「概要」
以下、実施形態に基づいて、本開示の眼科装置を説明する。
<特徴部の検出処理>
眼科装置は、隅角画像から被検眼の隅角における特徴部を検出する。隅角画像は、被検眼の隅角領域からの反射光に基づいて形成(撮像)された反射画像(図1参照)であってもよい。隅角領域は、被検眼の隅角、および、その近傍を含む領域であってもよい。
特徴部は、例えば、線維柱帯であってもよい。また、特徴部として、Schwalbe(シュワルベ)線、強膜岬、毛様体帯、虹彩、等のいずれかが検出されてもよい。また、被検眼が落屑症候群である場合に、Schwalbe線の前方に現れる可能性がある色素沈着線(Sampaolesi線)が、特徴部として検出されてもよい。
特徴部は、隅角画像に対する画像処理によって検出されてもよい。この画像処理は、装置全体の制御動作を司るプロセッサによって実行されてもよいし、そのプロセッサとは別体の画像処理プロセッサによって実行されてもよい。画像処理によって特徴部が検出される場合、特徴部が持つ画像的な特徴を利用して、特徴部の検出が行われる。隅角画像におけるコントラスト、輝度、明暗のパターン、等の各種の画像情報を用いた検出手法の中から、隅角画像および特徴部の画像的な特徴に応じた検出手法が、適宜採用されてもよい。
ここで、隅角画像における特徴部の輝度またはコントラストは、虹彩の色によって、被検眼毎に異なることが考えられる。そこで、例えば、眼科装置は、虹彩の色に応じた検出処理にて、特徴部の検出を行ってもよい。例えば、閾値を用いて特徴部の検出が行われる場合であれば、被検眼の虹彩の色に応じた閾値が設定されてもよい。また、例えば、隅角画像が、3色(例えば、RGBの3色)の色成分を持つカラー画像である場合、被検眼の虹彩の色に応じて、隅角画像におけるRGBのバランスを調整し、調整された画像から特徴部検出を行ってもよいし、RGBの各成分のうち、虹彩の色に応じたいずれかを選択し、選択した成分の画像から特徴部検出を行ってもよい。
この場合、被検眼における虹彩の色は、隅角画像がカラー画像である場合、隅角画像から自動的に検出されることで、装置が取得してもよい。また、眼科装置の入力インターフェイスに対する操作によって、虹彩の色が装置に入力されてもよい。また、被検者の電子カルテ等に予め登録されたデータとして、虹彩の色が取得されてもよい。
隅角画像における特徴部の検出結果は、例えば、眼科装置における撮影条件を調整するために利用されてもよい。また、例えば、隅角画像から検者が所見を得るうえでの参考情報を得るために、特徴部の検出結果は利用されてもよい。勿論、その他の用途に、隅角画像における特徴部の検出結果は利用されてもよい。
<撮影光学系>
眼科装置は、隅角画像を撮像するために、撮影光学系を有していてもよい。
撮影光学系は、撮影光軸に沿って、隅角領域への光の投光、および、隅角領域からの戻り光の受光を行う。
撮影光学系は、隅角の表面組織における撮影範囲の全体に対して光を照射し、撮影範囲からの戻り光を受光素子によって受光する構成であってもよい。この場合、受光素子は、二次元受光素子であってもよい。二次元受光素子は、受光面に結像される隅角の像を、隅角画像として撮像する。但し、撮影光学系は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、撮影光学系は、ラインスキャン、または、二次元スキャンタイプの光学系であってもよい。この場合、撮影範囲に対して光をスキャン(ラインスキャンまたは二次元スキャン)することにより、スキャン毎の戻り光の受光結果として、隅角画像が画像処理部によって生成される。
撮影光学系は、投光光学系と、受光光学系と、を少なくとも有する。投光光学系は、被検眼の隅角領域へ、光を投光する。投光光学系から投光される光は、可視光であってもよいし、不可視光(例えば、赤外光)であってもよい。また、単色光であってもよいし、多色の光であってもよい。受光光学系は、隅角領域からの反射光を受光する受光素子を、少なくとも有する。
撮影光学系は、固視光軸に対して、傾斜し、且つ、隅角領域へ向かう、撮影光軸を有してもよい。この撮影光軸を介して、隅角領域に対する光が投受光される。固視光軸は、例えば、被検眼に対する固視標の投影光軸である。固視標が投影される場合、眼科装置は、固視標を投影するための固視光学系を、更に有していてもよい。
撮影光学系には、次のような対物光学系が設けられていてもよい。即ち、光源からの光を折り曲げることにより、撮影光軸を固視光軸に対して傾斜させて被検眼の隅角領域に導く、対物光学系が設けられていてもよい。撮影光学系における対物光学系は、反射系であってもよい。つまり、対物光学系には、ミラー、または、プリズム等の光を反射する部材が含まれていてもよい。対物光学系は、撮影光学系において、最も被検眼側に配置されてもよい。対物光学系によって、光源からの光であって装置の内部から外部に向かう光が、固視光軸に向けて折り曲げられる(例えば、反射される)。これによって、固視光軸に対して傾斜した撮影光軸が形成されてもよい。なお、対物光学系は、必ずしも反射系に限定されるものではなく、一部、または、全体が、屈折系(例えば、レンズ系)によって形成されていてもよい。
<撮像処理部>
撮像処理部は、受光素子から出力される信号に基づいて、隅角画像を生成する。撮像処理部としては、例えば、眼科装置の動作を司るプロセッサが利用されてもよいし、専用の画像処理ICが利用されてもよい。なお、画像処理ICは、受光素子と一体化されていてもよい。
撮像処理部は、隅角画像を、静止画像として、少なくとも生成する。撮像処理部によって生成された隅角画像は、モニタへ表示されてもよいし、不揮発性のメモリに記憶されてもよい。また、撮像処理部は、受光素子から逐次出力される信号に基づいて、時系列に撮像された隅角画像を生成してもよい。この場合、時系列に撮像された隅角画像は、例えば、ライブ画像(リアルタイムな動画像)として、モニタへ表示されてもよい。時系列に撮像された隅角画像は、検者による隅角領域の観察の他、後述のフォーカス調整、および、アライメント調整の少なくともいずれかに利用されてもよい。
<隅角画像の撮像位置の切換>
眼科装置は、隅角の全周に対する撮影光学系における撮像位置を変位させる切換部を、更に有してもよい。切換部が設けられていることで、隅角の全周における複数の撮像位置にて、隅角画像を撮影することができる。
撮影光軸が固視光軸に対して傾斜している場合、切換部は、例えば、撮影光軸を、固視光軸周りに回転させるユニットであってもよい。切換部は、撮影光学系の一部、または、全体を、固視光軸の周りに回転させることで、撮影光軸を固視光軸周りに回転させてもよい。この場合、切換部は、モーターなどの駆動源を有していてもよい。
