以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
<第1実施形態>
最初に、本発明の第1実施形態の画像形成装置について、図1を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力動作を説明する。図1は画像形成装置の部分垂直断面正面図の一例である。なお、図中の矢印付き二点鎖線は用紙の搬送経路及び搬送方向を示す。
画像形成装置1は、図1に示すように所謂タンデム型のカラー複写機であり、原稿の画像を読み取る画像読取部2と、読み取った画像を用紙に印刷する印刷部3と、印刷条件の入力や稼働状況の表示を行うための操作部4と、主制御部5とを備える。
画像読取部2は不図示のプラテンガラスの上面に載置された原稿の画像を不図示のスキャナを移動して読み取る公知のものである。原稿の画像は赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に色分解され、不図示のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーで電気信号に変換される。これにより、画像読取部2は赤(R)、緑(G)、青(B)の色別の画像データを得る。
画像読取部2が得た色別の画像データは主制御部5において各種処理が行われ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色の画像データに変換されて主制御部5の記憶部5b(図4参照)に格納される。記憶部5bに格納された再現色別の画像データは位置ずれの補正のための処理を受けた後、像担持体である感光体ドラム21に対する光走査を行うために用紙の搬送と同期して走査ラインごとに読み出される。
印刷部3は電子写真方式によって画像を形成し、その画像を用紙に転写する。印刷部3は中間転写体を無端状のベルトとして形成した中間転写ベルト11を備える。中間転写ベルト11は駆動ローラ12、従動ローラ13、14に巻き掛けられる。中間転写ベルト11は駆動ローラ12によって図1における反時計回りに回転移動する。
駆動ローラ12は中間転写ベルト11を挟んで対向する二次転写ローラ15を圧して接触する。従動ローラ14の箇所では、中間転写ベルト11を挟んで従動ローラ14に対向するように設けられた中間転写クリーニング部16が中間転写ベルト11の外周面に接触する。中間転写クリーニング部16は中間転写ベルト11の外周面に形成されたトナー像が用紙に転写された後、中間転写ベルト11の外周面に残留したトナーなどの付着物を除去してクリーニングする。
中間転写ベルト11の下方にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各再現色に対応する画像形成部20Y、20M、20C、20Kが設けられる。なお、この説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「Y」、「M」、「C」、「K」の識別記号の記載を省略して、例えば「画像形成部20」と総称することがある。4台の画像形成部20は中間転写ベルト11の回転方向に沿って、回転方向の上流側から下流側に向けて一列にして配置される。4台の画像形成部20は構成がすべて同じであり、図1における時計回りに回転する感光体ドラム21を中心としてその周囲に帯電部、露光部、現像部、ドラムクリーニング部及び一次転写ローラを備える。
中間転写ベルト11の上方には、4台の各再現色の画像形成部20に対応するトナーボトル31及びトナーホッパー32が設けられる。現像部及びトナーホッパー32に対しては各々の内部のトナー量を検出する不図示のトナーの残量検出部が設けられる。また、現像部とトナーホッパー32との間及びトナーホッパー32とトナーボトル31との間には各々不図示のトナーの補給装置が設けられる。残量検出部によって現像部の内部のトナー量の低下が検出されると、補給装置がトナーホッパー32から現像部にトナーを補給するように駆動する。さらに、残量検出部によってトナーホッパー32の内部のトナー量の低下が検出されると、補給装置がトナーボトル31からトナーホッパー32にトナーを補給するように駆動する。トナーボトル31は装置本体に対して着脱可能に設けられ、適宜新しいものと交換することができる。
画像形成部20の下方には露光部である走査光学装置23が配置される。走査光学装置23は4台の画像形成部20に対して1台で対応し、4個の感光体ドラム21各々に個別に対応した不図示の4つの半導体レーザー等の光源を有する。走査光学装置23は4つの半導体レーザーを各再現色の画像階調データに応じて変調して、各再現色に対応するレーザー光を4個の感光体ドラム21に対して個別に出射する。
走査光学装置23の下方には、内部に用紙Pを複数積載して収容する用紙供給装置91が設けられる。用紙供給装置91の内部に収容された用紙Pはその最上層から順に1枚ずつ用紙搬送路Qに送り出される。用紙積載装置91から用紙搬送路Qに送り出された用紙Pはレジストローラ対94の箇所に到達する。そして、レジストローラ対94が用紙Pの斜め送りを矯正(スキュー補正)しつつ中間転写ベルト11の回転と同期をとって、中間転写ベルト11と二次転写ローラ15との接触部(二次転写ニップ部)に向けて用紙Pを送り出す。
