方法としては、切羽11を打撃して浮石の除去を行うブレーカ作業の振動を活用する方法を挙げることができる。ブレーカは、打撃して浮石を落とす機械で、その打撃数は負荷で変動するが、1300回/min以下である。このため、大型のブレーカで10Hz以下、標準的なブレーカでは20Hz未満に、打撃に起因する卓越周波数が発生する。
ブレーカ作業の際、保全対象において振動を測定することで、図6と同様の、時刻歴特性を得ることができる。そして、この時刻歴特性をフーリエ変換して周波数特性を求める。この周波数特性から打撃に起因する周波数以外の卓越周波数を確認することができれば、その卓越周波数を保全対象卓越周波数とすることができる。このように打撃に起因する周波数を除外するのは、打撃に起因する周波数が伝播経路や地質等に起因した卓越周波数ではないからである。
発破地点で振動を発生させるさらに別の方法としては、切羽11での掘削発破(段発発破)を活用する方法を挙げることができる。この方法では、秒時間隔が異なる3以上の装薬孔群(段発シリーズ)を用意する。同一シリーズ内の秒時間隔は一定とする。例えば、A1〜A3の3つのシリーズがあるとき、A1を構成する各装薬孔を順に起爆する際の秒時間隔を一定の、例えば5msとし、A2については、A1とは異なる、例えば9msとし、A3については、A1、A2とは異なる、例えば15msとする。
シリーズ間は、試験発破と同様、300ms以上の間隔を空け、各シリーズを接続し、切羽全体の段発発破を構成する。このようにシリーズ間を300ms以上の間隔を空けて接続するのは、シリーズ間の相互の影響を回避するためである。
このようにして段発発破を行い、その際に保全対象において振動を測定する。そして、上記と同様にして時刻歴特性を得る。また、時刻歴特性をフーリエ変換して周波数特性を求め、各シリーズからの振動毎に卓越周波数を評価する。各シリーズ内では、秒時間隔に起因する卓越周波数が発生するため、その卓越周波数以外で、シリーズ間で共通する卓越周波数を確認することができれば、その卓越周波数を保全対象卓越周波数とする。
秒時間隔に起因する卓越周波数を除外するのは、上記のブレーカの場合と同様、伝播経路や地質等に起因した卓越周波数ではないからである。また、シリーズ間で共通する卓越周波数とするのは、共通する卓越周波数が伝播経路や地質等に起因した卓越周波数だからである。発破地点で振動を発生させる方法として上記の3つの方法を例示したが、これらの方法は一例であり、保全対象卓越周波数を得ることができれば、その他の方法を採用してもよい。
次に、最適なタイムテーブルの設計方法について説明する。図7(b)および図8(b)では、突出したピークが1つのみであるため、保全対象卓越周波数を1つとみなすことができる。しかしながら、保全対象卓越周波数が1つとみなせる場合のみとは限らない。そこで、最適なタイムテーブルの設計は、保全対象卓越周波数が1つとみなせる場合と、複数の卓越周波数を考慮しなければならない場合を考慮する。この設計は、場合によって設計方法が異なる。まず、保全対象卓越周波数が1つとみなせる場合について説明する。
保全対象の内容(住宅、工場等の違い)により振動の管理目標が異なるため、管理目標に応じて設計を行う必要がある。振動には、変位、速度、加速度という3つの要素が関係することから、管理目標には、最大速度の低減、加速度に関連する最大振動レベルの低減、最大速度と最大振動レベルの両方の低減、最大変位の低減の4つが存在する。
ここで、最適な秒時間隔を設定する基本は、保全対象または伝播経路における卓越周波数に対して、逆位相となる起爆秒時間隔を設定することである。図13を参照して説明すると、単発起爆に伴う振動波形が同じとすれば、図13中の前段波形と後段波形のような、振動波形の1/2波長間隔で同じ波形を重ねることで、図13中の重ね合わせ波形のように、振幅を小さくすることができる。
図13に示す例では、逆位相となる間隔を1/2波長としたが、3/2波長や5/2波長等であってもよい。すなわち、逆位相となる間隔は、n(n=1、3、5、…)/2波長とすることができる。この間隔は、卓越周波数の2/n倍の関係となる秒時間隔で振動波形を重ねることを意味している。
以上のことを踏まえて、管理目標として、上記の4つの低減のそれぞれが目的となる場合の設計方法について詳細に説明する。