なお、切換部は必ずしもこれに限られるものでない。例えば、固視光軸に対して傾斜された撮影光軸を固視光軸周りに回転させるのではなく、切換部は、被検眼の視線の向きが大きく変位されるように、固視を誘導する構成であってもよいし、被検眼と装置との3次元的な位置関係を調整する構成であってもよいし、これらを組み合わせた構成であってもよい。
<フォーカス変更部>
眼科装置は、フォーカス変更部を、更に有していてもよい。フォーカス変更部は、撮影光学系の一部を駆動して、受光素子における反射光のフォーカス状態を変化させる。フォーカス変更部は、撮影光学系の光路中に配置された光学部材(つまり、撮影光学系の一部)を変位させることによって、隅角領域の共役面の位置を光路に沿って変位させる。フォーカス変更部において変位される光学部材は、例えば、フォーカスレンズであってもよいし、可変焦点レンズ(例えば、液晶レンズ、液体レンズ等)であってもよいし、その他の光学部材であってもよい。なお、フォーカス状態は、手動で調整されてもよいし、制御部によって自動的に調整されてもよい。
<フォーカスに関する動作>
眼科装置は、フォーカス状態の評価情報を、隅角画像の画像情報に基づいて得る画像処理部を有していてもよい。隅角画像の画像情報は、隅角画像の一部または全体についての画像情報であってもよい。隅角画像において、フォーカス状態の評価情報を得るために処理される領域は、撮影光学系の被写界深度が許容する範囲で、適宜設定可能である。例えば、隅角表面に高低差があっても、被写界深度が大きなほど、処理される領域は広く設定可能となる。
ここで、画像情報は、画素毎の輝度情報を含む情報であってもよい。画像処理部によって取得されるフォーカス状態の評価情報は、例えば、コントラスト、ヒストグラム、微分ヒストグラム、画像エッジ強度、等であってもよい。例えば、ある領域における、コントラストが高いほど、当該領域に対し、ピントが合っている状態となる。なお、一定領域における画像情報から、上記の評価情報を得る手法には、種々の画像処理手法が知られており、それらのいずれかが適用されてもよい。
以下では、隅角画像の一部に基づいてフォーカス状態の評価情報を得る手法の一例として、隅角画像の特徴部に関する画像情報に基づいてフォーカス状態の評価情報を得る手法を説明する。特徴部に関する画像情報には、特徴部の近傍領域の画像情報が含まれてもよい。
隅角画像に含まれる隅角の特徴部(線維柱帯、Schwalbe線、強膜岬、毛様体帯、虹彩、色素沈着線等)は、隅角に関する所見を得るうえで有用な観察対象である。そこで、評価情報を利用して、特徴部に合焦された隅角画像を取得する手法を、以下に例示する。
<評価情報に基づくフォーカス変更部の駆動制御>
眼科装置は、画像処理部によって取得されたフォーカス状態の評価情報に基づいて、フォーカス変更部を駆動する制御部を、更に有してもよい。この場合、制御部は、特徴部に対して合焦されるように、フォーカス変更部を駆動させてもよい。以下に駆動制御の一例を示す。制御部は、フォーカス変更部を駆動してフォーカス状態を変化させると共に、フォーカス状態が変化する間に撮像された、複数の隅角画像における評価情報の差分から、特徴部への合焦に近づく方向へフォーカス状態が変化されているか、それとも、合焦から遠ざかる方向へフォーカス状態が変化されているかを、判定する。合焦から遠ざかる方向へフォーカス状態が変化されている場合は、合焦に近づく方向へフォーカス状態が変化されるよう、フォーカス変更部の駆動制御を切換る。そして、合焦に近づく方向へフォーカス変更部を駆動させていき、合焦から遠ざかる方向へフォーカス状態が変化されるようになったところ(評価情報の差分の変曲点)で、フォーカス変更部の駆動制御を停止する。これにより、撮影光学系が、特徴部に対して合焦される。但し、特徴部との合焦を得るためのフォーカス変更部の駆動は、必ずしもこれに限られるものではない。
特徴部に対する合焦が得られた状態で、改めて、隅角画像の静止画が撮影されてもよい。その際得られた隅角画像は、所見を得るために利用される画像(撮影画像)として、不揮発性のメモリへ記憶されてもよい。眼科装置は、このようなフォーカス調整を実行することによって、特徴部に対する合焦が得られた隅角画像を撮影してもよい。
このように、眼科装置が切換部を有し、隅角の全周に対する撮影光学系における撮像位置が切換部によって変位可能である場合、眼科装置の制御部は、切換部によって撮像位置を切換え、更に、互いに異なる複数の撮像位置において、フォーカス状態を制御してもよい。
<複数の隅角画像から特徴部に対して合焦された画像の抽出>
特徴部に対する合焦が得られた隅角画像の取得は、評価情報に基づくフォーカス変更部の駆動制御とは、異なる手段によって実現されてもよい。
例えば、事前に撮像された複数枚の隅角画像であって、互いにフォーカス状態が異なる隅角画像の中から、特徴部に対する合焦が得られた隅角画像を選択(抽出)する手法が利用されてもよい。画像処理部は、フォーカス状態が異なる複数枚の隅角画像の各々から、フォーカス状態の評価情報を取得する。そして、眼科装置における選択部が、複数枚の隅角画像の中から、特徴部に対して合焦された隅角画像を、各々の隅角画像の評価情報に基づいて選択する。この場合、選択部は、例えば、画像処理部、または、眼科装置の動作を司るプロセッサのいずれかによって兼用されてもよい。
互いにフォーカス状態が異なる複数枚の隅角画像は、撮像位置毎に取得されてもよい。この場合、切換部によって撮像位置を切換え、更に、互いに異なる複数の撮像位置において、フォーカス状態を制御した結果として、各撮像位置で隅角画像が取得される。
<手動でのフォーカス状態の調整>
また、撮影光学系におけるフォーカス状態は、隅角画像から得られたフォーカス状態の評価情報に基づいて、検者によって手動で調整されてもよい。
この場合、例えば、隅角画像のライブ画像と共に、その隅角画像の特徴部についてのフォーカス状態の評価情報が、モニタ上に表示される。また、フォーカス変更部におけるフォーカス状態の調整量を、入力インターフェイスに対する操作に基づいて、任意の調整量に設定可能となっている。この場合において、評価情報は、モニタ上の特徴部と、対応づけて表示されてもよい。検者は、モニタ上の評価情報を参考にして、フォーカス変更部に対する操作を行うことで、特徴部に対して合焦が得られた状態へ、適正に調整できる。
<アライメント駆動部>