画像形成部20では走査光学装置23から照射されたレーザー光によって感光体ドラム21の表面に静電潜像が形成され、その静電潜像が現像部によってトナー像として可視像化される。感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像は感光体ドラム21が中間転写ベルト11を挟んで一次転写ローラと対向する箇所において中間転写ベルト11の外周面に一次転写される。そして、中間転写ベルト11の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部20のトナー像が順次中間転写ベルト11に転写されることにより、中間転写ベルト11の外周面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
中間転写ベルト11の外周面に一次転写されたカラートナー像はレジストローラ対94により同期をとって送られてきた用紙Pに、中間転写ベルト11と二次転写ローラ15とが接触して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
二次転写ニップ部の上方には定着装置40が備えられる。二次転写ニップ部にて未定着トナー像が転写された用紙Pは定着装置40へと送られ、トナー像が加熱、加圧されて用紙Pに定着される。定着装置40を通過した用紙Pは中間転写ベルト11の上方に設けられた用紙排出部96に排出される。
操作部4は画像読取部2の正面側に設けられる。操作部4は、例えばユーザーによる印刷に使用する用紙Pの種類やサイズ、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件などの設定の入力や、ファクシミリ送信におけるファックス番号や送信者名などの設定の入力を受け付ける。また、操作部4は、例えば装置の状態や注意事項、エラーメッセージなどを表示部4wに表示することによって、それらをユーザーに対して報知するための報知部としての役割も果たす。
また、画像形成装置1にはその全体の動作制御のため、CPU5aや画像処理部、その他の図示しない電子部品で構成された主制御部5が設けられる(図4参照)。主制御部5は中央演算処理装置であるCPU5aと画像処理部とを利用し、記憶部5bに記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像形成部20や定着装置40等を含む印刷部3、画像読取部2などといった構成要素を制御して一連の画像形成動作、印刷動作を実現する。
続いて、定着装置40の詳細な構成について、図2〜図4を用いて説明する。図2及び図3は定着装置40の正面図及び上面図である。図4は画像形成装置1の定着装置40に係る構成を示すブロック図である。
定着装置40は、図2〜図4に示すように加圧ローラである定着ローラ41、定着モーター42、ベルト43、加熱部44及びニップ形成部50を備える。
定着ローラ41は円筒形状を成し、回転軸線が用紙幅方向、すなわち画像形成装置1の前後方向に沿って延びる。定着ローラ41は用紙搬送路Qの用紙幅方向の全域よりも長い長さを有する。定着ローラ41は、表面に例えばフッ素(PFA)で構成された離型層がコーティングされた弾性層などを有する積層構造を成す。
定着ローラ41は加圧ばね81等を用いた加圧機構80によって所定の圧力が付与される。加圧機構80は定着ローラ41の軸方向外側で定着ローラ41の回転軸41aをベルト43に向けて加圧する。定着ローラ41はその周面がベルト43を介してニップ形成部50を圧して接触して定着ニップ部Nを形成する。定着ニップ部Nでは、例えば定着ローラ41が径方向内側に窪んだ状態となる。定着装置40は、ベルト43を挟んで定着ローラ41とニップ形成部50とが接触する定着ニップ部Nで用紙Pに転写された未定着トナー像を用紙Pに定着させる。
定着ローラ41はその回転軸41aが定着装置40の不図示の筐体部に設けられた軸受により回転可能に支持される。定着ローラ41は定着モーター42(図4参照)から動力を得て図2において時計回りに回転する。定着モーター42は、図3に示す駆動ギア42aと、回転軸41aに設けられた従動ギア42bとを介して定着ローラ41を回転させる。駆動ギア42aはニップ形成部50に対して定着ローラ41を隔てた反対側に配置される。言い換えれば図3において、定着ローラ41の上側に配置されたニップ形成部50に対して、駆動ギア42aは定着ローラ41の下側に配置される。
ベルト43は無端状に形成され、加熱部44の加熱ローラ44a及びニップ形成部50に巻き掛けられる。ベルト43は定着ニップ部Nにおいて定着ローラ41とニップ形成部50との間に挟持される。ベルト43は定着ローラ41に接触して図2において反時計回りに回転する。ベルト43は用紙搬送路Qの用紙幅方向の全域よりも長い長さを有する。ベルト43は、例えばポリイミドフィルムなどから成る基材層に弾性層、離型層などが設けられた積層構造を有する。
