本発明に係る硬貨処理装置の一実施形態である貨幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。以下の説明における「前」は貨幣処理装置の操作者側、「後」は貨幣処理装置の操作者とは反対側、「左右」は貨幣処理装置の操作者から見て左右である。貨幣処理装置は硬貨の処理を行うとともに紙幣の処理も行うものである。
図1に示すように、本実施形態に係る貨幣処理装置10は、前方に開口する直方体の箱状の筐体111と、筐体111に対し図1から図2、さらに図3に示すように水平前方への引き出しおよび図3から図2、さらに図1に示すように水平後方への押し込みが可能な貨幣処理ユニット112とを有している。よって、貨幣処理ユニット112の引き出し方向前方は、貨幣処理装置10の前方と一致する。貨幣処理ユニット112は、その前部が常時露出して貨幣処理装置10の前部を構成する装置前部構成部121となっており、その前後方向の中間部から後部が通常は筐体111内に収納され筐体111に覆われる図2および図3に示す内部ユニット部122となっている。内部ユニット部122は、筐体111から引き出されて外部に露出する。
貨幣処理ユニット112は、上部が硬貨の入出金処理を行う硬貨処理部131となっており、上下方向の中間部から下部が紙幣の入出金処理を行う紙幣処理部132となっている。装置前部構成部121の上面には、外部から入金硬貨が投入される硬貨入金部12が設けられている。硬貨処理部131と紙幣処理部132との間には、前面から後方に凹むカルトン載置部13が形成されており、このカルトン載置部13には、貨幣処理装置10から放出された出金硬貨を受け入れる、図4に示すカルトン14が挿入されて載置される。図1〜図3に示すように、紙幣処理部132の上部の前面には、外部から入金紙幣が投入されるとともに外部に出金紙幣を取り出し可能に出金する紙幣入出金部143が設けられている。貨幣処理ユニット112内には、貨幣処理装置10を制御する制御部61が設けられている。
また、筐体111の上部の前端部には、入出力装置145が取り付けられている。入出力装置145には、操作者に向け画面表示を行うとともに操作者による操作入力を受け付けるタッチパネル式の操作表示部62と、操作者に向けて音声出力を行う音声出力部147とが設けられている。
筐体111と、貨幣処理ユニット112の内部ユニット部122とは、図示略のスライドレールで連結されており、これにより、貨幣処理ユニット112は筐体111に対し水平前後方向にスライド可能となるように連結されている。
貨幣処理ユニット112は、筐体111に最も押し込まれた図1に示す所定の収納位置にあるとき、装置前部構成部121が筐体111の前面に当接し内部ユニット部122の全体が筐体111に覆われている。また、貨幣処理ユニット112は筐体111から最も引き出された図3に示す所定の最大引出位置にあるとき、筐体111との連結状態を維持したまま、内部ユニット部122を最大限露出させる。
図1に示すように、筐体111の下部には、前方に延出するようにラックギア151が取り付けられており、貨幣処理ユニット112の下部には、このラックギア151に沿って電動で移動する移動駆動部152が取り付けられている。移動駆動部152がラックギア151に沿って電動で移動することにより、移動駆動部152と一体に設けられた貨幣処理ユニット112が筐体111に対し引き出し方向に電動で移動し、押し込み方向にも電動で移動する。
移動駆動部152とラックギア151とが、移動機構153を構成しており、移動機構153は、貨幣処理ユニット112を筐体111に対して図1に示す収納位置から、収納位置と最大引出位置との間の図2に示す所定の切替引出位置まで電動で引き出し方向つまり前方に移動させる。
図4に示すように、本実施形態の貨幣処理装置10は、前部に上記した硬貨入金部12およびカルトン載置部13を有している。硬貨入金部12は、硬貨が外部から金種混合状態で一括して投入されるとともに投入された硬貨を一枚ずつ分離して繰り出す。硬貨入金部12には、硬貨入金部12を外部に対し開閉する図1〜図3に示すシャッタ12aが設けられている。硬貨入金部12は、シャッタ12aが開かれた状態で硬貨が外部から投入可能となり、シャッタ12aが閉じられた状態では硬貨が外部から投入不可となるとともに内部の硬貨の外部への取り出しも不可となる。カルトン載置部13には、カルトン14が抜き差し可能に載置される。
貨幣処理装置10は、側部に入金側搬送部15を有している。入金側搬送部15は、前後方向に延在しており、硬貨入金部12から繰り出された硬貨を後方に向けて搬送する。
貨幣処理装置10は、入金側搬送部15の位置に、前から順に、識別部20、放出案内部21、カセット案内部22、1円硬貨用の還流案内部23、100円硬貨用の還流案内部24、10円硬貨用の還流案内部25、50円硬貨用の還流案内部26、5円硬貨用の還流案内部27、500円硬貨用の還流案内部28およびスタッカ案内部29を有している。識別部20は、入金側搬送部15で搬送中の硬貨の真偽および金種を識別しつつ計数する。放出案内部21、カセット案内部22、還流案内部23〜28およびスタッカ案内部29は、入金側搬送部15で搬送中の硬貨を、識別部20の識別結果に基づいて入金側搬送部15から分流させるように案内する。
貨幣処理装置10は、硬貨入金部12の後側に、前から順に、プールカセット32(硬貨カセット)と、1円硬貨用の還流部33(繰出収納部)と、100円硬貨用の還流部34(繰出収納部)と、10円硬貨用の還流部35(繰出収納部)と、50円硬貨用の還流部36(繰出収納部)と、5円硬貨用の還流部37(繰出収納部)と、500円硬貨用の還流部38(繰出収納部)と、プールスタッカ39と、を有している。
貨幣処理装置10は、カルトン14と、プールカセット32と、これらを除く装置本体11とからなっている。カルトン14は、装置本体11に対し抜き差し可能であり、プールカセット32は装置本体11に対し着脱可能となっている。
放出案内部21は、入金側搬送部15から、カルトン載置部13に載置されたカルトン14に硬貨を案内する。放出案内部21は、例えば、識別部20の識別結果から真硬貨と判定できなかった受け入れ不可なリジェクト硬貨を入金側搬送部15からカルトン14に案内する。
カセット案内部22は、例えば、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨を入金側搬送部15からプールカセット32に案内する。プールカセット32は、上記したように装置本体11に対し着脱可能であり、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールカセット32は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部42を有している。
1円硬貨用の還流案内部23は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち1円硬貨のみを入金側搬送部15から1円硬貨用の還流部33に案内する。1円硬貨用の還流部33は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、1円硬貨のみを収納する。1円硬貨用の還流部33は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部43を有している。
100円硬貨用の還流案内部24は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち100円硬貨のみを入金側搬送部15から100円硬貨用の還流部34に案内する。100円硬貨用の還流部34は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、100円硬貨のみを収納する。100円硬貨用の還流部34は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部44を有している。
10円硬貨用の還流案内部25は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち10円硬貨のみを入金側搬送部15から10円硬貨用の還流部35に案内する。10円硬貨用の還流部35は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、10円硬貨のみを収納する。10円硬貨用の還流部35は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部45を有している。
50円硬貨用の還流案内部26は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち50円硬貨のみを入金側搬送部15から50円硬貨用の還流部36に案内する。50円硬貨用の還流部36は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、50円硬貨のみを収納する。50円硬貨用の還流部36は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部46を有している。
5円硬貨用の還流案内部27は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち5円硬貨のみを入金側搬送部15から5円硬貨用の還流部37に案内する。5円硬貨用の還流部37は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、5円硬貨のみを収納する。5円硬貨用の還流部37は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部47を有している。
500円硬貨用の還流案内部28は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち500円硬貨のみを入金側搬送部15から500円硬貨用の還流部38に案内する。500円硬貨用の還流部38は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、500円硬貨のみを収納する。500円硬貨用の還流部38は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部48を有している。
スタッカ案内部29は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨を入金側搬送部15からプールスタッカ39に案内する。プールスタッカ39は、装置本体11に着脱不可に組み込まれており、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールスタッカ39は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部49を有している。
いずれも硬貨を繰り出し可能に収納するプールカセット32、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、500円硬貨用の還流部38およびプールスタッカ39のうち、プールカセット32のみが装置本体11に対し着脱可能となっている。そして、プールカセット32は、硬貨の収納容量、言い換えれば満杯状態での硬貨量が、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部、5円硬貨用の還流部37およびプールスタッカ39のそれぞれの硬貨の収納容量よりも大きくなっており、これらそれぞれの4倍程度となっている。具体的に、プールカセット32の収納容量は600枚であり、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37およびプールスタッカ39のそれぞれの収納容量は150枚となっている。500円硬貨用の還流部38は、還流部33〜37およびプールスタッカ39のそれぞれと内部の容積は同等であるものの、収納対象が大径の500円硬貨であることから、収納容量は還流部33〜37およびプールスタッカ39のそれぞれよりも少なく、110枚となっている。硬貨入金部12およびカルトン14のそれぞれの収納容量も150枚となっている。
貨幣処理装置10は、装置本体11の入金側搬送部15とは反対側の側部に出金側搬送部55を有している。出金側搬送部55は、前後方向に延在しており、繰出部42〜49から繰り出された硬貨を硬貨入金部12に搬送する。
貨幣処理装置10には、図3に示すように、内部ユニット部122の前端の上部に、プールカセット32が設けられている。プールカセット32は、下方に凹む凹形状の収納体201と、収納体201の上部開口202を図2および図3に示すように回動開閉する板状の開閉体203と、収納体201に回動可能に連結された取っ手204とを有している。開閉体203は、収納体201の上部開口202の後縁側を中心に回動してこの中心から前方に延出して上部開口202を閉じ、この中心から上方に延出して上部開口202を開く。取っ手204は、収納体201の前後方向の中間部を中心に、後方に倒れた状態と上方に立ち上がる状態との間で回動する。
プールカセット32には、装置本体11の図4に示すカセット案内部22から硬貨を受け入れる図5に示す受入口210が収納体201の一側の上部に設けられており、図4に示す繰出部42に硬貨を繰り出す図5に示す繰出口211が収納体201の他側の上部に設けられている。これにより、装置本体11に対し着脱可能なプールカセット32は、装置本体11にセットされた状態で装置本体11から硬貨を受け入れて収納するとともに、装置本体11にセットされた状態で収納している硬貨を装置本体11に繰り出し可能となる。収納体201は、繰出口211を開閉可能な繰出口ゲート212を有しており、繰出口ゲート212の開放時に繰出口211から硬貨の繰り出しが可能となる。
収納体201は、その底部を構成する横搬送部215と、横搬送部215から斜めに立ち上がって繰出口211に硬貨を搬送する縦搬送部216とを有するベルトコンベア217を備えている。ベルトコンベア217には図示略の桟が等間隔で設けられており、縦搬送部216での硬貨の一枚ずつ分離した状態での縦搬送が可能となっている。繰出口211の位置には、硬貨の繰り出しを検知して硬貨を計数する繰出検知センサ220が設けられている。
図6および図7に示すように、プールカセット32は、開閉体203の回動中心とは反対側に開閉ロック部231を有している。開閉ロック部231は、開閉体203を閉状態で収納体201にロックするものであり、開閉体203の閉状態での下面に設けられている。開閉ロック部231は、図7に示すように、回転体232と、回転体付勢スプリング233と、一対のロック部材234,235とを有している。
