JP2018087365A - 金属マンガンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品位金属マンガンの製造方法の提供。【解決手段】原料であるMnに加えてZnを含有するMn含有物質に、還元剤およびフラックスを混合して、アーク溶解炉に装入し、通電加熱及び/又は還元剤の反応熱により、Mn含有物質を還元する還元工程を施し、金属Mnを得る方法。還元剤としては、金属Al、金属Si、フラックスとして生石灰が好ましい金属Mnの製造方法。原料として使用するMn含有物質は、廃乾電池から、マンガン乾電池及び/又はアルカリマンガン乾電池を選別し、粉砕、篩分けして得られた粉粒体(Mn含有物質)に、酸溶液と還元剤とを作用させる酸浸出工程を施して、粉粒体からMn及びZnを浸出させ、固液分離工程により得られた酸浸出液に、さらにアルカリ処理を施すアルカリ処理工程で、Mn及びZnを沈殿させ、さらに固液分離工程により、沈殿物として分離したものを用いることが好ましい高品位金属Mnの製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属マンガン(以下、金属Mnともいう)の製造方法に係り、とくに廃乾電池等から回収されたマンガンおよび亜鉛を含有する物質を原料として、高品位の金属Mnを製造する方法に関する。
鉄鋼分野においては、マンガンは従来から、有用な元素として広く用いられてきた元素であり、近年では、とくに自動車向け高張力鋼板の製造において、重要な元素になっている。鉄鋼分野で使用するマンガンとして、鉄鋼製品製造の最終段階である成分調整段階で使用する場合には、高純度のマンガンが要求される。通常、この段階で使用されるマンガンは、電気分解法により製造された電解金属マンガンである。
電気分解法は、マンガン鉱石などのマンガン原料(マンガン源)を硫酸などの酸で溶解し、溶媒抽出等で不純物を除去したのち、電気分解して金属マンガンとする方法であり、高純度の金属マンガンを得ることができる。しかし、人手が必要であったり、多量の産業廃棄物や高度な処理が必要な廃水が生成したりするため、コストが高いという問題がある。
金属マンガンの製造において、マンガン原料(マンガン源)として使用されているものとしては、酸化マンガン鉱石、炭酸マンガン鉱石などのマンガン鉱石が一般的であるが、これら天然資源には限りがあり、枯渇するという恐れがある。特に、製鉄所では、製鋼原料としてマンガンを大量に消費することから、マンガン源の確保は、製鉄分野においても極めて重要な問題となっている。近年では、原料であるマンガン鉱石も、その枯渇から価格が上昇傾向にある。
近年、このような金属資源の枯渇や取引価格の上昇等により、低品位の原鉱や、精鉱、製鉄所副生成物、産業廃棄物などから、積極的にマンガンを回収しようとする試みがなされている。例えば、産業廃棄物として処分されている乾電池の一部には、マンガン含有率が高いものが存在する。1次電池として代表的なマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池は、正極材料として二酸化マンガンを使用している。したがって、これらの廃乾電池からマンガンを回収し、これを製鋼原料として再利用する技術が確立できれば、マンガン源の確保に有効に寄与することが期待される。しかも、日本国内では、莫大な量の乾電池が生産され、消費、廃棄されている。なお、乾電池では、負極材料として亜鉛を使用している。
しかし、現状では、放電終了後に廃棄されたマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池からは、亜鉛精錬メーカーによる亜鉛の一部の回収、あるいは、アーク溶解炉メーカーによる鉄や炭素の一部の回収が、行なわれているに過ぎず、資源リサイクルが十分に行なわれているとはいえない。未だ多くの資源がリサイクルされることなく未利用のまま、廃材として埋め立て処理等に利用されているのが現状である。
そこで、最近では、廃乾電池から、亜鉛や鉄、炭素のみならず、マンガンをも、回収する各種技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、廃乾電池からマンガン電池およびアルカリマンガン電池を選別する工程と、破砕、篩い分けして粉粒体を得る工程と、得られた粉粒体を希塩酸または希硫酸で溶解処理する工程を有する、二酸化マンガンおよび炭素含有混合物の回収方法が記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、二酸化マンガンと炭素成分とを、簡便に、しかも大きな損失を生じることなく同時に回収でき、フェロマンガン製造の出発原料として利用できるとしている。
また、特許文献2には、廃乾電池より二酸化マンガンと塩化亜鉛を分離回収する方法が記載されている。特許文献2に記載された技術は、廃乾電池の中からマンガンと亜鉛を多く含む材料を得、これを必要により水洗したのち塩酸に溶解し、その溶液を浄液により不純成分を除去したのち加熱濃縮し、その濃縮物に過塩素酸を加えて加熱し、二酸化マンガンと塩化亜鉛の固形混合物を得、該固形混合物を水に溶解して濾過する、廃乾電池より二酸化マンガンと塩化亜鉛を分離回収する方法である。特許文献2に記載された技術では、得られた塩化亜鉛は、有機溶剤に溶かして、混在していた不溶性のアルカリ金属塩類を除去して、塩化亜鉛を精製するとしている。また、回収された二酸化マンガン、塩化亜鉛は、再び乾電池製造に利用可能な純度を有しているとしている。