第1に、最大速度の低減が目的となる場合について説明する。雷管21に設定する最適な秒時間隔は、振動を充分に低減させることができる秒時間隔であり、具体的には、保全対象または伝播経路における卓越周波数の2/n倍の周波数が卓越するような秒時間隔である。これは、卓越周波数の波形形状に対して、逆位相となるような秒時間隔で波形を重ね合わせることで、重ね合わさる波形の振幅を小さくすることを意味している。
このことを踏まえ、保全対象または伝播経路における卓越周波数よりも低周波数側となる秒時間隔(卓越周波数の2/3倍や2/5倍等)で発破することを基本とする。これにより、逆位相の秒時間隔に頼るだけなく、装薬孔と保全対象までの伝搬距離の相違に伴う位相ずれによって逆位相とならない振動波形の重なりを少なくすることで、最大振幅の増大を抑制するものとし、管理値に応じて斉発量を小さくする。
第2に、最大振動レベルの低減が目的となる場合について説明する。振動レベルは、振動の加速度をdBで表した加速度レベルに感覚補正フィルタによる感覚補正を加えたものである。振動に対する人の感覚は、周波数が小さいほど感じやすく、大きいほど変位量が小さく、感じにくい。このため、感覚補正フィルタは、人が感じやすい周波数を大きく、感じにくい周波数を小さく補正するように構成されている。
図9に、上記の7段目の波形を、秒時間隔20ms、100段のタイムテーブルで起振した場合のX軸、Y軸、Z軸における振動レベル(dB)と経過時間(ms)との関係を表したグラフを示す。最大速度は、図11(a)に示すように、水平方向のX軸、Y軸が卓越するが、振動レベルは、図9に示すように、鉛直方向であるZ軸が卓越している。これは、振動レベルの感覚補正に影響されるためである。
振動レベルが対象の場合、上記の感覚補正によって、また、平衡に達するまでの時間の尺度である時定数によって、波形の大小関係と異なる特性が発生する。このため、上記の2倍の周波数が卓越するような秒時間隔に設定するという基本事項を踏まえた上で、短い秒時間隔にし、卓越周波数を高周波数側にずらす(ドリフトさせる)ことが基本となる。
このことを踏まえ、保全対象卓越周波数の2倍の周波数が卓越するような秒時間隔の掘削発破を基本に、詳細検討によって、振動の実効値と感覚補正フィルタに起因する振動レベルの増減特性を把握して決定する。すなわち、人が振動を感じにくい高周波数側に振動の卓越周波数をずらすことを目的とする。
第3に、最大速度と最大振動レベルの両方の低減が目的となる場合について説明する。各々の低減が目的となる場合については既に説明したので、それぞれの設計方法で相反する部分がない場合は、最大速度と最大振動レベルの両方を最も低減させることができる秒時間隔を設定する。相反する部分がある場合は、両者のバランスをとって秒時間隔を設定する。例えば、保全対象卓越周波数の2倍または2/3倍の周波数が卓越する秒時間隔を設定することができる。
第4に、最大変位の低減が目的となる場合について説明する。振動による変位は、多段化し、斉発量を小さく抑えることにより、小さくすることができる。すなわち、孔数を増やし、1孔当たりの爆薬量を減らせばよい。また、変位は、起爆に起因する振動の卓越周波数を高周波数側にドリフトさせることで、小さくすることができる。すなわち、短い秒時間隔で起爆すれば、その卓越周波数を高周波数側にドリフトさせることができる。
短い秒時間隔とは言っても、短すぎると、起爆効率が通常の発破に比較して大きく変化する場合があることを把握しておく必要がある。例えば、起爆効率が大幅に向上するため、過装薬と同様の状態となり、切羽11からの飛び石が広がることでズリ出しに時間がかかり、また、前の起爆によって充分な自由面が形成されないまま次の起爆となるため、対象物が割れず、孔からエネルギーが吹き出す鉄砲現象等が発生する。これでは、計画通りの破砕を行うことができない。
過装薬の状態を回避し、鉄砲現象等の発生をなくすべく、少なくとも5ms以上の間隔を設ける。このため、上記の短い秒時間隔としては、例えば5〜8ms間隔とすることができる。
次に、複数の卓越周波数を考慮しなければならない場合について説明する。複数の卓越周波数を考慮しなければならない場合としては、保全対象の卓越周波数が複数あり、各軸で卓越周波数が異なる場合等がある。この場合、各軸の周波数特性において、卓越しない周波数に、起爆に起因する卓越周波数を設定することが基本となる。