回転体232は、円環板状の回転体本体241を有しており、回転体本体241は、開閉体203に平行に配置されて、開閉体203に回転可能に支持されている。回転体本体241には、図8および図9に示すように、回転体232の径方向に長い2カ所の長穴242,243が180°離れて2カ所形成されており、一方の長穴242の近傍にはスプリング係止部244が設けられている。回転体232は、回転体本体241の他方の長穴243の近傍から、図7に示すように開閉体203から離れる方向(閉状態での下方)に突出するロック解除ピン248を有している。回転体232は、開閉体203の回動中心側(開閉体203の閉時の後側)にスプリング係止部244が、開閉体203の回動中心とは反対側(開閉体203の閉時の前側)にロック解除ピン248が、それぞれ配置されている。
図8および図9に示すように、一方のロック部材234は、回転体232の左右方向一側(左側)で左右方向にスライドするように開閉体203に支持されており、一端側に設けられた係合ピン251で回転体232の長穴242に係合している。このロック部材234の他端側には、収納体201に形成された係合片部252に係合する係合爪253が形成されている。係合爪253には、その先端側の開閉体203とは反対側に図7に示す面取り254が形成されている。
図8および図9に示すように、他方のロック部材235は、回転体232の左右方向逆側(右側)で左右方向にスライドするように開閉体203に支持されており、一端側に設けられた係合ピン261で回転体232の長穴243に係合している。このロック部材235の他端側には、収納体201に形成された係合片部262に係合する係合爪263が形成されている。係合爪263には、その先端側の開閉体203とは反対側に図7に示す面取り264が形成されている。
図8および図9に示す回転体付勢スプリング233は、一端側が開閉体203に、他端側が回転体232のスプリング係止部244に係止されている。回転体付勢スプリング233は、回転体232のスプリング係止部244を引っ張ることになり、これにより、一対のロック部材234,235を左右両外側に位置するように付勢する。開閉ロック部231は、一対のロック部材234,235が、回転体付勢スプリング233の付勢力によって最も係合爪253,263を離間させた状態で、開閉体203が開状態から閉状態になると、一対の係合爪253,263が、図7に示す一対の面取り254,264において収納体201の図8に示す一対の係合片部252,262に当接し、一対の面取り254,264が受ける一対の係合片部252,262からの反力で、回転体付勢スプリング233の付勢力に抗して互いに近づきながら一対の係合片部252,262を越える。すると、一対の係合爪253,263が回転体付勢スプリング233の付勢力で互いに離間して、図8に示すように一対の係合片部252,262に係合する。これにより、開閉体203は、閉状態でロックされることになる。つまり、回転体付勢スプリング233は、一対のロック部材234,235を、両側の係合爪253,263で収納体201の両側の係合片部252,262に係合するように付勢する。このようにして、開閉ロック部231は、開閉体203を閉状態で収納体201にロックする。
このような閉ロック状態から、ロック解除ピン248が、左右方向のロック部材234側つまり左側に押圧されて、図9に示すように回動すると、回転体付勢スプリング233の付勢力に抗して回転体232が回転することになる。すると、一対のロック部材234,235が互いの係合爪253,263を近づけるように移動して、収納体201の係合片部252,262から離間してロックが解除される。これにより、開閉体203は、収納体201に対して回動可能となり、開作動可能となる。
プールカセット32は、収納体201の前部つまり開閉体203の回動中心とは反対側に、図6に示す別体のキー部材268のキー操作で開閉ロック部231のロックを解除するキーロック解除機構271を有している。
キーロック解除機構271は、その支持部材272において収納体201に取り付けられており、支持部材272は収納体201に固定されている。キーロック解除機構271は、図10〜図15に示すように、支持部材272と、支持部材272に取り付けられるキーシリンダ273と、支持部材272に上下移動可能に支持されるスライダ274と、支持部材272に回動可能に支持されるロック解除部材283と、を有しており、図11および図14に示すように、スライダ274を付勢するスライダ付勢スプリング275と、キーシリンダ273に連結される舌片部材281と、舌片部材281を付勢する舌片部材付勢スプリング282と、を有している。
図10〜図15に示すように、支持部材272は、板材からなる支持部材本体291と、支持部材本体291から後方に突出する2つのスライド支持ピン292,293とを有している。2つのスライド支持ピン292,293は高さを合わせて左右に離間して配置されている。支持部材本体291には、下部の前部に開口部294が、下部の後部に図11および図14に示すスプリング係止部295およびスプリング係止部296が形成されている。
スライダ274は、支持部材本体291の後側に配置されており、上下方向に長い2カ所のスライド長穴301,302を有している。スライダ274は、一方のスライド長穴301に一方のスライド支持ピン292が挿入されており、他方のスライド長穴302に他方のスライド支持ピン293が挿入されている。これにより、スライダ274は、スライド長穴301,302がスライド支持ピン292,293に対し移動可能な範囲で、支持部材272に上下移動可能に支持されている。スライダ274には、2カ所のスライド長穴301,302の間にこれらよりも大きい挿入長穴303が形成されている。
また、スライダ274は、下部に前方に突出する図10および図13に示す突出片部311を有している。突出片部311は、支持部材272の開口部294の位置に配置されている。また、スライダ274は、一方のスライド長穴301と挿入長穴303との間に、後方に突出する図11および図14に示す入力ピン312を有しており、他方のスライド長穴302の挿入長穴303とは反対側に、前方に突出する図10および図13に示す出力ピン313を有している。さらに、スライダ274は、上部に図11および図14に示すスプリング係止部314を有している。このスプリング係止部314にスライダ付勢スプリング275の一端部が係止され、スライダ付勢スプリング275の他端部が支持部材272のスプリング係止部295に係止されている。スライダ付勢スプリング275はスライダ274を下向きに付勢する。
キーシリンダ273は、支持部材本体291に固定される図10等に示す固定部材341と、前面に設けられたキー穴342に対応する別体の図6に示すキー部材268が差し込まれるとキー部材268と一体に回転可能となる図10等に示す回転部343とを有している。キーシリンダ273は、支持部材本体291から後方に延出しており、スライダ274の挿入長穴303に挿入されている。舌片部材281は、回転部343に固定されており、回転部343から入力ピン312の方向に延出して、入力ピン312の下側に配置されている。これにより、キー穴342にキー部材268が差し込まれてキー部材268と一体に回転部343および舌片部材281が回転させられると、図14に示すように、舌片部材281の延出先端側が上昇し、入力ピン312を持ち上げる。これにより、スライダ274が上昇する。舌片部材付勢スプリング282は一端部が支持部材272のスプリング係止部296に係止され、他端部が舌片部材281の先端側のスプリング係止部344に係止されて舌片部材281を下向きに付勢する。
ロック解除部材283は、図10等に示すように、支持部材272のスライド支持ピン293に回動可能に支持されており、スライド支持ピン293から挿入長穴303とは反対側に延出する横アーム部351と、スライド支持ピン293から上方に延出する縦アーム部352とを有している。横アーム部351には、ロック解除部材283の回動中心であるスライド支持ピン293とは反対側の端部に横アーム部351の長さ方向に長い長穴353が形成されている。縦アーム部352には、スライド支持ピン293とは反対側の端部つまり上端部に後方に突出する押圧ピン354が設けられている。長穴353にはスライダ274の出力ピン313が挿入されている。
これにより、キー部材268がキーシリンダ273に差し込まれて時計回りに回転操作され、キー部材268と一体に回転部343および舌片部材281が舌片部材付勢スプリング282の付勢力に抗して回転して、図13〜図15に示すように、スライダ274を上昇させると、スライダ274の出力ピン313で横アーム部351が上方に押圧され、ロック解除部材283がスライド支持ピン293を中心に回動して、押圧ピン354を左右方向で長穴353とは反対方向つまり左方に移動させる。押圧ピン354のこの移動方向の前側に、閉状態にある開閉体203に設けられた開閉ロック部231のロック解除ピン248が、図12および図15に示すように配置されている。このため、図12から図15に示す左方に移動する押圧ピン354は、ロック解除ピン248を押圧して回転体232を回転させ、一対のロック部材234,235を、係合爪253,263を近づけるようにスライドさせて、図9に示すように収納体201の係合片部252,262から離間させる。キーロック解除機構271は、このようにして、別体のキー部材268のキー操作で開閉ロック部231のロックを解除する。
この状態から、キー部材268がキーシリンダ273からの引き抜きのため反時計回りに回転操作されると、これと一体に回転部343および舌片部材281が回転する。すると、スライダ274が自重およびスライダ付勢スプリング275の付勢力で入力ピン312を舌片部材281に当接させながら下降する。これにより、出力ピン313が下降して、ロック解除部材283を、その押圧ピン354を右方に移動させる。すると、回転体232が回転体付勢スプリング233の付勢力で、ロック解除ピン248をロック解除部材283の押圧ピン354に当接させながら回転し、一対のロック部材234,235を、係合爪253,263を離すようにスライドさせる。これにより、係合爪253,263が収納体201の係合片部252,262に係合可能な状態になる。
装置本体11は、プールカセット32が着脱可能にセットされる図16および図17に示すカセットハウジング331を有している。カセットハウジング331は、下方に凹む凹形状をなしており、その内側にその上部開口332からプールカセット32の収納体201が挿入される。カセットハウジング331には、プールカセット32が挿入されると、その収納体201で押圧されるカセットセット検知センサ355が底部に設けられている。また、カセットハウジング331には、前壁部356に、前後に貫通する貫通穴357が形成されている。さらに、カセットハウジング331には、前壁部356の上部に、プールカセット32の開閉体203の開閉を検知する開閉検知センサ358が設けられている。
装置本体11は、装置本体11にセットされた状態のプールカセット32の開閉ロック部231のロックを電動で解除する装置本体側ロック解除機構361を有している。装置本体側ロック解除機構361は、カセットハウジング331の前壁部356に設けられている。
装置本体側ロック解除機構361は、カセットハウジング331の前壁部356に取り付けられるベース部材362と、いずれもベース部材362に取り付けられたソレノイド363、支持軸364、作動部材365および作動検知センサ366を有している。
図12および図15に示すように、ソレノイド363は、ベース部材362に固定される本体部材371と、本体部材371に対してスライドするプランジャ372とを有している。プランジャ372は本体部材371から下方に突出している。ソレノイド363は、本体部材371に電気信号が入力されることでプランジャ372が本体部材371に対してスライドして引き上げられる。
支持軸364は、左右方向に沿う姿勢で、ベース部材362に支持されている。支持軸364は、プランジャ372と高さを合わせており、プランジャ372の前方に配置されている。
作動部材365は、支持軸364にこれを中心に回動するように支持されている。作動部材365は、支持軸364に平行に配置される中間板部375と、中間板部375の一端から後方に延出してプランジャ372に回動可能に連結される連結腕部376と、中間板部375の一端から上方に延出する検知片部377と、中間板部375の他端から後方に延出する作動腕部378と、を有している。連結腕部376および作動腕部378の中間板部375側が支持軸364に支持されている。作動腕部378は、図16および図17に示すようにカセットハウジング331の前壁部356に設けられた貫通穴357に挿入されている。
作動腕部378は、図18および図19に示すように、カセットハウジング331の内側まで延出しており、延出側の先端部が、図17に示すようにカセットハウジング331にセットされたプールカセット32の、図12に示すキーロック解除機構271の開口部294に近接してその鉛直下方に配置される。この状態から、電気信号をソレノイド363に入力すると、プランジャ372が上昇し、作動部材365の連結腕部376を引き上げる。
すると、作動部材365が支持軸364を中心に連結腕部376および作動腕部378を上方に移動させるように回動することになり、その結果、図15に示すように作動腕部378がキーロック解除機構271の開口部294に入り込んで上昇し、キーロック解除機構271のスライダ274の突出片部311に下側から当接して、スライダ274を図14に示すスライダ付勢スプリング275の付勢力に抗して上昇させる。図15に示すようにスライダ274が上昇すると、出力ピン313で横アーム部351が上方に押圧されてロック解除部材283がスライド支持ピン293を中心に回動して押圧ピン354を左方に移動させる。左方に移動する押圧ピン354は、開閉ロック部231のロック解除ピン248に当接し、これを押圧して、回転体232を回転体付勢スプリング233の付勢力に抗して回転させ、一対のロック部材234,235を、互いの係合爪253,263を近づけるようにスライドさせて、図9に示すように収納体201の係合片部252,262から離間させてロックを解除する。図12,図15〜図19に示す装置本体側ロック解除機構361は、このようにして、装置本体11にセットされた状態のプールカセット32の開閉ロック部231のロックを電動で解除する。