また、特許文献3には、金属回収方法が記載されている。特許文献3に記載された技術は、金属酸化物および金属水酸化物からなる群に、鉄還元細菌を作用させ、3価鉄を2価鉄に還元し、得られた2価鉄を用いて、金属酸化物および金属水酸化物からなる群に含まれる、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属を浸出させ、浸出液と残渣を生成し、得られた浸出液と残渣とを分離し、所望の金属を回収する金属回収方法である。金属酸化物および金属水酸化物からなる群としては、深海底鉱物資源、金属含有酸化鉱(陸上鉱物)、金属含有焼却残渣などの廃棄物等が挙げられるとしている。特許文献3に記載された技術によれば、金属酸化物、金属水酸化物に含まれる低品位の金属を高速・高効率に回収することができ、浸出液に含まれるコバルト、ニッケル、マンガン等の金属は、通常の方法を用いて、回収することができるとしている。
また、特許文献4には、金属マンガンの製造方法が記載されている。特許文献4に記載された技術は、加熱炉内に還元剤とともに酸化マンガン含有物質を装入し、加熱炉の炉内温度が1200℃以上になるまで加熱し酸化マンガンを還元し、その後700℃以下まで冷却して、炉外に排出する金属マンガンの製造方法である。特許文献4に記載された技術では、酸化マンガン含有物質としては、廃電池、マンガン鉱石等を用いることができ、還元剤として、石炭、コークス、黒鉛等の炭素系還元剤を使用するとしている。
鉄鋼分野ではないが、例えば特許文献5〜10には、廃乾電池を性能によって分別、選別し、粉砕して金属成分を分離回収し、焙焼や仮焼して、廃乾電池に含まれるマンガン成分と亜鉛成分を、マンガン酸化物と亜鉛酸化物との混合物として得て、それを原料混合物として焼成して、実用レベルのフェライトを製造する技術が提案されている。
特許文献5には、廃乾電池からマンガン乾電池を選別して破砕したのち篩分けして正極作用物質を主体とするものとし、水洗したのち仮焼し、マンガン酸化物と亜鉛酸化物とを得る、廃乾電池の処理方法が記載されている。この方法は、ソフトフェライト製造用の原料を得るのに好適な方法であるとしている。
また、特許文献6、特許文献7には、フェライトの製造方法が提案されている。特許文献6、7に記載された技術では、廃乾電池を種類別に分別し、分別した好ましくはマンガン乾電池を解体あるいは粉砕して、金属成分(マンガン、亜鉛)を分離回収し、この成分(マンガン酸化物と亜鉛酸化物の混合粉)を用いて原料混合粉として、あるいはこの成分を含む塩化物溶液としたのちこれを焙焼し金属酸化物粒子を得、この金属酸化物粒子(マンガン酸化物と亜鉛酸化物の混合粉)を原料混合粉として、これら原料混合粉を焼成してMn−Zn系ソフトフェライトとするとしている。
また、特許文献8には、「フェライトの製造方法」が記載されている。特許文献8に記載された技術では、廃乾電池からマンガン乾電池を選別して破砕したのち篩分けして正極作用物質を主体とするものを得、この正極作用物質を主体とするものを仮焼し、マンガン酸化物と亜鉛酸化物とを得、このマンガン酸化物と亜鉛酸化物とを原料混合粉として、焼成してフェライトを製造するとしている。なお、特許文献8に記載された技術では、仮焼の前に水洗を行っても良いとしている。また、特許文献8に記載された技術では、マンガン酸化物と亜鉛酸化物とを原料として塩化物溶液を得、この塩化物溶液を噴霧焙焼炉で焙焼して金属酸化物粒子を得、この金属酸化物粒子を原料混合粉とし、焼成してフェライトとしてもよいとしている。特許文献8に記載された技術によれば、廃乾電池を利用して実用レベルにあるフェライトを得ることができるとしている。
また、特許文献9には、「廃乾電池を用いたフェライトの製造方法」が記載されている。特許文献9に記載された技術では、廃乾電池を形状により分別し、マンガン乾電池とアルカリ・マンガン電池を主体とするものを選別し、これらの乾電池を粉砕し、焙焼して焼滓を得、この焼滓から磁選により鉄と分離して亜鉛滓を得、この亜鉛滓を仮焼してマンガン酸化物と亜鉛酸化物とを得、これらの酸化物を用いた原料混合物を焼成してフェライトを得るとしている。
また、特許文献10には、「廃乾電池を用いたフェライトの製造方法」が記載されている。特許文献10に記載された技術では、廃乾電池から超高性能マンガン乾電池とアルカリ・マンガン電池を含む高性能マンガン乾電池とを分別選別し、まず、選別された超高性能マンガン乾電池を粉砕、篩分けして正極作用物質を主体とするものと金属外装を含むものとし、そのうち正極作用物質を主体とするものを仮焼しマンガン酸化物と亜鉛酸化物とを得、これらの酸化物を用いて特定組成A(MnO/ZnOのモル比)のフェライトを得る。一方、選別されたアルカリ・マンガン電池を含む高性能マンガン乾電池を粉砕、篩分けして正極作用物質および負極作用物質を主体とするものとし、この正極作用物質および負極作用物質を主体とするものにさらに超高性能マンガン乾電池の金属外装を含むものから得られた亜鉛分を加え、仮焼しマンガン酸化物と亜鉛酸化物とを得、これらの酸化物を用いて特定組成B(MnO/ZnOのモル比)のフェライトを得る、としている。これにより、組成の異なる実用レベルにあるフェライトを得ることができるとしている。