加熱部44は加熱ローラ44a及びヒーター44bを備える。加熱ローラ44aは円筒形状を成し、その内部にベルト43を加熱するためのヒーター44bを収容する。加熱ローラ44aはニップ形成部50から離隔し、ベルト43に所定の張力が生じる位置に配置される。加熱ローラ44aはその回転軸線が定着ローラ41の回転軸線と平行を成し、用紙幅方向、すなわち画像形成装置1の前後方向に沿って延びる。加熱ローラ44aは用紙搬送路Qの用紙幅方向の全域よりも長い長さを有する。加熱ローラ44aは回転軸44cが定着装置40の筐体部の側板45に設けられた不図示の軸受により回転可能に支持される。ヒーター44bは例えばハロゲンランプで構成される。
ニップ形成部50はベルト43の内側に定着ローラ41と対向配置され、ベルト43の内面に接触して定着ローラ41とベルト43との間に定着ニップ部Nを形成する。ニップ形成部50はパッド51、パッドホルダー52及び位置決め部60を備える。
パッド51はベルト43の、定着ニップ部Nのすぐ内側に配置される。パッド51は用紙幅方向に関してベルト43よりも長く延びる長手状で構成される。パッド51は定着ローラ41によってベルト43を介して加圧され、定着ニップ部Nにおけるベルト43の内面に接触する。
パッドホルダー52はパッド51を隔てて定着ニップ部Nから離隔した領域に配置される。パッドホルダー52はパッド51の定着ニップ部N側に対する反対側の一面が貼付され、パッド51を支持する。パッドホルダー52は用紙幅方向から見た断面形状が略U字状を成して用紙幅方向に延びる溝形状の金属で構成される。パッドホルダー52は用紙幅方向の両端側において定着装置40の筐体部の側板45に固定される。
位置決め部60は位置決め部材61を備える。位置決め部材61はコロ形状で構成され、定着ローラ41の回転軸41aに回転可能に支持される。位置決め部材61はその外周面がパッド51の定着ローラ41との対向面に接触する。これにより、位置決め部材61は定着ローラ41の回転軸線Xとニップ形成部50との間を所定距離で保持する。
この構成によれば、定着ローラ41の回転軸線Xとニップ形成部50との間が所定距離、すなわち位置決め部材61の略半径の距離で保持される。これにより、定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生を抑制することができる。さらに、定着モーター42から伝達される定着ローラ41の回転力に起因する定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生も抑制することができる。したがって、ベルト43の蛇行を抑制することが可能である。そして、定着ニップ部Nにおける加圧力をより一層高めることができ、画像形成装置1の印刷物の光沢性を向上させることが可能になる。
また、位置決め部材61は側板45よりも定着ローラ41の軸方向外側でパッド51に接触する。この構成によれば、位置決め部材61の接触に起因するパッド51及びパッドホルダー52の湾曲の方向が、定着ニップ部Nにおける加圧力をより高める方向となる。したがって、定着ニップ部Nにおける加圧状態が安定し、定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生を抑制する効果を向上させることができる。
さらに、位置決め部材61は加圧機構80による定着ローラ41の加圧位置よりも定着ローラ41の軸方向外側でパッド51に接触する。この構成によれば、加圧機構80による加圧に起因する定着ローラ41及びその回転軸41aの湾曲の方向が、定着ニップ部Nにおける加圧力をより高める方向となる。したがって、定着ニップ部Nにおける加圧状態が安定し、定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生を抑制する効果を向上させることができる。
また、駆動ギア42aはニップ形成部50に対して定着ローラ41を隔てた反対側に配置されるので、定着ローラ41を駆動する際に生じる駆動反力が、定着ローラ41を定着ニップ部Nに向けて押す方向に作用する。これにより、定着ニップ部Nにおける加圧力がより一層高められる。したがって、定着ニップ部Nにおける加圧状態が安定し、定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生を抑制する効果を向上させることができる。
なお、ここで、加圧機構80の加圧ばね81による定着ローラ41の加圧力は、定着ローラ41とベルト43との間に所定の定着ニップ部Nを形成するに必要な力と、定着ローラ41の駆動反力の定着ニップ部Nから離れる方向の成分との和よりも大きい。この構成によれば、例えば定着ローラ41を定着ニップ部Nに向けて押す方向ではない方向に、定着ローラ41の駆動反力が作用する場合であっても、定着ニップ部Nにおける加圧状態を安定させることができる。
