JP2018030255A - 蓋材用無延伸共押出フィルムおよび包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、酸素流入や雑菌繁殖の抑制方法としては、密封包装での加熱殺菌や無菌室での密封包装が行われており、その効果をさらに高める方法として、ガスバリア性包材での真空パックや不活性ガスを用いたガス置換包装が用いられている。
その形態は、図1のような、樹脂トレーの縁に蓋材フィルムをヒートシールで溶融密着させるものである。このような形態は、トップシールと呼称されることがある。
しかしながら、ガスバリア性フィルムとして多用されている、ポリプロピレン樹脂/エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂といった層構成の30μm厚程度の無延伸フィルムでは、剛性が低いため、包装体を段積みした際に底材のリブ形状やプラマーク表示等が下に置かれた包装体の蓋材に残る(転写と呼称されることがある)問題が生じる。
また、高剛性や熱板非融着を検討した蓋材用共押出無延伸フィルムとして特許文献6,7に技術開示されているプロピレン単独重合体/プロピレン系単独重合体/イージーピールといった層構成や、ポリエステル樹脂/プロピレン系樹脂/イージーピールといった層構成の30〜80μm厚程度の無延伸フィルムにおいても、包装体段積みの際の上段底材のリブ形状やプラマーク表示等が下段蓋材に残る問題は、発生してしまう。
説明において、本発明のフィルムの「外層」とは包装体の蓋材に使用した場合に、外気側に位置する層であり、「内層」とは収容物側に位置する層であり、「中層」とは外層と内層の間に位置する層である。すなわち、包装体の外気側からのフィルム層構成順は、例えば、最外層/外層/中間層/内層と表記される。
本発明のフィルムの最外層には、ポリブチレンテレフタレート単独重合体および/またはポリブチレンテレフタレート共重合体(以下、PBTと略記することがある)を用いる。
ポリブチレンテレフタレート単独重合体は、ジカルボン酸成分にテレフタル酸、ジオール成分に1,4−ブタンジオールを用いて重合する。共重合体としては、ジカルボン酸成分にドデカンジオン酸やポリテトラメチレングリコール、ジオール成分にテトラメチレンオキシドグリコールを用いたもの等が例示できる。
また、ポリエステル樹脂は、一般に、延伸により耐熱性、強度、剛性が高まる性質であるが、PBTは、PETに比べ結晶化速度が速く、延伸せずとも優れた耐熱性が得られる特徴がある。
このような特徴から、無延伸共押出フィルムの最外層にPBT層を配設することによって、ヒートシール工程におけるヒートシール熱板へのフィルムの熱融着の防止ができるようになる。
また、後述の最外層に隣接するポリエチレンテレフタレート層との親和性も高く、両層間の密着力を良好に保つこともできるので、フィルム全体の機能の総合的かつ効果的な発現が可能となる。
また、PBTの極限粘度(IV)は、0.65〜0.85が好ましく、0.70〜0.80がより好ましい。極限粘度(IV)は、試料の樹脂300mgを溶媒(フェノールと1,1,2,2−テトラクロルエタンの質量比1:1混合溶媒)30mlに溶解させ、ウベローゼ型粘度計を用いて、試料落下時間を計測し、算出することができる。
本発明のフィルムは、最外層のPBT層に隣接した中間層寄りの外層として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと略記することがある)層を有する。
ポリエステル樹脂は、一般に剛性が高い樹脂種であるが、例えば、材料の靱性を示す指標の一つであるアイゾット衝撃強さで比較すると、PBTが50J/mに対し、PETは55J/mとより高い。
このような点から、PBT層に隣接させてPET層を配設することで、フィルムの剛性を効果的に向上させることができ、包装体を段積みして保管、運送、陳列などした際に、上に載せた包装体のリブやプラマーク等の底材形状がその下に置いた包装体の蓋材に痕残り(転写)し難くなり、商品形状ひいては商品価値を損ねないことに貢献する。
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸類;2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類;44−ジカルボキシジフェニル、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4 ’−ジカルボン酸などのジカルボキシビフェニル類; 1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸およびその置換体;1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸およびその置換体などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸などが挙げられる。さらに、上記脂環式ジカルボン酸としては、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン、1,3−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