特開2007−12527号公報 特開平11−191439号公報 特開2007−113116号公報 特開2011−94207号公報 特開平07−85897号公報 特開平06−260174号公報 特開平06−260175号公報 特開平07−81941号公報 特開平09-82339号公報 特開平09-82340号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術で回収されたMn含有物質は、二酸化マンガンと炭素含有混合物で、含有されるMnは酸化物であり、例えば、製鉄原料として利用可能な状態となるには、更なるMnの還元を必要とし、製造工程が複雑となり、結果として高価になる。さらに、特許文献1に記載された技術で回収されたMn含有物質は、炭素と分離することが不可能で、高品位の金属マンガン製造のための原料としては適切でないという問題がある。
また、特許文献2に記載された技術で回収されたMn含有物質は、二酸化マンガンで、例えば、製鉄原料として利用可能な状態とするには、更なるMnの還元を必要とし、製造工程が複雑となり、結果として高価になる。さらに、特許文献2に記載された技術では、処理工程が複雑で、経済的に不利となるという問題や、過塩素酸や有機溶剤を使用するため、安全性の確保や良好な作業環境を確保する必要があるという問題を残していた。
また、特許文献3に記載された技術では、浸出を中性で行うため、クエン酸塩などの錯化剤を必要とし、また、微生物を利用するため微生物の培地を必要としており、これらの薬剤や微生物の培地はいずれも高価で、安価な処理が可能であるという生物利用の利点が相殺されるという問題がある。また、生物の活性維持のために炭素が必要であり、得られるマンガンと炭素とを分離することが問題として残されている。
また、特許文献4に記載された技術で製造された金属Mnは、還元剤として使用した炭素が残留して炭素含有量が高くなる場合が多く、金属Mnとしての品位が低いという問題がある。
また、特許文献5〜10に記載された技術はいずれも、廃乾電池からMn酸化物と亜鉛酸化物の混合物を回収して、Mn−Zn系フェライトの製造用原料としている。そのため、特許文献5〜10に記載された技術で得られたMn酸化物と亜鉛酸化物の混合物は、マンガンと亜鉛とが分離されておらず、製鉄原料としては不適である。
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明者らは、電解金属マンガンの代替として使用可能な高品位の金属マンガンを製造できる、金属マンガンの製造方法について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、廃乾電池に含まれるマンガンを酸浸出処理し、得られた酸浸出液にオゾン処理を施し、分離処理して高純度の二酸化マンガンとして回収し、この二酸化マンガンを、還元剤およびフラックスとともにアーク溶解炉に装入し、アーク溶解炉の通電による加熱および/または還元剤の反応熱により還元することで高純度マンガンが製造でき、さらに加えて、還元剤としてAlを使用することにより、アルミテルミット反応を併用でき、投入電力を低減でき、安価に高純度マンガンを製造できることを見出し、特願2015-36001号(特開2016-156074号公報)として提案した。
また、さらに本発明者らは、廃乾電池に含まれるマンガンを酸浸出処理し、得られた酸浸出液にオゾン処理を施し、分離処理して回収した高純度の二酸化マンガンに、か焼処理を施して価数の低い酸化マンガンとしたのち、還元剤およびフラックスとともにアーク溶解炉に装入し、アーク溶解炉の通電による加熱および/または還元剤の反応熱により、還元することで、還元剤の使用量を低減でき、安価に高純度マンガンが製造できることを見出し、特願2016-32863号として提案した。
しかし、特願2015-36001号、特願2016-32863号で提案した技術では、廃乾電池に含まれるマンガンを酸浸出処理して得られた酸浸出液に、オゾン処理を施し、マンガンを優先的に不溶化して沈殿物として他の元素から分離してマンガン源として使用している。そのため、特願2015-36001号、特願2016-32863号で提案した技術では、オゾン処理を行うためにオゾン発生装置を備えることが必要となる。しかし、現状では、オゾン発生装置は高価であるため、特願2015-36001号、特願2016-32863号で提案した技術では、製造コストの高騰を招くという問題がある。
本発明は、かかる問題を解決し、製鉄原料として利用可能な金属マンガン、さらには電解金属マンガンに匹敵する高品位の金属マンガンを安価で、かつ簡便に製造できる、金属マンガンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、安価な金属マンガンの品位向上方法について鋭意検討した。その結果、アーク溶解炉を用いたマンガンの還元工程を採用する金属マンガンの製造方法では、アーク溶解炉でのマンガン還元時に、使用するマンガン含有物質に亜鉛が共存していても、亜鉛は、還元されて金属体(金属亜鉛)になると沸点が低くなることから、揮発除去できることに思い至り、廃乾電池に含まれるマンガンを酸浸出処理して得られた酸浸出液に、オゾン処理に代えて、アルカリ処理を施すことを想到した。