以下に、本発明にかかる建物の解体材搬出システムの好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかる建物の解体材搬出システムを示す側断面図、図2は、図1中、A−A線矢視断面図、図3は、図1中、B−B線矢視断面図、図4は、図1に示した建物の解体材搬出システムに備えられる扉手段を示す正面図、図5は、図1中、C−C線矢視断面図、図6は、図1中、D−D線矢視断面図、図7は、解体材が詰まって閉塞が生じ易い状況を説明するための概略図、図8は、図1に示した建物の解体材搬出システムに備えられる加力装置及び垂下部材の設置状況を示す一部拡大側面図、図9は、図1に示した建物の解体材搬出システムによる解体材搬出の実施状況を説明する説明図である。
本実施形態にかかる建物の解体材搬出システムは、図1に示すように、中高層、例えば高さ60m程度の既存RC造建物1を最上階から下階へ向けて解体していく際に、解体作業を施工している解体作業施工階FZから搬出階FA、例えば地上階へ解体材Wを移すために用いられる。
解体作業施工階FZは、建物1の解体が進むに従って、最上階からその直下階、そしてまたその直下階へと移行していく。建物1の周囲には、地上Gから最上階に達する高さで建物1全体を包囲して、防塵・防音用の防護壁2が仮設される。
解体される建物1には、解体材Wを投下するために、最初に解体される最上階の解体作業施工階FZから、解体材Wの搬出階FAの直上階、例えば地上階の直上階に亘る各階FB,FC,……,FXの床スラブ3b,3c,……,3x,3zに、これを貫通して、開口部4b,4c,……,4x,4zが形成される。これら開口部4b,4c,……,4x,4zは、クレーンや仮設のリフトなどを利用して各階に搬入されるクラッシャーなどの解体用重機5によって形成される。
これら開口部4b,4c,……,4x,4zは、建物1の高さ方向に相互に一連に連通するように、建物平面に関して同じ位置に、ほぼ同口径で形成される。図示例では、図2等に示されているように、四角形状に形成されているが、円形状やその他の多角形状に形成しても良い。
各階FB,FC,……,FX,FZの開口部4b,4c,……,4x,4zの建物平面における位置は、自由に設定してよい。例えば、解体する建物1周囲に住居がある場合に、近隣住居からなるべく離れた位置に開口部4b,4c,……,4x,4zを設けることで、具体的には、建物1が住居に囲まれている場合には、建物1の中央位置に開口部4b,4c,……,4x,4zを設けることで、近隣住居に与える騒音・振動の影響を少なくすることができる。
解体作業施工階FZでは、その床スラブ3z上を解体用重機5が移動して、解体作業が進められ、これにより解体材Wが発生する。この際、解体材Wは、コンクリート塊と鉄筋等に仕分けするようにしても良い。また、解体用重機5が移動する解体作業施工階FZの床スラブ3zを支持するために、解体作業施工階FZ直下の一階層やその下の二階層に亘って、補強用ポスト6を複数配設するようにしても良い。
解体作業施工階FZで発生した解体材Wは、当該解体作業施工階FZの床スラブ3zの開口部4zを介して、建物1下方へ向けて投下される。投下された解体材Wは、一連に連通する各階の床スラブ3b,3c,……,3xの開口部4b,4c,……,4xを通じて落下し、搬出階FAに到達する。搬出階FAには、後述する下層囲い体7内方の下層貯室LSに面して、搬出階FAへ投下される解体材Wの衝撃を緩衝して、騒音や振動の発生を抑制するための緩衝部8が設けられる。
緩衝部8は、各階の開口部4b,4c,……,4x,4zと同じ建物平面位置に、当該搬出階FAの床スラブ3aを貫通させて、下方に向けて適宜深さで、開口部と4b,4c,……,4x,4zほぼ同口径で形成された緩衝材充填用ピット8aと、緩衝材充填用ピット8a内に充填され、搬出階FAに到達するなど、投下される解体材Wを受け止めるクッションとなって騒音や衝撃振動等を緩衝する緩衝材8bとから構成される。緩衝材8bは、建物1の内装材等の廃材が用いられる。