眼科装置は、更に、アライメント駆動部を有していてもよい。アライメント駆動部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を変更する。この場合、被検眼と撮影光学系とを相対的に移動させることによって、アライメント調整を行う。アライメント駆動部は、前後方向、左右方向、および、上下方向のいずれの方向に関する位置関係を変更してもよい。
例えば、アライメント駆動部は、撮影光学系を被検眼に対して移動させるユニットであってもよい。アライメント駆動部は、メカニカルな機構であってもよいし、電動アクチュエータにより撮影光学系を移動させる機構であってもよいし、両者を含む機構であってもよい。アライメント駆動部は、例えば、操作部(例えば、ジョイスティック等)の操作に応じて手動で駆動されてもよいし、例えば、隅角画像に基づいて自動的に駆動されてもよい。
<アライメントに関する動作>
眼科装置は、隅角画像から被検眼の隅角における特徴部を検出し、被検眼と撮影光学系との位置関係を、隅角画像における特徴部の位置に応じて調整させる制御部(アライメント制御部)を、更に有していてもよい。つまり、制御部は、隅角における特徴部を基準として、撮像位置を調整させてもよい。
制御部は、アライメント駆動部を駆動制御することにより、アライメント駆動部に、被検眼と撮影光学系との位置関係を変更させてもよい。また、制御部は、操作部の操作を案内する情報を、モニタ等へ出力することによって、被検眼と撮影光学系との位置関係を手動で変更させてもよい。
まず、アライメント駆動部の駆動制御によって、装置がアライメントを自動的に行う手法を説明する。この場合、制御部は、例えば、隅角画像において予め定められた目標位置と、隅角画像から検出された特徴部の位置と、のズレ量(変位量)を求め、ズレ量に基づいて、アライメント駆動部を駆動してもよい。
ここで、一例として、撮影光学系が次のような撮影光軸を有し、更に、撮像処理部によって隅角の反射画像が生成される場合における動作手法を示す。この場合における撮影光軸は、固視光軸に対して傾斜し、且つ、隅角領域へ向かっている。
制御部は、隅角画像における特徴部の位置であって、固視光軸L1を中心とする半径方向に関する位置に応じて、アライメント駆動部を駆動制御し、これにより、被検眼と撮影光学系との位置関係を調整する。例えば、特徴部と目標位置との半径方向に関するズレ量に基づいて、アライメント駆動部が駆動される。より具体的には、特徴部と目標位置との半径方向に関するズレ量が解消されるような駆動量にて、アライメント駆動部が、制御部によって駆動される。ここで、被検眼と撮影光学系との位置関係が、前後方向に変化した場合、および、半径方向に変化した場合、のそれぞれの場合で、隅角画像における特徴部の半径方向に関する位置は変化する。故に、制御部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を、前後方向、および、半径方向の一方または両方に関して調整する。
また、更に、撮像位置の切換部を駆動することで、固視光軸に対して対称な2つの撮像位置にて2枚の隅角画像が撮像可能である場合、その2枚の隅角画像における特徴部が、半径方向に関して同じ位置に配置されるように、被検眼と撮影光学系との位置関係を、制御部は制御してもよい。このとき、制御部は、被検眼と撮影光学系との位置関係を、2枚の隅角画像における半径方向に関して、少なくとも調整することによって、その2枚の隅角画像における特徴部を、半径方向に関して同じ位置に配置させ得る。
この2枚の隅角画像(第1,第2の隅角画像)を撮影した撮像位置とは別の撮像位置であって、固視光軸に対して対称な2つの撮像位置にて、更に2枚の隅角画像(第3,第4の隅角画像)を撮像し、被検眼と撮影光学系との位置関係を、同様に調整してもよい。このようなアライメント調整の結果として、例えば、切換部の駆動により撮像位置を変更した場合に、各撮像位置で特徴部が良好に撮像されるようになる。
更に、作動距離方向(前後方向、固視光軸に沿う方向)に関して、被検眼と撮影光学系との位置関係が調整されてもよい。例えば、第1,第2の隅角画像における特徴部の半径方向に関する位置と、第3,第4の隅角画像における特徴部の半径方向に関する位置と、の両者のうちいずれかが、前述の目標位置に配置されるように、作動距離方向に関する位置関係が調整されてもよい。また、例えば、両者の位置の中間(例えば、平均の位置)が、前述の目標位置に配置されるように、作動距離方向に関する位置関係が調整されてもよい。
<手動でのアライメント調整>
また、被検眼に対する撮影光学系のアライメントは、隅角画像おける特徴部の位置に基づいて、検者によって手動で調整されてもよい。この場合、検者によって操作部が操作されることにより、被検眼と撮影光学系との位置関係が、操作に応じて調整される。また、制御部(アライメント制御部)は、隅角画像における特徴部の位置に基づいて、操作部の操作を案内する情報(案内情報と称す)を出力する。案内情報は、例えば、撮影光学系を移動させるべき方向を案内する情報であってもよく、例えば、矢印等のグラフィック、または、「上」「下」等のテキストとして、モニタへ表示されてもよい。勿論、案内情報は、モニタへ出力される情報に限られるものでなく、音声であってもよいし、眼科装置に設けられた他の出力デバイスからの出力情報であってもよい。
<自動的なアライメント調整と、手動でのアライメント調整の組合せ>
上下左右方向および作動距離方向のアライメント調整のうち、上下左右方向については、制御部によって自動的に行われ、作動距離方向については検者の操作に基づいて手動で行われてもよい。これにより、検者の意に反して、装置が被検眼に接近しすぎてしまうことが軽減される。この場合、制御部80は、特徴部の位置に基づいてアライメント駆動部を駆動することで、上下左右方向のアライメント調整を行うと共に、手動による作動距離方向のアライメントに関する操作を案内する、案内情報を出力してもよい。
「実施例」
以下、図面を参照して、本開示に係る眼科装置の実施例を示す。実施例に係る眼科装置1は、隅角撮影装置である。眼科装置1は、被検眼の隅角の反射画像(図1参照)を撮影する。
<装置構成>
図2を参照して、眼科装置1における概略的な装置構成を説明する。なお、以下の説明では、図2に示すX方向を左右方向、Y方向を上下方向、Z方向を前後方向として説明する。
眼科装置1は、被検眼Eの視軸に対して、斜め方向に照明光を照射する。そして、眼科装置1は、撮影光軸に沿って、隅角領域からの反射光の受光を行い、これにより、被検眼の隅角領域における反射画像を、隅角画像として撮像する。
図1に示すように、眼科装置1は、基台3、アライメント機構4,5a,5b、顔支持ユニット6、ジョイスティック7、モニタ8、および、光学ユニット10等、を有する。