廃乾電池に含まれるマンガンを酸浸出処理して得られた酸浸出液に、アルカリ処理を施すことにより、マンガンと亜鉛が混合した沈殿物として回収でき、そして、得られた沈殿物を、還元剤およびフラックスとともにアーク溶解炉に装入して還元処理を行えば、共存する亜鉛は還元処理中に揮発除去でき、高品位の金属マンガンを容易に、しかも安価に製造できることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)マンガンを含有するマンガン含有物質に還元工程を施して金属マンガンとする金属マンガンの製造方法であって、前記マンガン含有物質が、廃乾電池に含まれるマンガン、亜鉛を酸浸出処理し、得られた酸浸出液にアルカリ処理を施し、分離処理して得られた沈殿物であり、前記還元工程が、アーク溶解炉に、前記マンガン含有物質と、さらに還元剤およびフラックスとを装入し、前記アーク溶解炉の通電による加熱および/または還元剤の反応熱により、前記マンガン含有物質を還元し、亜鉛を揮発除去しながら金属マンガンを得るアーク溶解炉還元工程であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
(2)(1)において、前記マンガン含有物質が、水酸化マンガンと水酸化亜鉛との混合物であるか、マンガンと亜鉛の複合酸化物であるか、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
(3)(1)において、前記マンガン含有物質が、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する工程と、該選別工程で選別した廃乾電池を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、該破砕・篩い分け工程で得られた粉粒体に、さらに酸溶液と還元剤とを混合し、前記粉粒体からマンガンおよび亜鉛を浸出させる酸浸出工程と、該酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で分離された浸出液に、アルカリを作用させて、マンガンおよび亜鉛を沈殿させるアルカリ処理工程と、該アルカリ処理工程で得られた沈殿物と残処理液とを固液分離する第2固液分離工程と、を順次施して、得られた沈殿物であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記アーク溶解炉還元工程で使用する前記還元剤が、金属アルミニウムまたは金属珪素であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記アーク溶解炉還元工程で使用する前記フラックスが、CaOを主成分とする物質であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
本発明によれば、電解金属マンガンに匹敵する高品位の金属マンガンを、安価で、かつ簡便に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
本発明におけるフローを示す説明図である。 廃乾電池粉粒体から、マンガン含有物質(沈殿物)を得るフローを示す説明図である。 廃乾電池から、廃乾電池粉粒体を得るフローを示す説明図である。 回収された沈殿物のXRD解析結果を示すグラフである。 発生ダストのXRD解析結果を示すグラフである。
本発明は、マンガンを含むマンガン含有物質を原料とし、該原料に還元工程を施して高純度の金属マンガンとする、金属マンガンの製造方法である。本発明における還元工程は、アーク溶解炉を用いるアーク溶解炉還元工程とする。本発明におけるフローを図1に示す。
本発明で使用する原料は、マンガンと亜鉛とを共存して含む物質(マンガン含有物質)とする。原料の由来はとくに限定する必要はないが、図3に示すように、廃乾電池を選別し、破砕し、篩分けして得られた物質(粉粒体)とすることが好ましい。
ここでいう「選別」とは、図3に示すように、廃乾電池から、アルカリ乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する工程をいう。「選別」では、廃棄・回収された廃乾電池の中から、アルカリ乾電池、アルカリマンガン乾電池のうちのいずれか一方、あるいは両方を選別する。選別方法は、手選別、形状や放射線等を利用して分別する機器を利用する機械選別など、水銀乾電池やニカド電池等を除外できれば、いずれの方法を用いてもよい。
また、ここでいう「破砕」、「篩分け」とは、図3に示すように、選別した廃乾電池を破砕し、篩い分けする、破砕・篩い分け工程をいう。選別工程で選別したマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を破砕し、篩い分けする。破砕・篩い分けの目的は、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の構成材料から、マンガン・亜鉛以外の成分を含む材料を可能な限り排除することにある。
選別された廃乾電池のうち、マンガン乾電池は、二酸化マンガン(正極材料)、炭素棒(集電体)、亜鉛缶(負極材料)、塩化亜鉛または塩化アンモニウム(電解液)、放電により生成したMnO(OH)やZn(OH)などのほか、包装材である鉄、プラスチックおよび紙等を含む。また、選別された廃乾電池のうち、アルカリマンガン乾電池は、上記した炭素棒(集電体)、亜鉛缶(負極材料)、塩化亜鉛または塩化アンモニウム(電解液)の代わりに、真鍮棒(集電体)、亜鉛粉(負極材料)、水酸化カリウム(電解液)を含み、放電により生成したMn(OH)、ZnO等を含む。