この状態から、電気信号のソレノイド363への入力を停止させると、プランジャ372の上昇方向の駆動が解除され、作動部材365の作動腕部378によるスライダ274の上方の押圧を解除する。すると、スライダ274が自重およびスライダ付勢スプリング275の付勢力で下降する。このとき、プランジャ372の自重と作動部材365の連結腕部376および作動腕部378の自重とにより、作動部材365の作動腕部378も下がる。スライダ274の下降により、出力ピン313が下降して、ロック解除部材283を、その押圧ピン354を右方に移動させるように回動させる。すると、回転体232が回転体付勢スプリング233の付勢力で、ロック解除ピン248をロック解除部材283の押圧ピン354に当接させながら回転し、一対のロック部材234,235を、係合爪253,263を離すようにスライドさせる。これにより、係合爪253,263が収納体201の係合片部252,262に係合可能な状態になる。
作動検知センサ366は、作動部材365が開閉ロック部231のロックを解除するロック解除位置にあることを図19に示すように検知片部377を検知することで検知し、作動部材365が開閉ロック部231のロックを解除しないロック位置にあることを図18に示すように検知片部377を検知しないことで検知する。
カセットハウジング331は、図16から図17に示すようにプールカセット32が挿入されると、その前壁部356が、プールカセット32のキーシリンダ273を覆ってキー穴342へのキー部材268の挿入を規制する。これにより、キーロック解除機構271は、プールカセット32が装置本体11にセットされた状態では、キー部材268を使ってのキー操作が規制されるようになっている。
装置本体11のカセットハウジング331は、カセットハウジング331にセットされた状態のプールカセット32をセット状態でロックするとともに電動でロックが解除される図20〜図22に示すカセットロック機構401を有している。図20に示すように、プールカセット32の収納体201の側部には、ロック穴390が形成されており、カセットロック機構401は、このロック穴390にロック部材407が進入することでプールカセット32をロックする一方、ロック部材407がロック穴390から退避することでプールカセット32のロックを解除する。
図21に示すように、カセットロック機構401は、カセットハウジング331の側面に取り付けられたベース部材402と、いずれもベース部材402に取り付けられたソレノイド403、支持軸404、作動部材405、支持軸406、ロック部材407および作動検知センサ408を有している。
ソレノイド403は、ベース部材402に固定される本体部材411と、本体部材411に対してスライドするプランジャ412とを有しており、本体部材411に電気信号が入力されることでプランジャ412が本体部材411に対して引き込み方向にスライドする。プランジャ412は本体部材411から前方に突出している。
支持軸404は、上下方向に沿う姿勢で、ベース部材402に支持されている。支持軸404は、プランジャ412と前後方向の位置を合わせており、プランジャ412とカセットハウジング331との間に配置されている。
作動部材405は、支持軸404にこれを中心に回動するように支持されている。作動部材405は、支持軸404に支持されるとともに前方に延出する作動胴部415と、作動胴部415の支持軸404側からプランジャ412の方向に延出してプランジャ412に連結される連結腕部416と、作動胴部415の支持軸404側から上方に延出するスプリング係止腕部417と、作動胴部415の中間位置からカセットハウジング331とは反対側に突出する検知片部418と、を有している。
支持軸406は、前後方向に沿う状態でベース部材402に支持されており、ロック部材407は、この支持軸406にこの支持軸406を中心に回動するように支持されている。ロック部材407の下部には、上方に凹む係合凹部422が形成されている。作動部材405は、作動胴部415が、支持軸404とは反対の先端凸部425でロック部材407の係合凹部422に係合している。作動部材405のスプリング係止腕部417には、作動部材付勢スプリング431の一端部が係止されており、作動部材付勢スプリング431の他端部は、ベース部材402のスプリング係止部432に係止されている。作動部材405は、作動部材付勢スプリング431の付勢力によって先端凸部425を最もカセットハウジング331に近づけており、先端凸部425に係合凹部422で係合するロック部材407をカセットハウジング331内に突出させている。
この状態で、プールカセット32がカセットハウジング331に挿入されると、プールカセット32がロック部材407に当接してこれを押圧する。すると、ロック部材407は、作動部材付勢スプリング431の付勢力に抗して作動部材405を支持軸404を中心に回転させながら、支持軸406を中心に回転して、カセットハウジング331内から退避方向に移動する。プールカセット32がカセットハウジング331の所定のセット位置まで挿入されると、プールカセット32のロック穴390の位置がロック部材407と合うことになり、ロック部材407は、作動部材付勢スプリング431の付勢力で作動部材405を支持軸404を中心に回転させながら、支持軸406を中心に回転して、ロック穴390に入り込む。これにより、プールカセット32が、カセットハウジング331つまり装置本体11にロックされる。つまり、カセットロック機構401が、装置本体11にセットされた状態のプールカセット32をセット状態でロックする。
このロック状態から、電気信号をソレノイド403に入力すると、プランジャ412が後方に移動し、作動部材405の連結腕部416を後方に移動させる。すると、作動部材405が支持軸404を中心に作動胴部415の先端凸部425をカセットハウジング331から離すように回動することになり、その結果、先端凸部425に係合凹部422で係合するロック部材407がロック穴390から退避する。これにより、プールカセット32のカセットハウジング331つまり装置本体11へのロックが解除される。カセットロック機構401は、装置本体11にセットされた状態のプールカセット32のロックがこのように電動で解除される。
この状態から、電気信号のソレノイド403への入力を停止させると、プランジャ412の後方への駆動が解除され、作動部材405が、作動部材付勢スプリング431の付勢力によって、支持軸404を中心に先端凸部425を最もカセットハウジング331に近づける方向に回転し、先端凸部425に係合凹部422で係合するロック部材407をカセットハウジング331内に突出させる。
作動検知センサ408は、作動部材405およびロック部材407がプールカセット32のロックを解除するロック解除位置にあることを、図22に示すように検知片部418を検知することで検知し、作動部材405およびロック部材407がプールカセット32のロックを解除しないロック位置にあることを検知片部418を検知しないことで検知する。
制御部61は、操作表示部62への操作入力に基づいて、貨幣処理装置10を第1の動作モードと、第2の動作モードとに切り替えて動作させることが可能となっている。
[第1の動作モード]
第1の動作モードでは、制御部61は、プールスタッカ39を、入金処理時に硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部とし、プールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を、収納処理時にプールスタッカ39から繰り出された硬貨のうち、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部とする。つまり、第1の動作モードでは、プールカセット32が、還流部33でオーバーフローする1円のオーバーフロー硬貨、還流部34でオーバーフローする100円のオーバーフロー硬貨、還流部35でオーバーフローする10円のオーバーフロー硬貨、還流部36でオーバーフローする50円のオーバーフロー硬貨、還流部37でオーバーフローする5円のオーバーフロー硬貨および還流部38でオーバーフローする500円のオーバーフロー硬貨を、金種混合で繰り出し可能に収納する。収納処理時に、収納しようとしている硬貨の枚数が、その収納先の還流部の収納容量から現在の硬貨量を減算した収納許容量を超えていると、収納許容量を超えた分の硬貨がオーバーフロー硬貨となる。
以下、いずれも第1の動作モードで実行される、第1の入金処理、第1の返却処理、第1の収納処理、第1のカセット補充処理、第1のダイレクト補充処理、第1の入金部補充処理、第1の出金処理、第1の自己精査処理、第1のカセット収集処理、第1のカルトン収集処理、第1の整理計数処理、第1の分配回収処理および第1の分配処理について説明する。
「第1の入金処理」
第1の動作モードでは、プールスタッカ39が、入金処理時に硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用されるため、第1の入金処理開始時点で、プールスタッカ39は空の状態にあり、第1の入金処理で一度に処理する入金枚数は、プールスタッカ39の収納容量である150枚以下に限定されている。
制御部61は、第1の入金処理を開始すると、まず、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、この硬貨入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、硬貨入金部12のシャッタ12aを閉じ、硬貨入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、硬貨入金部12から繰り出された硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨を、図23に太実線で示すように入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送しプールスタッカ39に一時貯留する。その一方で、識別部20で受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を、図23に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。このとき、汚損硬貨および旧500円硬貨も真硬貨としてプールスタッカ39へ搬送する。また、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨のうち、プールスタッカ39の収納容量(150枚)を超える硬貨は、放出案内部21でカルトン14に搬送する。硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨の合計金額および金種別の枚数等を操作表示部62に表示させて、操作表示部62への確定指示操作、返却指示操作を待機する状態となって、第1の入金処理を終了する。このように、第1の収納処理では、プールスタッカ39が、硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部となる。
「第1の返却処理」
第1の入金処理の終了後、操作表示部62へ返却指示操作が入力されると、制御部61は、第1の返却処理を開始する。つまり、図24に太実線で示すように、プールスタッカ39の硬貨を、繰出部49で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送する。そして、プールスタッカ39、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の返却処理を終了する。このようにプールスタッカ39内の硬貨をカルトン14に全て搬送して、操作者に取り出させる。
「第1の収納処理」
第1の入金処理の終了後、操作表示部62へ確定指示操作が入力されると、制御部61は、第1の収納処理を開始する。つまり、図25に太実線で示すように、プールスタッカ39の硬貨を、繰出部49で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別する。そして、この識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。すなわち、1円硬貨を1円硬貨用の還流案内部23で1円硬貨用の還流部33に、100円硬貨を100円硬貨用の還流案内部24で100円硬貨用の還流部34に、10円硬貨を10円硬貨用の還流案内部25で10円硬貨用の還流部35に、50円硬貨を50円硬貨用の還流案内部26で50円硬貨用の還流部36に、5円硬貨を5円硬貨用の還流案内部27で5円硬貨用の還流部37に、500円硬貨を500円硬貨用の還流案内部28で500円硬貨用の還流部38に、それぞれ収納する。言い換えれば、金種別の還流部33〜38は、一時貯留部としてのプールスタッカ39から繰り出された硬貨を繰り出し可能に収納する金種別の繰出収納部となる。なお、識別部20の識別結果に基づいて、各還流部33〜38のオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、図25に太破線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。そして、プールスタッカ39、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の収納処理を終了する。このように、第1の収納処理では、プールカセット32が各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部となる。
なお、第1の収納処理の緊急時対応として、プールカセット32をもオーバーフローするオーバーフロー硬貨が生じた場合、このようなオーバーフロー硬貨については、放出案内部21でカルトン14に搬送することも可能である。この場合、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。具体的には、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へオーバーフロー硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までのオーバーフロー硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。
あるいは、プールカセット32をもオーバーフローするオーバーフロー硬貨が生じる前に、プールカセット32の収納量が所定の回収基準枚数に達した時点で、一旦処理を停止して、操作者に対してプールカセット32の交換を促す報知を行い、プールカセット32の交換を検知後に処理を再開するようにしても良い。