光学ユニット10は、隅角の反射像の撮影に利用される主要な光学系を有する。光学系の詳細は、図3を参照して後述する。実施例において、光学ユニット10は、カバー10a内に収容される。但し、先端部11については、カバー10aの外に露出される。
基台3は、アライメント機構4,5a,5b、および、顔支持ユニット6を、支持する。
本実施例におけるアライメント機構4,5a,5bは、移動台4と、XYZ駆動部5a,5bとに大別される。このうち、移動台4は、メカニカルな機構によって作動され、XYZ駆動部5a,5bは、電動式のアクチュエータによって作動される。
移動台4は、基台3の上に配置され、基台3との間に、メカニカルな移動機構を有する。この移動機構は、XZ方向に移動台4を移動させ、その結果、XZ方向に関する被検眼Eと光学ユニット10との位置関係を調整する。検者は、ジョイスティック7を操作することによって、移動台4を基台3に対して移動させる。
本実施例におけるXYZ駆動部5a,5bは、移動台4の上に更に積載されている。XYZ駆動部5a,5bは、眼科装置1の制御部80(図4参照)からの制御信号に基づいて、光学ユニット10をXYZの各方向に移動させる。結果、XYZの各方向に関して、被検眼Eと光学ユニット10との位置関係が調整される。
モニタ8は、検者側の筐体側面に配置されている。モニタ8は、光学ユニット10を介して撮影された隅角画像を表示する表示部であってもよい。
<光学系>
次に、図3を参照して、光学ユニット10に設けられた光学系を説明する。光学ユニット10は、撮影光学系30を少なくとも有している。また、本実施例では、更に、固視光学系70を有している。
便宜上、まず、固視光学系70を説明する。固視光学系70は、少なくとも、固視光源(固視標)71を、有する。また、図3において、固視光学系70は、更に、アパーチャ72、レンズ73、および、ミラー74、を有する。光源71から出射された光は、アパーチャ72を介して、レンズ73を通過することで、所定の光束径でコリメートされる。コリメートされた光が、ミラー74によって折り曲げられて、被検眼Eに対して投影される。図3では、固視光学系70の光軸(より詳細には、固視光学系70の光軸のうち、ミラー74から被検眼Eまでの範囲)を、L1の符号で表す。また、L1を、固視光軸と称する。図3に示す撮影光学系30の各部材は、固視光軸を基準として配置されている。
撮影光学系30は、投光光学系40と、受光光学系60と、を有する。また、撮影光学系30は、撮影光軸L2を有する。撮影光軸L2は、固視光軸L1に対して傾斜配置され、且つ、被検眼Eの隅角へ向かう。
投光光学系40は、対物反射部50と、光偏心部48と、を、少なくとも有する。また、実施例において、投光光学系40は、光源41、レンズ42、アパーチャ43、レンズ44、ミラー45、リングアパーチャ46、穴開きミラー47、レンズ49、を、有している。
光源41は、隅角に照射される照明光の光源である。本実施例において、光源41は、可視光を出射する。以下の説明では、隅角画像をカラー画像として得るために、波長域が異なる複数色の光(例えば、白色光)を、少なくとも出射可能であるものとする。
光源41からの光(照明光)は、レンズ42、アパーチャ43、レンズ44、ミラー45、リングアパーチャ46、および、穴開きミラー47、を経由して、光偏心部48に入射される。
ここで、リングアパーチャ46は、撮影光学系30の内部での反射による迷光を抑制するために設けられている。例えば、レンズ48c,レンズ49等の光源41側の表面による反射が、リングアパーチャ46によって抑制される。
また、穴開きミラー47は、投光光学系40と、受光光学系60との光路を分岐させる光路分岐部の一例である。穴開きミラー47に代えて、ハーフミラー等の他のビームスプリッタが適用されてもよい。本実施例では、光源41からの光は、穴開きミラー47の鏡面によって、光偏心部48に向かうように反射される。
なお、本実施例では、穴開きミラー47で反射された照明光の光路中心が、固視光軸L1と同軸となっている。
光偏心部48は、照明光の光路を、固視光軸L1に対して偏心させる。本実施例では、平行に配置された2枚のミラー48a,48bを用いて照明光の光路中心を、固視光軸L1に対して所定間隔だけ、シフトする。シフトされた照明光は、レンズ48cを通過して、光偏心部48から外に照射される。
レンズ49、および、対物反射部50は、それぞれの光軸が、光偏心部48によって偏心された照明光の光路中心から離れた位置に配置されている。本実施例において、レンズ49、および、対物反射部50における、それぞれの光軸は、固視光軸L1と同軸に配置されている。
レンズ49は、マイナスパワーを持つレンズであり、光偏心部49から、固視光軸L1と略平行に出射される照明光を、固視光軸L1から離れる向きに折り曲げて、対物反射部50に入射させる。
対物反射部50は、照明光を、固視光軸L1側に折り曲げる反射面を持つ。反射面によって反射された照明光の光軸を、固視光軸L1に対して大きく傾斜するように折り曲げて、装置外部に導く。このとき、装置外部へ導かれる光軸が、本実施例における撮影光軸L2として利用される。装置からの照明光は、撮影光軸L2に沿って、被検眼Eの隅角領域へ照射される。
本実施例において、対物反射部50には、複数枚の反射面が、光軸周りに並べられて配置されている。対物反射部50の具体例として、本実施例では、例えば、正多角形を底面に持つ、錐台形状のプリズムが利用されるものとする。より詳細には、底面は、正16角形であり、16枚の側面を有するプリズムが利用される。本実施形態では、被検眼Eからみて、0°、22.5°、45°、67.5°、90°・・・(中略)…337.5°の各方向に、固視光軸L1に向けられた反射面が配置されている。なお、各々の角度は、固視光軸L1を基準とした角度である。また、説明の便宜上、0°は、水平面上とする。
但し、反射面は、複数枚に分かれている必要は、必ずしもなく、一連の曲面で形成されていてもよい。また、対物反射部50は、必ずしもプリズムである必要はなく、例えば、反射鏡であってもよい。反射鏡の場合、光軸側に反射面を持つ、筒状の多面鏡または曲面鏡であってもよい。
ここで、本実施例の眼科装置1は、光偏心部48を、固視光軸L1の周りに回転させる駆動部48d(図4参照)を有する。光偏心部48の回転に応じて、レンズ49および対物反射部50に対する照明光の入射位置が、固視光軸L1の周りに回転される。その結果、撮影光軸L2が固視光軸L1の周りに回転され、結果として、隅角の全周における照明光の照射位置が、変位される。