緩衝材8bは、搬出階FAにおける解体材Wの搬出の妨げとならないように、搬出階FAの床スラブ3a上面レベルにほぼ一致する高さまで、緩衝材充填用ピット8a内に充填される。緩衝部8は、緩衝材充填用ピット8aを形成するまでもなく、搬出階FAの床スラブ3a上に緩衝材8bを敷き詰めるだけでもよい。
搬出階FAには、図1〜図4に示すように、内部に搬出階FAの階高に達する高さで解体材Wを貯留することが可能な下層貯室LSを区画形成する下層囲い体7が備えられる。下層囲い体7は、搬出階FAの床スラブ3a上から、その直上階(後述する待機階FB)の床スラブ3b下に達する高さで形成される。
下層囲い体7は、待機階FBの開口部4bを包囲して設けられる。図示例では下層囲い体7は、待機階FBの開口部4bの平面形状に合わせて、平面四角形状に形成される。開口部4bの平面形状と異なる形状であっても良い。
下層囲い体7は、平面四角形状に組んだ鋼製枠ユニット7aが、高さ方向に適宜間隔を隔てて多段に配置されると共に、これら枠ユニット7a内方に区画される4面に、鋼製壁材7bを配設して角筒状に組み立てられ、そして、枠ユニット7aの向かい合ういずれか一対の辺に、それらの端部位置で向かい合うように配設されたH形鋼製コラム7cを、搬出階FAの床スラブ3aにアンカーで固定することにより搬出階FAに固定して設置され、その内方の空間が下層貯室LSとされる。
これにより、下層貯室LSには、待機階FBの開口部4bを通じて、搬出階FAの床スラブ3a上面から当該搬出階FAの階高に達する高さで解体材Wを貯留することが可能とされる。下層囲い体7は、重機作業を行う際に、後述する搬出用重機11が誤って接触しても破損されないように、そしてまた、搬出階FAで作業を行う作業者の不安を軽減するために、鋼製材で形成される。
また、下層貯室LSでは、その空き状態から投下され始める解体材Wについては、投下による衝撃が緩衝部8で緩衝されて、騒音・振動が抑制される。緩衝部8を覆い尽くす程度に解体材Wが投下された後は、投下による衝撃は、先に投下された解体材Wで緩衝され、騒音・衝撃が抑制される。そしてまた、騒音は下層囲い体7自体によっても低減される。
搬出階FAに設けられる下層囲い体7には、その周方向の適宜個所に、下層貯室LSを搬出階FAの空間へ開放する排出口9が形成されると共に、この排出口9を閉じて、下層貯室LS内の解体材Wを下層囲い体7内部に保持したり、排出口9を開いて、解体材Wを下層囲い体7外方へ崩落可能とする開閉自在な扉手段10が設けられる。排出口9は、下層囲い体7の周方向の適宜箇所に設ければ良く、その数は一つであっても、複数であっても良い。
本実施形態では、下層囲い体7を構成する枠ユニット7aによってその内方に区画される4面のうち、いずれか一つの面に設けられる壁材7bが、待機階FBの床スラブ3b下に僅かな高さ寸法で垂設され(図1参照)、これにより、この壁材7b下方に、搬出階FAの床スラブ3a上面に亘って、単一の排出口9が形成されている。
下層囲い体7の残りの3面に設けられる壁材7bについては、搬出階FA及び待機階FBの床スラブ3a,3b間寸法の高さ寸法で形成されていて、これにより排出口9を除き、下層貯室LSは、搬出階FAに対して仕切られた構造とされる。
扉手段10は、図3及び図4に示すように、排出口9際の両側一対のコラム7cそれぞれに、それらの高さ方向に沿って多段に多数形成された挿抜孔(図示せず)個々に個別に挿抜自在に設けられ、挿抜孔に挿通してコラム7c間に掛け渡して設置されることで、下層囲い体7内部に解体材Wを保持するために排出口9を閉じた様態としたり、挿抜孔から引き抜いてコラム7c間から撤去されることで、下層囲い体7外方へ解体材Wを崩落可能とするために排出口9を開いた様態とする複数のロッド10aで構成される。
扉手段10を含む下層囲い体7は、排出口9からの解体材Wの搬出を容易化するために、排出口9からの奥行きや側方への広がりを狭めるように、壁材7bやコラム7cが待機階FBの開口部4bの口縁際に寄せられて設置される。
搬出階FAには、バックホウやショベルカーなどの搬出用重機11が搬入され、扉手段10によって開放された排出口9を介して下層貯室LSから下層囲い体7外方へ崩落される解体材Wが、当該搬出用重機11によって搬出されるようになっている。