「第1のカセット補充処理」
第1のカセット補充処理は、貨幣処理装置10の外部で予めプールカセット32に収納された硬貨を、金種別の還流部33〜38に補充する処理である。第1のカセット補充処理は、硬貨が全く収納されていない貨幣処理装置10に、業務開始前に、金種毎に予め定められた枚数の硬貨を一括して装填するために実施される処理である。よって、第1のカセット補充処理は、貨幣処理装置10のプールカセット32以外に硬貨がある場合に動作不可となる。硬貨の有無判断は、直前までの履歴データ(前日の全回収の有無による)に基づく。なお、第1のカセット補充処理は、プールカセット32を用いた補充(装填)のため、操作者が現金に直接触れることがなく、特別な権限を要しない操作者が行うことができる処理となっている。
硬貨が空の状態の貨幣処理装置10に対する運用前の第1のカセット補充処理に際し、例えば各金種50枚ずつの硬貨(全体で6金種300枚となる)が装填されたプールカセット32を装置本体11にセットする。そして、第1のカセット補充処理を行うことで、還流部33〜38のそれぞれに50枚ずつの硬貨が収納されることになって入出金取引を開始することが可能となる。勿論、プールカセット32への装填枚数は各金種50枚ずつに限らない。
第1のカセット補充処理を開始すると、制御部61は、図26に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。言い換えれば、金種別の還流部33〜38は、一括収納庫としてのプールカセット32から繰り出された硬貨を金種別に繰り出し可能に収納する。なお、識別部20の識別および計数結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、図26に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39に収納する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1のカセット補充処理を終了する。
第1のカセット補充処理後にプールスタッカ39に硬貨があると、制御部61は、プールスタッカ39内の硬貨をすべて、繰出部49で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、カセット案内部22でプールカセット32へ収納する。
なお、設定によるが、第1のカセット補充処理は操作者に現金を触らせないことも目的としているので、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨と識別されなかったリジェクト硬貨と、真硬貨と識別された汚損硬貨および旧500円硬貨とは、オーバーフロー硬貨と同様、一旦プールスタッカ39へ搬送し、プールカセット32からの第1のカセット補充処理の終了後に、プールスタッカ39の硬貨をプールカセット32へ搬送する。その際に、制御部61は、リジェクト硬貨については枚数を把握し、汚損硬貨および旧500円硬貨については金種別の枚数を把握する。但し、識別部20の識別結果からリジェクト硬貨と判定された硬貨については、放出案内部21でカルトン14に搬送しても良い。また、汚損硬貨および旧500円硬貨についても、同様にカルトン14に搬送しても良い。
ここで、第1のカセット補充処理において、硬貨が充填されたプールカセット32の装置本体11へのセットのため、操作表示部62に所定の操作が入力されると、制御部61は、音声出力部147で警報を発生させて、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の引き出しを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の引き出し操作が入力されると、移動機構153が電動で貨幣処理ユニット112を筐体111から引き出す。このとき、制御部61は、移動機構153により、貨幣処理ユニット112をプールカセット32の装置本体11からの取り出しおよびセットが可能な所定の引き出し位置まで移動させる。貨幣処理ユニット112を所定の引き出し位置まで移動させて停止させると、制御部61は、カセットロック機構401のソレノイド403に電気信号を出力して、ソレノイド403を電気的に駆動する。すると、上記したように、ソレノイド403が作動部材405を回動させて、その先端凸部425で、これに係合凹部422で係合するロック部材407をロック穴390から退避させて、プールカセット32の装置本体11に対するロックを解除する。これにより、プールカセット32が装置本体11から取り出し可能となる。ソレノイド403に電気信号を出力後、制御部61は、操作表示部62にプールカセット32の取り出しを促す表示を表示させる。
操作者が、取っ手204を持って、装置本体11にセットされている空のプールカセット32を引き上げると、カセットセット検知センサ355がプールカセット32の取り外しを検知することになる。すると、制御部61は、ソレノイド403への電気信号を停止して、ソレノイド403の電気的に駆動を解除するとともに、操作表示部62にプールカセット32のセットを促す表示を表示させる。ソレノイド403の駆動解除で、ロック部材407がカセットハウジング331内に突出する状態になる。この状態で、硬貨が充填された状態のプールカセット32がセットされる。プールカセット32がセットされると、ロック部材407がロック穴390に係合してプールカセット32を装置本体11にロックする。
プールカセット32が装置本体11にセットされたことをカセットセット検知センサ355が検知すると、制御部61は、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の押し込みを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の押し込み操作が入力されると、移動機構153が電動で貨幣処理ユニット112を筐体111に押し込む。貨幣処理ユニット112が筐体111に押し込まれると、制御部61は、移動機構153を停止させるとともに、音声出力部147の警報を停止させる。
ここで、プールカセット32に硬貨を装填する場合、操作者は、キー部材268をキーロック解除機構271のキーシリンダ273に差し込んで回転させる。すると、キー部材268と一体に回転部343および舌片部材281が回転して、スライダ274を上昇させ、ロック解除部材283および回転体232を回転させて、一対のロック部材234,235の係合爪253,263を近づけて係合爪253,263を係合片部252,262から離してロックを解除する。これにより、開閉体203が開放可能となる。操作者は、手動で開閉体203を開いて、収納体201に硬貨を装填する。その後、開閉体203を閉じ、その後、キー部材268をキーシリンダ273からの引き抜きのため回転させると、ロック部材234,235の係合爪253,263が係合片部252,262に係合して開閉体203をロックする。開閉体203を閉じる前に、キー部材268をキーシリンダ273からの引き抜きのため回転させておくと、ロック部材234,235の係合爪253,263が離れており、その後、開閉体203が閉じられると係合片部252,262に係合して開閉体203をロックする。
「第1のダイレクト補充処理」
第1のダイレクト補充処理は、硬貨入金部12に硬貨を投入して還流部33〜38に硬貨を補充する。これにより、カセットの着脱作業等が不要となる。なお、第1のダイレクト補充処理は、主に銀行業務開始前に活用する処理である。第1のダイレクト補充処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。第1のダイレクト補充処理は、そもそも現金を操作者が直接取り扱えるため、リジェクト硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨をカルトン14に回収するようにでき、業務開始前に、これらの硬貨を貨幣処理装置10内に保管しなくて済む。すなわち、当初装填した硬貨をすべて、その後の出金業務に使用することができる。
制御部61は、第1のダイレクト補充処理を開始すると、まず、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、この硬貨入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、硬貨入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、図27に太実線で示すように、硬貨入金部12から繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。なお、識別部20の識別および計数結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、図27に太破線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。そして、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1のダイレクト補充処理を終了する。なお、識別部20の識別結果に基づいて、受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、放出案内部21でカルトン14に搬送する。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨は、オーバーフロー硬貨と同様、カセット案内部22でプールカセット32に収納しても良い。
「第1の入金部補充処理」
第1の入金部補充処理は、貨幣処理装置10に、業務時間内に一部金種の硬貨がニアエンド状態を含む不足状態になったとき(ニアエンド枚数以下になったとき、または、追加補充推奨枚数以下になったとき)など、当該不足状態となった金種の硬貨を補充装填するために、実施される処理である。第1の入金部補充処理には、二つの方式がある。一つは、硬貨入金部12に投入された硬貨をすべて還流部33〜38の対応する金種のものに補充する方式である。この方式は、操作性は良いが、本来補充すべき金種硬貨が補充されない可能性が残る。もう一つは、補充する金種別の枚数を操作表示部62に入力の上で、硬貨入金部12に投入された硬貨を、入力値との一致を確認しながら補充する。操作性は多少煩雑であり、入力値と補充値とが一致する必要性はあるが、本来補充すべき金種硬貨でない場合は、データ入力時点で警告させることができる。警告時には、補充すべき金種硬貨を再確認、準備の上、データ入力をやり直す。この場合、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
第1の入金部補充処理は、図23に示す第1の入金処理と、図24に示す第1の返却処理または図25に示す第1の収納処理とを行う。第1の入金処理と第1の収納処理とを行うと、硬貨入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。または、図27に示すように、第1のダイレクト補充処理と同様の処理を行って、硬貨入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。
「第1の出金処理」
第1の出金処理は、出金データに基づいて、図28に太実線で示すように、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから、繰出部43〜48の対応する金種のものによって、硬貨を、計数しつつ出金側搬送部55に繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。還流部33〜38の対応する金種のものから出金データのすべての硬貨が繰り出された後、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の出金処理を終了する。ここで、識別部20の識別および計数結果から、リジェクト硬貨が検出されると、この硬貨は、図28に太破線で示すように、入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送する。識別部20において識別されてカルトン14に振り分けられた硬貨が、金種別の出金予定枚数に達していない硬貨があれば、リジェクト硬貨が当該硬貨であるとして、当該金種の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものからさらに追加で繰り出して、金種別の出金予定枚数に達するように制御する。出金完了時、ブザー等の報知を確認して、操作者は、カルトン14の硬貨を顧客に出金する。なお、第1の出金処理では、識別部20で汚損硬貨と判定された硬貨であってもカルトン14へ搬送してそのまま出金する。
第1の出金処理の完了、報知と並行して、プールスタッカ39に硬貨がある場合には、操作者の顧客への出金作業中の待機時間を利用して、プールスタッカ39より硬貨を繰出部49で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送し、再度、識別部20で識別させる。その結果、真硬貨と識別され金種が識別された硬貨は、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。これにより、操作者に確認を行わせることになる。または、この場合のリジェクト硬貨は、一度は識別されて還流部33〜38の対応する金種のもの収納された硬貨であるため、その金種は予想可能であり、予想された金種の硬貨として、プールカセット32に収納させても良い。
「第1の自己精査処理」
第1の自己精査処理は、図29に太実線で示すように、還流部33〜38のうちの精査対象のものから一旦すべての硬貨を繰り出して硬貨入金部12に貯留し、その後、硬貨入金部12から識別部20で識別および計数しつつ、識別結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応する金種のもので還流部33〜38の対応金種のものに収納させる。第1の自己精査処理では、還流部33〜38を所定の順番で精査する。ここでは、小径硬貨の還流部から順に、すなわち、1円硬貨用の還流部33、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、500円硬貨用の還流部38の順番で精査する。なお、この順は、必須ではなく、金額の小さい順(または大きい順)でも構わない。還流部33〜38の配置の位置で、前方から、あるいは後方から順に行う等でも良い。