本実施例では、対物反射部50(プリズム)と、角膜と、の間に、ジェルGが介在される。ジェルGは、照明光の角膜反射を抑制するために、角膜へ塗布等される。なお、ジェルGは、図示なき保持容器に充填された状態で、角膜および対物反射部50の先端の両方に、接していてもよい(詳細は、本出願人による「特開2002−17680号公報」等を参照)。
投光光学系40が照射した照明光は、隅角領域で反射され、撮影光軸L2を辿って装置内部の受光光学系60へ導かれる。
本実施例において、受光光学系60は、撮像素子(受光素子の一例)62を、少なくとも有する。また、受光光学系60は、対物反射部50、および、穴開きミラー(ビームスプリッタ)47を、投光光学系40と少なくとも共用する。更に、光偏心部48、レンズ49、等を、を投光光学系40と共用していてもよい。また、受光光学系60は、フォーカスレンズ61を有する。フォーカスレンズ61は、本実施例の撮影光学系30におけるフォーカス変更部の一部である。フォーカスレンズ61を光軸に沿って移動させる駆動部61aが、眼科装置1には設けられている。駆動部61aは、例えば直動アクチュエータを含んでいてもよい。
隅角領域からの反射光は、対物反射部50、レンズ49、および、光偏心部48を介して、穴開きミラー47へ照射される。その後、反射光は、穴開きミラー47の開口、および、フォーカスレンズ61、をそれぞれ通過して、撮像素子62において結像される。結果、隅角の全周において照明光が照射された部位を撮像位置とする、隅角画像が、撮像素子62からの受光信号に基づいて得られる。
また、光偏心部48を回転させ、撮影光軸L2を固視光軸L1の周りに回転させることにより、隅角の全周における撮像位置を切換えることができる。前述したように、本実施例では、対物反射部50が、16枚の反射面を有するので、隅角の全周を16分割してその各々を、選択的に撮像できる。
<制御系>
次に、図4を参照して、眼科装置1の制御系を説明する。眼科装置1は、制御部(プロセッサ)80を備える。制御部80によって、装置全体の制御処理および各種演算処理が実行される。
制御部80は、CPU、ROM、RAM等を含んでいてもよい。RAMには、例えば、撮影および測定に用いる一時データが格納される。
制御部80は、例えば、バス等を介して、アライメント機構5a,5b、モニタ8、光源41、駆動部48d、駆動部61a、受光素子62、光源71、記憶装置81、操作部85、等と接続される。
記憶装置81は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。記憶装置81としては、ハードディスク、フラッシュメモリ、USBメモリ等の種々の記憶装置が適用可能である。また、記憶装置81には、例えば、眼科装置1に撮影動作等の各種動作を実行させるためのプログラムが、少なくとも格納されていてもよい。
眼科装置1によって撮像される隅角画像は、記憶装置81に保存されてもよい。また、モニタ8において表示されてもよい。
操作部85は、眼科装置1における入力インターフェイスである。操作部85が検者によって操作されることによって、操作に応じた指示が、制御部80に入力される。操作部85としては、例えば、マウス、および、タッチパネル等のポインティングデバイスであってもよいし、キーボードであってもよい。また、眼科装置1において、アライメントのために操作されるジョイスティック7が、操作部85の1つとして利用されてもよい。
<動作説明>
以上のような構成を持つ、眼科装置1における隅角画像の撮影動作を、図5のフローチャートを参照して説明する。
撮影に際し、まず、制御部80は、光源71を点灯し、固視標の投影を開始する(S1)。これにより、被検眼Eの視線が誘導される。
そして、検者は、ジョイスティック7等を操作して、対物反射部50の先端が、被検眼Eの角膜から数ミリ程度の距離となるように、撮影光学系30を被検眼Eへと接近させる(第1のアライメント(S2))。その際、併せて、被検眼Eと対物反射部50との間に、ジェルGを介在させる。
第1のアライメントが完了した後、第2のアライメントが実行される(S3)。例えば、第1のアライメント完了を、装置が自動で検出して、第2のアライメントが開始してもよいし、操作部85に対する所定の操作の入力をトリガとして、第2のアライメントが開始されてもよい。
ここで、第1のアライメント完了を、自動的に検出する場合の一例を示す。例えば、制御部80は、予め定められた複数の撮像位置で隅角画像を、検者によってジョイスティック7等が操作される間、繰り返し撮像する。そして、各々の隅角画像を処理して、その隅角画像において隅角の特徴部が含まれているか否かを検出する。より詳細には、各々の隅角画像の中に、隅角の特徴部を示す画像的な特徴が含まれているか否かを確認する。各撮像位置での隅角画像において隅角の特徴部が検出される場合に、第1のアライメントを完了してもよい。第1のアライメント完了を判定する際に利用される特徴部は、後述の第2のアライメントに利用される特徴部と同一であってもよい。
第2のアライメントでは、隅角全周の中心に、対物反射部50の光軸が略合致するように、被検眼Eと撮影光学系30との位置関係が調整される。より詳細には、光偏心部48の回転によって互いに異なる撮像位置で隅角画像を得た際に、それぞれの隅角画像において所定の特徴部が良好に含まれるように、調整が行われる。
ここで、図6〜図8を参照して、第2のアライメントの詳細を説明する。
まず、光偏心部48を回転させ、所定の撮像位置における隅角画像を撮影する(S11)。制御部80は、光偏心部48を、0°の位置から、1/4周分ずつ(つまり、90°ずつ)回転させる。つまり、1/4周分の回転毎に、回転を一時停止させる。
また、1/4周分の回転毎に投光光学系40から照明光を照射して、隅角画像を撮像する。隅角画像の撮像は、回転が停止している間に行われてもよい。
その結果、光偏心部48が1周回転される毎に、隅角の全周における0°、90°、180°、270°の位置を撮影部位とする隅角画像が、少なくとも1枚ずつ得られる。アライメントの間、制御部80は、光偏心部48を繰り返し回転させると共に、隅角画像の撮像を繰り返す。
このとき、図7に示すように、各位置で撮影された隅角画像は、同時にモニタ8上に表示させる表示制御が行われてもよい。この場合、それぞれの隅角画像は、時系列に切換えられて表示されてもよい。これにより、アライメント状態を、検者が把握できる。
図7において、モニタ8上に表示される各隅角画像の位置関係は、各々の隅角画像の間における撮影部位の位置関係と対応している。つまり、本実施例では、0°、90°、180°、270°を撮影部位とする、4枚の隅角画像のそれぞれが、モニタ上の1点と基準として、0°、90°、180°、270°の位置に表示される。