脂環式ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物; キシリレングリコールなどが挙げられる。
また、多価アルコール成分として、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールなどを用いることもできる。
本発明のPET層樹脂には、剛性の観点から、エチレンテレフタレートユニットの含有率が80モル%以上の樹脂の使用が好ましく、83モル%以上がより好ましく、85モル%以上が更に好ましい。中でも、ホモのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートコポリマーなどは経済性の点からも好適である。
本発明のフィルムは、内容物の食品の腐敗を防ぐ目的で、酸素ガスバリア性を中間層に配することが望ましい。
ガスバリア層としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略記することがある)層、またはポリメタキシレンとアジピン酸からなるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、MXDと略記することがある)層を少なくとも1層備えることで、賞味期限の延長に必要な酸素バリア性を付与し易い。より高いガスバリア性の効果の点では、EVOH層を配することがより好ましく、耐熱性・耐水性を兼ね備える点においては、MXD層を配することが好ましい。
2μm以上とすることにより、本発明の目的に十分な酸素バリア性を付与することができ、且つ安定した製膜が可能となる。また、10μm以下とすることにより、経済性に優れる他、耐ピンホール性の低下が避けられる。
本発明のフィルムは、内層に防曇剤を含有したポリオレフィン樹脂からなるヒートシール層を少なくとも1層有することで、収容物の食品等からの水分による蓋材内面の曇り抑制と、底材等の被着体とのヒートシール性の機能を付与できる。
中でも、EVAは、透明性や柔軟性を付与する観点で好ましい。また、LLDPEは、ヒートシール可能温度域が広く、表面の強度、滑り性が良好である観点で好ましい。
防曇剤をポリオレフィン樹脂と混合してフィルム内層を形成することで、塗布法で防曇剤層を形成する場合に比べ、フィルム成形、包装体成形、収容物接触を経ても、フィルム表面の防曇剤量が低減することなく、防曇効果を安定して維持できる。また、ガスバリア層の存在により、防曇剤のフィルム外層側、包装体外側への移行拡散が抑制され、防曇剤がフィルム内層表面へ効果的に析出し、効率的に防曇性を発現し得る。更に、外層側への移行抑制により、蓋材フィルムの外層側が接触する包装機熱板への防曇剤付着汚れが発生することもない。
防曇剤含有濃度は、フィルム内層に対して、下限は0.020質量%以上が好ましく、0.025質量%以上がより好ましく、0.030質量%以上がさらに好ましい。上限は0.100質量%以下が好ましく、0.090質量%以下がより好ましく、0.080質量%以下がさらに好ましい。
0.020質量%以上により良好な防曇性効果を発現でき、0.100質量%以下により防曇剤の内層表面への過剰な析出を抑制し、フィルム表面のベタつきや粉末の発生を抑制することができる。
本発明のフィルムは、各層の層間剥離強度を高める目的で、必要に応じて接着樹脂層を設けることができる。接着樹脂層は1層であっても良いし、複数であっても良いが、層間接着強度をより高める観点から、PET層とEVOH層との間と、ガスバリア層と内層との間に配設させることが好ましい。
接着樹脂は、各層を構成する各種樹脂層を必要な強度で接着できれば特に限定されない。好ましくは、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができ、さらに誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を用いることができる。
本発明のフィルムの層構成は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)層、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)層、ガスバリア層、及び防曇剤含有ヒートシール層をこの順に有する構成であれば、特に制限はなく、各層間に接着樹脂層等の他の層を配しても良い。
本発明のフィルムの総厚は、フィルム製膜性、フィルムの剛性や強度、ヒートシール性と熱板非融着性、ガスバリア性、経済性などを良好に兼ね備える観点からは、20μm以上40μm以下が好ましく、上限は30μm以下がより好ましい。
本発明のフィルムは、各種包装体への使用に好適である。中でも、包装体を変形させずに張りが良く、ガスバリア性が良く、包装体を段積みした梱包、運搬、保管、陳列の際の痕残り(転写)が起き難い特性から、ガス置換包装(ガスパック)等の深絞り包装体や、ブリスターパック、トレー(トレイ)包装体などの蓋材としての用途に有用である。