第1の自己精査処理を開始すると、制御部61は、1円硬貨用の還流部33の硬貨を繰出部43で計数しつつ全て繰り出して還流部33を空にする。これと並行して、還流部33から繰り出された硬貨を全て、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送する。次に、制御部61は、硬貨入金部12から硬貨を繰り出し入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数する。識別部20の識別結果から、1円硬貨は還流案内部23で還流部33に収納する。識別部20にて、異なる金種の硬貨であると識別された硬貨は、還流案内部24〜28の対応するもので、還流部34〜38の対応する金種のものに収納する。硬貨入金部12の収納容量は、還流部33の収納容量と等しいので、還流部33の硬貨をすべて硬貨入金部12で受け、還流部33が空になってから、硬貨入金部12の硬貨を還流部33に向けて送り出すことができる。なお、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、図29に太破線で示すように、スタッカ案内部29で、空であるプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から繰出部49で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。リジェクト硬貨の処理は、全金種終了後にまとめて行っても良い。また、識別部20で、汚損硬貨または旧500円硬貨と識別された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。
硬貨入金部12より繰り出された全ての硬貨が還流部33に搬送された場合(即ち、エラーなしの場合)、制御部61は、次の50円硬貨用の還流部36について同様に精査処理を行い、同様にして、5円硬貨用の還流部37、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、500円硬貨用の還流部38の順に精査処理を行う。
500円硬貨用の還流部38までの精査処理が終わると、制御部61はプールカセット32内の硬貨(オーバーフロー硬貨、汚損硬貨、旧500円硬貨)を繰出部42によって計数しつつ全て繰り出す。プールカセット32から繰出部42によって繰り出された硬貨を出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12に一時貯留する。このとき、プールカセット32内の硬貨量が硬貨入金部12内の収納容量以下であれば、硬貨を硬貨入金部12に一時貯留することで、プールカセット32内の硬貨を空にすることができる。この場合、プールカセット32内の硬貨を空にした後、硬貨入金部12の硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数して精査しながらプールカセット32に収納する。これにより、プールカセット32を精査する。
ここで、プールスタッカ39が空(リジェクト硬貨がなし)であれば、プールカセット32の硬貨を硬貨入金部12およびプールスタッカ39に搬送してプールカセット32を空にすることができる。つまり、第1の自己精査処理時に、プールスタッカ39が空の状態で、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の精査を開始する場合、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の枚数が、硬貨入金部12の収納容量とプールスタッカ39の収納容量とを合わせた枚数までであれば精査が可能となる。ここでは、硬貨入金部12の収納容量が150枚であり、プールスタッカ39の収納容量が150枚であるため、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の枚数が最大300枚までであれば、最初の150枚の硬貨を、プールカセット32から繰出部42で計数しつつ繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数しながらスタッカ案内部29でプールスタッカ39に案内する。次に、残りの150枚までの硬貨を、プールカセット32から繰出部42で計数しつつ繰り出し、出金側搬送部55で硬貨入金部12に搬送し、硬貨入金部12に留めておく。このようにして、プールカセット32を空にしてから、硬貨入金部12の硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数して精査しながらカセット案内部22でプールカセット32に収納し、その後、プールスタッカ39の硬貨を出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して精査しながらカセット案内部22でプールカセット32に収納することで、最大300枚の硬貨を精査できる。
以上のようにして、プールカセット32の精査処理が終わると、制御部61は、操作表示部62上に今回の自己精査処理の結果(金種毎の硬貨枚数、合計金額、収納場所の表示など)と、精査前の機内有り高とを表示し、これらに差異があれば、機内有り高を今回の結果に合わせるか否かを、操作表示部62への操作入力で操作者に選択させて、第1の自己精査処理を終了する。
「第1のカセット収集処理」
プールカセット32による全回収の動作処理である。カセット収集処理は、基本的には、プールカセット32が空になっている状態で行う。第1のカセット収集処理を行うにあたって、プールカセット32に硬貨が収納されている場合、制御部61は、例えば、空のプールカセット32への交換を促し、プールカセット32が空であることを確認してから第1のカセット収集処理を行う。なお、プールカセット32内の硬貨が精査済みであることを条件として、回収金をプールカセット32に元から入っている硬貨と合算して行う処理も可能である。
第1のカセット収集処理では、図30に太実線で示すように、還流部33〜38から繰出部43〜48で硬貨を同時に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して、リジェクト硬貨以外の真硬貨(汚損硬貨および旧500円硬貨を含む)をカセット案内部22でプールカセット32へ収納する。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨を識別したときは、これらを入金側搬送部15およびスタッカ案内部29で一旦プールスタッカ39に収納し、還流部33〜38の硬貨が空になった後、プールスタッカ39に収納してある汚損硬貨および旧500円硬貨について、別メニューの混合スタッカ収集により回収しても良い。また、還流部33〜38から繰出部43〜48で硬貨を同時に繰り出すのではなく、還流部33〜38の一つですべての硬貨を繰り出したら、次の一つですべての硬貨を繰り出すという処理を順に行うようにしても良い。
他方、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨については、図30に太破線で示すように、入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から再び繰出部49で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度、識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された硬貨は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。
エラーの発生がなく処理が進み、プールカセット32に還流部33〜38の硬貨がすべて収納されると、制御部61は、第1のカセット収集処理を終了する。
エラーの発生がなく処理が進み、プールカセット32の収納容量を超えた枚数、つまり601枚以上となった硬貨は、還流部33〜39(プールスタッカ39を含む)へ戻される。または、それぞれの還流部33〜39からの繰り出しに際して計数される繰り出し枚数から、合計601枚以上の硬貨を還流部33〜39から繰り出さないように制御しても良い。
第1のカセット収集処理中に、600枚の硬貨が収納されたプールカセット32は、その識別番号が識別部20において識別された金種別の枚数データとともに制御部61に記憶されて管理される。プールカセット32に収納した金種別の枚数データ等をプールカセット32に設けたICタグ等の記憶手段に読み出し可能に記憶させても良い。併せて、制御部61は、600枚収納されたプールカセット32を、空のプールカセット32と交換するように操作表示部62に報知する。
操作者が600枚収納されたプールカセット32を機外へ取り出し、硬貨を抜き取って空の状態として装置本体11に再セットし、あるいは空の予備のプールカセット32を装置本体11にセットすると、これを検知して、制御部61は、第1のカセット収集処理を再開し、601枚目以降の硬貨について、同様に処理を行う。つまり、第1のカセット収集処理において、貨幣処理装置10内の全硬貨を一度で回収できることもあれば、空のプールカセット32を用意して、二回、三回と、複数回で回収することもある。第1のカセット収集処理では、操作者は現金に触れないため、所定の権限の認識を要しない。
ここで、第1のカセット収集処理において、制御部61は、プールカセット32の外部への取り出しが必要になると、音声出力部147で警報を発生させて、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の引き出しを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の引き出し操作が入力されると、第1のカセット補充処理と同様に、移動機構153により電動で貨幣処理ユニット112を筐体111から所定の引き出し位置まで引き出して停止させる。そして、制御部61は、第1のカセット補充処理と同様に、カセットロック機構401のソレノイド403に電気信号を出力して、ソレノイド403を電気的に駆動する。すると、ロック部材407がロック穴390から退避して、プールカセット32の装置本体11へのロックを解除する。これにより、プールカセット32が装置本体11から取り出し可能となる。ソレノイド403に電気信号を出力後、制御部61は、操作表示部62にプールカセット32の取り出しを促す表示を表示させる。
操作者が、取っ手204を持ってプールカセット32を引き上げると、カセットセット検知センサ355がプールカセット32の取り外しを検知することになる。すると、制御部61は、第1のカセット補充処理と同様に、ソレノイド403への電気信号を停止して、ソレノイド403の電気的に駆動を解除するとともに、操作表示部62にプールカセット32のセットを促す表示を表示させる。ソレノイド403の駆動解除で、ロック部材407がカセットハウジング331内に突出する状態になる。この状態で、プールカセット32がセットされると、ロック部材407がロック穴390に係合してプールカセット32を装置本体11にロックする。
プールカセット32が装置本体11にセットされたことをカセットセット検知センサ355が検知すると、制御部61は、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の押し込みを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の押し込み操作が入力されると、移動機構153が電動で貨幣処理ユニット112を筐体111に押し込む。貨幣処理ユニット112が筐体111に押し込まれると、制御部61は、移動機構153を停止させるとともに、音声出力部147の警報を停止させる。
このように装置本体11にセットされた空のプールカセット32を用いたカセット収集動作の継続が必要なときには、これが再開され、以下同様にして、プールカセット32の取り出しが必要になれば、同様の動作が繰り返されることになる。
装置本体11から取り外されたプールカセット32から硬貨を取り出す場合、操作者は、キー部材268をキーロック解除機構271のキーシリンダ273に差し込んで回転させる。すると、第1のカセット補充処理で説明した硬貨の装填時と同様に、キー部材268と一体に回転部343および舌片部材281が回転して、スライダ274を上昇させ、ロック解除部材283および回転体232を回転させて、一対のロック部材234,235の係合爪253,263を係合片部252,262から離してロックを解除する。これにより、開閉体203が開放可能となる。操作者は、手動で開閉体203を開いて、収納体201から硬貨を取り出す。開閉体203を閉じた後、キー部材268をキーシリンダ273からの引き抜きのため回転させる、あるいは開閉体203を閉じる前に、キー部材268をキーシリンダ273からの引き抜きのため回転させておくと、ロック部材234,235の係合爪253,263が係合片部252,262に係合して開閉体203をロックする。
「第1のカルトン収集処理」
第1のカルトン収集処理は、カルトン14による回収動作であり、全回収の他、金額指定での一部回収も可能となっている。操作者が金額指定(金種および枚数)の一部回収か、全回収かを操作表示部62に入力すると、制御部61は、図31に太実線で示すように、還流部33〜38およびプールカセット32から、指定分の硬貨を繰り出す。この場合も、還流部33〜38およびプールカセット32の指定されたものから繰出部42〜48の対応するもので硬貨を同時に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して、リジェクト硬貨以外の真硬貨(汚損硬貨および旧500円硬貨を含む)を放出案内部21でカルトン14に放出する。なお、還流部33〜38およびプールカセット32の指定されたものから繰出部42〜48の対応するもので硬貨を同時に繰り出すのではなく、還流部33〜38およびプールカセット32の一つで指定分の硬貨を繰り出したら、次の一つで指定分の硬貨を繰り出すという処理を順に行うようにしても良い。
他方、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から再び繰出部42で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度、識別させる(リジェクト硬貨と判定された硬貨の繰り出しは処理の最後に行わせても良い。)。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された硬貨は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。