また、定着ローラ41の表面は離型層でコーティングされる。通常、ローラの表面を離型層でコーティングする場合、コーティング前に、幅方向においてローラの直径が均一になるようにローラの表面が削られる。これにより、定着ローラ41自体の製造時に、幅方向において定着ローラ41自体の直径にばらつきが生じた場合であっても、コーティング後に幅方向における直径の偏差を抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の画像形成装置について、図5及び図6を用いて説明する。図5は画像形成装置の定着装置の正面図である。図6は定着装置の定着ニップ部における加圧力を低下させた状態の正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第2実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図5及び図6に示す加圧機構80を備える。加圧機構80には、加圧レバー82、加圧ばね83及びカム部材84が設けられる。
加圧レバー82は図5及び図6において上下方向に延び、定着ローラ41の下方に位置するその下端が用紙幅方向に延びる回転軸82aを介して定着装置40の筐体部に回転可能に支持される。加圧レバー82の上端は自由端であって、加圧ばね83が接触する。加圧レバー82の長手方向の略中央部には定着ローラ41の軸受82bが設けられる。定着ローラ41はその回転軸41aが加圧レバー82の軸受82bにより回転可能に支持される。
加圧ばね83は図5及び図6において上下方向に延びる加圧レバー82の上端部に隣接して配置される。加圧ばね83はニップ形成部50に対して加圧レバー82を隔てた反対側に配置される。言い換えれば図5及び図6において、加圧レバー82(定着ローラ41)の左側に配置されたニップ形成部50に対して、加圧ばね83は加圧レバー82の右側に配置される。
加圧ばね83は例えば圧縮ばねで構成されて図5及び図6の左右方向に延び、その一端が加圧レバー82に接触し、他端が可動板83aに接続される。加圧ばね83は加圧レバー82を、定着ローラ41の周面がベルト43の周面を圧して接触する方向に付勢する。なお、可動板83aは加圧ばね83の軸線方向、すなわち図5及び図6の左右方向に移動可能である。
カム部材84は加圧ばね83に対して可動板83aを隔てた反対側に配置される。カム部材84は用紙幅方向に延びる回転軸84aを介して定着装置40の筐体部に回転可能に支持され、その周面が軸線方向から見て楕円形状に構成される。カム部材84の周面には可動板83aが接触する。
定着動作を実行するときなどの通常の加圧状態において、加圧機構80ではカム部材84が長軸側の頂点で可動板83aに接触する(図5参照)。これにより、加圧ばね83による加圧力が高まり、位置決め部材61の外周面がパッド51の定着ローラ41との対向面に接触する。これにより、定着ローラ41の回転軸線とパッド51の定着ローラ41との対向面との間が所定距離で保持される。
一方、予熱時や定着動作終了後の保温時、厚紙、封筒等の比較的厚い用紙を使用するときには、定着ニップ部Nにおける加圧力を低下させる。このため、加圧機構80ではカム部材84が短軸側の頂点で可動板83aに接触する(図6参照)。これにより、定着ローラ41の弾性層の反力が加圧ばね83による加圧力よりも大きくなり、位置決め部材61の外周面がパッド51の定着ローラ41との対向面から離隔する。
このように、第2実施形態の構成によれば、画像形成装置1は定着ローラ41をベルト43に向けて加圧する加圧機構80を備え、加圧機構80による定着ローラ41の加圧力が可変である。これにより、位置決め部材61の外周面の、パッド51の定着ローラ41との対向面との接触、離隔を簡便な構成で実現することができる。したがって、画像形成装置1の低コスト化を図ることが可能である。そして、加圧機構80によって所望のタイミングで容易に、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間を所定距離で保持することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の画像形成装置について、図7及び図8を用いて説明する。図7は画像形成装置の定着装置の正面図である。図8は定着装置の定着ニップ部における加圧力を上昇させた状態の正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1及び第2の実施形態と同じであるので、それらの実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第3実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図7及び図8に示す位置可変機構70を備える。位置可変機構70は位置可変部材71を備える。
位置可変部材71は位置決め部材61に隣接するとともに、位置決め部材61のニップ形成部50との対向領域に配置される。位置可変部材71は用紙搬送方向に延びる棒状に構成され、位置決め部材61の外周面と対向する部分に第1接触面71a及び第2接触面71bを備える。