これらの材料が破砕されると、包装材(鉄、プラスチックおよび紙等)や、マンガン乾電池の負極材料である亜鉛缶、アルカリマンガン乾電池の集電体である真鍮棒は、箔状や片状の固形物となる。一方、正極材料である二酸化マンガン、マンガン乾電池の集電体である炭素棒、アルカリマンガン乾電池の負極材料である亜鉛粉、放電により生成したMnO(OH)やZn(OH)2、Mn(OH)2、ZnOなど、および各種電解液は、上記箔状・片状の固形物よりも更に細かい粉粒体となる。
したがって、選別した廃乾電池を破砕したのち、所定の目開きの篩を用いて篩い分けすると、選別した廃乾電池から包装材等の大きな固形物が除去され、主にマンガン・亜鉛成分とともに炭素を含有する粉粒体を得ることができる。
選別した廃乾電池の破砕には通常、破砕機を使用する。破砕機の型式については特に限定されず、例えば、破砕後に、乾電池を構成している包装材等と粉粒体がよく分離される型式のものが好ましい。このようなものとしては、例えば、2軸回転式の破砕機が挙げられる。上記の破砕物の篩い分け(箔状や片状の固形物と、粉粒体との篩い分け)に使用する篩の目開きは、1mm以上20mm以下程度とすることが好ましい。また、1mm以上10mm以下程度とすることがより好ましく、1mm以上5mm以下程度とすることがより一層好ましい。
以上のように、破砕・篩分けを経ることで、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の主要構成材料である、二酸化マンガン、炭素、塩化亜鉛または塩化アンモン、苛性カリ、更には、放電によって生成したMnO(OH)やZn(OH)、Mn(OH)、ZnOなどが混合した粉粒体が得られる。また、この粉粒体には、微量の鉄成分が不可避的に混入する。
ついで、破砕・篩い分け工程を経て得られた粉粒体に、図2に示すように、酸溶液と還元剤とを混合して、粉粒体に酸浸出工程を施す。この酸浸出工程では、主にマンガン・亜鉛成分と炭素を含有する粉粒体から、マンガンおよび亜鉛を浸出させ、炭素を浸出残渣に残存させる。
酸溶液として、使用する酸は、一般的な酸でよく、硫酸、硝酸、塩酸、その他の酸を用いることができるが、コストや調達の容易さ等を考慮すると、硫酸あるいは塩酸を用いるのが好ましい。硫酸を用いる場合には、硫酸濃度が質量%濃度で1.4〜45%の希硫酸を用いることが好ましい。なお、より好ましくは硫酸濃度が2〜30%の希硫酸、さらに好ましくは硫酸濃度が5〜25%の希硫酸である。塩酸を用いる場合には、塩酸濃度が質量%濃度で1〜14%の希塩酸を用いることが好ましい。なお、より好ましくは塩酸濃度が2〜8%の希塩酸である。ここでの質量%濃度は、酸溶液中の酸の質量を溶液全体の質量で除したものに100を乗じた値である。
なお、いずれの酸を用いる場合でも、マンガンおよび亜鉛の浸出に必要な酸濃度は、固液比、粉粒体の量、粉粒体中のマンガンおよび亜鉛の含有量、粉粒体中のマンガンや亜鉛の形態等によって変動する。そのため、予め実機を想定した予備実験を行うことで、最適な酸濃度を決定することができる。
ここで、酸浸出工程においては、粉粒体に含まれるマンガン成分をほぼ完全に浸出させるため、粉粒体、酸溶液とともに、還元剤を混合することを必須とする。
還元剤によるマンガン溶解(マンガン浸出)の原理について以下に説明する。
選別工程で選別された廃乾電池は、放電によって生成したMnO(OH)、Mn(OH)と、未放電のMnOとを含んでいる。これらのうち、MnO(OH)、Mn(OH)は酸に溶解すると考えられるが、MnOは酸に殆ど溶解しないと考えられる。これは、下記(1)式で示されるMnO溶解の半反応式から明らかなように、MnOの溶解にはMnを4価から2価へ還元する必要があり、還元のための電子を供給する物質として還元剤が必要となるためである。
MnO(固形物)+4H+2e→ Mn2+(溶解)+2HO ‥‥(1)
このようなことから、酸浸出工程においては、酸による浸出反応に合わせて、還元剤を添加する。これにより、粉粒体中のマンガン成分(MnOおよびMnO(OH)、Mn(OH))をほぼ完全に浸出させることが可能となる。なお、粉粒体に含まれる亜鉛成分については、還元剤の有無に拘わらず酸の濃度を上昇していけば、ほぼ完全に溶解(浸出)する。
粉粒体、酸溶液とともに混合する還元剤の種類は特に限定されず、上記(1)式に示されるようにMnを4価から2価へ還元することができるものであればよく、例えば過酸化水素や、硫化ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の硫化物イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオンを含むものなどが挙げられる。また、還元剤を混合する方法は、還元剤を固形物や液体として添加する方法でもよく、亜硫酸ガス等の還元性ガスを散気する方法でもよい。なお、酸浸出処理の効率化を図る観点からは、酸浸出工程における粉粒体と酸溶液との固液比(粉粒体(g)/ 酸溶液(L))を50g/L以上、好ましくは100g/L以上とすることが好ましい。但し、上記固液比が800g/Lを超えて過剰に高くなると、粘度が上昇してハンドリング上の問題が生じたり、第1固液分離工程時の歩留が悪化したりする可能性がある。したがって、上記固液比は800g/L以下とすることが好ましい。