第1のカルトン収集処理では、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。具体的には、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へ硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までの硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。この第1のカルトン収集処理では、汚損硬貨および旧500円硬貨も真硬貨と同様にカルトン14に搬送する。第1のカルトン収集処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
「第1の整理計数処理」
第1の整理計数処理は、入出金取引には関わらない処理であり、手持ちの現金がいくらあるかを確認したい場合などに使用され、計数のみを行う処理である。
制御部61は、第1の整理計数処理を開始すると、まず、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、この硬貨入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、硬貨入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、図32に太実線で示すように、硬貨入金部12から繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送する。また、識別部20の識別結果に基づいて、リジェクト硬貨を、図32に太破線で示すように放出案内部21でカルトン14へ搬送する。なお、一度に計数できる枚数はプールスタッカ39の収納容量の枚数であり、収納容量の枚数を超える枚数の硬貨は受け付けない。つまり、プールスタッカ39の収納容量が150枚であるため、一度に計数できる枚数は150枚までであり、150枚を超える硬貨は、受け付けない。硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、制御部61は、識別部20の識別結果に基づく、合計金額および金種別の枚数等を操作表示部62へ表示させる。リジェクト硬貨があった場合は、次の返却操作前に、カルトン14のリジェクト硬貨を回収させる。図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、返却操作が可能となり、この状態で、操作表示部62に返却操作が入力されると、制御部61は、プールスタッカ39から繰出部49で硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して放出案内部21でカルトン14に放出する。その後、プールスタッカ39、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の整理計数処理を終了する。
「第1の分配回収処理」
第1の分配回収処理は、プールカセット32に収納されている硬貨のうち、出金に利用できる硬貨すなわち還流部33〜38からのオーバーフロー硬貨を還流部33〜38へ分配すると同時に、出金に利用できない硬貨すなわち汚損硬貨および旧500円硬貨を機外へ放出させる処理である。
第1の分配回収処理では、図33に太実線で示すように、プールカセット32内の硬貨を繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応するもので還流部33〜38に振り分けて収納する。還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と汚損硬貨と旧500円硬貨は、図33に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する(カルトン14への振り分けは上記したように150枚毎に行う)。この場合、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から繰出部42で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。第1の分配回収処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
「第1の分配処理」
第1の分配処理は、プールカセット32に収納されている硬貨のうち、出金に利用できる硬貨すなわち還流部33〜38からのオーバーフロー硬貨を還流部33〜38へ分配すると同時に、出金に利用できない硬貨すなわち汚損硬貨および旧500円硬貨をプールカセット32へ戻す処理である。
第1の分配処理では、図34に太実線で示すように、プールカセット32内の硬貨を繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応するもので還流部33〜38に振り分けて収納する。識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、図34に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から繰出部49で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。リジェクト硬貨と判定された硬貨は、一連の処理後に、プールスタッカ39からプールカセット32に戻す。還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と汚損硬貨と旧500円硬貨とについても、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送し、プールスタッカ39に一時貯留させた後、第1の分配処理の最後に、プールスタッカ39から繰出部49で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタ12aが閉状態の硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して、カセット案内部22でプールカセット32へ戻す。第1の分配処理では、操作者は現金に触れないため、所定の権限の認識を要しない。
[第2の動作モード]
第2の動作モードでは、制御部61は、プールカセット32を、入金処理時に硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部とし、プールカセット32よりも容量小のプールスタッカ39を、収納処理時にプールカセット32から繰り出された硬貨のうち、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部とする。つまり、第2の動作モードでは、プールスタッカ39が、還流部33でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部34でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部35でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部36でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部37でオーバーフローするオーバーフロー硬貨および還流部38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。
以下、いずれも第2の動作モードで実行される、第2の入金処理、第2の返却処理、第2の収納処理、第2のカセット補充処理、第2のダイレクト補充処理、第2の入金部補充処理、第2の出金処理、第2の自己精査処理、第2のカセット収集処理、第2のカルトン収集処理、第2の整理計数処理、第2の分配回収処理および第2の分配処理について説明する。
「第2の入金処理」
第2の動作モードでは、プールカセット32が、入金処理時に硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用されるため、第2の入金処理開始時点で、プールカセット32は空の状態にある。第2の入金処理で一度に処理する入金枚数は、プールカセット32の硬貨収納容量であり、ここでは600枚以下に限定されている。
制御部61は、第2の入金処理を開始すると、まず、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、この硬貨入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、硬貨入金部12のシャッタ12aを閉じ、硬貨入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、硬貨入金部12から繰り出された硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨を、図35に太実線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送してプールカセット32に一時貯留する。つまり、第2の入金処理は、一時貯留部として、第1の入金部補充処理のプールスタッカ39ではなく、プールカセット32を用いる。その一方で、識別部20で受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を図35に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。このとき、汚損硬貨や旧500円硬貨も真硬貨としてプールカセット32へ搬送する。硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、追加投入の有無を照会する。
硬貨が硬貨入金部12に追加投入されたことを図示略のセンサで検出すると、制御部61は、上記と同様、硬貨入金部12のシャッタ12aを閉じ、硬貨入金部12で繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、真硬貨をプールカセット32に一時貯留する一方で、リジェクト硬貨をカルトン14に搬送する。硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、硬貨入金部12のシャッタ12aを開き、追加投入の有無を照会する。複数回の追加投入が行われることで、真硬貨がプールカセット32の収納容量(600枚)に達すると、それより後の真硬貨は放出案内部21でカルトン14に搬送する。追加投入の有無の照会中に、操作表示部62に入金終了の操作が入力されると、制御部61は、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨の合計金額および金種別の枚数等を操作表示部62に表示させて、操作表示部62への確定指示操作、返却指示操作を待機する状態となって、第2の入金処理を終了する。このように、第2の収納処理では、プールカセット32が、硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部となる。よって、第2の収納処理は、第1の収納処理と比べて、大量(約4倍の量)の硬貨の入金処理が一度に実施可能となる。
「第2の返却処理」
第2の入金処理の終了後、操作表示部62へ返却指示操作が入力されると、制御部61は、第2の返却処理を開始する。第2の返却処理は、プールカセット32の硬貨枚数に応じて行う。プールカセット32の硬貨枚数がカルトン14で収容可能な枚数以内である場合、つまり150枚以内である場合、硬貨入金部12のシャッタ12aを閉じた後、図36に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の返却処理を終了する。このようにプールカセット32内の硬貨をカルトン14に全て搬送して、操作者に取り出させる。なお、このとき予測される返却時間を操作表示部62に表示させても良い。
第2の返却処理において、プールカセット32の硬貨枚数がカルトン14で収容可能な枚数を超える場合、つまり150枚を超える場合、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かのいずれかの方法を操作表示部62への選択操作で判断し、カルトン14への分割返却が選択された場合、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。つまり、カルトン14の収納容量が150枚であるため、硬貨入金部12のシャッタ12aを閉じた後、プールカセット32の硬貨を150枚分だけ繰出部42で計数しつつ繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、プールカセット32から次の150枚までの硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。プールカセット32、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の返却処理を終了する。
他方、プールカセット32の抜き取りによる返却が選択された場合、操作者に対してプールカセット32の交換を促す報知を行う。プールカセット32の交換を検知すると、第2の返却処理を終了する。
なお、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かの選択操作を行わせる際に、カルトン14への分割返却を選択した場合に予測される返却時間を操作表示部62に表示させても良い。すなわち、プールカセット32に硬貨が例えば600枚収納されている場合に、繰り出し搬送による返却を行うと、カルトン14への放出枚数に150枚の制限があることから、単純に、600枚の繰り出し搬送時間に加えて、カルトン14の抜き差し時間を必要とする。よって、収納枚数から予測される返却時間を、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かの選択操作を行わせるかの判断材料として操作表示部62に表示させる。
「第2の収納処理」