また、本実施例では、X,Y,Zの各方向におけるアライメント目標位置に対するズレが制御部80によって検出される。そして、検出されたズレ(つまり、アライメント状態)を表す指標等(符号100,101,110,111で示す)が、各部位の隅角画像と共に(同時に)表示される。このような指標が表示されることで、検者においてアライメント状態を把握が、いっそう容易になる。指標等の詳細については、後述する。また、本実施例は、指標等によって示されるアライメント状態は、X,Y,Zの各方向についてであるが、必ずしもこれに限られるものではない。一部のアライメント状態だけが上記のような指標によって示されてもよい。
随時撮影される撮影部位毎の隅角画像から、制御部80は、特徴部を検出する(S12)。そして、検出された特徴部の位置に応じて、アライメント機構5a,5bを駆動制御する(S13)。以下、本実施例では、特徴部として、線維柱帯が検出されるものとする。
ここで、図8を参照して、隅角画像から線維柱帯を検出する手法の一例を示す。制御部80は、線維柱帯を、隅角画像における輝度情報を利用して検出する。
図8に示す隅角画像において、矢印Aの方向が、固視光軸L1を中心とする半径方向を示している。隅角画像は、矢印A方向に沿って、撮像された部位の違いに応じた輝度の変化を持っている。
線維柱帯は、虹彩と角膜の間にある。角膜の方が虹彩に比べ、可視光を反射しやすいので、隅角画像において矢印A方向に沿う各画素列には、線維柱帯の近傍に、大きな輝度の変化が確認される。
そこで、隅角画像から、矢印A方向に沿う画素列を、1本以上抽出し、抽出した画素列における輝度情報に基づいて、矢印A方向に関する線維柱帯の位置を検出する。1枚の隅角画像から、画素列は、複数本抽出されることが好ましい。この場合、抽出さえる画素列のそれぞれは、抽出される他の画素列に対して離れた位置にある(つまり、固視光軸L2を中心とする回転方向(矢印Aと交差する方向)に関して離れた入りにある)ことが好ましい。
この場合、抽出した画素列において、矢印A方向に関する輝度の微分(差分)情報を求め、所定の輝度変化が微分(差分)情報に基づいて検出される位置を、線維柱帯の位置として検出してもよい。
ある画素についての微分(差分)情報は、そのある画素と、そのある画素から、矢印A方向に関する位置が一定量異なる画素と、の輝度差(コントラスト)を算出することで得られる。例えば、隣接画素間の輝度差が算出されてもよい。輝度差の算出を、画素列内の他の画素についても行うことで、1つの画素列における輝度の微分(差分)情報が得られる。
例えば、画素列における微分(差分)情報を、矢印A方向に沿って(固視光軸L1側から遠位側へ)見たときに、予め定められた閾値以上の微分(差分)情報を持つ位置が、線維柱帯の位置として、検出してもよい。また、例えば、微分情報を更に微分して輝度情報の変曲点を求め、矢印A方向に沿って見たときに最初に現れる変曲点を線維柱帯の位置として検出してもよい。
なお、線維柱帯の位置での輝度変化は、被検者の虹彩の色に応じて異なる。そこで、例えば、閾値に基づいて線維柱帯の位置を検出する場合、閾値が被検者の虹彩の色に応じて変更可能であってもよい。
複数の抽出画素列において線維柱帯の位置を検出することで、隅角画像における線維柱帯の位置を適正に検出できる。なお、ある画素列において検出された線維柱帯の位置が、他の画素列における線維柱帯の検出位置から大きく異なっている場合は、その画素列に関しては、誤検出の可能性があるので、その画素列の検出結果については無視し、他の画素列の検出結果に基づいて、隅角画像全体における線維柱帯の位置を特定(検出)してもよい。
図6,図7に戻って、アライメント機構5a,5bの駆動制御に関する説明を続ける。
まず、XY方向のアライメントについて説明する。
例えば、0°、90°、180°、270°の位置を撮影部位とする4枚の隅角画像が得られた場合、4枚のうち、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像に基づいて、制御部80は、X方向(水平方向)のアライメントを行う。より詳細には、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像の間で、線維柱帯の半径方向(この場合、水平方向)に関する位置が略同じ(略対称)となるように、制御部80は、アライメント機構5a,5bを駆動させる。これにより、被検眼Eと撮影光学系30とのX方向(水平方向)に関する位置関係が調整される。
また、制御部80は、4枚のうち、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像に基づいて、Y方向(上下方向)のアライメントを行う。より詳細には、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像の間で、線維柱帯の半径方向(この場合、垂直方向)に関する位置が略同じ(略対称)となるように、制御部80は、アライメント機構5a,5bを駆動させる。これにより、被検眼Eと撮影光学系30とのY方向(垂直方向)に関する位置関係が調整される。
次に、Z方向のアライメントについて説明する。
例えば、作動距離(被検眼Eと対物反射部50との距離)が近いほど、線維柱帯は隅角画像において固視光軸L1に対する遠位側に生じ、作動距離が遠いほど、隅角画像において固視光軸L1側に生じる。
そこで、例えば、XY方向に関するアライメント後、固視光軸L1に対して対称な撮像位置で撮像された2枚の隅角画像において、各々の隅角画像における線維柱帯が、隅角画像において予め定められた目標位置にあるか否かを判定する。この場合、目標位置は、隅角画像の中ほどに設定されていることが好ましい。
そして、線維柱帯が目標位置よりも固視光軸L1側にあると判定される場合は、被検眼Eへ撮影光学系30が近付く方向に、アライメント機構5aをZ方向に関して駆動させる。一方、線維柱帯が目標位置よりも固視光軸L1に対する遠位側にあると判定される場合は、被検眼Eから撮影光学系30が遠ざかる方向に、アライメント機構5aをZ方向に関して駆動させる。これらの各場合において、XY方向に関しても適宜アライメント機構5aの駆動制御が実行されてもよい。
但し、隅角の全周は必ずしも円形ではなく、非円形になっている場合が考えられる。このため、例えば、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像に基づいて、Z方向のアライメントが適正に行われた状態では、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像に関しては、線維柱帯を撮影するうえで、作動距離が短すぎる