酸浸出処理の処理温度(雰囲気温度や酸溶液の温度)は、室温(15〜25℃前後)でも十分な効果が得られるが、加温を行ってもよい。加温を行えば反応効率の向上が期待できるが、加温のための経費が必要となるため、得られる効果と比較して加温実施の可否を決定すればよい。酸浸出処理の処理時間は、60min以上12h以下とすることが好ましい。
以上の酸浸出工程により、粉粒体に含まれるマンガン、亜鉛成分がほぼ完全に浸出した浸出液が得られる。また、上記した酸浸出工程により、粉粒体に含まれる炭素のほぼ全量を浸出残渣に留めることができる。
ついで、酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とに、第1固液分離工程を施す。
第1固液分離工程では、酸浸出工程で得られた浸出液(マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含む浸出液)と浸出残渣(炭素が残留した浸出残渣)とを固液分離する。これにより、粉粒体に含まれるマンガン成分および亜鉛成分と、粉粒体に含まれる炭素とを、分離することができる。なお、固液分離手段は特に限定されないが、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる手段とすることが好ましい。
ついで、第1固液分離工程を施され分離された浸出液にアルカリ処理工程を施す。
アルカリ処理工程では、第1固液分離工程で分離された浸出液(マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含む酸性の浸出液)にアルカリ処理を施す。これにより、マンガンおよび亜鉛を、水酸化マンガンと水酸化亜鉛との混合物、あるいはマンガンと亜鉛との複合酸化物(複合金属酸化物)、あるいはそれらの混合物として沈殿させることができ、マンガンおよび亜鉛が回収可能となる。
マンガンは、アルカリ処理を施し、溶液(浸出液)をアルカリ性にすると溶解度が低下し、沈殿物を形成する。亜鉛は、両性金属であるため、溶液をアルカリ性にすると溶解度が低下し、一旦沈殿物を形成するが、強アルカリ性にすると再溶解する。Mnの溶解度は、pH:10以上で10-5mol/L以下、亜鉛の溶解度は、pH:9〜11付近で10-5mol/L以下となる。このことから、pH:9〜11、好ましくはpH:10〜11でアルカリ処理を行えば、溶液(浸出液)中のマンガンおよび亜鉛を10-5mol/L未満とすることができることになる。10-5mol/Lは、マンガンMnであれば0.33mg/L、亜鉛Znであれば0.65mg/Lに該当し、上記した条件でアルカリ処理を行えば、溶液(浸出液)中のマンガンおよび亜鉛が1mg/L未満となるまで、マンガンおよび亜鉛を沈殿物として溶液から分離できることになり、効率の良いマンガンおよび亜鉛の回収が可能となる。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、とくに限定する必要はなく、一般的なアルカリである、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)等が好適である。
ついで、アルカリ処理工程を施された浸出液に、第2固液分離工程を施す。
第2固液分離工程では、アルカリ処理工程を施されて得られた沈殿物(マンガンおよび亜鉛の水酸化物等)と残処理液とを固液分離する。これにより、マンガンおよび亜鉛を、水酸化マンガンと水酸化亜鉛との混合物、あるいはマンガンと亜鉛との複合酸化物(複合金属酸化物)、あるいはそれらの混合物である、マンガンおよび亜鉛を含有する沈殿物として回収できる。なお、残処理液は廃液とする。固液分離手段は特に限定されないが、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる手段とすることが好ましい。
また、固液分離工程を経た沈殿物は、水分を含んでおり、まず、脱水・乾燥させることは言うまでもない。脱水・乾燥の方法は、特に限定する必要はないが、常用の遠心分離、電気炉加熱等がいずれも適用できる。
本発明では、マンガン含有物質、好ましくは、上記したような工程を経て得られたマンガン含有物質を原料として、該マンガン含有物質に還元工程を施して金属マンガンとする。
本発明における還元工程は、アーク溶解炉を用いるアーク溶解炉還元工程とする。アーク溶解炉還元工程では、図1に示すように、原料であるマンガン含有物質に、還元剤およびフラックス(造滓剤)を配合し、アーク溶解炉に装入し、アーク溶解炉還元工程を施す。アーク溶解炉に装入されたマンガン含有物質は、アーク溶解炉の黒鉛製電極を介して通電により加熱され、還元剤により還元されて、金属溶湯(金属マンガン)とされる。ここで用いるアーク溶解炉は、生成した金属溶湯の出湯および溶融スラグの排滓のために傾動可能な炉であることが好ましい。