第2の入金処理の終了後、操作表示部62へ確定指示操作が入力されると、制御部61は、第2の収納処理を開始する。つまり、図37に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を繰出部42で繰り出し、シャッタ12aが閉じられた状態の硬貨入金部12に出金側搬送部55で搬送し、硬貨入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。なお、識別部20の識別結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、図37に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39に収納する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の収納処理を終了する。このように、第2の収納処理では、プールスタッカ39が各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部となる。
なお、第2の収納処理では、プールスタッカ39の収納容量をも超えるオーバーフロー硬貨が生じると、処理を中断し、このようなオーバーフロー硬貨を、放出案内部21でカルトン14に搬送するか、プールカセット32に残してプールカセット32の交換で対応するかを操作表示部62に選択入力させる。なお、予め選択設定された内容に従うようにしても良い。カルトン14に搬送する場合は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
カルトン14への搬送が選択されると、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。ここでは、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へオーバーフロー硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までのオーバーフロー硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の収納処理を終了する。他方、プールカセット32の交換での対応が選択された場合、プールカセット32の交換を検知すると、第2の収納処理を終了する。
第2の収納処理においては、操作表示部62へ確定指示操作が入力された時点での、各還流部33〜38とプールスタッカ39の収納済み枚数データと、プールカセット32の金種別入金枚数データから、引き続いて収納動作を行ったときに、プールスタッカ39の収納枚数が予測できる。このため、還流部33〜38およびプールスタッカ39だけでの収集に留まらないことが予測されたときには、各還流部33〜38への収納動作を優先させるべきか、プールカセット32の交換を行うかを操作表示部62への操作で選択させても良い。プールカセット32の交換が選択された場合であっても、さらに、プールスタッカ39に収納済みの硬貨量が所定値以上のときは、プールスタッカ39の硬貨の一部をプールカセット32に回収の上でプールカセット32を交換させるかを選択入力させるか、あるいは制御部61が自動的に判断する。
ここで、プールカセット32に入金硬貨を一時的に受け入れて、収納または返却動作する、上記の第2の返却処理および第2の収納処理において、受け入れた真硬貨には、汚損硬貨が含まれる。汚損硬貨は、真硬貨ではあるが、多少の歪みがあったり、曲がりなどが生じている変形硬貨の可能性がある。このような変形硬貨は、プールカセット32から繰り出しできずに、プールカセット32内に滞ってしまう可能性がある。その場合、プールカセット32内の一時貯留硬貨を、入金承認されたものであるときは、手持ち現金として回収できるように、また、一時貯留硬貨を返却指示したときのものであるときは、顧客に返却すべき硬貨として回収できるように、プールカセット32から手作業で取り出させる必要がある。
このため、制御部61は、プールカセット32から硬貨を繰り出す際に、プールカセット32内の図示略の残留検知センサで全硬貨の繰り出しを検出する前に所定時間が経過すると、プールカセット32の繰り出し異常があったと判定して、次のように制御する。
制御部61は、音声出力部147で警報を発生させて、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の引き出しを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の引き出し操作が入力されると、移動機構153が電動で貨幣処理ユニット112を筐体111から引き出す。このとき、制御部61は、移動機構153により、貨幣処理ユニット112をプールカセット32の開閉体203が開放可能な所定の引き出し位置まで移動させる。なお、このときの引き出し量は、プールカセット32の装置本体11からの取り出し時と同じであっても良いし、異ならせても良い。貨幣処理ユニット112を所定の引き出し位置まで移動させて停止させると、装置本体側ロック解除機構361のソレノイド363に電気信号を出力して、ソレノイド363を電気的に駆動する。
すると、上記したようにソレノイド363が作動部材365を回動させて、その作動腕部378でキーロック解除機構271のスライダ274を上昇させ、ロック解除部材283および回転体232を回転させて、一対のロック部材234,235の係合爪253,263を近づけて係合爪253,263を係合片部252,262から離してロックを解除する。これにより、開閉体203が開放可能となる。ソレノイド363に電気信号を出力後、制御部61は、操作表示部62に内部の硬貨の取り出しを促す表示を表示させる。
操作者が開閉体203を手動で開くと、開閉検知センサ358が開閉体203の開放を検知することになる。すると、制御部61は、ソレノイド363への電気信号を停止して、ソレノイド363の電気的に駆動を解除するとともに、操作表示部62に内部の硬貨の取り出しを促す表示を表示させる。ソレノイド363の駆動解除で、開閉ロック部231は、一対のロック部材234,235が係合爪253,263を離す。操作者は、開閉体203を開いた状態で、収納体201内の硬貨を取り出し、開閉体203を閉じる。すると、ロック部材234,235の係合爪253,263が係合片部252,262に係合して開閉体203をロックする。
開閉検知センサ358が開閉体203の閉塞を検知すると、制御部61は、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の押し込みを促す表示を表示させる。操作表示部62に所定の押し込み操作が入力されると、移動機構153が電動で貨幣処理ユニット112を筐体111に押し込む。貨幣処理ユニット112が筐体111に押し込まれると、制御部61は、移動機構153を停止させるとともに、音声出力部147の警報を停止させる。制御部61は、図示略の残留検知センサでプールカセット32内の硬貨の有無を検知し、プールカセット32内に硬貨があったときには、再度、音声出力部147で警報を発生させて、操作表示部62に貨幣処理ユニット112の引き出しを促す表示を表示させて、以後、上記と同様に制御する。
「第2のカセット補充処理」
第2のカセット補充処理は、第1のカセット補充処理と基本的に同じである。つまり、第2のカセット補充処理では、図26に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。そして、図26に太破線で示すように、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、金種別の枚数を把握してプールスタッカ39に収納し、リジェクト硬貨は枚数を把握してプールスタッカ39に収納する。なお、第2の動作モードでは、第2のカセット補充処理後も、プールスタッカ39の硬貨はそのままプールスタッカ39に保管する点が第1の動作モードとは異なる。第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、プールカセット32を、カセット補充処理時に金種別の還流部33〜38に補充する硬貨が装置外で装填される一括収納カセットとして使用する。
ここで、第2のカセット補充処理において、硬貨が充填されたプールカセット32の装置本体11へのセットの際には、制御部61は、第1のカセット補充処理と同様の処理を行う。
「第2のダイレクト補充処理」
第2のダイレクト補充処理では、図38に太実線で示すように、第1のダイレクト補充処理と同様、硬貨入金部12に投入された硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。その一方で、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、図38に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ収納する点が第1のダイレクト補充処理とは異なる。また、第2のダイレクト補充処理では、プールスタッカ39は、第2のダイレクト補充処理後も、硬貨を収納したままの状態を維持する点が第1のダイレクト補充処理とは異なる。それら以外は、第1のダイレクト補充処理と基本的に同じである。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨については、オーバーフロー硬貨と同様、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ収納しても良い。オーバーフロー硬貨も、そもそも当該金種の硬貨を多く入れすぎたことになるので、カルトン14へ排出しても良い。
「第2の入金部補充処理」
第2の入金部補充処理は、図35に示す第1の入金処理と、図36に示す第2の返却処理または図37に示す第2の収納処理とを行う。第2の入金処理と第2の収納処理とを行うと、硬貨入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。または、図38に示すように、第2のダイレクト補充処理と同様の処理を行って、硬貨入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。
「第2の出金処理」
第2の出金処理では、図39に太実線で示すように、第1の出金処理と同様、出金データに基づいて、硬貨を、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。一方で、第2の出金処理では、第1の出金処理とは異なり、リジェクト硬貨を図39に太破線で示すように、プールカセット32へ収納する。そして、第2の出金処理の完了後、プールカセット32に硬貨がある場合には、硬貨を繰出部42で繰り出して、再度、識別部20で識別させる処理を行う。それ以外は、第1の出金処理と基本的に同じである。
「第2の自己精査処理」
第2の自己精査処理では、図40に太実線で示すように、第1の出金処理と同様、還流部33〜38のうちの精査対象のものから一旦すべての硬貨を繰り出して硬貨入金部12に貯留し、その後、硬貨入金部12から識別部20で識別および計数しつつ、識別結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応する金種のもので還流部33〜38の対応金種のものに収納させる。このような処理を還流部33〜38に順に行う。第2の自己精査処理では、第1の自己精査処理とは異なり、プールスタッカ39についての精査を還流部33〜38と同様に行う。第2の自己精査処理では、精査中に識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、図40に太破線で示すように、プールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から再び繰り出して識別部20で再度識別させる。それ以外は、第1の自己精査処理と基本的に同じである。このように、第2の自己精査処理では、精査すべき硬貨が還流部33〜38およびプールスタッカ39に収納されている。このため、硬貨入金部12およびプールカセット32の両方を利用した精査動作が可能となる。還流部33〜38およびプールスタッカ39の各収納容量よりもプールカセット32の収納容量の方が多いことから、第1の自己精査処理で受けたような制約を受けにくい。
「第2のカセット収集処理」
第2の動作モードでは、プールカセット32を、入金処理時に硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を一時貯留する一時貯留部として使用し、プールスタッカ39にオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨を収納している。そして、通常動作時には、一つの取引の入出金が終了したときには、プールカセット32内に硬貨は存在せず、そのまま業務終了となったときにも、プールカセット32内に硬貨は存在することがない。よって、第2のカセット収集処理を行うに当たって、すでにプールカセット32は空であり、よって、第2のカセット収集処理を直ちに開始可能となる。第2のカセット収集処理は、プールスタッカ39が、第2のカセット収集処理後も、硬貨を収納したままの状態を維持する点が第1のカセット収集処理とは異なる。それ以外は、図30に太線で示すルートで硬貨を搬送する第1のカセット収集処理と基本的に同じである。第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、プールカセット32を、カセット収集処理時に金種別の還流部33〜38から繰り出された硬貨を収納する一括収納カセットとして使用する。
ここで、第2のカセット収集処理において、プールカセット32の交換の際には、制御部61は、第1のカセット収集処理と同様の処理を行う。
「第2のカルトン収集処理」
第2のカルトン収集処理は、図41に太実線で示すように、第1のカルトン収集処理と同様、硬貨を、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。その一方で、第2のカルトン収集処理では、第1のカルトン収集処理とは異なり、プールスタッカ39から硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。硬貨の繰り出し元の一つがプールスタッカ39であること以外は、第1のカルトン収集処理と基本的に同じである。
「第2の整理計数処理」
第2の整理計数処理では図42に太実線で示すように、硬貨入金部12に投入された硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送する。その一方で、リジェクト硬貨を、図42に太破線で示すように放出案内部21でカルトン14へ搬送し、その後、返却操作が可能な状態で、操作表示部62に返却操作が入力されると、プールカセット32から硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して放出案内部21でカルトン14に放出する。プールカセット32に硬貨を一時貯留する以外は、第1の整理計数処理と基本的に同じである。第2の整理計数処理では、一度に計数できる枚数はプールカセット32の収納容量の枚数であり、プールカセット32の収納容量が600枚であるため、一度に600枚まで計数できる。