搬出階FA上方の上方階層FCには、上層囲い体17が設けられる。搬出階FA上方の上方階層FCとは、少なくとも搬出階FAの直上階を含む階層で、1階層であっても、また2階層以上であっても良い。本実施形態では、搬出階FAと上方階層FCとの間に、搬出階FAの直上階を待機階FBとして設定した場合が示されている。待機階FBを設定することなく、搬出階FA直上の階層から上方階層FCとして良い。そしてまた、図示例では、待機階FBの直上階のみが上方階層FCとして設定されている。
搬出階FAの直上階、すなわち搬出階FAへの解体材Wの崩落を待機させる待機階FBには、図1及び図5に示すように、内部に待機階FBの階高に達する高さで解体材Wを下層貯室LSへ崩落可能に貯留することが可能な中層貯室MSを区画形成する中層囲い体12が備えられる。中層囲い体12は、待機階FBの床スラブ3b上から、その直上階(後述する上方階層FCの最下階)の床スラブ3c下に達する高さで形成される。
中層囲い体12は、待機階FBやその直上階の開口部4b,4cを包囲して設けられる。図示例では中層囲い体12は、待機階FBや直上階の開口部4b,4cの平面形状に合わせて、平面四角形状に形成される。これら開口部4b,4cの平面形状と異なる形状であっても良い。
中層囲い体12は、平面四角形状に組んだ単管ユニット12aが、高さ方向に適宜間隔を隔てて多段に配置されると共に、これら単管ユニット12a内方に区画される4面に、待機階FB及び直上階の床スラブ3b,3c間寸法の高さ寸法を有する合板製壁材12bを配設して角筒状に組み立てられて、待機階FBの床スラブ3bに固定して設置され、その内方の空間が中層貯室MSとされる。
これにより、中層貯室MSには、直上階(上方階層FC)の開口部4cを通じて、待機階FBの床スラブ3bから当該待機階FBの階高に達する高さで解体材Wを貯留することが可能とされる。
中層囲い体12は、図5に示すように、扉手段10の上方位置とそれ以外の位置とで、開口部4b,4cに対する位置が異なるように設置される。具体的には、扉手段10の上方に位置される扉直上囲い個所Pは、それら開口部4b,4cの口縁際に寄せて配され、扉直上囲い個所Pを除く個所(非扉直上囲い個所Qという)は、それら開口部4b,4cの口縁から距離を隔てるように、離して配される。
解体材Wは、積み上げて貯留すると、積み上げで生じる下向き荷重の一部が横方向に向かって作用し、例えば、中層囲い体12の壁材12bや待機階FBの床スラブ3bの開口部4b口縁周辺に接している解体材Wを、当該壁材12bや開口部4bの口縁等に強固に密着させることとなって、これにより閉塞が生じるおそれがある。
下層囲い体7には、扉手段10で開放される排出口9が設けられていることから、扉手段10で排出口9を開放すれば、下層貯室LS内の解体材Wは、自然にあるいは容易に崩落し、下層貯室LS内で解体材Wの閉塞が生じることは殆どない。
これに対し、中層囲い体12、殊に扉手段10上方の扉直上囲い個所Pでは、これに幾分でも密着力が作用している状態で扉手段10により排出口9が開放されて解体材Wが下層貯室LS外方へ崩落して当該扉直上囲い個所P直下に空きなどの弛みが生じると、図7に示すように、それに伴って密着力が倍加して作用して、解体材Wが密着してしまい、閉塞を生じてしまう。
この際、この扉直上囲い個所Pにおいて、待機階FBの床スラブ3bが解体材W中に食い込むように迫り出していると、閉塞がさらに助長されるおそれがある。
そこで、本実施形態にあっては、積み上げて貯留される解体材Wによる閉塞の発生を抑制するために、少なくとも待機階FBの床スラブ3bが解体材Wに対して「迫り出し」とならないように、扉直上囲い個所Pでは、中層囲い体12が待機階FBの開口部4bの口縁に寄せて位置づけられる。
他方、非扉直上囲い個所Qそれ自体では閉塞の原因となる解体材Wの崩落による上記「弛み」の発生は殆どないこと、中層貯室MSへの解体材Wの貯留量を多く確保すること、そしてまた、開口部4b,4cの口縁際とすると得ることのできない中層囲い体12の設置施工スペースを開口部4b,4c側に確保して設置施工の安全性を向上すること、投下される解体材Wが直接中層囲い体12に衝突することによる騒音・振動の発生を抑制すること、の観点から、当該非扉直上囲い個所Qでは、それら開口部4b,4cの口縁から離して位置づけられる。