第1接触面71a及び第2接触面71bは用紙搬送方向に沿って並べて配置される。位置決め部材61はその外周面が位置可変部材71の第1接触面71aまたは第2接触面71bのいずれか一方に接触する。第1接触面71a、第2接触面71bは互いに、位置決め部材61が接触した場合に定着ローラ41の回転軸線と定着ニップ部Nまでの距離が異なる形状に構成される。すなわち、位置決め部材61が第2接触面71bに接触した場合、位置決め部材61が第1接触面71aに接触した場合よりも、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が短い。
通常の定着動作を実行するときなどの通常の加圧状態において、位置可変機構70では第1接触面71aに位置決め部材61の外周面が接触するように、位置可変部材71が配置される(図7参照)。
一方、印刷物により一層高い光沢性を与えるときには、定着ニップ部Nにおける加圧力を高める。このため、位置可変機構70では第2接触面71bに位置決め部材61の外周面が接触するように、位置可変部材71が配置される(図8参照)。定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が比較的短くなり、定着ニップ部Nにおける加圧力が高くなる。
このように、第3実施形態の構成によれば、画像形成装置1は定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を可変にする位置可変機構70を備える。これにより、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間を複数の所定距離で保持することができる。したがって、定着条件に応じて適宜任意に、定着ニップ部Nにおける加圧力を変更することが可能である。
また、位置可変部材71は、位置決め部材61が接触した場合に定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を異ならせる第1接触面71a及び第2接触面71bを備える。この構成によれば、定着ニップ部Nにおける加圧力の変更を簡便な構成で実現することができる。したがって、画像形成装置1の低コスト化を図ることが可能である。そして、位置可変機構70によって所望のタイミングで容易に、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を変更することができる。すなわち、印刷物により一層高い光沢性を与えたい場合に、容易に対応することが可能である。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態の画像形成装置について、図9〜図11を用いて説明する。図9は画像形成装置の定着装置における定着ニップ部の用紙通過枚数と、定着ローラ回転軸線とニップ形成部との間の距離との関係を示すグラフである。図10は定着装置の正面図にして、定着装置の稼働初期の状態を示すものである。図11は定着装置の正面図にして、定着装置の経時後の状態を示すものである。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
定着装置40では、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加すると、定着ローラ41の弾性層の弾性率が低下することがある。これにより、定着ニップ部Nの加圧力が低下する。定着ニップ部Nの加圧力が低下すると、印刷物の光沢性が低下する虞がある。
そこで、第4実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図9のグラフで表されたタイミングで定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を変更する。この距離の変更は、例えば画像形成装置1のユーザー、メーカーやメンテナンス会社等のサービスマンによって行うことができる。なお、図9に示した定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数と、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離との関係は、定着ニップ部Nにおける加圧力が一定になるように実験等によって予め定義される。
図9によれば、例えば定着装置40の稼働初期の状態において、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が15.000mmに設定される。このとき、図10に示すように、位置可変機構70では位置可変部材72が用いられる。
位置可変部材72は位置決め部材61に隣接するとともに、位置決め部材61のニップ形成部50との対向領域に配置される。位置可変部材72は用紙搬送方向に延びる棒状に構成され、位置決め部材61の外周面と対向する部分に位置決め部材61が接触する。これにより、定着ニップ部Nに所定の加圧力が作用する。