「第2の分配回収処理」
第2の分配回収処理は図43に太実線で示すように、プールスタッカ39内の硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、出金に利用できる硬貨を還流部33〜38に振り分けて収納する。その一方、還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と、出金に利用できない硬貨を汚損硬貨および旧500円硬貨とは、図43に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。硬貨の繰り出し元がプールスタッカ39であること以外は、第1の分配回収処理と基本的に同じである。
「第2の分配処理」
第2の分配処理は、図44に太実線で示すように、プールスタッカ39内の硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、硬貨入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、出金に利用できる硬貨を還流部33〜38に振り分けて収納する一方、還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と、出金に利用できない汚損硬貨および旧500円硬貨とは、図44に太破線で示すように、プールカセット32に搬送する。硬貨の繰り出し元がプールスタッカ39であり、出金に利用できない硬貨の搬送先がプールカセット32であること以外は、第1の分配回収処理と基本的に同じである。
第2の動作モードでは、大量枚数の入金処理などが可能となり、作業効率を高めた貨幣処理装置10を提供できる。
[動作モードの選択]
貨幣処理装置10において、第1の動作モードと第2の動作モードとは切り替え可能であるが、動作モードの設定には、事前マニュアル設定方式と事前自動設定方式と任意設定可能方式とがある。
「事前マニュアル設定方式」
事前マニュアル設定方式は、所定の管理者モード、サービス員設定モードなど、特別な権限またはモード下において、第1の動作モードと第2の動作モードとの切り替えを可能とする設定方式である。通常は、貨幣処理装置10の導入時、または、毎朝の業務開始前に、当日の業務予測(顧客来店予測等、過去実績に基づいた情報)に応じて、操作表示部62へのマニュアル操作にて、いずれかの動作モードが選択設定される。設定された動作モードは、貨幣処理装置10の操作表示部62や、これに通信可能な端末機等に表示可能である。業務時間中にこれらの動作モードを変更することは原則行わず、終業時まで、これらの動作モードを維持運用するようになっている。いずれにしても、貨幣処理装置10を導入した店舗の顧客特性等から小口顧客が多い場合や、過去の実績、月日、曜日等々の条件を鑑みて小口取引が多いと考えられるときには、従来と同様の動作モードである第1の動作モードを基本的に選択設定することで、適宜適切な運用が可能となる。また、業務予測等で大口取引の可能性の情報があるときには、業務開始前に、第2の動作モードを選択設定して運用させることも可能となる。
「事前自動設定方式」
事前自動設定方式は、貨幣処理装置10の電源立ち上げ時、貨幣処理装置10の内部の現金つまり硬貨がない(残置仕様でない)ことを条件として、貨幣処理装置10または店舗内管理サーバ(さらには店舗外管理サーバもあり得る)内に記憶されている、当該店舗の、当日の業務予測(顧客来店予測等、過去実績に基づいた情報)に応じて、貨幣処理装置10が自動的に、あるいは店舗内管理サーバからの指示で第1の動作モードと第2の動作モードの切り替え設定を行う。
「任意設定可能方式(都度)」
事前マニュアル設定方式および事前自動設定方式においては、一旦設定された動作モードは、設定された日の業務が完了するまでは、それぞれの動作モードに固定であるのに対し、任意設定可能方式は、条件が整えば、操作者の権限で、都度、動作モードを変更できる方式である。なお、貨幣処理装置10の電源立ち上げ時に設定される動作モードは、事前マニュアル設定方式および事前自動設定方式のいずれの方式で選択設定されても良い。ところで、業務途中において、これらの動作モードを変更する必要性がある場合は、第1の動作モードから第2の動作モードへの変更を要するときだけである。すなわち、通常、小口の入出金だけが行われている場面にあっては、第1の動作モードであっても、第2の動作モードであっても、何ら影響を受けない。これに対して、予定外に顧客が大量の硬貨を持参して入金することが希に存在する。大量の硬貨の入金に対応しうるモードは、上記したように第2の動作モードである。よって、第1の動作モードでの運用中に、やむを得ず、第2の動作モードで運用できる条件を設定すれば良い。
{第1の動作モードから第2の動作モードへの設定変更可能条件について}
第1の動作モードでは、プールカセット32にオーバーフロー硬貨等を保管しているので、プールカセット32に収納されている硬貨を、第1の動作モードの第1の入金処理で一時貯留していたプールスタッカ39に収納できるか否かによって、第1の動作モードから第2の動作モードへの設定変更が可能か否かが決まる。上記実施態様では、プールスタッカ39の容量は150枚であるので、最大容量600枚のプールカセット32に収納されている硬貨が150枚以下であれば、これら硬貨をプールスタッカ39に移動させることで、プールカセット32内を空にする。
なお、150枚近くの硬貨の移動には、時間が掛かるので、さらに好ましい態様では、一例として、(1)50枚までの移動を要するときは無条件に搬送移動を開始する。(2)100枚以上(移動しきれない150枚以上を含む)の硬貨の移動を要するときは、搬送移動を伴わない、空のプールカセット32へ交換させる。(3)50枚から100枚までの移動を要するときは、これらの移動に要する予測時間を操作表示部62に表示して、操作表示部62への操作入力で硬貨の移動またはカセット交換のいずれかを選択させるようにする。但し、操作員の判断を要せず、(3)を無くし、一例に示した50枚を超えるか否かで、搬送移動、カセット交換のいずれかを行うようにしても良い。
これらにより、第1の動作モードで運用中に、大量の硬貨の入金が求められた場合、操作員は、端末機等において、動作モードの変更設定を行う。動作モードの変更設定は、操作選択が行いやすいように、「大量硬貨入金処理」と言うような処理名を作成して、選択設定させるようにしても良い。そして、顧客からの取引処理内容を把握したところで、貨幣処理装置10に通信可能な端末機において、「大量硬貨入金処理」を選択すると、貨幣処理装置10は、その時点でのプールカセット32内の収納枚数を確認し、上記した処理に基づいて、第1の動作モードから第2の動作モードへのモード変更動作を行う。すなわち、(1)プールカセット32内の硬貨をプールスタッカ39へ自動的に移動させる。(2)貨幣処理装置10または端末機の表示部に硬貨搬送予測時間を表示して、硬貨搬送を実行するかカセット交換を行うかの選択操作の入力を行わせる。(3)カセット交換の指示を表示して、カセット交換作業を促す。これらの動作、指示、作業後に、貨幣処理装置10は第1の動作モードから第2動作モードに設定変更され、硬貨入金部12への硬貨の投入を促す指示を操作表示部62に表示する。このとき、一回で150枚以上の硬貨の投入は避けられ、追加投入指示による入金作業が繰り返される。大量硬貨の入金がなされた結果は、各還流部33〜38およびプールスタッカ39への分配が可能であれば、これを行う。分配を行っても、分配しきれない硬貨が残ることが予測されたときは、上記したように、カセット交換を指示する。
{第2の動作モードから第1の動作モードへの設定変更可能条件について}
通常は、上記の大量硬貨入金終了後に、第2の動作モードであったモードを、第1の動作モードに戻す作業となる。もともと第2の動作モードで運用中に、第1の動作モードに変更する必要性は少ない。例えば、オーバーフロー硬貨等を150枚以上収納したまま、装置運用を継続したときに変更される。第2の動作モードから第1の動作モードへの設定変更時には、プールスタッカ39に移動収納させた硬貨を、プールカセット32に収納し直す必要があるが、収納容量の問題は少ないので、上記した大量硬貨入金処理の終了後、プールカセット32がセットされていることを条件に、直ちに、搬送移動処理を行う。その際に、識別部20で識別および計数を行う。
以上に述べた貨幣処理装置10によれば、プールカセット32は、開閉体203が開閉ロック部231でロックされることになるが、プールカセット32が装置本体11にセットされた状態にあれば、装置本体11の装置本体側ロック解除機構361が電動で開閉ロック部231のロックを解除することになる。よって、装置本体11側の管理下で開閉ロック部231のロックを解除することができるため、セキュリティ性を確保した上で、別体のキー部材268のキー操作が不要となり、使い勝手性を向上させることができる。また、プールカセット32のキーロック解除機構271が別体のキー部材268のキー操作で開閉ロック部231のロックを解除することになるため、セキュリティ性を確保する上で必要な別体のキー部材268のキー操作でのロック解除も可能である。
また、キーロック解除機構271は、プールカセット32が装置本体11にセットされた状態では、キー操作が規制されるため、装置本体11側の管理下でのみ開閉ロック部231のロックを解除することができることになり、セキュリティ性をより向上させることができる。つまり、プールカセット32が装置本体11にセットされた状態では、キー穴342にアクセスできなくなり、キー部材268による手動での開閉体203の開放はできなくなる。装置本体側ロック解除機構361による開閉体203のロック解除のみとなるため、顧客による手動での開閉体203の開放を規制することにより、操作ミスを防ぐとともに、セキュリティ上の観点から操作ログに履歴を残すことができる。
また、装置本体11のカセットロック機構401が、装置本体11にセットされた状態のプールカセット32をセット状態でロックするとともに電動でロックが解除されるため、装置本体11側の管理下でロックを解除することができ、セキュリティ性をより向上させることができる。
また、プールカセット32が、収納している硬貨を装置本体11に繰り出し可能であるため、プールカセット32の硬貨を装置本体11に繰り出すことができる。
また、第1の動作モードでは、還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨(装置管理の硬貨)をプールカセット32に収納可能となるため、装置本体11の装置本体側ロック解除機構361が開閉ロック部231のロックを解除しないことで、オーバーフロー硬貨の取り出しを規制する。他方、第2の動作モードでは、硬貨入金部12に投入され識別部20で識別された、金種別の還流部33〜38に収納する前の硬貨(装置管理前の硬貨)をプールカセット32に一時貯留するため、一時貯留した硬貨を返却する返却処理時に、装置本体11の装置本体側ロック解除機構361が電動で開閉ロック部231のロックを解除することで、開閉体203を開けば、硬貨の返却が容易となる。
また、第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、カセット収集処理時に、プールカセット32を、金種別の還流部33〜38から繰り出された硬貨を収納する一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、収集した硬貨を収納した状態のプールカセット32を、装置本体11から取り外して運搬する際に、ロック解除に別体のキー部材268のキー操作を要する状態で安全に運搬することができる。
また、第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、カセット補充処理時に、プールカセット32を、金種別の還流部33〜38に補充する硬貨が装填される一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、硬貨が装填された状態のプールカセット32を、装置本体11にセットするまでの間、ロック解除に別体のキー部材268のキー操作を要する状態で安全に運搬することができる。
また、第1の動作モードでは、プールスタッカ39を一時貯留部としプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納部とするため、入金処理時に少量の硬貨が投入される場合に好適となる。その場合に、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を収納容量が大のプールカセット32に収納可能となるため、オーバーフロー硬貨の硬貨量が多くなることによる装置停止の頻度を減らすことができる。他方、第2の動作モードでは、プールスタッカ39を一括収納部としプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一時貯留部とするため、入金処理時に大量の硬貨が投入される場合に、一度に多くの硬貨を処理可能となり好適となる。よって、一時貯留部および一括収納部の両方の容量を増大させなくても、使い勝手性が向上し、利便性が良く、作業の効率化に繋がる。したがって、大型化を抑制しつつ使い勝手性を向上可能な貨幣処理装置10となる。しかも、例えば操作表示部62への操作で、第1の動作モード1と第2の動作モードとを、切り替えることができるため、操作者が所望する仕様を選択して、現金処理を行うことができる。
また、第1の動作モードの第1のカセット収集処理時および第2の動作モードの第2のカセット収集処理時の両方で、装置本体11に対し着脱可能であってプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、カセット収集処理時に金種別の還流部33〜38から多くの硬貨を回収することができる。
また、第1の動作モードの第1のカセット補充処理時および第2の動作モードの第2のカセット補充処理時の両方で、装置本体11に対し着脱可能であってプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、カセット補充処理時に金種別の還流部33〜38に多くの硬貨を補充することができる。