/長すぎる場合が考えらえる。勿論、この逆も考えられる。
そこで、例えば、0°の位置と、180°の位置と、の2枚の隅角画像における線維柱帯の半径方向に関する位置と、90°の位置と、270°の位置と、の2枚の隅角画像における線維柱帯の半径方向に関する位置と、の平均を求め、その平均が目標位置となるように、アライメント機構5aをZ方向に関して駆動させてもよい。
モニタ8上に、アライメント状態を示す指標100,101およびガイド情報110,111が表示される場合、図7において、XY方向のアライメント状態は、指標101,110および第1ガイド情報110によって示される。
また、図7において、Z方向に関するアライメント状態は、指標100,101および第2ガイド情報111によって示される。
図7において、隅角画像上に重畳される点状の指標100は、隅角の特徴部(ここでは線維柱帯)の検出位置を示している。また、図7において矩形のレチクル101は、アライメント目標位置を示している。また、レチクル101は電子的な指標である。また、図7に示すように、目標位置は、適正なマージンを有して設定されてもよい。レチクル101によって示される目標位置(目標領域)に指標100(特徴部)が含まれるか否かによって、X,Y,Z方向のアライメント状態を、検者において把握できる。
但し、指標100およびレチクル101は、4枚の隅角画像上に分散しているので同時に確認し難く、不慣れな検者では、アライメント状態を直感的に把握しにくいことが考えられる。そこで、本実施例では、更に、第1,第2ガイド情報110,111が、表示される。第1,第2ガイド情報110,111は、4枚の隅角画像が占める面積に対し、十分コンパクトな面積で表示されてもよい。例えば、隅角画像1枚あたりの面積以下のスペースに、表示されてもよい。
図7に示すように、本実施例では、撮像位置と対応した位置関係で表示される、複数の隅角画像の中間に、第1,第2ガイド情報110,111が表示される。これにより、第1,第2ガイド情報110,111で全体的なアライメント状態を把握しつつ、各々の隅角画像に対して検者が視線を写すことが容易となる。
第1ガイド情報110は、手動でアライメント調整する場合のジョイスティック7の操作方向を示している。中心の丸印がジョイスティックを示している。その上下左右の4方向に表れる同心円弧状のシンボルが、アライメント目標位置に対して必要な、ジョイスティックの操作量(換言すれば、アライメントのズレ量)を示している。
第2ガイド情報111は、第1ガイド情報110と隣接して表示される。図7では、第2ガイド情報111を構成する複数の線のうち、幅広の線が、Z方向の適正位置を示しており、Z方向のアライメントズレの程度に応じて、幅広の線の上下に幅狭の線が追加される。装置が被検眼Eに近すぎている場合は、下側に幅狭の線が表示され、遠すぎる場合は、上側に幅狭の線が表示される。
X,Y,Z方向のアライメント状態が適正アライメント状態となった場合、指標100,101およびガイド情報110,111の表示態様が切換ってもよい。例えば、適正アライメント状態とそれ以外とで、指標100,101およびガイド情報110,111の色が変更されてもよい。
以上のような、XY方向のアライメント制御、および、Z方向のアライメント制御は、交互に、複数回繰り返し行われてもよい。本実施例では、所定のアライメント完了条件を満たしたと、隅角画像に基づいて判定される場合、或いは、操作部85に対する操作によってアライメント完了信号が入力された場合に、第2アライメントに関する処理を終了させ(S14:Yes)、それ以外の場合は、S11に戻って、アライメント動作を繰りかえし実行する(S14:No)。
以上のようなアライメント動作(第2のアライメント)の結果として、被検眼の隅角全周に対する中心と、対物反射部50の光軸と、が略合致される。また、更に、光偏心部48を回転させて、隅角の全周における各撮像位置で隅角画像を撮像した際に、各々の隅角画像において、線維柱帯が、良好に含まれるようになる。
図5に戻って、説明を続ける。アライメントが完了した後は、撮影動作が実行される(S4)。
本実施例では、撮影動作の結果として、線維柱帯に対して合焦された隅角画像を、撮影画像として取得する。
一例として、図8を参照し、隅角の全周を16分割した16箇所の撮像位置にて隅角画像を続けて撮影するときの撮影動作を示す。
撮像位置の初期設定を行う(S21)。例えば、0°の撮像位置が、初期位置として、予め定められていてもよい。制御部80は、初期設定位置が撮像されるように、駆動部48dを駆動制御する。このとき、フォーカシングレンズ61が、可動範囲の端部に、配置されるように、駆動部61aを駆動させる。
1つの撮像位置で隅角画像を撮影する場合、制御部80は、フォーカスレンズ61を、可動範囲の一端から他端まで、一方向に変位させる。このとき、制御部80は、フォーカスレンズが一端または他端の何れであるかに応じて、フォーカスレンズの移動方向を決定してもよい(S22〜S24)。また、フォーカスレンズが移動される間に、複数枚の隅角画像を撮像する(S25)。例えば、一定時間ごとに、隅角画像を撮像する。結果、線維柱帯へのフォーカス状態が互いに異なる複数枚の隅角画像が得られる。
次に、各々の隅角画像における線維柱帯を検出する(S26)。検出手法は、第2のアライメントのときと、同様であってもよい。そして、線維柱帯を含む領域であって線維柱帯の近傍領域を、各々の隅角画像において設定する(S27)。近傍領域の大きさ、形状は、予め定められていてもよい。例えば、本実施例では、図8に示すように、矩形形状の近傍領域が設定される。
次に、制御部80は、線維柱帯に対するフォーカス状態の評価情報を、各々の画像について求める(S27)。まず、近傍領域におけるコントラスト(フォーカス状態の評価情報の一例)を、近傍領域における輝度分布に基づいて求める。複数の隅角画像のうち、線維柱帯に対して最も好適に合焦されている画像は、近傍領域におけるコントラストが最も高い画像であると考えられる。そこで、近傍領域におけるコントラストが最も高い隅角画像を、撮影画像として、選択する(S28)。選択された隅角画像は、例えば、メモリ81に記憶される。