この場合は、複数の単発発破を行い、得られた単発波形の重ね合わせ解析による予測により、最大速度および最大振動レベルを予測する。その予測から現場条件に適した起爆秒時間隔を設定する。
例えば、複数の単発発破を行い、図6と同様の波形が得られたとする。これらの波形から、卓越周波数が確認できる図8と同様の7段目の波形を代表波形として利用する。単発波形の重ね合わせ解析では、秒時間隔をパラメータとし、7段目の波形を、各秒時間隔、複数段のタイムテーブルで起振した場合の時刻歴特性、それをフーリエ変換して周波数特性を求め、時刻歴特性から最大速度を、周波数特性から最大振動レベルをそれぞれ求める。その結果を、図10に例示する。
図10は、秒時間隔をパラメータとして予測を行い、最大速度と最大振動レベルの変化を見た図である。この図は、7段目の波形から得られる保全対象卓越周波数が正しいとの前提の基で、タイムテーブルに設定する秒時間隔を選択するために用いられる予測図である。ちなみに、同じく卓越周波数が確認できる図7と同様の5段目の波形を利用した場合、解析結果の特性が若干ではあるが、変化する。しかしながら、わずかな違いであるため、卓越周波数が確認できれば、いずれの波形を利用して、このような予測図を作成することができる。
図10を参照すると、秒時間隔が長い場合は、最大速度および最大振動レベルの変化が小さい。すなわち、安定している。これに対し、秒時間隔が短い場合は、最大速度および最大振動レベルを大幅に低減させることが可能であるが、設定を誤ると、反対に増加してしまう可能性がある。また、秒時間隔が短いほど誤差が発生する可能性が高い。これらのことを考慮し、かつ上記の卓越しない周波数に、起爆に起因する卓越周波数を設定するという基本を踏まえた上で、秒時間隔を設定する。
例えば、33Hzや125Hzが卓越しない周波数であれば、それらの周波数に起爆に起因する卓越周波数が発生するように、1000/125=8msや1000/33=30msの秒時間隔を設定することができる。図10を参照すると、8msに設定する方が30msに設定するより最大振動レベルを大幅に低減させることができる。しかしながら、設定を誤ると、最大振動レベルが30msに設定した場合より大きくなり、また、誤差が発生する可能性も高いことから、このようなリスクを考慮した場合、30msの秒時間隔を設定することが望ましい。
ところで、トンネル12は、発破により掘削していくと、発破地点である切羽11と、保全対象との位置関係が変化し、振動の伝播経路も変化する。このことから、切羽11から保全対象へ伝播する振動の伝播特性も変化する可能性が高い。しかしながら、伝播特性は、トンネル掘進に伴う切羽11と保全対象の位置関係の変化等により、常に変化するとは限らない。伝播特性が変化しないのに、タイムテーブルの見直しを行うのは、作業の無駄である。
そこで、図3のステップ345のタイムテーブルの見直しが必要かどうかの判定を行う。これにより、作業量を減らすことができ、その結果、施工期間を短縮することができる。
以下に、タイムテーブルの見直しが必要かどうかを判定する方法について詳細に説明する。既存の発破パターンに設定されるタイムテーブル(秒時間隔)と、これに起因する卓越周波数は設計済みで、既知である。そこで、図3のステップ325の本発破を行い、ステップ330の振動測定を行い、ステップ335の伝搬特性の抽出で、時刻歴特性を得、時刻歴特性から求めた周波数特性を示す図を作成する。
ここでは、図8(a)に示す保全対象の伝搬特性を評価できる7段目の波形を代表波形として用い、秒時間隔20msで、100段のタイムテーブルで起振した場合の時刻歴特性を、図11(a)に示し、その周波数特性を、図11(b)に示す。これは、現在のタイムテーブルで段発発破を行った場合に予測される時刻歴特性および周波数特性を示すものである。
図11(a)は、各軸につき、7段目の波形を20ms間隔で100段合成した図と、3軸の結果を合成した図とを示している。具体的には、7段目の波形を、20msずつ位相をずらして100個重ね合わせたものである。図11(a)に示す時刻歴特性では、X軸、Y軸の水平方向の最大速度が大きく、卓越している。図11(b)は、各軸の時刻歴特性をフーリエ変換して求めた周波数特性を示している。
