JP2018094528A - 水回収装置、水再利用システム及び水回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水回収装置10は、ボイラ12から発生する排ガスGから水蒸気含有ガスG3を収集するイオン交換収集部21aと、排ガスGから水蒸気含有ガスG3が除去された残留ガスG4から水蒸気分圧差に基づき残留水蒸気G5を収集する差圧蒸気収集部21bと、収集された水蒸気含有ガスG3及び残留水蒸気G5の少なくとも一方を凝縮する凝縮部23と、を備える。
【選択図】 図1
Description
プラントの立地条件は周囲生態系への影響をも考慮するとさらに厳しくなり、立地可能な地域は非常に限定的になる。
また、人口増加の著しい新興国や、内陸地域、海生生物の活動が活発で海水取水に困難の伴う熱帯地域等では、給水環境の確保が困難なために工業が困難となっている。
給水が不要になることで、植生の少ない地域や、利用されていない休耕田など周囲環境への影響の小さい立地選定が可能になる。
しかし、化学プラントの反応プロセスに使用される水や、発電所の炉内で使用される水等は、空冷等の代替手段のある冷却用水とは異なり低減が困難であり、一定量の給水は必須となる。
現状では排ガスとともに大気中に排出されているこれらの水蒸気を凝縮してプラントの操業に必要な水を賄うことができる。
例えば、発電所において現状では大気中に排出されている排ガスを冷却し、気体中の水蒸気を水または氷に凝縮して回収する技術が提案されている。
例えば、火力発電では排ガスから50%以上の水蒸気を回収する場合、45℃以上の飽和蒸気を含む排ガスを30℃まで冷却し再加熱する工程を経ることで、必要熱量は発電量の数%になると試算される。
さらに、安定運転のために水蒸気の回収率を90%にする場合、排ガスを5℃まで冷却する必要があり、必要熱量は発電量の10%程度に昇ると試算される。
まず、プラント200が一般的に備えるガス排出機構11について、図11の火力発電所の既存構造を例に説明する。
なお、プラント200は、火力発電所に限定されず、例えばボイラ12の代わりに高炉を有する製鉄所又は燃焼分解炉を有する化学工場などであってもよい。
800℃程度の高温でボイラ12から排出された排ガス(高温排ガス)G1は、まず、微量元素として含まれるNOx及びSOxが除去される。
つまり、高温排ガスG1は、脱硝部13でNOxが除去された後、空気予熱器14でボイラ12に供給される空気を昇温するとともに、自身は125℃程度に降温する。
排ガスGは、脱硝部13では高温であることが必要な一方、電気集塵部17では低温であることが求められる。
一方、脱硫がなされて煙突19から放出される排ガス(低温排ガス)G2は、炭化水素の燃焼などにより水蒸気を多量に含んでいるので、50℃程度では白煙となる。
また、排ガスG2は脱硫部18を経ていても少量のSOXを含有していることがあり、排ガスが50℃程度であると排ガスG2が凝縮し、煙突19などの施設を硫酸腐食する可能性がある。硫酸腐食を回避するためにも、低温排ガスG2は熱交換器16で再加熱されてから排出される。
つまり、本実施形態に係る水回収装置10(図1)は、例えば、脱硫部18又は煙突19に接続されてSOx成分の除去工程までを経た排ガスG2,6から水を回収するものである。
図1は、第1実施形態に係る水回収装置10を含む水再利用システム100の概略構成図である。
また、差圧蒸気収集部21bは、イオン交換収集部21aに直列に接続されて、低温排ガスG2から水蒸気含有ガスG3が除去されて残った残留ガスG4から水蒸気分圧差に基づき残留水蒸気G5を収集する。
以下、適宜、水蒸気含有ガスG3及び残留水蒸気G5を、まとめて「水蒸気G3,5」という。
凝縮部23には、水蒸気G3,5を凝縮するため、加圧により水蒸気G3,5の分圧を高める加圧手段や、空冷などで水蒸気G3,5を冷却する冷却手段などが適宜組み合わされて構成される。
凝縮されて水となった水蒸気G3,5は、他所での再利用までの期間、貯水槽24に貯蔵される。
イオン交換収集部21a及び差圧蒸気収集部21bのいずれも、例えば、排ガス系統26(低温ガス通流系統26a,残留ガス通流系統26b)と、水蒸気収集系統27(水蒸気含有ガス収集系統27a,残留水蒸気収集系統27b)と、で構成される。