一方、図9によれば、例えば定着ニップ部Nを用紙Pが40万枚通過した定着装置40の経時後の状態において、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が14.995mmに設定される。このとき、図11に示すように、位置可変機構70では位置可変部材72に代えて、位置可変部材73が用いられる。
位置可変部材73は定着ローラ41とベルト43とが対向する方向の長さが位置可変部材72よりも短い。位置可変部材73を用いると、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が位置可変部材72を用いたときよりも短くなる。これにより、定着装置40の稼働初期の状態と同様に、定着ニップ部Nに所定の加圧力が作用する。
このように、第4実施形態の構成によれば、位置可変機構70は定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数に応じて定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を可変にする。そして、位置可変機構70は定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加するに従って定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を短くする。これにより、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加した場合であっても、定着ニップ部Nの加圧力の変動を抑制することができる。したがって、印刷物の光沢性を好適に維持することが可能になる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態の画像形成装置について、図12を用いて説明する。図12は画像形成装置の定着装置の正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第5実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図12に示す位置可変機構70を備える。位置可変機構70は位置可変部材74を備える。
位置可変部材74は位置決め部材61に隣接するとともに、位置決め部材61のニップ形成部50との対向領域に配置される。位置可変部材74は用紙搬送方向に延びる棒状に構成され、位置決め部材61の外周面と対向する部分に接触面74aを備える。
接触面74aは用紙搬送方向に沿って延びる。接触面74aは位置決め部材61が接触した場合に、用紙搬送方向に進むに従って定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が変化する傾斜で構成される。
位置可変部材74には用紙搬送方向に沿って延びるラック74bが設けられる。さらに、位置可変機構70はラック74bに噛み合ってラック・ピニオン機構を構成するピニオン74cを備える。ピニオン74cが不図示のモーターによって回転されると、位置可変部材74が用紙搬送方向に移動する。
通常の定着動作を実行するときなどの通常の加圧状態において、位置可変機構70ではピニオン74cを回転させて、位置可変部材74の接触面74aのうち定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が比較的長くなる領域に位置決め部材61の外周面が接触するように、位置可変部材74が配置される。
一方、印刷物により一層高い光沢性を与えるときには、定着ニップ部Nにおける加圧力を高める。このため、位置可変機構70ではピニオン74cを回転させて、位置可変部材74の接触面74aのうち定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離が比較的短くなる領域に位置決め部材61の外周面が接触するように、位置可変部材74の位置が変更される。これにより、定着ニップ部Nにおける加圧力が高くなる。
第5実施形態の構成によれば、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を連続的に変更することが可能である。すなわち、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加した場合に、定着ニップ部Nの加圧力を連続的に変更することができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態の画像形成装置について、図13を用いて説明する。図13は画像形成装置の定着装置の正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第6実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図13に示す位置可変機構70を備える。位置可変機構70は位置可変部材75を備える。