図11(b)に示す周波数特性では、尖った波形を有し、50Hz刻みで瞬間的にスペクトルが上昇し、そして下降する極大値が現れている。20msずつ単発発破を行った場合、1秒間に50回発破を行うことになるので、この50Hz刻みの極大値は、タイムテーブルに起因する卓越周波数である。図8(b)に示す周波数特性は、200Hzのみにピークをもつ波形で表されることから、200Hzのみが保全対象卓越周波数として抽出される。この保全対象卓越周波数は、図11(b)に示す周波数特性に現れる極大値の1つに重なっている。このように、タイムテーブルに起因する卓越周波数は把握できているため、測定結果の周波数特性の変化を常時確認することで、保全対象の卓越周波数が変化したかを把握することが可能となる。
本発破を行って得られた周波数特性が、この予測される周波数特性と同一である場合は、保全対象卓越周波数が変化しないことを示し、現在設定されている秒時間隔が最適な秒時間隔で、設計された通りに充分に振動を抑制できていると考えられる。このため、タイムテーブルの見直しが不要と判定することができる。一方、周波数特性が変化した場合、保全対象卓越周波数が変化していることを示し、図11(b)に示す周波数特性とは異なり、別の周波数に新たな極大値が現れるようになる。この場合、現在設定されている秒時間隔では、振動が大きくなる可能性があるため、秒時間隔を変え、振動を抑制する必要がある。そこで、別の周波数に新たな極大値が現れたか否かにより、タイムテーブルの見直しが必要か否かを判定することができる。
ただし、振動測定や計算過程において誤差が生じる可能性があることから、新たな極大値が現れたとしても、すぐに見直しが必要と判定せず、保全対象卓越周波数が一定以上変化したかどうかにより、タイムテーブルの見直しが必要か否かを判定することが望ましい。すなわち、抽出された保全対象卓越周波数が、図11(b)に示す周波数特性の卓越周波数と一定以上に異なっているかどうかにより判定することが望ましい。そこで、例えば5%以上周波数が異なっているかどうかにより、見直しが必要か否かを判定することができる。なお、判定する基準は、5%以上に限られるものではなく、7%以上や10%以上であってもよい。あまり大きすぎると、見直しの回数が減り、適切に振動を抑制することができなくなることから、5〜10%異なっている場合に見直しを行うことが望ましい。
また、判定する基準は、一律に5%以上とするのではなく、保全対象卓越周波数に応じて変えることもできる。例えば、100ms未満の誤差が小さい周波数では、判定基準値を5%とし、それ以上の周波数では、誤差が大きくなることから、判定基準値を10%とすることができる。これは一例であるので、この値に限定されるものではない。
周波数特性は、図11(b)に示すような1つのピークのみを有する波形になるとは限らない。2以上のピークを有する波形になる場合もある。また、各軸によって、ピークを表す周波数が異なる場合もある。すると、2以上の保全対象卓越周波数が得られることになる。この場合、最も高いピーク値をもつ保全対象卓越周波数を特定し、その保全対象卓越周波数が一定以上に変化したかどうかにより、見直しが必要か否かを判定することができる。
上記では、保全対象卓越周波数が一定以上変化したかどうかにより、タイムテーブルの見直しが必要かどうかを判定したが、これに限られるものではない。例えば、振動のエネルギーが一定以上に変化したかどうかにより判定してもよい。具体的には、図11(b)に示す周波数特性を表すグラフの曲線と、周波数を表す軸とにより囲まれる部分の面積を算出する。その面積は、上記の速度と関係し、その速度がエネルギーに比例することから、その面積が一定以上に変化した場合、一定以上にエネルギーが変化していると考えられる。このように、振動のエネルギーが一定以上に変化している場合に、タイムテーブルの見直しが必要と判定することができる。面積の算出方法は、これまでに知られたいかなる方法でも採用することができる。
特に、保全対象卓越周波数が複数存在し、上記のピーク値をもつ保全対象卓越周波数が存在する部分の面積より、他の保全対象卓越周波数が存在する部分の面積の方が大きい場合に、このエネルギーの変化を基準に判定することができる。