中層貯室MSでは、解体材Wの投下による衝撃は、先に投下された解体材Wで緩衝され、騒音や衝撃・振動が抑制される。そして、騒音は中層囲い体12自体によっても軽減される。
待機階FB上方の上方階層FCには、上述したように上層囲い体17が設けられる。図1及び図6に示すように、上層囲い体17の内部には、解体作業施工時に、後述する設定貯留高さH(図9参照)まで、解体材Wを、中層貯室MSを介して、下層貯室LSへ崩落可能に貯留することが可能に、上層貯室HSが区画形成される。上層囲い体17は、これが設置される階FCの床スラブ3c上から、その直上階の床スラブ3d下に達する高さで形成される。
上層囲い体17は、上方階層FCにおいて各階の開口部、例えば開口部4cを包囲して設けられる。図示例では上層囲い体17は、上方階層FCの各階に形成された開口部(例えば開口部4c)の平面形状に合わせて、平面四角形状に形成される。当該開口部の平面形状と異なる形状であっても良い。
上層囲い体17は、中層囲い体12と同様に、平面四角形状に組んだ単管ユニット17aが、高さ方向に適宜間隔を隔てて多段に配置されると共に、これら単管ユニット17a内方に区画される4面に、上方階層FCにおける各階の床スラブ間寸法(例えば待機階FBの直上階FCとその直上階の床スラブ3c,3d間寸法)の高さ寸法を有する合板製壁材17bを配設して角筒状に組み立てられて、各階に固定して設置され、その内方の空間が上層貯室HSとされる。
これにより、上層貯室HSには、解体作業施工階FZから投下される解体材Wを下層貯室LSへ向かって崩落可能に貯留することが可能とされる。
上層囲い体17では、その高さ位置で積み上げられる解体材Wの量が少なく、閉塞の原因となる解体材Wによる大きな側圧の発生は殆どないこと、上層貯室HSへの解体材Wの貯留量を多く確保すること、そしてまた、開口部4c側に上層囲い体17の設置施工スペースを確保して設置施工の安全性を向上すること、投下される解体材Wが直接上層囲い体17に衝突することによる騒音・振動の発生を抑制すること、の観点から、図6に示すように、各階の床スラブ3c,3dの開口部4c,4dを包囲して、開口部4c,4dの口縁から距離を隔てて、離して設置される。そして、騒音は上層囲い体17自体によっても軽減される。
上述したように閉塞を生じ易い扉手段10の上方、本実施形態では扉手段10直上となる待機階FBの床スラブ3b上には図1及び図8に示すように、解体材Wによる閉塞を解除するために、貯留された解体材Wに力を加える加力装置として、油圧シリンダユニット18やジャッキが設置される。
油圧シリンダユニット18は、中層囲い体12の扉直上囲い個所Pに貫通孔(図示せず)を介して貫通されて、中層貯槽MS内で進出・後退されるピストンロッド18aを備え、このピストンロッド18aの進退で中層貯室MS内の扉手段10直上やその周辺に貯留されている解体材Wに力を加え、これにより閉塞を解除することができる。
油圧シリンダユニット18は、扉手段10の上方であれば、待機階FBの床スラブ3b下に設置して、下層囲い体7を貫通するピストンロッドで、その上端部分に貯留されている解体材Wに力を加えるようにしても良い。油圧シリンダユニット18の設置数は、一台に限らず、複数台であってもよく、この場合、扉直上囲い箇所Pに設ける貫通孔を複数個として、それら貫通孔それぞれに複数のピストンロッド18aが進退自在に貫通設置される。
解体材Wによる閉塞の解除のために、さらに、可撓性の金属製垂下部材、例えば鋼製チェーン19が備えられる。チェーン19は図1に示すように、上層囲い体17上方へ始端部19aが引き出されると共に、終端部19bが下層囲い体7外方へ引き出されて、上層囲い体17及び下層囲い体7内方の上層貯室HSから下層貯室LSへ向かって、貯留された解体材Wの間を経過するように下方へ垂らして設けられる。チェーン19は、解体材Wが投下される前に配設されるので、解体材Wが投下されれば自ずとそれらの間を経過するようになる。