位置可変部材75は位置決め部材61に隣接するとともに、位置決め部材61のニップ形成部50との対向領域に配置される。位置可変部材75は用紙搬送方向に延びる棒状に構成され、位置決め部材61の外周面と対向する部分に接触面75aを備える。
位置可変部材75は位置決め部材61が接触することで、用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数が増加するに従って自身の変形が進行する材料である例えばフッ素樹脂(PFA)を含む。位置可変部材75は接触面75aに、例えば厚さ1mmのPFA層を有する。用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数が増加するに従って、接触面75aは位置決め部材61との接触領域のPFA層において凹みが進行する。
第6実施形態の構成によれば、位置可変部材75の変形を利用することで、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加した場合に、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を連続的に短くすることが可能である。したがって、位置可変部材を変更したり、移動したりすることなく、定着ニップ部Nの加圧力の連続的に、自動的に変更することができる。すなわち、画像形成装置1の簡素化、小型化を図ることが可能である。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態の画像形成装置について、図14を用いて説明する。図14は画像形成装置の定着装置の正面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
第7実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図14に示す位置可変機構70を備える。位置可変機構70は位置可変部材76を備える。
位置可変部材76は位置決め部材61の、定着ローラ41の回転軸41aに対する軸受として設けられる。位置可変部材76は回転軸41aを受けるリング状に構成される。
位置可変部材76は定着ローラ41の回転軸41aが接触することで、用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数が増加するに従って自身の磨耗が進行する材料である例えばフッ素樹脂(PTFE)で構成される。用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数が増加するに従って、位置可変部材76は回転軸41aとの接触領域である内周面において磨耗が進行する。
第7実施形態の構成によれば、位置可変部材76の磨耗を利用することで、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加した場合に、定着ローラ41の回転軸線とニップ形成部50との間の距離を連続的に短くすることが可能である。したがって、位置可変部材を変更したり、移動したりすることなく、定着ニップ部Nの加圧力の連続的に、自動的に変更することができる。すなわち、画像形成装置1の簡素化、小型化を図ることができる。
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態の画像形成装置について、図15〜図17を用いて説明する。図15は画像形成装置の定着装置に係る構成を示すブロック図である。図16は定着装置における定着ニップ部の用紙通過枚数とベルト速度比との関係を示すグラフである。図17は定着ローラの回転速度の変更処理の例を示すフローチャートである。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
定着装置40では、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加すると、定着ローラ41の弾性層の弾性率が低下することがある。これにより、定着ニップ部Nの用紙Pの搬送速度が低下する。定着ニップ部Nの用紙Pの搬送速度が低下すると、定着ニップ部Nの用紙搬送方向上流側において、搬送方向に沿った用紙Pの湾曲が大きくなり、用紙Pが搬送ガイド部材に接触して画像不良が生じる虞がある。また、定着ニップ部Nの用紙Pの搬送速度が低下すると、定着ニップ部Nの用紙搬送方向下流側において、用紙Pが搬送方向下流側に向けて引っ張られ、用紙Pにしわや破損が生じる虞がある。