このようにして、見直しが必要と判定した場合に、タイムテーブルを見直し、これをトンネル掘進の間、継続して行うことで、常に現在の保全対象卓越周波数に適した設計を維持することができる。
なお、保全対象において卓越周波数が高い場合、上記の変化は、図11(b)のような周波数特性には現れにくく、上記の方法が有効ではない場合がある。この場合は、手順は煩雑となるが、芯抜き部(補助芯抜きを含む)の6段〜10段だけを300ms間隔の単発波形が計測可能な設定とし(芯抜き部の外周側の払い部は既存の秒時間隔のままとする)、この計測結果を用いた予測解析で代替(バックアップ)する。
なお、高周波数の振動が卓越する場合、空気を介して音を伝達する空気音ではなく、住宅等の基礎のコンクリート、壁、窓等の物質を介して伝達する固体音の問題に変化する可能性がある。固体音は、屋外と屋内で同じ振動でも大きさが異なり、屋外に比べて屋内が大きくなり易い。同じ発破でも、屋外と屋内では振動の大きさが異なる。このため、事前に想定することが難しい。
そこで、必要に応じて、屋外と屋内の同時計測を1回だけ実施し、その計測結果から得られる卓越周波数の相違および振幅の大小関係に基づき、必要な対策を実施することができる。
上記の時刻歴特性を表す波形のフーリエ変換、保全対象卓越周波数が一定以上変化しているかどうかにより、タイムテーブルの見直しが必要か否かの判定は、上述した、例えばPC等の情報処理装置により実施することができる。
図12に、情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す。情報処理装置は、ハードウェアとして、汎用的なPCと同様、CPU(Central Processing Unit)30、ROM(Read Only Memory)31、RAM(Random Access Memory)32、HDD(Hard Disk Drive)33、入出力I/F34、表示装置35、入力装置36、バス37を含む。
CPU30は、ROM31やHDD33に格納されたプログラムを実行し、情報処理装置全体の動作を制御する。ROM31は、情報処理装置の起動時に実行されるBIOS(Basic Input Output System)や各種の設定値等を格納する不揮発性メモリである。RAM32は、CPU30が実行するために読み出したプログラムを保持する等の作業領域を提供する揮発性メモリである。HDD33は、OS、各種のプログラム、各種のデータを格納する不揮発性の記憶装置である。ここでは、HDD33を用いているが、これに限られるものではなく、SSD(Solid State Drive)等を用いてもよい。
各種のプログラムには、入力された振動の結果に基づき、時刻歴特性を表示し、フーリエ変換して周波数特性を求め、その周波数特性から保全対象卓越周波数を抽出する処理、現在設定されている秒時間隔で複数回起振した場合に予想される保全卓越周波数の変化からタイムテーブルの見直しを判定する処理を行うプログラムが含まれる。そのプログラムは、タイムテーブルを見なした場合に、各雷管21に現在設定されている秒時間隔を変更する処理も実行させることができる。秒時間隔の変更は、各雷管21が備える電子タイマの設定値を変更することにより実現することができる。
入出力I/F34は、表示装置35への情報の出力と、入力装置36からの情報の入力とを制御するためのインタフェースである。表示装置35は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等とされ、上記の時刻歴特性や周波数特性を表す波形や判定結果等を表示する。入力装置36は、マウスやキーボードとされ、ユーザが入力した情報を受け付ける。バス37は、CPU30やROM31等と接続され、アドレス信号、データ信号、各種の制御信号を伝送する。
情報処理装置は、そのほか、外部記憶I/F、SDカードスロットやCD-ROMやDVD等の記憶媒体ドライブ、マイク等の音声入力装置、スピーカ等の音声出力装置、カメラ等の撮像装置を含んでいてもよい。