アーク溶解炉還元工程で使用する還元剤としては、金属アルミニウム、金属珪素、炭素が例示できるが、高品位金属マンガンを製造する本発明の場合には、金属マンガン(製品)中に混入しやすい炭素は高品位金属マンガン製造用の還元剤としては適当ではなく、金属アルミニウム、金属珪素とすることが好ましい。なかでも不純物の混入という観点から、金属アルミニウムとすることが、より好ましい。
なお、還元工程において、マンガン含有物質に含まれる亜鉛は、マンガンとともに還元剤により還元され、金属溶湯(金属亜鉛)となる。この時、溶湯の温度は1600℃以上になっているが、金属亜鉛の沸点は907℃程度であるため、亜鉛は還元されると気体となって蒸発する(酸化亜鉛は融点1975℃)。蒸発した亜鉛は、揮発したのち空気中の酸素と速やかに反応して酸化亜鉛のダストとなり、バグフィルターに捕捉され、回収することができる。こうして、金属溶湯中には、金属マンガンのみとなり、マンガンを高純度な形で回収することができる。
なお、還元剤として、金属アルミニウムや金属珪素を用いた場合でも、アーク溶解炉での加熱、溶融時に、黒鉛製電極と、装入物、とくに還元反応により生成する溶融金属(金属溶湯)とが接触すると、生成される金属溶湯中の炭素含有量がある程度増加することは避けられない。そこで、本発明のアーク溶解炉還元工程では、黒鉛製電極と、装入物あるいは金属溶湯との距離(間隔)を大きくし、接触を避けた操業(高電圧操業)を行なうことが好ましい。これにより、黒鉛製電極からの炭素のピックアップを防止することができる。
さらに、金属アルミニウムは、アルミテルミット反応により、多量の反応熱が発生するため、還元剤として金属アルミニウムを使用する場合に、還元剤の反応熱が発生している時に、通電による加熱を行なうと、過加熱となる心配がある。そこで、本発明では、還元剤の反応熱(アルミテルミット反応)が発生している間は、電極による通電加熱を停止することが好ましい。これにより、黒鉛製電極による通電加熱時間を短縮することができ、製品への炭素の混入を抑制できるという観点からも利点もある。
また、本発明のアーク溶解炉還元工程では、還元剤として金属アルミニウムを使用する場合には、還元剤である金属アルミニウムを複数回に分けて装入する、分割装入とすることが好ましい。これにより、アルミテルミット反応による発熱を均一化でき、過加熱を防止でき、溶融金属(金属Mn)の蒸発(吹き上げロス)を抑制し、Mn歩留を向上することができる。なお、還元剤の分割装入に際しては、反応の均一化のために、原料であるマンガン・亜鉛含有物質およびフラックス、あるいはフラックスを分割して装入することが好ましい。
本発明のアーク溶解炉還元工程で使用するフラックスは、CaOを主成分とする物質とすることが好ましい。CaOを主成分とする物質としては、生石灰、石灰石が例示できる。
還元剤の配合量は、原料であるマンガン含有物質に含まれる酸化物、あるいは水酸化物としてのマンガン、亜鉛を金属マンガン、金属亜鉛とする還元反応、を完全に遂行するために必要な還元剤量(理論還元当量)以上とすることはいうまでもないが、予め実験によって適正量を検討することが好ましい。
一方、フラックスの配合量は、CaO/AlO比、を用いて調整する。CaO/AlO比は0.55であるが、0.4〜1.0程度の範囲内であれば、良好な反応の進行が得られる。0.4未満では、スラグ中の酸化マンガンが低下しきれず、また1.0を超えると、遊離の生石灰が多くなり、スラグの融点が高くなりすぎるとともに、スラグ量が増加しすぎる。このようなことから、フラックスの配合量は、CaO換算でのフラックス量と、酸化物換算での還元剤量との比(質量比)、CaO/AlO比で0.4〜1.0の範囲内となるように調整することが好ましい。
以下、さらに実施例に基づき、本発明について説明する。
廃乾電池から、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別し、該選別した廃乾電池を粉砕し、目開き3mmの篩で篩分けして、廃乾電池の粉粒体を得た。得られた粉粒体の組成を表1に示す。なお、得られた粉粒体は、表1に示す元素以外に、酸化物や水酸化物に由来する酸素、水分を含む。
Figure 2018087365
ついで、得られた粉粒体:500kgfに、表2に示す条件で、酸浸出工程、第1固液分離工程、アルカリ処理工程、第2固液分離工程を順次施し、沈殿物:約500kgfを得た。得られた沈殿物について、化学分析を行い、組成を求め、表3に示す。
Figure 2018087365
Figure 2018087365
表3から、得られた沈殿物は、マンガン、亜鉛が主成分のマンガン含有物質であることがわかる。なお、S、Naが多いのは、使用した酸(硫酸)およびアルカリ(NaOH)によると考えられる。
さらに、得られた沈殿物を、温度:105℃で乾燥したのち、X線回折法を用いて、形態分析を行った。得られた結果を図4に示す。図4から、得られた沈殿物は、主として、マンガンと亜鉛の複合酸化物、あるいはマンガン又は亜鉛のナトリウム硫酸塩であった。当初、予想した水酸化物は恐らく、非晶質になっているため、X線回折法では検出されなかったものと考えられる。
乾燥した沈殿物(マンガン含有物質)を原料として、還元剤、フラックスとともに、試験アーク溶解炉に装入し、アーク溶解炉還元工程を施した。還元剤は金属アルミニウム、フラックスは生石灰とした。なお、装入は分割装入とした。