チェーン19の終端部19b側は図8にも示すように、搬出階FAの床スラブ3a上に横たえて配され、チェーン19は、当該床スラブ3aに形成した溝あるいは下層囲い体7に形成した通孔を介して、下層囲い体7外方からその内方の下層貯室LSに向けて設けられる。チェーン19は、床スラブ3b,3c,3dの開口部4b,4c,4dの口縁内方に、当該開口部4b,4c,4dの周方向に沿って間隔を隔てて複数配設される。
本実施形態では、四角形状の開口部4b,4c,4dの各辺のうち、排出口9の設置位置に対応する辺を除き、3つの辺に位置させて3本配設されている。チェーン19は、3本に限らず、適宜本数を設置すればよい。また、排出口9の設置位置については、待機階FBの中層囲い体12外方へ終端部を引き出すようにして、チェーンを増設するようにしても良い。
各チェーン19は、上方階層FC側から引き上げ操作されることで、貯留されている解体材Wを動かし、これによって解体材Wの密着による閉塞を解除するようになっている。チェーン19の引き上げ操作は、チェーンブロック(図示せず)に巻き掛けて行えばよい。
チェーン19は、始端部19a側から引き上げ操作されることで、終端部19b側が次第に下層囲い体7に近づいていくが、当該終端部19bが下層囲い体7内方へ引き込まれないように、引き上げ操作量に応じて順次に、終端部19bには、追加のチェーン20が連結して設けられる(図9参照)。チェーン19,20に代えて、ワイヤを用いても良い。
さらに、本実施形態に係る建物の解体材搬出システムにあっては、解体材Wの搬出作業時に、搬出階FAにおける解体材Wの搬出状況、具体的には解体材Wを所定高さまで貯留することで、解体作業施工階FZから貯留される解体材Wの天端までの段差を小さくすると共に、貯留された解体材Wに緩衝材としての役割を担わせるために、下層貯室LSから上層貯室HSに亘る解体材Wの貯留量を規定する設定貯留高さHが設定される。設定貯留高さHは、上層貯室HS内の貯留高さとして設定される。
そして、この設定貯留高さHを計測するための計測手段として、距離計21や荷重センサ22が備えられる。距離計21は、積み上げて貯留された解体材Wの天端までの距離を計測するために、解体作業施工階FZに設けられる。距離計21は、設定貯留高さHよりも高い位置であれば、解体作業施工階FZ以外の階層に設けても良いことはもちろんである。
排出口9を介して下層貯室LSから解体材Wが搬出されると、天端までの距離の変化が距離計21で計測される。解体作業では、距離計21で計測される解体材Wの天端位置を設定貯留高さHに戻すように、解体作業施工階FZから解体材Wが投下される。
荷重センサ22は、貯留される解体材Wによって囲い体7,12,17に生じる側圧を計測するもので、解体材Wが設定貯留高さHまで貯留されることで生じる相応の側圧、すなわち相応の荷重が設定荷重とされ、荷重センサ22で計測中の荷重が当該設定荷重に達したか否かを検出する。荷重センサ22の場合も、解体作業では、計測される側圧(荷重)が設定荷重に維持されるように、解体材Wが投下される。
荷重センサ22は、下層囲い体7、中層囲い体12及び上層囲い体17のうち、少なくともいずれかの囲い体に設けられる。すべての囲い体7,12,17に設けても良いことはもちろんである。解体材Wの天端位置が設定貯留高さHであるか否かを計測する意味からは、上層囲い体17の壁材17bに設けることが好ましい。
解体作業施工階FZは順次に下階へ移行してくる。設定貯留高さHは、上層囲い体17によって上層貯室HSが区画形成される上方階層FCに移行してくるまで、一定の設定高さHであって良いが、これに代えて、必要に応じ、解体作業施工階FZが下階へ移ることに従って、低い高さに再設定するようにしても良い。
そして、解体作業施工階FZが上方階層FCに移行して当該階層の解体が開始されたときには、設定貯留高さHの設定を解除し、単に排出口9からの解体材Wの搬出量に合わせた投下量で解体材Wを投下していけばよい。
次に、本実施形態にかかる建物の解体材搬出システムによる解体材搬出の実施状況を、図9を用いて説明する。解体される建物1の最上階(解体作業施工階FZ)には、解体用重機5を待機させ、搬出階FAには、搬出用重機11を待機させる。そしてまず、解体用重機5によって、解体作業施工階FZの解体を開始する。解体作業施工階FZから解体材Wが投下される前に、搬出階FAの排出口9は、すべてのロッド10aが挿抜孔に挿通された扉手段10により、閉じた状態とされる。