次いで、深絞り包装機(MULTIVAC製R535)を用い、蓋材フィルムとして各例で得たフィルムを供し、底材フィルムとして、APET(270μm)/EVOH(10μm)/PE(20μm)の層構成の無延伸共押出フィルムを供した。
底材フィルムを底面10cm角、深さ5cmの略直方体の深絞り形状に真空成型し、水50mlを収容し、底材のフランジ部と蓋材フィルムとを重ね、その周縁部を140℃、2秒間、0.5MPaの設定条件でヒートシールすると共に、窒素ガスを圧力300kPa、流量8Lの条件で封入し、ガス置換包装体(ガスパック)を作製した。尚、ヒートシール熱板は、蓋材の外層側に位置する。
PBT; ポリブチレンテレフタレート単独重合体、融点225℃、荷重たわみ温度85℃(条件:たわみ量0.25mm、荷重1.80MPa)
PET; ポリエチレンテレフタレート単独重合体、融点250℃、ガラス転移温度80℃
PP; ポリプロピレン単独重合体、融点160℃
Ny; ナイロン6単独重合体
MXD; ポリメタキシリレンジアジパミド樹脂
LL; 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
防曇; 防曇剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル
AD; 不飽和カルボン酸変性ポリエチレン系接着樹脂
PBT(1μm)/PET(13μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PBT(3μm)/PET(11μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PBT(1μm)/PET(13μm)/AD(2μm)/MXD(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PET(14μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PBT(14μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PBT(7μm)/PET(7μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
PP(14μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
Ny(14μm)/AD(2μm)/EVOH(4μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
共押出フィルムを作製後、延伸倍率縦横各1.5倍、熱固定なしの延伸処理を行い、次の層構成の熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)を得た。
Ny(14μm)/EVOH(4μm)/AD(2μm)/LL+防曇(10μm)、総厚30μm
<熱板融着>
ヒートシールの際に、蓋材フィルムが熱板に融着しなかったものを「○」、したものを「×」と評価した。
ガス置換包装体を5℃、2時間静置保管し、蓋材が水滴で曇らなかったものを「○」、曇ったものを「×」と評価した。
水平台上のガス置換包装体の蓋材の中央部に、8cm角、300gの金属板を載せ、5℃、24時間静置保管した。その後、包装体の蓋材を観察し、金属板を載せた箇所に凹み痕がつかなかったものを「○」、凹み痕がついたものを「×」とした。
ガス置換包装体を作製直後に水平台上に静置し、水平面に対し、ヒートシール部(フランジ部)の反り返りが2mm未満だったのものを「○」、2mm以上だったものを「×」とした。
2; 底材、トレー
3; 蓋材と底材とのヒートシール密着部、トップシール部
4; 生鮮食品等の収容物
5; 不活性ガス
10; 深絞り包装体
Claims (4)
- ポリブチレンテレフタレート樹脂層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、ガスバリア層、及び防曇剤含有ヒートシール層をこの順に有し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂層厚が1μm以上5μm以下であり、かつフィルム総厚が20μm以上40μm以下である蓋材用無延伸共押出フィルム。
- 前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層の厚みが、フィルム総厚に対して30%以上50%である請求項1に記載の蓋材用無延伸共押出フィルム。
- 前記ガスバリア層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物またはポリメタキシリレンアジパミド樹脂からなる請求項1または2に記載の蓋材用無延伸共押出フィルム。
- 請求項1〜3の何れかに記載の無延伸共押出フィルムを蓋材として有する深絞り包装体。
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