つまり、イオン交換収集部21aは、低温排ガスG2を通流させる低温ガス通流系統26aと、水蒸気含有ガス収集系統27aと、で構成される。
イオン交換性膜29aは、後述する図3に示されるように、排ガスGから水蒸気含有ガスG3を選択的に透過させる性質があることがわかっている。
イオン交換性膜29aには、耐薬品性が高く、低温排ガスG2に残留するSOxと水蒸気との反応に起因する硫酸腐食の軽減が期待されるフッ素樹脂性の透過膜が好適に使用される。
そして、イオン交換性中空糸30aの群の一端は、水蒸気含有ガス収集系統27a内部の水蒸気収集空間31に接続される。
つまり、イオン交換性中空糸30aの中空空間もまた、水蒸気収集空間31の一部を形成する。
残留ガス通流系統26b内部の残留ガス通流空間32には、水蒸気を圧力差によって選択的に透過させる差圧分離膜29bを筒状にした中空糸(差圧中空糸)30bの群が同様に配置される。
これらの透過膜は水蒸気透過性が高いことに加え、水蒸気以外の気体成分の透過性が低い。
そのため、差圧分離膜29bで収集した残留水蒸気G5中にはNOx、SOx成分が少なく、凝縮後の水の純度が高くなる。
同様に、差圧中空糸30bの群が残留水蒸気収集系統27b内部の水蒸気収集空間31に接続されることで、差圧中空糸30bの中空空間が、水蒸気収集空間31の一部を形成する。
なお、中空糸30(30a,30b)の中空空間に低温排ガスG2又は残留ガスG4を通流させて、中空糸30外へ水蒸気G3,5を透過させてもよい。
しかし、この乾燥ガスが凝縮部23に流入することで凝縮部23の空気量が増加し、凝集に必要な冷却能力が増加する。
そこで、水蒸気収集系統27(27a,27b)に、乾燥ガスの供給に代えて、真空引きがなされる凝縮部23を接続して、中空糸30(30a,30b)の中空空間を減圧する。
特に、ポリイミド等で構成される差圧分離膜29bは、中空糸30内外の水蒸気分圧差によってのみ残留ガスG4を分離するので、凝縮部23による残留水蒸気収集空間31bの減圧は重要である。
なお、残留水蒸気収集空間31b及び水蒸気含有ガス収集空間31aの減圧には、凝縮部23の利用に代えて、吸引ポンプ(図示せず)などを別個に設置して用いてもよい。
そこで、中空糸30(30a,30b)の長さを、例えば10cm以下に短くして、水蒸気G3,5の中空糸30内の滞留による水蒸気収集機能の低下を防止することが好ましい。
つまり、流動量の少ない中空糸30内の水蒸気G3,5の吸引を、重力を利用して助勢することで、より効率的に水蒸気G3,5を凝縮部23に送ることができる。
水回収として有用な差圧分離膜29bを選定するため、イオン交換性膜29a及び差圧分離膜29bの水蒸気透過性能について評価試験を実施した。
図3のグラフの横軸は模擬排ガス中の水蒸気分圧、縦軸は膜面積1m2あたりの水蒸気透過量である。
本結果から、模擬排ガス中の水蒸気が比較的多い上流側にイオン交換性膜29aを配置すると、効率的に水蒸気を回収することができることがわかる。
また、このように耐硫酸腐食性の高いイオン交換性膜29aを上流側に配置することで、硫酸腐食による劣化も低減することができる。
図4(A)は、低温ガス通流系統26a及び水蒸気含有ガス収集系統27aの1セットを示している。
図4(B)は、図4(A)のセットを4セット直列に接続して構成した多段式のイオン交換収集部21aを示している。
このように配置する場合、イオン交換性中空糸30aと低温排ガスG2との十分な衝突領域を確保する必要がある。
しかし、前述したように、イオン交換性中空糸30aが細長い程、中空空間を減圧することが困難になる。
そこで、イオン交換性中空糸30aを10cm程度以下の短い長さに維持して、十分な衝突領域を確保するため、図4(B)のように、イオン交換性中空糸30aを多段にして直列に配置するのが望ましい。
なお、同様に中空空間の減圧を容易にするため、適宜、イオン交換性中空糸30aの直径をできるだけ大きくしてもよい。
この場合も、差圧中空糸30bと残留ガスG4との十分な衝突領域を確保するため、差圧中空糸30bを多段にして直列に配置するのが望ましい。