そこで、第8実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図15に示す状態検知部46を備える。状態検知部46は例えばベルト43の回転速度、定着ローラ41の直径、定着ローラ41の硬度、定着ローラ41の累積走行距離及び用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数を検出するとともに、これらの検出値の少なくとも一つに基づき定着ローラ41の状態を検知する。状態検知部46は例えばドップラー効果を用いてベルト43の回転速度を検出する。状態検知部46は例えば定着ローラ41の弾性層のシュリンク状態に基づき定着ローラ41の直径を検出する。状態検知部46は例えば定着装置40の不図示の記憶部や、主制御部5の記憶部5bなどに逐次記憶される定着ローラ41の累積走行距離及び用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数を検出する。
そして、画像形成装置1は状態検知部46が検知した定着ローラ41の状態に応じて定着ローラ41の回転速度を可変にする。ここで、図16に示した定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数と、ベルト43の速度比との関係が実験等によって予め導出される。画像形成装置1は定着ローラ41の回転速度の変更において、ベルト43の速度比の逆数を補正係数として利用する。なお、定着ローラ41の回転速度の変更は、例えば画像形成装置1の電源オン時、ウォームアップ時、或いは任意のタイミングで実行される。
続いて、用紙Pの定着ニップ部Nの通過枚数に基づく定着ローラ41の回転速度の変更処理の例について、図17を用いて説明する。
画像形成装置1において定着ローラ41の回転速度の変更処理が開始されると(図17のスタート)、ステップ#101で状態検知部46が定着ニップ部Nにおける用紙Pの通過枚数を検出する。定着ニップ部Nにおける用紙Pの通過枚数は例えば定着装置40の不図示の記憶部や、主制御部5の記憶部5bなどに逐次記憶される。
ステップ#102では定着ニップ部Nにおける用紙Pの通過枚数に応じた補正係数が取得される。定着装置40の不図示の記憶部や、主制御部5の記憶部5b等には図16に示したグラフに対応したデータテーブルが予め記憶される。このデータテーブルに基づき、ベルト43の速度比の逆数が補正係数として利用される。
ステップ#103では定着ローラ41の従前の回転速度に補正係数を乗ずることで、定着ローラ41の補正された回転速度が導出される。
ステップ#104では補正された回転速度で定着ローラ41の駆動が制御される。そして、定着ローラ41の回転速度の変更処理が終了される(図17のエンド)。
このように、第8実施形態の構成によれば、画像形成装置1が定着ローラ41の状態を検知する状態検知部46を備え、定着ローラ41の状態に応じて定着ローラ41の回転速度を可変にする。これにより、定着ニップ部Nの用紙Pの通過枚数が増加した場合であっても、定着ニップ部Nにおける用紙Pの搬送速度の変動を抑制することができる。したがって、画像不良や用紙Pのしわ、破損の発生を防止することが可能になる。
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態の画像形成装置について、図18を用いて説明する。図18は画像形成装置の定着装置の上面図である。なお、この実施形態の基本的な構成は先に説明した第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と共通する構成要素には前と同じ名称、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
定着装置40では、製造上、定着ローラ41の軸方向両端部各々の直径D1、D2が異なることがある。これにより、定着ニップ部Nの幅方向(定着ローラ41の軸方向)において圧力差が発生する虞がある。
そこで、第9実施形態の画像形成装置1の定着装置40は、図18に示す位置決め部60を備える。位置決め部60は位置決め部材62、63を備える。位置決め部材62、63は定着ローラ41の軸方向両端部の外側各々に設けられる。位置決め部材62、63はともにコロ形状で構成され、定着ローラ41の回転軸41aに回転可能に支持される。
位置決め部材62は位置決め部材63よりも直径が大きく、定着ローラ41の直径が大きい方(D1)の軸方向外側に配置される。一方、位置決め部材63は位置決め部材62よりも直径が小さく、定着ローラ41の直径が小さい方(D2)の軸方向外側に配置される。これにより、位置決め部材62、63は定着ローラ41の軸方向両端部のうち、定着ローラ41の直径が大きい方が、直径が小さい方よりも、定着ローラ41の回転軸線Xから定着ニップ部Nまでの距離が長い状態で保持する。
この構成によれば、定着ローラ41の軸方向両端部各々の直径D1、D2が異なる場合に、定着ローラ41の回転軸線Xとニップ形成部50との間を、定着ローラ41の軸方向両端部各々の直径D1、D2に応じた所定距離で、位置決め部材62、63が保持する。これにより、定着ニップ部Nの幅方向における圧力差の発生を抑制することができる。したがって、ベルト43の蛇行を抑制することが可能である。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。