排出口9を扉手段10で閉じた状態で、解体作業施工階FZから解体材Wを投下していく。投下された解体材Wは、下層囲い体7内方の下層貯室LSへ達し、緩衝部8上に落下する。緩衝部8がほぼ解体材Wで覆われるようになると、落下してくる解体材Wは、先行して下層貯室LS内に投下された解体材Wの上に落下し、その上に積み上げられていく。
扉手段10で排出口9を閉じた状態が維持されて、解体作業施工階FZからの解体材Wの投下が設定貯留高さHまで継続され、投下される解体材Wは、下層貯室LSから中層貯室MSを経て、上層貯室HSへ亘って積み上げられ、貯留される。投下された解体材Wの天端が設定貯留高さに達したか否かは、距離計21もしくは荷重センサ22、あるいは双方によって計測される。
設定貯留高さHは、上述したように、解体作業施工階FZから貯留される解体材Wの天端までの段差を小さくすると共に、貯留された解体材Wに緩衝材としての役割を担わせるために設定される。例えば、高さ60mから解体材Wを投入する場合、10m離れた場所での振動を55デシベル以下にするためには、貯留高さを6m以上にする必要があった。この高さは、解体材Wの大きさや地盤状況等によって変化することから、解体作業前に実験を行って、設定貯留高さHを設定することが望ましい。
扉手段10で排出口9を閉じた状態で設定貯留高さHまでの解体材Wの投下を完了したら、その後、扉手段10で排出口9を開く。扉手段10を開放した後は、搬出階FAにおける解体材Wの搬出作業と、解体作業施工階FZにおける解体材Wの投下作業とが並行して繰り返される。この繰り返しの作業は、少なくとも上層貯室HSを備える階、すなわち上層階層FCの直上階の解体作業開始まで行われる。
搬出作業により、扉手段10を開くことで下層貯室LSから下層囲い体7外方へ崩落する解体材Wが搬出階FAから搬出される。解体材Wは、安息角によってその崩落が制限され、排出口9から崩れ出てくる解体材Wは、搬出用重機11により安全に搬出される。解体材Wが搬出されると、貯留されている解体材Wの天端位置が下がることになる。
投下作業では、距離計21や荷重センサ22で解体材Wの天端位置の計測が継続され、解体材Wの搬出で下がる解体材Wの天端を設定貯留高さHに戻してこれが維持されるように、解体作業施工階FZから解体材Wが投下される。
解体材Wが閉塞を生じて解体材Wが下層貯室LSに移行しない場合には、閉塞解除作業を実施する。一方の閉塞解除作業は、油圧シリンダユニット18のピストンロッド18aを往復駆動する。これにより、待機階FBの高さ位置で、扉直上囲い個所Pの解体材Wに刺激が与えられて動きが生じ、閉塞が解除される。他方の閉塞解除作業は、開口部4b,4c,4dの周方向に複数設けられているチェーン19のいずれかもしくはすべてを、引き上げ操作する。
これにより、下層貯室LSから上層貯室HSに亘る間で、貯留されている解体材Wに刺激が与えられて動きが生じ、閉塞が解除される。閉塞が解除されることにより、下層貯室LSに向けて解体材Wが崩落し、排出口9から崩れ出てくるので、これら解体材Wが搬出用重機11で搬出される。引き上げ操作されるチェーン19については、継ぎ足しのために、搬出階FAで追加のチェーン20が連結される。
解体作業施工階FZが下階に移行する度に、それに応じて、解体用重機5や補強用ポスト6を下階へ盛り替えていく。上層囲い体17で上層貯室HSが形成された上方階層FCが解体作業施工階FZとなったときには、上層囲い体17を撤去する。チェーン19の始端部19aは、中層貯室MS上方へ引き出される。
上層貯室HSの高さ範囲に設定貯留高さHが設定されているとき、当該設定貯留高さHは、待機階FBの中層貯室MSの高さ範囲に再設定される。待機階FBの高さ位置は、解体作業前の建物最上階の高さ位置よりもきわめて低い位置なので、設定貯留高さHを再設定することなく、中層貯室MS内での解体材Wの貯留が維持されるように、搬出作業と投下作業とを繰り返し実行するようにしても良い。
すなわち、解体材Wの貯留が下層貯室LSから中層貯室MSに亘っていれば、解体材Wの上に解体材Wを投下することによる騒音・振動の抑制と、排出口9からの崩れ出しを利用した解体材Wの安全な搬出とが継続して確保される。