図5に示されるように、イオン交換性膜29aに代えて差圧分離膜29bを有する差圧蒸気収集部(第3水蒸気収集部)38を配置して、2つの差圧分離膜29b,29cを直列に配置してもよい。
差圧分離膜29bは、図3に示されるように、8.5kPa以上では、イオン交換性膜29aよりも水蒸気の収集効率が劣るものの、水蒸気を分離することができるからである。
そして、この高温排ガスG1は、空気予熱器14でボイラ12に供給される空気との熱交換により降温されて低温排ガスG2となる。
この低温排ガスG2は、熱交換器16で水蒸気G3,5が回収されて残った放出ガスG6と熱交換した後、脱硫部18でSOxが除去されて、イオン交換収集部21aに流入する。
収集された水蒸気含有ガスG3は、凝縮部23に送られる。
水蒸気含有ガスG3が除去された残留ガスG4は、差圧蒸気収集部21bに送られる。
収集された残留水蒸気G5もまた、凝縮部23へと送られる。
水蒸気G3,5が凝縮して生成された水は、給水用水として貯水槽24で貯蔵され、プラント内の必要箇所で再利用される(S15)。
残留ガスG4のうち残留水蒸気G5を除いた放出ガスG6は、煙突19から排出される(S16:END)。
このとき、放出ガスG6は水蒸気G3,5及び脱硫部18を経ても残留していたSOx成分がさらに低減されている。そのため、熱交換器16で再加熱せずに煙突19から排出されても、硫酸腐食を引き起こす可能性は低く、熱交換器16を不要にすることも可能である。また、白煙の原因である水蒸気G3,5が除去された放出ガスG6は無色煙であるので、白煙を回避する目的においても、従来必要であった熱交換器16を不要にすることができる。
なお、この試算では、排ガスGに含まれる水蒸気量は10%程度とし、水蒸気の比熱の高さを考慮して計算したものである。
つまり、より少ない熱量で効率的に排ガスGから水を回収することができる。
図7は、第2実施形態に係る水回収装置10を含む水再利用システム100の概略構成図である。
これらの不純物によってpHが変化して、回収した水を再利用して用いるプラント100内部の各機器を劣化させる恐れがある。
この硫酸によって、水蒸気G3,5またはこれを凝縮した水の通流経路が腐食する恐れがある。
通常、残留水蒸気G5は、浄化をせずに再利用することができる程度に純度が高いことが多い。
そして、第1凝縮部23aに水浄化部39を接続して、水蒸気含有ガスG3が凝縮された水から、陰イオンなどの不純物を除去する。
水浄化部39で回収されたSOx成分は、元来から脱硫機能を備えている脱硫部18へと還流されるのが望ましい。
図8に示されるように、水回収装置10は、既存の脱硫部18に水蒸気含有ガスG3を還流する還流系統41を備えてもよい。
なお、イオン交換収集部21aに水浄化部39を接続して、イオン交換収集部21aで収集された水蒸気含有ガスG3から不純物を除去してもよい。
図面においても、共通の構成または部能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
また、硫酸の除去により、硫酸腐食の抑制対策としての低温排ガスG2の温度設定に対する制限がなくなり、温度管理機構を小型にすることができる。
図9は、第3実施形態に係る水回収装置10の概略構成図である。
つまり、バイパスライン42は、バイパス弁43を備えて、脱硫部18と例えば熱交換器16とを接続する。
このような排ガスGから水を回収しようとすると、イオン交換性膜29a又は差圧分離膜29bをはじめとする水回収装置10の構成部材を劣化させるおそれがある。
そして、排ガスGの温度が安定したことを確認した後に、排ガスGから水の回収を行う。
図面においても、共通の構成または部能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図10は、第4実施形態に係る水回収装置10の概略構成図である。
また、水回収装置10は、分離膜洗浄部33を備える。
一方、脱硫部18の出口には脱硫処理に利用されるカルシウム化合物の微粉末の飛来がある。
微粉塵の蓄積等によって、分離膜29(29a,29b)に目詰まりが発生して、水回収効率が低下する。