まず、試験アーク溶解炉の炉内に、通電用金属Mn:5kgf投入し、黒鉛製電極を降ろしたのち、初期混合原料を装入した。初期混合原料は、乾燥した沈殿物(マンガン含有物質):45kgfと、還元剤として金属Al:2.0kgfと、フラックスとしてCaO:8.0kgfと、した。
初期混合原料を装入したのち、初期加熱として通電による加熱を施して原料を溶解した。なお、溶解中、アルミテルミット反応が開始し終了するまでの間は、通電を停止した。初期加熱後のアルミテルミット反応が終了したのち、所定の温度を確保し、反応を安定して促進するために、再び通電した。この操作を複数回繰り返した。なお、途中で、追加混合原料を装入した。
追加混合原料は、乾燥した沈殿物(マンガン含有物質):45kgfと、還元剤として金属Al:8.0kgfと、フラックスとしてCaO:8.0kgfと、した。ここまでの還元剤の添加量は、金属Mn、金属Znを生成するための理論還元当量未満とし、二酸化マンガンMnO2を酸化マンガンMnOとなるまでの還元処理(一次還元処理)とした。さらに、一次還元処理後、還元剤(フラックスを含む)を追加装入し、仕上還元処理を行った。追加した還元剤は金属アルミニウム:7.0kgf、追加したフラックスはCaO:4.0kgfとした。
なお、追加還元剤を装入した際、過熱防止のため、アルミテルミット反応が終了するまで通電を停止した。アルミテルミット反応終了後、十分にスラグを生成したのち、電極をスラグ中に浸漬し、所定時間通電し、反応促進、温度調節のための仕上還元処理を行った。なお、仕上還元処理においても、電極は、電極と金属溶湯との接触を避け、炭素混入を防止する操業を行った。
還元処理終了後、溶融スラグを排出し、次いで金属溶湯(金属マンガン)を鋳型に注入し、凝固させた。得られた金属マンガンは約28kgfであった。
得られた金属マンガンの組成を表4に示す。なお、表4には、比較のために、既存の電解マンガン、極低リン極低炭素フェロマンガンの組成についても併記した。
Figure 2018087365
表4から、得られた金属マンガン中には、亜鉛はほとんど残存しておらず、アーク溶解炉還元工程中で、ほとんどが揮発したことがわかる。このことは、還元処理中に発生したダストを採集し分析した結果、図5に示すように、ダスト中に酸化亜鉛(ZnO)が含まれていることからも明らかである。なお、ダスト中には、微量の塩素、ナトリウムが塩として検出されている。
また、本発明の方法で得られた金属マンガンは、電解マンガンほどに、マンガン純分は高くないが、S含有量については、電解マンガンよりも低く、さらに極低リン極低炭素フェロマンガンよりも高いマンガン純分を有し、しかもリン、炭素の含有量が低い組成となっている。なお、得られた金属マンガンは、Al含有量が高くなっているが、製鉄用マンガン源としては十分な組成となっている。本発明の方法で得られた金属マンガンは、Mn以外の合金元素含有量が少なく、電解金属マンガンの代替として、十分に使用できることを確認した。

Claims (5)

  1. マンガンを含有するマンガン含有物質に還元工程を施して金属マンガンとする金属マンガンの製造方法であって、
    前記マンガン含有物質が、廃乾電池に含まれるマンガン、亜鉛を酸浸出処理し、得られた酸浸出液にアルカリ処理を施し、分離処理して得られた沈殿物であり、
    前記還元工程が、アーク溶解炉に、前記マンガン含有物質と、さらに還元剤およびフラックスとを装入し、前記アーク溶解炉の通電による加熱および/または還元剤の反応熱により、前記マンガン含有物質を還元し、亜鉛を揮発除去しながら金属マンガンを得るアーク溶解炉還元工程であることを特徴とする金属マンガンの製造方法。
  2. 前記マンガン含有物質が、水酸化マンガンと水酸化亜鉛との混合物であるか、マンガンと亜鉛の複合酸化物であるか、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の金属マンガンの製造方法。
  3. 前記マンガン含有物質が、廃乾電池からマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別する工程と、該選別工程で選別した廃乾電池を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、該破砕・篩い分け工程で得られた粉粒体に、さらに酸溶液と還元剤とを混合し、前記粉粒体からマンガンおよび亜鉛を浸出させる酸浸出工程と、該酸浸出工程で得られた浸出液と浸出残渣とを固液分離する第1固液分離工程と、該第1固液分離工程で分離された浸出液に、アルカリを作用させて、マンガンおよび亜鉛を沈殿させるアルカリ処理工程と、該アルカリ処理工程で得られた沈殿物と残処理液とを固液分離する第2固液分離工程と、を順次施して、得られた沈殿物であることを特徴とする請求項1に記載の金属マンガンの製造方法。
  4. 前記アーク溶解炉還元工程で使用する前記還元剤が、金属アルミニウムまたは金属珪素であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金属マンガンの製造方法。
  5. 前記アーク溶解炉還元工程で使用する前記フラックスが、CaOを主成分とする物質であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の金属マンガンの製造方法。
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