以上のことから、本発明の発破工法を提供することで、電子遅延式電気雷管を用いた発破パターンにおける最適なタイムテーブル(秒時間隔)を見直す必要があるか否かを簡単に判断することができる。また、簡単に判断することができるので、タイムリーな秒時間隔の見直しが可能となり、常に現在の保全対象卓越周波数に即したタイムテーブルの最適設計が保証される。したがって、この電子遅延式電気雷管を用いた振動および騒音の抑制効果が期待通りに得られるようになる。
これまで本発明の発破工法について図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
10…地山、11…切羽、12…トンネル、13、14…住宅、15、16…装薬孔、20…爆薬、21…雷管、22…込め物、23…導線、24…発破器、25…チェッカー、26…結線カウンタ、30…CPU、31…ROM、32…RAM、33…HDD、34…入出力I/F、35…表示装置、36…入力装置、37…バス

Claims (8)

  1. 設定された点火タイミングで点火する点火装置を使用して発破を行う発破工法であって、
    発破対象を発破する工程と、
    発破対象から離間した所定の地点で、発破により発生した振動を測定する工程と、
    情報処理装置により測定結果から前記所定の地点に伝播した前記振動が有する伝播特性を抽出する工程と、
    前記情報処理装置により抽出した前記伝播特性に基づき、前記設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する工程と、
    前記情報処理装置により変更すると判定した場合に、前記所定の地点における前記振動を低減するように前記点火タイミングの設定を変更する工程とを含む、発破工法。
  2. 前記発破する工程でトンネルを掘削する際の前記発破対象としての切羽の発破を行うたびに、前記測定する工程、前記抽出する工程、前記判定する工程、前記変更する工程を繰り返す、請求項1に記載の発破工法。
  3. 発破対象の一部を発破し、または発破対象の一部に打撃を与える加振工程と、前記所定の地点で、前記加振工程で発生した振動を測定する振動計測工程と、前記振動計測工程での測定結果から前記所定の地点に伝播した該振動が有する伝播特性を抽出する特性抽出工程とをさらに含む、請求項1または2に記載の発破工法。
  4. 前記抽出する工程では、測定結果が表す前記振動の波形から前記伝播特性としての卓越周波数を抽出し、
    前記判定する工程では、抽出した卓越周波数と、前記設定された点火タイミングとして、前記特性抽出工程で抽出した前記伝播特性に基づき設定された点火タイミングで発破した場合に予測される卓越周波数とに基づき、前記設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する、請求項3に記載の発破工法。
  5. 前記判定する工程では、抽出した前記卓越周波数が、前記予測される卓越周波数と一定以上に異なっているか否かにより、前記設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する、請求項4に記載の発破工法。
  6. 前記判定する工程では、抽出した前記卓越周波数における振動のエネルギーが、前記予測される卓越周波数における振動のエネルギーと一定以上に異なっているか否かにより、前記設定された点火タイミングを変更するか否かを判定する、請求項4に記載の発破工法。
  7. 前記特性抽出工程では、複数の波形を有する前記測定結果から振幅が最も大きい波形を代表波形とし、前記代表波形から前記卓越周波数を抽出し、
    前記判定する工程では、前記代表波形を用いて前記設定された点火タイミングで発破した場合の卓越周波数を予測する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の発破工法。
  8. 前記振動は、変位、速度、加速度の3つの要素を有し、
    前記変更する工程では、前記3つの要素のうちの少なくとも1つを低減するように前記点火タイミングの設定を変更する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発破工法。
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