中層囲い体12で中層貯室MSが形成された待機階FBが解体作業施工階FZとなったときには、中層囲い体12を撤去する。チェーン19の始端部19aは、下層貯室FA上方へ引き出される。この高さでは、設定貯留高さHの設定は解除される。そして、待機階FBの解体材Wは、下層貯室LSへと投下され、排出口9から搬出される。
最後に、搬出階FAが解体作業施工階FZとなったときは、下層囲い体7が撤去され、待機階FBの床スラブ3bや搬出階FAの柱等が解体され、それらの解体材Wが搬出階FAから搬出される。
以上説明した本実施形態にかかる建物の解体材搬出システムにあっては、解体作業施工階FZから解体材Wの搬出階FAの直上階に亘る各階FB,FC,……,FXの床スラブ3b,3c,……,3x,3zに、相互に連通するほぼ同口径の開口部4b,4c,……,4x,4zが形成され、これら開口部4b,4c,……,4x,4zを介して解体作業施工階FZから解体材Wを搬出階FAへ投下し、当該搬出階FAから解体材Wを搬出するようにした建物の解体材搬出システムであって、搬出階FAに設けられ、内部に搬出階FAの階高に達する高さで解体材Wを貯留可能な下層貯室LSを区画形成すると共に、適宜個所に下層貯室LS内の解体材Wをその外方へ崩落可能とする排出口9が形成された下層囲い体7と、搬出階FAの少なくとも直上階を含む搬出階FA上方の上方階層FCに設けられ、解体材Wを下層貯室FAへ崩落可能に貯留可能な上層貯室HSを区画形成する上層囲い体17とを備え、さらに、上層囲い体17上方へ始端部19aが引き出されると共に、終端部19bが下層囲い体7外方へ引き出されて、貯留された解体材Wの間を経過するように上層囲い体17及び下層囲い体7内方の上層貯室HSから下層貯室LSへ向かって、下方へ垂らして設けられ、解体材Wを動かすために引き上げ操作されて、解体材Wによる閉塞を解除するチェーン19を備えていて、単なる囲い体7,17及びチェーン19によって、構造が簡単で低コストに搬出システムを構築することができると共に、そしてまた囲い体7,17自体により、騒音・振動の軽減と解体材Wに対する安全性を確保することができることに加え、囲い体7,17内に解体材Wによって閉塞が生じるようなことがあっても、チェーン19の配設という、きわめて簡単な装置構成で、解体材Wの円滑かつ確実な搬出作業を確保することができる。
チェーン19は、開口部4b,4c,4dの周方向に間隔を隔てて複数設けられるので、閉塞の原因箇所が囲い体7,17の周方向いずれの箇所であっても、当該閉塞を適切に解除することができる。
チェーン19には、終端部19bが下層囲い体7内方へ引き込まれないように、引き上げ操作量に応じて順次に、終端部19bに連結される追加のチェーン20が設けられるので、閉塞を解除する作業を支障なく適切に実施することができる。
扉手段10を含む下層囲い体7は、排出口9からの解体材Wの搬出を容易化するために、排出口9からの奥行きや側方への広がりを狭めて、待機階FBの開口部4bの口縁際に寄せて設置され、また、中層囲い体12では、積み上げて貯留される解体材Wによる閉塞の発生を抑制するために、少なくとも待機階FBの床スラブ3bが解体材Wに対して「迫り出し」とならないよう、扉直上囲い個所Pでは、中層囲い体12が待機階FBの開口部4bの口縁に寄せて位置づけられ、他方、非扉直上囲い個所Qそれ自体では閉塞の原因となる解体材Wの崩落による上記「弛み」の発生は殆どないこと、中層貯室MSへの解体材Wの貯留量を多く確保すること、そしてまた、開口部4b,4cの口縁際とすると得ることのできない中層囲い体12の設置施工スペースを開口部4b,4c側に確保して設置施工の安全性を向上すること、投下される解体材Wが直接中層囲い体12に衝突することによる騒音・振動の発生を抑制すること、の観点から、当該非扉直上囲い個所Qは、それら開口部4b,4cの口縁から離して位置づけられ、さらに、上層囲い体17では、その高さ位置で積み上げられる解体材Wの量が少なく、閉塞の原因となる解体材Wによる大きな側圧の発生は殆どないこと、上層貯室HSへの解体材Wの貯留量を多く確保すること、そしてまた、開口部4c,4d側に上層囲い体17の設置施工スペースを確保して設置施工の安全性を向上すること、投下される解体材Wが直接上層囲い体17に衝突することによる騒音・振動の発生を抑制すること、の観点から、開口部4c,4dの口縁から距離を隔てて、離して設置されて、これら囲い体7,12,17の開口部4b,4c,4dに対する平面スペースの広狭の設定により、解体作業施工階FZから投下される解体材Wの円滑かつ確実な搬出作業を確保でき、また、開口部4b,4c,4dの際を考慮に入れて囲い体12,17を安全かつ簡便に施工できる。