その後、16箇所の撮像位置の中に、未撮影の撮像位置が残っている場合は(S29:Yes)、制御部80は、光偏心部48を所定角度回転させ(S30)、次の撮像位置にて同様の撮影動作を行う(S22〜S28)。新たな撮像位置で複数枚の隅角画像を撮像する際には、制御部80は、フォーカスレンズ61を、直前の撮像位置とは、反対方向に駆動させる。このように、本実施例では、互いに異なる2つの撮像位置における隅角画像を、続けて撮像する場合において、第1の撮像位置では、制御部80は、フォーカスレンズ61を所定範囲で一方向に移動させつつ複数枚の隅角画像を撮像する。また、続けて撮像される第2の撮像位置では、制御部80は、フォーカスレンズ61を一方向に対する反対方向に移動させつつ複数枚の隅角画像を撮像する。これにより、複数部位を続けて撮影する場合において、撮影時間を短縮することができる。
撮像位置を切換えて繰り返し撮影を行い、全ての撮像位置について撮影が完了したら(S29:No)、図9に示す撮影動作は終了される。各撮像位置に対し、上記撮影動作が行われた結果として、各撮像位置における線維柱帯に対して合焦された複数(ここでは、16枚)の隅角画像を(撮影画像として)得ることができる。
このようにして撮影された隅角画像を、制御部80は、モニタ8へ表示させてもよい(S5)。この場合、図10に示すレイアウトで、16枚の隅角画像を並べて表示させてもよい。即ち、各々の隅角画像を撮影部位の位置と対応させつつ、円環状に並べて配置させる。これにより、隅角の全周における線維柱帯の状態を、検者に容易に確認させることができる。
勿論、各撮像位置の隅角画像が同時に表示される必要はなく、何れかの撮像位置の画像が、選択的にモニタに表示されてもよい。
<変形例>
以上、実施形態に基づいて本開示を説明したが、本開示は、上記形態に限定されるものではなく、種々の変容が可能である。
例えば、上記実施例における第2のアライメントでは、制御部80によって自動的なアライメント機構5a,5bの駆動制御が行われた。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、検者による操作部85またはジョイスティック7の操作に基づいて、手動でアライメント調整が行われてもよい。この場合において、図7に示すようなアライメント状態を示す指標等が、モニタ8上に表示されてもよい。この場合、指標等は、隅角画像における特徴部の位置に基づいて操作部の操作を案内する情報(すなわち、案内情報)の一種である。
また、手動アライメントと、自動アライメントとのいずれか一方が、選択可能であってもよい。この場合、アライメントの手法(自動または手動)は、操作部の操作に基づいて、アライメントの事前に選択されてもよい。また、アライメントの途中で、所定の操作に基づき、アライメントの手法が切換えられてもよい。
また、例えば、上記実施例では、複数の撮像位置でそれぞれ、フォーカス状態が互いに異なる複数枚の隅角画像を撮影が撮影された。このため、一人の患者につき、大量の隅角画像が撮影によって取得される。大量に取得された隅角画像のうち、少なくともメモリに保存するものを選択するために、或いは、再撮影を行う撮像位置を確認するために、図11の確認画面が、モニタ8に表示されてもよい。例えば、図9のフローチャートにおいて、全ての撮像位置について撮影が完了したら(S29:No)、制御部80は、確認画面を立ち上げ、表示してもよい。
図9の確認画面は、拡大表示エリア200、第1選択エリア210、第2選択エリア220、の3つのエリアに大別される。
第1選択エリア210は、拡大表示エリア200,および,第2選択エリア220に表示する画像の撮像位置を選択するためのエリアである。第1選択エリア210には、それぞれの撮像位置を代表する隅角画像のサムネイルが並べられる。このとき、サムネイルは、撮像位置に関連づけて(例えば、ある位置から時計回りの順に)並べられてもよい。
図11の確認画面は、第1選択エリア210に表示されるウィジェット211は、サムネイル以外の手法で撮像位置を選択するものであってもよい。或いは、スペースの都合上、全ての撮像位置と対応するサムネイルを第1選択エリア210に表示することができない場合に、第1選択エリア210に表示されるサムネイルを切換えるために利用されるものであってもよい。
拡大表示エリア200には、図11の例では、撮像位置毎に1枚ずつ、隅角画像のサムネイルが並んで表示される。ポインティングデバイス(操作部の一例)を用いて、いずれかのサムネイルが選択される。そして、選択されたサムネイルと同じ撮像位置で撮影された他の画像が、第2選択エリア220に並べて配置される。第2選択エリア220に表示される画像もまた、サムネイルであってもよい。第2選択エリア220におけるサムネイルは、各サムネイルと対応する隅角画像を撮影した際のフォーカスに関連づけて、並べられていてもよい。これにより、所期するフォーカス状態の隅角画像を、第2選択エリア220のサムネイルの中から選択することが容易になる。
拡大表示エリア200には、第2選択エリア220のサムネイルと対応する撮像位置の複数の隅角画像のうち、いずれか1枚が表示される。第2選択エリア220において何れかのサムネイルが選択されることにより、拡大表示エリア200に表示される隅角画像が、選択されたサムネイルと対応するものに切換る。
図11の確認画面は、更に3つのウィジェット231〜233が表示される。即ち、[Accept]ボタン231,[Retake]ボタン232,[Abort]ボタン233の3つが表示される。
[Accept]ボタン231は、メモリに保存する画像を選択するために利用される。[Accept]ボタン231が操作された場合、拡大表示エリア200に表示された隅角画像がメモリに表示される。これに代えて、第2選択エリア220の複数のサムネイルと対応する全てまたは一部の隅角画像が、メモリに保存されてもよい。いずれの隅角画像を保存するかについては、事前に設定可能であってもよい。
[Retake]ボタン232は、再撮影を実行するために利用される。[Retake]ボタン232が選択された場合、拡大表示エリア200に表示される隅角画像と対応する撮像位置(つまり、第1選択エリア210で選択されている撮像位置)についての再撮影が、制御部80によって実行される。再撮影実行後、再撮影した撮像位置が予め選択された状態で、図11の確認画面が再度立ち上がってもよい。これにより、再撮影の結果を直ちに確認できる。
[Abort]ボタン233は、選択された撮像位置における隅角画像を消去するために利用される。[Abort]ボタン233が操作されることで、選択された撮像位置における隅角画像は、全て消去されてもよい。また、一部ずつ消去されてもよい。
以上のような確認画面を介して隅角画像の選択が行われた結果として、不適当な隅角画像が、保存および表示されることを、良好に低減できる。