そこで、脱硫部18の後段に水回収装置10を設置する場合、分離膜洗浄部33で分離膜29(29a,29b)等に付着した微粉末を除去する。
内部の圧力とは、例えば、排ガス系統26の圧力と水蒸気収集系統27の圧力との圧力差などである。
分離膜洗浄部33は、図示を省略するが、カルシウム化合物などを除去する薬液、洗い流し用の水、又は洗浄用超音波を発振する発信装置などで構成される。
特に、カルシウム化合物の除去には酸による洗浄が有効である。
この還流水はSOx溶け込みにより酸性となっていることが想定されるため、薬液として好適である。
洗浄のタイミングは、収集部21(21a,21b)の稼働時であっても停止時であってもよい。
なお、監視部47の警告信号に基づいて、作業員が手動で洗浄してもよい。
さらに、この警告信号を、イオン交換性膜29a又は差圧分離膜29bの交換の基準に用いてもよい。
図面においても、共通の構成または部能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
この洗浄によって、分離膜29等の性能低下及び強度劣化を予防することができる。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (12)
- 排ガス発生源から発生する排ガスから水蒸気含有ガスを収集する第1水蒸気収集部と、
前記排ガスから前記水蒸気含有ガスが除去された残留ガスから水蒸気分圧差に基づき残留水蒸気を収集する第2水蒸気収集部と、
収集された前記水蒸気含有ガス及び前記残留水蒸気の少なくとも一方を凝縮する凝縮部と、を備える水回収装置。 - 前記第1水蒸気収集部は、フッ素樹脂で構成されるイオン交換性膜を備える請求項1に記載の水回収装置。
- 前記第2水蒸気収集部は、ポリアミド、ポリイミド及びシリコンゴムの少なくとも1つで構成される差圧分離膜を備える請求項1又は請求項2に記載の水回収装置。
- 前記差圧分離膜で前記残留ガスの通流空間から隔てられて形成される水蒸気収集空間は、前記残留水蒸気の分圧より低い圧力に維持される請求項3に記載の水回収装置。
- 前記第1水蒸気収集部で収集された前記水蒸気含有ガスから不純物を除去する水浄化部を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水回収装置。
- 前記排ガスを脱硫する脱硫部に前記第1水蒸気収集部で収集された前記水蒸気含有ガスを還流する還流系統を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水回収装置。
- 前記イオン交換性膜及び前記差圧分離膜の少なくとも一方は、鉛直方向に沿って中空糸が配置された中空糸群で構成される請求項2又は請求項3に記載の水回収装置。
- 前記第1水蒸気収集部及び前記第2水蒸気収集部の圧力及び透過水蒸気量の少なくともいずれかを監視する監視部を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水回収装置。
- 前記第1水蒸気収集部、前記第2水蒸気収集部及び前記凝縮部をバイパスするバイパスラインを備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の水回収装置。
- 前記第1水蒸気収集部に代えて、排ガス発生源から発生する排ガスから水蒸気分圧差に基づき水蒸気含有ガスを収集する第3水蒸気収集部を備える請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水回収装置。
- 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の水回収装置を前記排ガスを脱硫する脱硫部出口または煙突に接続した水再利用システム。
- 排ガス発生源から発生する排ガスから水蒸気含有ガスを収集するステップと、
前記排ガスから前記水蒸気含有ガスが除去された残留ガスから水蒸気分圧差に基づき残留水蒸気を収集するステップと、
収集された前記水蒸気含有ガス及び前記残留水蒸気の少なくとも一方を凝縮するステップと、を含む水回収方法。
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