扉手段10上方に、貯留された解体材Wに力を加えて、解体材Wによる閉塞を解除する油圧シリンダユニット18を備えたので、簡単な装置構成で、解体材Wの円滑な搬出を確保することができる。
下層貯室LSに面して、搬出階FAへ投下される解体材Wの衝撃を緩衝する緩衝部8を設けたので、搬出階FAへ投下される解体材Wの衝撃を緩衝して、騒音や振動発生を適切に抑制することができる。
扉手段10は、コラム7cの高さ方向に沿って多段に多数形成された挿抜孔個々に個別に挿抜自在に設けられ、挿抜孔に挿通して設置されることで、下層囲い体7内部に解体材Wを保持するために排出口9を閉じた様態としたり、挿抜孔から引き抜いて撤去されることで、下層囲い体7外方へ解体材Wを崩落可能とするために排出口9を開いた様態とする複数のロッド10を備えて構成されているので、簡単かつ堅牢な構造であると共に、ロッド10の単純な抜き差しで設置・撤去できるので、不定型な解体材Wに対し、適切に操作して排出口9を開閉することができる。
また、解体材Wを搬出して建物1を解体していく際、まず、扉手段10を閉じた状態で、設定した設定貯留高さHまで下層貯室LSから上層貯室HSに亘って、解体作業施工階FZから投下される解体材Wを積み上げて貯留し、その後、扉手段10を開いて下層貯室LSから崩落する解体材Wを搬出階FAから搬出する搬出作業と、設定貯留高さHが維持されるように解体作業施工階FZから解体材Wを投下する投下作業とを繰り返すので、設定貯留高さHの設定により、解体材Wの落下高さを低くして低騒音・低振動で、かつ常時ほぼ一定量の解体材Wの貯留を確保することによって安全に搬出作業と投下作業を並行して実施できるようにして、円滑かつ確実に効率良く解体材を搬出することができる。
設定貯留高さHは、解体作業施工階FZが下階に移行したときに、低い高さに再設定されるので、搬出しながら投下する作業の繰り返しに対し、解体材Wの落下高さが低くなり過ぎない、すなわち貯留量が搬出量に対して過度にならないようにして、解体と搬出に亘る作業の流れを円滑化することができる。
設定貯留高さHは、積み上げて貯留された解体材Wの天端までの距離を計測する距離計21で計測されるので、簡単な装置構成による天端位置の計測に基づいて、解体と搬出の作業を並行的に適切に実施することができる。
設定貯留高さHは、下層囲い体7、中層囲い体12及び上層囲い体17のうち、少なくともいずれかの囲い体に設けられ、当該囲い体7,12,17の少なくともいずれかに生じる側圧を計測する荷重センサ22で計測されるので、距離計21の場合と同様に、簡単な装置構成で、解体と搬出の作業を並行的に適切に実施することができると共に、囲い体7,12,17に過度の側圧が作用することを未然に防いで、作業安全性を向上することができる。
図10には、図1に示した建物の解体材搬出システムの変形例が示されている。上記実施形態では、囲い体7,12,17の開口部4b,4c,4dに対する平面スペースを広げたり狭めたりする場合について説明したが、開口部4b,4c,4dに対する囲い体7,12,17の寸法を建物1の上下高さ方向に同じにして、チェーン19が囲い体7,12,17の壁材7b,12b,17bの際に垂らされるように配設してもよいことはもちろんである。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
以上の説明では、解体材Wは、解体作業施工階FZから直ちに投下される場合を例示して説明したが、当該解体作業施工階FZ以外の他の階へ移送してから投下する場合であっても、その意味合いは同義である。